特許第5756241号(P5756241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5756241六価クロム代替となる処理水の無排水処理装置と、その方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5756241
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】六価クロム代替となる処理水の無排水処理装置と、その方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 9/00 20060101AFI20150709BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20150709BHJP
   C02F 1/62 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   C02F9/00 504B
   C02F9/00 502E
   C02F9/00 503G
   C02F1/42 K
   C02F1/62 B
【請求項の数】2
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-1467(P2015-1467)
(22)【出願日】2015年1月7日
【審査請求日】2015年1月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597137475
【氏名又は名称】旭金属工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000132105
【氏名又は名称】株式会社スイレイ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100083068
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 一宣
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】加納 昌武
(72)【発明者】
【氏名】石黒 鈴男
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智史
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−037266(JP,A)
【文献】 特開2013−255864(JP,A)
【文献】 特開2010−284593(JP,A)
【文献】 特開2011−106004(JP,A)
【文献】 特開昭49−029232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 9/00
C02F 1/42
C02F 1/62
C25D 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理排水を貯留する高濃度用一次処理水貯留槽と、低濃度用二次処理水貯留槽とに区画し、それぞれ次のルートを介して、六価クロム代替となる処理水の無排水処理装置において、
前記一次処理水貯留槽に貯留する高濃度処理水は、自然沈下処理槽に配管を介して、MF膜処理水槽と、活性炭塔とに順次接続するとともに、活性炭塔を、配管を介して逆浸透膜濾過装置(RO膜装置)に接続し、前記逆浸透膜濾過装置に、配管を介して、塩分除去して一次再生清澄水を生成する混床式イオン交換装置に接続し、一次再生清澄水を、前記一次処理水貯留槽にリターンする一次再生清澄水用の配管を設ける構成とし、
前記二次処理水貯留槽に貯留する低濃度処理水は、少なくとも、アルカリ系排水を処理するアルカリ系イオン交換装置、ホウ酸系排水を処理するホウ酸系イオン交換装置、又はリン酸系排水を処理するリン酸系イオン交換装置、或いはクロム系排水を処理するクロム系イオン交換装置を介して、それぞれ再生純水を生成し、前記二次処理水貯留槽にリターンする前記再生純水用の配管を設ける構成の六価クロム代替となる処理水の無排水処理装置であって、
前記一次処理水貯留槽に貯留する高濃度処理水は、前記自然沈下処理槽に配管を介して、前記MF膜処理水槽と、前記活性炭塔とに順次接続するとともに、このMF膜処理水槽と、この活性炭塔との間に、中間処理水貯留槽を設け、この中間処理水貯留槽において、固液分離を介して、脱水汚泥と中間処理水に分離処理可能とし、
また、前記逆浸透膜濾過装置で、前記中間処理水を、濃縮液と透過水に分離可能とし、この濃縮液は、前記逆浸透膜濾過装置に、配管を介して接続した減圧濃縮装置に導く構成とし、この減圧濃縮装置で蒸留水と濃縮液とに分離可能とし、この蒸留水は、配管を介して、混床式イオン交換装置に導入可能とし、前記濃縮液は、晶析装置により減容化を可能とする構成とした六価クロム代替となる処理水の無排水処理装置。
【請求項2】
表面処理排水を貯留する高濃度用一次処理水貯留槽と、低濃度用二次処理水貯留槽とに区画し、それぞれ次のルートを介して、六価クロム代替となる処理水の無排水処理方法において、
前記一次処理水貯留槽に貯留する高濃度処理水を、自然沈下処理槽で生成された上澄み液を、MF膜処理水槽に送り、このMF膜処理水槽で、固液分離を介して、重金属水酸化物スラリーとMF膜処理水とに分離し、このMF膜処理水を、中間処理水貯留槽に導き、
この中間処理水貯留槽で、固液分離を介して、脱水汚泥と中間処理水に分離処理し、この中間処理水を、逆浸透膜濾過装置(RO膜装置)に導き、この逆浸透膜濾過装置で、固液分離を介して、濃縮液と透過水に分離処理し、この濃縮液は、減圧濃縮装置に導き、加熱処理し、濃縮液と蒸留水に分離処理し、この濃縮液は、晶析装置に導き、この晶析装置により空中への蒸気拡散と濃縮液の減容化を達成し、また、この透過水は、混床式イオン交換装置により塩分除去して一次再生清澄水を生成し、この一次再生清澄水を、前記一次処理水貯留槽にリターンする構成とし、
一方、前記二次処理水貯留槽の低濃度処理水を、少なくとも、アルカリ系排水を処理するアルカリ系イオン交換装置、ホウ酸系排水を処理するホウ酸系イオン交換装置、又はリン酸系排水を処理するリン酸系イオン交換装置、或いはクロム系排水を処理するクロム系イオン交換装置を介して、それぞれ再生純水を生成し、前記二次処理水貯留槽にリターンする構成とした六価クロム代替となる処理水の無排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、六価クロム代替を意図した処理水、及び/又は、浸透探傷検査で発生する浸透液水洗の排水(廃液)の無排水処理装置と、その方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、主として、航空機の素材(加工部材)の六価クロム代替となる処理水の無排水処理装置と、方法、及び/又は、浸透探傷検査で発生する浸透液水洗の排水(ザイグロ水洗水)とか、その他の素材の表面処理で発生する処理水(主として、表面処理水)の中で、高濃度の表面処理水(濃度液)を含む処理水の無排水処理装置と、その方法に関する出願である。
【0003】
従来のその他の素材の表面処理で発生する処理水の無排水処理装置と、その方法は、図3に示した構造があり、その概要を説明する。
【0004】
表面処理排水を貯留する高濃度用一次処理水貯留槽(イ)と、低濃度用二次処理水貯留槽(イ’)とに区画し、それぞれ次のルートを介して、六価クロム代替となる処理水の無排水処理装置において、
一次処理水貯留槽(イ)に貯留する高濃度処理水は、有害物質(六価クロム等)を含む処理水であるので、クロム系イオン交換設備(ロ)を介して、この処理水中に含まれる重クロム酸イオン、硝酸イオン等を吸着除去し、生成された純水を、ラインの最初の水洗槽(ハ)にリサイクル(ニ)し再生水洗水として利用する。また、クロム系イオン交換設備(ロ)で生成されたクロム系イオン交換再生廃液(ヘ)は、後述するように、共通のルートを介して再処理される。
一方、二次処理水貯留槽(イ’)に貯留する低濃度処理水は、有害物質(六価クロムなど)を含まないアルカリ脱脂水洗水は、アルカリ系イオン交換設備(ロ’)において、アルカリ脱脂水洗水に含んでいるナトリウムイオン、炭酸イオン等を吸着除去し、生成された純水を、ラインの最初の水洗槽(ハ)にリサイクル(ニ’)し再生水洗水として利用する。また、アルカリ系イオン交換設備(ロ’)で生成されたアルカリ系イオン交換再生廃液(ホ’)は、後述するように、共通のルートを介して再処理される。
前記クロム系イオン交換設備(ロ)及びアルカリ系イオン交換設備(ロ’)の水洗水を、図示しないイオン交換塔(再生設備(ホ))に通水し、イオンの吸着能力を失ったイオン交換樹脂を再度、吸着能力を復帰するとともに、処理した水洗水を、クロム系イオン交換設備(ロ)及びアルカリ系イオン交換設備(ロ’)にリターンする。尚、再生設備(ホ)では、再生薬品として、苛性ソーダ、塩酸等の薬品を通薬する工程やクロム系イオン交換樹脂、及びアルカリ系イオン交換樹脂を水洗水等で洗浄する工程を備える。
この工程で生成されたイオン交換再生廃液の処理を行うと、イオン交換樹脂再生廃液が発生するので、例えば、再生廃液回分式処理設備(ト)で処理すると、六価クロムを始め様々なイオン成分が含まれること(イオン交換再生廃液)、及び高濃度であることで、各種の薬剤を利用した反応処理工程で処理する。処理方法は凝集沈殿、及び/又は、回分式(バッチ)処理をし、回分式処理後は上澄液と自然沈降した汚泥(重金属水酸化物スラリー)とに分離される。
【0005】
前記各種の薬剤とは、例えば、次のようなものとする。
【0006】
a.助剤
回分式処理にて金属物を水酸化物として沈殿させる際、助剤を併せて添加することで金属物の沈降性に役立つ。
【0007】
b.重亜硫酸ソーダ
廃液中に含まれる六価クロムを無害な三価クロムへ還元する。
【0008】
c.苛性ソーダ
pH調整を図り、例えば、金属物や助剤が金属水酸化物への凝集を促進する。苛性ソーダは、例えば、イオン交換樹脂の再生時において、約7〜10%溶解の苛性ソーダ溶液をイオン交換樹脂に通液すると、イオン交換樹脂に吸着された陰イオン(アニオン)の脱着に有効性を発揮できる。
【0009】
d.硫酸
pHを低下し、六価クロムの還元効果を発揮できるように調整する。硫酸は、例えば、イオン交換樹脂の再生時において、約7〜10%溶解の塩酸溶液をイオン交換樹脂に通液すると、イオン交換樹脂に吸着された陽イオン(カチオン)を脱着に有効性を発揮できる。
【0010】
e.高分子凝集剤
pH調整によって生成された金属水酸化物のフロックを拡大し、沈降を促進する。
【0011】
この再生廃液回分式処理設備(ト)で、回分式処理された上澄液には、重金属等の有害物質は含まないが、塩濃度が非常に高く、主に塩化ナトリウム、硫酸ソーダ等を含むことから、減圧濃縮装置(チ)で処理される。上澄液を減圧状態に維持しながら、蒸気処理、即ち、蒸留を行い、蒸発した塩濃度が低い蒸留水は、水洗槽(ハ)に戻しリサイクル(ニ”)する。一方、塩濃度が高くなった濃縮液は産業廃棄物として処分する。
また、再生廃液回分式処理設備(ト)で、回分式処理された重金属水酸化物スラリーは、脱水処理設備(リ)(フィルタープレスによる脱水処理設備)のフィルタープレスにて脱水処理を行い、含水率を少なくした状態で産業廃棄物とする。
【0012】
前述した従来例では、一系統のイオン交換系列(クロム系イオン交換設備(ロ)及びアルカリ系イオン交換設備(ロ’))での処理であり、二系統で構成した生産ライン系統を同時処理(再生設備(ホ))である。従って、イオン交換塔が飽和となったとき各工程水洗槽に不純物(他工程成分)が混入する虞と、不純物が表面処理本槽内で規定量以上となると製品に不良が発生することと、従来は、再生方法を自社再生式とすること、例えば、再生設備と再生廃液処理設備、及び再生薬品が必要となり煩雑となる。また、設備設置スペースと、複雑な工程の管理・メンテナンスが必要等の問題を抱えているものと思料される。
【0013】
廃水処理に関する文献として、特開2012−35234号公報に記載の「廃水処理装置及び廃水処理方法」がある。この発明は、活性汚泥、及びポリウレタンフォームが充填されて反応槽と、沈殿槽とで構成し、この反応槽に、浸透探傷検査工程から排出される浸透検査廃水を導入し、活性汚泥、及びポリウレタンフォームに吸着除去した後に、反応槽に導き、活性汚泥の沈殿と、上澄水を生成し、この上澄水を外部に放流する構成である。従って、無排水を意図しない。
【0014】
無排水処理に関する文献として、特表2013−540889号公報に記載の「液体排出物の処理および金属の回収方法」がある。この発明は、液体排出物均一化工程と、硫化物添加、及び金属硫化物形態での金属の沈殿工程と、金属硫化物の固体/液体分離、及び金属を含まない液相の形成工程とでなり、液体排出物の処理を図りつつ、金属(レアーメタル)の回収を図るとともに、無排水(状態)を意図する。しかし、[0028]に記載されているように、必ずしも、無排水(状態)が可能か否かは断定できないと考えられる。
【0015】
次に、本発明は、航空機の素材(加工部材)の浸透探傷検査、即ち、肉眼では見えない微小亀裂(クラック、ピンホール、腐食等の傷)を探し出す手段であり、浸透探傷検査は、浸透液(蛍光液)を塗布し、微小亀裂に浸透させる。一定時間経過後表面の浸透液を水洗し、その後、現像(剤)処理を行い、暗室内で紫外線を照明し、目視検査する方法である。
【0016】
この浸透探傷検査において発生する蛍光液と現像(剤)を含む処理水(浸透液水洗の排水「ザイグロ検査用の水洗処理排水」)を、処理する方法として、図4−1、図4−2と図5に示した方法が利用されている。浸透液水洗の排水槽(浸透液水洗の排水を貯留した原水槽)001の浸透液水洗の排水001aは、ポンプ・配管002で吸着槽003に送られ、吸着槽003に備えた活性炭004aと濾過助剤(ベントナイト液004b)とにより、有機物、界面活性剤、又は蛍光液、現像(剤)等を吸着処理し、第001処理水を生成し、第001処理水を配管005でパック剤006a添加の反応槽006、及び苛性ソーダ007a添加の調整層007、並びに高分子凝集剤008a添加の凝集層008に、順次送り、それぞれの槽で、順次処理される。処理は、pH調整(図中pHで示す)を図りつつ、苛性ソーダの添加で、水酸化アルミニウムの形成された中性域を形成するとともに、凝集剤の添加で、フロック生成処理等を行い、第002処理水が生成される。第002処理水は、図示しない配管等で沈殿槽009に送る。沈殿槽009で比重分離された上澄み清澄水は、配管0010で処理水槽0011に到った後、廃棄されるか、又は再利用タンク0012に送られた後、廃棄される。また、沈殿槽009で比重分離されたスラッジは、沈殿槽009の底部に設けた配管0013で脱水機0014に送り、脱水機0014からの清澄水は、浸透液水洗の排水槽001にリターン、脱水ケーキは廃棄される。
【0017】
この浸透液水洗の排水処理方法は、処理水槽0011に貯留した上澄み清澄水は、有機物、界面活性剤、又は蛍光液と現像(剤)等を吸着処理するが、純粋の清澄水までは到っていない。この処理水槽0011内の上澄み清澄水は、リサイクルには向かず、放流処理される。また、無排水には向かない構造である。
【0018】
ザイグロの無排水処理に関する文献として、特開平6−50911号公報記載の「浸透探傷クローズドシステム」がある。この発明は、界面活性剤を含まない疎水性の浸透液を用いる浸透工程後に、界面活性剤を被検査物に施与する後乳化工程を無くす為に、上下動する複数のスプレーノズルから、洗浄水を被検査物の上下及び側方から噴射して洗浄し、水中に混和した1μ以下の浸透液の小滴が分散する洗浄廃水を、繊維集合体と接触させるとともに、水と浸透液の比重差により浸透液を水から分離し、分離後の水を再び洗浄水として用いる構成である。しかし、この発明は、前述の如く、「繊維集合体と接触させるとともに、水と浸透液の比重差により浸透液を水から分離」する構成であり、処理時間を要することと、大容量の分離手段を必要とすること、等の問題点を抱えているものと思料される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2012−35234号公報
【特許文献2】特表2013−540889号公報
【特許文献3】特開平6−50911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、従来の課題を解決し、かつ六価クロム代替となる処理水の無排水処理装置と、その方法の提案を意図する。そして、今後の環境維持の見地から、クロム酸法、又はリン酸法による陽極酸化被膜を形成する手法にも対応できる無排水処理装置と、その方法の提案を意図する。
【0021】
即ち、本発明は、水洗を一次水洗槽と、二次水洗槽に区別して行う。例えば、低濃度用二次水洗では、処理水(原水)の内容物の液質を考慮して、四系統のイオン交換通水経路を細分化して、系統毎に個別に、かつ最適な処理をするとともに、各系統のイオン交換樹脂が飽和した際の不純物質が他の工程へ混入する悪影響を抑え得る。また、高濃度用一次水洗では、連続式排水処理を行い、助剤の添加とpHの調整により生成された金属水酸化物等のSS物質(suspended solids、浮遊物質)を(MF膜を用い)、高濃度SS物質と処理水(濾過液)に分離し、処理水を、二次水洗に利用する。
【0022】
また、浸透探傷検査で発生する浸透液水洗の排水処理を行うことで、浸透液水洗の排水(廃液)を、再利用可能な清澄水に生成することと、清澄水の略全量の再利用(リサイクル)を図る。
【0023】
更には、浸透探傷検査で発生する浸透液水洗の排水処理において、MF膜装置(Microfiltration膜装置、精密濾過膜装置)とRO膜装置(Reverse Osmosis膜装置、逆浸透膜装置)と、他の装置との連繋配備、及び/又は、薬液の適宜箇所での添加等を介して、MF膜装置での高精度の分離を図り、かつRO膜装置におけるRO膜の詰り等の負荷の軽減化、又は脱水機の負荷の軽減化(MF膜装置とRO膜装置等との相乗効果と、装置の有効利用、並びにその他として、捕集性の向上等)と、その他一般細菌の除去、腐敗防止等とを図る。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、従来の課題を解決し、かつ本発明の効果達成の為に、請求項1〜請求項で開示した、浸透探傷検査で発生する浸透液水洗の排水処理装置と、その方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明は、表面処理排水を貯留する高濃度用一次処理水貯留槽と、低濃度用二次処理水貯留槽とに区画し、それぞれ次のルートを介して、六価クロム代替となる処理水の無排水処理装置において、
一次処理水貯留槽に貯留する高濃度処理水は、自然沈下処理槽に配管を介して、MF膜処理水槽と、活性炭塔とに順次接続するとともに、活性炭塔を、配管を介して逆浸透膜濾過装置(RO膜装置)に接続し、前記逆浸透膜濾過装置に、配管を介して、塩分除去して一次再生清澄水を生成する混床式イオン交換装置に接続し、一次再生清澄水を、前記一次処理水貯留槽にリターンする一次再生清澄水用の配管を設ける構成とし、
二次処理水貯留槽に貯留する低濃度処理水は、少なくとも、アルカリ系排水を処理するアルカリ系イオン交換装置、ホウ酸系排水を処理するホウ酸系イオン交換装置、又はリン酸系排水を処理するリン酸系イオン交換装置、或いはクロム系排水を処理するクロム系イオン交換装置を介して、それぞれ再生純水を生成し、二次処理水貯留槽にリターンする前記再生純水用の配管を設ける構成の六価クロム代替となる処理水の無排水処理装置であって、
一次処理水貯留槽に貯留する高濃度処理水は、自然沈下処理槽に配管を介して、MF膜処理水槽と、活性炭塔とに順次接続するとともに、MF膜処理水槽と、活性炭塔との間に、中間処理水貯留槽を設け、中間処理水貯留槽において、固液分離を介して、脱水汚泥と中間処理水に分離処理可能とし、
また、逆浸透膜濾過装置で、中間処理水を、濃縮液と透過水に分離可能とし、濃縮液は、逆浸透膜濾過装置に、配管を介して接続した減圧濃縮装置に導く構成とし、減圧濃縮装置で蒸留水と濃縮液とに分離可能とし、蒸留水は、配管を介して、混床式イオン交換装置に導入可能とし、濃縮液は、晶析装置により減容化を可能とする構成とした六価クロム代替となる処理水の無排水処理装置である。本発明では、第一に、従来の課題を解決し、かつ六価クロム代替となる処理水の無排水処理装置と、その方法を提案できることと、今後の環境維持の見地から、クロム酸法、又はリン酸法による陽極酸化被膜を形成する手法にも対応できる無排水処理装置と、その方法を提案できること等の特徴がある。又は、本発明では、第二に、水洗を一次水洗槽と、二次水洗槽に区別して行うことで、低濃度用二次水洗では、処理水(原水)の内容物の液質を考慮して、四系統のイオン交換通水経路を細分化して、系統毎に個別に、かつ最適な処理をするとともに、各系統のイオン交換樹脂が飽和した際の不純物質が他の工程へ混入する悪影響を抑え得ることと、高濃度用一次水洗では、連続式排水処理を行う構成であって、助剤の添加とpHの調整
により生成された金属水酸化物等のSS物質を(MF膜を用い)、高濃度SS物質と処理水(濾過液)に分離し、この処理水を、二次水洗に利用できること等により、品質向上と水洗処理の効率化・簡略化等が図れる特徴がある。
【0027】
請求項の発明では、表面処理排水を貯留する高濃度用一次処理水貯留槽と、低濃度用二次処理水貯留槽とに区画し、それぞれ次のルートを介して、六価クロム代替となる処理水の無排水処理方法において、
一次処理水貯留槽に貯留する高濃度処理水を、自然沈下処理槽で生成された上澄み液を、MF膜処理水槽に送り、MF膜処理水槽で、固液分離を介して、重金属水酸化物スラリーとMF膜処理水とに分離し、MF膜処理水を、中間処理水貯留槽に導き、中間処理水貯留槽で、固液分離を介して、脱水汚泥と中間処理水に分離処理し、中間処理水を、逆浸透膜濾過装置(RO膜装置)に導き、逆浸透膜濾過装置で、固液分離を介して、濃縮液と透過水に分離処理し、濃縮液は、減圧濃縮装置に導き、加熱処理し、濃縮液と蒸留水に分離処理し、濃縮液は、晶析装置に導き、晶析装置により空中への蒸気拡散とスラッジの減容化を達成し、また、透過水は、混床式イオン交換装置により塩分除去して一次再生清澄水を生成し、一次再生清澄水を、一次処理水貯留槽にリターンする構成とし、
一方、前記二次処理水貯留槽の低濃度処理水を、少なくとも、アルカリ系排水を処理するアルカリ系イオン交換装置、ホウ酸系排水を処理するホウ酸系イオン交換装置、又はリン酸系排水を処理するリン酸系イオン交換装置、或いはクロム系排水を処理するクロム系イオン交換装置を介して、それぞれ再生純水を生成し、前記二次処理水貯留槽にリターンする構成とした六価クロム代替となる処理水の無排水処理方法であり、請求項1の特徴を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態に係る表面処理工程で発生する処理水の再利用(無排水)を図る無排水処理装置と、その方法に関して説明するに好ましい、一例を示したフローチャート図
図2-1】図1におけるアルカリ系イオン交換設備の一例を示したフローチャート図
図2-2】図1におけるホウ酸系イオン交換設備の一例を示したフローチャート図
図2-3】図1におけるリン酸系イオン交換設備の一例を示したフローチャート図
図2-4】図1におけるクロム系イオン交換設備の一例を示したフローチャート図
図2-5】図1における連続式処理設備の一例を示したフローチャート図
図2-6】図1におけるフィルターブレスによる脱水処理設備の一例を示したフローチャート図
図2-7】図1におけるUV計・活性炭塔の一例を示したフローチャート図
図2-8】図1におけるRO(膜)装置の一例を示したフローチャート図
図2-9】図1における混床式イオン交換装置の一例を示したフローチャート図
図2-10】図1における減圧濃縮装置の一例を示したフローチャート図
図2-11】図1における晶析装置の一例を示したフローチャート図
図2-12】図1におけるザイグロ処理装置の一例を示したフローチャート図
図3】従来の処理水の無排水処理装置の概念を説明する一例のフローチャート図
図4-1】従来の浸透探傷検査で発生する浸透液水洗の排水処理装置と、その方法に関して説明する、前部の一例を示したフローチャート図
図4-2】従来の浸透探傷検査で発生する浸透液水洗の排水処理装置と、その方法に関して説明する、後部の一例を示したフローチャート図
図5】従来の浸透探傷検査で発生する浸透液水洗の排水処理装置の概念を説明する、一例のフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の六価クロム代替となる処理水の無排水処理装置において、好ましい一例を示したフローチャート図である図1を基に説明すると、表面処理排水を貯留する高濃度用一次処理水貯留槽(貯留水洗1)と、低濃度用二次処理水貯留槽(流水洗2)とに区画される。この貯留水洗1と、流水洗2とは、配管3で連通されている。従って、貯留水洗1の上澄み処理水は、流水洗2に導入される(図1参照)。尚、各槽、及び/又は、各装置等間には、配管で接続するが、一部の配管の説明と符号は省略する。
【0035】
一次処理水貯留槽(貯留水洗1)に貯留する高濃度処理水は、自然沈下処理槽(連続式処理設備5で、混合槽500とpH調整槽501、並びに固液分離装置502による分離装置)に配管3a、及び中間処理水貯留槽6を介してMF膜処理装置7に、またMF膜処理装置7(Microfiltration膜処理装置、精密ろ過膜処理装置)から、中間処理水貯留槽8、及び配管3bを介してMF膜処理水槽7aに、それぞれ接続する(図1及び図2−5参照)。このMF膜処理水槽7aは配管3cを介してUV計・活性炭塔10に接続する(図1及び図2−7参照)。このMF膜処理水槽7aと、UV計・活性炭塔10との間に、中間処理水貯留槽8、又は固液分離装置502とMF膜処理水槽7aとの間に、中間処理水貯留槽6を設け、中間処理水貯留槽6、8において、固液分離を介して、脱水汚泥と中間処理水に分離処理する。尚、MF膜処理装置7は、膜孔径の細かい膜(ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride、PVDF)を素材とする公称孔径0.02μmの中空糸膜モジュール)を用いることで高精度にて処理が可能で、後の工程への負荷を減らすことが可能であることと、MF膜に通水する際、前処理(汚泥を事前に自然沈下する前処理)として、自然沈下処理槽による自然沈降にて分離された上澄みを通水することでMF膜に対する負荷を軽減する。また、UV計・活性炭塔10のUV計は、処理水(液中)に存在する有機物を殺菌・分解し、有機物はより活性炭に吸着し易い形状に変換し、効率的な吸着・除去を図る。連続式処理設備5では、原水全量ではなく、上澄液を膜処理にかけることで、MF装置に持ち込まれるSS分を削減し、膜への閉塞要因を減らすことができ、処理量の増加、膜の長寿命化が可能となる。そして、この連続式処理設備5で添加される、例えば、a.助剤は、回分式処理での助剤添加と、b.重亜硫酸ソーダの添加と、c.苛性ソーダの添加と、d.硫酸の添加と、並びにe.高分子凝集剤の添加と、或いは活性炭の添加と、は、従来の例に準ずる。
【0036】
尚、本発明では、従来の課題である、例えば、従来の凝集沈殿+砂濾過の方式を用いるとRO装置前処理としての濾過精度が不十分で微細フロックが流出し、RO装置へ入り込むことで膜の目詰まり等の問題を発生させること、また、多段処理を行うことで設備の設置スペースも増大すること、また凝集沈殿を行う際、高分子凝集剤を用いるため、処理水の粘度が上昇し、後段RO膜透過の弊害となることと、全量濾過をすると水中のSS濃度が高いため、膜にて捕捉される物量が多く膜が閉塞し、処理量の低下、逆洗や薬洗の高頻度化、膜の短命化となること、等の不具合を、前述のごとく、解消した。
【0037】
当該MF膜処理装置7で分離された重金属水酸化物スラリーは、フィルタープレスによる脱水処理設備11に送られる。ここで脱水処理、及び/又は、濾過処理し、脱水汚泥12は、取引業者に渡す(図1及び図2−6参照)。
【0038】
また、前記UV計・活性炭塔10には配管3e、及びRO中間処理水槽13を介してRO膜処理装置14(Reverse Osmosis膜処理装置、逆浸透膜濾過装置)に接続する。このRO膜処理装置14で、中間処理水を、濃縮液と透過水に分離する。濃縮液15は、RO膜処理装置14に、配管3fを介して接続した減圧濃縮装置16に導く構成である(図1図2−8参照)。この減圧濃縮装置16では、蒸留水16aと濃縮液16bとに分離する。減圧濃縮装置16の前後には、濃縮装置原水槽17と中間処理水貯留槽18とを備える。また、クーリングタワー等を備える。減圧濃縮装置16で生成された、蒸留水16aは、配管(図示せず)を介して、接続した混床式イオン交換装置20に導入する。但し、混床式イオン交換装置20の前後には、RO透過水槽21と純水槽22とを備える(図1及び図2−9参照)。一方、濃縮液16bは、RO濃縮水槽23を経由し、かつRO濃縮水槽23で処理した後に、配管3gを介して晶析装置24に送り処理し、乾燥スラッジ25a(減容化)と水蒸気25bとする(図1及び図2−11参照)。前記RO膜処理装置14において、固液分離した処理水の塩濃度が高く、リサイクルができないことに鑑み、脱塩し、水質向上、かつリサイクル対応可能とする。また、RO膜処理装置14に繋がる混床式イオン交換装置20は、RO膜処理装置14にて脱塩処理した処理水を高純度の純水に変換し、純水槽22に貯留する。続いて、減圧濃縮装置16に導き、RO膜処理装置14、及び/又は、混床式イオン交換装置20より発生する濃縮水を滅容化する。即ち、減圧状態で、蒸気を熱源として蒸留し、塩濃度が高くなった濃縮水は、晶析装置24に導く構成である。この晶析装置24では、濃縮液の滅容化とコスト削減を図る。例えば、水蒸気25bを熱源として、熱したディスクに濃縮液を塗布し、蒸散とディスク表面に残留した乾燥スラッジ25aを、スクレーパーで処理し、産業廃棄物とする。
【0039】
この貯留水洗1の流れは、図1に示されているが、下記のようになる。基本ルートが白抜き矢印、MF膜処理装置7から分岐した第2ルートが水玉矢印、RO膜処理装置14から分岐した第3ルートが斜線矢印となる。図中の符号30はリサイクルである。
【0040】
【0041】
二次処理水貯留槽(流水洗2)に貯留する低濃度処理水は、少なくとも、アルカリ系イオン交換設備40(アルカリ系イオン交換装置)、ホウ酸系イオン交換設備41(ホウ酸系イオン交換装置)、リン酸系イオン交換設備42(リン酸系イオン交換装置)、及びクロム系イオン交換設備43(クロム系イオン交換装置)の四系統を介して、再生純水を生成し、再生純水用の配管44を介して、流水洗2にリターンする(図1及び図2−1〜図2−4参照)。アルカリ系イオン交換設備40は、アルカリ系イオン交換塔40a(複数の薬剤処理の塔、以下同じ)と純水槽40bとを備え、この純水槽40bにある純水を、流水洗2に配管40cを利用してリターンする。ホウ酸系イオン交換設備41は、ホウ酸系イオン交換塔41aと純水槽41bとを備え、この純水槽41bにある純水を、流水洗2に配管41cを利用してリターンする。及びリン酸系イオン交換設備42は、リン酸系イオン交換塔42aと純水槽42bとを備え、この純水槽42bにある純水を、流水洗2に配管42cを利用してリターンする。並びにクロム系イオン交換設備43は、クロム系イオン交換塔43aと純水槽43bとを備え、この純水槽43bにある純水を、流水洗2に配管43cを利用してリターンする。原水の内容物の液質を考慮して、本発明では、イオン交換通水経路を四系統に分けることで系統毎に最適な処理をするとともに、イオン交換樹脂が飽和した際の不純物質が他の工程へ混入する影響を抑える。また、前述した、今後の環境維持の見地から、クロム酸法、又はリン酸法による陽極酸化被膜を形成する手法にも、十分、かつ効率的に対応できる無排水処理装置と、その方法を提案できる。この流水洗2の流れは、図1図2−1〜図2−4に示した、流れの中での繰返しで(流水洗2の装置(図示せず)にリターンする)ある。流水洗2の流れは、下記のようになる。
【0042】
【0043】
次に、浸透探傷検査で発生する浸透液(蛍光液、現像(剤))水洗の排水処理装置の説明を、図1図2−12を基にして説明すると、50は浸透液水洗(ザイグロ水洗)の排水槽(浸透液水洗の排水を貯留した原水槽)であり、浸透液水洗の排水が貯留される。浸透液水洗の排水槽50は反応槽51に繋がっており、反応槽51には、スクリューフィーダ52により供給された活性炭53が収容されている。また、この反応槽51は、混合槽54を介して、精密濾過装置(MF膜装置55)に繋がる。このMF膜装置55は、図示しないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を素材とする公称孔径0.1〜0.03μmで、望ましくは、0.02mの中空糸膜モジュール5500を採用し、ケーシング5501内に吊下支持されている。ケーシング5501は、フレーム5502に、障子のように複数本配備されている。このMF膜装置55には、エアが供給され、このエアを利用して中空糸膜モジュール5500に導かれた、反応槽51で処理済の浸透液水洗の排水を、押出し、かつ濾過する。
【0044】
MF膜装置55は、MF処理水槽56、及び/又は、活性炭塔57に繋がっている。そして、このMF処理水槽56では、後述する硫酸、苛性ソーダを添加して処理し、清澄予備水を生成する。また、MF膜装置55は、中間処理槽58を経由してMF濃縮水槽59に繋がり、更に脱水機60に繋がる。脱水機60のフィルタープレスでスラッジの減容化と、図示しない脱水ケーキを作る。
【0045】
前記活性炭塔57には、逆浸透膜原水槽(RO膜原水槽61)が繋がり、RO膜原水槽61には、MF膜装置55で処理された清澄予備水を受入れ、かつ一時的に貯留する。RO膜原水槽61には、逆浸透膜濾過装置(RO膜装置62)に繋がる。このRO膜装置62は、図示しないが、合成高分子系のスパイラル型エレメントでなる逆浸透膜6201を採用し、フレームに、横架状態のように複数本支持したケーシング6200と、ケーシング6200に内蔵した逆浸透膜6201とで構成される。ケーシング6200に導入された清澄予備水を、逆浸透膜6201で濾過し、清澄水を生成する。清澄水は、前記減圧濃縮装置16の濃縮液16bに送り、濃縮液16bの稀釈化、及び/又は、無排水に役立てる。或いは、この清澄水は、中間過程において、RO膜処理水槽63を経由して、RO膜原水槽61にリターンすること、又はラインにリターンすること等も有り得る。
【0046】
続いて、浸透探傷検査で発生する浸透液水洗の排水(廃液)処理方法を説明する。
【0047】
第1工程は、浸透探傷検査で発生した浸透液水洗の排水Xを、浸透液水洗の排水槽50(浸透液水洗の排水を貯留した原水槽)に導く。
【0048】
第2工程は、浸透液水洗の排水槽50の排水Xを、反応槽51に導き、浸透液水洗の排水Xに含まれる有機物、界面活性剤、又は蛍光液、現像(剤)を、反応槽51に添加された活性炭53に吸着して、第1処理水Y1(第1処理原水)を生成する。
【0049】
第3工程は、第1処理水Y1を、反応槽51に第2配管を介して接続した精密濾過装置(MF膜装置55)に導き、このMF膜装置55で、第1処理水Y1(又は、浸透液水洗の排水X)にある有機物、界面活性剤、又は蛍光液、現像(剤)を吸着した活性炭53を回収するとともに、雑菌を分離処理(濾過処理)して、混合槽54に導き第2処理水Y2を生成する。
【0050】
第4工程は、第2処理水Y2をMF膜装置55で分離処理し、例えば、MF処理水槽56に貯留し、第2処理水Y2に、硫酸、並びに苛性ソーダを添加し、後述するRO膜装置62に適したpHに調整しながら、高い清澄度の第3処理水Y3を生成する。本発明では、第2処理水Y2に、硫酸、並びに苛性ソーダを添加する処理方法であって、パック剤を使用しない。pH調整剤の添加量を軽減できること、処理・作業・メンテナンス等の容易化とコストの低廉化に寄与できること、等の実益がある。また、第2処理水Y2は、水質検査により、濃度の高低で、MF処理水槽56、又は後述する第5工程の活性炭塔57のどちらに送るかを決定する。
【0051】
第5工程は、第3処理水Y3を、MF処理水槽56より活性炭塔57に導き、活性炭塔57で分離処理(吸着処理)し、有機物、界面活性剤、又は蛍光液、現像(剤)がなく、かつ雑菌がない第4処理水Y4(清澄予備水)を生成する。活性炭塔57では、第3処理水Y3の色や汚れを、活性炭に吸着させることで、清澄度を確保する。活性炭塔57において、汚染された活性炭は回収し、清掃して再利用、又は廃棄する。
【0052】
第6工程は、MF膜装置55で分離処理した高濃度の第3処理水Y3を、MF処理水槽56に導き、スラッジ成分を濃縮した状態を確保するとともに、脱水機60に対する負荷軽減と、脱水機60等の運転と作業の効率化等を図る。MF膜装置55は、前記中空糸膜モジュール5500を採用し、RO膜装置62の負荷の軽減化と、スラッジの効率的な分離と捕集とが図れる。また細菌除去が図れる。
【0053】
第7工程は、活性炭塔57で分離(吸着)処理した第4処理水Y4を、RO膜装置62に導き、RO膜装置62で処理する。図示しないが、第4処理水Y4を、希釈水として、浸透液水洗の排水槽50に第1リターンすることも有り得る(再利用である。以下同じ)。
【0054】
第8・9工程は、RO膜原水槽61を、RO膜装置62に接続し、第4処理水Y4を、RO膜装置62に入れて、第4処理水Y4中に溶解した成分の浸透圧以上の圧力を逆浸透膜(RO膜)に掛けることで、水だけを膜内部に浸透させ、有機物、界面活性剤、又は蛍光液、現像(剤)成分や塩類を濃縮分離処理(濾過/吸着処理)する。このRO膜装置62で生成された清澄水を、リサイクル(第8工程)、又は放流(第9工程)する。このRO膜装置62では、塩分除去を主眼とし、イオン(塩分)を除去、かつ分離する。即ち、塩分濃度の低下を確保し、シミ発生回避と、リサイクル達成とを図ることで、本来の目的達成が可能となり、また省エネ化、並びにコストの低廉化、及び環境維持等が図れる実益がある。また、第8・9工程で生成された清澄水は、水質状態で、雑菌処理を行う。尚、清澄水は、RO膜装置62に第2リターンすることも有り得る。
【0055】
第10工程は、MF膜装置55より中間処理槽58を経由して、MF濃縮水槽59に導いた高濃度の第5処理水Y5を、脱水機60に導き、スラッジの減容化を達成する。本発明は、高分子凝集剤を使用しないので、脱水機60において、膜の目詰りの頻度が少なく、保守管理と、効率的な実施ができる。脱水機60の膜による濾過性を確保するために、助剤を添加することもあり得る。また、脱水機60で発生した処理水は、図示しないが、RO膜装置62に送り、第4処理水Y4とともに処理する。この脱水機60と、濾過機64とで処理した第6処理水Y6は、希釈水として、浸透液水洗の排水槽50に第3リターンする。
【0056】
以上で説明したように、本発明は、第1リターン〜第3リターン、並びにリサイクル等により、浸透液水洗の排水の略完全なクローズ化(処理水の完全リサイクル化)を達成できる。
【0057】
以上で説明した、六価クロム代替となる処理水の無排水処理装置、及び/又は、浸透探傷検査で発生する浸透液水洗の排水(廃液)処理装置と、その方法の説明等は、好ましい一例を示したものである。従って、前述の条件に、何ら、拘泥される理由はなく、例えば、同様な効果と特徴を発揮できる、他の実施例や、その他の構造・手段は、本発明の範疇である。





【符号の説明】
【0058】
1 貯留水洗(一次水洗)
2 流水洗(二次水洗)
3a〜3g 配管
5 連続式処理設備
6 中間処理水貯留槽
7 MF膜処理装置
7a MF膜処理水槽
8 中間処理水貯留槽
10 UV計・活性炭塔
11 脱水処理設備
12 脱水汚泥
13 RO中間処理水槽
14 RO膜処理装置(逆浸透膜濾過装置)
15 濃縮液
16 減圧濃縮装置
16a 蒸留水
16b 濃縮液
17 濃縮装置原水槽
18 中間処理水貯留槽
20 混床式イオン交換装置
21 RO透過水槽
22 純水槽
23 RO濃縮水槽
24 晶析装置
25a 乾燥スラッジ
25b 水蒸気
30 リサイクル
40 アルカリ系イオン交換設備(アルカリ系イオン交換装置)
40a アルカリ系イオン交換塔
40b 純水槽
40c 配管
41 ホウ酸系イオン交換設備(ホウ酸系イオン交換装置)
41a ホウ酸系イオン交換塔
41b 純水槽
41c 配管
42 リン酸系イオン交換設備(リン酸系イオン交換装置)
42a リン酸系イオン交換塔
42b 純水槽
42c 配管
43 クロム系イオン交換設備(クロム系イオン交換装置)
43a クロム系イオン交換塔
43b 純水槽
43c 配管
50 浸透液水洗の排水槽
51 反応槽
52 スクリューフィーダ
53 活性炭
54 混合槽
55 MF膜装置
500 混合槽
501 pH調整槽
502 固液分離装置
5500 中空糸膜モジュール
5501 ケーシング
5502 フレーム
56 MF処理水槽
57 活性炭塔
58 中間処理槽
59 MF濃縮水槽
60 脱水機
61 RO膜原水槽
62 RO膜装置
6200 ケーシング
6201 逆浸透膜
63 RO膜処理水槽
64 濾過機
X 浸透液水洗の排水
Y1 第1処理水
Y2 第2処理水
Y3 第3処理水
Y4 第4処理水
Y5 第5処理水
Y6 第6処理水
イ 一次処理水貯留槽
イ’ 二次処理水貯留槽
ロ クロム系イオン交換設備
ロ’ アルカリ系イオン交換設備
ハ 水洗槽
ニ、ニ’、ニ’’ リサイクル
ホ 再生設備
ホ’ アルカリ系イオン交換再生廃液
ヘ クロム系イオン交換再生廃液
ト 再生廃液回分式処理設備
チ 減圧濃縮装置
リ 脱水処理設備
001 浸透液水洗の排水槽
001a 浸透液水洗の排水
002 配管
003 吸着槽
004a 活性炭
004b ベントナイト液
005 配管
006 反応槽
006a パック剤
007 調整層
007a 苛性ソーダ
008 凝集層
008a 高分子凝集剤
009 沈殿槽
0010 配管
0011 処理水槽
0012 再利用タンク
0013 配管
0014 脱水機
【要約】
【課題】イオン交換塔が飽和となったとき各工程水洗槽に不純物(他工程成分)が混入する虞と、不純物が表面処理本槽内で規定量以上となると製品に不良が発生するという従来の課題を解決することが可能な六価クロム代替を意図した処理水の無排水処理装置と、その方法を提供する。
【解決手段】六価クロム代替を意図した処理水の無排水処理装置は、水洗を一次水洗槽と、二次水洗槽に区別して行い、低濃度用二次水洗では、処理水(原水)の内容物の液質を考慮し、四系統のイオン交換通水経路を細分化し、系統毎に個別に、かつ最適な処理をする。四系統のイオン交換樹脂の飽和状態でも、不純物質が他の工程への混入することはない。高濃度用一次水洗では、連続式排水処理を行い、助剤の添加とpHの調整で生成された金属水酸化物等のSS物質を(MF膜を用い)、高濃度SS物質と処理水に分離し、処理水を、二次水洗に利用する。
【選択図】図1
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図2-8】
図2-9】
図2-10】
図2-11】
図2-12】
図3
図4-1】
図4-2】
図5