【実施例1】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
図1は回診用X線撮影装置の概略側面図であり、
図2は回診用X線撮影装置の構成を示すブロック図であり、
図3はCPUの制御構成を示すブロック図であり、
図4はモータ駆動回路を示す回路図である。
【0018】
<回診用X線撮影装置>
図1および
図2に示すように、回診用X線撮影装置(以下、撮影装置と称す)1は、X線を照射するX線管2と、X線管2を保持するアーム3と、アーム3を支持しつつ台車4上で旋回可能な支柱5と、旋回自在の前輪5およびかじ取り不能の後輪6とを備え、台車4に取り付けられたハンドル保持台7に設けられたレバーハンドル8を前または後に操作することによって、台車4の下部に設けられた駆動モータ9が回転して前進または後進することができる。駆動モータ9には、ブレーキ機構10が備えられており、ハンドル保持台7に設けられたブレーキレバー11を離していると、ブレーキ機構10から駆動モータ9へブレーキが作動し駆動モータ9が電磁ロックされ、後輪6にブレーキが掛けられる。ブレーキレバー11を握ると、ブレーキ機構10から駆動モータ9へのブレーキが解除され、駆動モータ9の電磁ロックが解除され、後輪6へのブレーキが解除される。後輪6は本発明における車輪に相当し、ブレーキレバー11は本発明におけるブレーキ操作手段に相当する。
【0019】
アーム3にはX線管2の支持機構と回転機構が備えられており、水平方向に伸縮するアーム3は支柱5上をスムースに垂直移動し、バランスが取れる機構に設計され、被検者の撮影部位に応じてあらゆる方向と空間的な位置に、X線管2のコリメータ12(X線放射口)をむけることができる。
【0020】
台車4の後部には固定したかじ取り不能の一対の後輪6が設けられ、台車4の前部には、一対のキャスターすなわち旋回自在の前輪5によって支持されている。また、後輪6と駆動モータ9は左右に独立の制御系統を持ち、後輪6は、台車に装着された駆動モータ9により互いに独立に駆動される。
【0021】
そして、台車4には、自動車用バッテリとインバータで主回路100〜120V、60Hzを内部電源とし、高電圧変圧器とコンデンサとを備えている。その制御回路はソリッドシステム化され、撮影操作は自動プログラム化したワンタッチ式の装置が多く使用されている。
【0022】
また、前輪5および後輪6にはゴムタイヤなどを用い、病室での出入りが自在であるように設計され、その他、カセッテボックス、付属装置を備えている。この撮影装置1は移動型装置として小型・軽量で移動操作性の良いことが重要であり、病院内でベッドルーム、技工室、手術室、小児室、レントゲン室、乳児室、エレベータ等に容易に移動して、手軽に現場でX線撮影用として使用される。
【0023】
レバーハンドル8は比較的堅いが可撓性のあるバネ部材を介して台車4に接続されている。台車4の両側に接続された2個所のバネ部材は、堅い板バネで構成され、そのバネ部材を設けたことにより、レバーハンドル8を押したり引いたりするようなレバーハンドル8に加えられる力に応じて、レバーハンドル8を僅かに前後方向に変位させることができる。レバーハンドル8を前後に操作することで、バネ部材のバネ作用により、レバーハンドル8は比較的容易に変位させることができるとともに、レバーハンドル8を離したとき、中心位置にすばやく復帰させることができる。
【0024】
レバーハンドル8の両端にはレバーハンドル8と共に動く一対の線形磁石がそれぞれ取り付けられている。一方、一対のホール効果センサ13が台車4に取り付けられ、それぞれ対応する磁石に隣接して配置される。
【0025】
ホール効果センサ13が磁石に対して中心位置にあるとき、ホール効果センサ13の出力信号はゼロ・レベルになり、磁石をずらすと、ホール効果センサ13の出力信号は正の最大値と負の最大値の間でほぼ線形に変化する。つまり、ホール効果センサ13は圧力センサとして機能する。
【0026】
センサ信号の符号すなわち極性はレバーハンドル8の変位の方向を表し、センサ信号の大きさは変位量に比例する。このようにして、レバーハンドル8に加わる操作力を電気信号に変換することができる。また、ホール効果センサ13以外の圧力センサを用いて操作力を検出してもよい。ホール効果センサ13は本発明における操作力検出手段に相当する。
【0027】
操作者が台車4のレバーハンドル8を前または後に操作すると、レバーハンドル8の両端に設けられたホール効果センサ13からの操作力信号Ftが左右独立してCPU(Central Processing Unit)15に入力される。なお、操作力信号Ftの左右両系統の信号処理はそれぞれ独立して処理されるが、その処理手順は左右両系統ともに同様であるので、以下右系統の信号処理の説明を省略し、左系統のみを説明する。
【0028】
また、ブレーキレバー11が握られているかどうかの信号もCPU15に入力される。ブレーキレバーが握られている時は、ブレーキ解除の信号がブレーキレバー11からCPU15に送られ、ブレーキレバーが握られていない時は、ブレーキ動作の信号がブレーキレバー11からCPU15に送られる。一方、後輪6の車軸に設けられた駆動モータ9の回転速度Vtを検出するエンコーダ16から、モータ回転速度信号がCPU15に入力される。エンコーダ16はモータの回転速度を検出してもよいし、後輪6の回転速度を検出してもよい。
【0029】
傾斜角度検出部17は、撮影装置1の傾斜角度を検出することができる。傾斜角度検出部17として、ジャイロスコープや重力センサ等を採用することができる。傾斜角度検出部17から、回診用X線撮影装置1の傾斜角度に応じて傾斜信号が傾斜引力算出部18に入力される。傾斜引力算出部18は、入力された傾斜信号より撮影装置1に発生する重力の傾斜方向に平行な成分(以下傾斜引力と称す)を算出し、この傾斜引力の値をCPU15へ送る。
【0030】
次に、CPU15は、ホール効果センサ13からの前進、後退の操作力信号Ftに比例した走行駆動トルクを算出するとともに、傾斜引力算出部から送られた傾斜信号を基に傾斜引力とつり合うつりあいトルクを算出し、両トルクを合算したモータ駆動トルクを算出して、このモータ駆動トルクをPWM制御回路19へ送る。
【0031】
PWM制御回路19は、CPU15から送られたモータ駆動トルクを基にデューティ比を算出し、算出されたデューティ比のスイッチングパルス信号を生成し、このスイッチングパルス信号をモータ駆動回路20へ送ることで、モータ駆動回路20をPWM制御する。
【0032】
モータ駆動回路20はPWM制御回路19から送られるPWM制御されたスイッチングパルス信号により、駆動モータ9に流れる電流をオン・オフ制御することで駆動モータ9を駆動する。PWM制御回路19とモータ駆動回路20とは、本発明におけるモータ駆動制御回路に相当し、駆動モータ9は本発明におけるモータに相当する。
【0033】
こうして回転する駆動モータ9の回転速度Vtをエンコーダ16が検出し、そのモータ回転速度信号が再びCPU15に入力される。回転速度Vtがレバーハンドル8からの操作力信号Ftに対する所定の回転数よりも低ければ、より大きい走行トルクを算出する。また、所定の回転数よりも高ければ走行トルクを減少させて帰還制御する。CPU15は、それに対応したモータ駆動トルクをPWM制御回路19に入力し、PWM制御回路19はCPU15から送られたモータ駆動トルクに従ってデューティ比を調節してモータ駆動回路20をPWM制御し、モータ駆動回路20は駆動モータ9の回転速度Vを制御するものである。次に各構成部について詳細に説明する。
【0034】
<CPU>
CPU15は、回診用X線撮影装置1の傾斜状態に応じて、傾斜引力とつり合うトルク力を算出する。
図3に示すように、傾斜引力算出部18から送られた傾斜引力の値から、つり合いトルク算出部23では、その傾斜引力とつりあう、つりあいトルクT
Eを算出する。つり合いトルク算出部23で算出されたつりあいトルクT
Eはモータ駆動トルク算出部24へ転送される。
【0035】
また、ホール効果センサ13からのセンサ信号により、走行トルク算出部25は、レバーハンドル8の変位に比例したセンサ信号の信号値の強度に応じた走行トルクT
Rを算出する。つまり、信号値の強度が大きいほど走行トルクT
Rは大きいトルク値として算出される。算出された走行トルクT
Rはモータ駆動トルク算出部24へ転送される。
【0036】
モータ駆動トルク算出部24では、ブレーキレバー11からのブレーキ解除の信号が転送されると、つり合いトルクT
Eと走行トルクT
Rとを加算したモータ駆動トルクT
Mを算出する。操作者がブレーキレバー11を握った直後であれば、レバーハンドル8が前又は後に移動されておらずホール効果センサ13からのセンサ信号はゼロであるので、つり合いトルクT
Eだけがモータ駆動トルク算出部24に転送される。これより、モータ駆動トルクT
Mとしてつり合いトルクT
Eが算出される。
【0037】
しばらくして、操作者がレバーハンドル8を前または後に操作すると、つり合いトルクT
Eと走行トルクT
Rとがモータ駆動トルク算出部24に転送されるので、モータ駆動トルクT
Mはつり合いトルクT
Eと走行トルクT
Rとを加算した値となる。このようにして算出されたモータ駆動トルクT
MはPWM制御回路19へ転送される。
【0038】
また、坂道を下る走行時には、CPU15は撮影装置1の走行速度を監視しつつ、予め定められた速度制限を超えた場合には、制限速度で走行するように駆動モータ9を逆駆動するトルクを算出する。
【0039】
駆動モータ9と同軸に設けられたエンコーダ16からの駆動モータ9の回転速度信号は、CPU15内の走行速度算出部31に転送される。走行速度算出部31は、エンコーダ16から送られる駆動モータ9の回転速度と、後輪6の外径より撮影装置1の走行速度を算出する。この算出された走行速度は速度制限判別部32へ送られる。
【0040】
速度制限判別部32では、算出された速度が予め設定された速度を超えるか超えないかの判別を行う。走行速度算出部31で算出された撮影装置1の速度が予め設定された速度、例えば2.5km/h以下である場合には、速度制限判別部31はモータ逆駆動トルク算出部31に対してなにも作動しない。しかしながら、走行速度算出部31で算出された撮影装置1の速度が予め設定された速度(2.5km/h)を超えている場合には、速度制限判別部31は、モータ逆駆動トルク算出部33に対して速度制限の指示を送る。この際、速度制限判別部31は、速度制限の指示を送るとともに、撮影装置1の制限速度に対しての速度超過分をデータとして転送する。
【0041】
モータ逆駆動トルク算出部33では、予め設定された速度未満になるように駆動モータ9に逆回転のトルクを発生させる逆回転トルクT
Vを、速度制限判別部31から送られてきた速度超過分のデータを基に算出する。モータ逆駆動トルク算出部33は、駆動モータ9に逆回転のトルクが発生するように、PWM制御回路に対して駆動モータ9に制動電流が流れるように指示してもよいし、駆動モータ9に逆電圧を負荷するように指示してもよい。
【0042】
<PWM制御回路>
PWM制御回路19は、CPU15から送られるモータ駆動トルクT
Mまたは逆回転トルクT
Vからモータ駆動回路20へ流す電流のオン・オフ制御するデューティ比を算出し、スイッチングパルス信号をモータ駆動回路20へ転送する。
【0043】
<モータ駆動回路>
モータ駆動回路20は、例えば、
図4に示すように、直流定電圧が出力される直流電源Vと、供給される電流により装置を走行させる駆動モータ9と、FETトランジスタ等のスイッチング素子SW1〜SW4で構成されたHブリッジ回路と、各スイッチング素子SW1〜SW4と並列に接続されたダイオードD1〜D4と、各スイッチング素子SW1〜SW4をオン、オフするためのスイッチング素子駆動回路28とを備える。
【0044】
スイッチング素子SW1とSW2とは、両端が直流電源Vと接続された通電線29に直列に接続されており、スイッチング素子SW3とSW4とは、両端が直流電源Vと接続された通電線30に直列に接続されている。すなわち、通電線29と通電線30とは互いに並列に接続されている。また、駆動モータ9は、通電線29のスイッチング素子SW1とSW2との間、並びに通電線30のスイッチング素子SW3とSW4との間に接続されている。
【0045】
このH型ブリッジ回路によれば、スイッチング素子SW1をオン状態、SW2とSW3とをオフ状態にして、SW4をPWM制御すれば、駆動モータ9を正転駆動することができる。また、スイッチング素子SW3をオン状態、SW1とSW4とをオフ状態にしてSW2をPWM制御すれば、駆動モータ9を逆転駆動することができる。
【0046】
モータ駆動回路20内のスイッチング素子駆動回路28には、PWM制御回路19からスイッチングパルス信号が送られる。このスイッチングパルス信号に基づいてスイッチング素子駆動回路28から駆動信号が発せられてスイッチング素子SW1とSW4とがオン・オフ制御される。スイッチング素子SW1とSW4とがオン状態のときに、直流電源V、スイッチング素子SW1、モータ11、スイッチング素子SW4とで閉回路が形成されるのでモータの駆動電流Iaが流れて駆動モータ9が正回転して回診用X線撮影装置1が前方向へ加速する。
【0047】
一方、回診用X線撮影装置1を後方へ走行させたい場合には、同様に、レバーハンドル8を後ろへ操作すると、スイッチング素子駆動回路28から駆動信号が発せられてスイッチング素子SW2とSW3とがオン状態、SW1とSW4とがオフ状態となり、上記駆動電流Iaとは逆方向の駆動電流が流れて駆動モータ9が逆回転して回診用X線撮影装置1が後方へ移動する。
【0048】
次に、坂道において撮影装置1が発進する場合を説明する。
まず、撮影装置1がブレーキ機構10により駆動モータ9に電磁ロックが掛けられて停止している時に、傾斜引力算出部18から撮影装置1の傾斜角度における傾斜引力がつり合いトルク算出部23に転送され、つり合いトルク算出部23はこの傾斜引力とつりあうつり合いトルクT
Eを算出し、モータ駆動トルク算出部24へつり合いトルクT
Eを転送する。撮影装置1は停止しており、レバーハンドル8は中心位置にあるので、ホール効果センサ13から走行トルク算出部25へ送られる信号はゼロである。これより、撮影装置1が停止している場合、モータ駆動トルク算出部24で算出されるモータ駆動トルクT
Mは、つり合いトルクT
Eと同じ値である。
【0049】
撮影装置1を移動する時には、操作者はまずブレーキレバー11をレバーハンドル8と共に握るので、駆動モータ9に掛けられていたブレーキ機構10による電磁ロックが解除される。電磁ロックが解除されると、撮影装置1に作用する傾斜引力により、傾斜を下りる方向に撮影装置1が加速しようとする。しかしながら、ブレーキレバー11が握られると、直ちに、ブレーキレバー11よりモータ駆動トルク算出部24へブレーキ解除の信号が転送される。モータ駆動トルク算出部24は、このブレーキ解除の信号を受信すると、既に算出したモータ駆動トルクT
MをPWM制御回路19へ転送する。
【0050】
PWM制御回路19は、転送されたモータ駆動トルクT
Mすなわちつり合いトルクT
Eを発生させるためのデューティ比のスイッチングパルス信号にてモータ駆動回路20に流れる駆動電流IaをPWM制御する。これより、駆動モータ9につり合いトルクT
Eが発生し、撮影装置1は、モータ駆動力により傾斜引力とは逆向きにトルクが発生し、ブレーキが解除されても坂道上で停止状態を維持することができる。
【0051】
その後、操作者がレバーハンドル8を前または後ろへ倒すと、レバーハンドル8が変位した量をホール効果センサ13が検出し、その検出信号の強さに応じて走行トルク算出部25は走行トルクT
Rを算出する。算出された走行トルクT
Rはモータ駆動トルク算出部24にてつり合いトルクT
Eと加算され、モータ駆動トルクT
Mが算出される。
【0052】
坂道を上る方向であれば、つり合いトルクT
Eと走行トルクT
Rとは同じ向きであるので、単純に両トルクの大きさを加算したトルクがモータ駆動トルクT
Mとなる。坂道を下る方向であれば、つり合いトルクT
Eと走行トルクT
Rとは逆向きになるので、両トルクを加算しても、つり合いトルクT
Eの大きさと走行トルクT
Rの大きさとの大小関係で、モータ駆動トルクT
Mの向きがかわる。
【0053】
坂道を撮影装置1を操作者が引きながら下りる際に、
図5に示すように、走行トルク|T
R|>つり合いトルク|T
E|の場合、モータ駆動トルクT
Mの大きさは、(走行トルク|T
R|−つり合いトルク|T
E|)として算出される。つまり、走行トルクT
Rとして傾斜引力Mgsinθを利用することでモータの駆動力を抑えることができ、バッテリの消耗を防ぐことができる。また、滑らかな加速の走行をすることができる。なお、坂道を操作者が撮影装置1を押して下りる場合も同様である。
【0054】
また、坂道を撮影装置1を操作者が引きながら下りる際に、
図6に示すように、走行トルク|T
R|<つり合いトルク|T
E|の場合、モータ駆動トルクT
Mの大きさは、(つり合いトルク|T
E|−走行トルク|T
R|)として算出される。つまり、傾斜引力に対して、モータ駆動トルクT
Mの分だけ逆トルクを駆動モータ9に掛けながら坂道を下りる。これより、撮影装置1が急加速するのを防ぐことができる。なお、坂道を操作者が撮影装置1を押して下りる場合も同様である。
【0055】
次に、坂道を下りる方向へ走行中に撮影装置1の速度が上がり、予め定められた制限速度に達した場合、撮影装置1は駆動モータ9に強制的に逆回転トルクを発生させるので、撮影装置1にブレーキが作動する。以下、このブレーキ作動について説明する。
【0056】
まず、
図3に示すように、撮影装置1が走行中には、エンコーダ16より駆動モータ9のモータ回転数がCPU15内の走行速度算出部31に転送される。走行速度算出部31では、モータ回転数と予め入力された後輪6の外径より、撮影装置1の走行速度を算出する。算出された走行速度は速度制限判別部32へ転送される。
【0057】
速度制限判別部32では、転送された走行速度が予め設定された制限速度を超えるか超えないかの監視をする。走行速度が制限速度を超えたことを判別すると、走行速度と制限速度との差をモータ逆駆動トルク算出部33へ転送する。
【0058】
モータ逆駆動トルク算出部33は、走行速度と制限速度との差が転送されると、モータ駆動トルク算出部24からPWM制御回路19へのモータ駆動トルクT
Mの転送を中止させる。さらに、走行速度と制限速度との差の分だけ撮影装置1を減速するための逆回転トルクT
Vを算出する。算出した逆回転トルクT
VはPWM制御回路19へ転送される。PWM制御回路19は、逆回転トルクT
Vに基づいてモータ駆動回路20をPWM制御することで、駆動モータ9に逆回転トルクT
Vが発生し、制限速度内で撮影装置1を走行することができる。
【0059】
モータ逆駆動トルク算出部33からPWM制御回路19へ逆回転トルクT
Vが転送されている間は、モータ駆動トルク算出部24からPWM制御回路19へのモータ駆動トルクT
Mの転送が中止されているので、操作者が、たとえレバーハンドル8を坂を下りる方向に倒していたとしても、駆動モータ9に逆回転トルクを発生させることができる。これより、操作者が慌ててレバーハンドル8を間違って操作したとしても、撮影装置1は減速されるので、安全に坂道を下りることができる。
【0060】
このように、実施例1の撮影装置1によれば、坂道においてブレーキレバー11を握ることで駆動モータ9への電磁ロックが解除された直後に、駆動モータ9に傾斜引力とつりあう、つり合いトルクT
Eが発生するので、静止状態を維持することができる。これより、撮影装置1が操作者に接近して巻き込んだり、操作者を引っ張って加速しだすことがないので、操作者は撮影装置1と適切な距離を保つことができ安心して操作することができる。
【0061】
また、撮影装置1が坂道を走行しているときは、レバーハンドル8の操作により算出された走行トルクをそのままモータ駆動トルクとして駆動モータ9を駆動しないで、装置1に発生する傾斜引力とつりあう、つり合いトルクに走行トルクを加算することで、急加速するのを防ぐことができる。また、走行トルクとして傾斜引力を利用することもできるので、バッテリの負担を軽減することができる。
【0062】
さらに、坂道を下りる方向へ走行中に、撮影装置1が予め設定された制限速度を超えた場合においても、速度制限判別部32が走行速度が制限速度を超えたことは判別し、モータ逆駆動トルク算出部33により、モータ逆駆動トルク算出部33が制限速度内で走行するために必要な逆トルクを算出して、PWM制御回路19がこの逆トルクを駆動モータ9に発生させるようにモータ駆動回路20をPWM制御するので、撮影装置1は制限速度内で走行することができる。これより、不用意に撮影装置1と操作者とが接近または離れることがないので、安心して走行することができる。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0064】
(1)上述した実施例では、制限速度は予め設定された速度であったが、操作者が好む制限速度を設定できる構成でもよい。これより、体格の異なる操作者のそれぞれに適した走行速度で撮影装置を走行することができる。
【0065】
(2)上述した実施例では、モータ駆動回路20はH型のブリッジ回路であったがこれに限らず、ハーフ型ブリッジ回路など、他の回路構成でもよい。
【0066】
(3)上述した実施例では、PWM制御をすることで、スイッチング素子のオン・オフ制御を実施していたが、これに限らず、PNM(Pulse Number Modulation)制御することで、スイッチング素子のオン・オフ制御をしてもよい。
【0067】
(4)上述した実施例では、スイッチング素子のオン・オフ制御をPWM制御することで駆動モータ9のトルク出力を調節していたが、これに限らず、電源電圧の直流電圧の出力をPAM(Pulse Amplitude Modulation)制御することで、駆動モータ9のトルク出力を調節してもよい。