(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の先行技術の不利益を低減する光学顕微鏡システムおよびOCTシステムを一体化した顕微鏡システムを提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、光学顕微鏡システムおよびOCTシステムを組合せた顕微鏡システムであって、光学顕微鏡システムの機能および性能がOCTシステムの存在によって損われず、その逆も同様である顕微鏡システムを提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、物体から戻った波面測定光の波面の顕微鏡診断、OCTおよび測定を可能とする光学システムを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、眼科手術に特に適切な外科用顕微鏡システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、上記の問題を考慮して実現された。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、光コヒーレンス断層法(OCT)機構を有する外科用顕微鏡システムが提供される。当該システムは、第1の物体領域の画像を生成するための顕微鏡光学素子を含む。顕微鏡光学素子は対物レンズを含む。外科用顕微鏡システムはさらに、OCTビーム経路をもたらし、OCT測定光源と、反射器と、OCT測定光源および反射器の間に配置された投影光学素子と、OCT測定光源および投影光学素子の間に配置されたビームスキャナとを含むOCTシステムを含む。反射器は、投影光学素子から供給されるOCT測定光ビームが対物レンズを横断し第1の物体領域上に照射されるように構成かつ配置される。投影光学素子は、ビームスキャナ付近に位置する第2の物体領域が反射器付近に位置する画像領域に光学的に投影されるように構成かつ配置される。
【0015】
第1の物体領域は、顕微鏡光学素子の物体面に位置し得る。顕微鏡光学素子は、照射された第1の物体領域からの光を受けて第1の物体領域を投影するように配置される。顕微鏡光学素子は、複数の屈折および/または偏向光学要素を含み得る。顕微鏡光学素子は、立体光学投影に適合し得る。顕微鏡光学素子はさらに、第1の物体領域の画像を取得するためのカメラを含み得る。当該カメラによって取得された画像は、モニターまたはヘッド
マウントディスプレイなどのディスプレイ上に表示され得る。
【0016】
OCTシステムは、時間領域OCTシステム(TD−OCT)または周波数領域OCTシステム(FD−OCT)であり得る。どちらの種類も時間符号化されたサブタイプおよび空間符号化されたサブタイプを有し、深さ走査は、経時的に連続して行われるか、または空間解像検出器を用いて同時に行われる。これらの異なる変形のすべてを本発明の実施形態で使用することができる。OCTシステムの種類およびサブタイプに依存して、OCTシステムに含まれる部品の数および構成は異なり得る。TD−OCTシステムの場合、測定光源は、用途に応じて数μmの可干渉距離を有するOCT測定光を生成するように設けられた広帯域OCT光源を含む。同じまたは同様のOCT測定光源が、FD−OCTシステムのサブタイプ、つまりフーリエ領域OCTにおいて採用され得る。物体において反射され基準光に重畳されたOCT測定光はスペクトル的に分離され、重畳された光のスペクトルを得る。このようにして得られたスペクトルのフーリエ変換を算出することによって、物体内の異なる深さにおける構造的情報を得ることができる。FD−OCTの別のサブタイプ、つまり掃引源OCTの場合、OCT測定光源は、調整可能レーザなどの波長調整可能光源を含む。他の部品も変更され得る。
【0017】
ビームスキャナは、好ましくは互いに垂直な異なる方向に向けられた軸について回転可能な1つ以上の偏向要素を含み得る。
【0018】
反射器は、鏡および/またはプリズム、特に断面形態が二等辺三角形であるプリズムであり得る。反射器は、OCTシステムのOCT測定光ビームを反射し、対物レンズを横断させ、顕微鏡光学素子によって投影される領域である第1の物体領域に入射させるように機能する。
【0019】
投影光学素子は、第2の物体領域から発せられた光線を、反射器付近に位置する画像領域に誘導して、画像領域におけるこれらの光線の位置が、第2の物体領域から光線が発せられる特定の範囲内の角度に実質的に依存しないように設計される。特に、反射器に入射するビームスキャナによって偏向されるOCT測定光ビームの位置は、OCT測定光ビームが特定の方向範囲内でビームスキャナによって偏向される方向に実質的に依存しない。これによって、反射器を小型化し、顕微鏡光のけられ(口径食:vignetting)を減少させることができる。したがって、顕微鏡光学素子のビーム経路およびOCTシステムのビーム経路の擾乱を減少させることができる。
【0020】
本発明の実施形態によれば、当該システムは、OCT光源と投影光学素子との間のビーム経路に配置されたコリメーティング光学素子をさらに含む。コリメーティング光学素子は、屈折要素、たとえばレンズ、および/または偏向要素、たとえば格子を含み得る。
【0021】
OCT光源と投影光学素子との間には、コリメーティング光学素子およびビームスキャナの両方が配置される。これらの部品は、OCT光源、コリメーティング光学素子、ビームスキャナおよび投影光学素子の順序で配置され得る。他の実施形態では、これらの部品は、OCT光源、ビームスキャナ、コリメーティング光学素子、および投影光学素子の順序で配置される。したがって、ビームスキャナおよびコリメーティング光学素子の位置は、用途の要件に従って入換え得る。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、反射器の中心は画像領域に配置され、ビームスキャナの少なくとも1つの偏向面は、画像領域に光学的に対応する第2の物体領域から距離d
1離間して配置され、d
1=A/β
2かつ0mm≦A≦200mmの関係が成立し、βは投影光学素子の倍率である。
【0023】
光学要素間、領域間、または領域と光学要素との間の距離は、OCTシステムの光学軸に沿って、たとえばOCTビーム経路に沿って測定される。このような光学軸は、OCTシステムを横断するOCT測定光ビームの中心として規定され得る。したがって、測定距離に関するときは必ず、光学要素の位置は、測定光ビームの中心が光学要素において入射する点であると考えられる。
【0024】
投影光学素子の画像領域を反射器の中心に選択することによって、投影光学素子のパラメータに従って第2の物体領域の配置が規定される。上で規定したように、ビームスキャナの少なくとも1つの偏向面を第2の物体領域から最大で距離d
1離間して配置することにより、偏向された測定光ビームが反射器の反射部分から最大で距離A離間した位置に投影光学素子によって確実に投影される。倍率βは、投影光学素子のパラメータ、たとえば投影光学素子を構成するレンズの焦点距離から得られる。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、A≦160mm、特にA≦120mm、さらに特にA≦100mmである。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、投影光学素子の倍率βは変更可能である。したがって、第1の顕微鏡光学素子を第2の顕微鏡光学素子で置換するなどによって顕微鏡光学素子の光学パラメータを変更すると、投影光学素子の倍率を調整することによって、OCTシステムの横方向解像度が変化しないように第1の物体領域におけるOCT測定光ビームのスポットサイズを維持することが可能となる。
【0027】
代替的に、顕微鏡光学素子が変化しない場合は、投影光学素子の倍率を調整することによって、OCTシステムの横方向解像度を変化させるために第1の物体領域におけるOCT測定光ビームのスポットサイズを変更することが可能である。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、投影光学素子は無限焦点システムを含む。一般に、無限焦点システムは、無限焦点システムを横断する平行光線を合焦させないが、横断する平行光線ビームの断面寸法を変更し得るシステムである。無限焦点システムは、コリメーティング光学素子によって形成されたOCT測定光ビームが平行光線のバンドルからなる場合、特に有用である。この場合、ビームスキャナによって偏向されたOCT測定光ビームは、平行光線のバンドルとして投影光学素子、すなわち無限焦点システムに入射する。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、投影光学素子はケプラー式望遠鏡である。ケプラー式望遠鏡は、正の屈折力を有する2つのレンズまたはレンズ群からなり、両方のレンズ間の距離は、それらの焦点距離の合計と実質的に一致する。ケプラー式望遠鏡は、第1のレンズの焦点面内に配置された物体を、第2のレンズの焦点面内の画像領域に投影し得る。しかし物体または画像面は、レンズの焦点面と合致する必要はない。光学設計の教科書から周知のように、物体面が第1のレンズの焦点面から第1の距離離れるように動かされると、画像領域も、第1の距離とケプラー式望遠鏡の倍率とに基づいて導出され得る第2の距離だけ第2のレンズの焦点面から離れるように移動する。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、ビームスキャナは、異なる2方向に独立して旋回可能な偏向面を含み、A≦50mmである。このように設けることによって、ビームスキャナはいわゆる三次元スキャナとして構成される。OCT測定光ビームの走査中に反射器におけるOCT測定光ビームの入射位置の移動を抑えるために、この種のビームスキャナを第2の物体領域により近く配置することが有利である。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、ビームスキャナは、偏向面に平行な2本の走査軸について独立して旋回可能な偏向面を含み、2本の走査軸は互いに横切り、特に直交し、A≦5
0mmである。これによって、特定の単純な三次元スキャナが提供される。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、ビームスキャナは、互いにある距離だけ離間して配置された2つの偏向面を含み、偏向面は互いに独立して旋回可能であり、両方の偏向面について、d
1≧4mm/βが成立する。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、ビームスキャナは、第1の偏向面および第2の偏向面を含み、第1の偏向面は、第1の偏向面に平行な第1の走査軸について旋回可能であり、第2の偏向面は、第2の偏向面に平行な第2の走査軸について旋回可能であり、第1の走査軸および第2の走査軸は互いに横切り、特に直交し、両方の偏向面について、d
1≧4mm/βが成立する。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、顕微鏡光学素子は、顕微鏡光学素子の倍率を変更するためのズームシステムを含む。ズームシステムは、顕微鏡光学素子の対物レンズの下流に配置され得る。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、OCTシステムのOCTビーム経路はズームシステムの外側にある。特に、OCTシステムのOCT測定光ビームはズームシステムを横断しない場合がある。したがって、OCTシステムの性能および機能性は影響を受けず、よって顕微鏡光学素子に含まれるズームシステムの倍率を変更しても損なわれない。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、外科用顕微鏡システムは、患者の眼球の網膜を検査するための眼科用レンズを含む。
【0037】
反射器の有効直径は、コリメーティング光学素子および投影光学素子のパラメータから計算され得るが、ビームスキャナに含まれる走査鏡の回転角度に実質的に依存しない場合がある。光学要素の有効直径は一般に、断面のある平面に垂直な対応する光学要素を入射光が横断できるようにする対応する要素の断面領域の直径によって規定され得る。
【0038】
一実施形態によれば、外科用顕微鏡システムは、波面測定光入口と、波面センサ投影レンズとを有する波面センサをさらに含み、波面測定光のビーム経路は対物レンズと投影光学素子と波面センサ投影レンズとを横断し、第1の物体領域が波面センサの波面測定光入口に投影される。
【0039】
波面センサは、波面測定光入口において波面センサに入射する波面測定光の波面形状を特徴付けるための装置である。波面センサの一例は、ハートマンシャックセンサ(Hartmann−Shack−sensor)である。ハートマンシャックセンサは、マイクロレンズアレイと、マイクロレンズアレイの焦点面内に配置された位置解像光検出器とを含む。マイクロレンズアレイは、ある面内に並べて配置された複数のマイクロレンズを含む。マイクロレンズアレイの面は、ハートマンシャックセンサの波面測定光入口に対応する。マイクロレンズアレイの各マイクロレンズは、正の光学力を有し、波面センサに入射する波面測定光の一部分を位置解像検出器におけるある場所に合焦させる。位置解像検出器における当該場所の位置は、この特定のマイクロレンズを横断する波面測定光の部分の波面の傾きに依存する。他方のマイクロレンズは同様に、波面センサに入射する波面測定光の他の部分を位置解像検出器における他の場所に合焦させる。
【0040】
当該場所の位置は、当該分野で知られている画像処理によって決定され得る。波面測定光の決定された合焦部分の位置から、波面センサの波面測定光入口における波面の複数の傾きが導出され得る。導出された複数の傾きから、波面測定光入口において波面センサに入射する波面測定光の波面形状を決定することができる。
【0041】
ハートマンシャックセンサを使用する代わりに、他の種類の波面センサ、たとえば波面曲率センサ、共通経路干渉計、共有干渉計等を採用し得る。
【0042】
波面測定光が対物レンズと投影光学素子と波面センサ投影レンズとを横断することによって、第1の物体領域が波面センサの波面測定光入口に投影される。したがって、第1の物体領域における波面測定光の波面形状を、波面測定光入口において波面センサに入射する波面測定光の波面形状から推定することができる。これによって、波面センサの波面測定光入口は、波面センサ投影レンズの焦点面内に配置され得る。
【0043】
一実施形態によれば、外科用顕微鏡システムは、波面センサと波面センサ投影レンズとを投影光学素子に対して移動させるためのアクチュエータをさらに含む。第1の物体領域における波面測定光の波面形状が実質的に球面であるとき、波面センサを波面センサ投影レンズとともに投影光学素子に対して移動させることによって、波面測定光の波面形状の球面部が補償され得る。したがって、波面センサ光入口において入射する波面測定光の形状がほぼ平面となるようにたとえば1m好ましくは5mの大きな曲率半径を有するほぼ球面であるように、波面センサおよび波面センサ投影レンズのアセンブリと投影光学素子との間の距離が調整され得る。波面センサと波面センサ投影レンズとを投影光学素子に対して移動させる機会によって、波面測定のためのシステムのダイナミックレンジが増大し得る。
【0044】
一実施形態によれば、外科用顕微鏡システムは、波面測定光を生成するための波面測定光源と、波面測定光源および波面センサ光入口の間の波面測定光のビーム経路に配置された部分反射面とをさらに含む。さらに、部分反射面は、波面センサ投影レンズと波面測定光光源との間に配置され得る。さらに部分反射面は、波面センサ投影レンズと波面センサの波面測定光入口との間に配置され得る。波面測定光は、波面測定光入口に入る前に部分反射面を通過し得る、または部分反射面において反射され得る。波面測定光源から生じた波面測定光は、波面センサ投影レンズを横断する前に部分反射面を通過し得る、または部分反射面において反射され得る。
【0045】
一実施形態によれば、波面測定光は第1の波長範囲に波長を有し、OCT測定光は第2の波長範囲に波長を有する。第1の波長範囲は第2の波長範囲とは異なり得る。第1の波長範囲および第2の波長範囲は重複し得る。好ましくは重複しない。
【0046】
一実施形態によれば、波面測定光およびOCT測定光のうちの一方は、800nmから870nmの範囲、特に820nmから840nmの範囲と、1280nmから1340nmの範囲、特に1300nmから1320nmの範囲とのうちの一方に波長を有する。さらに、波面測定光およびOCT測定光のうちの他方は、800nmから870nmの範囲と、1280nmから1340nmの範囲とのうちの他方に波長を有する。
【0047】
一実施形態によれば、外科用顕微鏡システムは、波面センサ投影レンズおよび投影光学素子の間の波面測定光のビーム経路に配置された二色ビームスプリッタをさらに含む。特に、二色ビームスプリッタは、800nmから870nmの波長範囲において選択的に光を通過させ、1280nmから1340nmの波長範囲において選択的に光を反射するように構成され得る、または800nmから870nmの波長範囲において選択的に光を反射し、1280nmから1340nmの波長範囲において選択的に光を通過させるように構成され得る。
【0048】
外科用顕微鏡システムには、患者の眼球の異なる部分を解析するように設計された追加的な部品が設けられ得る。これらの部品は、患者の眼球付近に配置される眼科用レンズと
、眼科用レンズおよび顕微鏡光学素子の対物レンズの間に配置される縮小レンズとを含み得る。これらの追加的な部品によって、患者の眼球の後部を検査することが可能である。一方、これらの部品を顕微鏡光学素子のビーム経路から後退させた状態で、患者の眼球の前部を視覚化し、解析することができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
例示的な実施形態の詳細な説明
以下に記載する例示的な実施形態において、機能および構造が同じ構成要素は、可能な限り同じ参照符号によって示される。したがって、具体的な実施形態の個々の構成要素の特徴を理解するため、他の実施形態および発明の概要の記載を参照されたい。
【0051】
図1は、本発明に係る外科用顕微鏡システム100を概略的に示す。外科用顕微鏡システム100は、顕微鏡光学素子110およびOCTシステム120からなる。
【0052】
顕微鏡光学素子110は、顕微鏡システムのユーザの左眼22aの網膜と右眼22bの網膜とに、第1の物体領域14、この場合は患者の眼球8の網膜を投影する。この目的のため、図示しない照射光源によって生成される照射光で患者の眼球8が照射される。用途によって、照射光源はキセノン光源またはハロゲン光源等であり得る。第1の物体領域14から発せられる光は、患者の眼球のレンズ8′を横断し、眼科用レンズ7を横断し、中間画像面17において中間画像を形成する。中間画像面17の中間画像から発せられた光18は縮小レンズ6を横断し、対物レンズ5を介して進行する。対物レンズの下流には平行光ビーム19が形成され、2本の管、左ズームシステム20および左接眼レンズシステム21を含む左側の管と、右ズームシステム20′および右接眼レンズシステム21′を含む右側の管とに別個に誘導される。したがって、左側のビーム19はユーザの左眼22に入り、右側のビーム19′はユーザの右眼22′に入る。参照符号17は、顕微鏡光学素子110の光学軸を示す。
【0053】
OCTシステム120は、OCT測定光ビーム13を生成し誘導するための部品と、基準ビームを生成し物体8から反射されたビーム13
2に基準ビームを干渉的に重畳するための部品と、重畳された光ビームを検出するための部品とを含む。
【0054】
OCT測定光源は、ピーク波長がλ=840nmである広いスペクトル波長範囲におけるOCT測定光を生成する。OCT測定光はファイバ23を介して誘導され、ファイバチップ1によって発せられる。OCT測定光は、ガウス型ビームによって形成される。ファイバチップ後方のガウス型ビームの分散は、θ=0.107radである。ファイバチッ
プ1によって発せられるOCT測定光はコリメーティング光学素子4を横断し、実質的に平行なOCT測定光ビーム13を形成する。OCT測定光ビーム13はその後、第1の走査鏡2によって偏向され、OCT測定光ビーム13を第2の走査鏡3に向かって偏向させる。走査鏡同士の距離は、例示される実施形態では8mmである。本発明の他の実施形態では、OCT測定光ビームはまず2つの走査鏡2および3を横断し、次にコリメーティング光学素子4を横断する。
【0055】
図面が不明瞭とならないように、ファイバチップ1、コリメーティング光学素子4および走査鏡2は、
図1および
図3において正確に図示されていない。それらの適切な配向は、両方の走査鏡2および3の間の接続線について
図1および
図3の紙面から外に90°回転させることによって得られる。紙面から外に90°回転させた走査鏡2は、
図1において水平に配向される紙面における軸について回転可能である。これに対し、走査鏡3は紙面に垂直な軸について回転可能である。したがって、走査鏡2および3の2本の回転軸は、互いに垂直に配向される。
【0056】
走査鏡2および3によって偏向されたOCT測定光ビーム13は、投影光学素子29を横断する。投影光学素子29は、焦点距離の合計分の距離だけ離間されている第1のレンズ群9および第2のレンズ群11によって構成される。したがって、投影光学素子29はケプラー式望遠鏡として設計される。さらに、OCT測定光ビーム13は、反射器12において反射され、顕微鏡光学素子110の対物レンズ5、縮小レンズ6、眼科用レンズ7および人間の眼球8の自然レンズを横断し、眼球8の後部に位置する第1の物体領域14に入射する。
【0057】
他の実施形態において、顕微鏡光学素子110の縮小レンズ6および眼科用レンズ7は、OCTビーム経路および顕微鏡システムのビーム経路から除去される。この場合、たとえば角膜または前眼房が検査できるように、第1の物体領域14は眼球8の前部に配置される。
【0058】
OCT測定光ビームがまず2つの走査鏡2および3を横断し、次にコリメーティング光学素子4を横断する本発明の実施形態においては、コリメーティング光学素子は投影光学素子29の一部と考えることができ、必要とされる投影光学素子と異なる別個のコリメーティング光学素子は存在しない。
【0059】
図1に示す実施形態は、ズーム可能なシステムを提供するようにいくつかの方法で変形することができる。たとえば、コリメーティング光学素子4と走査鏡2および3によって形成されるビームスキャナとの間に、US5,991,090またはDE19837135A1などから公知の無限焦点ズームシステムが配置され得る。レンズ9および11によって構成されるケプラー式望遠鏡を、US5,991,090またはDE19837135A1などから公知の無限焦点ズームシステムで置換することによって、さらなる変形を行うことができる。別のさらなる変形は、コリメータ4を従来の写真撮影技術から公知のズームシステムで置換することを含む。
【0060】
これらの手段によって、OCT測定光ビームのスポットサイズを適宜調節することができる。
【0061】
物体8において異なる深さで反射されたOCT測定光は、眼科用レンズ7、縮小レンズ6、対物レンズ5を横断し、反射器12によって反射され、投影光学素子29を横断し、走査鏡2および3によって偏向され、コリメーティング光学素子4を横断し、ファイバチップ1に入る。したがって、OCTシステム120のプローブアーム35から戻ったOCT測定光ビームは、ファイバ23によってフーリエ領域OCT照射解析システム24に誘
導される。解析システム24において、プローブアーム35から戻った測定光ビームが基準ビームに干渉的に重畳される。重畳された光は、分光器によってある周波数スペクトルに分散される。横方向面内のある領域における物体8の異なる深さ(軸方向)における反射率の分布を、当該スペクトルのフーリエ変換によって得ることができる。
【0062】
横方向面内のある領域にわたって物体の構造的情報を取得するために、横方向面における当該領域内の異なる領域に照射されるように測定光ビーム13を偏向する必要がある。したがって、測定光ビーム13は、走査鏡2および3を用いて物体8を走査する。
【0063】
走査システムの詳細を
図3を参照して例示する。
図3は、
図1に示した外科用顕微鏡システム100の一部を概略的に示す。特に、OCTシステム120のOCTビーム経路は、OCT測定光を発するファイバチップ1から反射器12に至る。反射器12は、顕微鏡光学素子110の対物レンズ5を横断するようにOCT測定光ビームを反射する。ファイバチップ1、コリメーティング光学素子4、走査鏡2および3、レンズ群9、レンズ群11、ならびに反射器12は、面15′における走査鏡2および3の中心間の接続線の中央にある点Mが、画像領域16を含む平面16′において反射器12の中央の点M′にマッピングされるように構成される。
【0064】
図3において、H
9およびH
9′はレンズ群9の主光学面を示し、H
11およびH
11′はレンズ群11の主光学面を示す。OCT走査システムのOCTビーム経路をよりわかりやすく例示するために、異なる3箇所において走査鏡2および3に入射するバンドル13
1、13
2および12
3(各々、走査鏡3の異なる回転配向に対応する5本の光線によって形成される)が
図3に示される。これらのバンドル13
1、13
2および12
3は走査鏡3において偏向され、(レンズ群9および11からなる)投影光学素子を横断し、バンドル13′
1、13′
2および13′
3となる。ビーム反射器12において反射された後、バンドル13′
1、13′
2および13′
3は反射器12の中央の点M′から距離d
2だけ変位させた平面内に位置する画像領域に投影される。特に、走査鏡3の中央の点p3は、反射器12の下流に位置する点p3′に投影される。走査鏡2の中央の同様の点は、反射器12の上流にある点に投影される。
【0065】
レンズ群9および11からなる投影光学素子29は、本実施形態では無限焦点システムを構成する。この無限焦点システム9および11をOCTシステム120のOCTビーム経路に配置することによって、測定光ビーム13′は、走査鏡2および3の一方を回転させた後、反射器12上でΔ=0.8mmより大きくは移動しない。図示される例示的な実施形態において、走査鏡2および3の間の距離は、2*d
1=d
S=8mmである。ケプラー式望遠鏡9および11のfナンバーは、k=5.14である。対物レンズ5、および眼科用レンズ7と縮小レンズ6との組合せ(眼底撮像システムFIS)の倍率は、β
FIS=0.119である。網膜側の眼球の焦点距離はf
eye=22.5mmである。眼球の硝子体液の屈折率はn
vitreous=1.3である。患者の網膜における測定光ビーム13′のウエスト半径はw
retina=8.66μmである。
【0066】
図2において、
図1に示した外科用顕微鏡システム100に含まれるケプラー式望遠鏡が概略的に示される。ケプラー式望遠鏡は、最も単純な場合、正の屈折力を有するレンズ9および11からなる。
図2において、レンズ9の焦点距離はf
9によって示され、レンズ11の焦点距離はf
11によって示される。レンズ9および11は、互いの間の距離が両方のレンズの焦点距離の合計、すなわち当該距離がf
9+f
11となるように配置される。レンズ9の上流においてレンズ9の焦点距離すなわちf
9に相当する距離に配置される物体は、レンズ11の下流においてレンズ11の焦点距離すなわちf
11に相当する距離レンズ11から離間して投影される。物体は、レンズ9からレンズ9の焦点距離f
9よりも大きい距離または小さい距離に配置してもよい。この場合、物体はf
11よりも小さいまたは
大きい距離に配置されるレンズ11の下流の面に投影される。
【0067】
外科用顕微鏡システム100において、対物レンズ5の後方の観測光線経路は平行である。観測画像面はOCT画像の画像面と一致し得る。対物レンズ下流のOCTビーム経路は、ほぼ平行であり得る。
【0068】
走査鏡2および3は、収束するOCTビーム経路ではなく、好ましくは平行なOCTビーム経路に配置される。走査鏡2および3を対物レンズ5の下流にかつごく近接して配置することは不利な場合がある。なぜなら、OCT光学部品は対物レンズのすぐ下流の大きな空間を占有し得、顕微鏡投影に使用される光を遮る可能性があるためである。対物レンズのすぐ下流においてOCT部品が必要とする空間を最小化するために、走査鏡2、3と対物レンズ5との間に配置される無限焦点システムが使用され得る。この無限焦点システムは、走査鏡2および3の中央にある光学軸上の点Mを反射器12の中心にマッピングし得る。したがって、対物レンズ5のすぐ下流においてOCT部品が必要とする空間が最小化され得、走査鏡はOCT測定光の平行なOCTビームに配置され得る。
【0069】
反射器の中心がこの画像に位置決めされ得るため、無限焦点システムは点Mの実像を供給し得る。この特性を実現する最も単純な無限焦点システムは、正の屈折力を有する2つのレンズ9および11からなり、両方のレンズ間の距離がそれらの焦点距離の合計と一致する周知のケプラー式望遠鏡であり得る。
図2は、第1のレンズ9の焦点面を第2のレンズ11の焦点面に投影するケプラー式システムを概略的に示す。もちろん、物体または画像面をレンズの焦点面と合致させる必要はない。光学設計の教科書から周知のように、物体面(
図2の左側)が右または左に距離l
object動かされると、画像面も以下の距離右または左に移動する。
【0071】
ここでβはケプラー式望遠鏡の横方向倍率であり、β
2は対応する縦方向倍率であり、f
9およびf
11は、ケプラー式望遠鏡を構成するレンズ要素の焦点距離である。
【0072】
本発明の他の実施形態における投影光学素子がケプラー式望遠鏡で構成されない場合、倍率βは、投影光学素子の光学的パラメータたとえば焦点距離だけでなく、投影光学素子の主面からの物体の距離および物体の画像にも依存する。しかし、一般的な場合にもl
image=β
2・l
objectの関係が成立する。
【0073】
OCTシステム120において、ファイバチップ1によって発せられるガウス型ビームは14において網膜に投影され、それによってウエストの位置が網膜の位置と合致し得る。網膜におけるOCTシステムの横方向解像度についての通常の測定値は、網膜におけるOCT経路からウエスト半径w
retinaである。しかし、近軸光学レイアウトに関する考慮事項は、網膜におけるビームの発散度と口径が一致する光バンドルでガウス型ビームを置換することによって簡略化され得る。網膜におけるこの光バンドルの開口数NAOは以下によって得られる。
【0075】
ここでは、網膜から出発し開口数NAOを有する光線バンドルを考慮する。眼球の前方の平行な光線バンドルの半径は以下のとおりである。
【0077】
ここでf
eyeは、網膜側の眼球の焦点距離であり、n
vitreousは眼球の硝子体液の屈折率である。
【0078】
対物レンズ5と、縮小レンズ6および眼科用レンズ7からなるFISとの焦点距離は、特定用途向けの制約によって与えられると考えられる。これらの3つの部品は、ケプラー式望遠鏡の第2のレンズ群11と対物レンズ5との間において、患者の眼球の前方の半径r
eyeを有する平行な光線バンドルを以下の半径を有する平行な光線バンドルに変換する無限焦点システムも構成する。
【0080】
したがって、ケプラー式望遠鏡の焦点距離f
11とfナンバーkとの間の関係は、以下のように書くことができる。
【0081】
f
11=2・k・r
11 (3)
経験則として、ケプラー式望遠鏡の光学収差は、fナンバーkが値4を超えると十分に制御され得る。したがって、数式3は焦点距離f
11の下限を与えるものとみなされ得る。焦点距離f
9およびf
11が減少すると、OCT光学部品の全長が減少し得るため、f
11を数式3に従ってfナンバーk≒4で選択することが有利であり得る。
【0082】
次に、焦点距離f
9の合理的な値が決定され得る。数式1および得られた値f
11に従って、焦点距離f
9が縦方向倍率β
2を決定し得る。相互距離d
sを有する2つの走査鏡が必要であり得るため、ケプラー式望遠鏡によって両方の鏡を同時に反射器12上に投影することは不可能な場合がある。反射器12を可能な限り小さく保つため、第1の走査鏡2の画像は反射器12の上流の距離dに配置され、第2の走査鏡3は反射器12の下流の距離dに配置され得る。数式1を用いて、以下が得られる。
【0084】
どの鏡も反射器において正確に投影されないため、走査鏡の一方が揺動しているとき、中心のOCT光線は反射器上で距離Δだけ移動し得る。距離Δは、対物レンズ5の下流の反射器12を可能な限り小さく保つために可能な限り小さくすべきである。距離Δは以下のように導出することができる。適切なOCT規格は、患者の眼球の光学軸に対するOCT光の最大角度である角度γ
eyeも規定し得る。眼球の前方の角度γ
eyeは、OCT光と対
物レンズ5の光学軸との間において角度γ
scan=γ
eye・β
FISを必要とし得る。上記の関係を用いて、以下を導出することができる。
【0086】
これにより、焦点距離f
9について以下の式が得られ得る。
【0088】
最後に、コリメーティング光学素子4の焦点距離f
4が以下の式によって算出され得る。
【0090】
ここでr
9は、ケプラー式望遠鏡の第1のレンズ9における平行OCT光バンドル13の半径であり、θはファイバチップ1から発せられたガウス型ビームの発散度である。数式1を用いて、以下を得ることができる。
【0092】
数式2から数式5を用いることによって、表1に列挙するようにシステム100の例示的な近軸レイアウトを導出することが可能となり得る。
【0093】
図1および
図3に例示される外科用顕微鏡システムの光学的データを以下の表1に示す。ここで次の略語が使用される。transは透過、reflは反射、cは円形、rは長方形、eは楕円である。
【0095】
コリメーティング光学素子4、ケプラー式望遠鏡のレンズ要素9および11の焦点距離は、以下の想定のもとで導出され得る。
【0096】
OCTピーク波長:λ=840nm、
ファイバチップ1の後方のガウス型ビームの分散:θ=0.107rad、
網膜におけるウエスト半径:w
retina=8.66μm、
患者の眼球の前方におけるOCT光の最大角度:γ
eye=25°*π/180°=0.436rad、
反射器12上のOCT光線の最大許容移動距離:Δ=0.8mm、
対物レンズ5およびFISの倍率:β
FIS=0.119(表1による)、
走査鏡2、3間の距離:d
s=8mm、
ケプラー式望遠鏡のfナンバー:k=5.14、
網膜側の眼球の焦点距離:f
eye=22.5mm、
眼球の硝子体液の屈折率:n
vitreous=1.33。
【0097】
これらの仕様データおよび数式2によれば、対物レンズ5とケプラー式望遠鏡の第2のレンズ要素11との間の光線バンドル半径は、以下となり得る。
【0099】
数式3から、レンズ要素11の焦点距離は以下となり得る。
f
11=2・5.14・4.39mm=45.1mm
数式4から、レンズ要素9の焦点距離について以下を得ることができる。
【0101】
最後に、コリメーティング光学素子4の焦点距離が数式5に従って算出され得る。
【0103】
上で算出された焦点距離によって、光学的レイアウトが最適化され得る。ウエスト半径を必要に応じて調節するために、焦点距離が若干調節され得る。
図1、
図3および表1は、本発明に係る一実施形態の光学的設計を示す。この設計では、f
4=20.7mm、f
9=23.1mm、およびf
11=45.1mmという近軸値に極めて近い焦点距離が実現される。表1は、各表面上のウエスト半径も示す。
【0104】
対物レンズ5、FIS6および7、ならびに患者の眼球8の縦方向の色収差によって、OCT光を網膜上に合焦させることが必要な場合がある。この実施形態では、ケプラー式望遠鏡の第2のレンズ群11が光学軸に沿って短い距離移動され得る。これによって、OCT信号を最適化してOCT画像の最適な横方向解像度を得ることが可能となり得る。
【0105】
図1に示した外科用顕微鏡システムにおいて、眼科用レンズ7および縮小レンズ6は、任意に顕微鏡光学素子のビーム経路に挿入する、またはビーム経路から後退させることができる。これによって、縮小レンズ6および眼科用レンズ7が後退しているときは患者の眼球8の前部、または縮小レンズ6および眼科用レンズ7が顕微鏡光学素子のビーム経路に挿入されているときは患者の眼球8の後部のいずれかを、顕微鏡光学素子およびOCTシステムを用いて観測することができる。いずれの場合も、OCTシステム120を用いて、患者の眼球8のそれぞれの部分の構造体積データを取得することができる。したがって、患者の眼球のどの部分を検査するかに関わらず、光学画像と、患者の眼球8のそれぞれの部分の断面構造データの表示とが同時に観測者に与えられる。
【0106】
図4Aおよび
図4Bは、本発明の一実施形態に係るさらなる外科用顕微鏡システム100aを概略的に示す。先に例示し説明した実施形態とは異なり、
図4Aおよび
図4Bに示される外科用顕微鏡システム100aは、波面測定システム130aを追加的に含む。
【0107】
図4Aを参照し、まずOCTシステム120aを詳細に説明する。フーリエ領域OCT照射解析システム24aは、OCT測定光13を生成するOCT測定光源を含む。OCT測定光13は光ファイバ23aによって誘導され、ファイバチップ1aから出る。OCT測定光13は、OCT測定光13をほぼ平坦な波面に視準化するコリメーティング光学素子4aを横断する。OCT測定光13は次に、互いに垂直な軸について旋回可能な走査鏡3aおよび走査鏡2aにおいて反射される。
図4Aにおいて、走査鏡2aの3つの異なる旋回位置についてのOCT測定光のビーム経路が例示されている。1280nmから1340nm、特に1300nmから1320nmの範囲に波長を有するOCT測定光は、この波長範囲を高効率で反射する二色ビームスプリッタ30aにおいて反射される。OCT測定光13は、次に無限焦点システムとして構成された投影光学素子29aを横断する。投影光学素子29aは、焦点距離の合計に相当する距離だけ離間されたレンズ群9aおよ
びレンズ群11aを含む。したがって、レンズ群9aおよびレンズ群11aはともにケプラー式システムを構成する。特に、投影光学素子29aは、2つの走査鏡3aおよび2aの間の点が、特に
図3を参照して詳細に上記したように反射器12aの中心に投影されるように配置されかつ構成される。
【0108】
投影光学素子29aを横断したOCT測定光13′は、対物レンズ5aを横断し眼球8の前部が位置する物体面14′に含まれる第1の物体領域14に入射するように、反射器12aにおいて反射される。走査鏡2aの3つの旋回位置について、ファイバチップ1aは第1の物体領域14における3つの異なる位置50に投影される。
【0109】
OCT測定光13′は、OCT測定光13″として眼球8の前部において反射される。OCT測定光13″は、OCT測定光13と同じ光学要素を逆の順序で横断して、光ファイバチップ1aに到達し、そこから光ファイバ23aによってフーリエ領域OCT照射解析システム24aに誘導される。システム24a内において、物体8から戻ったOCT測定光13″は基準光に重畳され、検出され、処理されて、物体8に関する構造的情報を取得する。
【0110】
図1に例示された実施形態と同様に、外科用顕微鏡システム100aは、第1の物体領域14の立体顕微鏡投影のためのレンズシステム20aおよび20a′とレンズシステム21aおよび21a′とを有する顕微鏡光学素子110aを含む。レンズシステム20aおよび21aは眼球22のためのズームシステムを構成し、レンズシステム20a′および21a′は眼球22′のためのズームシステムを構成する。
図4Aおよび
図4Bにおいて、各ズームシステムとそれぞれの眼球との間の接眼レンズは図示されていない。
【0111】
OCTシステム120aによって得られる顕微鏡画像および構造データは、重畳して表示され得る。
【0112】
図4Bを参照し、外科用顕微鏡システム100aに含まれる波面測定システム130aを詳細に説明する。波面測定システム130aは、波面測定光源31a、波面センサ45、ビームスプリッタ34a、および波面センサ投影レンズ35aを含む。
【0113】
波面測定光源31aは、800nmから870nm、特に820nmから840nmの範囲に波長を有する波面測定光32aを生成する。波面測定光32aは、波面測定光32aを実質的に平坦な波面に変換するコリメーティング光学素子33aを横断する。波面測定光32aは、ビームスプリッタ34aにおいて反射され、口径37aの中心の点36aにおいて波面測定光32aを合焦させる波面センサ投影レンズ35aを横断する。口径37aは、波面センサ投影レンズ35aから波面センサ投影レンズ35aの焦点距離に相当する距離だけ離間して配置される。
【0114】
波面測定光32aはその後、800nmから870nmの範囲に波長を有する波面測定光を高い割合で通過させる二色ビームスプリッタ30aを横断する。波面測定光32aはその後、投影光学素子29aを横断し、反射器12aにおいて反射され、対物レンズ5aを横断し、波面測定光32aは実質的に平坦な波面として物体面14′に配置された第1の物体領域14に入射する。波面測定光32aの平坦な波面は、特に角膜および自然レンズ8′を含む眼球8の前部を横断し、眼球8の網膜39における点38において合焦する。
【0115】
顕微鏡システムの他の用途においては、自然レンズを有さない眼球、すなわち自然レンズが欠けた眼球が検査され得る。この状態は、白内障の手術中に自然レンズが除去された後に生じる。この状態において、眼球は強い球面屈折異常を有するが、測定された波面形
状が、正常眼を復元するためにどんな種類の眼球内レンズを挿入すべきかを示すことになる。
【0116】
代替的に、眼球は白内障の手術中に挿入された眼球内レンズを含み得る。これにより、特に非点収差の修正に関して眼球内レンズが正確に位置決めされたかどうか、および手術が成功するかどうかが顕微鏡システムを用いて判断され得る。
【0117】
波面測定光32aは、眼球が正常眼でありさえすれば、つまり眼球の長さが眼球の屈折構成要素、特に角膜および自然レンズの焦点距離に相当し、かつこれらの屈折構成要素が他の非球面収差を示していなければ、点38において鮮明に合焦される。この場合、網膜39における照射点38は、波面測定光40を実質的に球面波面として乱反射する。点38において反射された波面測定光40は、自然レンズおよび角膜を横断し、対物レンズ5aを横断し、反射器12aにおいて反射され、投影光学素子29aを横断し、二色ビームスプリッタ30aを通過し、口径37aの中心の点36aにおいて合焦する。
【0118】
波面測定光40はその後、眼球8が光学部品が光学収差を有さない理想的な正常眼である場合、波面測定光40をほぼ平坦な波面に変換する波面センサ投影レンズ35aを横断する。波面測定光40は、波面センサ45の波面測定光入口41に入る。
図4Bにおいて、波面センサ45は、ビームスプリッタ34aと比べて拡大されている。波面測定光入口41は、マイクロレンズ43のアレイが配置されている面42に位置する。マイクロレンズ43のアレイの下流にあるマイクロレンズの焦点面において位置解像検出器44が配置され、波面測定光の合焦部分の位置を検出する。波面測定光の合焦部分の位置の理想位置からの偏差は、平坦な波面形状からの波面測定光40の形状のずれを示す。
【0119】
物体8を含む第1の物体領域14は、対物レンズ5aと投影光学素子29aと波面センサ投影レンズ35aとによって波面測定光入口41に投影される。特に、第1の物体領域における点50は、ビーム経路40′によって示されるように、波面センサ45の波面測定光入口41において点50′に投影される。したがって、第1の物体領域14における波面形状は、外科用顕微鏡システム100aに含まれる波面測定システム130aを用いて決定することができる。
【0120】
波面測定システム130aを使用すれば、正常眼だけでなく屈折異常眼も検査され得る。この目的のため、外科用顕微鏡システムはさらにアクチュエータ46を含み、波面センサ45と波面センサ投影レンズ35aと口径37aとを両頭矢印47によって示される方向に沿って投影光学素子29aに対して移動させるように設けられる。したがって、眼球の非球面収差を決定するために、検査される眼球の球面屈折異常を補償することができる。
【0121】
OCT機構によって得られる被検査物体に関する構造的情報を利用して測定光の波面形状の測定精度を向上させるように顕微鏡システムを構成することができる。一方法は、物体と、物体に最も近い顕微鏡システムの対物レンズの光学面などの基準面との間の距離をOCT機構によって測定するものである。測定された距離を波面測定データに補充して、波面測定精度を向上させ得る。
【0122】
従来の波面測定中によく生じる問題は、眼球の光学軸が波面測定システムの光学軸と整列しない点である。この状態では、波面測定光が網膜において合焦する点が窩(fovea)に近くなく、眼球の波面測定が著しく阻害される。OCT機構によって得られた構造データを用いれば、眼球、特に眼球の前部の厳密な配向が決定され得る。患者は、眼球の配向を確実に波面測定に最適化するために、眼球を動かすように求められることがある。
【0123】
以下の表2および表3において、
図4Aおよび
図4Bに示した実施形態の光学部品の光学データを示す(transは透過を示し、reflは反射を示す)。
【0126】
OCTシステムのビーム経路はズームシステム20の外側にあるため、外科用顕微鏡システムにおいてズームシステム20および21の倍率を変化させても、OCTシステム120を用いた物体の測定には影響を及ぼさない。つまり、OCT経路のOCT測定光ビーム13はズームシステム20を横断しない。特に、物体におけるOCTシステムのOCT測定光ビームのウエスト半径は、ズームシステム20の倍率を変更しても変わらない場合がある。その結果、OCT体積データの横方向解像度および明るさは、ズームシステム20の倍率を変更しても変わらない場合がある。
【0127】
図1、
図3、
図4Aおよび
図4Bに例示した外科用顕微鏡システムの別の利点は、この種のシステムにおいて「折畳みミラー」とも称される反射器12の範囲を、走査鏡以外の光学要素によって実現されかつ必要とされる横方向解像度によって、必要に応じて最小に設定できる点である。その理由は、走査鏡2および3の回転位置を変化させても、反射器12に入射するOCT測定光ビーム13の位置がわずかな量しか変動せず、三次元スキャナなどについては理想的には全く移動しないことである。したがって、従来のシステムと比べて最小範囲(つまり最小有効直径D
r)を有する反射器12を使用することによって、OCTシステムのOCT測定光ビームが顕微鏡光学素子の対物レンズを横断しなければならないという制約を有する外科用顕微鏡システムにOCTシステムを組込むことが可能となる。
【0128】
外科用顕微鏡システムは、OCTシステムのOCT測定光ビームの瞳が顕微鏡光学素子の対物レンズ5の近傍に配置され得るように設計される。したがって、外科用顕微鏡システムの他の光線経路について、より大きな空間が利用可能となり得る。
【0129】
さらに、走査鏡2および3は、OCTシステムのOCT測定光ビーム13が平行光線のバンドルからなる位置に配置され得る。したがって、走査鏡の軸が完全に整列しない場合、望ましくないドップラー効果によるOCT画質の劣化が軽減され得る。
【0130】
代替的に、走査鏡の回転と物体上のスポットの走査位置との関係は、各走査鏡について同じである。
【0131】
本発明は、表1に示した光学データを有する
図1および
図3に示した例示的な実施形態に限定されず、対物レンズ5の焦点距離を変化させ得る。対物レンズ5の焦点距離は、通常f=150mmからf=250mmの間であり得る。さらに、縮小レンズ6および眼科用レンズ7の焦点距離を変化させ得る。焦点距離を減少させると、倍率の低下とともに網膜の開度が増大することが観測者にはわかる。さらに、第2のレンズ群11と反射器12との間の距離を制御するために、投影光学素子のビームストップ10付近に視野レンズを配置してもよい。さらに、レンズ群9および11からなるケプラー式望遠鏡は、倍率βが調整可能な無限焦点ズームシステムで置換してもよい。また、コリメーティング光学素子4はズームシステムで置換してもよい。それによって、ファイバチップ1と対物レンズ5との間のOCTシステムを、対物レンズ5、縮小レンズ6および眼科用レンズ7の異なる焦点距離に適合させることが可能となり得る。
【0132】
発明の外科用顕微鏡システムの他の変形は、OCTシステムのプローブアーム35および基準アームの調整に関する。一般に、OCTデータを得るには、OCTシステムのプローブアーム35および基準アームの光路長および分散が、測定光の可干渉距離内において一致しなければならない。これは、コリメーティング光学素子4と第1の走査鏡2との間の空間を拡大することによって実現され得る。この目的のため、光学ガラスからなる平面かつ平行なプレートをこれらの要素間に導入してもよい。
【0133】
さらに、Y. Xu他による出版物“MEMS based non-rotatory circumferential scanning optical probe for endoscopic optical coherence tomography”, Pro. of SPIE, Vol.6627 (2007)に記載されているように、1つの三次元走査鏡で2つの走査鏡2および3を置換してもよい。そこにおいては、上記のOCTシステムの他の光学部品は、三次元走査鏡の中心が反射器12の中心付近の領域にマッピングされるように構成される。この場合、上で得られた数式4は必要ではなくなることがあり、焦点距離f
9は、OCTシステム120の部品の全長を短縮するように選択することができる。
【0134】
本外科用顕微鏡システムは、
図1の例示的な実施形態100に示したフーリエ領域OCTに制限されない。発明の外科用顕微鏡システムに係るOCTシステムは、いずれかの周波数領域OCTシステムを採用し得る。物体の深さ走査は、OCTシステムの測定光ビームのビーム経路に分光器を配置するか、OCTシステムの波長調整可能な光源を用いるか、またはそれらの組合せによって得られる。さらにOCTシステムは、時間領域OCTシステムであってもよい。
【0135】
要約すると、本発明の実施形態に係る外科用顕微鏡システムにおいて、光コヒーレンス断層法機構が顕微鏡システムに一体化される。OCTシステムのコリメーティング光学素子によって形成された測定光ビームがビームスキャナによって偏向され、投影光学素子を横断し、反射器によって反射され、測定光ビームは顕微鏡光学素子の対物レンズを横断し、顕微鏡光学素子の物体領域に照射される。反射器に入射する測定光ビームの位置は、測定光ビームがビームスキャナによって偏向される方向には実質的に依存しない。ビームスキャナを通って進行する際、測定光ビームは、実質的に平行な光線のバンドルであり得る。
【0136】
本発明をその例示的な実施形態に関して説明したが、当業者には多くの代替例、修正、変形が明らかであろうことは明白である。したがって、ここに記載した発明の例示的な実施形態は、いずれの点でも例示的であり、限定的なものではない。添付の請求項に規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更が行われ得る。