特許第5756259号(P5756259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5756259L−リジン生産能の向上したコリネバクテリウム属およびそれを用いたL−リジン生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756259
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】L−リジン生産能の向上したコリネバクテリウム属およびそれを用いたL−リジン生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20150709BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20150709BHJP
   C12P 13/08 20060101ALI20150709BHJP
   C12R 1/15 20060101ALN20150709BHJP
【FI】
   C12N1/21ZNA
   C12N15/00 A
   C12P13/08 A
   C12P13/08 A
   C12R1:15
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2009-528183(P2009-528183)
(86)(22)【出願日】2007年9月17日
(65)【公表番号】特表2010-503395(P2010-503395A)
(43)【公表日】2010年2月4日
(86)【国際出願番号】KR2007004478
(87)【国際公開番号】WO2008033001
(87)【国際公開日】20080320
【審査請求日】2009年5月13日
【審判番号】不服2013-7063(P2013-7063/J1)
【審判請求日】2013年4月17日
(31)【優先権主張番号】10-2006-0089672
(32)【優先日】2006年9月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508064724
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】パーク,ヤング フーン
(72)【発明者】
【氏名】リム,サン ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ムーン,ジュン オク
(72)【発明者】
【氏名】ラ,ソ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヒ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジャエ ウ
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,ドゥ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジン サック
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒュン ジョーン
【合議体】
【審判長】 今村 玲英子
【審判官】 飯室 里美
【審判官】 郡山 順
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−215883(JP,A)
【文献】 特開昭62−79788(JP,A)
【文献】 特開2001−37495(JP,A)
【文献】 特表2002−508921(JP,A)
【文献】 特表2003−503006(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/071099(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/065095(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-90
C12P13/08
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
WPI
BIOSIS/CA/MEDLINE(STN)
JSTPlus(JDreamII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ、ジヒドロジピコリン酸リダクターゼ、およびジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼの酵素活性がそれぞれの内在性活性と比較して増加した、コリネバクテリウム属微生物であって、
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ、ジヒドロジピコリン酸リダクターゼ、およびジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼの酵素活性の増加は、コリネ型細菌群のaspB遺伝子、lysC遺伝子、asd遺伝子、dapA遺伝子、dapB遺伝子およびlysA遺伝子の発現の増加によるものであり、
前記発現の増加は、各遺伝子に対する外来プロモーターの導入によってなされ、そして、
前記外来プロモーターは、配列番号44〜50のいずれかに示されるヌクレオチド配列を有する、コリネバクテリウム属微生物。
【請求項2】
前記微生物は、さらにピルビン酸カルボキシラーゼの酵素活性が内在性活性と比較して増加している、請求項1に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項3】
前記ピルビン酸カルボキシラーゼの酵素活性の増加は、コリネ型細菌群のpyc遺伝子の発現の増加によるものである、請求項2に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項4】
前記aspB遺伝子、lysC遺伝子、asd遺伝子、dapA遺伝子、dapB遺伝子およびlysA遺伝子は、それぞれ配列番号25、26、27、28、29および0のヌクレオチド配列を有する、請求項に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項5】
前記pyc遺伝子は、配列番号37のヌクレオチド配列を有する、請求項3に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項6】
前記発現の増加は、pyc遺伝子に対する外来プロモーターの導入によってなされ、かつ、前記外来プロモーターは、配列番号44〜50のいずれかに示されるヌクレオチド配列を有する、請求項に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項7】
前記外来プロモーターは、配列番号44に示されるヌクレオチド配列である、請求項1または6に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の微生物を培養する工程と、
前記微生物の細胞または細胞培養物からL−リジンを回収する工程とを含む、L−リジンの生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ、ジヒドロピコリン酸リダクターゼ、およびジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ(diaminopimelate dicarboxylase)の活性が内在性活性より増加し、さらにピルビン酸カルボキシラーゼの活性が内在性活性より増加しているコリネバクテリウム属の変異体、並びにそれを用いてL−リジンを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、特にコリネバクテリウムグルタミカム(Corynebacterium glutamicum)は、L−アミノ酸の生産に多用されているグラム陽性の微生物である。L−アミノ酸、特にL−リジンは、動物飼料、医薬品および化粧品産業を含む種々の産業に適用できる。これらの産業での使用に対して、L−リジンは、典型的にはコリネバクテリウム属株を用いた発酵によって生成されている。
【0003】
従来のリジン生合成関連遺伝子が強化されたコリネバクテリウム属株およびL−リジン生産方法が当該分野で周知である。例えば、米国特許第6,746,855号には、lysE遺伝子(リジン排出キャリア遺伝子)が強化され、dapA遺伝子、lysC遺伝子、pyc遺伝子およびdapB遺伝子を含む群から選ばれた遺伝子がさらに導入されたコリネバクテリウム属株と、この株を培養してL−リジンを生産する方法が開示されている。また、米国特許第6,221,636号には、L−リジンおよびL−トレオニンによりフィードバックの阻害に実質的に脱感作されたアスパルトキナーゼをコードするDNA配列、およびジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼをコードするDNA配列を含む組み換えDNAを有するコリネ型細菌群が開示されている。
【0004】
ところが、リジン生合成経路に関与する6種の酵素、すなわちアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ、ジヒドロピコリン酸リダクターゼ、およびジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼの活性が内在性活性より増加しているコリネバクテリウム属種(Corynebacterium spp.)については、開示されたことがない。また、これらの6種酵素に加えて、さらにピルビン酸カルボキシラーゼの活性が内在性活性より増加しているコリネバクテリウム属種についても開示されたことがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の開示
技術的課題
本発明の目的は、リジン生合成経路に関与する6種の酵素、すなわちアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ、ジヒドロピコリン酸リダクターゼ、およびジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼの活性が内在性活性より増加しているコリネバクテリウム属の株を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、前記6種の酵素に加えて、さらにピルビン酸カルボキシラーゼの活性が内在性活性より増加しているコリネバクテリウム属の株を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、前記微生物を用いてL−リジンを生産する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
技術的解決方法
上記目的を達成するために、本発明は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ、ジヒドロピコリン酸リダクターゼ、およびジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼの活性がそれぞれの内在性活性より増加しているコリネバクテリウム属の株を提供する。
【0009】
本発明の他の様相によれば、前記6種の酵素に加えて、さらにピルビン酸カルボキシラーゼの活性が内在性活性より増加しているコリネバクテリウム属の株を提供する。
【0010】
本発明の別の様相によれば、前記微生物を用いてL−リジンを生産する方法を提供する。
【0011】
本発明のコリネバクテリウム属株において、前記7種の酵素は、それらの内在性レベルより高いレベルの活性を示す。本発明に係る前記増加した酵素の活性は、遺伝子コピー数の増加、固有のプロモーターのより強力なプロモーターへの置換および人為的な変異による酵素活性の増加を含む様々な要因に基づいている。より詳しくは、前記遺伝子コピー数は、外来対立遺伝子の導入により、および/または内在性遺伝子の増幅によって増加できる。前記遺伝子プロモーターの置換の例には、下流の構造遺伝子を発現する強力な活性を有する外来プロモーターの導入、および、内在遺伝子プロモーターでの置換によるものも含まれる。遺伝子の増幅は、当該分野で周知の方法、例えば適切な条件の下で培養するなどによって容易になされ得る。
【0012】
本発明の一様相によれば、本発明のコリネ型細菌群は、その核DNAの内在性遺伝子のaspB(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子)、lysC(アスパラギン酸キナーゼをコードする遺伝子)、asd(アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子)、dapA(ジヒドロジピコリン酸シンターゼをコードする遺伝子)、dapB(ジヒドロジピコリン酸リダクターゼをコードする遺伝子)、およびlysA(ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子)に加えて、少なくとも1コピーのaspB、lysC、asd、dapA、dapBおよびlysA遺伝子が存在することによって特徴付けられる。この様相の変形において、外来の強力なプロモーターを、それぞれの構造遺伝子の開始コドンの上流に位置させることもできる。
【0013】
本発明の他の様相によれば、本発明のコリネ型細菌群は、前記少なくとも1コピーのaspB、lysC、asd、dapA、dapBおよびlysA遺伝子と共に、その核DNAの内在性pyc(ピルビン酸カルボキシラーゼ)遺伝子に加えて、少なくとも1コピーのpyc遺伝子が存在することによって特徴付けられる。この様相の変形において、前記6個それぞれの遺伝子の内在性プロモーターがそれぞれ外来の強力なプロモーターに取り替えられると同時に、pyc遺伝子の開始コドンの上流に外来の強力なプロモーターを挿入する。
【0014】
コリネバクテリウム属に属しているかぎり、前記遺伝子が導入される母株(mother strain)として任意のコリネ型細菌群を使用することができる。本発明に有用なコリネバクテリウム属微生物の例には、コリネバクテリウムグルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC13032、コリネバクテリウムグルタミカム、コリネバクテリウムテルモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)FERM BP−1539、ブレビバクテリウムフラバム(Brevibacterium flavum)ATCC14067、ブレビバクテリウムラクトフェルメンタム(Brevibacterium lactofermentum)ATCC13869、およびこれらに由来するL−アミノ酸生産の変異体または菌株、例えばコリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881、コリネバクテリウムグルタミカム KFCC11001が含まれる。好ましくは、コリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881である。
【0015】
本発明のコリネバクテリウム属微生物において、aspB、lysC、asd、dapA、dapB、lysAおよびpycは、それぞれ配列番号25、26、27、28、29、30および37のヌクレオチド配列を有し、各々が固有のプロモーターおよび終止コドンを含む。
【0016】
本発明のコリネバクテリウム属微生物は、それぞれ図2図6の切断地図を有するベクターpDZ−2aspB、pDZ−2lysC/asd、pDZ−2dapA/dapB、pDZ−2lysAおよびpDZ−2pycがコリネ型細菌群に形質転換されたものであってもよい。これらのベクターは、所定の順番で、または同時に導入することができる。上述したように、外来プロモーターが前記遺伝子の開始コドンの上流にそれぞれ挿入されたものであってもよい。前記微生物は、好ましくは、aspB、lysC、asd、dapA、dapB、lysAおよびpycの追加のそれぞれのコピーを少なくとも1つそのゲノムDNA内に有している。別の実施形態或いはより好適な実施形態では、各遺伝子の内在性プロモーターと開始コドンとの間に強力な外来プロモーターが挿入されている。外来遺伝子のゲノムDNA内への挿入は、当該分野で周知の方法、例えば相同組み換えによって行われ得る。
【0017】
受託番号KCCM10770Pのコリネバクテリウムグルタミカム KFCC−1008−CJ5が、本発明において特に有用である。本菌株は、コリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881に、それぞれ図2図5の切断地図を有するpDZ−2aspB、pDZ−2lysC/asd、pDZ−2dapA/dapBおよびpDZ−2lysAを導入し、選択培地でその形質転換体を培養して、外来遺伝子のaspB、lysC、asd、dapA、dapBおよびlysAをそれぞれの内因性対立遺伝子と相同組み換えすることによって得ることができ、この株は、結果として2コピーのaspB、lysC、asd、dapA、dapBおよびlysAをゲノムDNA内に有している。前記菌株は、母菌株より高い効率でL−リジンを生産することができる。また、前記菌株に、図6の切断地図を有するベクターpDZ−2pycをさらに導入し、ゲノムDNA内に2コピーのpycを有するようにすることによって、L−リジンの生産効率をより高めることができる。
【0018】
本発明の別の様相によれば、本発明は、個々の遺伝子について固有プロモーターと開始コドンとの間に外来プロモーターを挿入することを含む、高収率でL−リジンを産生する方法を提供する。
【0019】
本発明の実施形態において、リジン生合成遺伝子の各プロモーターは、それぞれ外来の強力なCJ7プロモーターに置換される。本発明において有用なCJ7プロモーターは、コリネバクテリウムアンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)由来の配列番号44に示されるヌクレオチド配列を有する強力なプロモーターであって、本出願人によって以前に開発されたものである(韓国特許第KR−0620092号)。コリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881のlysCを発現させる場合、CJ7プロモーターが内在性プロモーターを用いるときよりアスパラギン酸キナーゼの活性が約2倍増加することを確認した。本明細書においては、CJ7プロモーターを用いた実施例のみが提供されているが、韓国特許第KR−0620092号に開示された、コリネバクテリウムアンモニアゲネス由来のそれぞれ配列番号45〜50に示されるヌクレオチド配列を有するCJ1〜CJ6プロモーターが、CJ7プロモーターと同一の方式でリジン生産菌株の調製のために使用できることが理解されるべきである。よって、CJ1〜CJ6プロモーターは、CJ7プロモーターと同様に、本発明に係る目的遺伝子の発現レベルを増加させるために有用な外来プロモーターの範囲に含まれる。
【0020】
本発明の別の様相によれば、本発明は、本発明に係る微生物を培養して細胞内でL−リジンを発現させるか、あるいは培地中にL−リジンを放出する工程と、前記細胞または培地からL−リジンを回収する工程とを含む、L−リジンの生産方法を提供する。
【0021】
前記培養工程は下記にさらに詳しく説明する。
【0022】
本発明に係るL−リジン生産方法における微生物については、上述したとおりである。
【0023】
前記培養工程については、当該分野で周知の種々のプロセスの1つを使用できる。前記コリネバクテリア属株は、例えば流加回分工程(fed batch process)または繰り返し流加回分工程(repeated fed batch process)など、回分工程または連続工程で培養することができる。
【0024】
培養に用いられる培地は、培養される株の要件を満たさなければならない。コリネバクテリア属種に対する培養培地は周知である(例えば、Manual of Methods for General Bacteriology. American Society for Bacteriology. Washington D.C., USA, 1981)。培養に有用な炭素源の例としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、澱粉、セルロースなどの糖類および炭水化物;大豆油、ひまわり油、ヒマシ油、ココナッツ油などの油および脂質;パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸などの脂肪酸;グリセロール、エタノールなどのアルコール;および酢酸などの有機酸が含まれる。これらの物質は単独でまたは組み合わせて使用できる。本発明のバクテリアの培養培地に有用な窒素源としては、ペプトン、酵母抽出物、肉汁、麦芽抽出物、コーンスティープソリッド(corn steep solid)、大豆粉、尿素、ならびに例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムなどの無機化合物が含まれ得る。このような窒素源は、単独でまたは組み合わせて使用することができる。培地中の窒素源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素ニカリウム、またはこれらのナトリウム含有塩を使用することができる。また、培養培地は、微生物の成長に必要な成分として、硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄などの金属塩を必要とする。また、アミノ酸およびビタミンなどの他の必要成分が培養培地に含まれる。また、これらの成分それ自体の代わりに、その前駆体を使用することもできる。前述した成分は、培養過程で培養物に回分式または連続式で微生物の培養物に添加できる。
【0025】
培養物のpHは、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの塩基性化合物、またはたとえばリン酸もしくは硫酸などの酸性化合物を用いて調整することができる。また、脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を添加して気泡の生成を抑制することができる。好気状態は、培養物内に酸素または酸素含有気体(例えば、空気)を注入することによって維持することができる。有機体を培養する間、培養培地は、20℃〜45℃、好ましくは25℃〜40℃の範囲で維持される。培養は、L−アミノ酸の生成量が最大に得られるまで行い続ける。この点に関し、L−リジンの最大量を得るには、10〜160時間かかる。このアミノ酸は培養培地中に放出される場合もあるし、あるいは細胞中にとどまる場合もある。
【0026】
回収工程は、下記のとおり実施される。細胞または培養培地からL−リジンを回収する方法は、当該分野で周知である。L−リジン回収方法の例としては、濾過、陰イオン交換クロマトグラフィー、結晶化およびHPLCが挙げられるが、これらに限定されない。
【発明の効果】
【0027】
有利な効果
本発明のコリネバクテリウム属微生物は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ、ジヒドロピコリン酸リダクターゼおよびジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、そしてさらにピルビン酸カルボキシラーゼの内在性活性よりも高い酵素活性を有するので、L−リジン生産能を高収率で産生することができる。
【0028】
よって、本発明のコリネバクテリウム属微生物の使用を特徴とする方法は、L−リジンを高効率で生産するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1はコリネバクテリウム属内に核標的化遺伝子(nuclear-targeted gene)を挿入するためのベクターpDZを示す図である。
図2図2はコリネバクテリウム属内に核標的化遺伝子を挿入するためのベクターpDZ−2aspBを示す図である。
図3図3はコリネバクテリウム属内に核標的化遺伝子を挿入するためのベクターpDZ−2lysC/asdを示す図である。
図4図4はコリネバクテリウム属内に核標的化遺伝子を挿入するためのベクターpDZ−2dapA/dapBを示す図である。
図5図5はコリネバクテリウム属内に核標的化遺伝子を挿入するためのベクターpDZ−2lysAを示す図である。
図6図6はコリバクテリウム属内に核標的化遺伝子を挿入するためのベクターpDZ−2pycを示す図である。
図7図7はpDZ−PCJ7ベクターを示す図である。
図8図8はpDZ−PCJ7/aspBベクターを示す図である。
図9図9はpDZ−PCJ7/lysCベクターを示す図である。
図10図10はpDZ−PCJ7/dapAベクターを示す図である。
図11図11はpDZ−PCJ7/dapBベクターを示す図である。
図12図12はpDZ−PCJ7/lysAベクターを示す図である。
図13図13はpDZ−PCJ7/pycベクターを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0031】
[実施例1:核標的化遺伝子を挿入するためのベクター(pDZ)の構築およびこれを用いた遺伝子の挿入]
本実施例では、大腸菌(E. coli)クローニング用ベクターpACYC177(New England biolab、GenBank accetion # X06402)を基本ベクターとして使用し、コリネバクテリウム属の染色体を運ぶための組み換えベクターpDZを構築した。その製作過程は次のとおりである。
【0032】
pACYC177ベクターをAcuIおよびBanI制限酵素で処理した後、クレノウ酵素処理によって平滑末端化した。選別マーカーとして用いられる大腸菌由来のlacZ遺伝子は、大腸菌K12 W3110の核DNAからPCRによって自身のプロモーターを含むように遺伝子増幅した後、T4 DNAポリメラーゼおよびポリヌクレオチドキナーゼ処理によって5’末端のリン酸化および平滑化を行うことにより調製した。これらの2種のDNA断片を互いにライゲーションして環状DNA分子を得、この環状DNA分子の制限酵素部位BamHIに人為的に合成した多数の制限酵素認識部位を含んでいるアダプター配列を挿入し、コリネバクテリウム属内に核標的化遺伝子を挿入するためのベクターpDZを構築した。図1はコリネバクテリウム属内に核標的化遺伝子を挿入するためのベクターpDZのマップを示す図である。
【0033】
その後、コリネバクテリウム属の核DNAに目的の遺伝子を挿入した。このために、目的遺伝子を連続的に2コピー含有しているpDZベクターをL−リジン生産菌株としてのコリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881にエレクトロポレーションによって形質転換し(Appl. Microbiol. Biotechnol.(1999) 52:541-545による電気パルス法を用いる)、25mg/Lのカナマイシンを含有した選別培地で、染色体上に目的の遺伝子が挿入された形質転換体を相同性によってスクリーニングした。ベクターを用いた核DNAへの成功的な遺伝子の挿入は、X−gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド)を含んだ固体培地で青色が出現することで示された。核に挿入された1次菌株を栄養培地で振とう培養(30℃、8時間)した後、それぞれ10−4から10−10まで連続的に希釈し、X−galを含んでいる固体培地に塗抹した。増殖した大部分のコロニーが青色を帯びた。低い割合の白色のコロニーを選別した。交叉(crossover)によってゲノム内に挿入されたベクター配列がゲノムから除去されるで、これらの2次選別された菌株はベクター配列を有していない。これらの菌株は、最終的にカナマイシンに対する感受性について試験し、PCRによる遺伝子構造確認過程を経て最終選定された。
【0034】
[実施例2:変異によるリジン産生コリネバクテリウムグルタミカム(KFCC−10881)の調製]
リジン生合成経路に関係する複数の遺伝子が挿入された菌株は、S−(2−アミノエチル)システイン(以下「AEC」という)に対する耐性およびホモセリン漏れ(homoserine leaky)の特徴を有するコリネバクテリウムグルタミカム(KFCC−10881)をベースとした。
【0035】
前記変異株KFCC−10881は、コリネバクテリウムグルタミカム野生株(ATCC13032)から調製した。突然変異誘発源であるN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(以下、「NTG」という)を細胞10〜10/mLの濃度で母株を含む培地に対して30℃で500μg/mLで30分間処理し、AECを5g/Lの濃度で含有した複合プレートで成長するコロニーを選択した。前記1次変異株に対するAEC耐性度とリジン生産能を分析した後、NTGによる2次変異を誘導した。その後、形成された複数のコロニーを、ホモセリンを添加した最小培地とホモセリンが添加されていない最小培地に接種(tooth picking)することにより、ホモセリンが添加されていない最小培地で成長できないホモセリン要求性菌株(2次変異株)を分離した。このホモセリン要求性菌株からさらにホモセリン漏れ型菌株を作製するために3次変異を誘導した。この株は、ホモセリン10mg/Lが含有された最小培地に接種することによって同定した。培地中で成長する菌株を、リジン生産能について試験した(表1)。最終的にAEC耐性およびホモセリン漏れ型の特徴を有するリジン生産菌株を獲得し、これを社団法人韓国種菌協会(Korean Federation of Culture Collection)に寄託し、寄託番号第KFCC−10881号を与えられた。この実施例で使用した前記最小培地と前記生産培地は下記のとおりである。
【表1】

[最小培地(pH7.0)]
ブドウ糖 100g、(NHSO 40g、大豆タンパク質 2.5g、コーンスティープソリッド(Corn Steep Solids) 5g、尿素 3g、KHPO 1g、MgSO7HO 0.5g、ビオチン 100μg、チアミン塩酸塩 1000μg、パントテン酸カルシウム 2000μg、ニコチンアミド 3000μg、CaCO 30g(蒸留水1L基準)
[生産培地(pH7.0)]
ブドウ糖 100g、(NHSO 40g、大豆タンパク質 2.5g、コーンスティープソリッド(Corn Steep Solids) 5g、尿素 3g、KHPO 1g、MgSO7HO 0.5g、ビオチン 100μg、チアミン塩酸塩 1000μg、CaCO 30g(蒸留水1L基準)。
【0036】
[実施例3:リジン生産コリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881由来のaspB遺伝子のクローニング、組み換えベクター(pDZ−2aspB)の構築、およびaspB挿入菌株の調製]
本実施例では、実施例2で調製したリジン生産コリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881の核DNAを鋳型として用い、リジン生合成経路に関与するaspB遺伝子に対してPCRを行った。米国国立保健院の遺伝子銀行(NIH GenBank)のデータからaspB遺伝子の塩基配列情報(NCBI登録番号 NC_003450、Ncgl0237)を得て、これを使用して2組のプライマーを設計し、プロモーター領域から終止コドンにわたるaspB遺伝子を増幅させた(表2)。
【表2】
【0037】
コリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881の核DNAを鋳型とし、前記配列番号1と2のオリゴヌクレオチドまたは前記配列番号3と4のオリゴヌクレオチドのセットをプライマーとして、PfuUltraTM高信頼DNAポリメラーゼ(Stratagene)の存在下でPCRを行った。PCRは、変性96℃、30秒;アニーリング53℃、30秒;および伸長反応72℃、2分を1サイクルとして30サイクル繰り返し行った。このようにして得たPCR産物は、1,493bpのプロモーター領域をそれぞれ含んだ2種のaspB遺伝子(aspB−AおよびaspB−B)であった。aspB−Aは配列番号1と2のセットにより、aspB−Bは配列番号3と4のセットにより産生された。このPCR産物をTOPO Cloning Kit(Invitrogen)を用いて大腸菌ベクターpCR2.1にクローニングし、組換えベクターpCR−aspB−AおよびpCR−aspB−Bを得た。これらのpCRベクターを、aspB−AとaspB−Bの反対の末端(opposite end)に特異的な制限酵素(aspB−A:SamI+HindIII、aspB−B:HindIII+NheI)でそれぞれ処理し、前記pCRベクターからaspB遺伝子を分離した。これらのフラグメントを、pDZベクターのEcoRV−NheI部位に3ピースライゲーション(3-piece ligation)によってクローニングし、aspBの2コピーが連続的にクローニングされた組換えベクターpDZ−2aspBを製作した。図2は、コリネバクテリウム属に核標的化遺伝子を挿入するためのpDZ−2aspBベクターのマップである。
【0038】
組換えベクターpDZ−2aspBを、実施例2で調製したリジン生産コリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881に形質転換し、交叉過程を経て核DNA上でaspB遺伝子のすぐ隣に1コピーのaspB遺伝子をさらに挿入して、2コピーのaspB遺伝子を有するリジン生産菌株を作製し、これをコリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ1と名づけた。2コピーのaspB遺伝子が隣接して位置することは、この2コピーのaspB遺伝子の間の連結領域を増幅することが可能な配列番号17と18(表3)のプライマーセットを用いたPCRによって最終確認した。
【表3】
【0039】
[実施例4:リジン生産コリネバクテリウムグルタミクム KFCC−10881由来のlysC/asd遺伝子の構築、組み換えベクター(pDZ−2lysC/asd)の製作、およびlysC/asd挿入菌株の調製]
実施例3と同様の方法で、lysC/asd遺伝子の塩基配列の情報(NCBI登録番号 NC_003450、Ncgl0247〜0248)をNIH GenBankのデータから得て、これを用いて2組のプライマーを設計し、aspB遺伝子をプロモーター領域から終止コドンの範囲まで増幅した(表4)。
【表4】
【0040】
コリネバクテリウムグルタミクム KFCC10881の核DNAを鋳型とし、配列番号1と2のオリゴヌクレオチドまたは配列番号3と4のオリゴヌクレオチドのセットをプライマーとして、PfuUltraTM高信頼DNAポリメラーゼ(Stratagene)の存在下でPCRを行った。PCRは、変性96℃、30秒;アニーリング52℃、30秒;および伸長反応72℃、3分を1サイクルとして30サイクル繰り返し行った。
【0041】
こうして得たPCR産物は、2,805bpのプロモーター領域をそれぞれ含んだ2種のlysC/asd遺伝子(lysC/asd−AおよびlysC/asd−B)であった。lysC/asd−Aは配列番号5と6のセットによって、lysC/asd−Bは配列番号7と8のセットによってそれぞれ産生された。前記PCR産物を、TOPO Cloning Kit(Invitrogen)を用いて大腸菌ベクターpCR2.1にクローニングして、組換えベタターpCR−lysC/asd−AとpCR−lysC/asd−Bを得た。
【0042】
これらのpCRベクターを、lysC/asd−AおよびlysC/asd−Bの反対の末端に特異的な制限酵素(lysC/asd−A:BamHI+SamI、lysC/asd−B:SamI+PvuI)でそれぞれ処理し、前記pCRベクターからlysC/asd遺伝子を分離した。これらのフラグメントを、pDZベクターのBamHI−とPvuI部位に3ピースライゲーション(3-piece ligation)によってクローニングし、2コピーのlysC/asdが連続的にクローニングされた組換えベクターpDZ−2lysC/asdを得た。図3は、コリネバクテリウム属に核標的化遺伝子を挿入するためのpDZ−2lysC/asdベクターのマップである。
【0043】
組換えベクターpDZ−2lysC/asdを、実施例3で調製したリジン生産コリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ1に形質転換し、交叉過程を経て核DNA上でlysC/asd遺伝子のすぐ隣に1コピーのlysC/asd遺伝子をさらに挿入し、2コピーのlysC/asd遺伝子を有するリジン生産菌株を産生し、この株をコリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ2と名付けた。2コピーのaspB遺伝子が隣接して位置することは、この2コピーのaspB遺伝子の間の連結領域を増幅することが可能なプライマーのセット(図5)を用いたPCRによって最終確認した。
【表5】
【0044】
[実施例5:リジン生産コリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881由来のdapA/dapB遺伝子のクローニング、組み換えベクター(pDZ−2dapA/dapB)の構築、およびdapA/dapB挿入菌株の調製]
dapA/dapB遺伝子の塩基配列情報(NCBI登録番号 NC_003450、Ncgl1896〜1898)をNIH GenBankのデータから得た。dapA遺伝子は、dapB遺伝子とオペロンを含み、それらの間には機能が解明されていないORF(Ncgl1987)があることが確認された。この情報を用いて2組のプライマーを設計し、dapBプロモーターから終止コドンにおよぶdapB−ORF(Ncgl1897)−dapA遺伝子全体を増幅した(表6)。
【表6】
【0045】
コリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881の核DNAを鋳型とし、配列番号9と10のオリゴヌクレオチドまたは配列番号11と12のオリゴヌクレオチドのセットをプライマーとして、PfuUltraTM高信頼DNAポリメラーゼ(Stratagene)の存在下でPCRを行った。PCRは、変性96℃、30秒;アニーリング52℃、30秒;および伸長反応72℃、3分を1サイクルとして30サイクル繰り返し行った。
【0046】
こうして得たPCR産物は、3,210bpのプロモーター領域をそれぞれ含んだ2種のdapA/dapB遺伝子(dapA/dapB−A、dapA/dapB−B)であった。dapA/dapB−Aは配列番号9と10のセットによって、dapA/dapB−Bは配列番号11と12のセットによってそれぞれ産生された。前記PCR産物をTOPO Cloning Kit(Invitrogen)を用いて大腸菌ベクターpCR2.1にクローニングして、組換えベクターpCR−dapA/dapB−AとpCR−dapA/dapB−Bを得た。
【0047】
これらのpCRベクターを、dapA/dapB−AおよびdapA/dapB−Bの反対の末端に特異的である対応する制限酵素(dapA/dapB−A:EcoRI+SacI、dpaA/dapB−B:SacI+XhoI)で処理し、前記pCRベクターからdapA/dapB遺伝子を分離した。これらのフラグメントを、pDZベクターのEcoRI−XhoI部位に3ピースライゲーション(3-piece ligation)によってクローニングし、2コピーのdapA/dapBが連続的にクローニングされた組換えベクターpDZ−2dapA/dapBを構築した。図4は、pDZ−2dapA/dapBベクターのマップである。
【0048】
組換えベクターpDZ−2dapA/dapBを、実施例4で調製したリジン生産コリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ2に形質転換し、交叉過程を経て核DNA上でdapA/dapB遺伝子のすぐ隣に1コピーのdapA/dapB遺伝子をさらに挿入して、2コピーのdapA/dapB遺伝子を有するリジン生産菌株を作製し、この株をコリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ3と名付けた。2コピーのdapA/dapB遺伝子が隣接して位置することは、2コピーのdapA/dapB遺伝子の間の連結領域を増幅することが可能なプライマーのセット(表7)を用いたPCRによって最終確認した。
【表7】
【0049】
[実施例6:リジン生産コリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881由来のlysA遺伝子のクローニング、組み換えベクター(pDZ−2lysA)の構築、およびlysA挿入菌株の調製]
lysA遺伝子の塩基配列情報(NCBI登録番号 NC_003450、Ncgl1132〜1133)をNIH GenBankのデータから得た。lysA遺伝子を分析すると、argS遺伝子(arginyl−tRNAシンテターゼ)とオペロンを含んでいた。この情報を使用して、argSのプロモーターから終止コドンにおよびargS−lysA遺伝子全体を増幅するための2組のプライマーを設計した(表8)。
【表8】
【0050】
コリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881の核DNAを鋳型とし、配列番号13と14のオリゴヌクレオチドまたは配列番号15と16のオリゴヌクレオチドのセットをプライマーとして、PfuUltraTM高信頼DNAポリメラーゼ(Stratagene)の存在下でPCRを行った。PCRは、変性96℃、30秒;アニーリング52℃、30秒;および伸長反応72℃、4分を1サイクルとして30サイクル繰り返し行った。
【0051】
こうして得たPCR産物は、3,359bpのプロモーター領域をそれぞれ含んだ2種のargS/lysA遺伝子(argS/lysA−AおよびargS/lysA−B)であった。argS/lysA−Aは配列番号13と14のセットによって、argS/lysA−Bは配列番号15と16のセットによって、それぞれ産生された。前記PCR産物をTOPO Cloning Kit(Invitrogen)を用いて大腸菌ベクターpCR2.1にクローニングして、組換えベクターpCR−argS/lysA−AとpCR−argS/lysA−Bを得た。
【0052】
これらのpCRベクターを、argS/lysA−AおよびargS/lysA−Bの反対の末端に特異的な対応する制限酵素(argS/lysA−A:HindIII+NotI、argS/lysA−B:NotI+XbaI)で処理し、前記pCRベクターからargS/lysA遺伝子を分離した。これらのフラグメントを、pDZベクターのHindIII−XbaI部位に3ピースライゲーションでクローニングし、2コピーのargS/lysA2コピーが連続的にクローニングされた組換えベクターpDZ−2lysAを構築した。図5は、pDZ−2lysAベクターのマップである。
【0053】
組換えベクターpDZ−2lysAを、実施例5で調製したリジン生産コリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ3に形質転換し、交叉過程を経て核DNA上でlysA遺伝子のすぐ隣に1コピーのlysA遺伝子をさらに挿入して、2コピーのlysA遺伝子を含むリジン生産菌株を作製し、この株をコリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ4と名付けた。2コピーのlysA遺伝子が隣接して位置することは、2コピーのlysA遺伝子の間の連結領域を増幅することが可能なプライマーのセット(表9)を用いたPCRによって最終確認した。
【表9】
【0054】
インビボでリジン生合成に関連した6種の遺伝子を有するリジン生産菌株のコリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ4を2006年8月21日付けで韓国微生物保存センターに寄託し、受託番号KCCM10770Pを与えられた。
【0055】
[実施例7:リジン生産コリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881由来のpyc遺伝子のクローニング、組み換えベクター(pDZ−2pyc)の構築、およびpyc挿入菌株の調製]
実施例3と同様一の方法で、pyc遺伝子の塩基配列情報(NCBI登録番号NC_003450、Ncgl0659)をNIH GenBankのデータから得て、これを用いて2組のプライマーを設計し、プロモーター領域から終止コドンにおよぶpyc遺伝子を増幅した(表10)。
【表10】
【0056】
コリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881の核DNAを鋳型とし、配列番号31と32のオリゴヌクレオチドまたは配列番号33と34のオリゴヌクレオチドのセットをプライマーとして、PfuUltraTM高信頼DNAポリメラーゼ(Stratagene)の存在下でPCRを行った。PCRは、変性96℃、30秒;アニーリング52℃、30秒;および伸長反応72℃、4分を1サイクルとして30サイクル繰り返し行った。こうして得たPCR産物は、3925bpのプロモーター領域をそれぞれ含んだ2種のpyc遺伝子(pyc−Aおよびpyc−B)であった。pyc−Aは配列番号31と32のセットによって、pyc−Bは配列番号33と34のセットによって、それぞれ産生された。前記PCR産物をTOPO Cloning Kit(Invitrogen)を用いて大腸菌ベクターpCR2.1にクローニングして、組換えベクターpCR−pyc−AおよびpCR−pyc−Bを得た。
【0057】
これらpCRベクターを、pyc−Aおよびpyc−Bの反対の末端に特異的な対応する制限酵素(pyc−A:XbaI+EcoRV、pyc−B:EcoRV+HindIII)で処理し、前記pCRベクターからpyc遺伝子を分離した。これらのフラグメントを、pDZベクターのXbaI−HindIII部位に3ピースライゲーションでクローニングし、2コピーのpycが連続的にクローニングされた組換えベクターpDZ−2pycを構築した。図6は、pDZ−2pycベクターのマップである。
【0058】
組換えベクターpDZ−2pycを、実施例6で調製したリジン生産コリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ4に形質転換し、交叉過程を経て核DNA上でpyc遺伝子のすぐ隣に1コピーのpyc遺伝子をさらに挿入して、2コピーのpyc遺伝子を有するリジン生産菌株を作製し、この株をコリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ5と名付けた。2コピーのpyc遺伝子が隣接して位置することは、2コピーのpyc遺伝子の間の連結領域を増幅することが可能なプライマーのセット(表11)を用いたPCRによって最終確認した。
【表11】
【0059】
その結果、リジン生合成に関連した7種の遺伝子を有するリジン生産菌株のコリバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ5を獲得した。
【0060】
[実施例8:リジン生合成遺伝子複合挿入菌株におけるリジン生産]
それぞれ実施例6と実施例7で調製した、L−リジン生産菌株であるコリネバクテリアグルタミカム KFCC−10881−CJ4とKFCC−10881−CJ5を、L−リジンの生産のために、下記の方法で培養した。
【0061】
下記の種培地25mLを含有する240mLのコーナーバッフルフラスコにコリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881、KFCC−10881−CJ4およびKFCC−10881−CJ5を接種し、30℃で20時間200rpmにて振とう培養した。その後、下記の生産培地24mLを含有する250mLのコーナーバッフルフラスコに、前記培養された1mLの種培養液をそれぞれ接種し、30℃で120時間200rpmにて振とう培養した。前記種培地と前記生産培地の組成はそれぞれ下記のとおりである。
[種培地(pH7.0)]
グルコース 20g、ペプトン 10g、酵母抽出物 5g、尿素 1.5g、KHPO 4g、KHPO 8g、MgSO7HO 0.5g、ビオチン 100μg、チアミンHCl 1000μg、パントテン酸カルシウム 2000μg、ニコチンアミド 2000μg(蒸留水1L基準)
[生産培地(pH7.0)]
ブドウ糖 100g、(NHSO 40g、大豆タンパク質 2.5g、コーンスティープソリッド 5g、尿素 3g、KHPO 1g、MgSO7HO 0.5g、ビオチン 100μg、チアミン塩酸塩 1000μg、パントテン酸カルシウム 2000μg、ニコチンアミド 3000μg、CaCO 30g(蒸留水1L基準)。
【0062】
培養終了の後、HPLC分析を行って、これらの株によって産生されたL−リジンの量を測定した。コリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881、KFCC10881−CJ4およびKFCC10881−CJ5の培養物中のL−リジンの濃度は、以下の表12のとおりである。
【表12】
【0063】
表12に示すように、6個のリジン生合成に関与する遺伝子を有するコリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881−CJ4は、母菌株KFCC−10881に比べてリジンの生産が約7%程度増加したことを確認した。また、6個のリジン生合成遺伝子に加えてpyc遺伝子も有するコリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881−CJ5は、母菌株KFCC−10881に比べてリジンの生産が約8%程度増加したことを確認した。
【0064】
[実施例9:リジン生産コリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881由来の3コピーのlysC/asd挿入菌株の調製]
実施例4で調製した組換えベクターpDZ−2lysC/asdを、実施例6で調製したリジン生産コリネバクテリウムグルタミカムKFCC10881−CJ4に形質転換し、交叉過程を経て核DNA上で隣接する2コピーのlysC/asd遺伝子のすぐ隣に1コピーのlysC/asd遺伝子をさらに挿入して、3コピーのlysC/asd遺伝子を有するリジン生産菌株を作製し、この株をコリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ6と名付けた。3コピーのlysC/asd遺伝子が連続して整列していることは、3コピーのlysC/asd遺伝子のなかの連結領域を増幅することが可能なプライマーのセット(表13)を用いたPCRによって最終確認した。
【表13】
【0065】
リジン生産菌株のコリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ6のアスパラギン酸キナーゼの活性を、Pechere J−FとCapony J−Pのアスパラギン酸ヒドロキサメートを用いた測定法(Anal Biochem 22 : 536-539, 1968)によって測定した結果、KFCC10881−CJ6がKFCC10881−CJ4より2.1倍程度高い活性を持つことを確認した。
【表14】
【0066】
[実施例10:リジン生産コリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881由来の3コピーのdapA/dapB遺伝子挿入菌株の調製]
実施例5で調製した組換えベクターpDZ−2dapA/dapBを、実施例9で調製したリジン生産コリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ6に形質転換し、交差過程を経て核DNA上で隣接する2コピーのdapA/dapB遺伝子のすぐ隣に1コピーのdapA/dapB遺伝子をさらに挿入して、3コピーのdapA/dapB遺伝子を有するリジン生産菌株を作製し、この株をコリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ7と名付けた。3コピーのdapA/dapB遺伝子が連続して整列していることは、3コピーのdapA/dapB遺伝子のなかの連結領域を増幅することが可能なプライマーのセット(表15)を用いたPCRによって最終確認した。
【表15】
【0067】
[実施例11:リジン生合成に関係する複合遺伝子複合挿入菌株におけるリジン生産]
実施例10で調製したL−リジン生産菌株としてのコリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881−CJ7を、L−リジンの生産のために、下記の方法で培養した。
【0068】
下記の種培地25mLを含有する250mLのコーナーバッフルフラスコにコリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881−CJ4とKFCC−10881−CJ7を接種し、30℃で20時間200rpmで振とう培養した。その後、下記の生産培地24mLを含有する250mLのコーナーバッフルフラスコに、各々の培養物1mLを接種し、30℃で120時間(200rpm)で振とう培養した。前記種培地および前記生産培地の組成はそれぞれ下記のとおりである。
[種培地(pH7.0)]
グルコース 20g、ペプトン 10g、酵母抽出物 5g、尿素 1.5g、KHPO 4g、KHPO 8g、MgSO7HO 0.5g、ビオチン 100μg、チアミンHCl 1000μg、パントテン酸カルシウム 2000μg、ニコチンアミド 2000μg(蒸留水1L基準)
[生産培地(pH7.0)]
ブドウ糖 100g、(NHSO 40g、大豆タンパク質 2.5g、コーンスティープソリッド 5g、尿素 3g、KHPO 1g、MgSO7HO 0.5g、ビオチン 100μg、チアミン塩酸塩 1000μg、パントテン酸カルシウム 2000μg、ニコチンアミド 3000μg、CaCO 30g(蒸留水1L基準)。
【0069】
培養終了の後、HPLC分析を行って、これらの株によって産生されたL−リジンの量を測定した。コリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881−CJ4とKFCC−10881−CJ7の培養物中のL−リジンの濃度は、以下の表16のとおりである。
【表16】
【0070】
表16に示すように、3個のリジン生合成に関与する遺伝子を三重で有するコリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881−CJ7は、母菌株KFCC−10881−CJ4に比べてリジンの生産が約11%程度増加したことを確認することができた。
【0071】
[実施例12:リジン生合成遺伝子についてのプロモーター置換用ベクターの構築、および外来プロモーター置換の菌株の調製]
本実施例では、pDZを基本ベクターとして使用し、リジン生合成遺伝子の固有のプロモーターを外来の強力なCJ7プロモーターで置換した。CJ7プロモーターは、配列番号44〜50に示される塩基配列を有するコリネバクテリウムアンモニアゲネス由来の強力なプロモーターであって、本出願人に対して許可された韓国特許第0620092号において開示されている。コリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881の核lysCをCJ7プロモーターの存在下で発現させた場合、固有プロモーターを用いたときよりアスパラギン酸キナーゼの活性が約2倍程度増加することを確認した。
【0072】
CJ7プロモーターをリジン生産菌株の核DNA上に導入するためのベクターは、以下のとおり調製した。
【0073】
まず、pDZベクターを制限酵素XbaIとNdeIで処理した。コリネバクテリウムアンモニアゲネスの核DNAのCJ7プロモーターから増幅するPCR産物の5’末端および3’末端に、それぞれXbaI部位とNdeI部位とを挿入するように設計したプライマーとして、配列番号42および43(表17)を用いてPCRを行った。CJ7プロモーターPCR増幅産物をXbaIとNdeIで処理した後、切断型(truncated)pDZベクターに連結することにより、菌株の核DNA上にCJプロモーターを導入するための1次プラスミドとして機能するpDZ−PCJ7を製作した(図7)。
【表17】
【0074】
実施例2で調製したリジン生産菌株のコリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881の核DNAを鋳型としたPCRを行い、核DNA上に導入される遺伝子のそれぞれの固有のプロモーターをCJ7プロモーターで置換するために必要な2種のDNAフラグメント、すなわち固有プロモーターの部分フラグメント(約300bp)と+2コドンから下流側へ約300bp程度のORFの一部を得た。このPCRに使用したプライマーは、固有プロモーターの部分フラグメントのPCR産物の反対の末端にXbaI部位を挿入し、そして部分ORFのPCR産物の反対の末端にNdeI部位が挿入されるように設計した。これらのPCR産物をそれぞれの制限酵素で処理した。pDZ−PCJ7は、固有プロモーターの部分フラグメントの切断型PCR産物にライゲーションするためにXbaIで消化し、次いで、部分ORFの切断型PCR産物にライゲーションするためにNdeIで消化して、組換えプラスミドを構築した。これらはそれぞれpDZ−PCJ7−aspB、pDZ−PCJ7−lysCasd、pDZ−PCJ7−dapA、pDZ−PCJ7−dapB、pDZ−PCJ7−argSlysAおよびpDZ−PCJ7−pycと命名した。これらはそれぞれ2つのPCR DNAフラグメントの間に位置するCJ7プロモーターを含んでいた(図8図13)。
【0075】
前記プラスミドを、以下の標的遺伝子の組み換えのために使用した。まず、組換えベクターpDZ−PCJ7−aspBをリジン生産コリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881に形質転換した後、交叉過程を経て、核DNA上でaspB遺伝子のプロモーター領域にCJ7プロモーターが挿入された菌株を獲得した。これと同一の方法で、CJ7プロモーターがaspB、lysCasd、dapA、dapBおよびargSlysA遺伝子のプロモーター領域に位置する新規株KFCC−10881−PJ7−5を作製するために、他の組み換えプラスミドを形質転換した。これらのプロモーターに加えて、pyc遺伝子のプロモーターまでCJ7プロモーターで置換して、KFCC−10881−PCJ7−6も製作した。
【0076】
[実施例13:リジン生合成遺伝子のための外来プロモーターを有する菌株におけるリジン生産]
L−リジン生産菌株であるコリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881−PCJ7−5とKFCC−10881−PCJ7−6を、L−リジンの生産のために、下記の方法によって培養した。
【0077】
下記の種培地25mLを含有する250mLのコーナーバッフルフラスコにコリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881、KFCC−10881PCJ7−5およびKFCC−10881−PCJ7−6をそれぞれ接種し、30℃で20時間200rpmで振とう培養した。その後、各々の培養物1mLを下記の生産培地24mLを含有する250mLのコーナーバッフルフラスコに接種し、30℃で120時間(200rpm)で振とう培養した。前記種培地および前記生産培地の組成はそれぞれ下記のとおりである。
[種培地(pH7.0)]
グルコース 20g、ペプトン 10g、酵母抽出物 5g、尿素 1.5g、KHPO 4g、KHPO 8g、MgSO7HO 0.5g、ビオチン 100μg、チアミンHCl 1000μg、パントテン酸カルシウム 2000μg、ニコチンアミド 2000μg(蒸留水1L基準)
[生産培地(pH7.0)]
ブドウ糖 100g、(NHSO 40g、大豆タンパク質 2.5g、コーンスティープソリッド 5g、尿素 3g、KHPO 1g、MgSO7HO 0.5g、ビオチン 100μg、チアミン塩酸塩 1000μg、パントテン酸カルシウム 2000μg、ニコチンアミド 3000μg、CaCO 30g(蒸留水1L基準)。
【0078】
培養終了の後、HPLC分析を行って、これらの株によって産生されたL−リジンの量を測定した。コリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881、KFCC−10881−PCJ7−5およびKFCC−10881−PCJ7−6の培養物中のL−リジンの濃度は、以下の表18のとおりである。
【表18】
【0079】
表18に示すように、6個のリジン生合成に関与する遺伝子がそれぞれ外来CJ7プロモーターを有するコリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881−PCJ7−5と、前記6個の遺伝子とプロモーターに加えて、さらにpyc遺伝子とそのCJ7プロモーターを有するコリネバクテリウムグルタミカム KFCC−10881−PCJ7−6は、母菌株KFCC−10881に比べてリジンの生産がそれぞれ約17.4%と18.6%増加したことを確認することができた。
【0080】
[実施例14:リジン生合成に関係する追加遺伝子を有し、置換された外来プロモーターを有する菌株におけるリジン生合成酵素の活性]
実施例6、実施例10および実施例12でそれぞれ調製した、L−リジン生産菌株であるコリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ4、KFCC10881−CJ7およびKFCC−10881−PCJ7−5を、リジン生合成酵素の代表として、酵素活性の測定が比較的容易なアスパラギン酸キナーゼとジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼの活性についてアッセイした。この改変されたリジン産生菌株は、アスパラギン酸キナーゼの活性はPechere J−FとCapony J−Pの測定法(Anal Biochem 22:536-539, 1968)によって測定し、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼの活性はJ.Cremerなどの測定法によって測定した結果、最初の母菌株であるKFCC10881に比べて酵素活性が増加したことを確認した(表19)。
【表19】

本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ、ジヒドロジピコリン酸リダクターゼ、およびジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼの酵素活性がそれぞれの内在性活性と比較して増加した、コリネバクテリウム属微生物。
[2]
前記微生物は、さらにピルビン酸カルボキシラーゼの酵素活性が内在性活性と比較して増加している、上記[1]に記載のコリネバクテリウム属微生物。
[3]
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ、ジヒドロジピコリン酸リダクターゼ、およびジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼの酵素活性の増加は、コリネ型細菌群のaspB遺伝子、lysC遺伝子、asd遺伝子、dapA遺伝子、dapB遺伝子およびlysA遺伝子の発現の増加によるものである、上記[1]に記載のコリネバクテリウム属微生物。
[4]
前記ピルビン酸カルボキシラーゼの酵素活性の増加は、コリネ型細菌群のpyc遺伝子の発現の増加によるものである、上記[2]に記載のコリネバクテリウム属微生物。
[5]
前記発現の増加は、前記微生物の内在性遺伝子に対応する外来対立遺伝子の1つ以上のコピーを導入されることによるものである、上記[3]または[4]に記載のコリネバクテリウム属微生物。
[6]
前記微生物は、受託番号KFCC10881のコリネ型細菌群である、上記[5]に記載のコリネバクテリウム属微生物。
[7]
前記aspB遺伝子、lysC遺伝子、asd遺伝子、dapA遺伝子、dapB遺伝子、lysA遺伝子およびpyc遺伝子は、それぞれ配列番号25、26、27、28、29、30および37のヌクレオチド配列を有する、上記[5]に記載のコリネバクテリウム属微生物。
[8]
前記導入は、それぞれ図2図6の切断地図を有するベクターをコリネ型細菌群に形質転換することにより行われる、上記[5]に記載のコリネバクテリウム属微生物。
[9]
前記外来の対立遺伝子は、前記微生物の核DNAに挿入される、上記[5]に記載のコリネバクテリウム属微生物。
[10]
前記微生物は、受託番号KCCM10770Pのコリネバクテリウムグルタミカム KFCC10881−CJ4である、上記[5]に記載のコリネバクテリウム属微生物。
[11]
前記発現の増加は、各遺伝子に対する外来プロモーターの導入によってなされる、上記[3]〜[10]のいずれか1項に記載のコリネバクテリウム属微生物。
[12]
前記外来プロモーターは、配列番号44〜50のいずれかに示されるヌクレオチド配列を有する、上記[11]に記載のコリネバクテリウム属微生物。
[13]
前記外来プロモーターは、配列番号44に示されるヌクレオチド配列である、上記[12]に記載のコリネバクテリウム属微生物。
[14]
前記外来プロモーターの導入は、図8図13に示されるベクターの少なくとも一つをコリネ型細菌群に導入することにより行われる、上記[11]に記載のコリネバクテリウム属微生物。
[15]
上記[1]〜[14]のいずれか1項に記載の微生物を培養する工程と、
前記微生物の細胞または細胞培養物からリジンを回収する工程とを含む、L−リジンの生産方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]