(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、流路を流通する流体から一の基板の下面に圧力が加わるので、当該一の基板の内部に応力が発生する、という問題があった。かかる応力は、当該一の基板に設けられた検出部において検出信号のノイズとなって表れるおそれがあった。
【0005】
本発明のいくつかの態様は前述の問題に鑑みてなされたものであり、流体からの圧力による応力を低減することのできるフローセンサを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフローセンサは、流体の速度を検出するための検出部を有する基板と、基板の一方の面側に第1の空間を形成し、基板の他方の面側に第2の空間を形成するように設けられた流路形成部材と、を備え、第1及び第2の空間のうちの少なくとも一方に、流体が流通し、基板には、第1の空間と第2の空間とを連通し、検出部に対して上流側に形成される上流側貫通孔と、第1の空間と第2の空間とを連通し、検出部に対して下流側に形成される下流側貫通孔と、が設けられている。
【0007】
かかる構成によれば、第1及び第2の空間のうちの少なくとも一方に流体が流通し、第1の空間と第2の空間とを連通し、検出部に対して上流側に形成される上流側貫通孔と、第1の空間と第2の空間とを連通し、検出部に対して下流側に形成される下流側貫通孔と、が基板に設けられている。このように、基板に設けられた上流側貫通孔及び下流側貫通孔によって、基板の一方の面側の第1の空間と基板の他方の面側の第2の空間とが連通されるので、第1の空間における圧力と第2の空間における圧力との差(差圧)が小さくなる。これにより、基板の一方の面と他方の面との両面において、流体から受ける圧力の差(差圧)が小さくなり、基板の内部に発生する応力を低減することができるとともに、応力による検出信号のノイズを低減することができる。また、基板の厚さを変更することなく、流体からの圧力による応力を低減することができるので、基板に設けられた検出部において、所望の検出感度を設定することができる。
【0008】
好ましくは、前述の上流側貫通孔を介して第1及び第2の空間のうちの一方から他方に流体が流通し、前述の下流側貫通孔を介して第1及び第2の空間のうちの他方から一方に流体が流通する。
【0009】
かかる構成によれば、上流側貫通孔を介して第1及び第2の空間のうちの一方から他方に流体が流通し、下流側貫通孔を介して第1及び第2の空間のうちの他方から一方に流体が流通する。これにより、基板の一方の面側と他方の面側との両側に流体が流通する。また、このとき、基板の検出部は、流体が流通する第1の空間と流体が流通する第2の空間との間に宙吊りの状態で配置される。これにより、基板の一方の面と他方の面とに流体から圧力を受けるので、基板の両面において、流体から受ける圧力の差(差圧)を小さくすることができる。
【0010】
また、本発明に係るフローセンサは、流体の速度を検出するための検出部を有する基板と、基板の一方の面側に第1の空間を形成し、基板の他方の面側に第2の空間を形成するように設けられた流路形成部材と、を備え、第1及び第2の空間の両方に、流体が流通する。
【0011】
かかる構成によれば、第1及び第2の空間の両方に流体が流通する。これにより、基板の一方の面側と他方の面側との両側に流体が流通する。また、このとき、基板の検出部は、流体が流通する第1の空間と流体が流通する第2の空間との間に宙吊りの状態で配置される。これにより、基板の一方の面と他方の面とに流体から圧力を受けるので、基板の両面において、流体から受ける圧力の差(差圧)が小さくなり、基板の内部に発生する応力を低減することができるとともに、応力による検出信号のノイズを低減することができる。また、基板の厚さを変更することなく、流体からの圧力による応力を低減することができるので、基板に設けられた検出部において、所望の検出感度を設定することができる。
【0012】
好ましくは、前述の第1及び第2の空間は、流体が流通する方向に対して垂直な断面の面積が同一である。
【0013】
かかる構成によれば、第1及び第2の空間は、流体が流通する方向に対して垂直な断面の面積が同一である。これにより、第1の空間を流通する流体の流量と第2の空間を流通する流体の流量とが同一になる。これにより、基板の一方の面に受ける流体からの圧力と、基板の他方の面に受ける流体からの圧力とが同一になるので、基板の両面において、流体から受ける圧力の差(差圧)を更に小さくすることができる。
【0014】
好ましくは、前述の検出部は、流体を加熱するヒータと、ヒータによって生ずる流体の温度差を測定するように構成された測温ユニットとを含む。
【0015】
かかる構成によれば、検出部が、流体を加熱するヒータと、ヒータによって生ずる流体の温度差を測定するように構成された測温ユニットとを含む。これにより、流体の温度差から当該流体の速度(流速)を検出する熱式のフローセンサを容易に実現(構成)することができる。また、基板の一方の面側と他方の面側との両側に流体が流通する場合、基板の一方の面側と他方の面側の何れか一方に流体が流通する場合と比較して、流体の流通によってヒータの熱が拡散し易くなる(運ばれ易くなる)。これにより、流体の速度に対して測温ユニットの測定感度を高めることができる。
【0016】
好ましくは、前述の測温ユニットは、ヒータに対して上流側と下流側とにそれぞれ配置される複数の温度センサを有する。
【0017】
かかる構成によれば、測温ユニットが、ヒータに対して上流側と下流側とにそれぞれ配置される複数の温度センサを有する。これにより、ヒータに対して上流の流体の温度と下流の流体の温度とをそれぞれ測定することができ、ヒータによって生ずる流体の温度差を容易に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
【0020】
図1乃至
図10は、本発明に係るフローセンサの一例を示すためのものである。
図1は、本発明に係るフローセンサの一例を説明する側方断面図である。
図1に示すように、フローセンサ10は、第1基板20aと第2基板20bとを含む基板20と、基板20の上に設置された上部流路形成部材30と、基板20の下に設置された下部流路形成部材40と、を備える。なお、本実施形態における上部流路形成部材30及び下部流路形成部材40は、本発明のフローセンサにおける「流路形成部材」の一例に相当する。
【0021】
図2は、
図1に示した上部流路形成部材の下面図である。
図2に示すように、上部流路形成部材30の下面には、矩形状の凹部31が設けられている。凹部31は、基板20における対向する面、すなわち
図1に示した第2基板20bの上面との間に
図1に示す第1空間31aを形成する。凹部31には、外部に通じる流入口32と流出口33が設けられている。
図1に示したように、流入口32及び流出口33は、凹部31の底面から上部流路形成部材30の上面に貫通しており、流入口32から流入した流体が第1空間31aを通って流出口33から流出するようになっている。また、後述する基板20の電極部26,27に対応する位置に切欠部34,35が形成されており、上部流路形成部材30を基板20の上に設置したときに、電極部26,27が露出するようになっている。
【0022】
図3は、
図1に示した下部流路形成部材の上面図である。
図3に示すように、下部流路形成部材40の上面には、矩形状の凹部41が設けられている。凹部41は、基板20における対向する面、すなわち
図1に示した第1基板20aの下面との間に
図1に示した第2空間41aを形成する。
【0023】
上部流路形成部材30及び下部流路形成部材40の材料としては、例えば、ステンレス、シリコン(Si)、シリコン(Si)に二酸化ケイ素(SiO
2)をコーティングしたもの、アルミナセラミックス、ガラス、サファイア等が挙げられる。なお、上部流路形成部材30及び下部流路形成部材40は、同一材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0024】
図4は、
図1に示した基板を説明する上面図である。
図4に示すように、基板20は、基板20の中央部に設けられ、流体の速度を検出するための検出部21を有する。検出部21は、流体を加熱するヒータ(抵抗素子)22と、ヒータ22によって生ずる流体の温度差を測定するように構成された一組の抵抗素子23,24と、を含んで構成される。これにより、流体の温度差から当該流体の速度(流速)を検出する熱式のフローセンサ10を容易に実現(構成)することができる。なお、本実施形態における抵抗素子23,24は、本発明のフローセンサにおける「測温ユニット」の一例に相当する。
【0025】
抵抗素子23,24は、基板20においてヒータ22を挟んでヒータ22の左側と右側との両側に、それぞれ設けられる。また、基板20は、周囲温度センサ(抵抗素子)35と、平面視において基板20の上辺側と下辺側とに設けられ、複数の電極26a,26b,26c,27a,27b,27cを有する一組の電極部26,27と、をさらに有する。電極部26,27の各電極26a,26b,26c,27a,27b,27cと、ヒータ22、抵抗素子23,24、及び周囲温度センサ25とは、基板20に形成された配線によって電気的に接続されている。
【0026】
このような構成を備えるフローセンサ10は、例えば
図1中にブロック矢印で示すように、測定対象である流体、例えばガスの流通する方向に沿って、抵抗素子23,22及び24が順に並ぶように配置される。この場合、抵抗素子23は、ヒータ22よりも上流側(
図1において左側)に設けられた上流側温度センサとして機能し、抵抗素子24は、ヒータ22よりも下流側(
図1において右側)に設けられた下流側温度センサとして機能する。このように、ヒータ22に対して上流側に抵抗素子23を配置し、下流側に抵抗素子24を配置することにより、ヒータ22に対して上流の流体の温度と下流の流体の温度とをそれぞれ測定することができ、ヒータ22によって生ずる後述する流体の温度差を、容易に測定することができる。
【0027】
基板20において検出部21が形成される部分は、後述するように、熱容量が小さいダイアフラムを成す。周囲温度センサ25は、フローセンサ10が設置された管路(図示省略)を流通するガスの温度を測定する。ヒータ22は、例示的に、基板20の中心に配置されており、周囲温度センサ25が計測したガスの温度よりも一定温度高くなるように、加熱される。上流側温度センサ23は、ヒータ22よりも上流側の温度を検出するのに用いられ、下流側温度センサ24は、ヒータ22よりも下流側の温度を検出するのに用いられる。
【0028】
ここで、管路内のガスが静止している場合、ヒータ22で加えられた熱は、上流方向及び下流方向へ対称的に拡散する。従って、上流側温度センサ23及び下流側温度センサ24の温度は等しくなり、上流側温度センサ23及び下流側温度センサ24の電気抵抗は等しくなる。これに対し、管路内のガスが上流から下流に流れている場合、ヒータ22で加えられた熱は、下流方向に運ばれる。従って、上流側温度センサ23の温度よりも、下流側温度センサ24の温度が高くなる。
【0029】
このような温度差は、上流側温度センサ23の電気抵抗と下流側温度センサ24の電気抵抗との間に差を生じさせる。下流側温度センサ24の電気抵抗と上流側温度センサ23の電気抵抗との差は、管路内のガスの速度や流量と相関関係がある。そのため、下流側温度センサ24の電気抵抗と上流側温度センサ23の電気抵抗との差を基に、管路を流通する流体の速度(流速)や流量を算出することができる。抵抗素子22、23及び24の電気抵抗の情報は、
図4に示す電極部26,27を通じて電気信号として取り出すことができる。
【0030】
また、
図4に示すように、基板20には、検出部21を挟んで検出部21の左側と右側の両側に形成された一組の貫通孔28,29が設けられている。
図1に示したように、貫通孔28,29は、基板20の上面から下面まで貫通し、第1空間31aと第2空間41aとを連通している。貫通孔28は検出部21に対して上流側(
図1において左側)に配置されて上流側貫通孔として機能し、貫通孔29は検出部21に対して下流側(
図1において右側)に配置されて下流側貫通孔として機能する。このように、基板20に設けられた上流側貫通孔28及び下流側貫通孔29によって、基板20の一方の面(
図1において上面)側の第1空間31aと基板20の他方の面(
図1において下面)側の第2空間41aとが連通されるので、第1空間31aにおける圧力と第2空間41aにおける圧力との差(差圧)が小さくなる。
【0031】
本実施形態では、
図1中に矢印で示したように、流入口32から流入した流体が、第1空間31aを流通するとともに、上流側貫通孔28を通って第2空間41aを流通する。また、第1空間31aを流通した流体は流出口33から流出し、第2空間31aを流通した流体は、下流側貫通孔29を通って流出口33から流出する。このように、上流側貫通孔28を介して第1空間31a及び第2空間41aのうちの一方(
図1において第1空間31a)から他方(
図1において第2空間41a)に流体が流通し、下流側貫通孔29を介して第1空間31a及び第2空間41aのうちの他方(
図1において第2空間41a)から一方(
図1において第1空間31a)に流体が流通することより、基板20の一方の面(
図1において上面)側と他方の面(
図1において下面)側との両側に流体が流通する。また、このとき、基板20の検出部21は、流体が流通する第1空間31aと流体が流通する第2空間41aとの間に宙吊りの状態で配置される。
【0032】
また、第1空間31a及び第2空間41aは、
図1中に矢印で示した流体が流通する方向に対して垂直な断面の面積が同一であることが好ましい。これにより、第1空間31aを流通する流体の流量と第1空間31aを流通する流体の流量とが同一になる。
【0033】
なお、本明細書における「同一」という用語は、同じである場合に加え、略同一である場合も含む意味である。
【0034】
次に、
図5乃至
図10を参照して基板20の製造方法の一例を説明する。
【0035】
図5乃至
図10は、
図1に示した基板の製造方法の一例を説明する側方断面図である。なお、
図5乃至
図8と
図10は、
図4に示したI−I線矢視方向断面図であり、
図9は
図4に示したII−II線矢視方向断面図である。最初に、
図5に示すように、
図1に示した第1基板20aの元となる部材として、板状のウエハAを用意する。ウエハAは、例えば、250μm程度の厚さを有している。
【0036】
次に、
図6に示すように、ウエハAの下面の中央部に、ドリル等を用いた機械加工により座ぐりのような凹みを形成する。次に、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の方法により、凹みを形成した部分の反対の面(上面)に、白金等の金属を付着させ、検出部21を構成する各要素を形成(パターニング)する。また、同様の方法により、検出部21を挟んだ両側(右側と左側)に、電極部26,27を構成する各電極を形成(パターニング)するとともに、検出部と電極部26,27とを接続する配線を形成(パターニング)する。
【0037】
次に、
図1に示した第2基板20aの元となる部材として、
図5に示したウエハAと同様の板状のウエハBを用意し、
図7に示すように、ウエハBの上面の中央部に、ドリル等を用いた機械加工により座ぐりのような凹みを形成する。また、後述するウエハAとウエハBとの接合の際に、ウエハAの電極部26,27に対応する位置に、それぞれ貫通孔を形成する。
【0038】
次に、
図8に示すように、
図6に示したウエハAの上面に、
図7に示したウエハBを下面を載置し、ウエハAの上面とウエハBの下面とを接合する。これにより、ウエハAの上面に設けられた検出部21は、ウエハA及びウエハBによって被覆される。
【0039】
接合方法としては、例えば、拡散接合、アルゴン(Ar)等の不活性ガスを用いたイオンビームを接合する両面に照射して活性化してから接合する表面活性化接合(常温接合)、金や銀等のろう材を接合する両面に付けてから接合するろう付け、陽極接合等が挙げられる。また、接合方法は、接合する部材の種類によって適切な接合方法を使い分ける。具体的には、ウエハA及びウエハBの材料がガラスの場合には、陽極接合は用いることができず、表面活性化接合等を用いる。一方、ウエハA及びウエハBの材料がシリコン(Si)の場合には、陽極接合を好適に用いることができる。
【0040】
なお、本明細書における「接合」という用語は、物と物とをつなぎ合わせる広義の接合を意味し、ろう付け等を含む概念である。また、「接合」という用語は、接着剤を用いる方法を除外する意味であることが好ましい。
【0041】
次に、
図9に示すように、検出部21を挟んだ両側(右側と左側)に、ドリル等を用いた機械加工によりウエハBの上面からウエハAの下面まで貫通した貫通孔28,29を形成する。
【0042】
最後に、
図10に示すように、ウエハAの凹みを形成した部分とウエハBの凹みを形成した部分に、
図10中にブロック矢印で示すエッチングを施して当該部分の厚さをそれぞれ制御する。これにより、第1基板20aと第2基板20bとを含む基板20が製造される。
【0043】
この基板20では、検出部21が第1基板20aの一方の面(
図10において上面)に設けられ、第1基板20aの一方の面(
図10において上面)と第2基板20bの他方の面(
図10において下面)とが接合されている。これにより、検出部21は、第1基板20aと第2基板20bとの間に配置されるので、外部に対して露出する(曝される)ことがない。
【0044】
また、エッチングを施した結果、第1基板20aの他方の面(
図10において下面)に第1凹部201aが形成され、第2基板20bの一方の面(
図10において上面)における第1凹部201aに対向する位置に、第2凹部201bが形成されている。検出部21は第1凹部201aと第2凹部201bとの間に配置される。これにより、第1基板20a及び第2基板20bの他の部分と比較して、検出部21を被覆する第1凹部201a及び第2凹部201bの厚さが薄くなる。
【0045】
第1凹部201a及び第2凹部201bは、熱容量が小さいダイアフラム201を成しており、ダイアフラム201は、例えば、10〜100μm程度の厚さを有している。
【0046】
第1基板20a及び第2基板20bの材料としては、前述の上部流路形成部材30及び下部流路形成部材40と同様の材料が挙げられる。なお、第1基板20a及び第2基板20bは、同一材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0047】
図11は、本発明に係るフローセンサの他の例を説明する側方断面図であり、
図12は、
図11に示したフローセンサの設置例を説明する側方断面図である。本発明に係るフローセンサは、
図1乃至
図10に示した例に限定されない。例えば、
図11に示すように、フローセンサ10Aは、
図1に示した基板20を上下逆さまに配置し、第1基板20aの上に上部流路形成部材30が設置され、第2基板20bの下に下部流路形成部材40が設置されている。また、下部流路形成部材40には、外部と第2空間41aを連通する流入口42及び流出口43が設けられている。
【0048】
この場合、フローセンサ10Aは、
図12に示すように、流体が所定方向(
図12において左側から右側方向)に流通する本体Aに、O(オー)リングXを介して組み付けられ、設置される。
このように、上流側貫通孔28を介して第1空間31a及び第2空間41aのうちの一方(
図12において第2空間41a)から他方(
図12において第1空間31a)に流体が流通し、下流側貫通孔29を介して第1空間31a及び第2空間41aのうちの他方(
図12において第1空間31a)から一方(
図12において第2空間41a)に流体が流通することより、基板20の一方の面(
図12において下面)側と他方の面(
図12において上面)側との両側に流体が流通する。
【0049】
図13は、本発明に係るフローセンサの他の例を説明する側方断面図であり、
図14は、
図13に示したフローセンサの設置例を説明する側方断面図である。また、流路形成部材は、基板20の一方の面側と他方の面側にそれぞれ空間を形成するように設けられていればよく、流路形成部材自体が空間を形成する場合に限定されない。例えば、
図13に示すように、フローセンサ10Bは、
図1に示した基板20を上下逆さまに配置し、第1基板20aの上に上部流路形成部材30が設置されている。
【0050】
この場合、フローセンサ10Bは、
図14に示すように、流体が所定方向(
図14において左側から右側方向)に流通し、上面の一部が開口した本体Bに、当該開口を覆うように設置される。これにより、本体Bと
図13に示した第2基板20bの一方の面(
図14において下面)との間に、第2空間41aが形成される。
【0051】
図15は、本発明に係るフローセンサの他の例を説明する側方断面図である。また、基板20は、上流側貫通孔28及び下流側貫通孔29を有する場合に限定されない。例えば、
図15に示すように、フローセンサ10Cは、基板20の一方の面(
図15において上面)側に第1空間31aを形成する、
図2に示した上部流路形成部材30の凹部31の一端(
図15において左端)に流入口32が設けられ、凹部31の他端(
図15において右端)に流出口33が設けられている。また、基板20の他方の面(
図15において下面)側に第2空間41aを形成する、
図3に示した下部流路形成部材40の凹部41の一端(
図15において左端)に流入口42が設けられ、凹部41の他端(
図15において右端)に流出口43が設けられている。
【0052】
この場合、フローセンサ10Cは、
図15中にブロック矢印で示す流体の流通する方向に対し、流入口32及び流入口42を向けて配置される。これにより、基板20に上流側貫通孔28及び下流側貫通孔29が無くても、流体が、流入口32及び流出口33を通って第1空間31aを流通するとともに、流入口42及び流出口43を通って第2空間41aを流通する。このように、第1空間31a及び第2空間41aの両方に流体が流通することにより、基板20の一方の面(
図15において上面)側と他方の面(
図15において下面)側との両側に流体が流通する。また、このとき、基板20の検出部21は、流体が流通する第1空間31aと流体が流通する第2空間41aとの間に宙吊りの状態で配置される。
【0053】
図16は、本発明に係るフローセンサの
参考例を説明する側方断面図である。また、流体は、基板20の一方の面側に形成された空間及び基板20の他方の面側に形成された空間の両方に流通する場合に限定されない。例えば、
図16に示すように、フローセンサ10Dは、下部流路形成部材40が基板20の他方の面(
図16において下面)側にキャビティ41bを形成している。上流側貫通孔28及び下流側貫通孔29は、
図1に示した場合と比較して、その直径が小さく設定されている。
【0054】
この場合、流体が所定速度で第1空間31aを流通している状態では、当該流体はキャビティ41bを流通することはない。すなわち、流体が所定速度で第1空間31aを流通し始めた初期状態では、上流側貫通孔28を通ってキャビティ41bに流体が流れ、下流側貫通孔29を通って第1空間31aに戻る場合がある。しかしながら、キャビティ41bに流体が満たされた(充填された)状態では、キャビティ41b内の流体は流動しないか、又は第1空間31aを流通する流体と比較して非常に遅い速度で流動する。よって、第1空間31aを流通する流体は、基板20の他方の面(
図16において下面)側に形成されたキャビティ41bを流通しない。
【0055】
なお、本明細書における「流通」という用語は、所定期間にわたり流体が流れ通ることを意味し、過渡的(一時的)に流体が流れ通る場合を除外する意味である。
【0056】
一方、上流側貫通孔28及び下流側貫通孔29は、第1空間31aとキャビティ41bとを連通する。このように、基板20に設けられた上流側貫通孔28及び下流側貫通孔29によって、基板20の一方の面(
図16において上面)側の第1空間31aと基板20の他方の面(
図16において下面)側のキャビティ41bとが連通されるので、第1空間31aにおける圧力とキャビティ41bにおける圧力との差(差圧)が小さくなる。
【0057】
このように、本実施形態におけるフローセンサ10,10A,10B,10Dによれば、第1空間31a及び第2空間41a(キャビティ41b)のうちの少なくとも一方に流体が流通し、第1空間31aと第2空間41a(キャビティ41b)とを連通し、検出部21に対して上流側に形成される上流側貫通孔28と、第1空間31aと第2空間41a(キャビティ41b)とを連通し、検出部21に対して下流側に形成される下流側貫通孔29と、が基板20に設けられている。このように、基板20に設けられた上流側貫通孔28及び下流側貫通孔29によって、基板20の一方の面(
図1、
図11、
図13、及び
図16において上面)側の第1空間31aと基板20の他方の面(
図1、
図11、
図13、及び
図16において下面)側の第2空間41a(キャビティ41b)とが連通されるので、第1空間31aにおける圧力と第2空間41a(キャビティ41b)における圧力との差(差圧)が小さくなる。これにより、基板20の一方の面(
図1、
図11、
図13、及び
図16において上面)と他方の面(
図1、
図11、
図13、及び
図16において下面)との両面において、流体から受ける圧力の差(差圧)が小さくなり、基板20の内部に発生する応力を低減することができるとともに、応力による検出信号のノイズを低減することができる。また、基板20の厚さを変更することなく、流体からの圧力による応力を低減することができるので、基板20に設けられた検出部21において、所望の検出感度を設定することができる。
【0058】
また、本実施形態におけるフローセンサ10,10A,10Bによれば、上流側貫通孔28を介して第1空間31a及び第2空間41aのうちの一方から他方に流体が流通し、下流側貫通孔29を介して第1空間31a及び第2空間41aのうちの他方から一方に流体が流通する。これにより、基板20の一方の面(
図1、
図11、及び
図13において上面)側と他方の面(
図1、
図11、及び
図13において下面)側との両側に流体が流通する。また、このとき、基板20の検出部21は、流体が流通する第1空間31aと流体が流通する第2空間41aとの間に宙吊りの状態で配置される。これにより、基板20の一方の面(
図1、
図11、及び
図13において上面)と他方の面(
図1、
図11、及び
図13において下面)とに流体から圧力を受けるので、基板20の両面において、流体から受ける圧力の差(差圧)を小さくすることができる。
【0059】
また、本実施形態におけるフローセンサ10Cによれば、第1空間31a及び第2空間41aの両方に流体が流通する。これにより、基板20の一方の面(
図15において上面)側と他方の面(
図15において下面)側との両側に流体が流通する。また、このとき、基板20の検出部21は、流体が流通する第1空間31aと流体が流通する第2空間41aとの間に宙吊りの状態で配置される。これにより、基板20の一方の面(
図15において上面)と他方の面(
図15において下面)とに流体から圧力を受けるので、基板20の両面において、流体から受ける圧力の差(差圧)が小さくなり、基板20の内部に発生する応力を低減することができるとともに、応力による検出信号のノイズを低減することができる。また、基板20の厚さを変更することなく、流体からの圧力による応力を低減することができるので、基板20に設けられた検出部21において、所望の検出感度を設定することができる。
【0060】
また、本実施形態におけるフローセンサ10,10A,10B,10Cによれば、第1空間31a及び第2空間41aは、流体が流通する方向に対して垂直な断面の面積が同一である。これにより、第1空間31aを流通する流体の流量と第2空間41aを流通する流体の流量とが同一になる。これにより、基板20の一方の面(
図1、
図11、
図13、及び
図15において上面)に受ける流体からの圧力と、基板20の他方の面(
図1、
図11、
図13、及び
図15において下面)に受ける流体からの圧力とが同一になるので、基板20の両面において、流体から受ける圧力の差(差圧)を更に小さくすることができる。
【0061】
また、本実施形態におけるフローセンサ10,10A,10B,10C、10Dによれば、検出部21が、流体を加熱するヒータ22と、ヒータ22によって生ずる流体の温度差を測定するように構成された測温ユニットとを含む。これにより、流体の温度差から当該流体の速度(流速)を検出する熱式のフローセンサ10,10A,10B,10C、10Dを容易に実現(構成)することができる。また、基板20の一方の面(
図1、
図11、
図13、及び
図15において上面)側と他方の面(
図1、
図11、
図13、及び
図15において下面)側の両側に流体が流通する場合、基板20の一方の面と他方の面の何れか一方に流体が流通する場合と比較して、流体の流通によってヒータ22の熱が拡散し易くなる(運ばれ易くなる)。これにより、流体の速度に対して測温ユニットの測定感度を高めることができる。
【0062】
また、本実施形態におけるフローセンサ10,10A,10B,10C、10Dによれば、測温ユニットが、ヒータ22に対して上流側と下流側とにそれぞれ配置される上流側温度センサ23及び下流側温度センサ24を有する。これにより、ヒータ22に対して上流の流体の温度と下流の流体の温度とをそれぞれ測定することができ、ヒータ22によって生ずる流体の温度差を容易に測定することができる。
【0063】
なお、前述の実施形態の構成は、組み合わせたり或いは一部の構成部分を入れ替えたりしたりしてもよい。また、本発明の構成は前述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。