(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756324
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】整流子
(51)【国際特許分類】
H02K 13/00 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
H02K13/00 F
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-89579(P2011-89579)
(22)【出願日】2011年3月28日
(65)【公開番号】特開2011-211897(P2011-211897A)
(43)【公開日】2011年10月20日
【審査請求日】2014年3月24日
(31)【優先権主張番号】201010137156.6
(32)【優先日】2010年3月26日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502458039
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(72)【発明者】
【氏名】グオ ホワ ルオ
(72)【発明者】
【氏名】ジン チャオ ジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユー チュン ウー
(72)【発明者】
【氏名】チー ハン ト
【審査官】
槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−027710(JP,A)
【文献】
特開2002−369454(JP,A)
【文献】
特開2000−150100(JP,A)
【文献】
特開2002−064958(JP,A)
【文献】
米国特許第03996660(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0180304(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ接触面を形成する複数のセグメントと、
該セグメントを間隔をもった関係で支持するハブと、
を備え、
該セグメントは、リード線接続のための端子を有するコネクターと、ブラシ接触表面を形成するカーボン層と、電気的及び機械的に該カーボン層に固定され、電気的に該カーボン層をコネクターに接続する接続層とを含み、
前記接続層とカーボン層との間の境界部に複数の微小構造が形成され、前記微小構造は、該接続層の表面に複数の微小孔を形成し、該カーボン層が前記微小孔を貫通する、
ことを特徴とする電気モータ用整流子。
【請求項2】
前記微小孔の直径は、0.5mm以下である請求項1に記載の整流子。
【請求項3】
前記接続層は、発泡金属、金属繊維フェルトのグループから選定された材料により形成される請求項1又は2に記載の整流子。
【請求項4】
前記接続層は、前記コネクターに半田付けされる、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の整流子。
【請求項5】
ブラシ接触面を形成する複数のセグメントと、
該セグメントを間隔をもった関係で支持するハブと、
を備え、
該セグメントは、リード線接続のための端子を有するコネクターと、ブラシ接触表面を形成するカーボン層と、電気的及び機械的に該カーボン層に固定され、電気的に該カーボン層をコネクターに接続する接続層とを含み、
前記接続層とカーボン層との間の境界部に複数の微小構造が形成され、前記微小構造は、前記接続層の表面から延びる複数の毬状突起を形成しており、該毬状突起が前記カーボン層を貫通する、
ことを特徴とする電気モータ用整流子。
【請求項6】
該毬状突起の直径は、0.5mm以下である、請求項5に記載の整流子。
【請求項7】
前記接続層及びコネクターは、単一構造として構成される、請求項1、5、又は6に記載の整流子。
【請求項8】
前記接続層は、カーボン層から離れた表面に施された半田層を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の整流子。
【請求項9】
前記カーボン層は、接続層の取付け後に焼結される、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の整流子。
【請求項10】
整流子は平面型である請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の整流子。
【請求項11】
前記ハブは前記セグメントに成形されており、前記コネクターは、取付けを補助するために前記ハブ内に延びる少なくとも1つのアンカーを有する、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の整流子。
【請求項12】
電気モータ用の整流子を製造する方法であって、
カーボン粉末の環状リング形状のカーボン層ブランクを準備すること、
複数の微小孔又は毬状突起からなる微小構造を含む導電性材料の環状リング形状の接続層ブランクを準備すること、
前記カーボン層ブランク及び接続層ブランクを一緒に押圧して前記カーボン粉末をして前記導電性材料の中の微小孔を貫通させ、又は、前記導電性材料の前記毬状突起を前記カーボン層ブランクと係合させ、カーボン部分ブランクを形成すること、
該カーボン部分ブランクを加熱し、カーボン材料を安定した塊りとすること、
導電性材料の環状円板形状のコネクターブランクを準備すること、
ハブを該コネクターブランクに成形すること、
前記カーボン部分ブランクをコネクターブランクに半田付けしてセグメントブランクを形成すること、
前記セグメントブランクを前記ハブに支持された複数の個別セグメントに分割すること、
の各段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記カーボン部分ブランクをコネクターブランクに半田付けする前に、前記カーボン部分ブランクの接続層ブランクの露出面に半田層を設ける段階を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コネクターブランクの一方にアンカーを形成し、該アンカーを該ハブ内に埋め込むように、該ハブを鋳込み成形する段階を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
複数の一体的な半径方向に延びる腕部を有する前記コネクターブランクを準備し、前記ハブを該コネクターブランクに鋳込み成形した後に、該腕部を変形させてリード線を取付けるための端子を形成する段階を含む、請求項12、13、又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記微小構造を構成するために、前記接続層ブランクに複数の毬状突起を形成する段階を含む、請求項12、13、14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記コネクターブランクの表面に前記微小構造を構成して、該コネクターブランクを前記接続層ブランクとして利用する段階を含み、前記カーボン部分ブランクを前記コネクターブランクに半田付けする段階を省略する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
銅系発泡金属、又は金属繊維フェルトから接続層ブランクを形成して、微小孔として前記微小構造を形成する段階を含む、請求項12、13、14又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流子、特に、ブラシ接触表面を形成する複数のカーボンセグメントを有する小型電気モータ用の整流子に関し、またそのような整流子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、部分的に構成された先行技術の平面型カーボンセグメント整流子の分解図である。この整流子は、半径方向に延びる腕部を備える円板状の銅コネクター10’を有する。典型的にはフェノール樹脂からなる非電導性ハブ30’が、この銅コネクターの上に鋳込み成形される。カーボン円板20’が、この銅コネクターに半田付けされ、次いで、半径方向腕部が、電機子のリード線を接続するためのU字型端子又は中子内に曲げ込まれる。続いて、この銅/カーボン円板の組立体が、複数の整流子セグメントに切り分けられ、ハブに一体支持される。カーボン円板に直接半田付けすることは非常に困難である為、コネクターに半田付けされるカーボン円板表面は、先ずニッケル層40’で電気メッキされ、次いで、該ニッケル層に銅層45’が電気メッキされる。通常は、銅コネクターに対する半田結合の良好な付着性と信頼性を保証するために、銅層には半田層50’が形成される。ハブ30’に対するコネクター10’の固定を強固にするために、小さなフィンガー又はアンカーが、銅コネクター上に一体に形成される。
【0003】
しかし、ニッケルメッキ40’と銅メッキ45’がされていても、カーボン円板20’と銅コネクター10’間の半田接続には問題がある。カーボン円板とニッケル層との間の結合力は脆弱であり、メッキ工程は、時間がかかり高価である。更に、電気メッキ中に、メッキ溶液がカーボン層に浸透することがあり、除去が困難である。このメッキ溶液が除去されないと、該溶液が塗膜を腐食し、それによってカーボン円板と銅コネクター間の電気的な電導性が低下し、整流子の作動寿命が減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カーボン層が直接銅コネクターに鋳込まれたカーボン整流子は知られているが、実際には、カーボンと銅との間の電気的接続は、半田付けされた整流子よりも高い接触抵抗を有し、良好な物理的強度を確保する為には、より厚いカーボン層が必要になる。これは又、ブラシ接触面から中子までの整流子を通る電流経路の抵抗を増加させる。特別に低電圧の用途及び高電流の用途にとっては、この増加抵抗は問題である。高電流の用途においては、この抵抗増加は、整流子の過熱を生じる。
【0005】
したがって、上述した問題点を解消することができる、改良されたカーボン整流子に対する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、1つの側面においては、本発明は、ブラシ接触面を形成する複数のセグメントと、該セグメントを一定の離れた関係に支持するハブとを備え、各々のセグメントは、リード線への接続のための端子を有するコネクターと、ブラシ接触表面を形成するカーボン層と、電気的及び機械的に該カーボン層に固定されて、該カーボン層を電気的にコネクターに接続する接続層とを含み、前記接続層とカーボン層との間の界面に複数の微小構造が形成された、電気モータ用整流子を提供する。
【0007】
この微小構造は、接続層の表面に複数の微小孔を形成し、カーボン層がこの微小孔を貫通することが好ましい。
【0008】
この微小孔の直径は、0.5mm以下であることが好ましい。
【0009】
接続層は、発泡金属、金属繊維フェルトのグループから選定された材料により形成されることが好ましい。接続層は、銅、ニッケル又はその合金であることが好ましい。
【0010】
接続層は、コネクターに半田付けされることが好ましい。
【0011】
或いは、微小構造は、該接続層の表面から延びる複数の毬状突起を形成し、毬状突起がカーボン層を貫通するものとする。
【0012】
この毬状突起の直径は、0.5mm以下とすることが好ましい。
【0013】
カーボン層は、接続層が取り付けられた後に焼結されることが好ましい。
【0014】
接続層は、カーボン層から遠い方の表面に設けられた半田層を有することが好ましい。
【0015】
代替的には、接続層とコネクターとは、単一構造体として形成される。
【0016】
整流子は、平面型整流子、或いは円筒型整流子であることが好ましい。
【0017】
ハブは、セグメントに鋳込み成形され、コネクターは、取付けを補助するためにハブ内に延びる少なくとも1つのアンカーを有することが好ましい。
【0018】
第2の側面によれば、本発明は、カーボン粉末の環状リング形状のカーボン層ブランクを準備すること、複数の微小構造を含む導電性材料の環状リング形状の接続層ブランクを準備すること、これら環状リングを一緒に押圧して前記カーボン粉末を導電性材料中の微小構造と結合させ、カーボン部分ブランクを形成すること、このカーボン部分ブランクを加熱してカーボン材料を安定した塊りにすること、導電性材料からなる環状円板形状のコネクターブランクを準備すること、ハブを該コネクターブランクに鋳込み成形すること、カーボン部分ブランクをコネクターブランクに半田付けしてセグメントブランクを形成すること、ハブにより支持されたセグメントブランクを複数の個別セグメントに分割すること、の各段階を含む、電気モータ用整流子の製造方法を提供する。
【0019】
この方法は、カーボン部分ブランクをコネクターブランクに半田付けする前に、カーボン部分ブランクの接続層ブランクの露出面に半田層を設ける段階を含むことが好ましい。
【0020】
この方法は、銅の発泡金属、又は金属繊維フェルトからなる接続層ブランクを形成する段階と、微小孔の微小構造を形成する段階とを含むことが好ましい。
【0021】
この方法は、複数の一体的な半径方向に延びる腕部を有するコネクターブランクを準備し、リード線を取付けるための端子を形成するために、ハブをコネクターブランクに成形した後に、腕部を変形させる段階を含むことが好ましい。
【0022】
代替的には、この方法は、導電層に複数の毬状突起を形成して微小構造を構成する段階を含む。
【0023】
代替的には、この方法は、コネクターブランク表面に微小構造を構成し、該コネクターブランクを接続層として利用する段階を含み、カーボン部分ブランクとコネクターブランクの半田付け段階を無くす。
【0024】
本発明の好ましい実施態様が、例示的に、以下に添付図面を参照して説明される。図では、幾つかの図を通じて表される同様な構造、要素、又は部分は、表示される全ての図において、同じ参照番号で示される。図示される部品及び特徴部分の寸法は、全体的に、表示の便宜と明確さのために選ばれており、必ずしも縮尺で示すものではない。図は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の好ましい実施形態である、平面型カーボンセグメント整流子を示す。
【
図2】
図1の整流子構造を異なる製作段階で示し、カーボン部を示す。
【
図3】
図1の整流子構造を異なる製作段階で示し、カーボン部分ブランクの断面図を示す。
【
図4】
図1の整流子構造を異なる製作段階で示し、整流子の分解図を示す。
【
図5】
図1の整流子構造を異なる製作段階で示し、セグメントブランクの斜視図を示す。
【
図6A】電気的導電ブラシ接触部分と接続層の他の実施形態で、カーボン部分ブランクが形成される場面を示す。
【
図6B】電気的導電ブラシ接触部分と接続層の他の実施形態で、接続層ブランク40の一部を拡大して微小構造42の詳細を示す。
【
図6C】電気的導電ブラシ接触部分と接続層の他の実施形態で、カーボン部分ブランクの概略的断念図を示す。
【
図7A】電気的導電ブラシ接触部分と接続層の更に別の実施形態で、カーボン部分ブランクが形成される場面を示す。
【
図7B】電気的導電ブラシ接触部分と接続層の更に別の実施形態で、接続層ブランク40の一部を拡大して微小構造42の詳細を示す。
【
図7C】電気的導電ブラシ接触部分と接続層の更に別の実施形態で、カーボン部分ブランクの概略的断念図を示す。
【
図8A】本発明の第2実施形態の円筒型整流子の構成を異なる製作段階を示し、カーボンセグメントを示す。
【
図8B】本発明の第2実施形態の円筒型整流子の構成を異なる製作段階を示し、セグメントブランクの分解図を示す。
【
図8C】本発明の第2実施形態の円筒型整流子の構成を異なる製作段階で、組立て後のセグメントブランクを示す。
【
図9】部分的に構成された先行技術の平面型カーボンセグメント整流子の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1の整流子は、小型PMDCモータのような、小型電気モータ用の平面型カーボンセグメント整流子である。このような整流子は、平面型カーボン整流子として一般的に知られている。
【0027】
整流子は、
図4に分解状態で示されており、フェノール樹脂のような非電導性材料からなるハブ30を有する。該ハブは、平面型ブラシ接触表面を構成するように配列された複数の整流子セグメント12を支持する。各セグメントは、導電材料、好ましくは銅からなるコネクターを有し、かつ該セグメントを電機子巻線と接続するための端子又は中子を有する。コネクターの一方側には、カーボン部が取付けられる。カーボン部は、コネクター10の広い面に半田付けされる。カーボン部は、カーボン層と接続層とを有する。接続層は、電気的な電導性を有し、例えば銅のような半田可能な材料からなる。接続層は、該接続層をカーボン層に接続するため、複数の微小構造を有する。好ましくは、該接続層は、多孔質であり、複数の微小孔又は細孔を有しており、カーボン層がこの微小孔を貫通して、物理的及び電気的にカーボン層を接続層に接続する。微小孔とは、通常1mm以下の極めて小さい直径の孔を意味する。微小孔の直径は、0.5mm以下であることが好ましい。
【0028】
接続層の材料は、発泡銅であることが好ましいが、他の発泡金属材料又は、金属繊維フェルト又は、多孔質構造の他の金属材料でもよい。接続層の材料は、金属、合金、或いは、金属微粒子及び非金属微粒子及び/又はカーボン繊維材料から成る合成堆積構造でもよい。
【0029】
接続層40は、電気メッキ法又は、粉末冶金法又は、これ以外の方法から作成される発泡金属であることが好ましい。他の態様では、接続層40は、電気メッキ法又は、粉末冶金法又は、これ以外の方法から作成される金属繊維フェルトでもよい。金属は、Ni、Fe、Cu、Sn、Zn、Al、Ti、Mo、W、Ni−W合金、Cu−Zn合金、Cu−Sn合金、及び他の金属/合金、又は金属/合金からなる混合物、及びセラミック、或いは他の非金属であってもよい。Cu、Ni、Cu合金及びNi合金が、中でも好ましい。
【0030】
カーボン層の材料は、カーボン材料又は金属塗膜したカーボン材料、又は焼結金属を含むカーボン材料であってもよい。粉末状態のカーボン材料は、粉末微粒子を一緒に保持する結合剤を含んでいてもよい。
【0031】
任意に、接続層の外側面には、カーボン部をコネクターに対して半田性を向上させるために、製造ラインで、半田層又はメッキ層塗膜を設けることができる。
【0032】
整流子の構造を更に説明するために、
図2〜
図5を参照して、整流子の製造工程を説明する。
図2に示されるように、最初にカーボン層ブランク20と接続層ブランク40とを形成することによって、カーボン部分が成形される。カーボン層ブランク20は、カーボン粉末材料を圧縮して形成された筒型体である。接続層ブランク40は、多孔質材料からなる環状円板である。カーボン層ブランク20と接続層ブランク40とは、互いに押圧され、カーボン材料が接続層ブランク内を貫通する。カーボン材料は、接続層ブランク内の全空間を充填する必要はないが、電気的かつ機械的に良好な接合とするために、カーボン材料が十分に貫通することが望ましい。
図3は、成形されたカーボン部分ブランクの断面図であり、上述の2つの部分が互いに押圧された後、接続層40の微小孔42が、カーボン層ブランク20の材料によって充填されていることを概念的に(かつ拡大図により)示している。カーボン部分ブランクは、加熱され、カーボン層が固められる。この加熱は、カーボン材料に含まれる結合剤を効果的に溶融し、かつ、粉末微粒子を強く一体的結合させるため固化させる硬化工程とすることができる。これは、コスト的に有利な工程であるが、結合剤は、カーボン層の導電性に影響を及ぼす。他の態様としては、この加熱は、焼結工程でもよく、この工程では、カーボン部分ブランクが高温加熱され、カーボン材料を焼結し、カーボン粉末材料中の結合剤及び他の不純物を蒸発させ、かつ炭化させる。このように、丈夫で耐摩耗性のある低抵抗の材料が製造され、更に、より低い接触抵抗で、接続層とカーボン層が強固に結合される。
【0033】
図5は、コネクターブランク10にカーボン部分ブランク20、40を半田付けすることにより形成されたセグメントブランクを示すもので、カーボン部分ブランクには、任意に、付加的な半田層を設けても、設けなくてもよい。
図5から分かるように、コネクターブランクの反対側にはアンカーが配置されており、該アンカーは、ハブがセグメントブランクに成形される時に、ハブに埋め込まれる。カーボン部分ブランクがコネクターブランクに半田付けされる前に、ハブはコネクターブランクに鋳込み成形される。ハブがコネクターブランクに鋳込み成形された後で、更に好ましくはカーボン部分ブランクが固定される前に、コネクターブランクの半径方向腕部は変形され、端子を構成する。端子が形成され、カーボン部分ブランクがコネクターブランクに取り付けられてセグメントブランクを形成された後に、該セグメントブランクは、ハブ30により定位置に保持された状態で個々のセグメントに分割されて、
図1の整流子が製作される。
【0034】
図6A〜
図6Cは、本発明の第2の実施形態である別のカーボン部分ブランク構成を示す。
図6Aは、カーボン層ブランク20と接続層ブランク40とが一体に押圧され、カーボン部分ブランクが形成される状態を示す。
図6Bは、微小構造42の詳細を示すために、
図6Aの接続層ブランク40の一部を拡大して示す。
図6Cは、完成されたカーボン部分ブランクの概略的断念図を示す。カーボン層20と接する接続層ブランク40の表面は、毬状突起形状をなした複数の微小構造を有する。これらの突起は、電気メッキ法、化学メッキ法、物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)、エッチング法、粉末金属焼結法、又は他のどのような公知の方法で形成することができる。カーボン層ブランク20と接続層ブランク40とが一緒に押圧された後、接続層40の毬42は、カーボン層ブランク40内にしっかり固定され、接続層40とブラシ接触部20とを機械的及び電気的に確実に結合する。
【0035】
他の方法で、接続層40を、コネクター10の表面に一体形成することができる。例えば、
図7A〜
図7Cで示すような、毬状突起形状をした複数の微小構造は、コネクターブランク10の表面上に、電気メッキ法、化学メッキ法、物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)、エッチング法、粉末金属焼結法、又は他のどのような公知の方法で一体形成することができる。このようにすると、接続層40の導電基板10への半田工程が省略される。事実上は、接続層40とコネクター10とは、単一構造体として構成されている。
図7A〜
図7Cにおいて、
図7Aは、カーボン層ブランク20と接続層ブランク40とが一体に押圧されてカーボン部分ブランクが形成される状態を示し、
図7Bは、微小構造42の詳細を示すために、
図7Aの接続層ブランク40の一部を拡大して示し、
図7Cは、完成されたカーボン部分ブランクの概略的断念図を示す。
【0036】
図8A〜
図8Cは、本発明の別の実施形態である円筒型カーボンセグメント整流子の構成を示す。このような整流子は、円筒型カーボン整流子と一般的に言われている。
図8Aは、カーボン部分ブランクの構成を示し、
図8Bは、整流子用セグメントブランクの分解図を示し、
図8Cは、組立て後のセグメントブランクであるが、ハブ(図示せず)が成形される前で、かつ個々のセグメントに分割する前の状態を示す。該整流子は、ブランク100、円筒型カーボン層ブランク200、及び、前記基板100とブラシ接触部200との間に配置された接続層400とを有する。接続層ブランク400は、底板402と円筒状突出部404とを含む。カーボン層ブランク200は、ブラシ接触部を形成する円筒型円周面と、該接続層400の円筒状突出部404を収容する中央収容空間部とを有する。カーボン層200と接する接続層400の表面は、微小孔及び/又は毬形状の複数の微小構造を有する。カーボン層ブランク200と接続層ブランク400とが、
図8Aの矢印方向に一体に押圧された後、接続層400とカーボン層200とが確実に一体固定される。カーボン層ブランク200の底面に取り付けられる接続層ブランク400の底板402は、半田によって電気的及び機械的にコネクターブランク100に固定され、セグメントブランクを形成する。好ましくは、半田層500を接続層ブランク表面に設けて、コネクターブランク100と接続層ブランク400間の半田性を向上させるようにしてもよい。カーボン部分ブランクがコネクターブランクに半田付けされる前に、ハブをコネクターブランクに鋳込み成形することが好ましい。セグメントブランクがハブにより支持されるようになると、該セグメントブランクは、ハブにより支持された個々のセグメントに分割される。コネクターブランクから延びる腕部110は、セグメントを電機子巻線に接続する端子を形成する。
【0037】
本発明においては、ブラシ接触部20、200と、接続層40、400との間の境界部には、複数の微小孔/毬組織があり、これらが2つの部分間の電気的接続および機械的強度を大幅に向上させる。接続層40、400は、従来の整流子に使われている電気メッキ層に置き換わるもので、電気メッキ溶液がブラシ接触部20、200内に浸透して、整流子寿命を低下させることを防止する。
【0038】
本発明の詳細な説明及び請求の範囲において、「備える」、「含む」、「包含する」、「有する」といった動詞の各々は、包括的な意味で使われており、記述された事項の存在を規定するが、他の事項の存在を排除するものではない。
【0039】
本発明は、1又は複数の好ましい実施形態を参照して説明されたが、当業者には、種々の変更が可能であることが認識されるであろう。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲により決定されるべきである。
【符号の説明】
【0040】
10 コネクター
12 整流子セグメント
14 腕部
20 カーボン層ブランク(ブラシ接触部)
30 ハブ
40 接続層ブランク(接続層)
42 微小構造(微小孔及び/又は毬状突起)
100 コネクターブランク
200 カーボン層ブランク
400 接続層ブランク