(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756331
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】クーラント噴射装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
B23Q11/10 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-97404(P2011-97404)
(22)【出願日】2011年4月25日
(65)【公開番号】特開2012-228738(P2012-228738A)
(43)【公開日】2012年11月22日
【審査請求日】2014年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】荻原 英之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正夫
【審査官】
五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−243876(JP,A)
【文献】
特開2004−143540(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0159809(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/10
B24B 55/02
B08B 3/00− 3/14
B05B 3/00− 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クーラントを噴射するノズルと、該ノズルの回転角度を調整するモータとを備えたクーラント噴射装置において、
前記モータは、出力軸として内部にクーラントの通路が形成された中空シャフトを有し、該中空シャフトは、前記モータのケースを貫通して両端部が外部に突出し、前記ノズルは、前記中空シャフトの前記モータのケースの外部に突出した一端部に接続されていることを特徴とするクーラント噴射装置。
【請求項2】
前記中空シャフトの前記モータのケースの外部に突出した他端部には、管路を回転可能に接続する回転継手が接続されていることを特徴とする請求項1に記載のクーラント噴射装置。
【請求項3】
前記モータは、ステッピングモータであることを特徴とする請求項1又は2に記載のクーラント噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械を用いてワークを機械加工する際に、加工部位にクーラントを噴射するためのクーラント噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、工作機械を用いて切削加工、研削加工等の機械加工を行なう場合、潤滑、冷却、切屑除去、溶着防止等のため、加工部位にクーラント(切削、研削油剤)を供給しながら加工が行なわれ、機械加工においては、加工の安定性、加工精度を確保する観点から、加工部位に適切にクーラントを供給することが望まれている。そこで、例えば特許文献1及び2に記載されているように、NC工作機械、マシニングセンタ等の自動工作機械において、加工の進行に応じてクーラントの噴射角度を自動的に調整することにより、加工部位に適切にクーラントを噴射するようにしたクーラント噴射装置が種々提案されている。
【0003】
この種のクーラント噴射装置では、クーラントを噴射するノズルをサーボモータによって駆動し、工具の交換、機械加工の進行等に応じてノズルの位置、角度を調整することにより、加工部位に正確にクーラントを噴射するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−18674号公報
【特許文献2】米国特許第6772042号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クーラント噴射装置は、機械加工によって生じるクーラントの飛沫、切屑の飛散にさらされるため、ノズルを駆動するサーボモータ、減速ギヤ機構等に対して充分な防滴性及び防塵性が要求され、また、NCボール盤、NCフライス盤、NC旋盤、マシニングセンタ等の数値制御(NC)工作機械の限られたスペースに設置する必要があるため、小型化が望まれている。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、防滴性、防塵性に優れ、また、小型化を可能にしたクーラント噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、クーラントを噴射するノズルと、該ノズルの回転角度を調整するモータとを備えたクーラント噴射装置において、前記モータは、出力軸として内部にクーラントの通路が形成された中空シャフトを有し、
該中空シャフトは、前記モータのケースを貫通して両端部が前記ケースから突出し、前記ノズルは、前記中空シャフト
の前記モータのケースから突出した一端部に接続されていることを特徴とする。
請求項2の発明に係るクーラント噴射装置は、上記請求項1の構成において、前記中空シャフト
の前記モータのケースの外部に突出した他端部には、管路を回転可能に接続する回転継手が接続されていることを特徴とする。
請求項3の発明に係るクーラント噴射装置は、上記請求項1又は2の構成において、前記モータが、ステッピングモータであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の本発明に係るクーラント噴射装置によれば、モータの中空シャフトを介してノズルにクーラントを供給することができる。その結果、小型化が可能になり、また、シールが必要な部位を少なくして、防滴性及び防塵性を高めることができる。
請求項2の発明に係るクーラント噴射装置によれば、回転継手を介して中空シャフトにクーラントが供給される。
請求項3の発明に係るクーラント噴射装置によれば、ステッピングモータを用いることで、オープンループによる駆動制御を行なうことができ、制御回路の簡素化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るクーラント噴射装置の斜視図である。
【
図3】
図1に示すクーラント噴射装置の封止板が取外された状態を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示すクーラント噴射装置の分解斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るクーラント噴射装置の横断面図である。
【
図6】
図5に示すクーラント噴射装置の封止板が取外された状態を示す斜視図である。
【
図7】
図5に示すクーラント噴射装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1実施形態について、
図1乃至
図4を参照して説明する。
図1乃至
図4に示すように、本実施形態に係るクーラント噴射装置1は、マシニングセンタ等のNC工作機械に取付け、加工部位にクーラントを噴射するためのものであって、ケース2内にモータ−ノズルユニット3及び回転継手機構4(回転継手)が収容されて一体化(ユニット化)されている。
【0011】
ケース2は、略直方体で一側が開口した箱状のケース本体5と、ケース本体5の開口部を閉じる封止板6とから構成されている。ケース2には、封止板6に連なるように平板状に延出された長方形の取付部7がケース本体5と一体に形成されている。ケース本体5の長手方向両端部の側壁には、略U字形の切欠8、9がそれぞれ形成されている。ケース本体5の取付部7には、ケース2をNC工作機械等に取付けるための一対の長穴10が設けられている。
【0012】
ケース本体5の開口部には、ネジ、ファスナ、接着剤等の公知の結合手段(図示せず)によって封止板6が取付けられている。ケース本体5と封止板6との間は、パッキン等の公知のシール手段(図示せず)によってシールされている。封止板6は、好ましくは、ネジ等の着脱可能な結合手段により、ケース本体5に着脱可能に取付けられる。ケース2は、合成樹脂、アルミニウム合金等の適当な材料で形成することができる。
【0013】
モータ−ノズルユニット3は、クーラントを噴射するノズル11と、ノズル11の回転角を調整するモータ12とを一体化したものである。モータ12は、
図2に示すように、内部にクーラントの通路13Aが形成された中空シャフト13と、中空シャフト13の中間部の外周に取付けられたロータ14と、ロータ14に対向して矩形のモータケース15内に固定されたステータ16とを備えている。中空シャフト13は、モータケース15の両端部に取付けられたフロントカバー17A及びリアカバー17Bに設けられた軸受18、19によってロータ14と共に回転可能に支持され、かつ、可動部がシールされている。中空シャフト13は、モータケース15を貫通して両端部がフロントカバー17A及びリアカバー17Bから外部に突出し、フロントカバー17A側の先端部に直角方向に向けられたノズル11が接続されている。
【0014】
モータ12は、出力軸である中空シャフト13の回転角を制御可能なものであり、公知のサーボモータあるいはステッピングモータとすることができる。また、ステッピングモータとしては、可変リラクタンス型、永久磁石型、又は、これらを組合わせたハイブリッド型のいずれを用いてもよいが、本実施形態では、調整可能なステップ角が充分小さいことから、ハイブリッド型ステッピングモータを採用している。モータ12には、制御電流を供給するリード線(図示せず)が接続され、リード線は、ケース2に取付けられた電気コネクタ(図示せず)を介して、あるいは、ケース2の外壁を貫通して、外部の駆動回路(図示せず)に接続される。
【0015】
回転継手機構4は、矩形の継手ケース20の一端部から固定管路21が突出され、他端部から、モータ12のリアカバー17B側から突出した中空シャフト13を受入れて、回転可能に支持すると共に、中空シャフト13の通路13Aを固定管路21に流体接続するようになっている。
図2に示すように、継手ケース20の他端部には、中空シャフト13を回転可能に支持する軸受22が取付けられ、また、軸受22の回転部分をシールするOリング23及びシールキャップ24が設けられている。固定管路21と中空シャフト13との接続部分は、Oリング等の公知のシール手段(図示せず)によって回転可能にシールされている。
【0016】
モータ−ノズルユニット3及び回転継手機構4は、継手ケース20内で中空シャフト13と固定管路21とが接続されて、リアカバー17Bとシールキャップ24とが当接した状態で、ケース本体5内に収容され、中空シャフト13の一端部及び固定管路21が切欠8、9から外部に延出している。モータ−ノズルユニット3及び回転継手機構4は、ケース本体5の開口部に封止板6が取付けられてケース2へ固定される。
【0017】
このように構成したクーラント噴射装置1は、ノズル11を適当な方向に向けて、取付部7の長穴10にボルト等を挿通してNC旋盤、マシニングセンタ等のNC工作機械に取付けられる。また、固定管路21がポンプ等を含むクーラントの供給源に接続され、モータ12が制御電流を供給する駆動回路に接続される。
【0018】
そして、クーラントを固定管路21に供給し、中空シャフト13を介してノズル11から噴射する。モータ12の中空シャフト13を回転させ、その回転角を制御することにより、ノズル11の角度を調整することができ、クーラントを所望の方向に噴射することができる。
【0019】
このとき、モータ12の中空シャフト11の回転角の初期位置の調整(0点調整)を行なう必要がある場合には、例えば、中空シャフト13にホール素子(図示せず)を取付け、その検出位置に基づき0点調整を行うことができる。あるいは、ノズル11の回転範囲をストッパによって規制し、ノズル11をストッパに当接するまで回転させ、その位置を基準として、0点調整を行ってもよい。
【0020】
これにより、自動工作機械の工具の交換による工具先端位置の変化や、機械加工の進行によるノズルから加工位置までの距離の変化などに応じてノズル11の回転角を調整して、加工部位に正確にクーラントを噴射することが可能になる。このとき、モータ12として、ステッピングモータを用いているので、オープンループによる制御が可能であり、サーボモータを用いてクローズドループによる制御を行なう場合に比してモータの駆動回路を簡素化することができる。
【0021】
ノズル11の回転角を制御する際、切削加工部位に対してクーラントを的確に当てるためにノズルの噴射角度を調節することに加えて、クーラントの噴射によって加工部位の切屑を払うようにノズル11を移動させることにより、切屑の除去を促進することができる。また、ノズルの回転は一定速度または速度を変化させながら行うことができる。また、モータ12としてステッピングモータを使用することにより、NC工作機械の工具の移動及び工具指定のための数値制御コード(いわゆるMコード、Tコード)に対応した数値制御盤からの出力信号をモータ12の制御信号として利用してノズル11の回転角を加工部位に追従させる制御が可能となるので、クーラント噴射装置の制御回路を簡素化することができる。
【0022】
モータ12の出力軸を中空シャフト13とし、中空シャフト13にノズル11を接続して、中空シャフト13によってノズル11を直接駆動すると共に、中空シャフト13の通路13Aを介してノズル11にクーラントを供給することにより、クーラント噴射装置1の小型化、特に、軸方向の寸法の短縮が可能になり、また、シールが必要な部位を少なくして、防滴性及び防塵性を高めることができる。
【0023】
次に本発明の第2実施形態について、
図5乃至
図7参照して説明する。なお、上記第1実施形態に対して、同様の部分には同じ参照符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0024】
図5乃至
図7に示すように、本実施形態に係るクーラント噴射装置31では、回転継手機構4の代りに回転継手32が設けられている。モータ−ノズルユニット3は、ケース2内において、ケース本体5に形成された保持板33によって軸方向に固定されている。中空シャフト13のリアカバー17B側の端部は、突出長さが短く、内周部に回転継手32を接続するためのネジ部34が形成されている。保持板33には、中空シャフト13の端部を挿通させるためのU字形の切欠35が形成されている。
【0025】
回転継手32は、互い直角に延びる入口管路36と出口管路37とが回転可能に流体接続されており、出口管路37の先端部外周には、中空シャフト13のネジ部34にねじ込まれるネジ部38及び締付工具用のナット部39が一体に形成されている。ケース本体5の側壁には、回転継手32の入口管路36を外部に延出するための開口が設けられている。
【0026】
そして、回転継手32の入口管路36がクーラントの供給源に接続され、回転継手32及び中空シャフト13を介してノズル11からクーラントを噴射する。これにより、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。なお、上記第2実施形態において、中空シャフト13に対して必要な回転を許容することが可能であれば、中空シャフト37のネジ部34に、回転継手32の代りに、柔軟性を有するフレキシブルホースを直接接続してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1…クーラント噴射装置、11…ノズル、12…モータ、13 中空シャフト(出力軸)、13A…通路