(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1圧延油供給ラインは前記第1圧延油原油の流量を調整する第1流量調整弁を有し、前記第2圧延油供給ラインは前記第2圧延油原油の流量を調整する第2流量調整弁を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑油供給装置。
【背景技術】
【0002】
従来、圧延においては所望の製品形状、表面品質を得るとともに焼付きを防止する等、潤滑性を向上させる目的で圧延材やロールに潤滑油が供給されており、この圧延潤滑においては圧延材とロールに生じる発熱を除去するために冷却も必要となるため、通常、エマルション型圧延油を用いて潤滑が行われている。
【0003】
図10〜
図12は、エマルション型圧延油を用いた従来の各種潤滑方式を示したものである。
【0004】
まず、
図10に示す「循環方式」は、ロールの潤滑と冷却を目的として、潤滑油をスプレーでワークロールに供給するものである。
【0005】
エマルション型圧延油は循環使用されるようになっており、具体的には、No.1スタンドのロールに供給されたエマルション型圧延油は温水タンク50に回収されポンプ51から吐出されることにより循環使用される。
【0006】
また、No.2〜No.5スタンドの各ワークロールに供給されたエマルション型圧延油はクーラントタンク52に回収され、ポンプ53から吐出されることにより循環使用される。
【0007】
上記構成ではエマルション型圧延油を循環使用するため、油原単位が低いという利点がある。なお、エマルション型圧延油の油分濃度は0.5〜5%程度で一定に保たれ、消費によって減少した分の水・油を補給するようになっている。
【0008】
次に、
図11に示す「直接給油方式」は、潤滑系と冷却系が分離されており潤滑と冷却をそれぞれ別に制御することができるようになっている。
【0009】
冷却系としての冷却水は冷却水配管54を介してNo.1〜No.6スタンドの各ワークロールに供給され、潤滑系として油分濃度5〜20%のエマルション型圧延油は潤滑油配管55を介して入側ストリップに供給するようになっている。
【0010】
上記直接給油方式によれば、エマルション型圧延油を循環使用せず常に新しいエマルション型圧延油をワークロールに供給するため潤滑性能に優れており、高速圧延や難加工材の圧延に適用することができる。
【0011】
次に、
図12に示す「混合給油方式」は、上記循環方式の給油システムに小容量のミキシングタンクを併設し、潤滑と冷却をある程度分離して行うようになっている。
【0012】
具体的には、小型ミキシングタンク56から高濃度のエマルション型圧延油を所望のスタンド(No.2スタンドのワークロール)の入側金属板に供給するように構成されているため、必要とする部位に所望の潤滑性能を確保することができ、高速圧延に適している。一方、冷却については、循環方式のエマルション型圧延油に冷却水を混合しワークロールに供給するようになっている。
【0013】
また、ロール潤滑装置において圧延油と水とのミキシング時に水温度を変化させる潤滑圧延方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記「循環方式」では単一の圧延油のみを使用するため、潤滑制御が困難であり、また、上記「直接給油方式」では高濃度のエマルション型圧延油を循環目的で鋼板にスプレーし、水を冷却目的でスプレーするため潤滑性と冷却性に優れているものの圧延油を循環使用しないため油原単位が高くなり、また、上記「混合給油方式」では状態の異なる圧延油が混合されるためマスバランスやエマルション型圧延油の性状が不安定になるという問題がある。さらに、ミキシング時の水温度を変化させる上記特許文献1に記載の潤滑圧延方法では、水温度を変化させるための冷却装置が必要であるため、ロール潤滑装置が高コストとなる。
【0016】
そこで、本発明の目的は、低コストで圧延界面における潤滑性を制御することができる潤滑油供給方法および潤滑油供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の発明に係る潤滑油供給方法は、金属板を圧延する際に油水混合型圧延油を供給する潤滑油供給方法であって、第1圧延油と第2圧延油と希釈水とを混合することにより油水混合型圧延油を生成する混合工程と、油水混合型圧延油を供給する供給工程と、を備えることを要旨とする。上記の金属板としては、鋼、チタン、アルミニウム、マグネシウム、銅などの金属、またはこれら金属の合金が含まれる。
【0018】
圧延界面における潤滑性はワークロールまたは鋼板への油分付着量(プレートアウト量)によって異なってくる。例えば、油水混合型圧延油の粒径が大きくなり油分付着量が増加すると、圧延圧力が下がる傾向となる。
【0019】
第1の発明に係る潤滑油供給方法によれば、混合工程で第1圧延油と第2圧延油と希釈水とが混合されて油水混合型圧延油が生成される。第1圧延油と第2圧延油と希釈水とを種々の混合比でミキシング装置により混合することによって、油水混合型圧延油の粒径を変化させることができる。粒径を変化させた油水混合型圧延油をワークロールに供給することにより圧延界面における油分付着量を制御できるので、潤滑性を制御することができる。これにより、適切な圧延圧力で金属板を圧延することができる。また、従来のように水温度を変化させるための冷却装置が要らないのでコストアップを抑制できる。
【0020】
混合工程において第1圧延油と第2圧延油との混合油と、希釈水とを混合するようにすれば、生成される油水混合型圧延油の粒径を変化させやすくなる。
【0021】
第2圧延油の粘度および密度を第1圧延油の粘度および密度と異なるようにすれば、油水混合型圧延油の粒径を変化させることができる。
【0022】
金属板の材質または圧延条件に応じて第1圧延油に対する第2圧延油の混合比を調整する調整工程を備えれば、圧延対象である金属板の変更があったり圧延条件(圧延温度、圧延圧力および圧延速度など)に微妙な変化があったときでも、迅速に油水混合型圧延油の粒径を変化させることができる。
【0023】
第2の発明に係る潤滑油供給装置は、金属板を圧延する際に油水混合型圧延油を供給する潤滑油供給装置であって、希釈水を供給する水供給ラインと、第1圧延油を供給する第1圧延油供給ラインと、第2圧延油を供給する第2圧延油供給ラインと、希釈水に、第1圧延油および第2圧延油の両方またはいずれか片方を混合した油水混合液を搬送する油水混合液ラインと、油水混合液ラインに接続されたミキシング装置と、ミキシング装置により攪拌生成される油水混合型圧延油を金属板に供給する圧延油供給手段と、を有することを要旨とする。上記のミキシング装置としては、スタティックミキサー、ラインミキサー、超音波分散装置などを使用することができる。上記のラインミキサーとは、配管内でタービン等を回転させて機械剪断を行い、撹拌、乳化および分散を連続的に行うミキサーである。
【0024】
本発明に係る潤滑油供給装置によれば、希釈水に第1圧延油および第2圧延油の両方またはいずれか片方が混合されて油水混合液が生成され、ミキシング装置により当該油水混合液が攪拌されることで油水混合型圧延油が生成される。すなわち、希釈水に1種の圧延油を混合することが可能なだけでなく、2種の圧延油を混合することが可能となり、圧延条件(圧延温度、圧延圧力および圧延速度など)等によって油水混合型圧延油の粒径を変化させることができる。このような油水混合型圧延油を供給することで圧延界面における油分付着量を制御でき潤滑性を制御することができる。これにより、適切な圧延圧力で金属板を圧延することができる。また、従来のように水温度を変化させるための冷却装置が要らないのでコストアップを抑制できる。
【0025】
第1圧延油供給ラインまたは第2圧延油供給ラインの少なくとも一方に切替弁を設けるように構成すれば、希釈水に第1圧延油および第2圧延油の両方またはいずれか片方を混合する構成を容易に実現することができる。
【0026】
第2圧延油供給ラインが第1圧延油供給ラインにより供給される第1圧延油の粘度及び/又は密度と異なる第2圧延油を供給するようにすれば、油水混合型圧延油の粒径を変化させることができる。
【0027】
第1圧延油供給ラインは第1圧延油の流量を調整する第1流量調整弁を有し、第2圧延油供給ラインは第2圧延油の流量を調整する第2流量調整弁を有するようにすれば、圧延対象である金属板の変更があったり上記圧延条件に僅かな変化があったときでも、迅速に油水混合型圧延油の粒径を変化させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、金属板の材質および圧延条件に応じて圧延界面における潤滑性を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態に係る潤滑油供給装置の構成を示す説明図である。
【
図2】第1圧延油原油Aと第2圧延油原油Bとを5種の重量比率で混合し、それぞれの中位径を示したグラフである。
【
図3】所定の混合比における混合油の粒径分布を示したグラフである。
【
図4】所定の混合比における混合油の粒径分布を示したグラフである。
【
図5】所定の混合比における混合油の粒径分布を示したグラフである。
【
図6】所定の混合比における混合油の粒径分布を示したグラフである。
【
図7】所定の混合比における混合油の粒径分布を示したグラフである。
【
図8】第1圧延油原油Aと第2圧延油原油Bとの混合油の粒径とプレートアウト厚(油分付着厚)との関係を示したグラフである。
【
図9】油分付着量(プレートアウト量)と圧延圧力との関係を示したグラフである。
【
図10】従来に係る循環方式の潤滑油供給装置の構成を示す説明図である。
【
図11】従来に係る直接給油方式の潤滑油供給装置の構成を示す説明図である。
【
図12】従来に係る混合給油方式の潤滑油供給装置の構成を示す説明図である。
【
図13】第2実施形態に係る潤滑油供給装置の構成を示す説明図である。
【
図15】(a),(b)は低粘度圧延油単体と希釈水との油水混合液の粒径分布を示したグラフである。
【
図16】(a),(b)は低粘度圧延油と高粘度圧延油と希釈水との油水混合液の粒径分布を示したグラフである。
【
図17】(a),(b)は高粘度圧延油単体と希釈水との油水混合液の粒径分布を示したグラフである。
【
図18】(a),(b)は低粘度圧延油と高粘度圧延油と希釈水との油水混合液の粒径分布を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.第1実施形態
以下、本実施形態に係る潤滑油供給方法および潤滑油供給装置について図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係る潤滑油供給装置1は、対向配置されたワークロール2および3の間を圧延される金属板としての鋼板4が通過するようになっている。ワークロール2および3はこれらと接触しているバックアップロール5および6の摩擦によって回転する。
【0032】
第1圧延油供給ライン8には、第1圧延油原油を貯溜した圧延油タンク8aと希釈水を貯溜した水タンク8bとが備えられ、圧延油タンク8a内の第1圧延油原油はポンプ8cおよび流量調整弁8dを介し、流量が調整された状態で第2の圧延油供給配管8kを介して第1の圧延油供給配管8eに送り出される。一方、水タンク8b内の希釈水は、ポンプ8fおよび流量調整弁8gを介し、流量が調整された状態で第1の圧延油供給配管8eに送り出される。
【0033】
ここで、本実施形態では、第2の圧延油供給配管8kには第2圧延油供給ライン80が接続されている。
【0034】
第2圧延油供給ライン80には、第1圧延油原油の粘度および密度と異なる第2圧延油原油を貯留した圧延油タンク82、ポンプ83および流量調整弁84が備えられている。圧延油タンク82内の第2圧延油原油はポンプ83および流量調整弁84を介し、流量が調整された状態で第3の圧延油供給配管81および第2の圧延油供給配管8kに送り出される。これにより、第1圧延油原油および第2圧延油原油が共に第2の圧延油供給配管8kを介して第1の圧延油供給配管8eに送り出される。
【0035】
このような構成によれば、第1圧延油原油と希釈水とが第1の圧延油供給配管8eに介設されたスタティックミキサー8hに導入され、鋼板4の材質または圧延条件(ワークロール2,3の磨耗度合い、圧延圧力、圧延温度、湿度および圧延速度など)に応じて所定量の第2圧延油原油が第2の圧延油供給配管8kを介してスタティックミキサー8hに導入されてこれらが撹拌されることにより、粒径が変化された油水混合型圧延油が生成される。なお、スタティックミキサー8hの代わりにラインミキサーまたは超音波分散装置などを使用することもできる。また、スタティックミキサー8hは、導入された液体を撹拌混合することができるものであれば、そのエレメントの形態はスパイラルタイプまたはステータイプなど任意の形態を選択できる。
【0036】
生成された油水混合型圧延油は、第1の圧延油供給配管8eの先端に設けられたノズルヘッダー8i,8jによりワークロール2,3の上流側表面に対してスプレーされる。
【0037】
このように、鋼板4の材質または圧延条件に応じて、第1圧延油原油および希釈水に対して第2圧延油原油を撹拌混合することにより生成した、粒径を変化させた油水混合型圧延油をワークロール2,3に供給することによって、ワークロール2,3および鋼板4への油分付着量(プレートアウト量)を制御できる。これにより、圧延界面における潤滑性を変化させることができるので、鋼板4に対する圧延圧力が適切となる。
【0038】
また、鋼板4の材質または圧延条件に応じて第2圧延油原油の供給量が流量調整弁84により調整されることによって、第1圧延油原油に対する第2圧延油原油の混合比が変更される。これにより、圧延対象である鋼板4の材質変更があったり圧延条件に微妙な変化があった場合に、迅速に油水混合型圧延油の粒径を変化させることができる。
【0039】
ワークロール2,3に供給された油水混合型圧延油は、回収・排出系7aの回収用オイルパン7bにより回収され、圧延油排出配管7cを通じて排出される。なお、回収用オイルパン7bにより回収した油水混合型圧延油を再生してもよい。
【0040】
No.2スタンドについてもNo.1スタンドと同じ構成の8i,8jが配設されており、第1の圧延油供給配管8eからの油水混合型圧延油がワークロール2,3にそれぞれスプレーされる。
【0041】
なお、本実施形態では、第1圧延油原油および第2圧延油原油の2種類の圧延油原油を使用したが、これに限定されるものではなく、3種類以上の圧延油原油と希釈水とをミキシングして油水混合型圧延油を生成してもよい。
【0042】
2.第2実施形態
図13は第2実施形態に係る潤滑油供給装置1aの構成を示す説明図である。なお、
図13では上記
図1と同一部材に同一符号を付しており、それらの説明については省略する。
【0043】
図13に示すように、第2実施形態に係る潤滑油供給装置1aは、それぞれ配管で構成される、水供給ライン8e3、第1圧延油供給ライン8k、第2圧延油供給ライン81,87、および油水混合液ライン8e,8e2を有する。
【0044】
水供給ライン8e3には、水タンク8b、ポンプ8f、流量調整弁8g、および四方弁88が介挿されている。
【0045】
第1圧延油供給ライン8kは、水供給ライン8e3における四方弁88の上流側に接続されている。この第1圧延油供給ライン8kには、圧延油タンク8a、ポンプ8c、および第1流量調整弁としての流量調整弁8dが介挿されている。
【0046】
第2圧延油供給ライン81は、上記の四方弁88の一方入口に接続されており、この第2圧延油供給ライン81には、圧延油タンク82、ポンプ83、第2流量調整弁としての流量調整弁84、および切替弁としての三方弁86が介挿されている。また、第2圧延油供給ライン81は、上述の四方弁88を介して油水混合液ライン8e,8e2に接続されている。
【0047】
第2圧延油供給ライン87は、三方弁86の一方出口と第1圧延油供給ライン8kにおける上述の流量調整弁8dよりも下流側の部分との間を架け渡すように接続されている。
【0048】
油水混合液ライン8eは、上述の四方弁88の一方出口に接続されており、これにより水供給ライン8e3と油水混合液ライン8eとが接続されている。この油水混合液ライン8eには、ミキシング装置としてのスタティックミキサー8h、およびワークロール2,3に対向するように配設された圧延油供給手段としてのノズルヘッダー8i,8jが介挿されている。
【0049】
油水混合液ライン8e2は、水供給ライン8e3に接続されており、この油水混合液ライン8e2には、上述のスタティックミキサー8hと同機能のスタティックミキサー8h2、およびノズルヘッダー8i,8jが介挿されている。
【0050】
以上述べた構成を有する潤滑油供給装置1aにおいて、次の(1)〜(3)の油水混合型圧延油をワークロール2,3に供給することができる。
【0051】
(1)希釈水に、第1圧延油原油または第2圧延油原油を混合して生成した油水混合型圧延油(以下、それぞれ第1−1油水混合型圧延油、第1−2油水混合型圧延油と称し、これらを第1油水混合型圧延油と総称する場合がある)
(1−1)水タンク8b内の希釈水は、ポンプ8fおよび流量調整弁8gを介して、流量が調整された状態で水供給ライン8e3に送り出される。
【0052】
また、圧延油タンク8a内の第1圧延油原油は、ポンプ8cおよび流量調整弁8dを介し、流量が調整された状態で第1圧延油供給ライン8kに送り出される。
【0053】
上記希釈水および上記第1圧延油原油は四方弁88を介してスタティックミキサー8hに導入されてこれらが撹拌されることにより、粒径が変化された第1−1油水混合型圧延油が生成される。生成された第1−1油水混合型圧延油は、ノズルヘッダー8i,8jによりワークロール2,3に供給される。
【0054】
(1−2)水タンク8b内の希釈水は、ポンプ8f、および流量調整弁8gを介して、流量が調整された状態で油水混合液ライン8e2に送り出される。
【0055】
また、圧延油タンク82内の第2圧延油原油は、ポンプ83、流量調整弁84、三方弁86、および四方弁88を介し、流量が調整された状態で第2圧延油供給ライン81に送り出される。
【0056】
上記希釈水および上記第2圧延油原油はスタティックミキサー8h2に導入されてこれらが撹拌されることにより、粒径が変化された第1−2油水混合型圧延油が生成される。生成された第1−2油水混合型圧延油は、ノズルヘッダー8i,8jによりワークロール2,3に供給される。
【0057】
(2)希釈水に、第1圧延油原油と第2圧延油原油との混合油を混合して生成した油水混合型圧延油(以下、第2油水混合型圧延油と称する)
流量が調整された状態で第1圧延油供給ライン8kに送り出された第1圧延油原油と、流量が調整された状態で第2圧延油供給ライン81に送り出され、かつ三方弁86を介して第2圧延油供給ライン87に送り出された第2圧延油原油とが混合されて、この混合油が水供給ライン8e3に送り出される。
【0058】
水供給ライン8e3に送り出された上記希釈水、および上記第1圧延油原油と第2圧延油原油との混合油はスタティックミキサー8hに導入されてこれらが撹拌されることにより、粒径が変化された第2油水混合型圧延油が生成される。生成された第2油水混合型圧延油は、ノズルヘッダー8i,8jによりワークロール2,3に供給される。
【0059】
(3)希釈水と第1圧延油原油との油水混合液に、第2圧延油原油を混合して生成した油水混合型圧延油(以下、第3油水混合型圧延油と称する)
最初に、流量が調整された状態で水供給ライン8e3に送り出された希釈水と、流量が調整された状態で第1圧延油供給ライン8kに送り出された第1圧延油原油とが混合される。
【0060】
次に、希釈水と第1圧延油原油との油水混合液と、流量が調整された状態で三方弁86、第2圧延油供給ライン81、および四方弁88を介して油水混合液ライン8eに送り出された第2圧延油原油とがスタティックミキサー8hに導入されてこれらが撹拌されることにより、粒径が変化された第3油水混合型圧延油が生成される。生成された第3油水混合型圧延油は、ノズルヘッダー8i,8jによりワークロール2,3に供給される。
【0061】
このように本実施形態では、鋼板4の材質または圧延条件に応じて上記第1〜第3油水混合型圧延油を切り替えて生成することにより、その鋼板4の材質またはその圧延条件に適合した粒径の油水混合型圧延油をワークロール2,3に供給することができる。よって、ワークロール2,3および鋼板4への油分付着量(プレートアウト量)を制御でき、圧延界面における潤滑性を変化させることができるので、鋼板4に対する圧延圧力が適切となる。
【0062】
また、上記第1〜第3油水混合型圧延油のうち、2つの油水混合型圧延油を同時に供給することも可能である。例えば、第1−1油水混合型圧延油と第1−2油水混合型圧延油とを同時に供給することが可能であるし、第2油水混合型圧延油と第1−2油水混合型圧延油とを同時に供給することが可能である。
【0063】
なお上記実施形態では、水タンク8b、圧延油タンク8a,82を潤滑油供給装置1a内に設ける構成を採用したが、これに限らず、潤滑油供給装置1aの外部から希釈水、第1圧延油原油、および第2圧延油原油の供給を受ける構成を採用することもできる。
【0064】
また上記実施形態では、三方弁86を第2圧延油供給ライン81に介挿することとしたが、これに限定されるものではなく、第1圧延油供給ライン8kに介挿するなど、希釈水に第1圧延油および第2圧延油の両方またはいずれか片方を混合することができる構成については適宜設定することが可能である。
【0065】
さらに上記実施形態では、油水混合液ライン8eと油水混合液ライン8e2とにそれぞれ接続された2組のノズルヘッダー8i,8jにより2系統で油水混合型圧延油を供給することとしたが、これに限定されるものではなく、例えばスタティックミキサー8h2よりも下流側で油水混合液ライン8e2を油水混合液ライン8eに接続することにより、1系統で供給する構成とすることもできる。
【0066】
また上記実施形態では、スタティックミキサー8h,8h2を設けて圧延油原油と希釈水とを攪拌することとしたが、このスタティックミキサー8h,8h2は必須の構成ではなく、ポンプ移送の際における剪断によって油水混合液の粒径が変化することを利用してもよい。
【0067】
本発明はもとより上記実施形態によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0069】
1.第1実施例
第1圧延油原油A(4cSt、密度0.82(g/cm
3 )、液温15℃)と、第2圧延油原油B(30cSt、密度0.87(g/cm
3 )、液温15℃)とを、複数の重量比率でミキシングし生成した各混合油の粒径を測定した。
【0070】
図2は第1圧延油原油Aと第2圧延油原油Bとを5種の重量比率で混合し、それぞれの中位径を示したグラフであり、横軸は第1圧延油原油Aと第2圧延油原油Bとの5種の混合比(左から順にA:B=10:0、7:3、5:5、3:7、0:10)を示し、縦軸は中位径(μm)を示している。
図3から
図7は
図2における各混合油の粒径分布を上記混合比の順で示したグラフであり、横軸は粒子直径(μm)を示し、縦軸は体積(%)を示している。
【0071】
図2および
図3から
図7に示されるように、第1圧延油原油Aと第2圧延油原油Bとの混合比を変えることで、第1圧延油原油Aと第2圧延油原油Bとの混合油の粒径分布が大きく変化することが確認された。
【0072】
図8は第1圧延油原油Aと第2圧延油原油Bとの混合油の粒径とプレートアウト厚(油分付着厚)との関係を示したグラフであり、横軸は粒径(μm)を示し、縦軸はプレートアウト厚(μm)を示している。
【0073】
図8に示されるように、粒径が大きくなるとプレートアウト厚が上昇する傾向が確認された。
【0074】
図9は油分付着量(プレートアウト量)と圧延圧力との関係を示したグラフであり、横軸は油分付着量(g/m
2 )を示し、縦軸は圧延圧力((P・Δh
−1 )/tf・mm
−1 )を示している。なお、圧延機のロール直径を150mmとし、圧延速度を13m/minとした。
【0075】
図9に示されるように、油分付着量が増加するにつれて圧延圧力が低下することが確認された。この結果により、油分付着量が圧延界面における潤滑性に影響することがわかった。
【0076】
2.第2実施例
小型圧延機に2系統の油供給ノズルを設置し、圧延油の供給方法を変化させて鋼板の圧延を行った。圧延潤滑性の評価のバロメータとして、圧延時の先進率を算出した。なお、先進率とはロール周速度と圧延出側の板速度との比であり、この値が大きいと圧延ロールと鋼板との摩擦における摩擦係数が大きいことが言える。
【0077】
圧延対象である鋼板として板厚2.0mmのアルミ板(A1050)を用い、圧下率は20%とした。なお、圧下率とは圧延前に対する圧延後の鋼板の厚みの縮小率である。
【0078】
また、第1圧延油原油として上記第1実施例と同じ第1圧延油原油A(低粘度油)を用い、第2圧延油原油として上記第1実施例と同じ第2圧延油原油B(高粘度油)を用いた。
【0079】
図14(a),(b)に示すように、圧延油として第2圧延油原油Bを単体で用いる場合の方が、第1圧延油原油Aを単体で用いる場合よりも先進率を小さくすることができ、上記摩擦係数を低くすることができることが分かった。
【0080】
また、圧延油として第1圧延油原油Aと第2圧延油原油Bとの混合油を用いる場合には、第2圧延油原油Bの混合比率を第1圧延油原油Aの混合比率よりも大きくする方が先進率を小さくでき、上記摩擦係数を低くすることができることが分かった。
【0081】
さらに、第1圧延油原油Aと第2圧延油原油Bとをそれぞれ異なるノズル(同図では「別系統」と記載)で圧延ローラに供給する場合、第1圧延油原油A(低粘度油:1.2重量%)に対し第2圧延油原油B(高粘度油:2.8重量%)の濃度を高くすることにより、第1圧延油原油Aの濃度を第2圧延油原油Bの濃度より高くする場合に比べ、先進率を小さくすることができ、上記摩擦係数を低くすることができることが分かった。
【0082】
図15〜
図18は各種圧延油の平均径を示したグラフである。
【0083】
図15(a)は濃度が2.8重量%の第1圧延油原油A(低粘度油)と希釈水との油水混合液の粒子直径の分布を示しており、平均粒径は10.6μmであった。
図15(b)は濃度が4重量%の第1圧延油原油A(低粘度油)と希釈水との油水混合液の粒子直径の分布を示しており、平均粒径は10μmであった。
【0084】
図16(a)は濃度が2.8重量%の第1圧延油原油A(低粘度油)と1.2重量%の第2圧延油原油B(高粘度油)との混合油に希釈水を混合した油水混合液の粒子直径の分布を示しており、平均粒径は10.5μmであった。
図16(b)は濃度が2.8重量%の第1圧延油原油A(低粘度油)と希釈水との油水混合液に1.2重量%の第2圧延油原油B(高粘度油)を混合した油水混合液の粒子直径の分布を示している。
【0085】
図17(a)は濃度が2.8重量%の第2圧延油原油B(高粘度油)と希釈水との油水混合液の粒子直径の分布を示しており、平均粒径は18.3μmであった。
図17(b)は濃度が4重量%の第2圧延油原油B(高粘度油)と希釈水との油水混合液の粒子直径の分布を示しており、平均粒径は17.5μmであった。
【0086】
図18(a)は濃度が2.8重量%の第2圧延油原油B(高粘度油)と1.2重量%の第1圧延油原油A(低粘度油)との混合油に希釈水を混合した油水混合液の粒子直径の分布を示しており、平均粒径は12.8μmであった。
図18(b)は濃度が2.8重量%の第2圧延油原油B(高粘度油)と希釈水との油水混合液に1.2重量%の第1圧延油原油A(低粘度油)を混合した油水混合液の粒子直径の分布を示している。
【0087】
以上の結果から、第1圧延油原油Aおよび第2圧延油原油Bは、それぞれ濃度(重量%)を変化させることで、これら各々と希釈水との油水混合型圧延油の平均径(μm)を変化させることができ、また、基準油として第1圧延油原油Aを用い、当該基準油に混合する異粘度油として第2圧延油原油Bを用いた場合、あるいは逆に、基準油として第2圧延油原油Bを用い、当該基準油に混合する異粘度油として第1圧延油原油Aを用いた場合のいずれの場合も、これらと希釈水との油水混合型圧延油の平均径を変化させることができることが確認できた。
【0088】
また、希釈水に基準油としての第1圧延油原油Aを混合し、この混合液と第2圧延油原油Bとを混合して油水混合型圧延油を生成する場合、あるいは逆に、希釈水に基準油としての第2圧延油原油Bを混合し、当該混合液と第1圧延油原油Aとを混合して油水混合型圧延油を生成する場合のいずれの場合にも、油水混合型圧延油の平均径を変化させることができることが確認できた。