(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
操作者によって撮影準備開始ボタンが押下されると、前記振動検知手段に対して前記X線発生部の振動の検知を開始するよう指示し、前記X線発生部によるX線の照射が終了すると、前記振動検知手段に対して前記X線発生部の振動の検知を終了するように指示する指示手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のX線装置。
前記X線照射制御手段は、前記比較手段によって前記振動検知結果が前記閾値よりも大きいと判定された場合にはX線の照射を不可とし、前記振動検知結果が前記閾値よりも小さいと判定された場合にはX線の照射を可とすることを特徴とする請求項4に記載のX線装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
まず、
図1〜
図2を参照して、本発明に係るX線装置1について説明する。
なお、本発明のX線装置1は、X線発生部が支持体に昇降自在に支持された構造を有するものとする。例えば、X線発生部を支持する支柱と装置本体が台車に載せられた移動型X線装置や、X線発生部を支持する支柱がガイドレールを設けた天井に連結され、ガイドレールに沿って走行可能とした天井走行式X線装置等がある。本発明はこれらの移動型または天井走行型のみならず、固定式のX線装置にも適用できるが、本実施の形態では、一例として台車に搭載された移動型X線装置(以下、X線装置1)について説明するものとする。
【0013】
図1に示すように、X線装置1には、X線発生部2を支持する支柱4及び装置本体3が台車6上に載せられる。台車6には、移動用の車輪7が設けられており、操作者が手押しハンドル19を押すことでX線装置1を移動可能となっている。
支柱4は支柱軸方向をスライドするアーム5によってX線発生部2を昇降自在に支持する。また、アーム5は水平方向に伸縮自在となっている。また、支柱4は台車6に対して支柱4の軸方向を軸として回転自在となっている。支柱4内にはアームの上下位置を移動(昇降)するアーム移動機構15が設けられている。アーム移動機構15の構造及び動作の詳細については、例えば、特許第4133041号公報等に記載されるような各種バランス構造を用いればよい。また、支柱4にはアーム5の上下位置(昇降量)を検出する位置検出部16が設けられ、アーム5にはアーム5の水平方向距離(伸長量)を検出する位置検出部16が設けられる(不図示)。
【0014】
X線発生部2には絞り部8、振動センサ9、照射ランプ14等が設けられている。
装置本体3は上面に操作パネル10を有する。操作パネル10には、操作部11、表示部12、音声発生部13等が設けられている。
【0015】
また、
図2に示すように、装置本体3は、内部に制御部20、記憶部17等を有しており、上述のX線発生部2、絞り部8、振動センサ9、照射ランプ14、アーム移動機構15、位置検出部16、操作部11、表示部12、音声発生部13、記憶部17等の各部の動作は制御部20によって制御される。
【0016】
X線発生部2は、X線管及び高電圧発生部により構成され、制御部20の制御により所定強度のX線を被写体に対して照射する。なお、
図1に示すX線発生部2は、X線管の位置を示している。X線管としては、例えば回転陽極X線管が用いられる。この回転陽極X線管では、カソードから放出される熱電子がターゲットに衝突し、その衝突点をX線焦点としてX線が照射される。
【0017】
絞り部8は、X線発生部2から照射されるX線を遮蔽する鉛板を複数有し、各鉛板の位置を移動することにより、被写体に対するX線照射領域を調整する。絞り部8の動作は、制御部20により制御される。
【0018】
照射ランプ14は例えば絞り部8に設けられている。照射ランプ14は、X線照射範囲と縦横の中心位置を示す光を被写体に対して照射する。照射ランプ14の点灯/消灯は、制御部20により制御される。本発明では、例えば、X線発生部2の振動量が小さければ照射ランプ14を点灯してX線照射が可能であることを報知し、振動量が大きい場合は照射ランプを消灯するように制御される。照射ランプ14の点灯によって操作者は振動の収束を知ることができる。
【0019】
振動センサ9は、X線発生部2の振動を検知するためのものであり、例えば加速度センサや変位センサ等を用いる。振動センサ9は制御部20により動作制御される。また振動センサ9は検出した加速度や振幅等を振動量として制御部20へ出力する。振動センサ9の取り付け位置は、例えば
図1に示すように、X線発生部2の絞り部8の内部とすれば外観も良く、望ましい。その他、X線発生部2の上部、側面部、絞り部8の側面部等に取り付けてもよい。
【0020】
位置検出部16は、X線検出部2の位置を検出するものであり、アーム5の上下位置(昇降量)及び支柱4からX線検出部2までの距離(アームの伸長量)を検出する。
位置検出部16は検出した位置情報(昇降量、伸長量)を装置本体3内の制御部20に送出する。なお、X線照射をする際に、X線管焦点(Source)と人体皮膚(Skin)との間の距離(以下、SSDと記す)は、30cm未満にならないような処置を講ずるようJIS Z4701にて規定されている(特許第3132672号公報の段落[0001]、[0002])。
位置検出部16により検出される位置情報は、後述する振動検出処理において閾値の特定に利用される。
【0021】
装置本体3の制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備え、
図2に示すように、X線発生部2、振動センサ9、絞り部8、照射ランプ14、アーム移動機構15、位置検出部16、操作部11、表示部12、音声発生部13、記憶部17の各部の動作を制御する。
【0022】
操作部11は、例えば、キーボード、テンキー等の入力装置や各種スイッチボタン等により構成され、操作者によって入力される各種の指示や情報を制御部20に出力する。なお、X線発生部2を駆動するためのスイッチには2段階スイッチが採用される。すなわち、操作部11は、撮影準備開始ボタン及びX線照射ボタンを有する。撮影準備開始ボタンが押されると制御部20はX線発生部2のウォーミングアップを開始し、その後に、X線照射ボタンが押下されると制御部20はX線の照射を開始させる。
表示部12は、液晶パネル等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成される。表示部12は制御部20が取り扱う種々の情報を表示する。
操作部11と表示部12とが一体化したタッチパネル式の操作パネルとしてもよい。
音声発生部13は、スピーカ等によって構成され、制御部20からの指示に従って所定の操作音、警告音等を発したり、メッセージを再生したりする。
記憶部17は、ハードディスク等により構成され、制御部20が実行する各種処理プログラムやデータが記憶されている。また、操作者への報知内容(表示情報、音声情報等)を複数パターン記憶している。
【0023】
本発明において、X線装置1の制御部20は、X線発生部2の振動量を振動センサ9から取得し、振動の大きさに応じた処理を行う。例えば、制御部20は、振動の大きさに応じて操作者に報知する内容を変更する。また、制御部20は、振動の大きさに応じてX線照射を制御する。すなわち、振動が大きい場合はX線照射を不可とし、振動が収まるとX線照射可能とする。
【0024】
次に、X線装置1の動作を説明する。
図3は、X線装置1の振動検出処理に関する動作の流れを説明するフローチャートである。
なお、X線装置1は動作モードとして、「通常モード」及び「強制停止モード」の2つのモードを有するものとする。「通常モード」とは、振動量に関わらずX線照射ボタンが押下されるとX線を照射するモードであり、「強制停止モード」とは、振動量が所定の閾値よりも大きい場合、X線を照射しないようにするモードである。本実施の形態では、以下説明する振動検出処理の前に、通常モードまたは強制停止モードのいずれかに設定されるものとする。また、X線照射の開始に関しては、撮影準備開始ボタン及びX線照射ボタンの2段階スイッチが用いられるものとする。
【0025】
操作者により操作部11の撮影準備開始ボタンが押下されると(ステップS1)、制御部20はX線発生部2に駆動開始信号を送り、X線管の回転陽極を駆動開始させる(ステップS2)。このとき制御部20は、振動センサ9に対しても検出開始信号を送り、振動検出を開始させる(ステップS3)。撮影準備開始ボタン押下に連動して振動センサ9による振動検出を開始させることにより、準備段階(X線発生部2の位置調整時)における振動を検出することがなくなり、振動センサ9の不要な振動検出動作を省略できる。また振動センサ9にスイッチを設けたり、操作者が振動センサ9の操作を行う必要がないため、製造コストや操作性の面で優れる。
【0026】
振動センサ9は、振動検出を開始すると、検出した振動量を所定時間毎に(ステップS4)制御部20へ出力する。制御部20は、振動センサ9から取得した振動量と、所定の閾値との比較を行う(ステップS5)。
【0027】
閾値は一律の値を予め設定してもよいが、一般に、同じ振動量である場合X線発生部2の位置が高い方が画質への影響が大きいといわれている。そのためX線発生部2の位置に応じた閾値を設定するようにしてもよい。
【0028】
ここで、ステップS5の比較処理について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
まず、制御部20は、閾値を特定するために、位置検出部16からX線発生部2の位置を取得する。また、振動センサ9から振動量を取得する(ステップS21)。次に、X線発生部2の位置に応じた閾値を特定し(ステップS22)、特定された閾値と振動量とを比較する(ステップS23)。
【0029】
ステップS22における閾値の特定としては、例えば、X線発生部2の上下位置(昇降量)と閾値を対応付けた閾値テーブルを予め記憶部17に記憶し、閾値テーブルを参照して閾値を特定するものとしてもよい。更に、アーム5の長さ(伸長量)を加味し、昇降量及び伸長量と閾値とを対応付けるようにしてもよい。
また、所定の一次関数によって閾値を決定するようにしてもよい。一次関数によって決定する場合には、例えば、yを閾値、xをX線発生部2の設定高さ(上下位置)とすると、y=ax+b(但し、aは負)によって閾値yを決定できる。
X線発生部2の位置が低い場合に閾値を緩く設定(比較的大きな振動量を許容)すれば、より少ない待ち時間で、許容できる画質の撮影を行うことが可能となる。
【0030】
閾値と振動量との比較が終了すると、
図3のステップS6へ戻る。制御部20は、ステップS5の比較結果に応じて操作者への報知内容を変更する。
すなわち、制御部20は、閾値よりも振動量が大きいか否かを判定し(ステップS6)、振動量が閾値以下となる場合には(ステップS6;No)、画質に影響がでない旨を報知する(ステップS7)。報知の方法として、例えば、照射ランプ14を点灯し、X線照射の開始を促すようにする。その他、表示部12によるメッセージの表示、または音声発生部13によるメッセージの再生等を行うようにしてもよい。
【0031】
その後、操作者が報知内容を確認し、操作部11のX線照射ボタンを押下すると(ステップS8)、制御部20はX線発生部2に対してX線照射を指示する(ステップS9)。その後、制御部20は振動センサ9に対して、検出終了信号を出力する(ステップS10)。
【0032】
一方、ステップS6の判定において、振動量が閾値より大きくなる場合には(ステップS6;Yes)、制御部20は、画質に影響がある旨を報知する(ステップS11)。
【0033】
振動センサ9からは、所定時間毎に繰り返し振動検出結果(振動量)が送られており、ステップS5の比較処理及びステップS6の判定処理も、その都度行われる。
そのため、振動量が閾値より大きいという判定結果を所定回数(または所定時間)繰り返し得た場合に、ステップS11において、更に操作者にX線発生部2の位置を変更するよう提示することが望ましい。或いは、初めて振動量が閾値より大きいという判定結果を得てから所定時間を超えた場合に、X線発生部2の位置を変更するよう提示することが望ましい。
ステップS11における位置変更の提示の手順としては、まずアーム5(X線発生部2)を支柱4に近づける操作を行うように促す。アーム5(X線発生部2)を支柱4に近づける操作を行うように促す内容を提示した後も繰り返し、振動量が閾値より大きくなる場合は、制御部20は、操作者にアーム5を鉛直下方向に移動させる操作を行うよう提示することが望ましい。
アーム5を支柱4に近づける操作を先に提示する理由は、上述したように、SSDを30cm以上とすることが定められているからである。そこで、まずアーム5の水平方向の移動によって振動を小さくするように勧める。その後、どうしても振動が小さくならない場合には鉛直方向の移動を勧める。この場合、更にSSDが30cm未満にならないように注意喚起することが望ましい。
【0034】
ステップS11における報知及び提示の方法としては、例えば、表示部12によるメッセージの表示、アーム操作方向についての画像表示、または音声発生部13によるメッセージの再生等を行う。
【0035】
振動量が大きく、閾値を下回らない状態のままX線照射ボタンが押下されると(ステップS12;Yes)、制御部20は、強制停止モードにセットされているか否かを判断し(ステップS13)、強制停止モードにセットされている場合は(ステップS13;Yes)、照射不可であることを操作者に報知し(ステップS14)、引き続き振動検出を継続する。強制停止モードではなく、通常モードにセットされている場合は(ステップS13;No)、振動量に関わらずX線照射を開始する(ステップS9)。その後、制御部20は振動センサ9に対して検出終了信号を出力する(ステップS10)。
【0036】
以上説明したように、本発明は、X線発生部2と、X線発生部2を支持する支持体(支柱4、アーム5)とを備えたX線装置1において、X線発生部2の振動を検知する振動センサ9を設ける。そして、装置本体3の制御部20は、振動センサ9による振動検知結果(振動量)を所定の閾値と比較し、比較結果に応じて操作者への報知内容を変更するよう制御する。
これにより、振動が大きい場合と小さい場合とで、異なるメッセージ(報知内容)を操作者に伝えることができ、操作者が振動の収まるタイミングを常時監視する必要がなく、操作が容易となる。
【0037】
また、振動センサ9の動作を、上述の振動量と閾値との比較結果に連動させる。すなわち、操作者によって操作部11の撮影準備開始ボタンが押下されると、制御部20は振動センサ9に対してX線発生部2の振動の検知を開始するよう指示し、X線発生部2によるX線の照射が終了すると、制御部20は振動センサ9に対してX線発生部2の振動の検知を終了するように指示する。
これにより、振動センサ9の動作開始を操作者が指示する必要がないため、操作が容易となる。また、振動量の検出開始ボタンや検出終了ボタンを追加する必要がなく、製造コストを抑制できる。また、振動センサ9による振動検出を常時行うものとすればX線装置1の移動中やX線発生部2の起動直後にも振動が検知されて、不要なアラームが発生されるが、2段階スイッチの操作に連動して振動センサ9の動作を開始させるようにすれば、こうした不要のアラームをなくすことができる。
【0038】
また制御部20は、上述の振動量と閾値との比較結果に応じて、X線の照射を制御する。例えば、強制停止モードでは、振動量が閾値を上回っている場合はX線の照射を不可とし、X線照射ボタンが押されても、X線を照射しないこととする。振動の有無を振動センサによって評価するため、振動が収まったか否かを確実に把握できる。また、強制停止モードでは画質が優先されるため、無効被曝をなくすことができる。
【0039】
また、X線発生部2の位置に応じて閾値を変更し、例えば、X線発生部2の位置が低い場合に閾値をより大きく設定すれば、許容できる画質で撮影するための待ち時間(振動が小さくなるまでの待ち時間)を短縮できる。
【0040】
また、制御部20は、振動量が閾値よりも大きいと判定された回数が所定回数を超えたか、または初めて振動量が閾値よりも大きいと判定された場合には、操作者に対してX線発生部2の位置を変更するように報知する。これにより、早く振動を抑えるための適切な方法を操作者に知らせることができる。
【0041】
以上、本発明に係るX線装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。また、当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。