特許第5756354号(P5756354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756354
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/10 20060101AFI20150709BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   F02M37/10 G
   F02M37/10 H
   F02M37/10 B
   F02M37/00 331D
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-139365(P2011-139365)
(22)【出願日】2011年6月23日
(65)【公開番号】特開2013-7299(P2013-7299A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2014年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】鵤木 孝夫
【審査官】 赤間 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−121560(JP,A)
【文献】 特開2007−247598(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/120899(WO,A1)
【文献】 特開2010−174896(JP,A)
【文献】 特開2010−196620(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0215523(US,A1)
【文献】 特開2010−163918(JP,A)
【文献】 特開2010−216485(JP,A)
【文献】 特開2010−116793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00〜37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に配置され、前記燃料タンク内の燃料を汲み上げて内燃機関へと圧送する燃料ポンプと、
前記燃料ポンプに外挿されるカップ側筒部を有するアッパーカップと、
前記アッパーカップに組み付けられ、前記アッパーカップを前記燃料タンクに固定するためのフランジユニットと、を備えた燃料供給装置において、
前記フランジユニットには、前記燃料タンクから流入した前記燃料が貯留されるリザーバ部が形成され、
前記燃料ポンプで汲み上げられた前記燃料が前記内燃機関に向けて圧送される燃料流路ユニットと、
前記燃料流路ユニット内の燃料の圧力を一定に保持するプレッシャレギュレータと、
前記プレッシャレギュレータから排出される前記燃料を前記リザーバ部に向けて案内するリターン流路と、を備え、
前記アッパーカップと前記フランジユニットとの接続部分のうち、前記アッパーカップの周方向で少なくとも前記リターン流路に対応する部分には、前記アッパーカップと前記フランジユニットとが前記アッパーカップの径方向で互いに重なり合うラップ部が形成され
前記アッパーカップは、前記カップ側筒部に対して径方向の内側に位置するとともに、前記カップ側筒部の開口端縁に対して軸方向の前記フランジユニット側に突出する延在部を備え、
前記プレッシャレギュレータは、前記延在部に対して軸方向の前記アッパーカップ側に配置され、
前記フランジユニットは、前記延在部が挿入されるとともに、前記カップ側筒部と軸方向で対向するフランジ側筒部を備え、
前記ラップ部は、前記フランジユニット内で前記延在部と前記フランジ側筒部とが径方向で互いに重なり合うことで構成されていることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記プレッシャレギュレータは、前記アッパーカップ内に配設されていることを特徴とする請求項1記載の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動二輪車や四輪車等の車両用の燃料供給装置として、燃料タンク内に燃料ポンプを配設する、いわゆるインタンク式の燃料供給装置が用いられる。インクタンク式の燃料供給装置は、フランジユニットを燃料ポンプの上部に配置して燃料タンクの上壁に取り付ける構造のもの(以下「上付タイプ」という)と、フランジユニットを燃料ポンプの下部に配置して燃料タンクの底壁に取り付ける構造のもの(以下「下付タイプ」という)と、に大きく分類される。
【0003】
上述した燃料供給装置のうち下付タイプの燃料供給装置は、燃料ポンプと、燃料タンク内に配設されて燃料ポンプを外側から覆うアッパーカップと、アッパーカップの下端に配設され、かつ燃料タンクに取り付けられるフランジユニットと、を備えている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1に示される燃料供給装置では、フランジユニットの内周面と燃料ポンプとで囲まれた空間が、燃料が貯留されるリザーバ部として機能しており、このリザーバ部内には燃料ポンプ内への異物の吸入を防止するためのフィルタが配されている(以下、「フィルタ」という)。
そして、燃料供給装置では、燃料ポンプを駆動させると、燃料タンクからリザーバ部内に流入した燃料がフィルタを介して吸入され、フィルタで濾過された後、内燃機関の燃料供給系に送給されるようになっている。
【0004】
また、近時では、下付けタイプの燃料供給装置において、濾過面積の確保のし易さや、フィルタの交換のし易さ等の観点から、上述したフィルタをリザーバ部内ではなく燃料タンクの外部に配置し(以下、「別体フィルタ」という)、この別体フィルタとリザーバ部内とを配管を介して接続する構成が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−174896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した燃料供給装置にあっては、内燃機関に供給される燃料のうち、燃料中に含まれるエアの量を低減して、内燃機関を良好な状態で作動させることが要請されている。
【0007】
ここで、フィルタを有する構成にあっては、仮にフィルタの表面にエアが存在していても、リザーバ部内においてフィルタの外面の一部が燃料に接していれば、そこから燃料のみを吸い込むことができる。
しかしながら、別体フィルタを有する構成にあっては、リザーバ部と別体フィルタとを接続するフィルタ導入管付近にエアが存在していると、フィルタ導入管から容易にエアが入り込んでしまう。その結果、エアを含む燃料を内燃機関に供給してしまうことになり、内燃機関の不調を引き起こす原因となってしまう。
【0008】
これに対して、燃料ポンプに汲み上げられた燃料が流通する燃料流路内にプレッシャレギュレータを設け、燃料流路内に余剰な圧力がかかった場合に燃料流路内の燃料をフィルタ導入管付近に戻すことで、リザーバ部内に効率良く燃料を満たし、フィルタ導入管にエアが入り込むのを抑制することも考えられる。
しかしながら、車体が傾いている場合等では、プレッシャレギュレータから排出されるリターン燃料がアッパーカップとフランジユニットとの間から外部(燃料タンク内)に漏れてしまい、リザーバ部に向けてリターン燃料を十分に供給することができないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、燃料ポンプでのエアの吸い込みを抑制できる燃料供給装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、燃料タンク内に配置され、前記燃料タンク内の燃料を汲み上げて内燃機関へと圧送する燃料ポンプと、前記燃料ポンプに外挿されるカップ側筒部を有するアッパーカップと、前記アッパーカップに組み付けられ、前記アッパーカップを前記燃料タンクに固定するためのフランジユニットと、を備えた燃料供給装置において、前記フランジユニットには、前記燃料タンクから流入した前記燃料が貯留されるリザーバ部が形成され、前記燃料ポンプで汲み上げられた前記燃料が前記内燃機関に向けて圧送される燃料流路ユニットと、前記燃料流路ユニット内の燃料の圧力を一定に保持するプレッシャレギュレータと、前記プレッシャレギュレータから排出される前記燃料を前記リザーバ部に向けて案内するリターン流路と、を備え、前記アッパーカップと前記フランジユニットとの接続部分のうち、前記アッパーカップの周方向で少なくとも前記リターン流路に対応する部分には、前記アッパーカップと前記フランジユニットとが前記アッパーカップの径方向で互いに重なり合うラップ部が形成され、前記アッパーカップは、前記カップ側筒部に対して径方向の内側に位置するとともに、前記カップ側筒部の開口端縁に対して軸方向の前記フランジユニット側に突出する延在部を備え、前記プレッシャレギュレータは、前記延在部に対して軸方向の前記アッパーカップ側に配置され、前記フランジユニットは、前記延在部が挿入されるとともに、前記カップ側筒部と軸方向で対向するフランジ側筒部を備え、前記ラップ部は、前記フランジユニット内で前記延在部と前記フランジ側筒部とが径方向で互いに重なり合うことで構成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、アッパーカップとフランジユニットとが径方向で互いに重なり合うラップ部を有しているため、リザーバ部内に向けて流通する燃料がアッパーカップとフランジユニットとの接続部分から外部に漏れるのを抑制できる。これにより、リザーバ部内に効率良く燃料を満たすことができるので、燃料ポンプでのエアの吸い込みを抑制して、内燃機関を良好な状態で作動させることができる。
【0012】
た、少なくともリターン流路に対応する部分にラップ部を形成することで、リターン流路を通る燃料がリザーバ部に到達する前に、アッパーカップとフランジユニットとの接続部分から外部に漏れるのを抑制できる。これにより、燃料を効率良くリザーバ部に戻すことができるので、リザーバ部内に効率良く燃料を満たすことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る燃料供給装置によれば、燃料ポンプでのエアの吸い込みを抑制して、内燃機関を良好な状態で作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における燃料供給装置を左斜め後方から見た斜視図である。
図2】燃料供給装置を左斜め前方から見た分解斜視図である。
図3】燃料供給装置を斜め前方から見た分解斜視図である。
図4図1のA−A線に沿う断面図である。
図5】フランジユニットの平面図である。
図6】フランジユニットの斜視図である。
図7図4に相当する断面を示しており、リターン燃料の流通経路を説明するための説明図である。
図8】燃料供給装置の部分側面図であり、車両の急制動時の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、実施形態の燃料供給装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、後述する燃料ポンプ3の中心軸を中心軸C(図4参照)とし、この中心軸Cに沿ったアッパーカップ25側を上側(図中UP)、フランジユニット4側を下側という。また、中心軸Cに直交する方向を径方向といい、中心軸C回りに周回する方向を周方向という。また、本実施形態の燃料供給装置は、自動二輪車や四輪車等の車両に取り付けられたものであり、以下の説明では図中UPを上方、FRを車両の進行方向前方とする。
【0016】
(燃料供給装置)
図1は燃料供給装置1を左斜め後方から見た斜視図であり、図2は右斜め前方から見た斜視図、図3は左斜め前方から見た分解斜視図である。また、図4図1のA−A線に沿う断面図である。
図1〜4に示すように、本実施形態の燃料供給装置1は、いわゆる下付けタイプのものであって、燃料タンク2の底壁2b(図4参照)に形成されている開口部2aから挿入され、燃料タンク2の底壁2bに取り付けられている。燃料供給装置1は、燃料タンク2内に配置される燃料ポンプ3(図3,4参照)と、燃料ポンプ3に上方から外挿されるアッパーカップ25と、燃料タンク2の底壁2bに取り付けられ、燃料ポンプ3を下方から支持するフランジユニット4と、を備えている。
【0017】
(燃料ポンプ)
図4に示すように、燃料ポンプ3は、中心軸C方向が上下方向に一致した略円柱形状に形成されており、上側に配設されたモータ部30と、下側に配設されたポンプ部40と、を有している。また、燃料ポンプ3の外周面は、例えば金属からなる円筒状のハウジング33により形成されている。
【0018】
モータ部30には、例えば、ブラシ(不図示)付きの直流モータ30aが使用される。
モータ部30における径方向の中央には、上下方向に沿って延在する出力軸30bが配置されており、モータ部30の上側と、ポンプ部40の下側と、で回動自在に枢支されている。モータ部30の上側には、ブラシと電気的に接合している一対のモータ端子32(図1,2参照)が、中心軸Oを間に挟んで径方向で対向する位置で中心軸Cに平行に立設されている。一対のモータ端子32は、アッパーカップ25の上壁25bから上方に向けて突出して、この突出部分にハーネス6(図1,2参照)の一方側が接続されている。なお、ハーネス6の他方側は、燃料ポンプ3の下側においてコネクタ端子34(図2参照)の一方側34aに接続されている。そして、ハーネス6により外部電源とモータ部30とが電気的に接続され、外部電源からモータ部30を駆動するための電力が供給される。
【0019】
また、モータ部30の上側(モータ端子32及びブラシの周辺)は、モータ部30の下側(モータ端子32及びブラシの周辺よりも下側の部分)よりも若干縮径され、この縮径部分に段部30cが形成されている。段部30cには、上述したハウジングケース33の上端がカシメられている。
また、モータ部30の上側には、燃料を排出する排出ポート31と、この排出ポート31と連通するチェックバルブ74と、が設けられている。排出ポート31及びチェックバルブ74は、後述する燃料流路ユニット58に接続されている。
チェックバルブ74は、排出ポート31から排出された燃料が、燃料流路ユニット58から燃料ポンプ3内に逆流しないようにするためのものである。
【0020】
ポンプ部40は、インペラ47を有する非容積型のポンプが用いられており、インペラ47と、インペラ47の全体を覆うように形成されたポンプケース45と、により構成されている。
インペラ47は、樹脂からなる略円板状に形成された部材である。インペラ47の略中央には、挿通孔47cが形成されており、直流モータ30aの出力軸30bが挿通されている。インペラ47の上面及び下面における外周側には、複数の羽根部(不図示)が形成されており、複数の羽根部の間は、インペラ47の下面と上面とを貫通している。また、インペラ47の径方向における挿通孔47cと羽根部との間には、インペラ47の下面と上面とを貫通する燃料流路孔(不図示)が形成されている。直流モータ30aが駆動されてインペラ47が回転すると、燃料は、燃料流路孔を通過し、インペラ47の下側から上側に向かって圧送される。
【0021】
ポンプケース45は、インペラ47の上下、及び側方を覆うように配置されている。ポンプケース45の下面45aの外周縁には、段部48が形成されている。段部48は、ポンプケース45の下面45a側を縮径させることにより形成される。段部48内には、シール部材としての角リング46が装着されている。そして、段部48には、角リング46を間に挟んで上述したハウジングケース33の下端がカシメられている。
【0022】
ポンプケース45における下面45aの外周側には、下方に向けて突出した燃料吸入口41が形成されている。燃料吸入口41は略筒状に形成されており、燃料吸入口41の内側が燃料の通路となっている一方、燃料吸入口41の外側がフランジユニット4の後述するフィルタ排出管51にOリング42を介して装着されている。
【0023】
また、ポンプケース45には、上下方向に沿って貫通する連通孔(不図示)が形成されている。連通孔は上述した燃料吸入口41と連通しており、燃料吸入口41から吸入された燃料が通過する。なお、ポンプケース45には、燃料吸入口41に対して周方向で異なる位置に、ポンプケース45内のエアを排出する脱気孔49が形成されている。この脱気孔49は、燃料ポンプ3にてインペラ47の回転により発生した気泡を燃料ポンプ3外(フランジユニット4)に向けて排出するためのものである。
【0024】
(アッパーカップ)
図1〜4に示すように、アッパーカップ25は、耐油性に優れた樹脂により形成されるとともに、下方に向けて開放された有底筒状の部材であり、例えばインジェクション成型等により形成される。
アッパーカップ25の上側には、液面検出器60(図1参照)の取付部61が形成されている。取付部61は、径方向外側に向かって延出形成された板状に形成され、アッパーカップ25を形成する際、同時にインジェクションにより成型される。液面検出器60は、取付部61にスナップフィット等により固定される。
【0025】
アッパーカップ25は、燃料ポンプ3に外挿される筒部24と、筒部24の上端開口部を閉塞する上壁25bと、を有している。
筒部24は、下側に配置された大径部26と、上側に配置され大径部26に比べて外径が縮径された小径部27と、を備えている。
【0026】
大径部26の外周面には、フランジユニット4に設けられた後述する係合片15aの係合孔15bに対応する位置に、径方向の外側に向けて突出する係合凸部25aが形成されている。これらアッパーカップ25の係合凸部25aと、フランジユニット4の係合片15aと、によって、両者がスナップフィットし、アッパーカップ25とフランジユニット4とが一体化される。
また、大径部26における周方向で各係合凸部25aに対応する位置には、大径部26の下端面から下方に向けて突出する突出片28(図3参照)が形成されている。
【0027】
アッパーカップ25の内側には、燃料ポンプ3から吐出された燃料が通る燃料流路ユニット58が設けられている。燃料流路ユニット58は、径方向から見た断面が略L字状に形成され、アッパーカップ25の上壁25bを径方向、及び筒部24を上下方向に亘って延在している。燃料流路ユニット58は、上述したチェックバルブ74、及びプレッシャレギュレータ76にそれぞれ連通している。プレッシャレギュレータ76は、アッパーカップ25の小径部27の内側において、中心軸Oを挟んでチェックバルブ74とは反対側に設けられている。プレッシャレギュレータ76は、燃料流路ユニット58内の燃圧を一定に保つためのものであり、燃料流路ユニット58内に余剰な燃圧が発生した場合に、燃料流路ユニット58内の燃料を後述するリザーバ部11に排出している。
また、燃料流路ユニット58において、チェックバルブ74を間に挟んでプレッシャレギュレータ76の反対側には、燃料の流通方向における下流側の導出口が下方に向けて開口している。
【0028】
ここで、筒部24における周方向でプレッシャレギュレータ76の両側に対応する位置には、アッパーカップ25の内径が拡径するように形成された一対のリターン流路29(図3参照)が形成されている。これらリターン流路29は、筒部24における上下方向の全域に亘って形成されている。そして、プレッシャレギュレータ76から排出される燃料(以下、リターン燃料という)は、主にリターン流路29と燃料ポンプ3(ハウジング33)の外周面との間を下方(リザーバ部11)に向けて流通するようになっている。
また、筒部24における径方向でプレッシャレギュレータ76に重なる位置、すなわち周方向における上述したリターン流路29間には、大径部26の下端部から下方に向けて延在する延在部23(図3,4参照)が形成されている。延在部23は、大径部26に比べて外径が小さい円弧状に形成されるとともに、上述した突出片28よりも短く形成されている。
【0029】
(フランジユニット)
フランジユニット4は、耐油性に優れた樹脂等からなる部材であり、インジェクションにより成型される。
フランジユニット4は、有底筒状のユニット本体10と、略円盤形状のフランジ部12と、フランジ部12の下側に形成されるコネクタ14と、フランジ部12の上側に形成される筒部15と、筒部15の内側に形成される端子保持部18(図2参照)と、を備えている。
【0030】
図5はフランジユニット4の平面図であり、図6はフランジユニット4の斜視図である。
図4〜6に示すように、ユニット本体10は、フランジ部12の下側に形成され、燃料タンク2の底壁2bから下方に向けて突出している。また、ユニット本体10の内側には、台座部65が形成されている。台座部65は、ユニット本体10の内周面が縮径することにより形成される。そして、この台座部65の上端面に、上述した燃料ポンプ3におけるハウジング33の下端縁を当接させることで、フランジユニット4に燃料ポンプ3を載置している。この場合、燃料ポンプ3の下面(ポンプケース45の下面45a)と、ユニット本体10の底壁10aとの間のスペースが、燃料が貯留されるリザーバ部11として機能している。
【0031】
また、ユニット本体10の側壁10bには、フィルタ導入管52、フィルタ排出管51、及び燃料取出管57が設けられている。
フィルタ導入管52は、ユニット本体10の後側から、進行方向に対して斜め後方に向けて延在しており、燃料供給装置1とは別に設けられたフィルタユニットに接続されている。具体的に、フィルタ導入管52の導入口52a側は、側壁10bよりも内側に向けて突出して、リザーバ部11内を中央部に向けて延在しており、リザーバ部11内で開口している。この場合、フィルタ導入管52の導入口52aは、フィルタ導入管52の軸方向(延在方向)に対して斜めにカットされており、進行方向の前方に向けて開放されている。
一方、フィルタ導入管52の導出口側は、ユニット本体10の外側でユニット本体10の後側から斜め後方に向けて開口している。
【0032】
フィルタ排出管51は、上述したフィルタ導入管52に対して進行方向の前方に向けて周方向で約90°異なる位置に配置され、燃料供給装置1とは別に設けられたフィルタユニットに接続されている。フィルタ排出管51の導出口51a側は、側壁10bよりも内側に向けて突出して、リザーバ部11内を中央部に向けて延在した後、リザーバ部11内で上方に向けて開口している。そして、フィルタ排出管51の導出口51aには、上述した燃料ポンプ3の燃料吸入口41が装着されている。
すなわち、フィルタ導入管52、フィルタ排出管51、フィルタユニットを介して、リザーバ部11と燃料ポンプ3の燃料吸入口41とが連通している。
【0033】
燃料取出管57は、上述したフィルタ排出管51に対して中心軸Oを間に挟んで径方向で対向する位置(周方向で180°異なる位置)に配置され、車両の内燃機関(不図示)に連通している。燃料取出管57の導入口側は、フランジユニット4の内側を上方に向かって延在しており、その上端部で上述した燃料流路ユニット58の導出口に接続されている。
【0034】
フランジ部12は、ユニット本体10の上端縁から径方向の外側に向けて張り出しており、燃料タンク2の開口部2aに対応する部位に、上方に向けて突出する環状部13が形成されている。
そして、燃料タンク2に燃料供給装置1を取付けることにより、フランジ部12よりも下側(ユニット本体10)が燃料タンク2の外部に露出した状態になる。また、フランジ部12よりも上側(筒部15)が燃料タンク2内の燃料に浸漬された状態になる。なお、フランジ部12と燃料タンク2の底壁2bとの間には、ゴム等からなるシール部材(不図示)が設けられており、燃料供給装置1と燃料タンク2とのシール性を確実に確保できるようになっている。
【0035】
コネクタ14は、上述したユニット本体10において、中心軸Oを間に挟んでフィルタ導入管52と径方向で対向した位置に一体的に形成されている。コネクタ14は、径方向から見て略矩形状をした筒状部材であり、径方向外側に向けて開口するコネクタ嵌合部を有している。コネクタ14は、ユニット本体10を形成する際に同時に形成される。このコネクタ14には、外部電源や制御装置等に接続された外部コネクタ(不図示)が嵌着される。
【0036】
コネクタ14の内部には、燃料タンク2の内外を導通させるコネクタ端子34が設けられている。コネクタ端子34は、銅等の金属からなる部材であり、プレス加工により形成される。コネクタ端子34は、コネクタ14を成型する際に、例えばインサート成型される。なお、各コネクタ端子34は、燃料ポンプ3の電源、及び液面検出器60の電源、にそれぞれ電気的に接続される。コネクタ端子34は略L字形状に形成されており、コネクタ端子34の一方側34aは端子保持部18の内側で上方に向けて突出した状態で保持され、他方側34b(図2参照)はコネクタ14の内側で径方向外側に向けた状態で露出している。
【0037】
図1〜4,6に示すように、筒部15は、フランジ部12を間に挟んでユニット本体10の反対側に形成され、上方からみて環状部13よりも小径の略円形状をしている。筒部15の上端縁には、上方に向けて突出する係合片15aが周方向に沿って複数個所(本実施形態では4箇所)形成されている。係合片15aは、径方向に沿って弾性変形可能に形成されている。また、係合片15aには、上述したアッパーカップ25の係合凸部25aと係合可能な係合孔15bが形成されている。そして、アッパーカップ25の大径部26に係合片15aがスナップフィットされることで、フランジユニット4とアッパーカップ25とが組み付けられている。
【0038】
この場合、大径部26の下端面がフランジユニット4の上端面に当接するとともに、大径部26に形成された突出片28は、フランジユニット4の筒部15の内側に差し込まれた状態で、フランジユニット4とアッパーカップ25とが組み付けられている。また、上述したアッパーカップ25の延在部23は、筒部15の内側に差し込まれている。したがって、本実施形態において、アッパーカップ25の突出片28、及び延在部23と、フランジユニット4の筒部15とは、径方向から見て重なり合ったラップ部35(図4参照)を構成している。また、筒部15における周方向で延在部23に対応する位置には、径方向の内側に向けて立設されたリブ36が周方向で間隔を空けて複数配置されている。これらリブ36は、下端側がユニット本体10の底壁10aに連設される一方、上端側が筒部15の上端面よりも下方に配置されている。そして、フランジユニット4とアッパーカップ25との組み付けられた際に、上述した延在部23の下端面と、リブ36の上端面とが上下方向で対向している(図4参照)。
【0039】
図2に示すように、端子保持部18は、上下方向においてフランジ部12を間に挟んでコネクタ14の反対側で筒部15に一体形成されている。また、図2,6に示すように、端子保持部18は、周方向において、筒部15のうちコネクタ端子34の一方側34aに対応した位置が径方向の内側に向けて窪み形成されて構成されている。具体的に、端子保持部18は、筒部15に対して径方向の内側に向けて窪んだ位置に形成された底壁部37を備えている。底壁部37は、上下方向における長さがフランジユニット4と同等の長さになっており、上側は筒部15に形成された切欠き部15cから外部に露出する一方で、下側は径方向からみて筒部15と重なり合っている。そして、底壁部37の外側に各コネクタ端子34の一方側34aが周方向に間隔を空けて配置されている。
【0040】
底壁部37には、径方向の外側に向けて突出する隔壁38が上下方向に沿って延在している。この隔壁38は、上述した各コネクタ端子34間を区画するように、周方向に沿って間隔を空けて複数形成されている。そして、各隔壁38間で囲まれた領域が、各コネクタ端子34をそれぞれ収容する端子収容部39を構成している。また、隔壁38の径方向の外側端面は、筒部15の内周面と離間しており、各隔壁38と筒部15との間を通じて各端子収容部39同士が連通している。
【0041】
また、底壁部37における周方向の一端側(進行方向前側)は、筒部15における切欠き部15cの内周縁と底壁部37との間を遮る側壁部50が連設されている。一方、底壁部37における周方向の他端側(進行方向後側)には、筒部15と底壁部37との間が周方向に向けて開放するスリット43が形成されている。このスリット43は、上述したリザーバ部11の内部と、各端子収容部39とにそれぞれ連通しており、各端子収容部39内に溜まる燃料をリザーバ部11内に排出するための排出孔として機能する。
【0042】
ここで、底壁部37における周方向他端側には、周方向に沿って延在する延在部44が形成されている。この延在部44は、外径が筒部15の外径よりも小さい円弧状に形成され、筒部15の径方向内側を筒部15に沿って延在している。そして、延在部44と筒部15との間には、上述したアッパーカップ25の突出片28が差し込まれるようになっており、フランジユニット4の内部と外部との間で入り組んだラビリンス状に形成される。
【0043】
また、図3,5に示すように、筒部15における周方向における一部には、上端縁から下方に向けて所定幅を有するスリット19が形成されている。具体的に、スリット19は、筒部15の周方向において、進行方向に対して90°の位置(車両の側方)に向けて開放され、筒部15の内側のリザーバ部11と、筒部15の外側(燃料タンク2内)とを連通させるように形成されている。
【0044】
ここで、スリット19は、上下方向に沿う深さが進行方向の後方から前方に向かうに従い漸次浅くなるように形成されている。すなわち、スリット19における下端縁19aは、進行方向の後方から前方に向かうに従い斜め上方に向けて延在している。この場合、スリット19の下端縁19aにおいて、進行方向の後側は、燃料タンク2の底壁2bに最も近接しており、下方に向けて丸みを帯びている。なお、スリット19の下端縁19aの傾斜角度は、中心軸Cに直交する平面(燃料タンク2の底壁2b)に対して45°程度に設定されている。
【0045】
また、図5,6に示すように、本実施形態のユニット本体10の底壁10aには、リザーバ部11内でのフィルタ導入管52に向かう燃料の流通方向において、フィルタ導入管52よりも上流側にラビリンス部53,54が形成されている。ラビリンス部53,54は、囲繞壁部55、及び複数の規制壁部56a〜56dを備えている。
囲繞壁部55は、ユニット本体10の底壁10aにおいて、上述した燃料ポンプ3の脱気孔49と上下方向で対応する位置に形成され、脱気孔49の周囲を前方から側方にかけて囲繞している。囲繞壁部55は、上方から見てJ字状に形成され、長辺側の端部が上述したフィルタ排出管51における導出口51a側の外周面に連設されている。
【0046】
ユニット本体10の底壁10aにおいて、上述したリターン流路29と上下方向で対応する位置、すなわちフィルタ排出管51を間に挟んで両側は、プレッシャレギュレータ76から排出されるリターン燃料の排出位置62(図5参照)となっている。そして、リザーバ部11内での燃料の流通方向において、上述した排出位置62と、フィルタ導入管52と、の間に複数の規制壁部56a〜56dが設けられている。具体的に、規制壁部56a〜56dは、フィルタ排出管51から上述した端子保持部18の延在部44に向かって延びる第1規制壁部56aと、延在部44からフィルタ排出管51に向かって延びる第2規制壁部56bと、フィルタ排出管51から端子保持部18とは反対側に向かって延びる第3規制壁部56cと、端子保持部18に対して中心軸Oを間に挟んで径方向の反対側の台座部65から端子保持部18に向かって延びる第4規制壁部56dと、を備えている。
【0047】
第1規制壁部56aは、燃料の流通方向において、上述した囲繞壁部55よりも下流側(後方)で、第2規制壁部56bよりも上流側(前方)に配置されている。また、第1規制壁部56aにおける径方向の外側端面は、延在部44の内周面に対して離間している。第2規制壁部56bにおける径方向の内側端面は、フィルタ排出管51の外周面に対して離間している。
したがって、プレッシャレギュレータ76から排出されるリターン燃料の排出位置62のうち、一方の排出位置62、及び燃料ポンプ3の脱気孔49と、フィルタ導入管52と、の間は、囲繞壁部55、及び第1,2規制壁部56a,56bにより燃料の流通方向に沿って入り組んだ第1ラビリンス部53が形成されている。
【0048】
第3規制壁部56cは、燃料の流通方向において、第4規制壁部56dよりも上流側(後方)に配置されるとともに、その径方向の外側端面は、台座部65の内周面に対して離間している。第4規制壁部56dにおける径方向の内側端面は、フィルタ排出管51の外周面に対して離間している。
したがって、プレッシャレギュレータ76から排出される燃料の排出位置62のうち、他方の排出位置62と、フィルタ導入管52と、の間は、第3,4規制壁部56c,56dにより燃料の流通方向に沿って入り組んだ第2ラビリンス部54が形成される。なお、囲繞壁部55、各規制壁部56a〜56dの上下方向における高さは、台座部65に比べて低く設定されており、囲繞壁部55、各規制壁部56a〜56dの上端面と、台座部65上に載置される燃料ポンプ3と、の間には間隙が形成される。
【0049】
(作用)
次に、上述した燃料供給装置1の動作方法について説明する。
まず、燃料供給装置1を燃料タンク2に取り付け、燃料タンク2内に燃料を充填すると、燃料供給装置1は燃料内に浸漬される。そして、燃料タンク2内に貯留された燃料は、主にスリット19を通ってフランジユニット4内に流入し、リザーバ部11に貯留される。この状態で、直流モータ30aを駆動して燃料ポンプ3が作動すると、リザーバ部11内の燃料がフィルタ導入管52内を通って燃料供給装置1とは別体のフィルタユニットに供給される。フィルタユニットで濾過された燃料は、フィルタ排出管51を通って燃料ポンプ3の燃料吸入口41からポンプケース45内に吸い込まれる。
【0050】
ポンプケース45内に吸い込まれた燃料は、インペラ47の回転により燃料ポンプ3内を上方に向けて汲み上げられ、排出ポート31を通って燃料流路ユニット58に向けて圧送される。燃料流路ユニット58に向けて圧送された燃料は、チェックバルブ74を介して燃料流路ユニット58に流入する。その後、燃料流路ユニット58に流入した燃料は、燃料取出管57を通って内燃機関に供給されるようになっている。この場合、図5に示すように、インペラ47の回転により発生した気泡は、脱気孔49からリザーバ部11内に吐出される。脱気孔49から吐出されたエアは、リザーバ部11内でラビリンス部53に進入する際に流速が低減されることで、ラビリンス部53を通過し難くなり、ラビリンス部53の上端部と燃料ポンプ3の下端部との間の隙間から外部へ排出される(図5中F1)。
【0051】
図7は、図4に相当する断面を示しており、リターン燃料の流通経路を説明するための説明図である。
一方、図7に示すように、燃料ポンプ3の動作に伴い、燃圧が所定の調整圧を超えると、プレッシャレギュレータ76が開弁状態となり、燃料流路ユニット58内の燃料がプレッシャレギュレータ76を介して排出される。排出されたリターン燃料(図7中矢印F2)は、燃料ポンプ3のハウジング33と、アッパーカップ25の筒部24と、の間を下方に向けて流通することで、リザーバ部11に戻される。これにより、燃料取出管57側に供給される燃料の圧力が適宜調整される。
【0052】
ここで、プレッシャレギュレータ76を介して排出されたリターン燃料F2は、主にリターン流路29と燃料ポンプ3との間を流通する。この際、フランジユニット4とアッパーカップ25との接続部分のうち、周方向でリターン燃料F2の排出流路に対応する位置は、筒部15と延在部23、及び突出片28とが径方向で重なり合ったラップ部35を構成しているため、仮に車両が傾いている場合等であっても、リターン燃料F2がリザーバ部11に到達する前に、アッパーカップ25とフランジユニット4との接続部分から外部に漏れるのを抑制できる。これにより、リターン燃料F2を効率良くリザーバ部11に戻すことができるので、リザーバ部11内に効率良く燃料を満たし、燃料ポンプ3でのエアの吸い込みを抑制できる。
【0053】
そして、図5に示すように、リターン燃料F2は、主にユニット本体10の排出位置62に向けて排出された後、再びリザーバ部11内をフィルタ導入管52に向けて流通する。
ここで、リターン燃料F2は、リザーバ部11内で入り組んだラビリンス部53,54に進入する際に流速が低下することで、リターン燃料F2中からエアが分離される。この場合、リターン燃料F2は、ラビリンス部53,54を通過した後、フィルタ導入管52に導入され、フィルタユニットを介して再び内燃機関に向けて送出される一方、リターン燃料F2から分離したエアは、ラビリンス部53,54の上端部と燃料ポンプ3の下端部との間の隙間から外部へ排出される(図5中F2参照)。
【0054】
このように、リザーバ部11内での燃料の流通方向において、フィルタ導入管52よりも上流側にラビリンス部53,54を形成することで、リザーバ部11内に貯留された燃料は、ラビリンス部53,54でエアが分離された後、フィルタ導入管52に導入される。そのため、燃料ポンプ3でのエアの吸い込みを抑制して、内燃機関を良好な状態で作動させることができる。
この場合、リザーバ部11内において、特にリターン燃料F2の排出位置62と、フィルタ導入管52との間にラビリンス部53,54を形成することで、燃料ポンプ3に向けてエアの少ない燃料を確実に供給できる。
また、脱気孔49とフィルタ導入管52との間にラビリンス部53を形成することで、脱気孔49から吐出されるエアが、フィルタ導入管52に向けて流通する燃料に混入されるのを抑制できるので、燃料ポンプ3に向けてエアの少ない燃料を確実に供給できる。
【0055】
しかも、脱気孔49から吐出されるエア、及びリターン流路29から排出される燃料は、ラビリンス部53,54に進入する際に流速が低下することで、リザーバ部11内での燃料の液面の揺動を抑制することができる。これにより、フィルタ導入管52の導入口52aが燃料の液面から露出するのを抑制できるので、フィルタ導入管52内にエアが入り込むのを抑制できる。
【0056】
次に、本実施形態の燃料供給装置1を有する車両の急制動時における作用について説明する。図8は、上述した燃料供給装置1の部分側面図である。
通常走行時において、燃料タンク2内の燃料F3の液面は、走行面に対してほぼ平行な状態を保っている。例えば、燃料タンク2内に燃料F3が満たされていて、燃料F3の液面高さがスリット19の下端縁19aよりも高い位置にある場合には、燃料F3は上述したようにスリット19を通って常時フランジユニット4内に流入していく。
これに対して、図8に示すように、残燃料が少なく、燃料F3の液面高さがスリット19の下端縁19aよりも低い場合、すなわちスリット19の全体が燃料タンク2内に開放されている場合には、スリット19を通じた燃料供給装置1内外での燃料F3の流通がほとんどなくなっている。
【0057】
図8に示す状態で急制動が行われると、燃料タンク2(リザーバ部11)内の燃料F3が前方に偏ってしまい、燃料F3の液面が、進行方向前方に向かうに従い盛り上がった状態となる(図8中鎖線参照)。この際、本実施形態のスリット19は、進行方向の後方から前方に向かうに従い漸次浅くなるように形成されているため、急制動時に燃料F3の液面が盛り上がったとしても、リザーバ部11内の燃料と、燃料タンク2内の燃料F3と、がスリット19を通じて架け渡されることを抑制できる。そのため、リザーバ部11内の燃料がスリット19を通じて漏れるのを抑制できる。
【0058】
また、本実施形態では、フィルタ導入管52の導入口52aがリザーバ部11内に突出し、かつ前方に向けて開放されているため、急制動時にリザーバ部11内での燃料F3の液面が前方に偏ってしまった場合であっても、導入口52aが燃料F3の液面から露出するのを抑制できる。そのため、フィルタ導入管52内にエアが入り込むのを抑制できる。
【0059】
さらに、本実施形態では、端子保持部18の底壁部37を筒部15と径方向で重なる位置まで延在して延在部44を形成することで、急制動時にリザーバ部11内での燃料F3の液面が前方に偏ってしまった場合であっても、リザーバ部11内に貯留された燃料F3がスリット43まで到達するのを抑制できる。したがって、リザーバ部11内に貯留された燃料F3がスリット43を通じて漏れるのを抑制できるので、リザーバ部11内へエアが入り込むのを抑制できる。
特に、延在部44と筒部15との間には、上述したアッパーカップ25の突出片28が差し込まれるようになっており、筒部15と延在部44との間(スリット43)が入り組んだラビリンス状に形成されるため、リザーバ部11内に貯留された燃料F3がスリット43を通じて漏れるのを確実に抑制できる。
【0060】
したがって、本実施形態では、リザーバ部11内にエアが入り込むのを抑制できるため、燃料ポンプ3でのエアの吸い込みを抑制して、内燃機関を良好な状態で作動させることができる。
【0061】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、ユニット本体10の底壁10aに囲繞壁部55や規制壁部56a〜56dを設けた場合について説明したが、これに限らず、燃料ポンプ3のポンプケース45からリザーバ部11内に向けて立設させても構わない。
また、ラビリンス部53,54は、単数でも3つ以上の複数設けても構わない。
【0062】
また、上述した実施形態では、進行方向後方側にフィルタ導入管52を配設する構成について説明したが、これに限らず、リザーバ部11内に突出し、かつ導入口52aが進行方向に向けて開放されていれば構わない。例えば、フィルタ導入管52を進行方向前方側に配設しても構わない。この場合も、導入口52aを進行方向前方に向けて開放させることで、特に急発進時の対策として、導入口52aが燃料の液面から露出するのを抑制できる。
また、上述した実施形態では、フィルタ導入管52が走行面に対して平行に沿って延在する場合について説明したが、これに限らず、中心軸Cに対して交差する方向に沿って延在させても構わない。
【0063】
さらに、上述した実施形態では、端子保持部18における周方向の一方側にスリット43、及び延在部44を形成する場合について説明したが、これに限らず、周方向の両側にスリット43、及び延在部44を形成しても構わない。
【0064】
また、上述した実施形態では、スリット19を一つのみ設けた場合について説明したが、2つ以上の複数設けても構わない。
さらに、スリット19の幅や深さは適宜設計変更が可能である。
【0065】
また、上述した実施形態では、アッパーカップ25がフランジユニット4の内側に入り込んだ状態で組み付けられることで、ラップ部35を構成したが、これとは逆にフランジユニット4がアッパーカップ25内に入り込んだ状態で組み付けられていても構わない。
さらに、ラップ部35を周方向の全周に形成しても構わない。
また、上述した実施形態では、本発明をいわゆる下付きタイプの燃料供給装置1について説明したが、いわゆる上付きタイプの燃料供給装置に採用することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…燃料供給装置 2…燃料タンク 3…燃料ポンプ 4…フランジユニット 11…リザーバ部 15…筒部(フランジ側筒部) 23…延在部 24…筒部(カップ側筒部) 25…アッパーカップ 29…リターン流路 35…ラップ部 58…燃料流路ユニット 76…プレッシャレギュレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8