(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以降、本発明を実施するための形態(「本実施形態」と呼ぶ)を、図等を参照しながら詳細に説明する。また、本実施形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、本実施形態においては、ミズナのハウス栽培を例に説明する。
【0012】
(農作物生育管理装置)
図1に沿って、農作物生育管理装置100を説明する。農作物生育管理装置100は、一般的なコンピュータであり、中央制御装置110、主記憶装置120、補助記憶装置130、入力装置150、出力装置160および気象情報取得手段170を有する。これらはバスを介して相互に接続されている。
【0013】
中央制御装置110は、各種演算処理やプログラムの実行を行う。
主記憶装置120は、評価値入力部121、評価指標設定部122、予測情報設定部123、類似作付抽出部124、成功作付抽出部125、管理可能範囲算出部126、予測生育範囲作成部127および予測結果表示部128を格納する。これらはプログラムであり、具体的な機能等は、後記する処理説明において詳細に説明する。なお、以降の説明で、「○○部は」と主体を記した場合は、中央制御装置110が各プログラムを補助記憶装置130から読み出し主記憶装置120にロードした上で、各プログラムの機能(詳細後記)を実行することを意味する。各プログラムは、予め補助記憶装置130に記憶されていてもよいし、他の記憶媒体または通信媒体を介して、必要なときに農作物生育管理装置100に取り込まれてもよい。
【0014】
補助記憶装置130は、作付情報テーブル131、評価値テーブル132、作業計画テーブル133、作業実績テーブル134、圃場条件テーブル135、類似作付テーブル136、成功作付テーブル137、補間データテーブル138、類似生育状況テーブル139、管理可能範囲テーブル140および予測生育範囲テーブル141を格納する(詳細後記)。
入力装置150は、例えばキーボードやマウスであり、農作物生育管理装置100を操作する者(ユーザ)からの指示を受け付ける。本実施形態においては、農作物の生産者が農作物生育管理装置100を操作するものとする。
出力装置160は、例えば、ディスプレイであり、農作物生育管理装置100の操作画面等を表示する。
気象情報取得手段170は、インターネット等を介して、外部のシステムから気象予報を取得する。また、気象情報取得手段170は、過去の気象観測結果(実績データ)も取得する。
【0015】
(作付情報テーブル)
図2に沿って、作付情報テーブル131を説明する。作付情報テーブル131には、作付に関する情報(作付情報)が記憶されている。作付情報テーブル131は、農作物の栽培を開始した時と、農作物を収穫した時に、情報を登録するテーブルである。
作付情報テーブル131には、作付ID(identifier)欄1311に記憶された作付IDに関連付けて、圃場名欄1312には圃場名が、作型欄1313には作型名が、作付開始日欄1314には作付開始日が、計画収穫日欄1315には計画収穫日が、計画収穫量欄1316には計画収穫量が、実績収穫日欄1317には実績収穫日が、実績収穫量欄1318には実績収穫量が、ハウス平均室温欄1319には平均室温が、記憶されている。
【0016】
作付ID欄1311の作付IDは、作付情報を一意に特定する識別子である。
圃場名欄1312の圃場名は、圃場の名称である。
作型欄1313の作型名は、作付方法の区分を表す名称である。作型名は、例えば、苗を苗床から移して田畑に植える「定植」や、苗代や苗床を用いず田畑に直接種をまく「直播」や、畝を被覆して農作物を栽培する「マルチ」、定植およびマルチを組み合わせた「定植,マルチ」等がある。
【0017】
作付開始日欄1314の作付開始日は、圃場に農作物を植えつけた(作付けした)日付である。
計画収穫日欄1315の計画収穫日は、農作物を収穫しようとしている(計画している)日である。
計画収穫量欄1316の計画収穫量は、収穫が見込まれる(計画している)農作物の数量である。計画収穫量の単位は適宜設定される。なお、本実施形態においては、計画収穫量の単位としてkg(キログラム)やケース数が設定されているものとする。
【0018】
実績収穫日欄1317の実績収穫日は、実際に農作物を収穫した日付である。
実績収穫量欄1318の実績収穫量は、実際に収穫した農作物の数量である。実績収穫量の単位は、計画収穫量の単位と等しいものが設定される。なお、本実施形態においては、計画収穫量の単位と同様に、実績収穫量の単位としてkg(キログラム)やケース数が設定されているものとする。
ハウス平均室温欄1319の平均室温は、作付開始日から実績収穫日で示される期間(作付期間)における、ハウス内の室温の平均値(平均室温)である。なお、本実施形態においては、ミズナのハウス栽培を例としているため、平均室温はハウス内の平均室温(ハウス室温)を意味するが、露地栽培の場合は、気温の平均値(平均気温)を意味する。
【0019】
また、作付情報テーブル131には、これらの情報以外の情報を記憶することができる。作付情報テーブル131に記憶する情報は、例えば、圃場(ハウス)を一意に特定する圃場番号(ハウス番号)、農作物の名称、栽培した農作物のうち出荷することのできた農作物の割合を表す歩留まり率、 平均湿度、日照時間の積算値・平均値、遮光時間の積算値・平均値、平均地温等である。
なお、計画収穫日および計画収穫量を計画情報と呼ぶ。また、実績収穫日および実績収穫量を実績情報と呼ぶ。
【0020】
(評価値テーブル)
図3に沿って、評価値テーブル132を説明する。評価値テーブル132には、農作物の生育状況を評価する値(評価値)が記憶されている。評価値テーブル132は、評価値を測定する都度、情報を登録するテーブルである。
評価値テーブル132には、作付ID欄1321に記憶された作付IDに関連付けて、日付欄1322には測定日が、作付開始日からの日数欄1323には経過日数が、草丈欄1324には草丈が、株幅欄1325には株幅が、記憶されている。
【0021】
作付ID欄1321の作付IDは、作付情報を一意に特定する識別子である。
日付欄1322の測定日は、評価値を測定した日である。
作付開始日からの日数欄1323の経過日数は、作付開始日から測定日までの間に、経過した日数である。
草丈欄1324の草丈は、農作物の最上部の地表からの高さである。なお、本実施形態においては、ミズナのハウス栽培を例としているが、生育中のミズナは葉が寝ているので、最も長い葉の先端から地表までの長さを草丈として測定する。また、草丈の単位は適宜設定される。なお、本実施形態においては、草丈の単位としてcm(センチメートル)が設定されているものとする。
株幅欄1325の株幅は、農作物1株を真上から投影した断面内に引きうる最も長い線分の長さ、すなわち、農作物1株の幅である。一般的に、葉がよく付いている場合は株幅が大きくなり、葉があまり付いていない場合は株幅が小さくなる。株幅の単位は適宜設定される。なお、本実施形態においては、株幅の単位としてcm(センチメートル)が設定されているものとする。
【0022】
なお、経過日数、草丈、株幅等の、農作物の生育状況や味や安全性を評価する指標を評価指標と呼び、評価指標の値を評価値と呼ぶ。
また、評価値テーブル132には、これらの情報以外の情報を記憶することができる。評価値テーブル132に記憶する情報は、例えば、農作物1株の重量(生重量、乾燥重量)、水稲の茎数や葉数、葉緑素含量を示すSPAD(Soil & Plant Analyzer Development)値、米や麦のタンパク質含有量、果実の糖度や酸度、農薬残留濃度等である。これらの情報は、前記した評価指標に用いることができる。
【0023】
(作業計画テーブル)
図4に沿って、作業計画テーブル133を説明する。作業計画テーブル133には、農作物の栽培のための作業(農作業)に関する計画(作業計画)が記憶されている。作業計画テーブル133は、農作業を行う前に予め作業計画を登録しておくテーブルである。
作業計画テーブル133には、作付ID欄1331に記憶された作付IDに関連付けて、日付欄1332には作業日時が、作業者欄1333には作業者名が、作業名欄1334には作業名が、単位欄1335には作業量の単位が、作業量欄1336には作業量が、記憶されている。
【0024】
作付ID欄1331の作付IDは、作付情報を一意に特定する識別子である。
日付欄1332の作業日時は、作業を行おうとしている(計画している)日時である。
作業者欄1333の作業者名は、作業を行おうとしている作業者の名称である。
作業名欄1334の作業名は、作業の名称である。
単位欄1335の作業量の単位は、後記する作業量の単位である。
作業量欄1336の作業量は、行おうとしている作業の量(度合い)である。
【0025】
例えば、レコード133aから、作付IDが「1234」の作付に対して、2001年4月2日の8時30分に、作業者XXXが、10kgの肥料を与える計画であることがわかる。同様に、レコード133bから、作付IDが「1234」の作付に対して、2001年4月21日の13時に、作業者XXXが、換気を5時間行う計画であることがわかる。同様に、レコード133cから、作付IDが「1234」の作付に対して、2001年4月29日の13時に、作業者XXXが、220ケースの収穫を行う計画であることがわかる。
【0026】
(作業実績テーブル)
図5に沿って、作業実績テーブル134を説明する。作業実績テーブル134には、作業を行った実績(作業実績)に関する情報が記憶されている。作業実績テーブル134は、農作業を行った後に、その実績を登録するテーブルである。
作業実績テーブル134には、作業計画テーブル133(
図4参照)と同様の情報が記憶されている。作業計画テーブル133に記憶されている情報が作業計画に関する情報であるのに対し、作業実績テーブル134に記憶されている情報は作業実績に関する情報である点が異なる。なお、作業実績テーブル134の各項目の説明は省略する。
【0027】
(圃場条件テーブル)
図6に沿って、圃場条件テーブル135を説明する。圃場条件テーブル135には、後記する圃場条件を算出するための情報が記憶されている。圃場条件テーブル135は、圃場ごと、気象条件の範囲ごとおよび農作業の作業量の範囲ごとに、圃場条件を算出するための条件および数式を予め登録しておくテーブルである。ここで、圃場条件とは、圃場が置かれている環境を示すものである。この圃場条件は、日々の室温、気温、地温、湿度、日照時間および遮光時間のうち、少なくとも1つの指標で表すことができる。また、圃場条件は、前記した室温等の積算値および平均値でも表すことができ、前記したハウス内の平均室温(
図2参照)も、圃場条件を表す指標の1つである。
圃場条件テーブル135には、圃場名欄1350には圃場名が、日平均気温条件欄1351には日平均気温の範囲が、日照時間条件欄1352には日照時間の範囲が、遮光時間条件欄1353には遮光時間の範囲が、換気時間条件欄1354には換気時間の範囲が、灌水時間条件欄1355には灌水時間の範囲が、ハウス室温推定式欄1356には数式が、ハウス地温推定式欄1357には数式が、記憶されている。
【0028】
圃場名欄1350の圃場名は、圃場の名称である。
日平均気温条件欄1351の日平均気温の範囲は、圃場条件を算出する際の条件となる、1日の気温の平均値(日平均気温)の範囲である。
日照時間条件欄1352の日照時間の範囲は、圃場条件を算出する際の条件となる日照時間の範囲である。
遮光時間条件欄1353の遮光時間の範囲は、圃場条件を算出する際の条件となる遮光時間の範囲である。
換気時間条件欄1354の換気時間の範囲は、圃場条件を算出する際の条件となる換気時間の範囲である。
灌水時間条件欄1355の灌水時間の範囲は、圃場条件を算出する際の条件となる灌水時間の範囲である。
ハウス室温推定式欄1356の数式は、圃場であるハウスの室温の推定値を算出するための数式である。
ハウス地温推定式欄1357の数式は、圃場であるハウスの地温の推定値を算出するための数式である。
【0029】
なお、日平均気温および日照時間のように、後記する気象予報の項目について、ある一日の値で特定したものを気象条件と呼ぶ。
【0030】
(類似作付テーブル)
図7に沿って、類似作付テーブル136を説明する。類似作付テーブル136は、後記する類似作付抽出部124(
図1参照)による処理において、予測の対象とする作付(予測対象作付)に作付情報が類似する作付(類似作付)を抽出し、その作付IDを登録するテーブルである。なお、類似作付とは、評価指標、収穫実績および圃場条件が所定の範囲内である作付であり、詳細は後記する。
類似作付テーブル136には、作付ID欄1361には作付IDが、記憶されている。
作付ID欄1361の作付IDは、類似作付の作付IDである。
【0031】
(成功作付テーブル)
図8に沿って、成功作付テーブル137を説明する。成功作付テーブル137は、後記する成功作付抽出部125(
図1参照)による処理において、農作物の生育に成功した作付(成功作付)を抽出し、その作付IDを登録するテーブルである。なお、成功作付とは、評価指標および実績情報が所定の基準を満たす作付であり、詳細は後記する。
成功作付テーブル137には、作付ID欄1371には作付IDが、記憶されている。
作付ID欄1371の作付IDは、成功作付の作付IDである。
【0032】
(補間データテーブル)
図9に沿って、補間データテーブル138を説明する。補間データテーブル138は、後記する管理可能範囲算出部126(
図1参照)による処理において、成功作付の横軸および縦軸の評価値を補間した値(補間値)を算出し、その補間値を登録するテーブルである。
補間データテーブル138には、作付ID欄1381には作付IDが、横軸補間値欄1382には横軸補間値が、縦軸補間値欄1383には縦軸補間値が、記憶されている。
【0033】
作付ID欄1381の作付IDは、作付情報を一意に特定する識別子である。
横軸補間値欄1382の横軸補間値は、横軸の評価値を補間した値である。
縦軸補間値欄1383の縦軸補間値は、縦軸の評価値を補間した値である。
【0034】
(類似生育状況テーブル)
図10に沿って、類似生育状況テーブル139を説明する。類似生育状況テーブル139は、後記する予測生育範囲作成部127(
図1参照)による処理において、予測対象作付の予測開始日前日の生育状況に近い類似作付の生育状況(類似生育状況)を登録するテーブルである。
類似生育状況テーブル139には、作付ID欄1391に記憶された作付IDに関連付けて、日付欄1392には測定日が、横軸評価値欄1393には横軸として指定された評価指標の評価値(横軸評価値)が、縦軸評価値欄1394には縦軸として指定された評価指標の評価値(縦軸評価値)が、記憶されている。
【0035】
(管理可能範囲テーブル)
図11に沿って、管理可能範囲テーブル140を説明する。管理可能範囲テーブル140は、後記する管理可能範囲算出部126(
図1参照)による処理において、農作物の生育が成功であるか否かを判断する基準である管理可能範囲を登録するテーブルである。
管理可能範囲テーブル140には、横軸評価値欄1401には横軸評価値が、縦軸最大評価値欄1402には縦軸評価値の最大値が、縦軸最小評価値欄1403には縦軸評価値の最小値が、記憶されている。
【0036】
(予測生育範囲テーブル)
図12に沿って、予測生育範囲テーブル141を説明する。予測生育範囲テーブル141は、後記する予測生育範囲作成部127(
図1参照)による処理において、予測対象作付けの生育状況の予測値を算出し、登録するテーブルである。
予測生育範囲テーブル141には、日付欄1411に記憶された日付に関連付けて、横軸予測生育状況欄1412には横軸予測値が、縦軸予測生育状況欄1413には縦軸予測値が、記憶されている。
【0037】
日付欄1411の日付は、予測の対象となる日付である。
横軸予測生育状況欄1412の横軸予測値は、横軸として指定された評価指標の予測値である。
縦軸予測生育状況欄1413の縦軸予測値は、縦軸として指定された評価指標の予測値である。
【0038】
(全体処理)
次に、農作物生育管理装置100(
図1参照)が行う処理について説明する。まず、
図13に沿って、全体処理について説明する。この全体処理は、補助記憶装置130に格納されている各種情報と、入力装置150を介して入力を受け付けた情報とに基づいて、農作物の生育状況を予測し、その予測結果を出力装置160へ出力する処理である。本実施形態においては、予測結果を散布図として表示する例を説明する。なお、散布図の横軸には「作付開始からの日数」が、縦軸には「草丈」が指定されたものとして、説明する。
【0039】
図13で示す全体処理に先立って、農作物の生産者は、入力装置150を介して、作付情報テーブル131(
図2参照)へ作付情報を、予め登録しておく。登録する項目は、作付ID欄1311の作付IDから計画収穫量欄1316の計画収穫量までである。また、農作物の生産者は、入力装置150を介して、作業計画テーブル133(
図4参照)へ作業計画を、予め登録しておく。なお、作業計画に、追加・変更・削除が生じた場合は、作業計画テーブル133を適宜更新する。
【0040】
ステップS1301において、評価値入力部121は、入力装置150を介して、評価値の入力を受け付け、評価値テーブル132へ登録する。具体的には、農作物の生産者が、作付ID、測定日および評価値を入力し、評価値入力部121が、入力された当該作付IDに関連付けて、測定日、経過日数および評価値を登録する。ここで、経過日数は、入力された作付IDをキーとして作付情報テーブル131(
図2)を検索して取得した作付開始日と、入力された測定日とに基づいて算出される。
【0041】
なお、ステップS1301は、評価値を測定する都度、行うことが好ましい。また、評価値の測定は、日々行うことが好ましい。しかし、農作物の生育は一定ではなく、生育が遅い(評価値の変化が小さい)時期や、生育が早い(評価値の変化が大きい)時期もある。そこで、生育が遅い時期は、評価値の測定を数日に1回程度としてもよい。評価値の測定の頻度を少なくすることで、手間を軽減することが可能となる。
そして、ステップS1302に進む。
【0042】
ステップS1302において、評価指標設定部122は、評価指標を設定する。具体的には、入力装置150を介して、散布図の横軸として指定する評価指標および散布図の縦軸として指定する評価指標の入力を受け付ける。なお、横軸として指定された評価指標を「横軸評価指標」と呼び、縦軸として指定された評価指標を「縦軸評価指標」と呼ぶ。この横軸評価指標および縦軸評価指標は、農作物の生育状況を予測する際に着目する評価指標(予測評価指標)である。なお、本実施形態においては、横軸評価指標として「経過日数」が、縦軸評価指標として「草丈」が、指定されたものとして説明する。
そして、ステップS1303に進む。
【0043】
ステップS1303において、予測情報設定部123は、予測情報を設定する。具体的には、予測情報設定部123は、入力装置150を介して、予測対象作付の作付ID、予測開始日および予測終了日の入力を受け付け、予測情報として設定する。
そして、ステップS1304に進む。
【0044】
ステップS1304において、類似作付抽出部124は、類似作付を抽出する。具体的には、類似作付抽出部124は、入力装置150を介して、検索条件(類似作付を抽出する条件)の入力を受け付け、当該検索条件に基づいて作付情報テーブル131(
図2参照)を検索し、類似作付を抽出する。そして、類似作付抽出部124は、抽出した類似作付の作付IDを、類似作付テーブル136(
図7参照)に登録する。検索条件は、例えば、下記のような条件が挙げられる。
(1)作型が予測対象作付の作型と一致する。
(2)作付開始日が予測対象作付の作付開始日の前後5日の範囲である。
(3)実績収穫日が予測対象作付の計画収穫日の前後5日の範囲である。
(4)作付期間全体のハウスの平均室温が20〜25℃である。
これらの検索条件は一例であり、いずれか1つを用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
そして、ステップS1305に進む。
【0045】
ステップS1305において、成功作付抽出部125は、成功作付を抽出する。具体的には、成功作付抽出部125は、ステップS1304において抽出した類似作付の作付IDと、入力装置150を介して入力を受け付けた検索条件(類似作付から成功作付を絞り込む条件・基準)とに基づいて、作付情報テーブル131(
図2参照)を検索し、成功作付を抽出する。そして、成功作付抽出部125は、抽出した成功作付の作付IDを、成功作付テーブル137(
図8参照)に登録する。検索条件は、例えば、下記のような条件が挙げられる。
(1)経過日数が30〜35日で、かつ、草丈が40〜45cmの範囲である日が1日以上存在する。
(2)計画収穫日と実績収穫日の差が1日以下である。
(3)実績収穫量が200以上である。
(4)歩留まり率が90%以上である。
これらの検索条件は一例であり、いずれか1つを用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
そして、ステップS1306に進む。
【0046】
ステップS1306において、管理可能範囲算出部126は、管理可能範囲を算出する(詳細後記)。
そして、ステップS1307に進む。
【0047】
ステップS1307において、予測生育範囲作成部127は、予測生育範囲を作成する(詳細後記)。
そして、ステップS1308に進む。
【0048】
ステップS1308において、予測結果表示部128は、出力装置160に予測結果を表示する(詳細後記)。
そして、処理を終了する。
【0049】
(管理可能範囲算出処理)
次に、
図14に沿って、管理可能範囲算出部126(
図1参照)が行う管理可能範囲算出処理について説明する。この管理可能範囲算出処理は、
図13のステップS1306である。この管理可能範囲算出処理は、評価値の測定の頻度が少ない場合(
図13のステップS1301参照)に、測定を行っていない日の評価値を補間し、管理可能範囲を算出し、その結果を管理可能範囲テーブル140(
図11参照)へ登録する処理である。
【0050】
ステップS1401において、管理可能範囲算出部126は、補間手法および補間間隔を設定する。具体的には、管理可能範囲算出部126は、入力装置150を介して、補間手法入力を受け付ける。
補間手法は、スプライン補間や線形補間等、公知の手法を用いればよい。これらの補間手法を、入力装置150を介してユーザが選択可能とし、選択された補間手法を用いて管理可能範囲算出部126は評価値の補間を行う。
補間間隔は、補間手法ごと、横軸評価指標ごとに、予め設定されているものとする。補間間隔は、スプライン補間を例に説明すると、下記のような値が挙げられる。
(1)横軸評価指標が「経過日数」であれば、補間間隔は「1日」。
(2)横軸評価指標が「草丈」であれば、補間間隔は「1cm」。
そして、ステップS1402に進む。
【0051】
ステップS1402において、管理可能範囲算出部126は、成功作付に対して、補間処理を行う。この補完処理は、成功作付の評価値を補間して得られた値(補間値)を補間データテーブル138(
図9参照)に登録する処理である。具体的には、管理可能範囲算出部126は、成功作付テーブル137(
図8参照)に記憶されている作付IDをキーとして評価値テーブル132(
図3参照)を検索し、該当するレコードを抽出する。そして、管理可能範囲算出部126は、抽出したレコードに記憶されている横軸評価指標および縦軸評価指標の評価値を抽出する。
【0052】
管理可能範囲算出部126は、このようにして抽出されたデータ系列Sを補間する。このデータ系列Sは、下記のように表現される。
S={(x
1,y
1),(x
2,y
2),・・・,(x
n,y
n)}
例えば、横軸評価指標が「経過日数」であり、縦軸評価指標が「草丈」である場合、データ系列Sは下記のようになる。
S={(3,9.0),(4,9.5),(5,10.0),・・・}
【0053】
次に、管理可能範囲算出部126は、ステップS1401において設定した補間手法によって、このデータ系列Sの各点を通過する補間曲線f(x)を算出する。そして、管理可能範囲算出部126は、データ系列Sを補間曲線f(x)により補間間隔dxで補間したデータ系列Iを求める。このデータ系列Iは、下記のように表現される。
I={(x
min+k×dx,f(x
min+k×dx);0≦k≦k
max)
ここで、k
maxは、x
min+k×dx≦x
maxを満たす最大の整数kである。また、横軸評価値には、あらかじめ横軸最小値x
minおよび横軸最大値x
maxが設定されている。
例えば、横軸評価指標が「経過日数」の場合、横軸最小値x
minは「1」、横軸最大値x
maxは「35」である。なお、収穫までの日数は季節により異なるので、例えば、夏場では横軸最大値x
maxを「30」とし、冬場では横軸最大値x
maxを「60」としてもよい。そして、前記のように、補間間隔dxは「1日」であるので、データ系列Iは下記のようになる。なお、本実施形態においては、日数は整数値であるが、補間された値(補間値)は小数点以下1桁に統一するものとする。
I={(1.0,8.0),(2.0,8.5),(3.0,9.0),(4.0,9.5),(5.0,10.0),・・・}
【0054】
次に、管理可能範囲算出部126は、データ系列Iの各点(x,y)の値を、xを横軸補間値として、yを縦軸補間値として、成功作付テーブル137(
図8参照)に記憶されている作付IDに関連付けて、補間データテーブル138(
図10参照)に記憶する。
そして、ステップS1403に進む。
【0055】
ステップS1403において、管理可能範囲算出部126は、成功作付テーブル137(
図8参照)に記憶されている全ての成功作付に対して、補間処理が完了したか否かを判定する。
完了していない場合(ステップS1403“No”)、ステップS1402に戻る。
完了した場合(ステップS1403“Yes”)、ステップS1404に進む。
【0056】
ステップS1404において、管理可能範囲算出部126は、変数xに、横軸最小値x
minを代入する。
そして、ステップS1405に進む。
【0057】
ステップS1405において、管理可能範囲算出部126は、補間データテーブル138(
図9参照)から、横軸補間値がxのときの、各成功作付IDiにおける横軸補間値y
iを取得する。横軸補間値y
iは、補間データテーブル138に登録されている作付IDの数だけ、取得するものとする。
そして、ステップS1406に進む。
【0058】
ステップS1406において、管理可能範囲算出部126は、ステップS1405において取得した横軸補間値y
iの最大値および最小値を算出し、管理可能範囲テーブル140(
図11参照)に、縦軸最大評価値および縦軸最小評価値として、横軸補間値xを付加して登録する。
そして、ステップS1407に進む。
【0059】
ステップS1407において、管理可能範囲算出部126は、変数xに補間間隔dxを加算する。
そして、ステップS1408に進む。
【0060】
ステップS1408において、管理可能範囲算出部126は、変数xが横軸最大値x
maxを超えているか否かを判定する。
変数xが横軸最大値x
maxを超えていない場合(ステップS1408“No”)、ステップS1405に戻る。
変数xが横軸最大値x
maxを超えている場合(ステップS1408“Yes”)、処理をメインルーチン(
図13のステップS1306)に戻る。
【0061】
(予測生育範囲作成処理)
次に、予測生育範囲作成部127(
図1参照)が行う予測生育範囲作成処理について説明する。この予測生育範囲作成処理は、
図13のステップS1307である。この予測生育範囲作成処理は、予測対象作付の生育状況を予測する処理、換言すると、横軸評価指標および縦軸評価指標の予測値を算出する処理である。そして、算出された予測値は、予測生育範囲テーブル141(
図12参照)に登録される。
【0062】
(予測モデルを用いる予測生育範囲作成処理)
まず、
図15に沿って、予測モデルを用いる予測生育範囲作成処理について説明する。
従来の農作物の生育予測では、有効積算気温法や、DVR(Developmental Rate)法が用いられている。しかし、これらの手法では、1つの気象条件下での生育しか予測できない。そのため、気象予報の誤差による気象条件のブレが、農作物の生育にどのように影響を与えるかを考慮できなかった。
そこで、この処理では、気象予報における誤差分布を基に、モンテカルロシミュレーションによって多数の気象条件を作成し、作業計画(
図4参照)をそれぞれの気象条件下で行った場合の、農作物の生育状況を予測する。
【0063】
ステップS1501において、予測生育範囲作成部127は、シミュレーション回数および気象予報誤差分布を設定する。具体的には、予測生育範囲作成部127は、入力装置150を介して、シミュレーション回数および気象予報誤差分布を受け付ける。
シミュレーション回数は、ユーザ(農作物生育管理装置100の操作者、農作物の生産者)が任意に設定することができる。例えば、気温が気象予報より低い日が長期間続くなど、確率的に起こりにくい気象条件をより多くシミュレーションしたい場合は、シミュレーション回数を多くする。具体的には、この気象条件の発生確率をpとし、シミュレーション回数をnとすると、最適なシミュレーション回数は(n÷p)回以上となる。
気象予報誤差分布は、気象予報における誤差(観測値と予測値との差分)の分布であり、気象予報の項目ごとに設定することができる。気象予報の項目は、例えば、天候、気温(最低、最高、日平均)、湿度、降水量、風速、風向等が挙げられるが、天候や風向は数値データではないため、誤差を定義することができない。そのため、当該ステップでは、数値データで表される気象予報の項目について、誤差を定義する。気象予報誤差分布は、分布の種類(正規分布、一様分布等)、平均や分散等の母数を設定することができる。
そして、ステップS1502に進む。
【0064】
ステップS1502において、予測生育範囲作成部127は、気象情報取得手段170(
図1参照)がインターネット等を介して、外部のシステムから取得した予測期間の気象予報を取得する。ここで、予測期間とは、
図13のステップS1303において設定した予測開始日を始期とし、予測終了日を終期として特定される期間である。
また、取得する気象予報は、予測対象作付の圃場が存在する地域に近い地域の気象予報が好ましい。なお、気象予報の項目は、例えば、1日ごとの天候、気温(最低、最高、日平均)、湿度、降水量、風速、風向等が挙げられる。
そして、ステップS1503に進む。
【0065】
ステップS1503において、予測生育範囲作成部127は、予測対象日を表す変数Dに、予測開始日を代入する。
そして、ステップS1504に進む。
【0066】
ステップS1504において、予測生育範囲作成部127は、気象予報の項目ごとに、ステップS1501において設定した気象予報誤差分布に基づいて、ランダムに誤差を生成する。
そして、ステップS1505に進む。
【0067】
ステップS1505において、予測生育範囲作成部127は、ステップS1502において取得した気象予報およびステップS1504において生成した誤差に基づいて、日付Dにおける気象条件を算出する。具体的には、予測生育範囲作成部127は、ステップS1502において取得した、予測対象日Dにおける気象予報の項目の値に、ステップS1504において生成した当該項目に対する誤差を加算または減算する。
【0068】
気象条件の算出の一例として、下記の場合について説明する。
(1)気象予報の項目が「日平均気温」である。
(2)ステップS1502において取得した、予測対象日Dにおける気象予報の日平均気温が「15.0℃」である。
(3)ステップS1504において生成した平均気温に対する誤差が「−1.5℃」。
この場合、予測対象日Dの当該シミュレーションにおける「日平均気温」は、15(℃)−1.5(℃)=13.5(℃)となる。
【0069】
なお、気象予報の項目が「天候」のような、「晴れ」、「曇り」、「雨」等の分類にのみ意味があり、誤差を加減することが不可能な変数(尺度)である名義変数(尺度)の場合は、上記のような演算は行わず、ステップS1502において取得した気象予報の項目値を、そのまま気象条件とする。一方、上記のように、誤差を加減することが可能な気象予報の項目を数値変数と呼ぶ。
そして、ステップS1506に進む。
【0070】
ステップS1506において、予測生育範囲作成部127は、予測対象作付の、予測対象日Dにおける作業計画を作業計画テーブル133(
図4参照)から取得する。具体的には、予測生育範囲作成部127は、予測対象作付の作付IDおよび予測対象日Dをキーとして、作業計画テーブル133の作付ID欄1331および日付欄1332を検索し、キーが一致するレコードを取得する。
【0071】
例えば、検索キーが下記の場合、作業計画テーブル133のレコード133bを取得する。
(1)予測対象作付の作付IDが「1234」である。
(2)予測対象日Dが「2001/4/21」である。
そして、ステップS1507に進む。
【0072】
ステップS1507において、予測生育範囲作成部127は、圃場条件テーブル135(
図6参照)から圃場条件を算出する数式を取得する。具体的には、予測生育範囲作成部127は、作付情報テーブル131に登録されている予測対象作付の圃場名、ステップS1505において算出した気象条件およびステップS1506において取得した作業計画をキーとして、圃場条件テーブル135の各項目を検索し、条件(キー)に一致するレコードから、圃場条件を算出する数式を取得する。
【0073】
例えば、予測対象作付の圃場名が「AAA」であり、条件(キー)が下記の場合、圃場条件テーブル135のレコード135aに記憶されている圃場条件を算出する数式を取得する。
(1)ステップS1505において算出した気象条件が「日平均気温=13.5℃」である。
(2)ステップS1506において取得した作業計画が「換気:5時間」である。
そして、ステップS1508に進む。
【0074】
ステップS1508において、予測生育範囲作成部127は、予測対象日Dにおける圃場条件を算出する。具体的には、予測生育範囲作成部127は、ステップS1505において算出した気象条件、ステップS1506において取得した作業計画およびステップS1507において取得した圃場条件を算出する数式に基づいて、圃場条件を算出する。
【0075】
例えば、下記の場合に、圃場条件として、ハウスの平均室温(ハウス室温)およびハウスの平均地温(ハウス地温)を算出する事例について説明する。
(1)ステップS1505において算出した気象条件が「日平均気温=13.5℃」である。
(2)ステップS1506において取得した作業計画が「換気:5時間」である。
(3)ステップS1507において取得した圃場条件を算出する数式が「ハウス室温(推定)=平均気温+5.0−0.3×換気時間」、「ハウス地温(推定)=平均気温+8.0−0.3×換気時間」である。
【0076】
この場合、(3)の数式中の「日平均気温」に(1)の「13.5」を代入し、(3)の数式中の「換気時間」に(2)の「5」を代入する。すると、下記のように算出される。
(a)ハウス室温(推定)=13.5+5.0−0.3×5=17.0(℃)
(b)ハウス地温(推定)=13.5+8.0−0.3×5=20.0(℃)
そして、ステップS1509に進む。
【0077】
ステップS1509において、予測生育範囲作成部127は、始期を予測開始日とし、終期を予測対象日Dとする期間における圃場条件から、予測モデルを用いて、予測対象日Dにおける予測対象作付の生育状況を算出する。ここで算出する生育状況は、横軸として指定された評価指標の予測値および縦軸として指定された評価指標の予測値の組で表される情報である。
予測モデルは、公知の手法を用いることができる。予測モデルは、例えば、有効積算気温法やDVR法等を用いる。なお、本実施形態においては、評価指標ごとに、あらかじめ予測モデルが設定されているものとする。
【0078】
一例として、横軸評価指標の予測モデルとしてDVR法が設定されており、横軸評価値を計算する場合について説明する。
DVR法においては、日々の圃場条件を入力として、1日ごとに生育度の予測値を算出し、算出した生育度を累積することで、評価指標の予測値を算出する。なお、生育度とは、ある日付に注目した場合において、当該日付の評価値およびその前日の評価値の差である。ここでは、圃場条件として、ハウス室温およびハウス地温を用いる場合について説明する。横軸評価指標の予測値の算出は、下記のように行われる。
【0079】
(1)日付dのハウス室温をT
d、ハウス地温をS
dとする。
(2)ハウス室温およびハウス地温に基づいて、日ごとの生育度を算出する関数をf(T,S)とする。なお、生育状況に応じて、異なる関数を用いてもよい。
(3)予測開始日をD
0とし、日付D
0における予測対象作付の横軸評価値x
0を、評価値テーブル132(
図3参照)から取得する。
(4)予測対象日Dの横軸評価値xを、下記の数式で算出する。
【0081】
このようにして、横軸評価指標の予測値(予測対象日Dの横軸評価値x)が算出される。
なお、縦軸評価指標の予測値(予測対象日Dの縦軸評価値y)も同様に、縦軸評価指標に対してあらかじめ設定された予測モデルを用いて、算出される。
そして、ステップS1510に進む。
【0082】
ステップS1510において、予測生育範囲作成部127は、ステップS1509において算出した生育状況に、予測対象日Dを付加して、予測生育範囲テーブル141(
図12参照)に登録する。
そして、ステップS1511に進む。
【0083】
ステップS1511において、予測生育範囲作成部127は、変数Dに予測対象日Dの翌日の日付を代入する。
そして、ステップS1512に進む。
【0084】
ステップS1512において、予測生育範囲作成部127は、変数Dが、予測終了日を超えているか否かを判定する。
変数Dが予測終了日を超えていない場合(ステップS1512“No”)、ステップS1504に戻る。
変数Dが予測終了日を超えている場合(ステップS1512“Yes”)、ステップS1513に進む。
【0085】
ステップS1513において、予測生育範囲作成部127は、ステップS1501において設定したシミュレーション回数分のシミュレーションを実行したか否かを判定する。ここで、シミュレーションの回数は、ステップS1503〜S1511までの処理を1回実行すると、1回と数える。
シミュレーション回数分実行していない場合(ステップS1513“No”)、ステップS1503に戻る。
シミュレーション回数分実行した場合(ステップS1513“Yes”)、メインルーチン(
図13のステップS1307)に戻る。
【0086】
(過去実績を用いる予測生育範囲作成処理)
まず、
図16に沿って、過去実績を用いる予測生育範囲作成処理について説明する。
図15においては、予測モデルを用いる予測生育範囲作成処理について説明したが、評価指標によっては、適切な予測モデルが確立されていないことが考えられる。また、一般的な予測モデルでは、ユーザの圃場に特有な環境の違いを考慮できず、適切な予測ができないことも考えられる。このような場合、ユーザの圃場において、現状と類似した過去の生育状況から、その後どのような生育経過を辿ったかを参考にすることで、将来の生育状況を予測することができる。
【0087】
ステップS1601において、予測生育範囲作成部127は、横軸評価指標および縦軸評価指標に対して、類似生育状況の範囲を設定する。具体的には、予測生育範囲作成部127は、入力装置150を介して、評価値の差の範囲A〜Bを受け付ける。類似生育状況の範囲は、予測対象作付の予測開始日前日の評価値をVとすると、(A+V)〜(B+V)となる。
【0088】
一例として、縦軸評価指標が草丈の場合について説明する。
(1)ユーザが入力装置150を介して入力した評価値の差の範囲が「−3〜+3cm」である。
(2)予測対象作付の予測開始日前日の草丈が29cmである。
上記の場合、類似生育状況の範囲は、26〜32cmとなる。横軸評価指標についても、上記と同様である。
そして、ステップS1602に進む。
【0089】
ステップS1602において、予測生育範囲作成部127は、類似作付の評価値を評価値テーブル132(
図3参照)から検索する。具体的には、予測生育範囲作成部127は、下記条件に一致するレコードを評価値テーブル132から抽出する。
(1)作付IDが類似作付テーブル136(
図7参照)に登録されている。
(2)横軸評価値および縦軸評価値が、ステップS1601において設定した類似生育状況の範囲内である。
【0090】
各図を用いて説明すると、評価値テーブル132(
図3参照)のレコード132aの作付IDは「1111」であり、類似作付テーブル136(
図7参照)に登録されている。そして、縦軸評価指標である「草丈」の評価値が「30cm」であり、ステップS1601において設定した類似生育状況の範囲内である。そして、横軸評価指標についても縦軸評価指標と同様に、類似生育状況の範囲内である場合、予測生育範囲作成部127は、当該レコードを抽出する。
そして、ステップS1603に進む。
【0091】
ステップS1603において、予測生育範囲作成部127は、ステップS1602において抽出したレコードに記憶されている横軸評価値および縦軸評価値を抽出し、当該レコードに記憶されている作付IDおよび日付を付加して、類似生育状況テーブル139(
図10参照)に登録する。
そして、ステップS1604に進む。
【0092】
ステップS1604において、予測生育範囲作成部127は、評価値テーブル132(
図3参照)から、予測対象作付の予測開始日前日における横軸評価値および縦軸評価値を取得する。そして、予測生育範囲作成部127は、変数D
0に予測開始日前日の日付を代入し、変数x
0に横軸評価値を代入し、変数y
0に縦軸評価値を代入する。
そして、ステップS1605に進む。
【0093】
ステップS1605において、予測生育範囲作成部127は、類似生育状況テーブル139(
図10参照)から、1レコード取得し、作付ID、日付、横軸評価値および縦軸評価値を取得する。そして、予測生育範囲作成部127は、変数D
1に日付を代入し、変数x
1に横軸評価値を代入し、変数y
1に縦軸評価値を代入する。
そして、ステップS1606に進む。
【0094】
ステップS1606において、予測生育範囲作成部127は、日付の差を表す変数Eに1を代入する。
そして、ステップS1607に進む。
【0095】
ステップS1607において、予測生育範囲作成部127は、評価値テーブル132(
図3参照)から、ステップS1605において取得した作付IDの、日付(D
1+E)における横軸評価値および縦軸評価値を取得する。そして、予測生育範囲作成部127は、変数x
2に横軸評価値を代入し、変数y
2に縦軸評価値を代入する。なお、横軸評価値および縦軸評価値が取得できない場合は、ステップS1609に進む。
そして、ステップS1608に進む。
【0096】
ステップS1608において、予測生育範囲作成部127は、予測対象作付の日付(D
0+E)における生育状況を算出し、日付(D
0+E)に関連付けて、予測生育範囲テーブル141(
図12参照)に登録する。ここで、予測対象作付の日付(D
0+E)における生育状況は、下記により算出される。
(横軸評価値,縦軸評価値)=(x
2−x
1+x
0,y
2−y
1+y
0)
そして、ステップS1609に進む。
【0097】
ステップS1609において、予測生育範囲作成部127は、変数Eに1を加算する。
そして、ステップS1610に進む。
【0098】
ステップS1610において、予測生育範囲作成部127は、変数Eが、予測期間日数を超えているか否かを判定する。予測期間日数は、例えば、
図13のステップS1303において、予測開始日を「2001/4/21」と設定し、予測終了日を「2001/4/29」とした場合、「9」となる。
変数Eが、予測期間日数を超えていない場合(ステップS1610“No”)、ステップS1607に戻る。
変数Eが、予測期間日数を超えている場合(ステップS1610“Yes”)、ステップS1611に進む。
【0099】
ステップS1611において、予測生育範囲作成部127は、類似生育状況テーブル139(
図10参照)に登録されている全てのレコードに対して、ステップS1605〜S1610の処理が完了したか否かを判定する。
処理が完了していない場合(ステップS1611“No”)、ステップS1605に戻る。
処理が完了した場合(ステップS1611“Yes”)、メインルーチン(
図13のステップS1307)に戻る。
【0100】
(予測結果の表示)
次に、
図17および
図18に沿って、予測結果表示部128(
図1参照)が、予測結果を出力装置160(
図1参照)に表示する処理および表示例について説明する。この予測結果を表示する処理は、
図13のステップS1308である。
【0101】
図17は、予測結果の表示例である。ここでは、予測結果を散布図で表示する場合について説明する。この散布図は、ステップS1302において設定した横軸評価指標および縦軸評価指標に基づいて、横軸には「作付開始からの日数」が、縦軸には「草丈」が示されている。出力装置160(
図1参照)には、1画面に複数の予測結果を表示することとしてもよい。この場合、予測結果表示部128は、予測対象作付ごとに、予測結果グラフ表示エリア1701を表示する。複数の予測結果を、同時にまたは交互に参照できるように表示することで、ユーザは予測結果を比較対象しやすくなり、作業計画の見直し等もしやすくなり、複数の圃場の作業計画を同時に管理することが容易になる。
【0102】
予測結果グラフ表示エリア1701には、成功作付の評価値がプロットされ、表示されている。この表示は、予測結果表示部128が、補間データテーブル138(
図9参照)に登録されているデータをプロットし、表示したものである。なお、
図17は、成功作付が複数存在する場合の表示例である。
さらに、予測結果グラフ表示エリア1701には、予測対象作付の評価値がプロットされ、表示されている。この表示は、予測結果表示部128が、評価値テーブル132(
図3参照)に登録されている横軸評価指標および縦軸評価指標の評価値と、予測生育範囲テーブル141(
図12参照)に登録されているデータとをプロットし、表示したものである。ここで、
図17において予測対象作付は、凡例「2001/04/01定植 ハウスAAA」で示されるプロットである。
【0103】
ここで、予測生育範囲は、1つの横軸評価値(作付開始からの日数)に対して、縦軸評価値(草丈)のとりうる値の範囲(幅)を示す記号で表示されている。
この縦軸評価値の幅は、予測モデルを用いる予測生育範囲作成処理(
図15参照)の場合は、シミュレーション回数を設定することに起因する。一方、過去実績を用いる予測生育範囲作成処理(
図16参照)の場合は、類似作付の抽出件数(
図13のステップS1304)に起因する。すなわち、シミュレーション回数が2以上であることおよび類似作付の抽出件数が複数であることによって、1つの予測対象日に対して、複数の横軸評価値および縦軸評価値の予測値の組が算出される。そこで、この複数の予測値の組を囲む領域で、予測生育範囲を表示する。本実施形態の場合、横軸評価値は作付開始からの日数である。このときは、予測生育範囲は領域ではなく
図17に示すような線分となる。これは、1つの予測対象日に対する横軸評価値が、どの予測値でも同じ値、すなわち予測対象作付の作付開始日から予測対象日までの日数となるためである。また、予測生育範囲の表示はこれに限るものではなく、各横軸評価値および縦軸評価値の組をプロットして表示してもよい。さらに、1つの横軸評価値(作付開始からの日数)に対する複数の縦軸評価値(草丈)の総和を、縦軸評価値の個数で除算した値を、平均予測生育度として表示する。
【0104】
また、予測結果グラフ表示エリア1701には、管理可能範囲が表示されている。この管理可能範囲は、管理可能範囲算出処理(
図14参照)によって管理可能範囲テーブル140(
図11参照)に登録されているデータを示したものである。
この管理可能範囲内に予測生育範囲が含まれていれば、その予測対象作付は生育に成功する見込みであることを意味する。すなわち、その予測対象作付は、生産者が望むような生育状況になることが予想される。
そこで、管理可能範囲内に予測生育範囲が含まれていない場合は、予測結果表示部128は、例えば下記のようにして、ユーザに注意を促す。
(1)予測結果グラフ表示エリア1701の背景色を変更する。
(2)予測生育範囲を示す記号を点滅させる。
(3)警告文を表示する。
(4)警告音を発生させる。
そして、ユーザが予測結果グラフ表示エリア1701を、マウスでクリックなどして選択すると、
図18に示す、詳細画面が表示される。
【0105】
図18は、予測結果(詳細)の表示例である。
予測結果グラフ表示エリア1801には、前記した予測結果グラフ表示エリア1701(
図17参照)と同じ内容が表示されている。さらに、予測結果グラフ表示エリア1801には、予測結果グラフ表示エリア1701に表示されていない、成功作付以外の類似作付を表示できるようにしてもよい。このように、成功作付以外の類似作付を表示することで、過去の失敗事例を参考にすることができ、同じ失敗をしないような作業計画の策定を支援することができる。
作業計画表示エリア1802には、予測対象作付の作業計画が表示されている。この表示は、予測結果表示部128が、作業計画テーブル133(
図4参照)に登録されているデータを表示したものである。ユーザは、マウスの操作等により作業計画表示エリア1802に表示されている作業計画を編集(変更)することで、当該編集(変更)内容を作業計画テーブル133(
図4参照)に反映させることができる。ユーザが作業計画を編集(変更)すると、農作物生育管理装置100は、当該編集後の内容に基づいて、予測生育範囲を作成(
図13のステップS1307)しなおし、表示する。
【0106】
作業実績表示エリア1803には、類似作付の作業実績が表示されている。この表示は、予測結果表示部128が、作業実績テーブル134(
図5参照)に登録されているデータを表示したものである。
図18においては、「2000/04/01定植 ハウスAAA」の作付についてのデータが表示されているが、予測結果グラフ表示エリア1801に表示されているグラフや凡例を、ユーザがマウスでクリックなどして選択すると、その作付についてのデータが表示される。
【0107】
気象情報表示エリア1804には、予測結果グラフ表示エリア1801に表示されている作付ごとに、作付開始からの日数ごとの気象情報が表示されている。この表示は、予測結果表示部128が、気象情報取得手段170(
図1参照)がインターネット等を介して、外部のシステムから取得した予測期間の気象予報および/または過去の気象観測結果(実績データ)を、表示したものである。気象情報は、過去の実績データが存在する場合は、当該実績データが表示される。一方、過去の実績データが存在しない場合、すなわち、予測期間においては、該当する日付の気象予報が表示される。
【0108】
また、予測結果(詳細)の表示には、類似作付の評価値を表形式で表示してもよいし、類似作付のプロットをユーザがマウスで選択することによって、ポップアップ形式で評価値を表示してもよい。
【0109】
<まとめ>
本実施形態の農作物生育管理装置100によれば、農作物の生育が成功であるか否かを判断する基準である管理可能範囲と、農作物の生育状況の予測値である予測生育範囲とを示すので、適切な作業計画の策定を支援することができる。また、本実施形態の農作物生育管理装置100は、気象予報の誤差による気象条件のブレが、農作物の生育にどのように影響を与えるかを考慮して予測生育範囲を作成するので、より適切な作業計画の策定を支援することができる。
【0110】
<その他>
なお、前記した実施形態は、本発明を実施するための好適なものであるが、その実施形式はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更することが可能である。
たとえば、類似作付を抽出する(
図13のステップS1304)際に、予測対象作付の農作物の名称を検索条件として含むようにしてもよい。