特許第5756382号(P5756382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756382
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20060101AFI20150709BHJP
   F21Y 101/02 20060101ALN20150709BHJP
【FI】
   F21S2/00 330
   F21Y101:02
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-210729(P2011-210729)
(22)【出願日】2011年9月27日
(65)【公開番号】特開2013-73735(P2013-73735A)
(43)【公開日】2013年4月22日
【審査請求日】2014年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】大野 恭男
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瞬
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0212758(US,A1)
【文献】 特開2010−060889(JP,A)
【文献】 特開2010−113163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21Y 101/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付け位置から離れた位置にある被照明面を照明するための照明装置であって、
光を出射する光源部と、該光源部からの出射光を、光軸に対して対称な2方向に光度のピーク値を有するように配光するために、面状に配置された複数のプリズムを含むプリズム形成面を有する配光制御部材とを備え、前記配光制御部材は、前記プリズム形成面が前記光源部を向くように配置され、前記配光制御部材の前記プリズム形成面とは反対側の面に、前記配光制御部材と一体に拡散層が形成されていることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記複数のプリズムのそれぞれが四角錐からなることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
請求項に記載の照明装置からなる照明ユニットを複数個隣接させて配置したことを特徴とする照明装置。
【請求項4】
前記光源部は、導光板と導光板の側端面に配置された光源を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記光源部は、導光板と導光板の側端面に配置された光源を含み、前記導光板は四角形状であり、前記光源は、前記導光板の四方の側端面に配置されることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項6】
請求項5に記載の照明装置からなる照明ユニットを複数個隣接させて配置したことを特徴とする照明装置。
【請求項7】
前記拡散層は、サンドブラスト法により形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被照明面上の照度の均一性を向上させることが可能な配光制御部材及びそれを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置は、その発光面の正面の光度が最も大きく、正面からの角度が増すにつれて光度が減少するような配光特性を有するのが一般的である。そして、このような配光特性を有する照明装置では、照明装置から離れた位置にある被照明面(例えば、このような照明装置を室内照明として天井に取り付けて使用した場合には、床面)における照度は、照明装置の直下のみが大きく、周辺にいくにしたがって急激に減少するといった問題がある。従来、この問題を回避して被照明面上の比較的広い領域において均一な照度を達成するために、照明装置の配光特性を後述するバットウィング状とすることが知られている。
【0003】
図5(a)は、室内空間106において、照明装置100を天井102に取り付け、床面104を照らすようにした配置構成を示す図である。また、図5(b)は、照明装置100の配光特性の基準軸qを含む一平面(例えば、P)内において、光軸qからの偏向角θに対する照明装置100の光度の分布L1、L2を示すグラフである。
ここで、配光特性の基準軸qは、通常、発光面の正面方向の中心軸である。以下、この基準軸を光軸ともいい、光軸qからの偏向角θを配光角、この配光角θに対する光度の分布を、光度角分布という。
【0004】
図5(c)は、図5(b)に示す光度角分布L1、L2にそれぞれ対応する、床面104における照度の分布(以下、照度角分布という)E1、E2を示すグラフである。
図5(b)、(c)において、円周の周囲に示された数値(−90〜90)は配光角θを示すものであり、各配光角θにおける光度は、最も光度が大きくなる角度での値を1とする相対値で示され、照度は、それぞれ光軸q上の(すなわち、θ=0度における)照度を1とする相対値で示されている。
【0005】
図5(b)に示す光度角分布L2は、上述した一般的な配光特性に相当し、この場合、面状照明装置100の光度は、θ=0度の方向で最大となり、配光角θの絶対値が増大するにつれて減少する。この際、床面104における照度は、図5(c)に示す対応する照度角分布E2から分かるように、(光度角分布L2が、−25度〜25度の範囲で比較的均一であるにもかかわらず)、配光角θの絶対値が増大するにつれて急激に減少する。
【0006】
一方、床面104における照度を、図5(c)に示す照度角分布E1のように比較的広い領域(例えば、−25度〜25度の範囲)で均一にしたい場合、照明装置100の配光特性を、図5(b)に示す光度角分布L1のように、θ=0度の方向から、その領域に対応する配光角の上下限値(例えば、±25度)の方向に向かって、光度が増大するような特性とする必要がある。この場合、光度角分布は、配光角θの上記上下限値にピーク値をとる2峰性の分布形状を有するものとなり、このような光度角分布を備えた配光特性を、バットウィング状の配光特性という。
【0007】
従来、配光特性をバットウィング状とするための配光制御部材を備えた照明装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の照明装置を、図6を参照して説明すれば、次の通りである。
【0008】
図6(a)に示す照明装置200は、光源202と、光源202から出射される光Lの配光態様を制御する配光制御部材203とを有している。配光制御部材203は、三角錐プリズム板231を備えており、これによって、光源202からの光Lをバットウィング状に拡散することが図られている。この三角錐プリズム板231は、光源202側を平面231a、他側の面をプリズム面231bとするように構成及び配置され、プリズム面231bは、図6(b)に示すように、隙間なく配列された複数の三角錐プリズムが形成されている。従来、このような配光制御部材として、四角錐プリズム等の他の多角錐プリズム、または、円錐プリズムを用いたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−266521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、照明装置において、その照明光による被照明面の照度の均一性をより優れたものとするには、バットウィング状の配光特性において、その光度角分布の分布形状をさらに精細に調整する必要がある。例えば、本発明者等の検討によれば、一方の主面を平坦面とし、他方の主面を四角錐プリズムが隙間なく配列されたプリズム面とする配光制御部材を備えた、プリズム面が光源に対向するように(所謂、逆プリズムシート状に)配置した照明装置に関して、次のようなことが明らかとなった。
【0011】
まず、このような照明装置では、図6(a)に示す照明装置200のように配光制御部材203の平面231を光源202側に配置した場合と比較して、2峰性の光度角分布を有するバットウィング状の配光特性が容易に得ることが可能である。但し、この場合、光軸q方向の光度が過度に低下する傾向があり、これによって、被照明面上の照度について、照明装置の直下がその周辺よりも暗いといった逆の非均一性が発生するという問題がある。
【0012】
また、一般に、被照明面の照度を均一にするためには、任意の方位角φ(図5(a)参照)について、光軸qを含む平面Pφ内の光度角分布をバットウィング状とすることに加えて、このような光度角分布の光軸q回り(すなわち、方位角φ方向)の均一性を向上させ、それによって被照明面上の照度の光軸q回りの均一性を向上させることも重要である。この点について、上述したような配光制御部材を備える照明装置は、十分な均一性を有するものではない。
【0013】
さらに、上述したような配光制御部材が光源のカバーを兼ねる構成を採用した場合には、配光制御部材への写り込みによる照明装置自体の見栄えの悪化、及び、光度角分布が急激に変化する角度が存在することによって、見る角度により照明の様子が変化する現象(所謂、ギラツキ感)が生じ、照明装置自体の見栄えが悪化するといった問題もある。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑み、被照明面上の照度の均一性及び照明装置自体の見栄えを向上させることが可能な照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、さらに他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0016】
(1)取付け位置から離れた位置にある被照明面を照明するための照明装置であって、
光を出射する光源部と、該光源部からの出射光を、光軸に対して対称な2方向に光度のピーク値を有するように配光するために、面状に配置された複数のプリズムを含むプリズム形成面を有する配光制御部材とを備え、前記配光制御部材は、前記プリズム形成面が前記光源部を向くように配置され、前記配光制御部材の前記プリズム形成面とは反対側の面に、前記配光制御部材と一体に拡散層が形成されていることを特徴とする照明装置(請求項1)。
【0017】
本項に記載の照明装置によれば、配光制御部材を、そのプリズム形成面が光源部を向くように配置し、かつ、配光制御部材のプリズム形成面とは反対側の面に拡散層が設けられていることによって、光軸に対して対称な2峰性の配光特性において、光軸上の光度の過度な低下を抑制し、光軸を含む任意の平面内において、被照明面上の所定の領域における均一な照度を達成するための良好な光度角分布を達成し、加えて、被照明面上の所定の領域における照度の、光軸りの均一性を向上させることも可能となる。
【0018】
さらに、本項に記載の照明装置によれば、配光制御部材のプリズム形成面とは反対側の面に拡散層が設けられていることによって、配光制御部材への写り込み、及び、見る角度により照明の様子が変化する現象(ギラツキ感)を低減させ、照明装置自体の見栄えを向上させることが可能となる。
【0020】
さらに、本項に記載の照明装置によれば、被照明面上の照度の均一性及び照明装置自体の見栄えを向上させることが可能な照明装置を、部品点数を増大させることなく容易かつ安価に製造することが可能となる。
【0021】
)(1)項に記載の照明装置において、前記複数のプリズムのそれぞれが四角錐からなることを特徴とする照明装置(請求項)。
【0022】
本項に記載の照明装置によれば、被照明面上でほぼ均一な照度が実現される領域を、丸みを帯びた四角形状とすることが可能であるため、四角形状の被照明面(例えば、一般的な室内空間における床面)を照明するために好適な照明装置を提供することが可能となる。
【0023】
)()項に記載の照明装置からなる照明ユニットを複数個隣接させて配置したことを特徴とする照明装置(請求項)。
【0024】
本項に記載の照明装置によれば、隣接する照明ユニットからの照明光が互いに重なる部分を少なくすることができるため、比較的広い面積を有する被照明面を効率的に照明することが可能となる。
【0025】
)(1)から()のいずれか1項に記載の照明装置において、前記光源部は、導光板と導光板の側端面に配置された光源を含むことを特徴とする照明装置(請求項)。
【0026】
(5)(2)項に記載の照明装置において、前記光源部は、導光板と導光板の側端面に配置された光源を含み、前記導光板は四角形状であり、前記光源は、前記導光板の四方の側端面に配置されることを特徴とする照明装置(請求項5)。
(6)(5)項に記載の照明装置からなる照明ユニットを複数個隣接させて配置したことを特徴とする照明装置(請求項6)。
(7)(1)から(6)のいずれか1項に記載の照明装置において、前記拡散層は、サンドブラスト法により形成されていることを特徴とする照明装置(請求項7)。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、上記のように構成したことにより、被照明面上の照度の均一性及び照明装置自体の見栄えを向上させることが可能な照明装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】(a)は、本発明の一実施形態における照明装置の要部を示す側面図であり、(b)は、(a)に示す照明装置の配光制御部材の一部を拡大して示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態における照明装置の、光軸を含む平面内における光度角分布のシミュレーション結果を、比較例とともに示すグラフである。
図3】本発明の一実施形態における照明装置の、光軸を含む平面内における光度角分布の実測結果を、比較例とともに示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態における照明装置の被照明面上の照度分布のシミュレーション結果を、比較例とともに示す図であり、(a)は、比較例として、配光制御部材に拡散層が設けられていない場合、(b)、(c)、(d)は、本発明の実施形態の例として、配向制御部材に設けられた拡散層によって拡散される光度角分布を、それぞれ標準偏差σ=2.5、4.5、7.5のガウス分布とした場合を示す図である。
図5】一般的に照明装置の光度角分布と照度角分布の特性を示す図であり、(a)は照明装置の配置構成を示す図、(b)は、2つの異なる配光特性に対応する光度角分布の例を示すグラフ、(c)は、(b)に示す2つの光度角分布にそれぞれ対応する照度角分布を示すグラフである。
図6】従来の照明装置の一例を示す図であり、(a)は、照明装置を模式的に示す側断面図、(b)は、(a)に示す照明装置の配光制御部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。尚、添付図面において、配光制御部材及び照明装置の全体または部分を示す各図は、いずれも説明のために特徴を強調して示す模式図であって、図示された各部分の相対的な寸法は、必ずしも実際の縮尺を反映するものではない。
【0030】
図1に示す照明装置1は、導光板12と、光源14と、反射部材16とを含む光源部10を備えている。導光板12は、メタクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明樹脂材料を成形してなる板状の導光体であり、一方の主面を出射面12aとするように構成され、この出射面12aが光源部10の出射面となる。本実施形態では、導光板12は、四角形状の主面を有するものであり、四方の側端面を入光面12cとして、各入光面12cに対向するように光源14が配置される。光源14は、例えば、各入光面12cの長手方向に沿って配列される複数の発光ダイオードからなる。また、導光板12の出射面12aとは反対側の主面(裏面)12b側には、導光板12と光源14を覆うように、シート状の反射部材16が配置されている。
【0031】
光源部10は、光源14から各入光面12cを通じて導光板12の内部へと入射した光を、出射面12aと裏面12bとの間で全反射を繰返しつつ導光板12内を伝播させ、その過程で、伝播光を出射面12aから均一に出射させるものである。また、導光板12の裏面12bには、裏面12bに入射した光の一部を反射して、臨界角以下の入射角でもって出射面12aに入射させるための拡散反射手段または正反射手段が設けられているものであってもよい。
【0032】
照明装置1は、光源部10の出射面12a側に配置される配光制御部材20を備えている。配光制御部材20は、メタクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明樹脂材料を板状に成形してなるものであり、所定の位置に配置したときに少なくとも光源部10の出射面12aを覆う形状及びサイズに形成される。また、配光制御部材20の一方の主面は、面状に配置された複数のプリズム24が設けられたプリズム形成面20aとして構成されており、配光制御部材20は、プリズム形成面20aが光源部10の出射面12aを向くように配置されている。
【0033】
ここで、本明細書において、「面状」の配置とは、プリズム形成面20aに含まれるプリズム24が備える傾斜面25中に、少なくとも異なる2方向に傾斜する傾斜面が含まれるように複数のプリズム24を構成及び配置することを意味する。
この際、図1(b)に示す範囲内においてプリズム24が備える一対の傾斜面25は、1方向(この場合、紙面左右方向の1次元)に傾斜する傾斜面であり、配光制御部材20のプリズム形成面20aは、実際には、この傾斜面25とは異なる方向(例えば、図1において紙面に直交する方向の1次元)に傾斜する傾斜面を含んでいる。
【0034】
複数のプリズム24は、このように面状に配置されることによって、光源部10からの出射光の配光を二次元的に制御し、光軸q(図5(a)参照)に対して対称な2方向に光度のピーク値を有する、バットウィング状の配光特性を実現するものである。
【0035】
具体的には、複数のプリズム24は、それぞれ四角錐からなるプリズム24から構成され、各プリズム24の底面をなす四角形の各辺が隣接するプリズム24の対応する各辺と共有されるように、敷き詰められて配置されている。この場合、それぞれのプリズム24は、1方向(図1において紙面左右方向の1次元)内において、異なる向きに傾斜して対向する1対の傾斜面25と、この方向に直交する方向(図1において紙面に直交する方向の1次元)内において、異なる向きに傾斜して対向する1対の傾斜面(図示は省略する)の、4つの傾斜面を有するものである。
【0036】
さらに、配光制御部材20において、プリズム形成面20aとは反対側の主面(裏面)20bには、図1(b)に示すように、拡散層22が配光制御部材20と一体に形成されている。本実施形態において、拡散層22は、配光制御部材20を成形するための金型の裏面20bに対応する表面をサンドブラスト法を用いてランダムな凹凸面に加工し、樹脂成形において、その凹凸面を裏面20bに転写することにより形成される。
【0037】
但し、照明装置1において、拡散層22は、配向制御部材20の裏面20b側に、拡散機能を備えた任意の適切なシート状部材(以下、拡散シートともいう)を配置することにより、配光制御部材20とは別体に設けられるものであってもよい。この場合、配光制御部材20の裏面20b自体は、平坦面として構成されるものであってもよい。
【0038】
照明装置1において、光源部10の出射面12aから出射された光(典型的な入射光線をL1、L2として模式的に示す)は、配光制御部材20をプリズム形成面20a側から裏面20b側へと透過し、これによって配光制御された裏面20bからの出射光が照明光として利用される。この際、照明装置1では、裏面20bに拡散層22が設けられていることによって、配光制御部材の裏面20bからの出射光は、拡散されて(その広がりを、分布D1、D2として模式的に示す)出射されることになる。
【0039】
次に、図2図4を参照して、このような拡散層22の作用効果について説明する。
図2は、照明装置の光軸qを含む一平面内において、光軸qからの配向角θに対する光度角分布について、次のようなシミュレーションを実行した結果を示すグラフである。図2において、円周の周囲に示された数値(−90〜90)は、図5(b)と同様に、配光角θを示すものである。
【0040】
本シミュレーションでは、光源部10から配光制御部材20に入射する各入射光線(例えば、図1(b)に示すL1、L2)に対応する、拡散層22からの出射光線束(例えば、図1(b)の分布D1、D2を構成する光線束)は、裏面20bを平坦面とした場合の出射方向にピーク値をとり、所定の標準偏差σを備えたガウス分布である光度角度分布に従って配光されるものとした。したがって、本シミュレーションにおいて、拡散層22の拡散機能は、この標準偏差σによって特徴付けられる。また、本シミュレーションにおいて、各プリズム24の頂角θ(図1(b)参照)は、75°とした。
【0041】
図2に示すグラフのうち、拡散層なし(すなわち、シミュレーション上、σ=0とした場合)のグラフは、比較例として、配光制御部材に拡散層22が設けられていない場合の光度角分布に相当する。また、σ=2.5、及び、4.5のグラフは、本実施形態における照明装置1の例として、配光制御部材20に、それぞれのσの値に対応する拡散機能を備えた拡散層22を設けた場合の光度角分布に相当する。
【0042】
図2から、本実施形態における照明装置1では、σ=2.5、及び、σ=4.5のいずれの場合についても、光軸q上(θ=0°)の光度が、拡散層なしとした比較例の場合に対して増大し、また、この光軸q上(θ=0°)の光度は、σが増大する程(すなわち、配光制御部材20からの出射光の拡散の広がりが大きい程)増大することが分かる。
このように、本実施形態における照明装置1では、バットウィング状の配光特性において、光軸q上の光度の過度な低下を抑制することができ、ひいては、拡散層22の拡散機能を調整することによって、被照明面上の所定の領域における均一な照度を達成するための良好な光度角分布を達成することが可能となる。
【0043】
さらに、図2から、本実施形態における照明装置1では、σ=2.5、及び、σ=4.5のいずれの場合についても、光度の最小値(θ=0°)からピーク値(θ=±20°付近)へと至る変化が、拡散層なしとした比較例の場合に対して緩やかになっていることが分かる。したがって、本実施形態における照明装置1では、このような光度変化の急峻性を要因とするギラツキ感を低減し、照明装置1自体の見栄えを改善することが可能となる。
【0044】
また、図示は省略するが、本シミュレーションにより、本実施形態における照明装置1では、拡散層なしとした比較例の場合に対して、光度角分布の光軸q回り(すなわち、方位角φ方向)の均一性が向上し、また、この光軸q回りの均一性は、σが増大する程(すなわち、配光制御部材20からの出射光の拡散の広がりが大きい程)向上することも、確認されている。
【0045】
そして、このような照明装置1の作用効果は、図3に示すように、実測結果からも確認される。ここで、図3は、照明装置の光軸qを含む一平面内において、光軸qからの配向角θに対する光度角分布を実測した結果を示すグラフである。図3において、円周の周囲に示された数値(−90〜90)は、図5(b)と同様に、配光角θを示すものである。
【0046】
測定に使用された照明装置1は、配向制御部材20の裏面20b自体を平坦面とし、この裏面20b側に拡散シートを配置することによって拡散層22を設けたものである。この場合、拡散層22の拡散機能は、拡散シートのヘイズ値(全光線透過率に対する拡散透過率の割合)で特徴付けられる。
【0047】
図3において、拡散層なしのグラフは、比較例として、配光制御部材の裏面側に拡散シートを配置していない照明装置を用いた光度角分布の実測値である。また、ヘイズ値29%及び46%のグラフは、本実施形態における照明装置1の例として、配光制御部材20の裏面20b側に、それぞれのヘイズ値を有する拡散シートを配置して拡散層22を設けた照明装置1を用いた実測値である。いずれの場合についても、配光制御部材20の各プリズム24の頂角θ(図1(b)参照)は、75°である。
【0048】
図3から、図2に示すシミュレーション結果と同様に、本実施形態における照明装置1では、ヘイズ値29%及び46%のいずれの場合についても、光軸q上(θ=0°)の光度が、拡散層なしとした比較例の場合に対して増大し、また、この光軸q上(θ=0°)の光度は、ヘイズ値が増大する程(すなわち、配光制御部材20からの出射光の拡散の広がりが大きい程)増大することが分かる。
【0049】
また、図3から、図2に示すシミュレーション結果と同様に、本実施形態における照明装置1では、ヘイズ値29%及び46%のいずれの場合についても、光度の最小値(θ=0°)からピーク値(θ=±15°付近)へと至る変化が、拡散層なしとした比較例の場合に対して、緩やかになっていることが分かる。さらに、このような光度角分布の特性の反映として、実際にギラツキ感が低減し、照明装置1自体の見栄えが改善することも確認された。加えて、照明装置1では、配光制御部材20の裏面20bに拡散層22を設けたことによって、配光制御部材20への写り込みも低減するものである。
【0050】
尚、本出願人による検討によれば、上述したシミュレーションにおけるガウス分布の標準偏差σと、実測に用いられる拡散層22(この場合、拡散シート)のヘイズ値との間に、おおよそ、σ=2.5、4.5、7.5、10が、それぞれ38%、73%、88%、90%のヘイズ値に対応するといった関係があることが確認されている。
【0051】
次に、図2に示す光度角分布のシミュレーションと同様のシミュレーションにより、照明装置から2m離れた被照明面上の照度分布を求めた結果を、図4に示す。図4(a)(拡散層なし)は、比較例として、配光制御部材に拡散層22が設けられていない場合の照度分布に相当する。また、図4(b)〜(d)は、本実施形態における照明装置1の例として、配光制御部材20に、それぞれσ=2.5、4.5、7.5の値に対応する拡散機能を備えた拡散層22を設けた場合の照度分布に相当する。
【0052】
ここで、図4(a)〜(d)において、X軸及びY軸は、被照明面上の座標を表し、(X、Y)=(0,0)の点が、照明装置の直下(光軸qと被照明面との交点)に相当する。また、図4(a)〜(d)では、被照明面上の照度分布が濃淡の分布として表されており、最も淡く表された領域(以下、ハイライト領域ともいう)は最も照度が高い領域を表し、ハイライト領域の周囲に隣接して、ハイライト領域よりも濃く表現されている領域は、ハイライト領域よりも照度の小さい領域を表す。但し、濃淡と照度の大小は、必ずしも図内全体にわたって(例えば、濃い領域程照度が小さいといったような)一定の関係を有するものではないが、少なくとも、濃淡の異なる領域は照度の異なる領域に対応する。
【0053】
図4(a)〜(d)に示すように、本実施形態における照明装置1(図4(b)〜(d))では、光軸qと被照明面との交点(0,0)を通る任意の直線上にわたる照度の均一性、及び、光軸qと被照明面との交点(0,0)回りの均一性の両方が、拡散層なしとした比較例の場合(図4(a))に対して向上しており、また、これらの均一性は、σが増大する程(すなわち、配光制御部材20からの出射光の拡散の広がりが大きい程)向上することが分かる。このような照度の均一性は、図2及び図3を参照して上述したような、バットウィング状の光度角分布において、光軸q上で光度の過度の低下が生じず、かつ、配向角θに対する光度変化が比較的緩やかである特性、及び、このような特性を有する光度角分布の光軸q回りの均一性といった、本実施形態における照明装置1の特徴が直接反映された結果である。
【0054】
ここで、照明装置1を用いた場合の被照明面状の照度分布は、図4(b)〜(d)に示すように、配光制御部材20のプリズム形成面20aに形成された複数のプリズム24の構成及び配置の態様を少なくとも部分的に反映して、比較的明るい領域(ハイライト領域とその周辺の領域)が丸みを帯びた四角形状を呈するものである。したがって、本実施形態における照明装置1は、このような配光特性を活用して、四角形状の被照明面(例えば、一般的な室内空間における床面)を照明するために好適な照明装置として使用することができる。さらに、照明装置1を1つの照明ユニットとし、複数の照明ユニットを隣接させて配置して全体として広い出射面を有する多ユニット型の照明装置を構成した場合、各照明ユニットからの照明光が互いに重なる部分を少なくすることができるため、比較的広い面積を有する被照明面を効率的に照明することが可能となる。
【0055】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、照明装置1において、光源部10は、導光板12と、導光板12の入光面12cに配置された光源14とを備えるものとしたが、本発明に係る照明装置における光源部は、導光板を使用することなく、複数の光源(例えば、発光ダイオード)を平面状に配置してなるものであってもよい。または、光源部は、放電灯または有機エレクトロルミネッセンス素子等の光源を備えるものであってよい。
【0056】
また、照明装置1において、配光制御部材20のプリズム形成面20aに含まれる複数のプリズム24は、それぞれ四角錐からなるプリズム24を敷き詰めて配置するものとしたが、本発明に係る複数のプリズムは、面状に配置されてバットウィング状の配光特性を実現するものである限り、任意の適切な形状及び配置を備えるものであってもよい。例えば、複数のプリズム24は、三角錐、他の任意の多角錐、または円錐からなるプリズム、あるいは、線状プリズムを、面状に配置して構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1:照明装置、10:光源部、20:配光制御部材、20a:プリズム形成面、20b:(配光制御部材の)裏面、22:拡散層、24:プリズム
図1
図2
図3
図4
図5
図6