(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1工程では、ばねを予め設定された高さとなるまで圧縮した後に、「荷重−変位」実測線が「荷重−変位」目標線と交差するまでばねをクリープさせる、請求項1に記載のばね特性修正方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した文献に開示された方法では、セッチング前に測定した荷重測定値(すなわち、ばねを所定高さに圧縮したときの荷重値)、又は、セッチング前に求めたばね定数に基づいてセッチング量を修正する。しかしながら、ばね特性を修正(セッチング)する際は、ばねを弾性域で変形させるだけでなく、ばねを塑性域でも変形させる。成形後のばねのばね特性(「荷重−変位」特性)の個体間のバラツキは、弾性域だけではなく、塑性域においても生じる。上述した文献の技術は、弾性域のばね特性(荷重測定値,ばね定数)を測定しているだけであるため、塑性域のばね特性の個体間のバラツキまでは考慮していない。このため、上述した文献の技術では、精度良くばね特性を修正することができないという問題があった。本願は、ばね特性を精度良く修正する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願に開示する方法は、ばねに所望のばね特性が得られるように修正する方法であって、第1工程と、その第1工程の後で行われる第2工程を有する。第1工程では、ばねの荷重と変位を測定することで得られる「荷重−変位」実測線が、ばねの「荷重−変位」特性と所望のばね特性とに基づいて決定される「荷重−変位」目標線に交差するまで、ばねに作用する荷重と変位を変化させる。第2工程では、「荷重−変位」目標線に沿って荷重が減少するように、ばねの変位を変化させる。
【0005】
上記の方法では、まず、ばねの荷重と変位を測定することで「荷重−変位」実測線を取得しながら、この「荷重−変位」実測線が「荷重−変位」目標線に交差するまで、ばねに作用する荷重と変位を変化させる。その後、「荷重−変位」目標線に沿って荷重が減少するように、ばねの変位を変化させる。これによって、ばねに所望のばね特性(すなわち、「荷重−変位」目標線に応じたばね特性)が得られる。この方法では、ばねの荷重と変位を実際に測定することで、ばねの「荷重−変位」実測線を取得する。このため、弾性域だけでなく塑性域においてもばねの荷重と変位が測定され、その測定結果に基づいてばね特性が修正される。従って、ばね特性を精度良く修正することができる。
【0006】
上記の方法において、「荷重−変位」目標線を決定するためのばねの「荷重−変位」特性は、ばね定数とすることができる。この場合に、「荷重−変位」特性は、第1工程において測定されるばねの荷重と変位から決定されることが好ましい。
この構成によると、「荷重−変位」目標線を決定するためのばねの「荷重−変位」特性が、ばねの荷重と変位を実際に測定した結果から得られる。このため、精度良くばね特性を修正することができる。
なお、「荷重−変位」の弾性域の個体間のバラツキがばね特性に影響を与えない程度に小さい場合には、「荷重−変位」目標線を決定するためのばねの「荷重−変位」特性は、1本ずつ測定する必要はなく、予め測定を行った数本の実測値に基づいて決定することもできる。あるいは、設計図面(設計値)に基づいて決定することもできる。予め測定を行った数本の実測値や、設計図面に基づいて「荷重−変位」特性を決定することで、ばねに作用する荷重と変位を変化させる前に「荷重−変位」目標線を得ることができる。
【0007】
上記の方法において、所望のばね特性を、ばねの「取付高さ」と、その「取付高さ」に圧縮した時に発生するばねの「取付荷重」とする場合には、第1工程は、下記の第1,第2,第3ステップを実行することが好ましい。第1ステップでは、ばねの全高が予め設定された第1設定高さとなるまでばねを圧縮する。第2ステップでは、第1ステップ後に、予め設定された第2設定高さとなるまでばねを伸長しながらばねの荷重と変位を測定して、ばねの「荷重−変位」特性を測定する。第3ステップでは、第2ステップ後に、「荷重−変位」実測線が「荷重−変位」目標線と交差するまで、ばねの荷重と変位を測定しながらばねに作用する荷重と変位を変化させる。
この構成によると、ばねを予め設定された第1設定高さとなるまで圧縮し、その後、予め設定された第2設定高さまでばねを伸長しながらばねの「荷重−変位」特性を測定する。このため、第1ステップ終了までに発生した圧縮による塑性変形がばねに生じた後に、ばねの「荷重−変位」特性が測定されることになる。したがって、ばねの「荷重−変位」特性が精度良く測定され、精度良くばね特性を修正することができる。
【0008】
上記の方法において、所望のばね特性を、ばねの「取付高さ」と、その「取付高さ」に圧縮した時に発生するばねの「取付荷重」とする場合には、第1工程では、ばねを予め設定された高さとなるまで圧縮した後に、「荷重−変位」実測線が「荷重−変位」目標線と交差するまでばねをクリープさせるようにしてもよい。
このような構成によると、ばねを変位させることなくばねに作用する荷重を変化させて、「荷重−変位」実測線を「荷重−変位」目標線に交差させることができる。
【0009】
上記の方法において、所望のばね特性を、ばねの「取付高さ」と、その「取付高さ」に圧縮した時に発生するばねの「取付荷重」とし、また、第1工程及び第2工程では、温間でばねに作用する荷重と変位を変化させる場合がある。かかる場合、「取付荷重」は、第1工程前又は第1工程中に測定したばねの温度に基づいて修正されることが好ましい。
ばねの温度が変化すると、それに応じてばねに発生する荷重も変化する。このため、第1工程及び第2工程を温間で行う場合には、ばねの温度に応じて目標とする「取付荷重(すなわち、ばねを「取付高さ」に圧縮した時にばねに発生する荷重)」を修正することで、ばねに所望のばね特性を付与することができる。また、実測した荷重やばね定数を常温に換算しながら修正することでも、ばねに所望のばね特性を付与することができる。
【0010】
また、本願は、ばねに所望のばね特性が得られるように修正する装置を提供する。この装置は、所望のばね特性の情報を入力する入力手段と、ばねに任意の変位と荷重を生じさせる変位荷重付与手段と、変位荷重付与手段により付与されるばねの変位と荷重を測定する変位荷重測定手段と、入力手段から入力される所望のばね特性の情報と、変位荷重測定手段により測定されるばねの変位と荷重に基づいて、変位荷重付与手段を制御する制御手段と、を有している。制御手段は、第1工程と第2工程を実行する。第1工程は、変位荷重測定手段により測定される荷重と変位から得られる「荷重−変位」実測線が、ばねの「荷重−変位」特性と入力された所望のばね特性とに基づいて決定される「荷重−変位」目標線に交差するまで、変位荷重付与手段によりばねに作用する荷重と変位を変化させる。第2工程は、第1工程後に行われ、「荷重−変位」目標線に沿って荷重が減少するように、変位荷重付与手段によりばねに作用する変位を変化させる。この装置によれば、本願に係るばね特性修正方法を好適に実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係るばね特性修正装置(以下、単に修正装置という)について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る修正装置2は、コイルばねの形状に成形されたばねを、所望のばね特性となるように修正する装置として用いられる。
【0013】
図1に示すように、修正装置2は、第1基体10と、第2基体30とを備えている。第1基体10は、第2基体30に対して間隔を空けて配置されている。第1基体10には処理対象となるばね4の一端を保持する第1冶具28が配設され、第2基体30には処理対象となるばね4の他端を保持する第2冶具32が配設される。
【0014】
第1基体10は、シリンダ機構20と、シリンダ機構20の位置を調整する位置調整機構18を備えている。シリンダ機構20は、シリンダ24と、このシリンダ24によって駆動される支持軸26を備えている。支持軸26の先端には、第1治具28が取付けられている。第1治具28は、処理対象となるばね4の一端(
図1の左端)を保持する。シリンダ24内に作動流体を供給することで、支持軸26が軸線方向に進退動し、支持軸26が伸長した状態と収縮した状態とに切替わる。後述するように、ばね4にセッチング処理を実施する際には、シリンダ機構20は支持軸26を伸長した状態とし、ばね4から作用する力をシリンダ24内の作動流体の圧力で受ける。シリンダ機構20の位置は、位置調整機構18によって制御されるようになっている。なお、シリンダ機構20には、例えば、油圧シリンダを用いることができる。シリンダ機構20には、図示しないブレーキ機構が備えられており、このブレーキ機構により、意図しない支持軸26の伸長及び収縮を防止することができる。
【0015】
位置調整機構18は、ガイド22と、スライダ23と、ネジ軸16と、電磁ブレーキ14と、ステッピングモータ12を有している。ステッピングモータ12は、第1基体10の端辺(すなわち、第2基体30側とは反対側の端辺)に固定されている。ステッピングモータ12の出力軸には、ネジ軸16が固定されている。このため、ステッピングモータ12が回転すると、ネジ軸16も回転する。ネジ軸16は、スライダ23のネジ孔(図示されていない)に螺合している。スライダ23上には、シリンダ機構20が固定されている。スライダ23は、第1基体10の表面に設けられたガイド22にスライド可能に支持されている。ガイド22は、第1基体10の表面をばねの圧縮方向に伸びている。このため、ステッピングモータ12が回転してネジ軸16が回転すると、ネジ軸16に螺合するスライダ23がネジ軸16の軸線方向(すなわち、ばねの圧縮方向)にスライド移動する。これによって、スライダ23上のシリンダ機構20もばねの圧縮方向にスライド移動する。シリンダ機構20が軸線方向にスライド移動することで、支持軸26と第1治具28も軸線方向にスライド移動する。なお、スライダ23の位置は、ステッピングモータ12の回転角度を制御することで調整することができる。
【0016】
また、ネジ軸16には、電磁ブレーキ14が取付けられている。電磁ブレーキ14は、ステッピングモータ12の近傍に配置され、ネジ軸16にブレーキをかけてその回転を停止させる。例えば、電磁ブレーキ14は、ネジ軸16に摩擦力を作用させて、ネジ軸16の回転を止める装置とすることができる。電磁ブレーキ14によりネジ軸16の回転を停止することで、意図しないスライダ23の移動が防止される。
【0017】
第2基体30には、第2治具32が移動不能に取付けられている。第2治具32は、第1冶具28に対向しており、処理対象となるばね4の他端(
図1の右端)を保持する。すなわち、第1冶具28と第2冶具32によってばね4が保持される。また、第2治具32には荷重センサ34が備えられている。荷重センサ34は、ばね4から第2治具32に受ける荷重を検出する。荷重センサ34で検出された荷重は、後述する制御装置40に入力される。
【0018】
修正装置2は、制御装置40と入力装置50を備えている。制御装置40は、ステッピングモータ12,電磁ブレーキ14,荷重センサ34,シリンダ機構20に接続されており、それらの駆動を制御している。すなわち、制御装置40は、ステッピングモータ12を駆動することでスライダ23をガイド22に沿って移動させる。制御装置40は、ステッピングモータ12のエンコーダからの信号によってスライダ23の位置を算出する。制御装置40が算出したスライダ23の位置に基づいてステッピングモータ12を駆動することで、スライダ23は所望の位置に位置決めされる。また、制御装置40は、電磁ブレーキ14をオン・オフ動作させることで、ネジ軸16を回転可能な状態と、回転不能な状態とに切替える。また、制御装置40は、シリンダ機構20を駆動することで、支持軸26を伸長した状態と収縮した状態に切替えることができる。支持軸26のシリンダ24に対する位置(支持軸26の伸長長さ)は、図示しないセンサによって検出され、制御装置40に入力されるようになっている。上述した説明から明らかなように、制御装置40は、スライダ23の位置と支持軸26の位置から第1治具28の位置を算出することができ、この位置からばね4の圧縮量(変位)を算出するとこができる。
【0019】
さらに、制御装置40には入力装置50が接続されている。入力装置50は、例えば、ばねの狙い高さ(取付高さ)と狙い荷重(取付荷重)及び/又は設計図面から計算される特性値(例えば、ばね定数)を入力することができるようになっている。制御装置40は、入力装置50から入力された情報に基づいて、ばね4に所望とするばね特性を与えるための「荷重―変位」目標線を取得することができる。
【0020】
なお、
図1の修正装置2は、3個のばねを同時にセッチング処理できるようにしたものであるが、修正装置2により同時に処理するばねの個数に制限はなく、1個,2個、又は4個以上であってもよい。また、
図1に示されるばね4は、等ピッチコイルばねであるが、修正装置2で修正できるばねは、等ピッチコイルばねに限らず、その他のばね、例えば、2段ピッチコイルばね等の不等ピッチコイルばねにも用いることができる。また、圧縮変形をねじり変形に、測定する荷重をトルクに置き換えれば、渦巻きばねにも用いることができる。さらに、第1治具28と第2治具32の間の距離を取得するために、第1治具28と第2治具32の距離を検出する検出装置を別に設けてもよい。
【0021】
次に、修正装置2を用いてセッチング処理を行う際の作用と効果を、
図2〜8を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0022】
図2は、修正装置2の制御装置40が実行する、実施例1に係るセッチング処理の手順を示すフローチャートである。また、
図3は、実施例1のセッチング処理におけるばねの荷重と変位の変化を示している。まず、
図2に示すように、制御装置40は、ステッピングモータ12とシリンダ機構20を駆動して、第1治具28と第2治具32に挟まれるようにばね4をセットする。具体的には、制御装置40は、シリンダ機構20及びステッピングモータ12を駆動して、ばね4が第1治具28と第2治具32に保持されるように、第1治具28を圧縮方向にスライド移動させる。ばね4がセットされると、制御装置40はスライダ23の位置及び支持軸26の位置を算出する。これによって、第1冶具28の位置(
図1のばねの左端)が特定され、ばね4の自由長(無負荷状態のばね高さ)が算出される。
【0023】
次いで、オペレータは、入力装置50から、ばねの狙い高さ(取付高さ)と狙い荷重(取付荷重)の情報を入力し(S4)、さらに、設計図面から計算されるばね定数の情報を入力する(S6)。S8に進むと、制御装置40は、S4で入力したばねの狙い高さと狙い荷重の情報と、S6で入力したばね定数の情報とに基づいて「荷重―変位」目標線を決定する。すなわち、
図3に示すように、「荷重―変位」目標線は、S4で入力された狙い高さと狙い荷重の点を通過する直線であって、その傾きがS6で入力したばね定数となる直線である。このため、制御装置40は、「荷重―変位」目標線を表す一次関数(F=k・x+h(F:荷重,k:ばね定数,x:圧縮方向の変位,h:定数)を決定する。
【0024】
次いで、S10に示すように、制御装置40は、ステッピングモータ12及びシリンダ機構20を駆動して第1治具28を圧縮方向にスライド移動させ、第1治具28と第2治具32との距離を縮め、ばね4を圧縮する。次いで、S12に示すように、制御装置40は、ステッピングモータ12の駆動量と支持軸26の位置から、ばね4の高さの変位(圧縮量)を算出し、荷重センサ34からばね4に作用する荷重を取得する。すなわち、制御装置40は、ステッピングモータ12の駆動量と支持軸26の位置から第1冶具28の位置を計算し、ばね4のばね高さ(全高)を算出する。ステップS2でばね4の自由長が算出されているため、制御装置40は、その自由長とばね4の現在のばね高さからばね4の圧縮量を算出する。そして、ばね4の圧縮量とばね4に作用する荷重が分かると、ばね4の「荷重−変位」実測線が取得される。なお、取得された「荷重−変位」実測線は、
図3に示すように、ステップS12で測定される実測データを結んだ曲線となる。
【0025】
S14に進むと、制御装置40は、ステップS12で測定された測定値から得られた「荷重−変位」実測線が、ステップS8で決定した「荷重―変位」目標線と交差するか否かを判断する。「荷重−変位」実測線が「荷重―変位」目標線と交差しない場合(ステップS14でNO)は、制御装置40は、ステップS10に戻って、ステップS10からの処理を繰り返す。これによって、制御装置40は、「荷重−変位」実測線が「荷重―変位」目標線と交差するまでばね4を圧縮することとなる。すなわち、
図3のAの処理を実行する。
【0026】
「荷重−変位」実測線が「荷重―変位」目標線と交差する場合(ステップS14でYES)は、制御装置40は、電磁ブレーキ14を駆動すると共にシリンダ機構20を停止して、ばね4の圧縮を停止する(S16)。さらに、S18に示すように、制御装置40は、電磁ブレーキ14の駆動を解除してステッピングモータ12を駆動すると共にシリンダ機構20を駆動して第1治具28を伸長方向(圧縮方向の反対方向)にスライド移動させ、ばねに作用する荷重が「荷重―変位」目標線に沿って無負荷状態となるまでばね4を伸長させる。すなわち、
図3のBの処理を実行する。これにより、所望のばね特性(「荷重―変位」目標線に相当する特性)を有するばね4が得られる。
【0027】
上記のように実施例1では、狙い高さ(取付高さ)と狙い荷重(取付荷重)、設計図面から計算されるばね定数に基づいて、「荷重−変位」目標線を算出し、上記の処理を行うことで、狙いとするばね特性を有するようにばねを修正することができる。特に、実施例1では、荷重と変位を実測しながらばねを圧縮することで「荷重−変位」実測線を取得し、その「荷重−変位」実測線が「荷重−変位」目標線と交差するか否かによって、ばね4の圧縮処理を停止するタイミングを決定する。このため、処理対象となるばね4が、弾性域だけでなく塑性域においてもその特性にバラツキが生じていたとしても、そのバラツキを考慮して圧縮処理を停止するタイミングが決定される。このため、ばね4のばね特性を精度良く修正することができる。
【0028】
なお、実施例1では、設計図面から計算されるばね定数に基づいて「荷重−変位」目標線を算出したが、測定した荷重と変位に基づいてばね定数を算出するようにしてもよい。例えば、圧縮を開始した初期に測定される測定値(圧縮量,ばね荷重)に基づいてばね定数を算出し、そのばね定数に基づいて「荷重−変位」目標線を算出するようにしてもよい。なお、測定値からばね定数を算出する際は、複数の測定値に基づいてばね定数を算出することが好ましい。これによって、精度良くばね定数を算出することができる。
【実施例2】
【0029】
図4a,
図4b及び
図5は、実施例2のセッチング処理の手順と、そのセッチング処理時の「荷重−変位」線図を示している。なお、実施例2のセッチング処理は、上述した実施例1のセッチング処理とほぼ同様の手順で行われるが、「荷重−変位」目標線を取得する手順が異なる。このため、実施例1と同一の手順となるステップについては詳細な説明を省略し、異なるステップを詳細に説明する。
【0030】
実施例2でも、
図2のステップS2,4と同様のステップを実行し、次いで、
図4aのステップS20に進む。ステップS20に進むと、オペレータは、入力装置50から、第1設定高さと第2設定高さの情報を入力する。次いで、ステップS22に進むと、制御装置40は、ステッピングモータ12とシリンダ機構20を駆動して、第1治具28と第2治具32の間にセットされたばね4を圧縮する。次いで、制御装置40は、ステッピングモータ12とシリンダ機構20の駆動量からばね4の高さの変位(圧縮量)を算出し、荷重センサ34の出力からばね4に作用する荷重を測定する(S24)。次いで、制御装置40は、ステップS24で測定した圧縮量からばね4が第1設定高さとなったか否かを判定する(S26)。第1設定高さは、ばね4の塑性変形代に応じて適宜決定することができる。ばね4の塑性変形代が小さい場合には、第1設定高さをばねの狙い高さ(取付高さ)よりも高くすることができる。一方、ばね4の塑性変形代が大きい場合には、第1設定高さをばねの狙い高さ(取付高さ)よりも低くすることができる。第1設定高さは、ばね4の塑性変形量のバラツキを考慮して決定することができる。具体的な手順としては、例えば、ばね4の荷重と変位を実測することで「荷重−変位」実測線を取得し、その「荷重−変位」実測線に基づいて第1設定高さを決定することができる。ステップS24で測定した圧縮量からばね4が第1設定高さとなっていない場合(ステップS26でNO)は、制御装置40は、ステップS22に戻って、ステップS22からの処理を繰り返す。これによって、ばね4は、ばね4が第1設定高さとなるまで圧縮が行われる。すなわち、
図5のAの処理を実行する。
【0031】
ステップS24で測定した圧縮量からばね4が第1設定高さとなる場合(ステップS26でYES)は、制御装置40は、圧縮を停止し(S28)、ばねの伸長を行う(S30)。すなわち、制御装置40は、電磁ブレーキ14を駆動すると共にシリンダ機構20の駆動を停止してばね4の圧縮を停止する。次いで、電磁ブレーキ14の駆動を解除し、ステッピングモータ12とシリンダ機構20を駆動して第1治具28を伸長方向にスライド移動させ、ばね4を伸長させる。この際、制御装置40は、ステッピングモータ12とシリンダ機構20の駆動量からばね4の高さ(圧縮量)を算出し、荷重センサ34の出力からばね4に作用する荷重を測定し、これらの数値からばね定数を算出する(S32)。なお、ばね定数を算出する際は、複数の測定値(圧縮量,荷重値)に基づいて算出することが好ましい。測定値のばらつきの影響を小さくできるためである。ばね定数が算出されると、上述した実施例1と同様に、「荷重−変位」目標線を算出する。なお、
図5では、このばね定数を算出するための伸長処理が、Bの処理に相当する。
【0032】
ステップS33で「荷重−変位」目標線が算出されると、制御装置40は、ステップS32で測定した圧縮量からばね4が第2設定高さまで伸長されたか否かを判定する(S34)。第2設定高さは、ステップS26の第1設定高さに応じて適宜決定することができる。例えば、第2設定高さは、ステップS32のばね定数の算出が精度良くできるだけの測定値が得られるように決定することができる。ステップS32で測定した圧縮量からばね4が第2設定高さとなっていない場合(ステップS34でNO)は、制御装置40は、ステップS30に戻って、ステップS30からの処理を繰り返す。これによって、ばね4は、ばね4が第2設定高さとなるまで伸長が行われる。ステップS32で測定した圧縮量からばね4が第2設定高さとなっている場合(ステップS34でYES)は、制御装置40は、電磁ブレーキ14を駆動すると共にシリンダ機構20の駆動を停止してばね4の伸長を停止する(S35)。次いで、制御装置40は、
図4bのステップS36〜S40の処理を実行する。このステップS36〜S40は、実施例1のステップS10〜S14に相当する。これによって、「荷重−変位」実測線が「荷重―変位」目標線と交差するまでばね4が圧縮される。すなわち、
図5のCの処理が実行される。「荷重−変位」実測線が「荷重―変位」目標線と交差すると、実施例1のステップS16,18が実行され、ばねに作用する荷重が「荷重―変位」目標線に沿って無負荷状態となるまでばね4は伸長する(
図5のDの処理)。
【0033】
上記のように実施例2のセッチング処理では、ばねを圧縮してから伸長してばね定数を測定し、その測定したばね定数から「荷重−変位」目標線を算出する。測定したばね定数に基づいて「荷重−変位」目標線を算出するため、ばね4のばね定数にバラツキが生じても、そのバラツキを考慮して「荷重−変位」目標線が算出される。このため、ばね4のばね特性を精度良く修正することができる。特に、実施例2では、ばね4を圧縮してから伸長し、その伸長時の測定値を用いてばね定数を算出する。このため、ばね4の塑性域における塑性変形による影響が排除され、ばね定数を精度良く算出することができる。これによっても、ばね4のばね特性を精度良く修正することができる。
【実施例3】
【0034】
図6a,
図6b及び
図7は、実施例3のセッチング処理の手順と、セッチング処理時の「荷重−変位」線図を示している。なお、実施例3は、実施例2とほぼ同様の手順で行われるが、「荷重―変位」実測線と「荷重―変位」目標線とが交差する際のばね4に対する処理が異なる。このため、実施例2と同一の手順となるステップについては詳細な説明を省略し、異なるステップを詳細に説明する。
【0035】
実施例3では、まず、
図2のステップS2,S4を実行し、次いで、
図6aのステップS20〜35を実行する(
図7のA→Bの処理)。これによって、制御装置40は、「荷重―変位」目標線を取得する。次いで、制御装置40は、
図6bのS50〜54の処理を実行し、これによって、ばね4は狙い高さまで圧縮される(
図7のCの処理)。ばね4が狙い高さまで圧縮されると(ステップS54でYES)、制御装置40は圧縮を停止する(S56)。この際、制御装置40は、電磁ブレーキ14をオンした状態とすると共にシリンダ機構20の駆動を停止して、スライダ23及び第1冶具28が移動しない状態とする。これによって、ばね4の圧縮量は変化せず、固定された状態となる。この状態で放置することで、ばね4にクリープが発生し、ばね4が発生する反力が徐々に低下することとなる。
【0036】
ステップS58では、制御装置40は、荷重センサ34からの検出信号から、ばね4の反力を測定する。次いで、ステップS58で測定した反力から得られる「荷重―変位」実測線が「荷重―変位」目標線と交差したか否かが判定される(S60)。「荷重―変位」実測線が「荷重―変位」目標線と交差していない場合(ステップS60でNO)は、ステップS58からの処理が繰り返される。したがって、「荷重―変位」実測線が「荷重―変位」目標線と交差するまで、ばね4のクリープが進行する(
図7のDの処理)。「荷重―変位」実測線が「荷重―変位」目標線と交差すると(ステップS60でYES)は、ステップS62が実行され、ばねに作用する荷重が「荷重―変位」目標線に沿って無負荷状態となるまでばね4は伸長する(
図7のEの処理)。
【0037】
上記のように実施例3のセッチング処理では、ばね4を圧縮した後にばね高さを固定し、「荷重―変位」実測線が「荷重―変位」目標線と交差するまでクリープによってばねを変形させる。このため、修正装置2の機械振動を防ぐことができ、より正確に荷重値を測定することができる。これによって、ばね4のばね特性を精度良く修正することができる。
【0038】
以上、本発明のいくつかの具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
例えば、上述した各実施例では、ばねを常温でセッチング処理する例であったが、セッチング処理を温間で実施するようにしてもよい。セッチング処理の手順自体は、上述した実施例1〜3のいずれの手順を用いてもよい。ばねを温間でセッチング処理することで、ばねがクリープ変形し易くなるため、短時間でセッチング処理を行うことができる。ただし、ばねのばね定数(ばね鋼の横弾性係数)は、ばねの温度によって変化する。通常、狙い荷重(取付荷重)は使用時の温度(常温)で設定される。このため、「荷重―変位」目標線を決定するための狙い荷重については、セッチング時のばねの温度で修正することが好ましい。例えば、温度に対する横弾性係数の変化率α(%)を実験などで予め推定しておき、セッチング時の温度が常温よりT℃高く、使用時の狙い荷重がF1である場合は、「荷重―変位」目標線を決定するための狙い荷重F2は(1−T×α/100)×F1とする。狙い荷重をセッチング時のばね温度で修正することで、ばね特性を精度良く修正することができる。また、ばね定数として設計値を用いる場合は、「荷重―変位」目標線を決定するためのばね定数も、セッチング時のばね温度で修正することが好ましい。これによって、「荷重―変位」目標線を精度良く決定することができる。なお、ばねの温度の測定は、ばねにセッチング処理を行う前、又は、セッチング処理中に測定すればよい。また、ばねの温度の測定には、例えば、サーモグラフ等を用いることができる。
【0039】
なお、セッチング時のばね温度を高温にしてやると、ばねを狙い高さ(取付高さ)を越えて圧縮しなくても、「荷重―変位」実測線が「荷重―変位」目標線と交差する場合がある。すなわち、ばねのクリープが進行し、ばねが狙い高さとなる前に、「荷重―変位」実測線が「荷重―変位」目標線と交差する。このため、セッチング時のばね温度を高温にすることで、修正装置2に求められる機械的強度や、ばねを圧縮するストローク量を低く抑えることができる。
【0040】
また、上述した各実施例は、等ピッチコイルばねのばね特性を修正した例であったが、本願の技術は、等ピッチコイルばねに限られず、種々のばねのばね特性の修正に用いることができる。例えば、本願のセッチング方法は、2段ピッチコイルばねのばね特性の修正にも用いることができる。
図8は、本願のセッチング方法によって2段ピッチコイルばねのばね特性を修正したときの「荷重−変位」線図を示している。なお、
図8に示す例では、実施例2のセッチング処理と同様のセッチング処理を実行している。
【0041】
2段ピッチコイルばねは、ばね素線間のピッチが2段階に変化している。このため、圧縮初期では、ばね素線全体がばねとして機能し、そのばね定数は小さい。一方、圧縮が進むと、狭いピッチの部分のばね素線同士が当接し、ばねとして機能する部分が短くなる。このため、ばね定数が大きくなる。したがって、「荷重―変位」目標線を取得するためには、2段階のばね定数を側定する必要がある。そこで、
図8に示すように、まず、「荷重−変位」実測線を取得しながら、ばね定数が2段階で変化する第1設定高さまでばねを圧縮する(
図8のAの処理)。第1設定高さは、ばね定数が2段階に変化するように、ばねの設計諸元から決定することができる。次いで、ばねを伸長しながら、ばね定数と変曲点を測定する(
図8のB,Cの処理)。ここでいう「変曲点」とは、ばね定数が変化する点を意味する。
図8に示す例では、Bの処理により得られる「荷重−変位」実測線と、Cの処理により得られる「荷重−変位」実測線との交点を意味する。この際、ばね定数が2つあるため、2つのばね定数が測定できるまでばねを伸長する。2つのばね定数と変曲点が測定されると、それらばね定数と変曲点に基づいて「荷重―変位」目標線を算出する。
図8の破線に示すように、「荷重―変位」目標線は2段階に折れ曲がっている。「荷重―変位」目標線が算出されると、上述した各実施例と同様に、「荷重−変位」実測線が「荷重−変位」目標線と交差するまで、再びばねを圧縮する(
図8のDの処理)。「荷重−変位」実測線が「荷重−変位」目標線と交差すると、ばねの圧縮を停止し、ばねを「荷重―変位」目標線に沿って伸長する(
図8のEの処理)。このような処理によって、2段ピッチコイルばねのばね特性を修正することができる。
【0042】
上述したことから明らかなように、処理対象のばねが非線形ばねであれば、「荷重−変位」目標線を非線形として、セッチング処理を行えばよい。この場合でも、「荷重−変位」実測線は、測定した荷重と変位から取得するため、ばね特性を精度よく修正することができる。
【0043】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。