特許第5756426号(P5756426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756426
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】シートベルト装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/24 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   B60R22/24
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-71548(P2012-71548)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-203123(P2013-203123A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 有貴
(72)【発明者】
【氏名】月ヶ瀬 貴弥
【審査官】 柳元 八大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−196513(JP,A)
【文献】 特開2003−267184(JP,A)
【文献】 特開2002−087206(JP,A)
【文献】 特開2010−047064(JP,A)
【文献】 特開2011−143738(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02701906(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が下面に形成された箱形状を有し、ベルトの端に取り付けられて座席側の第1のバックルと接続する第1のタング、及び前記ベルトに対して移動可能に取り付けられて前記座席側の第2のバックルと接続する第2のタングが前記開口から挿入される本体と、
前記第1のタング及び前記第2のタングの挿入方向に先細る形状を有して前記本体の前面部から突出して形成され、前記開口が形成された面に向かい合う面の前記挿入方向に沿う両側面の前記向かい合う面側が互いに近づくように傾斜し前記開口から挿入された前記第1のタング及び前記第2のタングを前記向かい合う面の方向に案内する第1の斜面及び第2の斜面が形成された収納部と、
を有する収納ケースを備えたシートベルト装置。
【請求項2】
前記向かい合う面が前記収納部の先端部に向かうまでに折れ曲がって角度が変わる折曲部を有し、
前記収納部に収納された、前記第2のタングの前記第2のバックルと接続するタングプレートの先端部における前記第1の斜面と前記第2の斜面の前記折曲部における間隔は、前記タングプレートの前記先端部の幅よりも短い請求項1に記載のシートベルト装置。
【請求項3】
前記収納部に収納された前記第2のタングの前記タングプレートは、前記ベルトが前記第1のタングの第1のベルト挿入孔に通され折り返された部分である折返部と、前記第1の斜面及び前記第2の斜面と、により挟まれて保持される請求項1又は2に記載のシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、シートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、車両の天井部に配置されたリトラクタに巻き取られるシートベルトと、シートベルトの先端に取り付けられ、座席の左右に配置された一方のバックルと接続する固定用タングと、座席の他方のバックルと接続する拘束用タングと、固定用タング及び拘束用タングを収納するタングホルダと、を備えた車両用シートベルト装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この車両用シートベルト装置は、固定用タング及び拘束用タングがタングホルダに収納された状態において、固定用タングが、タングホルダ内の天井部側の壁面に接触し、拘束用タングがバックルと接続される金具部が固定用タングの下方に重なるように配置される。
【0004】
また車両用シートベルト装置は、拘束用タングにリトラクタの巻き取り力が作用した際に、拘束用タングとタングホルダの開口部との接触部分を支点として金具部に固定用タング側への力が働き、固定用タングを金具部と天井部側の壁面との間に挟み込んだ状態で保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−47064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の車両用シートベルト装置は、固定用タング及び拘束用タングの収納位置がずれた状態で収納される可能性がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、収納の際の位置ずれ、及び車両の振動が伝達することによる音の発生を抑制するシートベルト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、開口が下面に形成された箱形状を有し、ベルトの端に取り付けられて座席側の第1のバックルと接続する第1のタング、及びベルトに対して移動可能に取り付けられて座席側の第2のバックルと接続する第2のタングが開口から挿入される本体と、第1のタング及び第2のタングの挿入方向に先細る形状を有して本体の前面部から突出して形成され、開口が形成された面に向かい合う面の挿入方向に沿う両側面の向かい合う面側が互いに近づくように傾斜し開口から挿入された第1のタング及び第2のタングを向かい合う面の方向に案内する第1の斜面及び第2の斜面が形成された収納部と、を有する収納ケースを備えたシートベルト装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、収納の際の位置ずれ、及び車両の振動が伝達することによる音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は、実施の形態に係るシートベルト装置の上面図であり、(b)は、シートベルト装置の側面図である。
図2図2(a)は、実施の形態に係るシートベルト装置が配置された車両内の概略図であり、(b)は、シートベルト装置による乗員の拘束の様子を示す概略図である。
図3図3(a)は、実施の形態に係る下ケースが取り付けられた収納ケースの上面図であり、(b)は、左側面図であり、(c)は、下面図であり、(d)は、正面図である。
図4図4(a)は、実施の形態に係る収納ケースの上面図であり、(b)は、図4(a)に示すIV(b)-IV(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(c)は、収納ケースの下面図である。
図5図5(a)は、実施の形態に係る下ケースの上面図であり、(b)は、図5(a)に示すV(b)-V(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(c)は、図5(a)に示すV(c)-V(c)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図である。
図6図6は、実施の形態に係る下ケースが取り付けられた収納ケースの部分断面図であり、(b)は、図6(a)に示すVI(b)-VI(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(c)は、収納ケースの先端部の断面を拡大した断面図であり、(d)は、図6(b)に示すVI(d)-VI(d)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(e)は、図6(a)に示すVI(e)-VI(e)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図である。
図7図7(a)は、実施の形態に係るシートベルト装置の図6(a)に示すVI(b)-VI(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(b)は、図7(a)に示すVII(b)-VII(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(c)は、図7(b)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係るシートベルト装置は、開口が形成された箱形状を有し、ベルトの端に取り付けられて座席側の第1のバックルと接続する第1のタング、及びベルトに対して移動可能に取り付けられて座席側の第2のバックルと接続する第2のタングが開口から挿入される本体と、第1のタング及び第2のタングの挿入方向に先細る形状を有して本体から突出して形成され、開口が形成された面に向かい合う面の両側面に、第1のタング及び第2のタングの挿入を案内するように傾斜する第1の斜面及び第2の斜面が形成された収納部と、を有する収納ケースを備える。
【0012】
[実施の形態]
(シートベルト装置1の構成)
図1(a)は、実施の形態に係るシートベルト装置の上面図であり、(b)は、シートベルト装置の側面図である。図2(a)は、実施の形態に係るシートベルト装置が配置された車両内の概略図であり、(b)は、シートベルト装置による乗員の拘束の様子を示す概略図である。なお、実施の形態に係る各図において、部品と部品との比率は、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
シートベルト装置1は、図1(a)及び(b)に示すように、第1のタング3及び第2のタング4を有している。またシートベルト装置1は、この第1のタング3及び第2のタング4を収納するように構成されている。
【0014】
シートベルト装置1は、例えば、図2(a)及び(b)に示すように、車両9の後部座席90の後方で、かつルーフパネル94と天井パネル95の間に配置されている。シートベルト装置1は、一例として、後部座席90の中央に位置する座席としての中央座席91用のシートベルト装置である。この天井パネル95には、取出開口950が形成されている。この取出開口950は、シートベルト装置1の後述する挿入開口(挿入開口66)と通じており、ウェビング2及び第2のタング4が露出している。
【0015】
このシートベルト装置1は、主に、後述する開口(開口506)が形成された箱形状を有し、ベルトとしてのウェビング2の端に取り付けられて座席としての中央座席91側の第1のバックル92と接続する第1のタング3、及びウェビング2に対して移動可能に取り付けられて中央座席91側の第2のバックル93と接続する第2のタング4が開口から挿入される本体50と、第1のタング3及び第2のタング4の後述する挿入方向(矢印A方向)に先細る形状を有して本体50から突出して形成され、後述する開口が形成された面(下面539)に向かい合う面(裏面531)の両側面に、第1のタング3及び第2のタング4の挿入を案内するように傾斜する後述する第1の斜面(第1の斜面534)及び第2の斜面(第2の斜面535)が形成された収納部52と、を有する収納ケース5を備えて概略構成されている。
【0016】
またシートベルト装置1は、図1(a)及び(b)に示すように、収納ケース5に取り付けられる下ケース6及びブラケット7と、ブラケット7に取り付けられるリトラクタ8と、を備えて概略構成されている。
【0017】
(ウェビング2の構成)
ウェビング2は、一例として、ポリエステル等の合成樹脂を用いて帯状に形成されている。リトラクタ8から引き出されたウェビング2は、例えば、リトラクタ8から巻き取られる方向の力を受けている。またウェビング2は、ブラケット7の挿入孔70、収納ケース5の挿入孔504aに挿入され、挿入開口から引き出される。ウェビング2の収納ケース5側には、第1のタング3及び第2のタング4が取り付けられている。
【0018】
リトラクタ8に収納されたウェビング2は、第1のタング3の第1の把持部としての把持部30に形成された第1のベルト挿入孔としての挿入孔32に通され折り返されて一体とされ、第2のタング4の第2の把持部としての把持部40の第2のベルト挿入孔としての挿入孔42の厚み方向の幅よりも厚く、第2のタング4の第1のタング3側の移動を規制する移動規制部としての縫製部22を有する。
【0019】
(第1のタング3と第2のタング4の構成)
第1のタング3は、図2(a)に示すように、中央座席91に座った乗員の右側に位置する第1のバックル92に接続される。
【0020】
第1のタング3は、図1(a)に示すように、把持部30と、タングプレート34と、を備えて概略構成されている。
【0021】
把持部30は、例えば、タングプレート34の長手方向と交差する方向に細長い板形状に形成されている。把持部30は、インサート成形によりタングプレート34と一体とされている。把持部30は、一例として、ポリアミド等の合成樹脂材料を用いて形成される。
【0022】
また把持部30は、ウェビング2が挿入される挿入孔32を有する。この挿入孔32に挿入されたウェビング2は、図1(a)及び(b)に示すように、挿入されて折り返された後、折り返して重なった部分が縫製される。この縫製された部分である縫製部22の厚みTは、例えば、図2(b)に示すように、およそウェビング2の2倍の厚みになる。
【0023】
タングプレート34は、例えば、細長い板形状に形成されている。またタングプレート34は、一例として、炭素鋼等の合金材料を用いて形成されている。
【0024】
タングプレート34は、側面に凹部36が形成されている。第1のバックル92に設けられた突起が、この凹部36に引っかかることにより、第1のタング3と第1のバックル92とが接続する。
【0025】
第2のタング4は、例えば、中央座席91に座った乗員から見て、左側に位置する第2のバックル93に接続される。
【0026】
第2のタング4は、例えば、図1(a)に示すように、把持部40と、タングプレート44と、を備えて概略構成されている。
【0027】
把持部40は、例えば、タングプレート44の長手方向に交差する方向に細長い板形状に形成されている。把持部40は、インサート成形によりタングプレート44と一体とされている。把持部40は、一例として、ポリアミド等の合成樹脂材料を用いて形成される。
【0028】
また把持部40は、ウェビング2が挿入される挿入孔42を有する。この挿入孔42の厚み方向の幅dは、例えば、図1(b)に示すように、縫製部22の厚みTよりも狭くなっている。従って、第2のタング4は、この縫製部22よりも第1のタング3側に移動することができないように構成されている。つまり縫製部22は、第2のタング4の移動を規制している。
【0029】
タングプレート44は、例えば、細長い板形状に形成されている。またタングプレート44の先端部48は、例えば、図1(a)に示すように、中央に凹部が形成された形状、言い換えるなら、先が割れたような形状を有する。タングプレート44は、一例として、炭素鋼等の合金材料を用いて形成されている。
【0030】
タングプレート44は、開口46が形成されている。第2のバックル93に設けられた突起が、この開口46の中に入ることにより、第2のタング4と第2のバックル93とが接続する。
【0031】
第1のタング3及び第2のタング4は、リトラクタ8から引き出され、ブラケット7の挿入孔70、収納ケース5の挿入孔504aに挿入されたウェビング2に取り付けられる。第1のタング3及び第2のタング4は、例えば、図1(b)に示すように、収納ケース5の外側に引き出されるように構成されている。
【0032】
(収納ケース5の構成)
図3(a)は、実施の形態に係る下ケースが取り付けられた収納ケースの上面図であり、(b)は、左側面図であり、(c)は、下面図であり、(d)は、正面図である。図4(a)は、実施の形態に係る収納ケースの上面図であり、(b)は、図4(a)に示すIV(b)-IV(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(c)は、収納ケースの下面図である。なお、以下に記載する上下左右は、特に断らない限り、図3(d)に示す収納部52を正面とした上下左右を基準としている。
【0033】
収納ケース5は、例えば、ポリプロピレン系、ポリスチレン系、ポリエチレン系、ポリアミド系、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)等の合成樹脂材料を用いて、射出形成により形成される。本実施の形態では、収納ケース5は、一例として、ポリプロピレン(PP)を用いて形成される。収納ケース5の肉厚は、例えば、全体に渡ってほぼ同一である。
【0034】
収納ケース5は、例えば、図3(a)〜(d)、及び図4(a)〜(c)に示すように、本体50と、収納部52と、を備えて概略構成されている。
【0035】
この収納ケース5は、下面539に開口506が形成されている。この開口506は、例えば、図4(c)に示すように、本体50から収納部52の一部までの大きさを有している。
【0036】
収納ケース5の内部には、収納領域530が形成されている。この収納領域530には、ウェビング2、第1のタング3及び第2のタング4が収納される。
【0037】
本体50は、箱形状を有している。この本体50の右側面部501には、外側に向って突出する板形状の脚部501b及び脚部501cが形成されている。また本体50の左側面部502には、外側に向って突出する板形状の脚部502b及び脚部502cが形成されている。
【0038】
この脚部501b及び脚部502bは、例えば、それぞれが上面に爪を有し、後述する下ケース6のホルダの開口に嵌り込み、収納ケース5と下ケース6が一体となる。
【0039】
この本体50の上面部505には、ブラケット7が取り付けられる。ブラケット7が本体50に取り付けられると、本体50の後面部504に形成された挿入孔504aとブラケット7の挿入孔70とが対向する。
【0040】
収納部52は、本体50の前面部503から突出するように形成されている。収納部52の上面部520は、本体50の上面部505と繋がっている。
【0041】
収納部52は、右側面部522から突出する板形状の脚部501aを有する。また収納部52は、左側面部525から突出する板形状の脚部502aを有する。
【0042】
収納部52は、例えば、図4(a)〜(c)に示すように、先端部528方向に先細る形状を有する。さらに収納部52は、上面部520に向けてテーパーが形成されている。このテーパーの部分が、第1の斜面部524及び第2の斜面部527である。
【0043】
また本体50の前面部503から繋がる側面、つまり収納部52の右側面部522と左側面部525は、それぞれが先端部528に向かって折れ曲がっている。右側面部522の先端部528に向かって折れ曲がった側面は、第1の側面部523である。また左側面部525の先端部528に向かって折れ曲がった側面は、第2の側面部526である。
【0044】
右側面部522及び左側面部525の先端部528側の上部と、第1の側面部523及び第2の側面部526の上部は、上面部520及び上面先端部520bに向かって傾斜している。
【0045】
この右側面部522側の傾斜する部分が第1の斜面部524である。また左側面部525側の傾斜する部分は、第2の斜面部527である。
【0046】
第1の斜面部524の裏側の面は、例えば、図4(c)に示すように、第1の斜面534である。また第2の斜面部527の裏側の面は、例えば、図4(c)に示すように、第2の斜面535である。収納部52の先細った形状は、例えば、収納部52の対向する第1の斜面534及び第2の斜面535の法線ベクトルが、交差するような形状である。
【0047】
例えば、収納部が第1の斜面534及び第2の斜面535を持たず、側面のみが左右方向に先細る形状であった場合、法線ベクトルが左右、つまり2次元平面内で交差するのみであり、収納部52は、上下方向の位置決めを行うことはできない。
【0048】
しかし第1の斜面534及び第2の斜面535の法線ベクトルは、左右方向のみならず、上下方向の成分を有して交差する。従って収納部52は、第2のタング4の左右方向の位置決めのみならず、上下方向の位置決めを可能としている。
【0049】
収納部52は、収納部52の先端部528よりも開口506側に形成され、開口506が形成された下面539に向かい合う面が折れ曲がる折曲部520aを有する。この向かい合う面とは、例えば、図4(c)に示す裏面531である。裏面531は、本体50の上面部505、及び収納部52の上面部520の裏面に対応する。また上面部520の折曲部520aより先端部528側である上面先端部520bの裏面は、先端部裏面536が対応する。
【0050】
収納部52に収納された、第2のタング4の第2のバックル93と接続するタングプレート44の先端部48における第1の斜面534と第2の斜面535の間隔Wは、例えば、図4(c)に示すように、タングプレート44の先端部48の幅Wよりも短い。
【0051】
収納部52の先端部528における第1の斜面534と第2の斜面535の間隔Wは、例えば、図4(c)に示すように、第1のタング3の第1のバックル92と接続するタングプレート34の先端部38の幅Wよりも長い。
【0052】
本体50は、収納部52との境界に、利用者が把持する部分である第2のタング4の把持部40の先端部41が接触する右角部532a及び左角部533aを有する。
【0053】
具体的には、右側面部501の裏面側の右側面532と、収納部52と、の境界に右角部532aが形成されている。この右角部532aは、右側面部501と前面部503の境界に形成されている。また左側面部502の裏面側の左側面533と、収納部52と、の境界に左角部533aが形成されている。この左角部533aは、左側面部502と前面部503の境界に形成されている。
【0054】
(下ケース6の構成)
図5(a)は、実施の形態に係る下ケースの上面図であり、(b)は、図5(a)に示すV(b)-V(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(c)は、図5(a)に示すV(c)-V(c)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図である。
【0055】
下ケース6は、例えば、図5(a)〜(c)に示すように、板形状を有する。この下ケース6は、例えば、ポリプロピレン系、ポリスチレン系、ポリエチレン系、ポリアミド系、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)等の合成樹脂材料を用いて、射出形成により形成される。この下ケース6は、一例として、ポリプロピレン(PP)を用いて形成される。
【0056】
また下ケース6は、収納ケース5の開口506に取り付けられ、第1のタング3及び第2のタング4が挿入される挿入孔504aと、第2のタング4の挿入を案内する案内部67と、を有する。
【0057】
この挿入開口66は、収納ケース5の開口506の後部側、すなわち挿入孔504aが露出するように形成されている。
【0058】
また下ケース6の表面6aには、例えば、図5(a)に示すように、収納ケース5の脚部が挿入される構造を有するホルダ60〜65が形成されている。ホルダ60〜65は、例えば、表面6aから立ち上がり、さらに表面6aと平行となる方向に突出する形状を有することで、表面6aと突出した部分とで脚部を挟んで保持する構造を有する。
【0059】
ホルダ60には、脚部501aが挿入される。ホルダ61には、脚部501bが挿入される。ホルダ62には、脚部501cが挿入される。ホルダ63には、脚部502aが挿入される。ホルダ64には、脚部502bが挿入される。ホルダ65には、脚部502cが挿入される。この挿入により、下ケース6は、収納ケース5に取り付けられる。
【0060】
案内部67は、例えば、図5(a)に示すように、右案内部68と、左案内部69と、を備えて概略構成されている。
【0061】
右案内部68は、挿入された第2のタング4の把持部40の右側を案内する。また左案内部69は、第2のタング4の把持部40の左側を案内する。
【0062】
右案内部68は、例えば、図5(b)及び(c)に示すように、表面6aから突出して形成されている。また右案内部68は、頂部68bに向かって曲線的な形状を有する上面部68aと、上面部68aの頂点である頂部68bと、を備えて概略構成されている。
【0063】
左案内部69は、例えば、図5(b)及び(c)に示すように、表面6aから突出して形成されている。また左案内部69は、頂部69bに向かって曲線的な形状を有する上面部69aと、上面部69aの頂点である頂部69bと、を備えて概略構成されている。
【0064】
この右案内部68と左案内部69は、例えば、図5(a)に示すように、第2のタング4の把持部40の端部の形状に応じて配置されている。さらに右案内部68の接触部68c、及び左案内部69の接触部69cの形状が、第2のタング4の把持部40の後部43の形状に応じた形状となる。従って収納部52に収納された第2のタング4の把持部40は、この接触部68c及び接触部69cに接触する。
【0065】
(ブラケット7とリトラクタ8の構成)
ブラケット7は、一例として、鋼板をプレス加工して形成される。このブラケット7には、リトラクタ8が取り付けられている。
【0066】
リトラクタ8は、収納されたウェビング2の引き出し及び巻き取りが可能な巻取装置である。リトラクタ8は、ウェビング2を巻き取る方向の力を発生させている。従って引き出されたウェビング2には、巻き取る方向の力が付加される。
【0067】
(第1のタング3及び第2のタング4の保持について)
図6は、実施の形態に係る下ケースが取り付けられた収納ケースの部分断面図であり、(b)は、図6(a)に示すVI(b)-VI(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(c)は、収納ケースの先端部の断面を拡大した断面図であり、(d)は、図6(b)に示すVI(d)-VI(d)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(e)は、図6(a)に示すVI(e)-VI(e)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図である。
【0068】
第1のタング3及び第2のタング4は、図6(a)及び(b)に示すように、収納部52に収納された状態では、第1のタング3の上に第2のタング4が位置する。この状態にある場合、第1のタング3は、図6(b)及び(c)に示すように、収納部52が先細りの形状を有しているため、タングプレート34の先端部38が、上面部520の先端部528近傍の裏面である先端部裏面536と下面部521の裏面である下面部裏面538とに押し付けられて接触する。この押し付けは、折返部20のウェビング2が、挿入孔32のタングプレート34側に力を付加することで生じる。
【0069】
収納部52に収納された第2のタング4のタングプレート44は、第1のタング3の挿入孔32に通され折り返された部分である折返部20と、第1の斜面534及び第2の斜面535と、により保持される。
【0070】
具体的には、ウェビング2は、長手方向に変形し辛い。従って収納された第2のタング4のタングプレート44から収納部52の下面部裏面538までの間隔が、折返部20の厚みよりも小さい場所では、縫製部22が変形し難いこともあって、主に折返部20が変形する。折返部20は、縫製部22側よりも挿入孔32側の方が変形し易いので、把持部30を収納部52の先端部528方向に押すこととなる。従って第1のタング3のタングプレート34の先端部38が、先端部裏面536と下面部裏面538とに押し付けられて接触する。
【0071】
一方第2のタング4は、リトラクタ8によってウェビング2を巻き取る力である巻取力Fがウェビング2に付加されていることと、縫製部22が把持部40の挿入孔42を通らないことによって、把持部40が案内部67に押し付けられるので、把持部40の後部43を中心に回転する力Fを受ける。
【0072】
また先に挿入された第1のタング3の折返部20の上に、第2のタング4のタングプレート44が位置することで、折返部20からの弾性力Fが、タングプレート44に付加される。従って第2のタング4は、図6(d)に示すように、タングプレート44の先端部48が、第1の斜面534及び第2の斜面535に接触する。これは、タングプレート44の先端部48の幅Wが、収納部52の折曲部520aの間隔Wよりも長いからである。
【0073】
さらに第2のタング4は、図6(e)に示すように、回転する力F及び弾性力Fにより、把持部40の先端部41が右角部532a及び左角部533aの上部に押し付けられる。
【0074】
従って第2のタング4は、その先端部48が第1の斜面534及び第2の斜面535に接触すると共に、把持部40が右案内部68の接触部68c及び左案内部69の接触部69cに接触して収納ケース5に保持される。
【0075】
続いて以下に、第1のタング3及び第2のタング4の挿入について、各図を参照しながら説明する。
【0076】
(第1のタング3及び第2のタング4の挿入)
図7(a)は、実施の形態に係るシートベルト装置の図6(a)に示すVI(b)-VI(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(b)は、図7(a)に示すVII(b)-VII(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(c)は、図7(b)の部分拡大図である。図7(a)は、第2のタング4の挿入途中の壇面図であり、また第2のタング4の挿入を説明するため、第1のタング3の図示を省略している。
【0077】
第1のタング3及び第2のタング4は、図3(b)及び(c)に示すように、下ケース6の裏面6b側の挿入開口66から収納部52に向けて、矢印A方向から挿入される。
【0078】
まず第1のタング3は、収納部52の下面部裏面538と案内部67の間の空間に挿入され、続いて第2のタング4が挿入される。なおウェビング2は、リトラクタ8により巻き取られ、縫製部22が第2のタング4の挿入孔42に接触する状態であるものとする。
【0079】
第2のタング4がタングプレート44の先端部48から挿入開口66に挿入されると、例えば、図7(a)〜(c)に示すように、把持部40の先端部41の凸部40bが本体50の右側面532と裏面531の境界周辺に案内され、凸部40cが左側面533と裏面531の境界周辺に案内される。また把持部40の把持部裏面40dが右案内部68の上面部68a、及び左案内部69の上面部69aに案内される。なお凸部40b及び凸部40cは、例えば、利用者が持ち易いように把持部表面40aの中央周辺を凹ませることで形成される。
【0080】
例えば、第2のタング4が、矢印A方向から左方向にずれて挿入された場合、把持部40の先端部41の右側が、先に本体50の右角部532aに接触し、移動を規制されるので、挿入方向が矢印A方向となるように回転し、正しい挿入方向となる。そして第2のタング4は、凸部40bが右側面532と裏面531の境界周辺に案内され、凸部40cが左側面533と裏面531の境界周辺に案内され、正しい挿入方向で挿入される。
【0081】
第2のタング4は、把持部40の後部43を右案内部68の接触部68c、及び左案内部69の接触部69cに接触させるように下ケース6側に移動させられると、タングプレート44の先端部48が第1の斜面534及び第2の斜面535に案内される。続いてタングプレート44は、図6(d)に示すように、回転する力Fと弾性力Fにより裏面531に押し付けられる。従って把持部40が、右角部532a、左角部533a及び案内部67により保持されると共に、先端部38が第1の斜面534及び第2の斜面535に押し付けられ、第2のタング4が保持される。
【0082】
第1のタング3は、第2のタング4の挿入により、縫製部22の挿入方向の移動に伴って把持部30が収納部52の先端部528方向に押される。第2のタング4が案内部67に保持されるに伴って、第1のタング3のタングプレート34の先端部38が、図6(c)に示すように、先端部裏面536及び下面部裏面538に接触する。
【0083】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係るシートベルト装置1は、収納の際の位置ずれ、及び車両9の振動が伝達することによる音の発生を抑制することができる。具体的には、シートベルト装置1の収納ケース5の収納部52は、先端部528に向って第1の側面部523及び第2の側面部526が先細り、また上面先端部520a及び下面部521が先細る形状を有し、さらに第1の斜面534及び第2の斜面535が形成されている。この収納部52の形状により、シートベルト装置1は、第1のタング3及び第2のタング4の挿入を案内すると共に左右方向の押し込み量の差を抑制し、さらに上下方向の位置決めを可能としている。従ってシートベルト装置1は、側面に斜面が形成されていない場合と比べて、意図した収納の状態とは異なる状態で収納されてしまう斜め収納を抑制すると共に斜め収納によるがたつきに起因する音の発生を抑制することができる。
【0084】
シートベルト装置1は、収納部52が折曲部520aから先端部528に向けて上下方向に先細る形状を有しているので、第1のタング3の先端部38を接触させて、挿入の案内を行わせると共に上下方向のがたつきを抑制することができる。また第1のタング3のタングプレート34の左右方向にがたつきは、第1の斜面534及び第2の斜面535により抑制される。
【0085】
シートベルト装置1は、折曲部520aにおける第1の斜面534及び第2の斜面535の間隔Wが第2のタング4の先端部48の幅Wよりも短いため、第2のタング4の先端部48が、折曲部520a近傍の第1の斜面534及び第2の斜面535に接触するので、左右方向のがたつきを抑制することができる。またシートベルト装置1は、第2のタング4の先端部48に対応した位置に、裏面531の角度が変わる折曲部520aを有するので、第2のタング4を収納する位置に、容易に第2のタング4が案内される。
【0086】
シートベルト装置1は、下ケース6に形成された右案内部68及び左案内部69によって、第2のタング4の挿入の案内を行い、また把持部40の端部の左右を保持するので、斜め収納を抑制することができる。
【0087】
シートベルト装置1は、本体50と収納部52の境界に、第2のタング4の把持部40の移動を規制する右角部532a及び左角部533aを有するので、斜めに収納された第2のタング4の挿入方向を修正して斜め収納を抑制することができる。
【0088】
シートベルト装置1のウェビング2は、第2のタング4の挿入孔42の幅よりも厚みのある、縫製部22を備えているので、シートベルト装置1は、リトラクタ8の巻取力Fを第2のタング4の保持に利用することができる。従ってシートベルト装置1は、第2のタング4を安定して保持することができる。
【0089】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。また、これら実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1…シートベルト装置、2…ウェビング、3…第1のタング、4…第2のタング、5…収納ケース、6…下ケース、6a…表面、6b…裏面、7…ブラケット、8…リトラクタ、9…車両、20…折返部、22…縫製部、30…把持部、32…挿入孔、34…タングプレート、36…凹部、38…先端部、40…把持部、40a…把持部表面、40b…凸部、40c…凸部、40d…把持部裏面、41…先端部、42…挿入孔、43…後部、44…タングプレート、46…開口、48…先端部、50…本体、52…収納部、60〜65…ホルダ、66…挿入開口、67…案内部、68…右案内部、68a…上面部、68b…頂部、68c…接触部、69…左案内部、69a…上面部、69b…頂部、69c…接触部、70…挿入孔、90…後部座席、91…中央座席、92…第1のバックル、93…第2のバックル、94…ルーフパネル、95…天井パネル、501…右側面部、501a〜501c…脚部、502…左側面部、502a〜502c…脚部、503…前面部、504…後面部、504a…挿入孔、505…上面部、506…開口、520…上面部、520a…折曲部、520b…上面先端部、521…下面部、522…右側面部、523…第1の側面部、524…第1の斜面部、525…左側面部、526…第2の側面部、527…第2の斜面部、528…先端部、530…収納領域、531…裏面、532…右側面、532a…右角部、533…左側面、533a…左角部、534…第1の斜面、535…第2の斜面、536…先端部裏面、538…下面部裏面、539…下面、950…取出開口

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7