(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載のプーリ装置において、前記ケーブルガイドを、前記車体パネルに沿う前記プーリケースの前記車体パネルへの取付部よりも前記プーリ寄りに設けることを特徴とするプーリ装置。
請求項1または2記載のプーリ装置において、前記プーリを、その軸方向が前記車体パネルの板厚方向となるよう前記プーリケース内に設けることを特徴とするプーリ装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明のプーリ装置を備えたスライドドア開閉機構を搭載した車両を示す車載図を、
図2は
図1のスライドドア開閉機構を示す斜視図を、
図3は
図2のスライドドア開閉機構の駆動ユニットを一部断面で示す部分断面図をそれぞれ表している。
【0019】
図1に示すように、車両10はワンボックスタイプの乗用車であって、車両10を形成する車体11の側部12には、当該側部12に形成された開口部12aを開閉するスライドドア13が設けられている。スライドドア13は、ローラアッシー14を備え、当該ローラアッシー14は、車両10の前後方向に延びるよう車体11に設けられたガイドレール15に案内されるようになっている。つまり、スライドドア13は、ガイドレール15により車両10の前後方向への移動が案内されるようになっている。
【0020】
ガイドレール15は、車両10の前後方向に延びる直線状部15aと、車両10の車幅方向、つまり車両10の前後方向と交差する方向(
図1中上下方向)に延びる引き込み部15bとを備えている。引き込み部15bは、直線状部15aよりも車両10の前方側、つまり開口部12aに近接して配置され、側部12から車両10の内側(車室内側)に引き込むよう設けられている。引き込み部15bは略円弧形状に形成されており、これによりスライドドア13が全閉となる間際において、ローラアッシー14が引き込み部15bに倣って転動して、スライドドア13は開口部12aに引き込まれて全閉状態(図中二点鎖線参照)となる。
【0021】
車体11には、スライドドア13を開閉するためのスライドドア開閉機構16が搭載されている。
図2に示すように、スライドドア開閉機構16は、ローラアッシー14にそれぞれ一端部が接続される一対のケーブル17,18と、ガイドレール15の車両10の後方側および前方側で各ケーブル17,18の向き、つまり移動方向を変換する一対のプーリ装置19,20と、各ケーブル17,18を牽引する駆動ユニット21とを備えている。駆動ユニット21は、ガイドレール15の長手方向に沿う略中央部分に位置し、車体11を形成する車体パネル11a(
図1,4,5参照)の車室内側に固定されている。
【0022】
図3に示すように、駆動ユニット21は、駆動源としての電動モータ22を備えており、当該電動モータ22の出力は、減速機構(図示せず)を介して出力軸23に伝達されるようになっている。出力軸23には、略円筒形状に形成されたドラム24が固定されており、当該ドラム24は、電動モータ22の回転駆動に伴い、減速機構および出力軸23を介して回転するようになっている。ドラム24には各ケーブル17,18の他端部がそれぞれ固定され、また、ドラム24の外周には図示しないケーブル巻取り用の螺旋溝が形成され、駆動ユニット21に導かれた各ケーブル17,18はこの螺旋溝に沿って互いに逆向きになるよう複数回巻き付けられている。
【0023】
そして、ドラム24が図中時計回り方向に回転すると、開側のケーブル17がドラム24に巻き取られ、閉側のケーブル18がドラム24から引き出される。これにより、スライドドア13は開側のケーブル17に牽引されて自動的に開動作する。一方、ドラム24が図中反時計回り方向に回転すると、閉側のケーブル18がドラム24に巻き取られ、開側のケーブル17がドラム24から引き出される。これにより、スライドドア13は閉側のケーブル18に牽引されて自動的に閉動作する。
【0024】
ここで、電動モータ22としては、例えば、ブラシ付きの直流モータ等、正逆方向に回転可能なものが用いられ、電動モータ22は、CPUやメモリ等を備えた制御ユニット25によって回転制御されるようになっている。
【0025】
図2に示すように、ガイドレール15の直線状部15aにおける車両10の後方側には、リヤ側のプーリ装置19が設けられ、当該プーリ装置19は、締結ボルト等(図示せず)により車体パネル11aに固定されている。プーリ装置19は、開側のケーブル17の向きを略180°変換するようになっており、車両10の後方側から折り返されたケーブル17の他端側を駆動ユニット21に導き、ケーブル17の一端側をローラアッシー14に導いている。
【0026】
一方、ガイドレール15の引き込み部15bにおける車両10の車室内側には、引き込み部15bに対して車両10の車幅方向から対向するようフロント側のプーリ装置20が設けられている。このプーリ装置20は、締結ボルト等(図示せず)により車体パネル11aに固定されている。プーリ装置20は、閉側のケーブル18の向きを略90°変換するようになっており、車両10の前方側から折り返されたケーブル18の他端側を駆動ユニット21に導き、ケーブル18の一端側をローラアッシー14に導いている。
【0027】
ここで、各プーリ装置19,20による各ケーブル17,18の向きの変換角度は、スライドドア開閉機構16の車体11に対する取り付けスペースに応じて設定されている。また、各ケーブル17,18としては、表面に樹脂材(図示せず)をコーティングして防錆処理を施したものが用いられている。
【0028】
駆動ユニット21と各プーリ装置19,20との間には、各ケーブル17,18をそれぞれ摺動自在に被覆する一対のアウターチューブ26,27が設けられ、各アウターチューブ26,27は、金属層と樹脂層とから形成されて可撓性を有している。各アウターチューブ26,27の一端側には、各プーリ装置19,20からの各ケーブル17,18の出入りを案内する樹脂製のキャップ部材28,29がそれぞれ取り付けられており、各アウターチューブ26,27の一端側は、各キャップ部材28,29を介して各プーリ装置19,20にそれぞれ固定されている。
【0029】
各アウターチューブ26,27の他端側には、
図3に示すように樹脂製のスライドキャップ30,31が固定されており、各スライドキャップ30,31は、駆動ユニット21のユニットケース21aに対して進退自在に設けられている。各スライドキャップ30,31は、ユニットケース21a内に設けられたスプリング32により、ユニットケース21a内から押し出される方向に付勢されている。これにより、各アウターチューブ26,27は、ユニットケース21aから押し出されて駆動ユニット21と各プーリ装置19,20との間で湾曲するようになっている。
【0030】
そして、各アウターチューブ26,27が湾曲することにより、駆動ユニット21と各プーリ装置19,20との間の各ケーブル17,18の移動経路が伸張され、各ケーブル17,18に所定の張力が付与されるようになっている。つまり、スプリング32により各アウターチューブ26,27を湾曲させることで、各ケーブル17,18の弛みを除去するようにしている。
【0031】
次に、本発明を適用したフロント側のプーリ装置20の構造について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施の形態においては、
図2に示すようにフロント側のプーリ装置20の構造とリヤ側のプーリ装置19の構造とをそれぞれ異ならせているが、リヤ側のプーリ装置19においてもフロント側のプーリ装置20と同様の構成として本発明を適用することができる。
【0032】
図4は車両前方側のプーリ装置を拡大して示す斜視図を、
図5は
図4のプーリ装置の内部構造を説明する車両の前後方向,幅方向に沿う断面図を、
図6(a),(b)はプーリ装置を形成するケース本体の表側,裏側をそれぞれ示す斜視図を、
図7(a),(b)はプーリ装置を形成するケースカバーの表側,裏側をそれぞれ示す斜視図をそれぞれ表している。
【0033】
図4,5に示すように、プーリ装置20は、車体パネル11aの車室内側(一側)に設けられ、車体パネル11aのガイドレール15側(他側)から車体パネル11aに形成された開口11bを介して車室内側に導かれたケーブル18の向きを略90°変換するようになっている。具体的には、ガイドレール15の引き込み部15b(Y軸方向)から駆動ユニット21(X軸方向)に向けて、ケーブル18の移動方向を変換するようになっている。このプーリ装置20は、樹脂製のケース本体40,樹脂製のケースカバー50,金属製のガイド部材60,金属製のプーリ軸70,樹脂製のプーリ80およびゴム製のシールカバー90を備えている。
【0034】
ここで、
図4においては、プーリ装置20の内部構造を判り易くするために、ケースカバー50を二点鎖線(想像線)で示すとともに、ケース本体40の表面40aに形成される複数の肉盗み部41(
図6参照)を省略している。
【0035】
ケース本体40は、ケースカバー50と共にプーリケースCAを形成し、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで平板状に形成されている。
図6に示すように、ケース本体40の両側面、つまり表面40aおよび裏面40bには、それぞれ複数の肉盗み部(窪み部)41が形成されている。このように複数の肉盗み部41を設けることで、ケース本体40の軽量化を図りつつ、射出成形時の「ヒケ」によるケース本体40の変形を防止している。
【0036】
ケース本体40の長手方向に沿う一側(
図6(a)中右側)には、ケース本体40にケースカバー50を装着した状態のもとで、プーリ80を収容する第1プーリ収容部42が設けられている。第1プーリ収容部42は略円盤形状に形成され、各肉盗み部41と同様にケース本体40の板厚方向に窪んで設けられている。第1プーリ収容部42の略中心部分には装着孔43が形成され、当該装着孔43には、プーリ80を回転自在に支持するプーリ軸70の一端部が組み付けられている。
【0037】
このようにプーリ軸70を装着孔43に固定することで、
図4,5に示すように、プーリ装置20を車体パネル11aに固定した状態のもとで、プーリ80の軸方向が、車両10の車幅方向(Y軸方向)つまり車体パネル11aの板厚方向と一致し、したがってプーリ80の径方向は、車両10の前後方向(X軸方向)に向けられる。なお、図中Z軸方向は、車両10の上下方向に対応している。
【0038】
ケース本体40の長手方向に沿う他側(
図6(a)中左側)で、かつケース本体40の短手方向に沿う一側(
図6(a)中上側)には、第1キャップ装着部44が設けられている。この第1キャップ装着部44は、プーリ装置20を車体パネル11aに固定した状態のもとで駆動ユニット21側に向けられ、これによりケーブル18を含むアウターチューブ27の車両10への取り回し(ケーブル配索作業)を容易に行えるようにしている。ここで、第1キャップ装着部44の向きは、スライドドア開閉機構16の車体11に対する取り付けスペース等に応じて設定される。つまり、第1キャップ装着部44の向きを異ならせたケース本体40を種々準備することで、取り付けスペースが異なる種々の車両10に対応することができる。
【0039】
第1キャップ装着部44の内側には、当該第1キャップ装着部44の内側に突出するよう第1段差部44aが設けられている。第1段差部44aには、キャップ部材29(
図2参照)が係合するようになっており、これによりケース本体40にケースカバー50を装着した状態のもとで、キャップ部材29がプーリケースCAから抜け落ちるのを防止している。
【0040】
ケース本体40の長手方向に沿う他側(
図6(a)中左側)で、かつケース本体40の短手方向に沿う他側(
図6(a)中下側)には、ガイド装着部45が設けられている。このガイド装着部45は、ケース本体40の板厚方向に沿う断面が略円弧形状に形成され(
図5参照)、ケース本体40の第1プーリ収容部42寄りに配置されている。
【0041】
ケース本体40の長手方向に沿う他側で、かつガイド装着部45に近接する部分には、ケース本体40の長手方向に延びるようケーブル導入溝46が形成されている。このケーブル導入溝46は、ケース本体40の表面40aと裏面40bとの間を貫通するよう切り欠いて形成されている。ケーブル導入溝46は、プーリ装置20の組み立て時において、ケーブル18をガイド装着部45に向けて導入する役割を果たすものである(
図4,8参照)。
【0042】
ケース本体40のガイド装着部45と第1プーリ収容部42との間には、ガイド固定穴47が設けられている。ガイド固定穴47はケース本体40の表面40aから裏面40bに向けて貫通してスリット状に設けられ、当該ガイド固定穴47には、ガイド部材60の固定脚62(
図5,8参照)が差し込み固定されるようになっている。
【0043】
ケース本体40の外周縁(周囲)には、3つの係合爪48が設けられ、各係合爪48はケース本体40の表面40aからケース本体40の板厚方向に向けて所定高さで突出されている。各係合爪48は、ケース本体40にケースカバー50を装着した状態のもとで、ケースカバー50の各係合突起58(
図7,8参照)に係合するようになっている。つまり、ケース本体40およびケースカバー50は、各係合爪48および各係合突起58によって、それぞれワンタッチで組み付けられるようになっている。これにより、締結ネジ等の構成部品を省略して、組み付け性の向上を図っている。
【0044】
ガイド装着部45には、ケーブルガイドとしてのガイド部材60が装着されるようになっており、当該ガイド部材60は、
図5に示すように鋼板をプレス成形等することにより略滑り台形状に形成されている。ガイド部材60は、略1/4(略90°)の円弧形状に形成されたガイド本体61と、ケース本体40のガイド固定穴47に差し込み固定される固定脚62とを備えている。ガイド本体61の表面にはケーブル18が摺接するようになっており、その曲率半径R1は、プーリ80に設けたプーリ溝82の曲率半径R2(
図4参照)よりも大きい曲率半径に設定されている(R1>R2)。
【0045】
このように、ガイド本体61の表面にケーブル18を摺接させることで、ケース本体40の裏面40b側から表面40a側に導入されて、プーリケースCA内に引き込まれたケーブル18、つまり車体パネル11aのガイドレール15側から車室内側に導かれたケーブル18を、車体パネル11aに沿うよう湾曲させて、プーリ80のプーリ溝82に向けるようになっている。なお、ガイド部材はケース本体40に一体成形しても良く、この場合、ガイド部材の強度を確保するためにもケース本体40をより高硬度の樹脂材料等で成形するのが望ましい。
【0046】
ここで、プーリ80は、プーリケースCA内に回転自在に設けられ、フランジ部81と、ケーブル18が入り込むプーリ溝82とを有しており(
図4参照)、プーリ溝82の曲率半径R2は、ケーブル18を無理に湾曲させて損傷させない最小の曲率半径に設定されている。これにより、プーリ80を必要最小限の大きさに抑えて、プーリ装置20の小型化を実現している。つまり、本実施の形態においては、ガイド本体61の曲率半径R1を、プーリ溝82の曲率半径R2に基づいて設定することで、ケーブル18を損傷すること無く、かつプーリ装置20が必要以上に大型化するのを防止している。なお、プーリ80の両側面には、ケース本体40の各肉盗み部41と同様に、複数の肉盗み部83が設けられている。
【0047】
ガイド本体61は、
図5に示すように、ケースカバー50に向けてプーリケースCA内に所定高さで突出している。これによりケーブル18は、ガイド本体61によりプーリ溝82の軸方向に沿う中心位置、つまりプーリ80の正規位置に案内されて、ひいてはケーブル18がフランジ部81に摺接してプーリ装置20の作動抵抗が大きくなったり、プーリ80が偏摩耗したりするのを抑制できるようにしている。
【0048】
このように、ガイド部材60は、ケーブル導入溝46と第1プーリ収容部42との間に設けられ、ガイドレール15の引き込み部15bとプーリ溝82との間で車体パネル11aを貫通するケーブル18を、引き込み部15b(Y軸方向)からプーリ溝82(X軸方向)に向けて、略90°の角度で湾曲させるようにしている。また、プーリ80は、
図4,5に示すように、ガイド部材60により湾曲されたケーブル18の向きを略180°変換し、駆動ユニット21に向けるようになっている。ここで、
図5に示すように、車体パネル11aは二重構造となっており、車室内側の内側パネル(図中下側)とガイドレール15側の外側パネルとを備えている。
【0049】
また、ガイド部材60には、
図5に示すように、スライドドア13の重量や摺動抵抗等によるケーブル18からの負荷Fが掛かるようになっている。具体的には、ケーブル18からの負荷Fは、ケース本体40の第1プーリ収容部42側で、かつ車体パネル11a側に向けられている。つまり、ケース本体40の第1プーリ収容部42側には、負荷Fの分力である押圧力fが、車体パネル11aに向けて掛かっている。これにより、ケーブル18からの負荷Fがガイド部材60に掛かることで、ケース本体40の第1プーリ収容部42側は押圧力fで車体パネル11aに押し付けられる。
【0050】
ケースカバー50は、ケース本体40と共にプーリケースCAを形成し、プラスチック等の樹脂材料を射出成形等することで有底箱形状に形成されている。このケースカバー50は、ケース本体40を閉塞するとともに、プーリ装置20を車体パネル11aの車室内側(一側)に固定するようになっている。ケースカバー50は、
図7に示すように、本体部51と外周壁部52とを備え、本体部51の両側面、つまり表面51aおよび裏面51bには、ケース本体40と同様に複数の肉盗み部(窪み部)53が形成されている。
【0051】
本体部51の長手方向に沿う一側(
図7(b)中左側)には、ケース本体40にケースカバー50を装着した状態のもとで、プーリ80を収容する第2プーリ収容部54が設けられている。第2プーリ収容部54は略円盤形状に形成され、各肉盗み部53と同様に本体部51の板厚方向に窪んで設けられている。第2プーリ収容部54の略中心部分には装着孔55が形成され、当該装着孔55には、プーリ80を回転自在に支持するプーリ軸70の他端部が組み付けられている。したがって、プーリ軸70は、その両端がケース本体40およびケースカバー50に組み付けられて支持されている。
【0052】
本体部51の長手方向に沿う他側(
図7(a)中左側)には、本体部51の短手方向両側(
図7中上下側)に突出するよう一対の取付腕(取付部)56が設けられている。各取付腕56にはそれぞれ貫通孔56aが設けられ、各貫通孔56aには、金属製のカラーCL(
図4参照)が組み付けられるようになっている。そして、カラーCL(貫通孔56a)には、プーリ装置20を車体パネル11aに固定するための締結ボルト(図示せず)が貫通するようになっている。すなわち、プーリ装置20は2つの締結ボルトを介して車体パネル11aの車室内側に固定されるようになっている。これにより、
図5に示すように、各取付腕56の固定部位FP(各貫通孔56aの中心位置)は、ケース本体40にケースカバー50を装着した状態のもとで、プーリケースCAの長手方向に沿ってガイド部材60を中心に、プーリ80側とは反対側に位置される。これにより、ガイド部材60(ガイド本体61)は、車体パネル11aに沿うプーリケースCAの車体パネル11aの各取付腕56よりもプーリ80寄りに設けられることになる。
【0053】
ケースカバー50の長手方向に沿う他側(
図7(b)中右側)で、かつケースカバー50の短手方向に沿う一側(
図7(b)中上側)には、第2キャップ装着部57が設けられている。この第2キャップ装着部57は、ケース本体40の第1キャップ装着部44(
図6参照)と対向するようになっており、第1キャップ装着部44と同様に、プーリ装置20の車体パネル11aへの固定状態のもとで駆動ユニット21側を向くようになっている。また、第2キャップ装着部57の内側には、当該第2キャップ装着部57の内側に突出するよう第2段差部57aが設けられている。第2段差部57aには、ケース本体40の第1段差部44aと同様に、キャップ部材29が係合するようになっている。
【0054】
ケースカバー50を形成する外周壁部52の外周部分(周囲)には、3つの係合突起58が設けられている。各係合突起58は、外周壁部52の外側に向けて微少高さで突出して設けられ、各係合突起58には、ケース本体40にケースカバー50を装着した状態のもとで、ケース本体40の各係合爪48が係合するようになっている。なお、ケース本体40にケースカバー50が正しく装着されないと、各係合突起58および各係合爪48は係合しないようになっている。つまり、各係合突起58および各係合爪48は、ケース本体40に対するケースカバー50の誤組み付け防止の機能も備えている。
【0055】
図5に示すように、シールカバー90は、ゴム等の弾性材料を射出成形等することで所定形状に形成され、装着本体部91,パネル密着部92および蛇腹部93を備えている。装着本体部91は、ケース本体40のケーブル導入溝46が形成された部分に装着され、パネル密着部92は車体パネル11a(外側パネル)に密着して開口11bを覆うようになっている。蛇腹部93にはケーブル18が摺接するようになっており、蛇腹部93は装着本体部91およびパネル密着部92に対して弾性変形することで揺動自在となっている。このようにシールカバー90を設けることで、プーリ装置20の車室外側、つまりガイドレール15側からの雨水や埃等が、車体パネル11aの開口11bからプーリ装置20の内部に進入するのを防止している。これにより、プーリ軸70とプーリ80との間に塗布したグリス(図示せず)を長期に亘って保持し、プーリ80の円滑な動作を可能としている。
【0056】
次に、以上のように形成したプーリ装置20の組立手順について、図面を用いて詳細に説明する。
図8はプーリ装置の組み立て手順を説明する分解斜視図を表している。ただし、
図8においては、図示を判り易くするために、ケース本体40,ケースカバー50,プーリ80のそれぞれに設けた肉盗み部41,53,83(
図4,6,7参照)を省略している。
【0057】
まず、
図8の破線矢印(1)に示すように、ケース本体40の装着孔43にプーリ軸70の一端部を組み付ける。次いで、破線矢印(2)に示すように、ケース本体40のガイド固定穴47にガイド部材60の固定脚62を差し込み、ガイド部材60をガイド装着部45に固定する。
【0058】
その後、破線矢印(3)に示すようにケーブル18をプーリ80のプーリ溝82に巻掛けつつ、破線矢印(4)に示すようにプーリ80をプーリ軸70に回転自在に支持させる。このとき、プーリ軸70とプーリ80との間の摺動部にグリスを塗布しておくようにする。また、ケーブル18が挿通されたキャップ部材29(
図2参照)を第1キャップ装着部44に装着しつつ、ケーブル18をケーブル導入溝46に差し込み、ケーブル18をガイド部材60に臨ませておく。
【0059】
次に、ケースカバー50を準備し、当該ケースカバー50の第2プーリ収容部54(
図7(b)参照)とケース本体40の第1プーリ収容部42とを対向させる。そして、ケースカバー50をケース本体40に臨ませて、プーリ軸70の他端部を、ケースカバー50の装着孔55(
図7(b)参照)に固定する。このとき、ケース本体40に対してケースカバー50を誤組み付けしないよう正しく装着するようにし、これによりケース本体40の各係合爪48をケースカバー50の各係合突起58に係合させる。これにより、ケース本体40へのケースカバー50の装着が完了し、プーリケースCAが完成する。
【0060】
ここで、破線矢印(1),(2),(4)および(5)を見ても明らかなように、プーリケースCAを完成させる上で、ケース本体40に対するプーリ軸70,ガイド部材60,プーリ80およびケースカバー50の組み付け方向が同一方向となっている。したがって、例えば、自動組立装置等を用いてプーリケースCAを容易に組み立てることができる。
【0061】
その後、シールカバー90の蛇腹部93(
図5参照)にケーブル18を挿通した状態のもとで、シールカバー90の装着本体部91を、ケース本体40に装着し、これによりプーリ装置20が完成する。なお、プーリ装置20を含むスライドドア開閉機構16(
図2参照)は、車体メーカにおいて車両10の所定箇所に搭載されるようになっている。
【0062】
以上詳述したように、第1実施の形態に係るプーリ装置20によれば、車両10を形成する車体パネル11aの車室内側に設けられるプーリケースCAと、プーリケースCA内に回転自在に設けられるプーリ80と、プーリケースCAに設けられ、車体パネル11aのガイドレール15側から車室内側に導かれたケーブル18が摺接し、当該ケーブル18を車体パネル11aに沿うよう湾曲させてプーリ80に向けるガイド部材60と、を備えている。これにより、ケーブル18に掛かる負荷Fを、ガイド部材60を介して車体パネル11aに向けることができる。したがって、スライドドア開閉機構16の駆動時、つまりケーブル18に負荷Fが掛かる時に、ケース本体40を車体パネル11aに向けて押圧することができ、ひいてはプーリケースCAがガタつくのを抑制できる。また、ケーブル18に掛かる負荷Fにより、ケース本体40は車体パネル11aに向けて押圧されるので、プーリケースCAを車体パネル11aに固定するための取付腕56を増設する必要がなく、よってプーリケースCAの大型化を抑制して、車体11への取り付け作業性が悪化するのを防止できる。
【0063】
また、第1実施の形態に係るプーリ装置20によれば、ガイド部材60を、車体パネル11aに沿うケース本体40の車体パネル11aへの取付腕56よりもプーリ80寄りに設けたので、ケースカバー50のプーリ80寄りに取付腕56を設けなくて済む。つまり、ケースカバー50の長手方向に沿う他側(
図7(a)中左側)に取付腕56を集約して設けることができ、ひいてはプーリ装置20の車体パネル11aへの取り付け作業性を向上させることができる。
【0064】
さらに、第1実施の形態に係るプーリ装置20によれば、プーリ80を、その軸方向が車体パネル11aの板厚方向となるようプーリケースCA内に設けたので、プーリ装置20を車体パネル11aから大きく突出させることなく車体パネル11aに沿わせてコンパクトに設置できる。
【0065】
次に、本発明の第2実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0066】
図9は第2実施の形態に係るプーリ装置の
図5に対応する断面図を、
図10は第2実施の形態に係るプーリ装置の
図8に対応する分解斜視図をそれぞれ表している。
【0067】
図9,10に示すように、第2実施の形態に係るプーリ装置100は、第1に、第1実施の形態に比して、ケース本体(プーリケース)110の形状が異なっている。具体的には、ケース本体110においては、ケーブル導入溝46の開口側(
図5,10中左側)を橋渡し部111で閉塞しており、当該橋渡し部111を車体パネル11aに当接させるようにしている。すなわち、ガイド装着部45に対向して橋渡し部111が形成されることで、ケース本体110にはケーブル導入孔113が形成され、ケーブル導入孔113の全周でケース本体110が車体パネル11aに当接されることになる。これにより、ケース本体110の前後方向(X軸方向)に沿う両端部分(2箇所)が、車体パネル11aに対して押圧力fで押し付けられるようになっている。
【0068】
第2実施の形態に係るプーリ装置100は、第2に、第1実施の形態に比して、ケースカバー(プーリケース)120の形状が異なっている。具体的には、プーリ装置100の固定部位FPが、第1実施の形態に比してガイド部材60(ガイド装着部45)寄りに位置するよう、各取付腕(取付部)121をケースカバー120のプーリ80寄りにオフセットして設けている。これにより、
図9に示す接触部分SP1,SP2(黒丸部分)とを結ぶ線分の中央寄りに固定部位FPが位置し、これらの「4点(各取付腕121の2点と各接触部分SP1,SP2の2点)」を介して、プーリ装置100は車体パネル11aに取り付けられる。
【0069】
第2実施の形態に係るプーリ装置100は、第3に、第1実施の形態に比して、ケース本体110の周囲に複数の係合突起112(図示では1つのみ示す)を設け、ケースカバー120の周囲に複数の係合爪122(図示では1つのみ示す)を設けている。つまり、第1実施の形態に比して、係合突起と係合爪との関係が逆になっている(
図8,10参照)。これによっても、ケース本体110に対するケースカバー120の誤組み付けを防止できるようになっている。
【0070】
以上詳述したように、第2実施の形態に係るプーリ装置100においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、第2実施の形態においては、プーリ装置100を車体パネル11aに対して「4点」で固定するので、プーリ装置100を車体パネル11aに対して、よりバランス良くかつガタつくこと無く取り付けることができる。
【0071】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、車両10の左側のスライドドア13を開閉駆動するスライドドア開閉機構16のプーリ装置20,100に本発明を適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、車両10の右側のスライドドア(図示せず)を開閉駆動するスライドドア開閉機構のプーリ装置(フロント側/リヤ側)にも適用することができる。