(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御ステップでは、第1の電力指令値を受信したときに、前記第1の電力指令値と、前記第1の電力指令値よりも前に受信した第2の電力指令値との差分の大きさが大きいほど前記遅延時間を小さい時間に決定する
請求項1または2に記載の充放電制御方法。
電力指令値に対する応答性を示すパフォーマンススコアに基づいて、電力系統に接続された蓄電装置を充放電させて前記電力系統の安定化制御を行う充放電制御方法であって、
前記安定化制御の期間中に、前記蓄電装置に充放電させる電力の電力値を示す電力指令値を受信する受信ステップと、
前記蓄電装置の蓄電残量を取得するステップと、
前記蓄電装置の蓄電量の目標値である目標蓄電量を取得する取得ステップと、
前記電力指令値を受信したときに、当該電力指令値に従って、前記蓄電装置に充放電させる制御ステップとを含み、
前記パフォーマンススコアは、前記電力指令値が示す電力値と、当該電力指令値に応じて前記蓄電装置から充放電される電力の電力値との間の、遅延度、相関度、および精度の重み付け和で表され、
前記制御ステップでは、前記パフォーマンススコアの重みに基づいて、第1の制御方式、第2の制御方式、および第3の制御方式のうちから選択した一の制御方式に従って前記蓄電装置の充放電を制御し、
前記第1の制御方式では、
前記目標蓄電量と前記蓄電残量との差分に応じて、前記電力指令値を受信したときから前記電力指令値に従って前記蓄電装置を充放電させるまでの遅延時間を決定し、
(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、時間の経過とともに前記電力指令値が増加する期間において、前記電力指令値を受信したときから前記蓄電装置に充放電させるまでに前記遅延時間を設け、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、時間の経過とともに前記電力指令値が減少する期間において、前記電力指令値を受信したときから前記蓄電装置に充放電させるまでに前記遅延時間を設け、
前記第2の制御方式では、
前記目標蓄電量と前記蓄電残量との差分に応じて、前記電力指令値に対してオフセットを加算し、
(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、前記電力指令値が示す充電電力値の絶対値が小さいほど、前記オフセットを大きくし、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、前記電力指令値が示す放電電力値の絶対値が小さいほど、前記オフセットを大きくし、
前記第3の制御方式では、
前記目標蓄電量と前記蓄電残量との差分に応じて停止時間を決定し、(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、前記電力指令値が放電を示す期間において、所定の周期ごとに前記停止時間、前記蓄電装置の充放電を停止させ、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、前記電力指令値が充電を示す期間において、所定の周期ごとに前記停止時間、前記蓄電装置の充放電を停止させる
充放電制御方法。
電力指令値に対する応答性を示すパフォーマンススコアに基づいて、電力系統に接続された蓄電装置を充放電させて前記電力系統の安定化制御を行う充放電制御装置と、前記蓄電装置とを備え、
前記充放電制御装置は、
前記安定化制御の期間中に、前記蓄電装置に充放電させる電力の電力値を示す電力指令値を受信する受信部と、
前記蓄電装置の蓄電残量を取得する第一取得部と、
前記蓄電装置の蓄電量の目標値である目標蓄電量を取得する第二取得部と、
前記受信部が前記電力指令値を受信したときに、当該電力指令値に従って、前記蓄電装置に充放電させる制御部とを備え、
前記パフォーマンススコアは、前記電力指令値が示す電力値と、当該電力指令値に応じて前記蓄電装置から充放電される電力の電力値との間の、遅延度、相関度、および精度の重み付け和で表され、
前記制御部は、前記パフォーマンススコアの重みに基づいて、第1の制御方式、第2の制御方式、および第3の制御方式のうちから選択した一の制御方式に従って前記蓄電装置の充放電を制御し、
前記第1の制御方式を選択した場合、
前記制御部は、
前記目標蓄電量と前記蓄電残量との差分に応じて、前記電力指令値を受信したときから前記電力指令値に従って前記蓄電装置を充放電させるまでの遅延時間を決定し、
(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、時間の経過とともに前記受信部が受信する前記電力指令値が増加する期間において、前記電力指令値が受信されたときから前記蓄電装置に充放電させるまでに前記遅延時間を設け、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、時間の経過とともに前記受信部が受信する前記電力指令値が減少する期間において、前記電力指令値が受信されたときから前記蓄電装置に充放電させるまでに前記遅延時間を設け、
前記第2の制御方式を選択した場合、
前記制御部は、
前記目標蓄電量と前記蓄電残量との差分に応じて、前記電力指令値に対してオフセットを加算し、
(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、前記電力指令値が示す充電電力値の絶対値が小さいほど、前記オフセットを大きくし、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、前記電力指令値が示す放電電力値の絶対値が小さいほど、前記オフセットを大きくし、
前記第3の制御方式を選択した場合、
前記制御部は、
前記目標蓄電量と前記蓄電残量との差分に応じて停止時間を決定し、(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、前記電力指令値が放電を示す期間において、所定の周期ごとに前記停止時間、前記蓄電装置の充放電を停止させ、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、前記電力指令値が充電を示す期間において、所定の周期ごとに前記停止時間、前記蓄電装置の充放電を停止させる
充放電制御システム。
電力指令値に対する応答性を示すパフォーマンススコアに基づいて、電力系統に接続された蓄電装置を充放電させて前記電力系統の安定化制御を行う充放電制御装置であって、
前記安定化制御の期間中に、前記蓄電装置に充放電させる電力の電力値を示す電力指令値を受信する受信部と、
前記蓄電装置の蓄電残量を取得する第一取得部と、
前記蓄電装置の蓄電量の目標値である目標蓄電量を取得する第二取得部と、
前記受信部が前記電力指令値を受信したときに、当該電力指令値に従って、前記蓄電装置に充放電させる制御部とを備え、
前記パフォーマンススコアは、前記電力指令値が示す電力値と、当該電力指令値に応じて前記蓄電装置から充放電される電力の電力値との間の、遅延度、相関度、および精度の重み付け和で表され、
前記制御部は、前記パフォーマンススコアの重みに基づいて、第1の制御方式、第2の制御方式、および第3の制御方式のうちから選択した一の制御方式に従って前記蓄電装置の充放電を制御し、
前記第1の制御方式を選択した場合、
前記制御部は、
前記目標蓄電量と前記蓄電残量との差分に応じて、前記電力指令値を受信したときから前記電力指令値に従って前記蓄電装置を充放電させるまでの遅延時間を決定し、
(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、時間の経過とともに前記受信部が受信する前記電力指令値が増加する期間において、前記電力指令値が受信されたときから前記蓄電装置に充放電させるまでに前記遅延時間を設け、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、時間の経過とともに前記受信部が受信する前記電力指令値が減少する期間において、前記電力指令値が受信されたときから前記蓄電装置に充放電させるまでに前記遅延時間を設け、
前記第2の制御方式を選択した場合、
前記制御部は、
前記目標蓄電量と前記蓄電残量との差分に応じて、前記電力指令値に対してオフセットを加算し、
(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、前記電力指令値が示す充電電力値の絶対値が小さいほど、前記オフセットを大きくし、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、前記電力指令値が示す放電電力値の絶対値が小さいほど、前記オフセットを大きくし、
前記第3の制御方式を選択した場合、
前記制御部は、
前記目標蓄電量と前記蓄電残量との差分に応じて停止時間を決定し、(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、前記電力指令値が放電を示す期間において、所定の周期ごとに前記停止時間、前記蓄電装置の充放電を停止させ、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、前記電力指令値が充電を示す期間において、所定の周期ごとに前記停止時間、前記蓄電装置の充放電を停止させる
充放電制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(本発明の基礎となった知見)
背景技術で説明した通り、電力系統の安定化制御において、蓄電装置は、電力指令値に従って充放電を行った場合、充放電を継続できなくなる場合がある。
【0018】
図1は、安定化制御期間(周波数制御期間)における蓄電装置の蓄電量の変化の一例を示す図である。
図1において、縦軸は、蓄電量を示し、横軸は、時間を示す。
【0019】
安定化制御期間D1における電力指令値の平均値が±0の時は、
図1のグラフ11に示されるように、時刻t1+D1における蓄電装置の蓄電量は、時刻t1の蓄電量にほぼ一致するはずである。しかしながら、実際には、電力の充放電時にインバータ等において電力の変換ロス等が生じる。このため、
図1のグラフ12に示される通り、時刻t1+D1における蓄電装置の蓄電量は、時刻t1の蓄電量よりも低下する。この場合、蓄電量の低下により、蓄電装置は、放電することが不可能な状態になる可能性がある。
【0020】
ここで特許文献1には、上記の課題に対し、充放電効率値を用いて電力指令値(出力指令値)を補正し、蓄電装置の放電時には電力指令値が示す電力値よりも少ない電力を放電し、蓄電装置の充電時には電力指令値が示す電力値よりも多くの電力を充電することによって、蓄電装置の蓄電量を維持する手法が開示されている。
【0021】
図2は、特許文献1に記載された電力指令値の補正方法を示す図である。
【0022】
図2において、電力指令値が負の値であるとき、すなわち電力指令値が蓄電装置の充電を示す(充電指令)ときは、電力指令値を充電効率で除算した値を補正後の電力指令値として用いる。一方、電力指令値が正の値であるとき、すなわち電力指令値が蓄電装置の放電を示す(放電指令)ときは、電力指令値に放電効率で乗算した値を補正後の電力指令値として用いる。
【0023】
しかしながら、
図2のような構成では、電力指令値と、蓄電装置から出力される電力値との誤差は大きくなり、蓄電装置の出力品質(蓄電装置の出力の電力指令値に対する応答性)は、十分でない。
【0024】
ここで、上記出力品質は、系統運用事業者によってパフォーマンススコアとして定量的に算出される。具体的には、例えば、パフォーマンススコアは、電力指令値に対する、蓄電装置から実際に出力される電力の電力値(出力値)の「遅延度」、「相関度」、および「精度」の3つの評価値の重み付け和で評価される。定性的には、「遅延度」は遅れを、「相関度」は波形の類似を、「精度」は出力の大きさの類似の度合いを表している。
【0025】
特許文献1に記載されているような構成では、蓄電装置の放電量が多い時は、蓄電装置の出力値と指令値との差が大きくなるため、評価値のうちの「精度」が低くなりやすい。また、蓄電装置の充電量が多い時は、蓄電装置の出力波形に歪みが発生するため、評価値のうちの「相関度」が低くなりやすい。
【0026】
さらに、特許文献1に記載されている充放電の効率値を用いて電力値を補正する方法は、蓄電量を維持する事が目的である。このため、上記方法では、蓄電量を任意の量だけ増加または減少させる精度の高い蓄電量制御が実現できない。
【0027】
また、上述のパフォーマンススコアは、値が高いほど電力系統の安定化に対する貢献の度合いが高いことを示す。しかしながら、パフォーマンススコアの算出方法は、系統運用事業者により異なる。また、長期的には、電力系統の状況変化に応じてパフォーマンススコアの算出方法が変わることも十分にありうる。
【0028】
ここで、特許文献1に記載のような電力指令値の補正方法は、パフォーマンススコアの算出方法を考慮しておらず、パフォーマンススコアが低くなりやすい。
【0029】
このような課題を解決するために、本発明の一態様に係る充放電制御方法は、電力系統の電力の安定化制御期間中に、前記電力系統に接続された蓄電装置の充放電を制御する充放電制御方法であって、前記安定化制御期間中に、前記蓄電装置に充放電させる電力の電力値を示す電力指令値を受信する受信ステップと、前記蓄電装置の蓄電残量、および前記蓄電装置の蓄電量の目標値である目標蓄電量を取得する取得ステップと、前記電力指令値を受信したときに、当該電力指令値に従って、前記蓄電装置に充放電させる制御を行う制御ステップとを含み、前記制御ステップでは、前記目標蓄電量と前記蓄電残量との差分に応じて遅延時間を決定し、前記蓄電装置の放電を示す前記電力指令値が正の値であり、前記蓄電装置の充電を示す前記電力指令値が負の値であるとしたときに、(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、前記電力指令値が時間の経過とともに増加する期間において、前記電力指令値を受信したときから前記遅延時間が経過したタイミングで当該電力指令値に従って前記蓄電装置に充放電させる制御を行い、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、前記電力指令値が時間の経過とともに減少する期間において、前記電力指令値を受信したときから前記遅延時間が経過したタイミングで当該電力指令値に従って前記蓄電装置に充放電させる制御を行う。
【0030】
このような充放電制御方法によれば、パフォーマンススコアにおける「相関度」および「精度」の悪化を抑制しながら、蓄電装置の蓄電量を制御することができる。
【0031】
また、前記制御ステップでは、前記目標蓄電量と前記蓄電残量との差分が大きいほど、前記遅延時間を長い時間に決定してもよい。
【0032】
また、前記制御ステップでは、第1の電力指令値を受信したときに、前記第1の電力指令値と、前記第1の電力指令値よりも前に受信した第2の電力指令値との差分の大きさが大きいほど前記遅延時間を小さい時間に決定し、前記第1の電力指令値を受信したときから前記遅延時間が経過したタイミングにおいて、前記第1の電力指令値に従って、前記蓄電装置に充放電させる制御を行ってもよい。
【0033】
電力指令値の変化が大きいときには、パフォーマンススコアが低下しやすい。このため、このような充放電制御方法によれば、より効率的に出力品質の悪化を抑えた蓄電量の制御をすることができる。
【0034】
また、前記制御ステップでは、さらに、過去に受信した前記電力指令値の履歴を用いて将来の電力指令値を予測した予測指令値を算出し、(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、前記電力指令値に対応する前記予測指令値が時間の経過とともに増加する期間において、前記電力指令値を受信したときから前記遅延時間が経過したタイミングで当該電力指令値に対応する前記予測指令値に従って前記蓄電装置に充放電させる制御を行い、かつ、前記電力指令値に対応する予測指令値が時間の経過とともに減少する期間において、前記電力指令値を受信したときから前記遅延時間だけ先行するタイミングで当該電力指令値に対応する前記予測指令値に従って前記蓄電装置に充放電させる制御を行い、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、前記電力指令値に対応する前記予測指令値が時間の経過とともに減少する期間において、前記電力指令値を受信したときから前記遅延時間が経過したタイミングで当該電力指令値に対応する前記予測指令値に従って前記蓄電装置に充放電させる制御を行い、かつ、前記電力指令値に対応する予測指令値が時間の経過とともに増加する期間において、前記電力指令値を受信したときから前記遅延時間だけ先行するタイミングで当該電力指令値に対応する前記予測指令値に従って前記蓄電装置に充放電させる制御を行ってもよい。
【0035】
このように、電力指令値の予測値を算出することで蓄電量をより高速に制御することができる。
【0036】
また、前記取得ステップでは、前記蓄電残量を所定の周期で取得し、前記目標蓄電量は、前記蓄電残量を取得したタイミングから所定の時間経過後における蓄電量の目標値であってもよい。
【0037】
また、前記制御ステップでは、前記遅延時間を予め定められた上限の時間よりも短い時間に決定してもよい。
【0038】
また、前記遅延時間には、前記電力指令値を受信してから当該電力指令値に従って前記蓄電装置の充放電が開始されるまでの時間が含まれてもよい。
【0039】
これによると、一定範囲の遅延時間であればパフォーマンススコアにおける「遅延度」が悪化しないようなパフォーマンススコアの算出方法を用いた安定化制御において、効率的に蓄電量の制御をすることができる。
【0040】
また、本発明の一態様に係る充放電制御方法は、電力系統の電力の安定化制御期間中に、前記電力系統に接続された蓄電装置の充放電を制御する充放電制御方法であって、前記安定化制御期間中に、前記蓄電装置に充放電させる電力の電力値を示す電力指令値を受信する受信ステップと、前記蓄電装置の蓄電残量、および前記蓄電装置の蓄電量の目標値である目標蓄電量を取得する取得ステップと、(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、充電を示す電力値であって、前記電力指令値が示す電力値の絶対値が小さいほど、絶対値が大きくなる電力値である第1のオフセット電力値を決定し、前記第1のオフセット電力値と、前記電力指令値が示す電力値とを加算した電力値の電力を前記蓄電装置に充放電させ、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、放電を示す電力値であって、前記電力指令値が示す電力値の絶対値が小さいほど、絶対値が大きくなる電力値である第2のオフセット電力値を決定し、前記第2のオフセット電力値と、前記電力指令値が示す電力値とを加算した電力値の電力を前記蓄電装置に充放電させる、制御ステップとを含む。
【0041】
このような充放電制御方法によれば、パフォーマンススコアにおける「相関度」の悪化を抑制しながら、蓄電装置の蓄電量を制御することができる。
【0042】
また、本発明の一態様に係る充放電制御方法は、電力系統の電力の安定化制御期間中に、前記電力系統に接続された蓄電装置の充放電を制御する充放電制御方法であって、前記安定化制御期間中に、前記蓄電装置に充放電させる電力の電力値を示す電力指令値を受信し、前記蓄電装置の蓄電残量、および前記蓄電装置の蓄電量の目標値である目標蓄電量を取得する取得ステップと、前記目標蓄電量と前記蓄電残量との差分に応じて所定の時間を決定し、(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、前記電力指令値が放電を示す期間において、所定の周期ごとに前記所定の時間、前記蓄電装置の充放電を停止させ、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、前記電力指令値が充電を示す期間において、所定の周期ごとに前記所定の時間、前記蓄電装置の充放電を停止させる、制御ステップとを含む。
【0043】
このような充放電制御方法によれば、パフォーマンススコアにおける「精度」の悪化を抑制しながら、蓄電装置の蓄電量を制御することができる。
【0044】
また、本発明の一態様に係る充放電制御方法は、電力系統の電力の安定化制御期間中に、前記電力系統に接続された蓄電装置の充放電を制御する充放電制御方法であって、前記安定化制御期間中に、前記蓄電装置に充放電させる電力の電力値を示す電力指令値を受信する受信ステップと、前記蓄電装置の蓄電量、および前記蓄電装置の蓄電量の目標値である目標蓄電量を取得する取得ステップと、前記蓄電装置の放電を示す電力値が正の値であり、前記蓄電装置の充電を示す電力値が負の値であるとしたときに、(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、充電を示す電力値であって、前記電力指令値が示す電力値が大きいほど、値が小さくなる電力値である第1のオフセット電力値を決定し、前記第1のオフセット電力値と、前記電力指令値が示す電力値とを加算した電力値の電力を前記蓄電装置に充放電させ、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、放電を示す電力値であって、前記電力指令値が示す電力値が小さいほど、値が大きくなる電力値である第2のオフセット電力値を決定し、前記第2のオフセット電力値と、前記電力指令値が示す電力値とを加算した電力値の電力を前記蓄電装置に充放電させる、制御ステップとを含む。
【0045】
このような充放電制御方法によれば、パフォーマンススコアにおける「相関度」の悪化を抑制しながら、蓄電装置の蓄電量を制御することができる。
【0046】
また、本発明の一態様に係る充放電制御方法は、電力系統の電力の安定化制御期間中に、前記電力系統に接続された蓄電装置の充放電を、当該充放電の電力指令値に対する応答性を示すパフォーマンススコアに基づいて制御する充放電制御方法であって、前記安定化制御期間中に、前記蓄電装置に充放電させる電力の電力値を示す電力指令値を受信する受信ステップと、前記蓄電装置の蓄電残量、および前記蓄電装置の蓄電量の目標値である目標蓄電量を取得する取得ステップと、前記電力指令値を受信したときに、当該電力指令値に従って、前記蓄電装置に充放電させる制御を行う制御ステップとを含み、前記パフォーマンススコアは、前記電力指令値が示す電力値と、当該電力指令値に応じて前記蓄電装置から充放電される電力の電力値との間の、遅延度、相関度、および精度の重み付け和で表され、前記制御ステップでは、前記パフォーマンススコアの重みに基づいて、第1の制御方式、第2の制御方式、および第3の制御方式のうちから選択した一の制御方式に従って前記蓄電装置の充放電を制御し、前記第1の制御方式では、前記目標蓄電量と前記蓄電残量との差分に応じて遅延時間を決定し、前記蓄電装置の放電を示す前記電力指令値が正の値であり、前記蓄電装置の充電を示す前記電力指令値が負の値であるとしたときに、(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、前記電力指令値が時間の経過とともに増加する期間において、前記電力指令値を受信したときから前記遅延時間が経過したタイミングで当該電力指令値に従って前記蓄電装置に充放電させる制御を行い、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、前記電力指令値が時間の経過とともに減少する期間において、前記電力指令値を受信したときから前記遅延時間が経過したタイミングで当該電力指令値に従って前記蓄電装置に充放電させる制御を行い、前記第2の制御方式では、(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、充電を示す電力値であって、前記電力指令値が示す電力値の絶対値が小さいほど、絶対値が大きくなる電力値である第1のオフセット電力値を決定し、前記第1のオフセット電力値と、前記電力指令値が示す電力値とを加算した電力値の電力を前記蓄電装置に充放電させ、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、放電を示す電力値であって、前記電力指令値が示す電力値の絶対値が小さいほど、絶対値が大きくなる電力値である第2のオフセット電力値を決定し、前記第2のオフセット電力値と、前記電力指令値が示す電力値とを加算した電力値の電力を前記蓄電装置に充放電させ、前記第3の制御方式では、前記目標蓄電量と前記蓄電残量との差分に応じて所定の時間を決定し、(i)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも小さい場合は、前記電力指令値が放電を示す期間において、所定の周期ごとに前記所定の時間、前記蓄電装置の充放電を停止させ、(ii)前記蓄電残量が前記目標蓄電量よりも大きい場合は、前記電力指令値が充電を示す期間において、所定の周期ごとに前記所定の時間、前記蓄電装置の充放電を停止させる。
【0047】
このような充放電制御方法によれば、パフォーマンススコアの算出方法に基づいて適切に電力指令値の補正をすることができる。
【0048】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0049】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0050】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0051】
(実施の形態1)
図3は、実施の形態1に係る充放電制御装置の概要を示す図である。
【0052】
図3において、充放電制御装置100は、所定の安定化制御期間中に、電力指令装置110から出力される電力指令値を受信し、補正後の電力指令値を蓄電装置120に出力することによって蓄電装置120の電力系統130に対する充放電の制御を行う装置である。なお、本実施の形態では、安定化制御期間は、10分間の期間を一ステップとして、複数のステップから構成されるものとして説明される。
【0053】
また、充放電制御装置100は、蓄電装置120から蓄電量を取得することで、蓄電装置120と有機的に連携して電力指令値に追従した蓄電装置120の充放電を行うとともに、蓄電装置120の蓄電量を制御する。すなわち、充放電制御装置100と、蓄電装置120とは、蓄電制御システムを構成している。
【0054】
蓄電装置120は、電気エネルギーを貯蔵・放出する能力を有する装置であり、具体的には鉛蓄電池・リチウムイオン電池・レドックスフロー電池等の二次電池の他、フライホイールや揚水発電機などである。
【0055】
電力指令装置110は、本実施の形態では、系統運用事業者が有する装置であり、電力系統130の周波数を一定に制御するために充放電制御装置100に対して電力指令値を送信する。
【0056】
なお、充放電制御装置100は、マイコンやDSP、システムLSIによってのみならず、汎用的なコンピュータ、サーバあるいはインターネット上のクラウドにより実現することも可能である。
【0057】
ここで、電力指令値について説明する。
【0058】
図4は、電力指令値の一例を示す図である。
図4では、横軸は、時間を表し、縦軸は、電力指令値を表す。
【0059】
本実施の形態では、電力指令値は、蓄電装置120が当該電力指令値に従って充放電する必要がある電力の電力値そのものである。ここで、本実施の形態では、電力指令値は、正の値(+)の時は、蓄電装置120に対し放電を指令し、負の値(−)の時は、蓄電装置120に対し充電を指令する指令値である。また、電力指令値の絶対値が大きくなるほど、蓄電装置120は、多くの量の充放電を行う。
【0060】
以下の説明では、蓄電装置120は、±1.0MWの範囲の電力の出力をすることができるものとする。すなわち
図4に示される通り、電力指令値の上限値は、+1.0MWであり、下限値は、−1.0MWである。また、電力指令値は、数秒程度の周期、ここでは2秒周期で充放電制御装置100に送られるものとする。
【0061】
安定化制御における電力指令値は、電力系統130の周波数の偏差の変化に依存するため短時間で大きく変動するが、一方向に偏ることはない。このため、長い期間において電力指令値の平均値を求めると、±0になることが特徴である。
【0062】
なお、電力指令値は、電力値そのものではなく、蓄電装置120の出力の最大値(上述の±1.0MW、以下、制御能力とも記載する。)に対する割合を示してもよい。この場合、蓄電装置120が電力指令値に従って充放電する電力の電力値は、(制御能力)×(電力指令値が示す割合)となる。
【0063】
次に、充放電制御装置100について説明する。
【0064】
図5は、実施の形態1に係る充放電制御装置100の構成を示すブロック図である。なお、
図5において、
図3と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0065】
充放電制御装置100は、受信部101と、補正電力量算出部102と、制御部103と、記憶部104とを備える。
【0066】
受信部101は、安定化制御期間中に、所定の期間ごとに電力指令値を受信する。本実施の形態では、受信部101は、2秒ごとに電力指令値を受信する。なお、本実施の形態では、電力指令値は、電力指令装置110から送信されるが、充放電制御装置100が電力指令値を決定してもよい。例えば、充放電制御装置100は、さらに、電力系統130の交流電力の周波数を計測し、計測した周波数に応じて電力指令値を決定する電力指令値決定部を備え、受信部101は、電力指令値決定部が決定した電力指令値を受信してもよい。
【0067】
補正電力量算出部102は、蓄電装置120の蓄電量に関する情報、および蓄電装置120の蓄電量の目標値である目標蓄電量に関する情報を取得し、補正電力量を算出する。蓄電量は、例えば、蓄電率(SOC:State Of Charge)で表される。
【0068】
記憶部104には、後述するパフォーマンススコアの算出式等が記憶される。記憶部104に記憶されるパフォーマンススコアの算出式等の情報は、インターネット上のクラウド等、充放電制御装置100の装置の外部に記憶されていてもよい。すなわち、記憶部104は、必須の構成要素ではない。
【0069】
なお、記憶部104に記憶されたパフォーマンススコアPSの算出式は、充放電制御装置100を用いた充放電制御システムの導入における初期設定時や、系統運用事業者のパフォーマンススコア算出式の規約変更時に更新される。
【0070】
制御部103は、安定化制御期間において、受信部101が電力指令値を受信するごとに電力指令値が示す電力値の電力を蓄電装置120に充放電させる制御を行う。言い換えれば、制御部103は、受信部101が電力指令値を受信したときに電力指令値が示す電力値の電力を蓄電装置120に充放電させる制御を行う。ここで、「受信部101が電力指令値を受信したとき」とは、受信部101が電力指令値を受信してから蓄電装置120に当該電力指令値の通りの充放電をさせるまでに不可避的に生じる遅延時間等を含めた所定のタイミングを意味する。
【0071】
制御部103は、補正方式選択部105と、パラメータ決定部106と、電力指令値補正部107とを備える。
【0072】
補正方式選択部105は、蓄電装置120の出力品質を定量的に算出するためのパフォーマンススコア算出式に基づいて電力指令値の補正方式を選択する。
【0073】
パラメータ決定部106は、補正電力量算出部102が算出した補正電力量と補正方式選択部105が選択した補正方式に基づいて、電力指令値を補正するための補正パラメータを決定する。
【0074】
電力指令値補正部107は、補正方式と補正パラメータとを用いて、受信部101が電力指令装置110から取得した電力指令値を補正し、補正済み指令値を蓄電装置120に出力する。
【0075】
次に、パフォーマンススコアについて説明する。
【0076】
パフォーマンススコアは、電力指令値に対する蓄電装置120の出力値の出力品質を定量的に示したものである。ここで、パフォーマンススコアPSは、3つの評価値D、A、およびPを用いて、式(1)で表されるものとする。
【0078】
ここで、Dは、電力指令値に対する蓄電装置120の出力値(蓄電装置120から実際に出力される電力の電力値)の遅延の程度を表す遅延度であり、Aは、電力指令値と蓄電装置120の出力値の相関の程度を表す相関度であり、Pは、電力指令値と蓄電装置120の出力値の誤差に依存する精度である。また、k
iは、各評価値の重み係数であり、式(2)を満たす0以上の実数である。
【0080】
遅延度Dは、蓄電装置120の電力指令値に対する蓄電装置120の出力値の遅れ時間をΔ、想定される最長遅延時間をTとして、式(3)を用いて算出される。
【0082】
ここでは一例として、Tは、5[min]とする。また、本実施の形態では、遅れ時間Δは、電力指令値の波形と蓄電装置120の出力値の波形とを少しずつずらして、両者の相関度が最大になるときの波形間の時間差である。
【0083】
相関度Aは、相関関数γを用いて式(4)を用いて算出される。
【0085】
ここで、rは、電力指令値、y
t−Δは、蓄電装置120の出力値を遅れ時間Δだけ時間をさかのぼって平行移動した値である。すなわち、相関度Aにおいては、遅れ時間Δの影響は、取り除かれている。
【0086】
精度Pは、式(5)を用いて算出される。
【0088】
ここで、rは、電力指令値、yは、蓄電装置120の出力値である。すなわち、精度Pは、電力指令値と蓄電装置120の出力値の誤差率を1から減算した値である。
【0089】
遅延度、相関度、および精度は、それぞれ0.0から1.0までの値を取り、1.0に近いほど出力品質が良いことを示す。また、式(1)および式(2)に示される通り、パフォーマンススコアPSも同様に、0.0から1.0までの値を取り、1.0に近いほど出力品質が良いことを示す。
【0090】
なお、各評価値の重み係数k
iは、安定化制御の対象となる電力系統130によって異なり、重み係数k
iは、系統運用事業者により決定される。なお、本実施の形態では、上述の通り重み係数k
iの値がパラメータであるパフォーマンススコアPSについて説明するが、パフォーマンススコアPSの算出式は、その他の計算式でもよく、式(1)の算出式に限定されるものではない。
【0091】
次に、充放電制御装置100の全体の動作について説明する。
【0092】
図6は、充放電制御装置100の動作を示すフローチャートである。
【0093】
まず、受信部101は、電力指令値を受信する(S001)。
【0094】
次に、補正電力量算出部102は、蓄電装置120の蓄電残量、および目標蓄電量を取得する(S002)。より具体的には、補正電力量算出部102は、蓄電残量(実際の蓄電量)と目標蓄電量(所定の蓄電量)との差分から補正電力量を算出する。
【0095】
次に、制御部103(補正方式選択部105)は、パフォーマンススコア算出式に基づいて電力指令値の補正方式を選択する(S003)。
【0096】
最後に、制御部103(電力指令値補正部107)は、選択した補正方式で電力指令値を補正し、補正済み指令値を蓄電装置120に出力する(S004)。
【0097】
次に、充放電制御装置100の各構成要素の詳細な動作について説明する。
【0098】
まず、補正電力量算出部102の動作について詳細に説明する。
【0099】
補正電力量算出部102は、蓄電装置120の蓄電量を制御するために、蓄電装置120の実際の蓄電量と所定の蓄電量(目標蓄電量)との差分から補正電力量を算出する。
【0100】
ここで、所定の蓄電量とは、一定の蓄電量、または予め蓄電制御システムの管理者等が計画した、時刻によって変化する蓄電量(計画蓄電量)である。本実施の形態では、補正電力量算出部102は、蓄電装置120の実際の蓄電量と計画蓄電量との差分から補正電力量を算出する。
【0101】
補正電力量は、1ステップの間に、蓄電装置120が、電力指令値が示す電力値よりもどれだけ多くの(または少ない)電力値の電力を充放電すべきかを示す電力量である。
【0102】
なお、補正電力量算出部102は、安定化制御期間において、補正電力量を1ステップに1回程度の頻度で算出することが望ましいが、1ステップに1回程度よりも低い頻度であってもよい。
【0103】
以下、
図7を用いて補正電力量算出部102の動作を順番に説明する。なお、本実施の形態では、安定化制御期間は、10分間の期間を1ステップとして、連続するステップ1、ステップ2・・・ステップnから構成されるものとする。
【0104】
図7は、補正電力量算出部102の動作を示すフローチャートである。
【0105】
まず、補正電力量算出部102は、各ステップの開始時点において、式(6)を用い、計画蓄電量と、蓄電装置120から取得した実際の蓄電量との差分に基づき、当該ステップの補正電力量を算出する(S101)。
【0107】
ここで、x
nは、ステップnにおける補正電力量、C
nは、計画蓄電量、c
nは、そのステップにおける蓄電量、T
cは、一つのステップの時間、T
eは、上記差分を補正するために設定された所定の時間である。本実施の形態では、T
cは、10分間であり、T
eは、60分間である。
【0108】
図8は、計画蓄電量と、実際の蓄電量との一例を示す図である。
【0109】
ステップ1の開始時点t1においては、補正電力量算出部102は、ステップ1における補正電力量を算出する。このときの計画蓄電量は、C
1であり、実際の蓄電量は、c
1であるため、x
n=(C
1−c
1)×T
c/T
eとなる。
【0110】
次に、補正電力量算出部102は、式(6)によって算出した補正電力量x
nを、式(7)を用いて再補正する(S102)。
【0112】
ここで、Lは、蓄電装置120の電力系統130への充放電時に生じる電力の平均損失の一ステップ分に相当する電力量(変換損失電力量)である。なお、補正電力量算出部102は、ステップS102における変換損失電力量の加算を行わなくてもよい。
【0113】
最後に、補正電力量算出部102は、式(6)(および式(7))を用いて算出した補正電力量x
nをパラメータ決定部106に出力する(S103)。
【0114】
次に、補正方式選択部105の動作について詳細に説明する。
【0115】
補正方式選択部105は、記憶部104に格納されたパフォーマンススコアPSの算出式に基づいて、電力指令値の補正方式を選択する。本実施の形態では、補正方式選択部105は、算出式の一部である各評価の重み係数k
iに基づいて電力指令値の補正方式を選択する。
【0116】
具体的には、補正方式選択部105は、相関度Aおよび精度Pを優先した第1の補正方式(補正方式M
1)、相関度Aを優先した第2の補正方式(補正方式M
2)、および精度Pを優先した第3の補正方式(補正方式M
3)の3つ補正方式の中から一の補正方式を選択する。
【0117】
なお、実施の形態1では、主に補正方式M
1について詳細に説明し、補正方式M
2および補正方式M
3の詳細については、実施の形態2および実施の形態3においてそれぞれ説明する。
【0118】
図9は、補正方式選択部105の動作を示すフローチャートである。
【0119】
補正方式選択部105は、記憶部104からパフォーマンススコアPSの算出式の各評価値の重み係数k
iを取得する(S201)。
【0120】
次に、補正方式選択部105は、各重み係数を変数とした判別関数を用いて電力指令値の補正方式を決定する(S202)。
【0121】
判別関数は、当該判別関数における変数である重み係数k
iと、線形判別係数との線形結合による関数である。判別関数は、判別分析により求められる。
【0122】
補正方式選択部105は、式(8)に示される通り、判別関数f
Liの符号の正負を用いて補正方式の候補M
iのうちから補正方式mを選択する。
【0124】
ここで、本実施の形態では、補正方式選択部105は、判別関数f
Liとして、下記3つの判別関数を用いる。
【0126】
上述の通り、k
1は、遅延度Dに乗算される重み係数であり、k
2は、相関度Aに乗算される重み係数であり、k
3は、精度
Pに乗算される重み係数である。
【0127】
式(9)に示される判別関数f
L1が式(8)に示される条件を満たす場合、すなわち、遅延度Dの重み係数k
1が他の重み係数に比べて小さい場合、補正方式選択部105は、補正方式M
1を選択する。
【0128】
同様に、式(10)に示される判別関数f
L2が式(8)に示される条件を満たす場合、すなわち、相関度Aの重み係数k
2が他の重み係数に比べて大きい場合、補正方式選択部105は、補正方式M
2を選択する。式(11)に示される判別関数f
L3が式(8)に示される条件を満たす場合、すなわち、精度Pの重み係数k
3が他の重み係数に比べて大きい場合、補正方式選択部105は、補正方式M
3を選択する。
【0129】
なお、式(8)に示される条件を複数の判別関数が満たす場合は、補正方式選択部105は、判別関数の値が最も大きい値を返す補正方式を選択する。
【0130】
最後に、補正方式選択部105は、選択した補正方式mをパラメータ決定部106に出力する(S203)。
【0131】
このように、充放電制御装置100は、パフォーマンススコアPSの算出式に応じて電力指令値の補正方式mを変更することにより、蓄電装置120の出力の電力指令値に対する応答性を確保し、なおかつ蓄電装置120の蓄電量を制御することができる。
【0132】
次に、パラメータ決定部106の動作について詳細に説明する。
【0133】
パラメータ決定部106は、上述の補正電力量算出部102が算出した補正電力量x
nと補正方式選択部105が選択した補正方式mとを用いて、電力指令値を補正するための補正パラメータを決定する。なお、補正パラメータは、補正方式選択部105が選択した補正方式mによって異なり、詳細は、後述する。
【0134】
なお、パラメータ決定部106は、補正電力量算出部102から補正電力量x
nを取得するごとにパラメータを決定することが望ましいが、補正電力量x
nを取得するごとにパラメータを決定しなくてもよい。
【0135】
図10は、パラメータ決定部106の動作を示すフローチャートである。
【0136】
まず、パラメータ決定部106は、式(12)に示される、補正方式mと補正電力量x
nとを引数として用いた式である補正パラメータ算出式を用いて補正パラメータを決定する(S301)。
【0138】
ここで、p
nは、補正パラメータであり、f
pは、補正パラメータ算出式である。
【0139】
例えば、補正方式m=M
1の時は、補正パラメータp
nは、遅延時間である。パラメータ決定部106は、補正パラメータ算出式f
pとして、例えば、下記、式(13)を用いて補正パラメータを決定する。
【0141】
ここで、k
oは、オープンループゲインであり、正の実数である。例えば、補正パラメータp
nが遅延時間である場合、式(13)は、補正電力量が大きいほど遅延時間が長くなることを意味する。なお、k
oの値は、充放電制御装置100の設計時にチューニングによって決定される。
【0142】
なお、補正方式m=M
1のときは、補正電力量x
nと遅延時間(補正パラメータp
n)との関係を予めテーブルとして記憶部104に記憶しておき、パラメータ決定部106は、当該テーブルを参照して遅延時間を決定してもよい。
【0143】
最後に、パラメータ決定部106は、補正方式mと補正パラメータp
nを電力指令値補正部107に出力する(S302)。
【0144】
次に、電力指令値補正部107の動作について詳細に説明する。
【0145】
電力指令値補正部107は、補正方式mと補正パラメータp
nとを用いて、受信部101が電力指令装置110から取得した電力指令値を補正し、補正済み指令値を蓄電装置120に出力する。
【0146】
電力指令値補正部107は、受信部101が電力指令値を受信するごとに補正済み指令値生成して出力することが望ましいが、受信部101が電力指令値を受信するごとに補正済み指令値生成して出力しなくてもよい。
【0147】
図11は、電力指令値補正部107の動作を示すフローチャートである。
【0148】
まず、電力指令値補正部107は、パラメータ決定部106から補正方式mと補正パラメータp
nとを取得する(S401)。取得した補正方式mが新たな補正方式である場合、または取得した補正パラメータp
nが新たな補正パラメータである場合(S401でYes)、電力指令値補正部107は、当該電力指令値補正部107の内部に変数として保持している補正方式mまたは補正パラメータp
nを更新する(S402)。取得した補正方式mと補正パラメータp
nとがいずれも新たなものでない場合(S401でNo)、電力指令値補正部107は、補正方式mおよび補正パラメータp
nを更新せずにステップS403の処理に移行する。
【0149】
次に、電力指令値補正部107は、式(14)に示される、補正方式mと、補正パラメータp
nと、電力指令値y
tとを引数に用いた式である出力補正計算式を用いて補正済み指令値を算出する(S403)。
【0151】
ここで、y
t´は、時刻tにおける補正済み指令値であり、f
yは、出力補正計算式である。
【0152】
最後に、電力指令値補正部107は、補正済み指令値y
t´を蓄電装置120に送信する(S404)。
【0153】
次に、第1の補正方式(補正方式M
1)について詳細に説明する。
【0154】
補正方式M
1は、式(9)で示されるf
L1が式(8)の条件を満たす場合、すなわち、遅延度Dの重み係数k
1が他の重み係数に比べて小さいときに選択される。
【0155】
まず、補正方式M
1を用いたときの電力指令値と、補正済み指令値との関係について説明する。
【0156】
図12は、補正電力量x
nが正の値である場合に補正方式M
1を用いたときの電力指令値と、補正済み指令値との関係を示す図である。
図12において、縦軸は、指令値を表し、横軸は、時間を表す。
図12において電力指令値は破線で示され、補正済み指令値は、実線で示される。
【0157】
補正電力量x
nが正の値であるとき、すなわち実際の蓄電量が計画蓄電量よりも小さい場合、充放電制御装置100は、蓄電装置120の蓄電量を増やす必要がある。したがって、電力指令値補正部107は、電力指令値が時間の経過とともに増加する期間(
図12に示される期間a1)においては、遅延時間の経過後に電力指令値が示す電力値の電力が充放電されるように補正済み指令値を生成する。
【0158】
電力指令値が時間の経過とともに増加する期間は、蓄電装置120の放電量が増加する期間を意味することから、この期間において遅延時間を設けることで、放電を抑えられるため、充放電制御装置100は、蓄電装置120の蓄電量の減少を抑制することができる。
【0159】
図13は、補正電力量x
nが負の値である場合に補正方式M
1を用いたときの電力指令値と、補正済み指令値との関係を示す図である。
図13において、縦軸は、指令値を表し、横軸は、時間を表す。
図13において電力指令値は破線で示され、補正済み指令値は、実線で示される。
【0160】
補正電力量x
nが負の値であるとき、すなわち実際の蓄電量が計画蓄電量よりも大きい場合、充放電制御装置100は、蓄電装置120の蓄電量を減らす必要がある。したがって、電力指令値補正部107は、電力指令値が時間の経過とともに減少する期間(
図12に示される期間a2)においては、遅延時間の経過後に電力指令値が示す電力値の電力が充放電されるように補正済み指令値を生成する。
【0161】
電力指令値が時間の経過とともに減少する期間は、蓄電装置120の充電量が増加する期間を意味することから、このような期間において遅延時間を設けることで、充電を抑えられるため、充放電制御装置100は、蓄電装置120の蓄電量の増加を抑制することができる。
【0162】
ここで、補正方式M
1が選択される場合は、遅延度Dの重み係数k
1が他の重み係数に比べて小さい場合である。すなわち、
図12および
図13に示される通り、遅延時間を設けたとしても、パフォーマンススコアPSへの影響は、小さい。したがって、充放電制御装置100は、出力品質を維持するとともに、蓄電装置120の蓄電量を制御することができる。
【0163】
以下、補正方式M
1のときの制御部103の制御の詳細について説明する。
【0164】
補正方式M
1では、パラメータ決定部106が決定する補正パラメータp
nは、遅延時間である。上述の式(13)に示される通り、パラメータ決定部106は、補正電力量x
nに比例する遅延時間を補正パラメータp
nとして決定する。したがって、補正電力量x
nが負の値である場合は、遅延時間も負の値になる。
【0165】
また、安定化制御においては、電力指令値を受信してから、蓄電装置120が受信した電力指令値に応じた充放電を行うまでの遅延時間に上限が設けられている場合がある。このような場合、パラメータ決定部106は、式(13)のような線形的な式で遅延時間を算出するのではなく、パラメータ決定部106は、遅延時間に上限値を設けた式(13´)のような式で遅延時間を算出してもよい。パラメータ決定部106が式(13´)を用いて遅延時間を算出した場合は、補正電力量x
nがどれだけ大きくても、遅延時間は、所定の範囲内に収まる。
【0167】
ここで、p
maxは遅延時間の上限値である。
【0168】
補正方式M
1では、電力指令値補正部107は、式(15)に示される出力補正計算式f
yを用いて補正済み指令値を算出する。
【0170】
ここで、minは、引数の区間の最小値を返す関数であり、maxは、引数の区間の最大値を返す関数である。例えば、遅延時間(補正パラメータp
n)が+6秒のとき、現在の電力指令値から6秒前までの電力指令値のうち、最小の電力指令値が補正済み指令値となる。
【0171】
これにより、補正済み指令値は、遅延時間が正の値のときは、電力指令値が時間の経過とともに増加する期間(出力上昇時)においてのみ、遅延時間だけ時間遅れが設けられた指令値となる。また、遅延時間が負の値のときは、電力指令値が時間の経過とともに減少する期間(出力下降時)においてのみ、遅延時間だけ時間遅れが設けられた指令値となる。
【0172】
なお、電力指令装置110から蓄電装置120までに至る間の通信および処理の遅延時間をT
dとし、T
dが遅延時間を表す補正パラメータp
nと比較して無視できないほど大きい場合は、p
nからT
dを減算することで、システム全体の遅延時間として設定することができる。つまり、遅延時間(補正パラメータp
n)には、電力指令値を受信してから当該電力指令値に従って蓄電装置120の充放電が開始されるまでの時間(T
d)が含まれてもよい。
【0173】
また、p
maxからT
dを減算することで、システム全体の遅延時間に上限値を設けることができる。
【0174】
以上説明した通り、実施の形態1に係る充放電制御装置100によればパフォーマンススコアの算出方法に基づいて電力指令値の補正をすることができる。この結果、出力品質を維持するとともに、蓄電装置120の蓄電量を制御することができる。
【0175】
(変形例1)
次に、充放電制御装置100の変形例1について説明する。
【0176】
変形例1に係る充放電制御装置100のパラメータ決定部106は、過去の所定期間における実際の補正電力量を電力指令値補正部107から取得する。さらに、パラメータ決定部106は、算出した上記過去の所定期間の補正電力量x
nと上記過去の所定期間の実際の補正電力量との差分を用いて偏差e
nを決定する。パラメータ決定部106は、偏差e
nが0に近づくように補正パラメータp
nを制御することで、将来の補正電力量の精度を高める。
【0177】
具体的には、パラメータ決定部106は、式(13)のようなオープンループ制御の式ではなく、離散時間系におけるPI制御(フィードバック制御)の式(16)を用いることで補正パラメータp
nを算出する。
【0179】
ここで、p
nは、ステップnにおける補正パラメータp
n、e
nは、偏差(補正電力量−実際の補正電力量)、Δtは、サンプリング時間、K
pは、比例係数、K
iは、積分係数である。
【0180】
このような構成によれば、パラメータ決定部106は、蓄電装置120の補正電力量x
nと実際の補正電力量との偏差を長期的に0に近づけるように補正パラメータp
nを決定することができ、将来の補正電力量の精度を高めることができる。
【0181】
(変形例2)
次に、充放電制御装置100の変形例2について説明する。
【0182】
変形例2に係る充放電制御装置100のパラメータ決定部106は、上述の補正方式M
1において、電力指令値の変化量を用いて遅延時間(補正パラメータp
n)を電力指令値を受信するごとに動的に決定する。
【0183】
同じ遅延時間を設けた場合であっても、電力指令値が急激に変化するとき、すなわち電力指令値の変化量が大きいときは、パフォーマンススコアの遅延度Dおよび精度Pは、悪化しやすい傾向にある。一方、電力指令値が緩慢に変化するとき、すなわち電力指令値の変化量が小さいときは、パフォーマンススコアの遅延度Dおよび精度Pは、悪化しにくい傾向にある。
【0184】
このため、パラメータ決定部106は、電力指令値(第1の電力指令値)の遅延時間を決定するときに、当該電力指令値の直近の電力指令値(第2の電力指令値)からの変化量を算出してもよい。このとき、パラメータ決定部106は、電力指令値の変化量の大きさが大きいときは遅延時間を短くし、変化量の大きさが小さいときは遅延時間を長くする。このようにして決定された補正済み指令値と、電力指令値とは、補正電力量x
nが正の値である場合、
図14に示されるような関係となる。
図14において、時刻80(s)前後を境に、電力指令値の変化とともに遅延時間は短くなる。
【0185】
なお、上記の変化量は、直近の電力指令値に対する変化量でなくてもよい。上記変化量は、現在の電力指令値よりも前に受信した電力指令値に対する変化量であってもよいし、現在の電力指令値よりも前の所定の期間において受信した電力指令値の平均値に対する変化量であってもよい。
【0186】
(変形例3)
次に、充放電制御装置100の変形例3について説明する。
【0187】
変形例3に係る充放電制御装置100の電力指令値補正部107は、上述の補正方式M
1において、過去に受信した電力指令値の履歴を用いて将来の電力指令値を予測した予測指令値を算出する。ここで、過去に受信した電力指令値の履歴は、記憶部104等に記憶される。
【0188】
補正電力量x
nが正の値である場合、電力指令値補正部107は、予測指令値が時間の経過とともに増加する期間(第1の期間)においては、電力指令値を受信したときから遅延時間の経過後のタイミングにおいて、上記電力指令値に対応する予測指令値が示す電力値の電力が充放電されるように補正済み指令値を生成する。
【0189】
また、補正電力量x
nが正の値である場合、電力指令値補正部107は、予測指令値が時間の経過とともに減少する期間(第2の期間)においては、電力指令値を受信したときから遅延時間だけ先行するタイミングにおいて、上記電力指令値に対応する予測指令値が示す電力値の電力が充放電されるように補正済み指令値を生成する。
【0190】
このようにして決定された補正済み指令値と、電力指令値とは、
図15に示されるような関係となる。
【0191】
なお、補正電力量x
nが負の値である場合、電力指令値補正部107は、予測指令値が時間の経過とともに増加する期間においては、電力指令値を受信したときから遅延時間だけ先行するタイミングにおいて、上記電力指令値に対応する予測指令値が示す電力値の電力が充放電されるように補正済み指令値を生成する。
【0192】
また、補正電力量x
nが負の値である場合、電力指令値補正部107は、予測指令値が時間の経過とともに減少する期間においては、電力指令値を受信したときから遅延時間の経過後のタイミングにおいて、上記電力指令値に対応する予測指令値が示す電力値の電力が充放電されるように補正済み指令値を生成する。
【0193】
変形例3に係る電力指令値補正部107は、具体的には、式(15)の変形である式(15´)を用いて補正済み指令値を生成する。
【0195】
式(15´)を用いて補正済み指令値が生成された場合、式(15)を用いて補正済み指令値が生成された場合に比べて、補正電力量x
nが正の値であるときは、放電量は、より少なくなる。一方、補正電力量x
nが負の値であるときは、充電量は、より多くなる。このため、変形例3に係る充放電制御装置100は、より高速に蓄電量を制御することができる。
【0196】
(実施の形態2)
実施の形態2では、第2の補正方式(補正方式M
2)について詳細に説明する。
【0197】
補正方式M
2は、式(10)で示されるf
L2が式(8)の条件を満たす場合、すなわち、相関度Aの重み係数k
2が他の重み係数に比べて大きいときに選択される。このとき、相関度Aをできるだけ悪化させないことがパフォーマンススコアの悪化を防ぐことになる。
【0198】
補正方式M
2は、電力指令値と、蓄電装置120が実際に出力する電力指令値との相関度Aが悪化しないように、電力指令値が±0付近の期間を中心に電力指令値を増加または減少させた補正済み電力指令値に補正する補正方式である。
【0199】
図16は、補正電力量x
nが正の値である場合に、補正方式M
2を用いたときの電力指令値と、補正済み指令値との関係を示す図である。
図16において、縦軸は、指令値を表し、横軸は、時間を表す。
図16において電力指令値は破線で示され、補正済み指令値は、実線で示される。
【0200】
補正電力量x
nが正の値であるとき、すなわち実際の蓄電量が計画蓄電量よりも小さい場合、充放電制御装置100は、蓄電装置120の蓄電量を増やす必要がある。したがって、電力指令値補正部107は、電力指令値が示す電力値に充電を示す電力値(第1のオフセット電力値)を加算した電力値を、補正済み指令値として算出する。つまり、第1のオフセット電力値は、負の符号の電力値である。
【0201】
ここで、電力指令値補正部107は、電力指令値が示す電力値の絶対値が小さいほど、絶対値が大きくなるように第1のオフセット電力値を決定する。
【0202】
すなわち、補正方式M
2では、電力指令値補正部107は、電力指令値が上限値付近および下限値付近の期間においては、電力指令値の補正量を小さくし、電力指令値が±0に近づくにつれて電力指令値の補正量を大きくする。なぜなら、このような補正方式を用いることで、相関度Aがあまり大きく悪化しないからである。
【0203】
なお、図示しないが、補正電力量x
nが負の値であるとき、すなわち実際の蓄電量が計画蓄電量よりも大きい場合、充放電制御装置100は、蓄電装置120の蓄電量を減らす必要がある。したがって、電力指令値補正部107は、電力指令値が示す電力値に放電を示す電力値(第2のオフセット電力値)を加算した電力値を、補正済み指令値として算出する。
【0204】
つまり、第2のオフセット電力値は、正の符号の電力値である。このとき、電力指令値補正部107は、電力指令値が示す電力値の絶対値が小さいほど、絶対値が大きくなるように第2のオフセット電力値を決定する。
【0205】
以下、補正方式M
2のときの制御部103の制御の詳細について説明する。
【0206】
補正方式M
2では、パラメータ決定部106が決定する補正パラメータp
nは、増減係数である。パラメータ決定部106は、例えば、上述の式(13)に示される通り、補正電力量x
nに比例する増減係数を補正パラメータp
nとして決定する。
【0207】
補正方式M
2では、電力指令値補正部107は、式(17)に示されるような出力補正計算式f
yを用いて補正済み電力指令値を算出する。
【0209】
ここで、y
tは、電力指令値、p
nは、増減係数(補正パラメータ)であり、y´
tは、補正済み指令値である。例えば、電力指令値y
tが±1.0の時は、補正済み指令値y´
tはy
tと等しくなり、y
tが0.0の時は、補正済み指令値y´
tは、電力指令値y
tより増減係数p
nだけ小さくなる。
【0210】
このように、電力指令値補正部107は、式(17)に示されるような出力補正計算式f
yを用いて補正済み指令値を算出する。この結果、補正済み指令値y´
tは、
図16に示されるような特性となる。
【0211】
以上説明した補正方式M
2によれば、パフォーマンススコアにおける相関度Aの悪化を抑制しながら、蓄電装置120の蓄電量を制御することができる。すなわち、相関度Aが重視されるパフォーマンススコアの算出方法が適用される安定化制御においては、補正方式M
2は、効果的である。
【0212】
(実施の形態3)
実施の形態3では、第3の補正方式(補正方式M
3)について詳細に説明する。
【0213】
補正方式M
3は、式(11)で示されるf
L3が式(8)の条件を満たす場合、すなわち、精度Pの重み係数k
3が他の重み係数に比べて大きいときに選択される。このとき、精度Pをできるだけ悪化させないことがパフォーマンススコアの悪化を防ぐことになる。
【0214】
補正方式M
3は、電力指令値が充電を示す期間、または放電を示す期間のどちらか一方の期間にのみ、特定の時間間隔で蓄電装置120の充放電の制御を停止する補正方式である。
【0215】
図17は、補正電力量x
nが正の値である場合に、補正方式M
3を用いたときの電力指令値と、補正済み指令値との関係を示す図である。
図17において、縦軸は、指令値を表し、横軸は、時間を表す。
図17において電力指令値は、破線で示され、補正済み指令値は、実線で示される。
【0216】
補正電力量x
nが正の値であるとき、すなわち実際の蓄電量が計画蓄電量よりも小さい場合、充放電制御装置100は、蓄電装置120の蓄電量を増やす必要がある。したがって、電力指令値補正部107は、電力指令値が放電を示す期間において、所定の周期ごとに所定時間、蓄電装置120の充放電を停止させる。
【0217】
精度Pが重視されるパフォーマンススコアでは、電力指令値と実際に蓄電装置120から出力される電力の電力値とが多くの期間で一致することが重要である。したがって、電力指令値と実際に蓄電装置120から出力される電力の電力値とが一致しない期間を最小化することで、精度
Pの悪化を抑制することができる。
【0218】
なお、図示しないが、補正電力量x
nが負の値であるとき、すなわち実際の蓄電量が計画蓄電量よりも大きい場合、充放電制御装置100は、蓄電装置120の蓄電量を減らす必要がある。したがって、電力指令値補正部107は、電力指令値が充電を示す期間において、所定の周期ごとに所定時間、蓄電装置120の充放電を停止させる。
【0219】
以下、補正方式M
3のときの制御部103の制御の詳細について説明する。
【0220】
補正方式M
3では、パラメータ決定部106が決定する補正パラメータp
nは、蓄電装置120の充放電を停止させる所定の時間(削減時間)である。
【0221】
補正方式M
3では、電力指令値補正部107は、式(18)に示される出力補正計算式f
yを用いて補正済み電力指令値を算出する。
【0223】
ここで、y
tは、電力指令値、tは、時刻、p
baseは、周期、p
nは、削減時間(補正パラメータ)、y´
tは補正済み指令値であり、modは、剰余を求める関数である。
【0224】
このように、電力指令値補正部107は、式(18)に示されるような出力補正計算式f
yを用いて補正済み指令値を算出する。この結果、補正済み指令値y´
tは、
図17に示されるような特性となる。
【0225】
以上説明した補正方式M
3によれば、パフォーマンススコアにおける精度Pの悪化を抑制しながら、蓄電装置120の蓄電量を制御することができる。すなわち、精度Pが重視されるパフォーマンススコアの算出方法が適用される安定化制御においては、補正方式M
3は、効果的である。
【0226】
(実施の形態4)
上記実施の形態1〜3においては、補正方式M
1、補正方式M
2、補正方式M
3について説明したが、充放電制御装置100は、これ以外の補正方式を用いてもよい。
【0227】
実施の形態4では、第4の補正方式(補正方式M
4)について詳細に説明する。
【0228】
補正方式M
4は、相関度Aを悪化させにくい補正方式である。このため、補正方式M
4は、式(10)で示されるf
L2が式(8)の条件を満たすような場合、すなわち、相関度Aの重み係数k
2が他の重み係数に比べて大きいときに選択されるとよい。
【0229】
補正方式M
4は、電力指令値と、蓄電装置120が実際に出力する電力指令値との相関度Aが悪化しないように、電力指令値が最大値または最小値付近の期間を中心に電力指令値を増加または減少させた補正済み電力指令値に補正する補正方式である。
【0230】
図18は、補正電力量x
nが正の値である場合に、補正方式M
4を用いたときの電力指令値と、補正済み指令値との関係を示す図である。
図18において、縦軸は、指令値を表し、横軸は、時間を表す。
図18において電力指令値は、破線で示され、補正済み指令値は、実線で示される。
【0231】
補正電力量x
nが正の値であるとき、すなわち実際の蓄電量が計画蓄電量よりも小さい場合、充放電制御装置100は、蓄電装置120の蓄電量を増やす必要がある。したがって、電力指令値補正部107は、電力指令値が示す電力値に充電を示す電力値(第1のオフセット電力値)を加算した電力値を、補正済み指令値として算出する。つまり、第1のオフセット電力値は、負の符号の電力値である。
【0232】
ここで、電力指令値補正部107は、電力指令値が示す電力値が大きいほど、値が小さくなる(マイナスになる)ように第1のオフセット電力値を決定する。
【0233】
また、図示しないが、補正電力量x
nが負の値であるとき、すなわち実際の蓄電量が計画蓄電量よりも大きい場合、充放電制御装置100は、蓄電装置120の蓄電量を減らす必要がある。したがって、電力指令値補正部107は、電力指令値が示す電力値に放電を示す電力値(第2のオフセット電力値)を加算した電力値を、補正済み指令値として算出する。つまり、第2のオフセット電力値は、正の符号の電力値である。
【0234】
ここで、電力指令値補正部107は、電力指令値が示す電力値が小さいほど、値が大きくなる(プラスになる)ように第2のオフセット電力値を決定する。
【0235】
すなわち、補正方式M
4では、電力指令値補正部107は、電力指令値が上限値付近および下限値付近の期間においては、電力指令値の補正量を大きくし、電力指令値が±0に近づくにつれて電力指令値の補正量を小さくする。なぜなら、このような補正方式を用いることで、相関度Aがあまり大きく悪化しないからである。
【0236】
以下、補正方式M
4のときの制御部103の制御の詳細について説明する。
【0237】
補正方式M
4では、パラメータ決定部106が決定する補正パラメータp
nは、増減係数である。パラメータ決定部106は、例えば、上述の式(13)に示される通り、補正電力量x
nに比例する増減係数を補正パラメータp
nとして決定する。
【0238】
補正方式M
4では、電力指令値補正部107は、式(19)に示されるような出力補正計算式f
yを用いて補正済み電力指令値を算出する。
【0240】
ここで、y
tは、電力指令値、p
nは、増減係数(補正パラメータ)であり、y´
tは、補正済み指令値である。
【0241】
このように、電力指令値補正部107は、式(19)に示される出力補正計算式f
yを用いて補正済み指令値を算出する。この結果、補正済み指令値y´
tは、
図18に示されるような特性となる。
【0242】
以上説明した補正方式M
4によれば、パフォーマンススコアにおける相関度Aの悪化を抑制しながら、蓄電装置120の蓄電量を制御することができる。すなわち、相関度Aが重視されるパフォーマンススコアの算出方法が適用される安定化制御においては、補正方式M
4は、効果的である。
【0243】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態に係る充放電制御装置(充放電制御方法、充放電制御システム)について説明したが、本発明は、これら実施の形態に限定されるものではない。以下のような場合も本発明に含まれる。
【0244】
(1)上記の各装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムで実現され得る。RAMまたはハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、各装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0245】
(2)上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、ROMからRAMにコンピュータプログラムをロードし、ロードしたコンピュータプログラムにしたがって演算等の動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0246】
(3)上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、各装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されてもよい。ICカードまたはモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。ICカードまたはモジュールには、上記の超多機能LSIが含まれてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、ICカードまたはモジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有してもよい。
【0247】
(4)本発明は、上記に示す方法で実現されてもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムで実現してもよいし、コンピュータプログラムからなるデジタル信号で実現してもよい。
【0248】
また、本発明は、コンピュータプログラムまたはデジタル信号をコンピュータ読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、BD(Blu−ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したもので実現してもよい。また、これらの記録媒体に記録されているデジタル信号で実現してもよい。
【0249】
また、本発明は、コンピュータプログラムまたはデジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送してもよい。
【0250】
また、本発明は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、メモリは、コンピュータプログラムを記憶しており、マイクロプロセッサは、コンピュータプログラムにしたがって動作してもよい。
【0251】
また、プログラムまたはデジタル信号を記録媒体に記録して移送することにより、またはプログラムまたはデジタル信号をネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。
【0252】
(5)上記実施の形態および上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【0253】
以上、一つまたは複数の態様に係る充放電制御装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。