(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
板状部と当該板状部に形成された位置決め孔とを有する第1の部材と、固着面と当該固着面から突出する位置決めピンとを有する第2の部材と、を備え、前記位置決めピンは、前記位置決め孔を挿通可能な先端側の挿入部と、前記固着面から所定高さに設定され前記挿入部が前記位置決め孔を挿通した状態で前記板状部と当接して当該板状部の前記固着面側への移動を阻止する間隙形成部と、前記挿入部に設けられ当該挿入部の前記間隙形成部からの突出高さを短縮可能な突出高変更部と、を有し、前記固着面には、前記間隙形成部の前記固着面からの突出高さよりも高く且つ前記挿入部の前記固着面からの突出高さよりも低い盛り付け高さで接着剤が盛り付けられている部材間の接着方法であって、
前記間隙形成部から先端側へ離間する前記挿入部の基端側に抜止部を設け、
前記抜止部よりも先端側に前記突出高さ変更部を設け、
前記板状部の一面と前記固着面とを対向させて前記位置決め孔へ前記位置決めピンの前記挿入部を先端側から挿入し、前記固着面に盛り付けられた接着剤を前記板状部の前記一面に付着させて拡げながら前記抜止部を前記位置決め孔に挿入し、前記板状部の前記一面に前記間隙形成部を当接することによって、前記第2の部材を前記第1の部材に対して位置決めするとともに、前記固着面から離れる側への前記位置決めされた位置からの前記板状部の移動を前記抜止部によって阻止し、
前記位置決め孔への前記位置決めピンの挿入によって、前記接着剤を前記固着面と前記板状部の前記一面との間に充填するとともに、
前記固着面から離れる側への前記位置決めされた位置からの前記板状部の移動を前記抜止部によって阻止した後、前記突出高さ変更部によって前記挿入部の前記突出高さを短縮する
ことを特徴とする部材間の接着方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特開2001−241269号公報の自動車窓用ガラス板取付構造は、取付孔と係合ピンとの係合のみによってガラス板を窓開口部に対して固定しているので、十分な取付強度を確保することが難しい。
【0005】
上記不都合は、取付孔を有する一方の部材と係合ピンを有する他方の部材との間に接着剤を充填することによって解消することができる。具体的には、接着剤を他方の部材に塗着し、一方の部材に他方の部材を取り付けることによって、両部材が接着され、取付強度が高まる。しかし、両部材間に確実に接着剤を充填するため他方の部材に接着剤を高く盛り付けると、取り付け作業時に係合ピンを取付孔に近づける際に、一方の部材のうち接着剤を塗付したくない場所に接着剤を不用意に付着させてしまうおそれがある。このような不用意な接着剤の付着は、接着剤による汚れの発生や必要な場所における接着剤の減少による取付強度の低下を招くおそれがある。
【0006】
また、上記不都合を回避するために、係合ピンの突出高さを必要以上に高く設定すると、一方の部材の取付孔が形成されている部分が薄板状である場合、係合ピンの先端側が取付孔の一面側から他面側へ貫通して、当該他面側から係合ピンの先端側が大きく突出してしまう。このため、一方の部材の他面側の空間が係合ピンの先端によって狭められ、空間の有効利用が難しくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、位置決めの作業性を悪化させることなく取付強度を確保することができ、且つ、位置決めされた後の部材の近傍の空間を有効に活用することが可能な部材間の接着
方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明は、第1の部材と第2の部材とを接着剤によって接着する部材間の接着方法である。第1の部材は、板状部と板状部に形成された位置決め孔とを有する。第2の部材は、固着面と固着面から突出する位置決めピンとを有する。位置決めピンは、位置決め孔を挿通可能な先端側の挿入部と、固着面から所定高さに設定され挿入部が位置決め孔を挿通した状態で板状部と当接して板状部の固着面側への移動を阻止する間隙形成部と、挿入部に設けられ挿入部の間隙形成部からの突出高さを短縮可能な突出高変更部とを有する。固着面には、
間隙形成部の固着面からの突出高さよりも高く且つ挿入部の固着面からの突出高さよりも低い盛り付け高さで接着剤が盛り付けられている。
【0009】
本発明の接着方法では、間隙形成部から先端側へ離間する挿入部の基端側に抜止部を設け、上記突出高さ変更部を抜止部よりも先端側に設け、板状部の一面と固着面とを対向させて位置決め孔へ位置決めピンの挿入部を先端側から挿入し、
固着面に盛り付けられた接着剤を板状部の一面に付着させて拡げながら抜止部を位置決め孔に挿入し、板状部の一面に間隙形成部を当接することによって、第2の部材を第1の部材に対して位置決めするとともに、固着面から離れる側への上記位置決めされた位置からの板状部の移動を抜止部によって阻止する。また、位置決め孔への位置決めピンの上記挿入によって、固着面上の接着剤を固着面と板状部の一面との間に充填する。そして、固着面から離れる側への上記位置決めされた位置からの板状部の移動が抜止部によって阻止された後、突出高さ変更部によって挿入部の突出高さを短縮する。
【0010】
上記
方法では、第1の部材が有する位置決め孔と第2の部材が有する位置決めピンとによって、固着面や板状部が延びる面方向に第2の部材を第1の部材に対して位置決めすることができる。また、位置決め孔と位置決めピンとを2対以上設けることにより、第2の部材を第1の部材に対して面方向に確実に位置決めすることができる。
【0011】
また、位置決めピンの挿入部が位置決め孔を挿通した状態で、位置決めピンの間隙形成部が位置決め孔を挿通せずに板状部と当接して板状部の一面側への固着面の移動を阻止するため、位置決めピンの突出方向に第2の部材を第1の部材に対して位置決めすることができる。
【0012】
また、間隙形成部の突出高さよりも高い盛り付け高さで接着剤を固着面に塗着した後に、間隙形成部と板状部とが当接するまで第2の部材を移動することによって、第1の部材の板状部と第2の部材の固着面との間に接着剤が確実に充填されるため、第1の部材と第2の部材との取付強度が確保される。
【0013】
また、突出高変更部により変更する前の挿入部の突出高さは、予め任意の突出高さに設定することが可能であり、接着剤を確実に充填するために要求される固着面からの接着剤の盛り付け高さよりも充分に高く設定することができる。このように、挿入部の突出高さを設定することにより、取り付け作業時に位置決めピンを位置決め孔に近づける際に、位置決めピンの先端が当接する前に第1の部材に接着剤が付着し難くなる。従って、第1の部材のうち接着剤を塗付したくない場所に接着剤を不用意に付着させることに起因する接着剤による汚れの発生や必要な場所における接着剤の減少による取付強度の低下を招くことなく、位置決めピンを位置決め孔へ挿入することができ、作業性が良好となる。
【0014】
さらに、上記のように挿入部の突出高さを充分に高く設定した場合であっても、第2の部材を第1の部材に取り付けた後(例えば位置決めされた両部材間で接着剤が硬化した後)に、板状部の他面側へ突出する挿入部を突出高変更部によって短縮又は除去することによって、板状部の他面側における挿入部の突出量を低減することができる。従って、板状部の他面側を他の構造物を配置するための空間として有効に活用することができる。
【0015】
突出高変更部は、挿入部の周方向に形成された易破断部であってもよい。易破断部は、破断したときに、間隙形成部側から挿入部の先端側を完全に切り離してもよく、間隙形成部側と挿入部の先端側とを一部で連結してもよい。易破断部で破断すると、挿入部の間隙形成部からの突出高さは易破断部までの高さに変更される。易破断部は、例えば、棒状や管状の挿入部を部分的に薄肉にする溝や切り欠きであってもよく、管状の挿入部に間欠的に形成された貫通孔であってもよい。
【0016】
また、突出高変更部は、挿入部の先端側を間隙形成部側に対して着脱自在に連結してもよい。挿入部の先端側は、間隙形成部側とは別部品として形成され、第2の部材を第1の部材に取り付けた後で取り外すことによって、別の取り付け作業において再利用できる。挿入部の先端側が間隙形成部側から取り外されると、挿入部が全て除去されるか又は挿入部の基端側が間隙形成部に残存する。突出高変更部は、例えば、挿入部の先端側と間隙形成部側を係合する孔と突起であってもよく、雄ネジと雌ネジであってもよい。
【0017】
また、突出高変更部は、挿入部の先端側を間隙形成部側へ移動可能に連結してもよい。突出高変更部は、取り付け作業に必要な高さに突出した挿入部の先端側を間隙形成部側に対して仮保持する。挿入部の先端側は、間隙形成部側とは別部品として形成され、突出方向に沿って間隙形成部側に対してスライド自在に支持される。挿入部の先端側が間隙形成部側へ移動すると、挿入部の先端側の一部が間隙形成部から突出した状態又は挿入部が全て間隙形成部へ埋没した状態に変更される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、位置決めの作業性を悪化させることなく取付強度を確保することができ、且つ、位置決めされた後の部材の近傍の空間を有効に活用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を
図1〜
図5に基づいて説明する。
図1は本実施形態にかかる部材間の接着構造を示す断面図であり、
図2は
図1の部材の取り付け前の状態を示す斜視図であり、
図3は本実施形態にかかる部材間の接着構造の取り付け作業途中を示す断面図であり、
図4は
図3の部材の取り付け作業が完了した状態を示す断面図であり、
図5は
図4の部材間の接着構造に対して他の構造物を配置した状態を示す断面図であり、
図6は本実施形態にかかる部材間の接着構造の位置決めピンの変形例を示す斜視図であり、
図7は本実施形態にかかる部材間の接着構造の位置決めピンの他の変形例を示す断面図であり、
図8は
図7のVIII-VIII方向から視た断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る部材間の接着構造1は、車両のボディパネル2とウィンドウガラス3と位置決めピン4と接着剤5とインテリアトリム6とを備える。ボディパネル2は第1の部材を構成し、ウィンドウガラス3及び位置決めピン4は第2の部材を構成する。
【0021】
ボディパネル2は、金属製部材であり、略四角形状の窓開口21と窓板取付部22と位置決め孔24とを有する。窓板取付部22は、板状部を構成し、窓開口21よりも大きい略四角形状で車両の内側へ屈曲した枠周部23と窓開口21との間に設けられた略四角枠板状部分である。
図2に示すように、位置決め孔24は窓板取付部22の上辺部に離間して2つ形成された貫通孔であり、2つの位置決め孔24のうち一方の位置決め孔24aは丸孔であり、他方の位置決め孔24bは一方の位置決め孔24aへ向かって延びた長孔である。
【0022】
ウィンドウガラス3は、固着面31を有し、窓板取付部22の窓開口21よりも大きく枠周部23よりも小さい透過性板状部材である。固着面31はウィンドウガラス3の一方の面のうち外周部分である。
【0023】
位置決めピン4は、樹脂製部材であり、固定部41と挿入部42と間隙形成部43と抜止部44と突出高変更部45とを有する。固定部41は、位置決めピン4の基端面であり、略正方形状を有し、接着部材によってウィンドウガラス3の固着面31に固定される。本実施形態では、2つの位置決めピン4が、2つの位置決め孔24a,24bの間隔と同じ間隔で、固着面31の上辺部に2つ固定される。位置決めピン4は、固定部41が固着面31に対して固定された状態で、固着面31から略垂直方向へ突出する。挿入部42は、位置決めピン4の先端側に配置され、先端が先細り形状で管状を有し、位置決め孔を挿通可能な部分である。挿入部42の突出高さは、固着面31から第1の所定高さh1(
図3に示す)に設定される。間隙形成部43は、位置決め孔24の開口よりも大きく固定部41と同じ略正方形状を有し、固着面31から第2の所定高さh2(
図3に示す)に設定される。なお、本実施形態では、間隙形成部43と固着面31との間は、先端に向けて略同一形状で延びているが、空間が形成されていてもよく、膨出形状であってもよい。抜止部44は、挿入部42に設けられ、間隙形成部43から先端側へ窓板取付部22の板厚よりも離間した位置に設定される。抜止部44は、本実施形態では、挿入部42の側面方向へ一対突出して位置決め孔24の開口よりも大きい径を有し、中心軸方向に力を加えると位置決め孔24の開口よりも縮径し、その力を解除すると位置決め孔24の開口よりも拡径して初期状態に復帰する。突出高変更部45は、挿入部42に設けられ、挿入部42の間隙形成部43からの突出高さを短縮可能である。突出高変更部45は、本実施形態では、抜止部44よりも先端側に設けられ、管状の挿入部42の周方向に形成された易破断部であり、挿入部を部分的に薄肉にする溝46が形成されると共に、間欠的に貫通孔47が形成される。易破断部である突出高変更部45で破断すると、間隙形成部43側から挿入部42の先端側を完全に切り離すか又は間隙形成部43側と挿入部42の先端側とを一部で連結した状態になり、挿入部42の間隙形成部43からの突出高さは突出高変更部45までの高さに変更される。
【0024】
図2に2点鎖線で示すように、接着剤5は、ウィンドウガラス3の固着面31の全周に(位置決めピン4が位置決め孔24から外れた状態で)塗着される。このとき、
図1、
図3及び
図4に2点鎖線で示すように、接着剤5は、固着面31から間隙形成部43までの第2の所定の高さh2以上の高さであって、且つ、固着面31から位置決めピン4の先端までの第1の所定高さh1よりも低い高さで固着面31から盛り付けられる。
【0025】
インテリアトリム6は、樹脂製の内装パネル部材である。
【0026】
次に、本実施形態の位置決めピン4が固定されたウィンドウガラス3をボディパネル2へ取り付ける作業について説明する。
【0027】
まず、ウィンドウガラス3の固着面31の上辺部に2つの位置決めピン4を接着部材によって固定するとともに、固着面31の全周に接着剤5を塗付する。
【0028】
次に、窓板取付部22の一面(車両外側面)に対して、ウィンドウガラス3の固着面31を対向させて近づける。次に、2つの位置決めピン4の先端を窓板取付部22の一面に当接させながら、2つの位置決めピン4が2つの位置決め孔24に挿入される位置を探る。この状態では、接着剤5よりも位置決めピン4がボディパネル2へ向かって高く突出しているため、ボディパネル2に対して接着剤5が付着しない。
【0029】
次に、2つの位置決めピン4と2つの位置決め孔24との位置が合致した状態でウィンドウガラス3をボディパネル2側へ移動する。この移動により、挿入部42のうち抜止部44よりも先端側が位置決め孔24へ容易に挿入されて抜止部44が位置決め孔24の開口に一旦引っ掛かる。この状態でウィンドウガラス3をボディパネル2側へ強く押し込むと、抜止部44が位置決め孔24の開口に当接しながら径縮されて挿入部42が位置決め孔24へさらに挿入され、
図3に示すように、間隙形成部43が窓板取付部22に当接し、窓枠取付部22の一面側へのウィンドウガラス3の移動が阻止される。また、間隙形成部43と窓板取付部22の一面とが当接する位置まで位置決めピン4を挿入すると、抜止部44が位置決め孔24を完全に通過して拡径し、抜止部44が窓板取付部22の他面に当接してウィンドウガラス3のボディパネル2から離間する方向への移動を阻止する。このように、位置決め孔24へ位置決めピン4が挿入され、窓板取付部22の一面に間隙形成部43が当接し、窓板取付部43の他面に抜止部44が当接することによって、ウィンドウガラス3がボディパネル2に対して位置決めされる。
【0030】
固着面31に盛り付けられた接着剤5は、挿入部42が位置決め孔24へ挿入される過程において、窓板取付部22の一面に付着して拡がり、ウィンドウガラス3がボディパネル2に対して位置決めされた状態で、窓板取付部22の一面と固着面31との間に充填される。
【0031】
また、
図3に示すように、ウィンドウガラス3がボディパネル2に対して位置決めされた状態では、窓板取付部22の板厚に対して、窓板取付部22と当接する間隙形成部43から挿入部42の先端までの突出高さが充分高いため、挿入部42が窓板取付部22に形成された位置決め孔24を貫通し、抜止部44と突出高変更部45とを含む挿入部42の先端側の一部が窓板取付部22の他面側へ突出する。
【0032】
次に、
図4に示すように、接着剤5が硬化した後に窓板取付部22の他面側へ突出した挿入部42を易破断部の突出高変更部45で破断する。なお、本実施形態では、突出高変更部45は、抜止部44よりも先端側に配置されているため、接着剤5が硬化する前に破断してもよい。挿入部42の突出高変更部45で破断すると、挿入部42の固着面31からの突出高さが突出高変更部45までの高さに変更される。以上により、本実施形態の位置決めピン4が固定されたウィンドウガラス3をボディパネル2へ取り付ける作業が完了する。
【0033】
ここで、挿入部42の突出高さを短く変更しなければ、
図1に2点鎖線で示すように、挿入部42の先端側とインテリアトリム6とが干渉してしまうため、窓板取付部22の他面側からインテリアトリム6を離間させて配置するか、インテリアトリム6を干渉しない形状にする必要がある。これに対して、本実施形態では、取り付け作業が完了した状態で、窓板取付部22の他面側へ突出した挿入部42の突出高さが突出高変更部45によって短く変更されているため、
図5に示すように、インテリアトリム6を窓板取付部22の他面側に近接させて配置することができ、車両の室内空間を広く確保することができる。
【0034】
なお、本実施形態では抜止部44は、挿入部42の側面方向へ突出して位置決め孔24の開口よりも大きい径を有する構成であるが、これに限らない。例えば、間隙形成部43と窓板取付部22の一面とが当接する位置まで位置決め孔24に挿入部42が挿入された状態で、他面側に突出する挿入部42に対して、位置決め孔24の開口よりも大きいクリップなどを装着してもよい。また、挿入部42の側面うち間隙形成部43から先端側へ窓板取付部22の板厚よりも離間した位置に予め設けられた孔を有し、取り付け作業によってウィンドウガラス3がボディパネル2に対して位置決めされた状態で、他面側に露出する孔に別部品の棒状部材を挿入して棒状部材を挿入部42の側面から突出させ、窓板取付部22の他面と棒状部材とを当接させてもよい。
【0035】
また、本実施形態では抜止部44を設けるが、抜止部44は部材間の接着構造1に必須の構成要件ではない。例えばウィンドウガラス3をボディパネル2の上に接着させる構造であって、ボディパネル2の窓板取付部22の一面側に間隙形成部43が当接した状態で、ウィンドウガラス3の自重によってウィンドウガラス3が位置決めピン4の基端側へ容易に移動せずに保持される場合には、抜止部44を設ける必要はない。
【0036】
また、本実施形態では突出高変更部45は、抜止部44よりも先端側に設けられ、管状の挿入部42の周方向に形成され、挿入部42を部分的に薄肉にする溝46を形成すると共に、間欠的に貫通孔47を形成する易破断部として形成したが、かかる構成に限らない。例えば、突出高変更部45は、抜止部44よりも基端側に設けてもよい。この場合、必ず接着剤5が硬化した後に挿入部42の突出高さを変更する。また、突出高変更部45を易破断部として設ける場合には、管状の挿入部42に形成した切り欠きであってもよく、棒状の挿入部42に形成した溝や切り欠きであってもよい。
【0037】
また、突出高変更部45は、易破断部ではなく、挿入部42の先端側を間隙形成部43側に対して着脱自在に連結してもよい。この場合、挿入部42の先端側は、間隙形成部43側とは別部品として形成され、ボディパネル2にウィンドウガラス3を取り付けた後で間隙形成部43側から取り外すことによって、別の取り付け作業において再利用することができる。挿入部42の先端側が間隙形成部43側から取り外されると、挿入部42が全て除去されるか又は挿入部42の基端側が間隙形成部43に残存する。突出高変更部45は、例えば、雄ネジと雌ネジであってもよい。また、他の突出高変更部45の構成を
図6に基づいて説明する。
図6に示す本実施形態の位置決めピン4の変形例では、固定部41と間隙形成部43とは略円形を有し、抜止部は設けられていない。
図6に示すように、突出高変更部45は、間隙形成部43側に設けられ基端側へ延びた孔71と、挿入部42に設けられ基端側へ延びて孔71に着脱自在に係合する突起72とであってもよい。
【0038】
また、突出高変更部45は、易破断部ではなく、挿入部42の先端側を間隙形成部43側へ移動可能に連結してもよい。突出高変更部45は、取り付け作業に必要な高さに突出した挿入部42の先端側を間隙形成部43側に対して仮保持する。挿入部42の先端側は、間隙形成部43側とは別部品として形成され、突出方向に沿って間隙形成部43側に対してスライド自在に支持される。挿入部42の先端側が間隙形成部43側に対して仮保持された状態で、挿入部42の先端側を間隙形成部43側へ押し込むと、仮保持され状態が解除されて挿入部42の先端側が間隙形成部43側へ移動する。挿入部42の先端側が間隙形成部43側へ移動すると、挿入部42の先端側の一部が間隙形成部43から突出した状態又は挿入部42が全て間隙形成部43へ埋没した状態に変更される。このように、挿入部42の先端側を間隙形成部43側へ移動させるため、挿入部42の突出高さを変更するときに挿入部42の先端側が離脱せずゴミが発生しない。挿入部42を取り付け作業に必要な高さに突出した位置での仮保持は、例えば、雄ネジと雌ネジとによる構造であってもよい。また、他の仮保持のための構造を
図7及び
図8に基づいて説明する。
図7及び
図8には、本実施形態の位置決めピン4の変形例を示す。かかる変形例では、固定部41と間隙形成部43とは略円形を有し、抜止部は設けられていない。
図7及び
図8に示すように、間隙形成部43よりも基端側で挿入部42に設けられ側方へ突出する凸部75と、間隙形成部43側に設けられ凸部75を回転自在に支持する回転支持部76と、間隙形成部43側に設けられ挿入部42を収納可能な収納孔73と、回転支持部76に設けられ凸部75よりも大きく開口して挿入部42の間隙形成部43側へのスライド移動を許容する凹部74とを備えてもよい。凸部75が凹部74に重なる位置まで挿入部42を回転すると、間隙形成部43側へ挿入部42をスライド移動することができる。また、スライド自在に支持する構造は、例えば、挿入部42の先端側に、先端側よりも細く形成された挿入部42の中間部が収納される構成であってもよい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態では、ボディパネル2が有する位置決め孔24とウィンドウガラス3が有する位置決めピン4とによって、固着面31や窓板取付部22が延びる面方向にウィンドウガラス3をボディパネル2に対して位置決めすることができる。また、位置決め孔24と位置決めピン4とが2対設けられているため、ウィンドウガラス3をボディパネル2に対して面方向に確実に位置決めすることができる。
【0040】
また、位置決めピン4の挿入部42が位置決め孔24を挿通した状態で、位置決めピン4の間隙形成部43が位置決め孔24を挿通せずに窓板取付部22と当接して、窓枠取付部22の一面側へのウィンドウガラス3の移動を阻止するため、位置決めピン4の突出方向にウィンドウガラス3をボディパネル2に対して位置決めすることができる。また、抜止部44が窓板取付部22の他面に当接して、ボディパネル2から離間する方向へのウィンドウガラス3の移動を阻止する。これらにより、ウィンドウガラス3をボディパネル2に対して位置決めピン4の突出方向に確実に位置決めすることができる。
【0041】
また、2つの位置決め孔24a,24bを一方の位置決め孔24aが丸孔であり、他方の位置決め孔24bが一方の位置決め孔24aに向かって延びた長孔であるため、ウィンドウガラス3に予め固定する2つの位置決めピン4間との距離の誤差を吸収することができる。
【0042】
また、固着面31から間隙形成部43までの第2の所定の高さh2以上の高さで接着剤5を固着面31に盛り付けた後に、間隙形成部43と窓板取付部22とが当接するまでウィンドウガラス3を移動することによって、ボディパネル2の窓板取付部22とウィンドウガラス3の固着面31との間に接着剤5が確実に充填されるため、ボディパネル2とウィンドウガラス3との取付強度が確保される。
【0043】
また、突出高変更部45により変更する前の挿入部42の突出高さは、接着剤5を確実に充填するために要求される固着面31からの接着剤5の盛り付け高さよりも充分に高い第1の所定高さh1に設定する。このため、取り付け作業時に位置決めピン4を位置決め孔24に近づける際に、位置決めピン4の先端が当接する前にボディパネル2に接着剤5が付着し難くなる。従って、ボディパネル2のうち接着剤5を塗付したくない場所(例えば窓板取付部22以外の場所)に接着剤5を不用意に付着させることに起因する接着剤5による汚れの発生や必要な場所における接着剤5の減少による取付強度の低下を招くことなく、位置決めピン4を位置決め孔24へ挿入することができ、作業性が良好となる。
【0044】
さらに、挿入部42の突出高さを充分に高く設定した場合であっても、ウィンドウガラス3をボディパネル2に取り付けた後(例えば位置決めされた両部材間で接着剤5が硬化した後)に、窓板取付部22の他面側へ突出する挿入部42を突出高変更部45によって短縮又は除去することによって、窓板取付部22の他面側における挿入部42の突出量を低減することができる。従って、窓板取付部22の他面側をインテリアトリム6など他の構造物を配置するための空間として有効に活用することができる。
【0045】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【0046】
例えば、本実施形態では、第2の部材を構成するウィンドウガラス3(の固着面31)と位置決めピン4とは別部品であるが、固着面31と位置決めピン4とを一体的に形成してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、車両のボディパネル2に形成された窓板取付部22に対してウィンドウガラス3を取り付ける構造を示したが、これに限らず、一方の部材に対して他方の部材を取り付ける構造であれば、車両の他の部材間の取り付けや、車両以外の部材間の取り付けに対しても適用可能である。