特許第5756607号(P5756607)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日置電機株式会社の特許一覧

特許5756607電流測定装置、及び電流センサの変換レートの検出方法
<>
  • 特許5756607-電流測定装置、及び電流センサの変換レートの検出方法 図000002
  • 特許5756607-電流測定装置、及び電流センサの変換レートの検出方法 図000003
  • 特許5756607-電流測定装置、及び電流センサの変換レートの検出方法 図000004
  • 特許5756607-電流測定装置、及び電流センサの変換レートの検出方法 図000005
  • 特許5756607-電流測定装置、及び電流センサの変換レートの検出方法 図000006
  • 特許5756607-電流測定装置、及び電流センサの変換レートの検出方法 図000007
  • 特許5756607-電流測定装置、及び電流センサの変換レートの検出方法 図000008
  • 特許5756607-電流測定装置、及び電流センサの変換レートの検出方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756607
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】電流測定装置、及び電流センサの変換レートの検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20150709BHJP
   G01R 15/08 20060101ALI20150709BHJP
   G01R 15/18 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   G01R19/00 A
   G01R15/08
   G01R15/18 D
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-147562(P2010-147562)
(22)【出願日】2010年6月29日
(65)【公開番号】特開2012-13435(P2012-13435A)
(43)【公開日】2012年1月19日
【審査請求日】2013年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088306
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮 良雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126343
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 浩之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊毅
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−233208(JP,A)
【文献】 特開平6−142943(JP,A)
【文献】 特開2009−192295(JP,A)
【文献】 特開2010−107264(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3046142(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3067582(JP,U)
【文献】 特開2000−338141(JP,A)
【文献】 特開平10−62453(JP,A)
【文献】 特開2004−205264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00−19/32、
11/00−11/66、
21/00−22/10、
35/00−35/06、
15/00−15/26、
27/00−27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電流の流れる測定対象体に電磁結合して該交流電流の電流値に対応する検出値を出力するカレントトランスを有する電流センサが着脱可能であると共に、該交流電流の電流値と該検出値との変換レートが設定されて使用される電流測定装置であって、
該カレントトランスに開閉制御可能なスイッチを介して変換レート検出用の電流を出力する交流電源と、
該カレントトランスに並列接続されたシャント抵抗の両端間の電圧値を測定する第1の電圧測定部と、
変換レート検出用の電線の両端間の電圧値を測定する第2の電圧測定部と、
該スイッチが閉状態に制御されたときに該交流電源から出力ケーブルを通して該カレントトランスに該変換レート検出用の電流を出力すると共に、該カレントトランス該変換レート検出用の電線電磁結合させた状態で、該第1の電圧測定部の測定した電圧値と該第2の電圧測定部の測定した電圧値とに基づいて、該変換レートを算出する変換レート算出部とを
備えることを特徴とする電流測定装置。
【請求項2】
前記交流電源の出力する前記変換レート検出用の電流の電流値を測定する電流測定部を更に備え、
前記変換レート算出部が、前記第1の電圧測定部の測定した電圧値と、前記第2の電圧測定部の測定した電圧値と、該電流測定部の測定した電流値とに基づいて、前記変換レートを算出することを特徴とする請求項1に記載の電流測定装置。
【請求項3】
前記変換レート検出用の電線の両端間の電圧値を増幅する増幅器を更に備え、前記第の電圧測定部は、該増幅器によって増幅された電圧値を測定することを特徴とする請求項1に記載の電流測定装置。
【請求項4】
前記変換レート検出用の電線と前記増幅器との間、及び/又は前記増幅器と前記第の電圧測定部との間に、前記変換レート検出用の電流の交流周波数を通過させる周波数フィルタを更に備えることを特徴とする請求項3に記載の電流測定装置。
【請求項5】
前記変換レート検出用の電線が着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載の電流測定装置。
【請求項6】
開閉制御可能なスイッチを介して前記交流電源が前記カレントトランスに前記変換レート検出用の電流を出力可能であり、該スイッチが開状態に制御されたときに、前記第1の電圧測定部の測定する電圧値と、前記変換レート算出部が予め算出した前記変換レートとに基づいて、前記測定対象体に流れる交流電流の電流値を算出する測定電流算出部を備えることを特徴とする請求項1に記載の電流測定装置。
【請求項7】
請求項1から6に記載の電流測定装置を備えることを特徴とする電力測定装置。
【請求項8】
交流電流の流れる測定対象体に電磁結合して該交流電流の電流値に対応する検出値を出力するカレントトランスを有する電流センサの該交流電流の電流値と該検出値との変換レートを検出するために、
スイッチが閉状態に制御されたときに該交流電源から出力ケーブルを通して該カレントトランスに交流電源から変換レート検出用の電流を出力すると共に、該カレントトランスと該変換レート検出用の電線とを電磁結合させた状態で、
該カレントトランスに並列接続されたシャント抵抗の両端間の電圧値を第1の電圧測定部が測定すると共に、該変換レート検出用の電線の両端間の電圧値を第2の電圧測定部が測定し、測定されたこれら両電圧値に基づいて、変換レート算出部が該変換レートを算出することを特徴とする電流センサの変換レートの検出方法。
【請求項9】
前記シャント抵抗の両端間の電圧値を第1の電圧測定部が測定すると共に、前記変換レート検出用の電線の両端間の電圧値を第2の電圧測定部が測定する際に、更に前記変換レート検出用の電流の電流値を電流測定部が測定し、これら両電圧値及びこの電流値に基づいて、変換レート算出部が前記変換レートを算出することを特徴とする請求項8に記載の電流センサの変換レートの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレントトランス型の電流センサが着脱可能な電流測定装置、及びその電流センサの出力する検出値の変換レートを検出するための変換レートの検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルなどの測定対象体に流れる交流電流の電流値を測定するために、クランプ式の電流センサが広く使用されている。クランプ式の電流センサは、測定対象体を切断することなく電気的絶縁性を保ちながら流れる電流を検出することができる。
【0003】
このような電流センサが、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に記載されたクランプセンサは、円弧状に配置された一対の磁気コアが測定対象体をクランプ可能に開閉自在となっており、この磁気コアの周面に巻線が配置されている。
【0004】
この磁気コア及び巻線がカレントトランスとなって、クランプした測定対象体に流れる交流電流が検出される。カレントトランスは、CT(Current Transformer)、電流変成器、変流器、又は電流検出用トランスなどとも呼ばれるものであり、測定対象体が巻数1回の1次巻線、カレントトランスが2次巻線となって電磁結合し、1次巻線(測定対象体)に流れる電流が、1次巻線と2次巻線との巻数比に応じた電流に変換されて、2次巻線(カレントトランス)から出力される。
【0005】
電流センサは、出力する検出値として、カレントトランスの出力をそのまま電流出力するタイプのものや、カレントトランスに並列にシャント抵抗を接続してカレントトランスの出力する電流を電圧に変換して電圧出力するタイプのものがある。
【0006】
このような電流センサは、電流測定装置や、特許文献2に開示された電力測定装置に接続されて使用される。電流センサのカレントトランスは、測定対象とする電流値範囲で好適な検出値を出力するような巻数で巻かれている。そのため、測定者は、測定する電流値範囲に適する電流センサを選択して電流測定装置に装着して使用するが、電流センサを装着した際に、測定対象体を流れる交流電流値と電流センサの出力する検出値との変換レートを装置に設定する必要がある。
【0007】
測定者は、電流測定装置等のディスプレイに表示された複数の電流センサの型名の中から使用する電流センサの型名を選択することで電流センサの変換レートを設定したり、装置の操作部からキー入力して変換レートを数値設定したりする。このように測定者が手動で設定するために、煩雑であり、更に誤った変換レートを設定してしまうと正しい測定値を得ることができないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−213598号公報
【特許文献2】特開2000−338147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、カレントトランスを有する電流センサの変換レートを自動で検出することができる電流測定装置、及び電流センサの変換レートの検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された電流測定装置は、交流電流の流れる測定対象体に電磁結合して該交流電流の電流値に対応する検出値を出力するカレントトランスを有する電流センサが着脱可能であると共に、該交流電流の電流値と該検出値との変換レートが設定されて使用される電流測定装置であって、
該カレントトランスに開閉制御可能なスイッチを介して変換レート検出用の電流を出力する交流電源と、
該カレントトランスに並列接続されたシャント抵抗の両端間の電圧値を測定する第1の電圧測定部と、
変換レート検出用の電線の両端間の電圧値を測定する第2の電圧測定部と、
該スイッチが閉状態に制御されたときに該交流電源から出力ケーブルを通して該カレントトランスに該変換レート検出用の電流を出力すると共に、該カレントトランス該変換レート検出用の電線電磁結合させた状態で、該第1の電圧測定部の測定した電圧値と該第2の電圧測定部の測定した電圧値とに基づいて、該変換レートを算出する変換レート算出部とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載された電流測定装置は、請求項1に記載の電流測定装置であって、前記交流電源の出力する前記変換レート検出用の電流の電流値を測定する電流測定部を更に備え、
前記変換レート算出部が、前記第1の電圧測定部の測定した電圧値と、前記第2の電圧測定部の測定した電圧値と、該電流測定部の測定した電流値とに基づいて、前記変換レートを算出することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載された電流測定装置は、請求項1に記載の電流測定装置であって、前記変換レート検出用の電線の両端間の電圧値を増幅する増幅器を更に備え、前記第の電圧測定部は、該増幅器によって増幅された電圧値を測定することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載された電流測定装置は、請求項3に記載の電流測定装置であって、前記変換レート検出用の電線と前記増幅器との間、及び/又は前記増幅器と前記第の電圧測定部との間に、前記変換レート検出用の電流の交流周波数を通過させる周波数フィルタを更に備えることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載された電流測定装置は、請求項1に記載の電流測定装置であって、前記変換レート検出用の電線が着脱可能であることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載された電流測定装置は、請求項1に記載の電流測定装置であって、開閉制御可能なスイッチを介して前記交流電源が前記カレントトランスに前記変換レート検出用の電流を出力可能であり、
該スイッチが開状態に制御されたときに、前記第1の電圧測定部の測定する電圧値と、前記変換レート算出部が予め算出した前記変換レートとに基づいて、前記測定対象体に流れる交流電流の電流値を算出する測定電流算出部を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載された電力測定装置は、請求項1から6に記載の電流測定装置を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載された電流センサの変換レート検出方法は、交流電流の流れる測定対象体に電磁結合して該交流電流の電流値に対応する検出値を出力するカレントトランスを有する電流センサの該交流電流の電流値と該検出値との変換レートを検出するために、
スイッチが閉状態に制御されたときに該交流電源から出力ケーブルを通して該カレントトランスに交流電源から変換レート検出用の電流を出力すると共に、該カレントトランスと該変換レート検出用の電線とを電磁結合させた状態で、
該カレントトランスに並列接続されたシャント抵抗の両端間の電圧値を第1の電圧測定部が測定すると共に、該変換レート検出用の電線の両端間の電圧値を第2の電圧測定部が測定し、測定されたこれら両電圧値に基づいて、変換レート算出部が該変換レートを算出することを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載された電流センサの変換レートの検出方法は、請求項8に記載の電流センサの変換レートの検出方法であって、前記シャント抵抗の両端間の電圧値を第1の電圧測定部が測定すると共に、前記変換レート検出用の電線の両端間の電圧値を第2の電圧測定部が測定する際に、更に前記変換レート検出用の電流の電流値を電流測定部が測定し、これら両電圧値及びこの電流値に基づいて、変換レート算出部が前記変換レートを算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電流測定装置、及び電流センサの変換レートの検出方法によれば、電流センサのカレントトランスに交流電源から変換レート検出用の電流を出力させて、カレントトランスに並列接続されたシャント抵抗の両端間の電圧値を第1の電圧測定部が測定すると共に、カレントトランスに電磁結合させた変換レート検出用の電線の両端間の電圧値を第2の電圧測定部が測定することで、カレントトランスと変換レート検出用の電線との電圧変換比、つまりカレントランスの巻数によって決まる変換レートを自動的に算出することができるので、変換レートを手動で設定する必要がなく、変換レートを設定ミスなく正確に設定することができると共に、迅速かつ簡便に設定することができる。
【0020】
また、本発明の電流測定装置、及び電流センサの変換レートの検出方法によれば、更に、交流電源からカレントトランスに出力する変換レート検出用の電流の電流値を電流測定部が測定することで、この電流値とシャント抵抗の両端間の電圧値とからシャント抵抗の抵抗値を変換レート算出部が算出して、この抵抗値とカレントトランスの巻数とによって決まる変換レートを自動的に算出することができるので、例えばシャント抵抗が電流センサ側に配置されている電圧出力タイプの電流センサであったとしても、その変換レートを自動的に検出することができる。
【0021】
また、本発明の電流測定装置によれば、変換レート検出用の電線の両端間の電圧値を増幅する増幅器を更に備えることにより、変換レート検出用の電線の両端間の電圧値が小さな値であったとしても確実かつ高精度に測定することができるので、変換レートを高精度に検出することができる。
【0022】
また、本発明の電流測定装置によれば、増幅器の前段、及び/又は後段に周波数フィルタを備えることにより、ノイズの影響を受けることなく、変換レートを一層高精度に検出することができる。
【0023】
また、本発明の電流測定装置によれば、変換レート検出用の電線が着脱可能なことにより、変換レートの設定を行わないときにはこの電線を取り外すことで邪魔にならない。更に、変換レート検出用の電線を装着しないときは、第2の電圧測定部で例えば測定対象体などの電圧値を測定してもよい。
【0024】
本発明の電流測定装置によれば、開閉制御可能なスイッチを介して交流電源がカレントトランスに変換レート検出用の電流を出力可能とすることにより、第1の電圧測定部を、変換レートの検出用と、測定対象体の電流測定用との両方に兼用できるため、構成を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明を適用する電流測定装置の変換レート検出時の使用状態を示す概要図である。
図2図1の状態のブロック図である。
図3図2の状態の等価回路図である。
図4図3に示した等価回路図のトランスの2次側回路(電線39側)を1次側に換算して示した等価回路図である。
図5】本発明を適用する電流測定装置の電流測定時の使用状態を示す概要図である。
図6図5の状態の一部を示すブロック図である。
図7】本発明を適用する他の電流測定装置の変換レート検出時の使用状態を示すブロック図である。
図8】本発明を適用する電流測定装置の検出電圧測定部の前段にバンドパスフィルタ及び増幅器を追加した例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0027】
本発明の実施形態の一例である電流測定装置の使用状態を図1図5に示す。両図に示す電流測定装置1は、そのコネクタ11に、電流センサ2の出力ケーブル34の先端に付されたコネクタ35が嵌合することで、電流センサ2が着脱可能に装着されるものである。一例として、コネクタ11はBNC型のレセプタクルであり、コネクタ35はBNC型のプラグである。この電流測定装置1の正面には、測定した電流値を表示する表示部や操作ボタンが配置されている。
【0028】
図5は、商用交流電源80と負荷回路82とを接続する電力ケーブル81(測定対象体の一例)に流れる交流電流の電流値を、電流測定装置1及び電流センサ2を用いて測定している状態を示した図である。
【0029】
電流センサ2は、公知のカレントトランス型のものであり、本体部31の開閉レバー32を操作することで円環状のクランプ部33が開閉自在に構成されていることで、その円環状の内側に電力ケーブル81が貫通(クランプ)可能になっている。
【0030】
電流測定装置1は、電力ケーブル81に流れる交流電流の電流値と、電力センサ2の出力する検出値との変換レートが設定されていることで、電力センサ2の検出値及び変換レートに基づいて、交流電流の電流値を算出し、表示部に表示可能に構成されている。
【0031】
本発明の電流測定装置1は、この電流センサ2の変換レートを自動検出できるものである。図1は、電流測定装置1が変換レートを自動検出している状態を示した図である。
【0032】
同図に示すように、電流測定装置1は、そのコネクタ12a,12bに、接続用端子38a、38bが両端に付された変換レート検出用の電線39が、着脱可能に装着されるものである。電線39は、電流測定装置1に装着された状態で、電流センサ2のクランプ部33によってクランプ可能な長さで形成されている。一例として、コネクタ12a,12bはバナナジャックや端子台であり、接続用端子38a、38bはバナナプラグやY字型プラグ、U字型プラグである。
【0033】
図1に示す状態のブロック図を図2に示す。電流センサ2は、クランプ部33の内部にカレントトランス36を有している。カレントトランス36は、電線がコイル状にn回巻かれて構成されている。このカレントトランス36と、クランプ部33を貫通する電線39や電力ケーブル81(図5参照)とが、巻数n:1のトランスとして電磁結合可能になっている。
【0034】
この電流センサ2は電圧出力タイプのものであり、カレントトランス36から出力される電流を電圧に変換するためのシャント抵抗37が、カレントトランス36に並列接続されている。シャント抵抗37は、カレントトランス36の出力電流範囲に合わせて抵抗値RCTが決められていて、この抵抗値RCTは、一例として1Ω〜1kΩ程度の小さな値である。このシャント抵抗37は、クランプ部33の根元部分、又は本体部31の内部に配置されている。シャント抵抗37の各端には、一対の電線路で構成される出力ケーブル34を介して、コネクタ35の接続端子35a、35bが接続されている。
【0035】
電流測定装置1は、コネクタ11、コネクタ12a、コネクタ12b、第1の電圧測定部であるセンサ電圧測定部13、第2の電圧測定部である変換電圧測定部14、スイッチ15、電流測定部16、交流電源17、変換レート算出部18、及び測定電流算出部19を備えている。
【0036】
コネクタ11は、接続端子11a、11bを有し、電流センサ2のコネクタ35と嵌合して、接続端子35aと接続端子11aとが接続されると共に、接続端子35bと接続端子11bとが接続される。この接続端子11a、11bは、センサ電圧測定部13に接続されている。
【0037】
センサ電圧測定部13は、接続端子11a、11b間の電圧値を測定して、変換レート算出部18に出力する。センサ電圧測定部13の等価入力抵抗51の抵抗値Rは、例えば100kΩ以上、好ましくは500kΩ以上のようにシャント抵抗37の抵抗値RCTと比べて充分大きな値になっている。
【0038】
また、接続端子11a、11b間には、スイッチ15、電流測定部16、及び交流電源17がこの順で直列接続されて接続されている。スイッチ15は、開閉制御が可能なものである。
【0039】
電流測定部16は、電流検出抵抗41、検出電圧測定部42、及び注入電流算出部43を有している。電流検出抵抗41は、その抵抗値rが一例として1Ω〜10kΩ程度のものであり、スイッチ15と交流電源17との間に接続されている。検出電圧測定部42は、電流検出抵抗41の両端間の電圧値を測定する。検出電圧測定部42の入力抵抗値(非図示)は、例えば100kΩ以上、好ましくは500kΩ以上のように電流検出抵抗41の抵抗値rと比べて充分大きな値となっている。注入電流算出部43は、電流検出抵抗41の既知の抵抗値r、及び検出電圧測定部42の測定した電圧値から電流検出抵抗41に流れる電流値、つまり交流電源17の出力する電流値を算出して、変換レート算出部18に出力する。
【0040】
交流電源17は、電流センサ2で測定可能な周波数帯域内の交流電流、つまりカレントトランス36の周波数特性が平坦な領域内の周波数の交流電流を出力するものである。この周波数は、電流センサ2で測定可能な周波数内であれば、なるべく高い周波数であることが好ましい。例えば、電流センサ2の周波数特性によって異なるが、1k〜10kHz程度の周波数であることが好ましい。交流電源17として、定電圧源を用いてもよいし、定電流源を用いてもよい。
【0041】
変換電圧測定部14は、コネクタ12a、12b間の電圧値を測定して、変換レート算出部に出力する。変換電圧測定部14の等価入力抵抗52の抵抗値Rは、例えば100kΩ以上、好ましくは500kΩ以上のようにシャント抵抗37の抵抗値RCTと比べて充分大きな値となっている。
【0042】
センサ電圧測定部13、変換電圧測定部14、及び検出電圧測定部42は、各々アナログ/デジタル変換器を有していて電圧値をデジタル値で出力する。
【0043】
変換レート算出部18は、センサ電圧測定部13の測定した電圧値と、変換電圧測定部14の測定した電圧値と、電流測定部16の測定した電流値とに基づいて、変換レートを算出して記憶する。測定電流算出部19は、電力ケーブル81(図5参照)に流れる交流電流の電流値を、センサ電圧測定部13の測定した電圧値と、変換レート算出部18の記憶する変換レートとに基づいて交流電圧値を算出する。
【0044】
変換レート算出部18、測定電流算出部19、及び注入電流算出部43は、全体としてCPU(Central Processing Unit)、その動作プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、測定値を一時的に記憶したり演算用に使用したりするRAM(Random Access Memory)、及び変換レートを記憶するフラッシュROM等で構成されて実現されている。
【0045】
次に、電流測定装置1による電流センサ2の変換レートの検出方法について説明する。
【0046】
測定者は、測定を行う電流値範囲で使用可能な電流センサ2を選定して、電流測定装置1、電流センサ2、及び電線39を図1に示すように接続する。具体的には、電流センサ2のコネクタ35を、電流測定装置1のコネクタ11に接続する。また、電線39の接続用端子38aをコネクタ12aに接続すると共に、接続用端子38bをコネクタ12bに接続する。この電線39を電流センサ2のクランプ部33でクランプする。
【0047】
次に、操作者は、電流測定装置1の電源を投入し、変換レート検出モードを起動する。このモードは、操作者が操作ボタンを操作したり、表示部に表示された各種モードの中から選択操作したりすることにより起動する。
【0048】
変換レート検出モードが起動すると、変換レート算出部18によりスイッチ15が開状態から閉状態に制御されて、交流電源17から電流が出力される。この状態の等価回路を図3に示す。
【0049】
同図に示す等価回路を説明すると、交流電源17の一端には、電流測定部16の電流検出抵抗41の一端が接続され、電流検出抵抗41の他端には、センサ電圧測定回路13の等価入力抵抗51、電流センサ2のシャント抵抗37、及びカレントトランス36の各々の一端が接続されている。等価入力抵抗51、シャント抵抗37、及びカレントトランス36の各々の他端は、交流電源17の他端に接続される。カレントトランス36と電線39とは巻数n:1のトランスを構成し、電線39の両端には、変換電圧測定部14の等価入力抵抗52の両端が並列的に接続されて閉ループが形成されている。なお、検出電圧測定部42の入力抵抗値は電流検出抵抗41の抵抗値rよりも充分に大きく無視できるので、図示を省略する。
【0050】
このトランスの二次側、つまり電線39及び入力抵抗52側を、トランスの1次側、つまり交流電源17側に換算した等価回路を図4に示す。同図に示すように、等価入力抵抗52は、抵抗値n2に換算される。カレントトランス36及び電線39は、励磁インダクタンスLに換算される。
【0051】
シャント抵抗37、及び等価入力抵抗51,52は、すでに説明したような抵抗値であるので、
シャント抵抗37の抵抗値RCT ≪ 等価入力抵抗51の抵抗値R
シャント抵抗37の抵抗値RCT ≪ 換算した等価入力抵抗52の抵抗値n2
である。また、交流電源17の周波数を高く設定することで、
シャント抵抗37の抵抗値RCT ≪ ωL
になる。
【0052】
したがって、交流電源17から出力される電流iは、殆どがシャント抵抗37に流れることになり、他の等価入力抵抗51,52、及び励磁インダクタンスLに流れる電流は僅かであるのでここでは無視できる。この電流値iは、電流検出抵抗41の両端間の電圧値vを、電流測定部16の検出電圧測定部42(図2参照)が測定して、その電圧値v及び抵抗値rから注入電流算出部43(図2参照)が次式で算出する。
=v/r
【0053】
電流値iの電流がシャント抵抗37に流れることで、シャント抵抗42の両端間に電圧値vCTが発生し、図3に示すように、カレントトランス36の両端に電圧値vCTが印加される。この電圧値vCTは、センサ電圧測定部13で測定される。また、この電圧値vCTがトランスで1/nに電圧変換されて電圧値vCT/nが電線39に発生し、変換電圧測定部14(図2参照)で電圧値vとして測定される。
【0054】
変換レート算出部18は、センサ電圧測定部13の測定した電圧値vCTと電流測定部16の測定した電流値iとからシャント抵抗37の抵抗値RCTを次の(1)式で算出する。
CT=vCT/i (1)
【0055】
また、変換レート算出部18は、センサ電圧測定部13の測定した電圧値vCTと変換電圧測定部14の測定した電圧値vとからカレントトランス36の巻数nを次の(2)式で算出する。
n=vCT/v (2)
【0056】
変換レート算出部18は、(1)式で算出したシャント抵抗37の抵抗値RCTと、(2)式で算出したカレントトランス36の巻数nとから電流センサ2の変換レートAを次の(3)式で算出する。
A=RCT/n (3)
【0057】
変換レート算出部18は、算出した変換レートAを非図示のフラッシュROM等の記憶部に記憶させる。以上で、変換レートの自動検出処理が終了する。
【0058】
このように、変換レートが自動的に検出されるため、測定者が電流センサの型名や変換レートを調べて手動で設定する必要がないので、変換レートを設定ミスなく正確に設定することができると共に、迅速かつ簡便に設定することができる。
【0059】
次に、電流測定装置1及び電流センサ2を用いた電流測定方法について説明する。
【0060】
測定者は、操作ボタン等を操作して電流測定モードを起動する。電流測定モードが起動すると、スイッチ15が開状態となるように制御される。
【0061】
また、測定者は、図5に示すように、電線39を電流測定装置1から取り外して、電流センサ2のクランプ部33で電力ケーブル81をクランプする。この状態のブロック図を図6に示す。同図では、電流測定装置1の一部を示している。
【0062】
同図に示すように、電力ケーブル81に電流値iの交流電流が流れている場合、カレントトランス36から電流値i/nの電流が出力され、シャント抵抗37に次式の電圧値vの電圧が発生する。
=(i/n)×RCT
この式を(3)式を用いて変形すると
=(RCT/n)×v=A×v (4)
となる。
【0063】
変換レートAは、前述したように自動検出されて変換レート算出部18に記憶されており、電圧値vは、センサ電圧測定部13によって測定されることから、測定電流算出部19は、これらの値を読み込んで(4)式で電流値iを算出し、表示部に表示する。
【0064】
以上で、電力ケーブル81を流れる電流値iの測定が終了する。このように、電流測定装置1は、予め自動設定された変換レートAを用いて、電流測定を行うことができる。
【0065】
次に、本発明の実施形態の他の一例である電流測定装置1aについて図7を参照して説明する。なお、すでに説明した構成と同様の構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0066】
図7に示す電流測定装置1aは、電流出力タイプの電流センサ2aが着脱可能に装着されるものである。
【0067】
電流センサ2aは、カレントトランス36の検出した電流をそのまま検出値として出力するものであり、カレントトランス36の両端に出力ケーブル34が接続され、出力ケーブル34の先端には、接続端子35a、35bを有するコネクタ35が接続されている。電流測定装置1aはコネクタ35に嵌合するコネクタ11を有し、電流測定装置1aの内部には、コネクタ11の接続端子11a、11b間にシャント抵抗37aが接続されている。このシャント抵抗37aの抵抗値は、装置内にあるので、変換レート算出部18aにとって既知の値である。そのため、シャント抵抗37aの抵抗値を測定する必要がないので、電流測定装置1(図2参照)に設けられていた電流測定部16が、この電流測定装置1aには設けられていない。なお、シャント抵抗37aの抵抗値は、シャント抵抗37と同程度の値のものである。
【0068】
変換レート算出部18aは、カレントトランス36の巻数nを、電流測定装置1で説明した方法と同様にして(2)式から算出する。変換レート算出部18aは、既知のシャント抵抗37aの抵抗値と、算出した巻数nとから、(3)式で変換レートAを算出する。このように、シャント抵抗37aの値が既知であれば、装置を簡略化して変換レートを検出することができる。なお、図7の電流測定装置1aに、電流測定装置1と同様に電流測定部16を設けて、シャント抵抗37aの抵抗値を測定するようにしてもよい。この場合、変換レート算出部18aは、測定したシャント抵抗37aの抵抗値を使用して変換レートAを算出することで、例えば、シャント抵抗37aの抵抗値にばらつきが有ったとしてもその影響を無くすことができる。
【0069】
なお、図2図7では、変換レート検出用の電線39に発生する電圧値をそのまま変換電圧測定部14が測定する例について示したが、図8に示すように、電線39と変換電圧測定部14との間に、増幅器62を接続して測定してもよい。電線39から出力される電圧は、カレントトランス36(図2参照)に印加される電圧値vCTの1/nの小さな電圧値になるので、必要に応じて増幅器62を配置することで、電線39に発生する電圧値を確実かつ高精度に測定することができる。この場合、変換電圧測定部14は、増幅器62の増幅度を考慮して電圧測定を行う。更に、同図に示すように、必要に応じて、増幅器62の前段、及び/又は後段に、交流電源17(図2参照)の周波数を通過させて他の不要な周波数を遮断する周波数フィルタの一例であるバンドパスフィルタ61、63を配置してもよい。バンドパスフィルタ61,63を配置することで、ノイズなどの影響による測定誤差が小さくなり、電圧値を高精度に測定することができる。周波数フィルタとして、ハイパスフィルタ、又はローパスフィルタを用いてもよい。
【0070】
また、電線39の接続用端子38a,38bを、例えばBNC型のプラグのような一体型のコネクタとして、コネクタ12a,12bをその一体型のコネクタに嵌合するものとしてもよい。また、電線39を電流測定装置1に着脱可能とせずに、接続用端子38a等を介さずに、検出電圧測定部14に電線39が直接接続される構成としてもよい。この場合、電線39を、電流測定装置1(1a)を持ち運ぶための把手(非図示)の内側に配置する構成としたり、測定を行わないときに電流センサ2でクランプして電流測定装置1に保持させるための電流センサ2の保持用の紐(非図示)の内側に配置する構成としたり、電流測定装置1の内部に収容しておき変換レートの自動設定時に引き出せる構成としてもよい。
【0071】
また、電流測定装置1と電圧測定装置(非図示)とを組み合わせて、測定対象体を流れる電流と測定対象体の電圧とを測定することで電力測定を行う電力測定装置とすることもできる。また、検出電圧測定部14で測定対象体の電圧値を測定して電力測定を行う電力測定装置としてもよい。また、電流測定装置1は、電流値を交流波形で表示する電流波形表示装置であったり、電流値を交流波形で記録する波形記録装置であってもよい。
【0072】
更に、スイッチ15を介すことなく、交流電源17の出力する電流をカレントトランス36に出力する構成としてもよい。この場合、センサ電圧測定部13は、変換レートの測定を行うための専用回路となるので、測定対象体の電流を測定する際には、非図示の他の電圧測定部、又は変換電圧測定部14に電流センサを付け替えて、電流値を測定する構成とする。
【符号の説明】
【0073】
1・1aは電流測定装置、2・2aは電流センサ、11はコネクタ、11a・11bは接続端子、12a,12bはコネクタ、13はセンサ電圧測定部、14は変換電圧測定部、15はスイッチ、16は電流測定部、17は交流電源、18・18aは変換レート算出部、19は測定電流算出部、31は本体部、32は開閉レバー、33はクランプ部、34は出力ケーブル、35はコネクタ、35a・35bは接続端子、36はカレントトランス、37・37aはシャント抵抗、38a・38bは接続用端子、39は変換レート検出用の電線、41は電流検出抵抗、42は検出電圧測定部、43は注入電流算出部、51・52は等価入力抵抗、61,63はバンドパスフィルタ、62は増幅器、80は商用交流電源、81は電力ケーブル、82は負荷回路、i・iは電流値、Lは励磁インダクタンス、nは巻数、r・R・RCT、Rは抵抗値、vCT・vo・v・vは電圧値である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8