特許第5756608号(P5756608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756608
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/44 20110101AFI20150709BHJP
   H01R 13/6473 20110101ALI20150709BHJP
   H01R 24/50 20110101ALI20150709BHJP
【FI】
   H01R24/44
   H01R13/6473
   H01R24/50
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-160693(P2010-160693)
(22)【出願日】2010年7月15日
(65)【公開番号】特開2012-22929(P2012-22929A)
(43)【公開日】2012年2月2日
【審査請求日】2013年6月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 秀典
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−035587(JP,A)
【文献】 特開2007−122900(JP,A)
【文献】 特開2002−270305(JP,A)
【文献】 特開2008−084561(JP,A)
【文献】 特開2009−064716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 24/38 〜24/56
H01R 13/646〜13/6599
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板のグランドパターンに接続されるアウター端子と、
前記回路基板の信号パターンに接続されるインナー端子と、
前記アウター端子と前記インナー端子との間に介在する絶縁体部と、
前記アウター端子、前記インナー端子および前記絶縁体部を内部に収容するコネクタハウジングと、
を備えるコネクタであって、
前記アウター端子は、該コネクタが前記回路基板に取り付けられる際の該回路基板に向けて延設され、端部が前記グランドパターンに接続される側面片を有し、
前記インナー端子は、該コネクタが前記回路基板に取り付けられる際の該回路基板と平行に延設された水平部と、前記水平部から該コネクタが前記回路基板に取り付けられる際の該回路基板に向けて延設され、端部が前記信号パターンに接続される垂下片と、を有し、前記垂下片は、前記水平部の延設される向きと同じ向きに延設され前記側面片に所定間隔を保って対向する板状のインピーダンス調整片を含み、
前記絶縁体部には、前記インピーダンス調整片を挿入可能な深さを有する矩形孔が形成されている、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記アウター端子に装着可能なシールドカバーをさらに備え、
前記シールドカバーは、前記アウター端子に装着された際、前記垂下片の少なくとも一部に対向する、
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸コネクタと接続される回路基板用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、同軸コネクタが接続される回路基板用コネクタとして、プリント基板の信号パターンに半田接続される内導体端子と、プリント基板のグランドパターンに半田接続される外導体端子と、これらの間に介在される絶縁体部とを、樹脂製のコネクタハウジングに収納したものが知られている(特許文献1参照)。この回路基板用コネクタを図10および図11を参照して説明する。
【0003】
この回路基板用コネクタ11は、プリント基板上の信号パターンと半田接続される内導体端子13と、プリント基板上のグランドパターンと半田接続される外導体端子14と、これらの間に介在される絶縁体部15とで構成されるコネクタ端子16が樹脂製のコネクタハウジング17に収容されたもので構成されている。内導体端子13には、図示しないシールド電線の信号線が接続され、高周波信号が伝達されるようになっている。外導体端子14は、シールド電線のシールド線と接続され、内導体端子13の周囲を覆って電磁的に遮蔽する。
【0004】
内導体端子13は、導電性板材を打ち抜き加工することにより、ピン状の水平部18の基端から垂下部19が下方に垂下された略逆L字形状に形成されている。ピン状の水平部18の基端側は、その先端側よりやや太径に形成されており、係止突起20を備えている。
【0005】
垂下部19は、プリント基板の貫通孔に挿通されてプリント基板の所望の信号パターンと接続される。そして、水平部18が図示しない相手側シールドコネクタの内導体端子と接続されると、シールド電線の信号線とプリント基板の信号パターンとの間の電気信号の受け渡しが行なわれる。
【0006】
内導体端子13が収容される絶縁体部15は、所定の誘電率を有する樹脂製の絶縁性材料で成形されており、内導体端子13と外導体端子14との間に組付けられて、これらの間を絶縁状態にする。絶縁体部15は、縦長の開口面21を有する収容室22が内部に形成されており、収容室22の前方側には、水平筒部23が延設形成されている。
【0007】
水平筒部23の内部には、内導体端子13のピン状の水平部18が挿入される挿入孔24が前後方向に開口形成されており、後方側が収容室22に連通している。この挿入孔24に内導体端子13の水平部18を挿入すると、先端側よりやや太径の基端側に膨出形成された係止突起20により圧入されて、内導体端子13が絶縁体部15に保持されるようになっている。
【0008】
外導体端子14は、導電性板材を型抜きした後、プレス等による折り曲げ加工によって円筒状に形成されており、内部の収容室25に絶縁体部15が収容可能になっている。前方の先端部分は、相手側シールドコネクタの外導体端子と嵌合される嵌合部26となっており、収容室25に収容された絶縁体部15の挿入孔24に挿入された内導体端子13の水平部18の先端が絶縁体部15から突出されて嵌合部26内に配置されている。
【0009】
外導体端子14の中央部分上面には、係止片27が上方に向けて撓み変形可能に突設されている。外導体端子14の上面後端には、後方の開口部28を覆う大きさとなる折り曲げ片29が延設形成されており、下方に折り曲げることで、外導体端子14の収容室25に収容された絶縁体部15を後方から覆って後方の開口部28を塞いで、回路基板用コネクタ11のシールド性能の低下を防止することが可能となっている。
【0010】
外導体端子14の後部下端には、左右一対の接続タブ30、30が前後にずれた位置に下方に向かって突出しており、プリント基板の貫通孔に挿通されてグランドパターンと電気的に接続される。
【0011】
コネクタハウジング17は、絶縁性の樹脂により一体的に成形されており、内導体端子13を絶縁体部15の内部に保持しこの絶縁体部15を外導体端子14が収容してなるコネクタ端子16を収容固定するようになっている。
【0012】
コネクタハウジング17の後部には、前後方向に開口する端子収容室31が貫通形成されており、後方の開口面32から外導体端子14を挿入可能となっている。端子収容室31の天井面には、外導体端子14の係止片27が係止して外導体端子14の抜け止めとなる係止突部33が形成されている。
【0013】
端子収容室31の前方には、前面が開口されたフード部34が設けられており、相手側シールドコネクタの前方部が収容可能となっている。フード部34の上端縁には、相手側シールドコネクタのコネクタハウジングが係止するストッパ35が突設されている。端子収容室31からフード部34の方には、外導体端子14の嵌合部26が突出されており、フード部34に収容された相手側シールドコネクタの外導体端子と嵌合可能になっている。
【0014】
コネクタハウジング17の両側面には、回路基板用コネクタ11をプリント基板に固定するための固定部材36が、コネクタハウジング17に一体形成されている。
【0015】
図10に示すように、プリント基板12には、信号パターン44とグランドパターン45とが互いに絶縁された状態で形成されており、それぞれには、貫通孔46、47が電気的に接続されている。そして、回路基板用コネクタ11の内導体端子13の垂下部19と、外導体端子14の左右一対の接続タブ30、30とを、プリント基板12の貫通孔46、47にそれぞれ挿通する。このときコネクタハウジング17に一体成形された固定部材36の固定部38先端を、グランドパターン45と導通している貫通孔48に挿通する。これにより、プリント基板12のグランドパターン45および外導体端子14、そして信号パターン44および内導体端子13とが、それぞれ接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−84561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述した従来の回路基板用コネクタは、解決すべき以下の問題を有している。
即ち、内導体端子13が前述のようにL字形に形成された場合には、水平部18と垂下部19との連結部(折れ曲がり部)および垂下部19を含む内導体端子13の全体を均一の静電容量が得られるように外導体端子14によって覆うことは、コネクタハウジング17の形状、サイズ上の制約から困難である。このため、回路基板用コネクタの各部分においてインピーダンスの不整合が生じ、コネクタ全体のインピーダンスが所望の数値することが困難であった。
【0018】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内導体端子および外導体端子の形状によるインピーダンスの不整合を抑制し、所望の数値に調整することができる回路基板用のコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは下記(1)〜(2)を特徴としている。
(1) 回路基板のグランドパターンに接続されるアウター端子と、
前記回路基板の信号パターンに接続されるインナー端子と、
前記アウター端子と前記インナー端子との間に介在する絶縁体部と、
前記アウター端子、前記インナー端子および前記絶縁体部を内部に収容するコネクタハ
ウジングと、
を備えるコネクタであって、
前記アウター端子は、該コネクタが前記回路基板に取り付けられる際の該回路基板に向けて延設され、端部が前記グランドパターンに接続される側面片を有し、
前記インナー端子は、該コネクタが前記回路基板に取り付けられる際の該回路基板と平行に延設された水平部と、前記水平部から該コネクタが前記回路基板に取り付けられる際の該回路基板に向けて延設され、端部が前記信号パターンに接続される垂下片と、を有し、前記垂下片は、前記水平部の延設される向きと同じ向きに延設され前記側面片に所定間隔を保って対向する板状のインピーダンス調整片を含み、
前記絶縁体部には、前記インピーダンス調整片を挿入可能な深さを有する矩形孔が形成されている、
こと。
(2) 上記(1)の構成のコネクタであって、
前記アウター端子に装着可能なシールドカバーをさらに備え、
前記シールドカバーは、前記アウター端子に装着された際、前記垂下片の少なくとも一部に対向する、
こと。
【0020】
上記(1)の構成のコネクタによれば、予め計算された所定サイズのインピーダンス調整片を、側面片に対して所定間隔を保持するように対向させたことで、インナー端子のアウター端子に対する対地静電容量を高めることができる。これにより水平部と垂下部が連結する角部および垂下部周辺においてインピーダンスが所望の数値から大きくなった分、インピーダンス調整片周辺においてインピーダンスを所望の数値よりも小さくすることができるため、コネクタ全体のインピーダンスを所望の数値に調整することができる。
上記(2)の構成のコネクタによれば、予め計算された所定サイズの垂下片の少なくとも一部を、シールドカバーに対して所定間隔を保持するように対向させたことで、インナー端子のアウター端子に対する対地静電容量を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、内導体端子および外導体端子の形状によるインピーダンスの不整合を抑制することができる。その結果、回路基板用コネクタ全体の高周波性能を改善できる。
【0022】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る回路基板用コネクタを示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る回路基板用コネクタのハウジングを示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る回路基板用コネクタのインナー端子を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る回路基板用コネクタのアウター端子を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る回路基板用コネクタのシールドカバーを示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る回路基板用コネクタにおける、シールドカバーを取り付けたアウター端子示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係る回路基板用コネクタにおける、コネクタハウジングにインナー端子とアウター端子を装着した状態を示す斜視図である。
図8図7のA‐A線の断面図である。
図9図1のB‐B線の断面図である。
図10】従来の基板用シールドコネクタの接続構造を示す斜視図である。
図11図10に示す基板用シールドコネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る回路基板用コネクタを図1乃至図9を参照して説明する。
【0025】
本発明の一実施形態に係る回路基板用コネクタは、これを取り付ける回路基板(図示しない)上の信号パターンに半田付けされるインナー端子(内導体端子)と、回路基板上のグランドパターンに半田付けされるアウター端子(外導体端子)と、インナー端子と前記アウター端子との間に介在する絶縁体部と、アウター端子、インナー端子および絶縁体部を内部に収容し、相手側コネクタ(同軸コネクタ。図示しない)が嵌合されるコネクタハウジングとを備えて構成される。これらのうち、コネクタハウジング51は合成樹脂の成形品として、図2に示すように略直方形状に構成され、絶縁体部55もこのコネクタハウジング51の成形時に同一の合成樹脂により一体かつ同時に形成される。このコネクタハウジング51は、図9に示すように、一端部(前部)に開口部52を持つコネクタ嵌合部53を有する。このコネクタ嵌合部53は相手側コネクタ(図示しない)を嵌合するために空洞状をなし、絶縁体部55がその空洞状部内の中心線方向に突設されている。インナー端子(鎖線で示す)54は、その先端部を除き絶縁体部55の中心部に貫通状態にて固設されている。
【0026】
また、アウター端子56はインナー端子を所定の間隔をおいて覆うように、コネクタハウジング51内に固設されている。コネクタ嵌合部53および絶縁体部55は、相手側コネクタの形状およびサイズに対応して設計されている。
【0027】
一方、塞壁部57が、コネクタ嵌合部53の一端を塞ぐように、コネクタハウジング51の前記開口部52側とは反対側に形成されている。この塞壁部57は外側面側に図2に示すような前方後円形(逆U字形)の突出部60を有し、この突出部60側にインナー端子収納孔58およびアウター端子収納孔59を備えている。インナー端子収納孔58は、突出部60の端面側から塞壁部57内を貫通するように水平に形成されている。また、このインナー端子収納孔58は、図5に示すシールドカバー62の突片64によって挿入されるための長孔58aと、図3に示すインナー端子54の円筒状の丸ピン部54aによって挿通されるためのピン挿入孔58bと、インナー端子54の幅広部54bおよびインピーダンス調整片54cによって挿通されるための矩形孔58cおよび挿入孔58dとからなる。
【0028】
また、インナー端子収納孔58の長孔58aは、図8および図9に示すように、シールドカバー62の突片64が挿入可能な形状、深さを持つ。ピン挿入孔58bは、インナー端子54の円筒状の丸ピン部54aが挿入可能で、絶縁体部55の先端から丸ピン部54aが前方へ突出する程度の深さを持つ。さらに、矩形孔58cはインナー端子54の幅広部54bと一対のインピーダンス調整片54cが挿入可能な深さを持つ。
【0029】
一方、アウター端子収納孔59もまた、突出部60の端面側から塞壁部57内を貫通するように水平に形成されている。アウター端子収納孔59は、図4に示すアウター端子56の半円筒状片56aと、この半円筒状片56aの後端下縁に続く一対の側面片56bとが挿通可能な形状をしている。また、3本のガイド突条59aが、このアウター端子収納孔59の中心方向に突出するように配置されている。これによりアウター端子56は各ガイド突条59aに沿ってアウター端子収納孔59内にスムースに挿入可能となっている。
【0030】
インナー端子54は、図3に示すように、全体としてクランク状をなし、水平部Cと垂下部Dとを備える。水平部Cは、本実施形態に係るコネクタが回路基板に取り付けられる際の該回路基板と平行に延設された部分であり、垂下部Dは、水平部Cから該コネクタが回路基板に取り付けられる際の該回路基板に向けて延設され、端部が回路基板の信号パターンに接続される部分である。水平部Cは前半部が丸ピン部54aとなっている。この丸ピン部54aは、図7および図8に示す長孔58aの一部およびピン挿入孔58bに挿入されて、コネクタハウジング51に水平支持される。垂下部Dは一部に面積が広い矩形の幅広部54bを有し、この幅広部54bの左右端に略矩形のインピーダンス調整片54cが連設されている。幅広部54bおよびインピーダンス調整片54cは互いに直角に折り曲げられて、略コ字状をなす。また、回路基板接続片54dが幅広部54b下部の垂下部D下端に、水平方向に連設されている。この回路基板接続片54dは回路基板の信号パターンに半田付けされる。丸ピン部54a、幅広部54b、インピーダンス調整片54cおよび回路基板接続片54dは導電板のプレス成形により得られる。
【0031】
また、インナー端子54は、丸ピン部54aが、図2に示す塞壁部57背面のピン挿入孔58bに挿し込まれ、インピーダンス調整片54cが塞壁部57背面の矩形孔58cから挿入孔58d内に挿し込まれる。また、幅広部54bは同じく塞壁部57背面の矩形孔58cに嵌合される。これにより、インナー端子54はコネクタハウジング51に取り付けられる。
【0032】
一方、アウター端子56は、図4に示すように、半円筒状片56aと、この半円筒状片56aの一端に下方(回路基板に向う方向)に向けて延設された一対の側面片56bとからなる。これらの側面片56bは互いに平行を保ち、下端に短めの回路基板接続片56cが水平に、かつ互いに反対方向に延設されている。この回路基板接続片56cは回路基板(図示しない)上のグランドパターンに半田付けされる。係止爪61が、各側面片56bの外側面に突設されている。これらの係止爪61は、図5に示すシールドカバー62に設けられた係止孔63に嵌合可能なサイズ、形状をなす。加締め片56dが、半円筒状片56aの一部に切り込むようにして形成されている。この加締め片56dは、アウター端子56のコネクタハウジング51内への組み付けの際に、治具を用いてこれを絶縁体部55側に食い込ませるように折り曲げられる。これによりアウター端子56はコネクタハウジング51内に確実に固定される。
【0033】
アウター端子56は、半円筒状片56aの先端部が図2に示す塞壁部57背面のアウター端子収納孔59の入口に挿し込まれ、各側面片56bもこのアウター端子収納孔59の入口部付近に内に挿し込まれる。これにより、アウター端子56はコネクタハウジング51に取り付けられる。このように、インナー端子54およびアウター端子56がコネクタハウジング51に装着された状態を、図7の斜視図および図8および図9の断面図に示す。
【0034】
シールドカバー62は、図5に示すように、塞板62aと係止片62bとからなる。塞板62a下部の両側に、この塞板62aに対し直交する方向に係止片62bが連設されている。係止孔63が各係止片62bの略中央部に形成され、これがアウター端子56に設けられた前記係止爪61に係止することにより、図6に示すように、アウター端子56に対して抜け止め可能に装着される。また、突片64が塞板62aの上部位置に片持ち状態で支持されている。この突片64は、図2および図7に示すコネクタハウジング51の長孔58aに挿入可能な大きさおよび形状となっている。
【0035】
シールドカバー62は、図1に示すように、インナー端子54とアウター端子56を収納したコネクタハウジング51の塞壁部57背面、およびインナー端子54の幅広部54bに対向するように装着される。この装着は、シールドカバー62の突片64を、塞壁部57背面の長孔58aに挿し込みながら、図4に示すようなアウター端子56の係止爪61に、シールドカバー62の係止孔63を嵌合することによって行われる。この係止爪61と係止孔63との嵌合状態を、図6に示す。
【0036】
ところで、かかる構成の回路基板用コネクタでは、内導体端子および外導体端子の形状によるインピーダンスの不整合は、対向するアウター端子56の側面片56bとインナー端子54のインピーダンス調整片54cとの面積および間隔によって調整可能である。
【0037】
すなわち、インピーダンス調整片54cが設けられていない従来のようなインナー端子では、アウター端子に対向する部分の面積が小さいため、この部分におけるインナー端子のアウター端子に対する対地静電容量は小さく、従って高インピーダンスとなっていた。これに対し、本実施形態では、予め計算された所定サイズのインピーダンス調整片54cを、アウター端子56の側面片56bに対して所定間隔を保持するように対向させたことで、インナー端子54のアウター端子56に対する対地静電容量を高めることができる。インピーダンスZは静電容量Cに対し反比例の関係(Z=1/ωC)にあるので、インピーダンスを所定値以下に低く抑えることができる。これにより水平部Cと垂下部Dが連結する角部および垂下部D周辺においてインピーダンスが所望の数値から大きくなった分、インピーダンス調整片54c周辺においてインピーダンスを所望の数値よりも小さくすることができるため、本実施形態の回路基板用のコネクタ全体のインピーダンスを所望の数値に調整することができる。従って、コネクタの高周波性能を高めることができる。
【0038】
さらに、かかる構成の回路基板用コネクタでは、内導体端子および外導体端子の形状によるインピーダンスの不整合は、対向するインナー端子54の幅広部54bとアウター端子56に装着されたシールドカバー62の塞板62aの面積および間隔によっても調整可能である。本実施形態では、予め計算された所定サイズの幅広部54bを、シールドカバー62の塞板62aに対して所定間隔を保持するように対向させたことで、インナー端子54のアウター端子56に対する対地静電容量を高めることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態に係るコネクタによれば、インナー端子およびアウター端子の形状によって所望の数値からずれたインピーダンスを有する部分が発生したとしても、そのずれた分を打ち消して、コネクタ全体のインピーダンスを所望の数値に調整することができる。この結果、コネクタの高周波性能を高めることができる。
【符号の説明】
【0040】
51 コネクタハウジング
52 開口部
53 コネクタ嵌合部
54 インナー端子
54a 丸ピン部
54b 幅広部
54c インピーダンス調整片
54d 回路基板接続片
55 絶縁体部
56 アウター端子
56a 半円筒状片
56b 側面片
56c 回路基板接続片
56d 加締め片
57 塞壁部
58 インナー端子収納孔
58a 長孔
58b ピン挿入孔
58c 矩形孔
58d 挿入孔
59 アウター端子収納孔
59a ガイド突条
60 突出部
61 係止爪
62 シールドカバー
62a 塞板
62b 係止片
63 係止孔
64 突片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11