(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756609
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】コイルばね製造装置
(51)【国際特許分類】
B21F 3/02 20060101AFI20150709BHJP
B21F 35/00 20060101ALI20150709BHJP
F16F 1/06 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
B21F3/02 Z
B21F35/00 A
F16F1/06 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-172670(P2010-172670)
(22)【出願日】2010年7月30日
(65)【公開番号】特開2012-30257(P2012-30257A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2013年4月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝山 彰
(72)【発明者】
【氏名】森島 隆行
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 隆
(72)【発明者】
【氏名】森 有史
(72)【発明者】
【氏名】貫井 晃太郎
【審査官】
間中 耕治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−143963(JP,A)
【文献】
特開平09−136130(JP,A)
【文献】
特開平02−200331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21F 3/00 − 3/06
B21F 35/00
F16F 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ロールと、
前記第1ロールに対してコイル用線材の搬送方向と同一の側で、かつ該第1ロールの下流側に配置された第2ロールと、
前記第1ロールおよび前記第2ロールに対向し、前記搬送方向の他の側に配置された第3ロールと、
コイルばねの螺進方向に前後動するピッチツールと、を備え、
前記コイル用線材を、前記第1ロールと前記第2ロールと前記第3ロールにより所定の曲率に湾曲させ、前記ピッチツールにより、前記湾曲されたコイル用線材に所定のピッチを成形してコイルばねを製造するコイルばね製造装置において、
前記第2ロールを、製造される前記コイルばねの螺進方向に沿って前後進可能とし、かつ前記コイル用線材の搬送方向と平行な直線を回転軸として傾動可能に構成し、
前記回転軸を、前記第2ロールのロール中心を通るように設定したことを特徴とするコイルばね製造装置。
【請求項2】
第1ロールと、
前記第1ロールに対してコイル用線材の搬送方向と同一の側で、かつ該第1ロールの下流側に配置された第2ロールと、
前記第1ロールおよび前記第2ロールに対向し、前記搬送方向の他の側に配置された第3ロールと、
コイルばねの螺進方向に前後動するピッチツールと、を備え、
前記コイル用線材を、前記第1ロールと前記第2ロールと前記第3ロールにより所定の曲率に湾曲させ、前記ピッチツールにより、前記湾曲されたコイル用線材に所定のピッチを成形してコイルばねを製造するコイルばね製造装置において、
前記第2ロールを、製造される前記コイルばねの螺進方向に沿って前後進可能とし、かつ前記コイル用線材の搬送方向と平行な直線を回転軸として傾動可能に構成し、
前記第2ロールに取り付けられた第1回転駆動装置により、前記第2ロールを、前記コイルばねの螺進方向に沿って前後進可能に構成し、かつ前記第2ロールに取り付けられた第2回転駆動装置により、前記第2ロールを、前記コイル用線材の搬送方向と平行な直線を回転軸として傾動可能に構成し、
制御部により、前記第1回転駆動装置及び前記第2回転駆動装置の作動を前記ピッチツールの作動に同調させ、湾曲成形された前記コイル用線材が前記ピッチツールの表面から離れないように作動させることを特徴とするコイルばね製造装置。
【請求項3】
前記回転軸を、前記第2ロールのロール中心を通るように設定したことを特徴とする請求項2に記載のコイルばね製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3つのロールでコイル用線材に湾曲を加えつつ、ピッチツールでコイル用線材にピッチを付与してコイルばねを製造するコイルばね製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロールを用いたコイルばね製造機は、例えば特許文献1に記載されているように、コイル用線材の搬送方向に沿って、搬送方向の一の側に2つの成形ロールを配置させ、これら2つの成形ロールに対向して、搬送方向の他の側に1つの支持ロールを、2つの成形ロールの間に配置させて構成されている。支持ロールは、上下方向に移動自在となっており、また2つの成形ロールは、支持ロールを中心として左右対称に配置されており、かつ2つの成形ロールは左右対称に移動可能となっている。更に、これら各ロールの下部には、コイルばねの螺進方向に進退可能なピッチツールが設けられている。
【0003】
コイルばね製造機は、2つの成形ロールの間隔と支持ロールの上昇量により、成形するコイルばねのばね外径を設定し、位置を適宜設定した3つのロール間にコイル用線材を通して湾曲成形し、そして湾曲されたコイル用線材を、ピッチツールでコイルばねの螺進方向に適宜押し出して、所定のピッチを成形して、任意の外径と任意のピッチを有するコイルばねを製造する。
【0004】
昨今、ピッチ変化の大きいコイルばねが要望されている。例えば、コイルばねの軸方向中央部分のピッチを大きくしたコイルばねを製造するには、巻き始めは小さなピッチで成形し、その後ピッチを大きくし、ピッチの最大箇所を越えた地点で再びピッチを小さくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−25233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コイルばねのピッチを小さくするためピッチツールを後退させても、コイル用線材がピッチツールから離れ、ピッチツールの動きに追従しないことがある。ピッチツールは、ピッチツールをコイルばねの螺進方向に大きく押出すとコイル用線材を押し出し、ピッチを容易に大きくできるが、ピッチツールを急激に後退させても、コイル用線材がピッチツールの後退動作に追従しなければ、所定のピッチを成形することはできなかった。したがって、従来のロールを用いた製造装置では、ピッチ変化が大きく、ピッチが急激に小さくなったり、また負のピッチを有するようなコイルばねを正確に成形し難いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明にかかるコイルばね製造装置を、次のように構成した。
【0008】
コイルばね製造装置は、第1ロール(成形ロール)および第2ロール(成形ロール)を、コイル用線材の搬送方向の一側に、搬送方向に沿って備え、かつこれら第1と第2ロールの間に第3ロール(支持ロール)を、第1及び第2ロールに対向するように備えている。またコイルばね製造装置は、これら3つのロールの下部に、湾曲成形されたコイル用線材を、成形しようとするコイルばねの螺進方向に押し出すピッチツールを備えている。第1及び第2ロールは、それぞれコイル用線材の搬送方向に沿って移動可能であり、第3ロールは、コイル用線材の搬送方向に対して垂直に交差する方向に移動可能である。
【0009】
更に、コイル用線材の搬送方向下流側に設けられた第2ロールは、成形しようとするコイルばねの螺進方向に沿って、第1回転駆動装置により移動可能とし、またコイル用線材の搬送方向と平行な軸線を回転軸として、第2回転駆動装置により傾動可能に構成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるコイルばね製造装置は、次の効果を有する。
【0011】
第1ロールから第3ロールで、コイル用線材がコイルばねの周方向に湾曲され、ピッチツールでピッチが形成されるとともに、成形されるコイルばねの螺進方向に沿って第2ロールを前後進させて、第2ロールを第3ロールに対してコイルばねの螺進方向に沿ってずらすことができる。このことにより、第2ロールと第3ロールによりコイル用線材にピッチを成形させる変形力を付与することができる。
【0012】
したがって、成形しようとするコイルばねのピッチを小さくする場合には、第2ロールを後進させコイル用線材にピッチを小さくさせる方向の力を付与することができる。これにより、ピッチが大きく変化するコイルばね、特にピッチが大きく減少するような形状を有するコイルばねであっても、所望の形状に形成することができる。
【0013】
また第2ロールを、第2ロールと第3ロールとの間に生じたコイル螺進方向のずれと、コイル用線材に付与する力の方向に応じて、コイル用線材の搬送方向に平行な軸線を回転軸として傾動させることにより、コイル用線材を第2ロールと第3ロールにより所定の方向から把持し、所望のピッチをコイルばねに確実に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明にかかるコイルばね製造装置の実施形態を示す正面図である。
【
図2】
図1に示すコイルばね製造装置の一部を示す平面図である。
【
図6】コイルばねの製造装置を示す概略構成図である。
【
図7】コイルばねの製造装置を示す概略構成斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかるコイルばね製造装置の一実施形態について、図を用いて説明する。
【0016】
図1に、コイルばね製造装置10を示す。コイルばね製造装置10は、基盤100と、コイル用線材30を搬送する搬送部12と、搬送部12から送り出されてきたコイル用線材30を湾曲させる湾曲成形部14と、湾曲成形部14で湾曲加工されたコイル用線材30にピッチを付与するピッチ成形部16などから構成されている。
【0017】
基盤100は、板状部材で、ほぼ垂直に設けられている。搬送部12は、1対の搬送ロール20と、案内部材22を具えて構成されている。搬送ロール20は、図示しない駆動機構に連結しており、駆動機構により回転駆動し、コイル用線材30を湾曲成形部14に搬送する。案内部材22は、基盤100に固定され、コイル用線材30を湾曲成形部14に案内する。コイル用線材30は、一般にばね鋼から形成された棒状部材で、所定の径を有している。尚、搬送ロール20の数等は特定しない。
【0018】
湾曲成形部14は、成形ロールとしての第1ロール32及び第2ロール34と、支持ロールとしての第3ロール36などを備えて構成されている。第1ロール32は、第1移動台40上に設けられ、第2ロール34は、第2移動台50上に設けられ、第3ロール36は、第4移動台86上に設けられている。
【0019】
基盤100には、コイル用線材30の搬送方向に沿って設けられた案内レール42と、駆動機構44が取り付けられている。第1移動台40は、案内レール42上に移動可能に取り付けられている。駆動機構44は、モータ46と送りねじ機構48を具え、モータ46の駆動により第1移動台40を案内レール42に沿って前後進させる。また第1ロール32には、駆動用モータ24(
図7参照。)が連結してあり、駆動用モータ24により第1ロール32が、第1移動台40上にてロール中心を中心として回転駆動される。
【0020】
第2移動台50には、上述したように第2ロール34が設けられている。第2ロール34は、コイル用線材30の搬送方向に沿って第1ロール32の前方に、対向して配置されており、第1ロール32が上流側ロール、第2ロール34が下流側ロールとなっている。
【0021】
第2移動台50は、第3移動台52に取り付けられている。第3移動台52は、
図2に示すようにガイドシャフト56により基盤100に対して垂直方向に移動可能に取り付けられている。基盤100には、第1回転駆動装置としてのモータ61と送りねじ機構63等からなる駆動機構60が設けられている。駆動機構60は、モータ61の駆動により第3移動台52を基盤100に対して垂直な方向に適宜移動させる。
【0022】
第3移動台52には、
図1にも示すように案内レール58と、駆動機構62が設けられている。案内レール58は、コイル用線材30の搬送方向に沿って設けられている。案内レール58上には、第2移動台50が移動可能に取り付けられている。駆動機構62は、モータ64と送りねじ機構66等からなり、モータ64の駆動により第2移動台50を案内レール58上で前後進(紙面上に沿った方向である。)させる。
【0023】
第2ロール34は、傾動機構70を介して第2移動台50に設けられている。傾動機構70は、第2回転駆動装置としてのモータ72と、ベルト伝達機構74と、支持ステー76などから構成されている。支持ステー76はL字状の部材で、第2ロール34が設けられている。支持ステー76には回転支持軸79が連結されている。回転支持軸79は、保持部78にコイル素材の搬送方向に沿った中心線を中心として回動自在に保持されている。また、第2ロール34は、第2ロール34の幅方向中心を、回転支持軸79の中心と一致させて取り付けられている。
【0024】
回転支持軸79の他端には、歯付きプーリ80が取り付けられており、歯付きベルト82を介してモータ72と回転支持軸79が連結されている。これによりモータ72が駆動されると、回転支持軸79が任意に回転駆動し、第2ロール34が、第2ロール34の幅方向中心を中心として回動される。更に第2ロール34には、駆動用モータ26(
図7参照。)が取り付けてあり、駆動用モータ26により第2ロール34は、第2ロール34のロール中心を中心として回転駆動される。尚モータ61とモータ72は、作動をフィードバック制御できるサーボモータが好ましい。また、歯付きベルト82はチェーン、その他でもよい。
【0025】
第4移動台86には、第3ロール36が設けられている。基盤100上には、第1ロール32と第2ロール34の間に押圧機構88が設けられており、第4移動台86は、押圧機構88により上下方向、つまりコイル用線材30の搬送方向と垂直な方向(紙面に沿った方向である。)に適宜移動可能となっている。また第3ロール36には駆動用モータ28(
図7参照。)が連結されており、駆動用モータ28により第3ロール36は、第3ロール36のロール中心を中心として回転駆動される。
【0026】
ピッチ成形部16は、図に示すように第3ロール36の正面視左側に設けられ、ピッチツール90と基部92と駆動機構(図示せず。)などから構成されている。ピッチツール90は、棒状の部材で、基本的に第3ロール36のロール中心を通る線上に配置されており、下端が基部92に一体に固定されている。基部92は、ガイドシャフト94等により基盤100に対して垂直方向に移動自在に設けられ、駆動機構(図示せず。)により適宜前後方向(紙面に対し垂直方向である。)に移動される。
【0027】
次に、コイルばね製造装置10を用いたコイルばねの製造方法について説明する。
【0028】
コイル用線材30の先端を搬送部12に取り付け、搬送ロール20の駆動によりコイル用線材30を湾曲成形部14に送り出す。湾曲成形部14に送られてきたコイル用線材30は、成形ロールである第1ロール32及び第2ロール34と、支持ロールである第3ロール36との間に通される。
【0029】
第1移動台40を駆動機構44により、また第3移動台54を駆動機構62によりそれぞれ適宜移動させ、第1ロール32と第2ロール34の間隔を所定の間隔に設定する。また押圧機構88により第4移動台86を、所定量上昇させ、第1ロール32と第2ロール34と第3ロール36をそれぞれ、成形しようとするコイルばねの径に対応させて所望の位置に設定する。
【0030】
第1ロール32と第2ロール34と第3ロール36でコイル用線材30を挟持させたら、駆動用モータ24、26、28を駆動させ、それぞれに連結された第1ロール32、第2ロール34、第3ロール36の各ロールを所定の速度で回転駆動させる。これにより、コイル用線材30は、所望の曲率半径で
図6に示すように湾曲形成される。尚、コイル用線材30を、所定の曲率に湾曲させる以前に、巻き始めにおいてコイル用線材30に先端処理などを行なってもよい。
【0031】
コイル用線材30が湾曲され、その先端がピッチツール90に達したなら、ピッチ成形部16の駆動機構を作動させ、所望するピッチに対応させてピッチツール90を基盤100に対して前面側、つまり
図1の紙面に対して垂直な方向に移動させる。これにより、コイル用線材30は、
図7に示すように成形しようとするコイルばねの螺進方向に押圧され、コイルばねに所定のピッチが形成される。また、より大きなピッチを形成する場合は、第2ロール34を作動させる。以下、第2ロール34の作動について、
図3〜
図5を用いて説明する。
【0032】
図3〜
図5は、コイル用線材30の搬送方向手前から搬送方向に向けて見たと仮定して、第2ロール34、第3ロール36及びピッチツール90等を模式的に示した図である。
図3では、ピッチツール90を駆動機構により図の左方に移動させることにより、湾曲されてきたコイル用線材30を第2ロール34や第3ロール36に対して左方に押し出し、ピッチを形成している。
【0033】
そして、より大きなピッチを形成させる場合には、駆動機構60のモータ61を駆動させ、第3移動台52を基盤100に対して前進させる。すると、第2ロール34が
図4に示すように第3ロール36に対して、搬送方向左方に移動する。すると第2ロール34の位置が、第3ロール36に対して、コイル用線材30の搬送方向に対してずれが生じ、これによりコイル用線材30にピッチを形成させる方向に変形力を付与することができる。
【0034】
またその際傾動機構70のモータ72を駆動させ、回転支持軸79を中心として第2ロール34を、第2ロール34の下方がコイル用線材30の搬送方向手前から見て左方に所定量傾動させる。これにより、第2ロール34がコイル用線材30のピッチ成形方向に傾き、コイル用線材30に変形力が効率よく付与され、コイルばねに大きいピッチを円滑に形成させることができる。
【0035】
一方それまでに形成されたピッチより、ピッチ間隔を減少させる場合には、ピッチツール90の駆動機構を前進と逆方向に作動させ、ピッチツール90を後退させる。これにより、コイル用線材30に加えられる螺進方向への力が弱められ、ピッチ間隔が減少される。
【0036】
そしてピッチの減少量が大きく、ピッチツール90の後退にコイル用線材30が追従しない場合には、駆動機構60を作動させ、第3移動台52を後退させる。すると、第2ロール34が
図5に示すように基盤100に近づき、第3ロール36に対して右方に移動する。すると第2ロール34と第3ロール36との間に生じているピッチ方向の間隔が減少し、コイル用線材30に第2ロール34から、ピッチを低減させる方向に変形力が付与される。
【0037】
また同時に、傾動機構70のモータ72を駆動させ、回転支持軸79を揺動回転させる。第2ロール34は、回転支持軸79を中心として、第2ロール34の下端がコイル用線材30の搬送方向手前から先方に見て右方に移動するよう傾動させる。
【0038】
これにより第2ロール34が、コイル用線材30のピッチを減少させる方向に傾き、第3ロール36との挟持によりコイル用線材30に変形力が効率よく付与され、コイルばねに大きいピッチを円滑に形成させることができる。したがって、ピッチの大小にかかわらず、所望のピッチを有するコイルばねを成形することができる。
【0039】
尚、上記例でのピッチの変更は、正のピッチの範囲内で行なったが、コイルばね製造装置10はそれに限らず、コイルばねに負のピッチを成形してもよい。すなわち、コイルばねのピッチを、正のピッチから負のピッチ、あるいはその逆にピッチを連続して変更させてもよい。また、ピッチを形成させるときは第2ロール34を移動させず、ピッチツール90の移動のみによりピッチの成形を行わせ、ピッチを低減させるときに、第2ロール34を、傾動させたり後退させるように作動させてもよい。
【0040】
また第2ロール34の傾動は、第2ロール34のロール中心を通り、かつ第2ロール34の厚み方向中央を通る直線を中心軸として行なうことが好ましいが、中心軸がこれらからずれていてもよい。第2ロール34の傾動中心を一致させると、第2ロール34を傾動させた場合の、第2ロール34の下端の左右への移動量と上下方向の変位を小さくできるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、コイル用線材を複数のロールの挟み込みにより湾曲させ、コイルばねを製造するコイルばね製造装置に利用できる。
以下、本出願の出願当初にかかる特許請求の範囲に記載された内容を付記する。
[1]
第1ロールと、
前記第1ロールに対してコイル用線材の搬送方向と同一の側で、かつ該第1ロールの下流側に配置された第2ロールと、
前記第1ロールおよび前記第2ロールに対向し、前記搬送方向の他の側に配置された第3ロールと、
コイルばねの螺進方向に前後動するピッチツールと、を備え、
前記コイル用線材を、前記第1ロールと前記第2ロールと前記第3ロールにより所定の曲率に湾曲させ、前記ピッチツールにより、前記湾曲されたコイル用線材に所定のピッチを成形してコイルばねを製造するコイルばね製造装置において、
前記第2ロールを、製造される前記コイルばねの螺進方向に沿って前後進可能に構成したことを特徴とするコイルばね製造装置。
[2]
前記第2ロールを、前記コイル用線材の搬送方向と平行な直線を回転軸として傾動可能に構成したことを特徴とする1に記載のコイルばね製造装置。
[3]
前記回転軸を、前記第2ロールのロール中心を通るように設定したことを特徴とする2に記載のコイルばね製造装置。
[4]
前記第2ロールに取り付けられた第1回転駆動装置により、前記第2ロールを、前記コイルばねの螺進方向に沿って前後進可能に構成し、かつ前記第2ロールに取り付けられた第2回転駆動装置により、前記第2ロールを、前記コイル用線材の搬送方向と平行な直線を回転軸として傾動可能に構成し、
制御部により、前記第1回転駆動装置及び前記第2回転駆動装置の作動を前記ピッチツールの作動に同調させ、湾曲成形された前記コイル用線材が前記ピッチツールの表面から離れないように作動させることを特徴とする1〜3のいずれかに記載のコイルばね製造装置。
【符号の説明】
【0042】
10…コイルばね製造装置
14…湾曲成形部
16…ピッチ成形部
24、26、28…駆動用モータ
30…コイル用線材
32…第1ロール
34…第2ロール
36…第3ロール
40…第1移動台
42…案内レール
44、60、62…駆動機構
46、61、64、72…モータ
48…送りねじ機構
50…第2移動台
52…第3移動台
54…第4移動台
56…ガイドシャフト
58…案内レール
66…送りねじ機構
70…傾動機構
74…ベルト伝達機構
79…回転支持軸
86…第4移動台
90…ピッチツール
92…基部
94…ガイドシャフト
100…基盤