【0016】
図1に、本発明の分析方法の一例を示す。まず、x軸方向及びy軸方向に移動することが可能なサンプルステージ10に、化学物質Cが付着している長方形の平板Bを載せる。次に、平板Bのx軸方向の化学物質Cを含む領域に、校正用試薬を含む粘着テープTを貼付する。さらに、サンプルステージ10をy軸方向に移動させながら、DARTイオン源20を用いて、準安定励起状態のヘリウムHe
*(2
3S)を大気中の水に衝突させてペニングイオン化させて生成したプロトンを平板Bの化学物質C及び粘着テープTに含まれる校正用試薬に付加して生成したイオンを、質量分析計30のイオン導入口31に導入して質量分析する。このとき、サンプルステージ10をy軸方向に移動させる速度をv[mm/s]、x=x
iにおけるマスクロマトグラムの校正用試薬由来のピークの頂点及び化学物質C由来のピークの開始点をそれぞれy
i0[s]及びy
i[s]とすると、x=x
iにおける化学物質Cと粘着テープTのy軸方向の中点の間の間隔g
iは、式
g
i=v(y
i−y
i0)
で表される。このとき、マスクロマトグラムの校正用試薬由来のピークにおけるマススペクトルを用いて、質量分析計30を校正することができる。
【実施例】
【0029】
[粘着テープTの作製]
インクジェットプリンタ用ラベルシート(コクヨ社製)に、1mm×17mmの切り込みを複数入れた後、平均分子量が180〜220のポリエチレングリコール200(和光純薬社製)の1g/Lメタノール溶液5mL及び平均分子量が380〜420のポリエチレングリコール400(関東化学社製)の1g/Lメタノール溶液5mLの混合液を均等に噴霧し、粘着テープTを得た。
【0030】
[ペンPの作製]
アートライン ウエットライト 補充インキ(赤色)(シャチハタ社製)1mLに、平均分子量が180〜220のポリエチレングリコール200(和光純薬社製)0.5mL及び平均分子量が380〜420のポリエチレングリコール400(関東化学社製)0.5mLを添加して攪拌し、インクを得た。
【0031】
得られたインクを、アートライン ウエットライト(赤色)(シャチハタ社製)に充填し、ペンPを得た。
【0032】
[実施例1]
スライドガラスに、尿素、リドカイン、ジフェンヒドラミンを含む医薬品外用剤1を塗布した後、
図1の分析方法を用いて分析した。具体的には、まず、医薬品外用剤1が塗布されたスライドガラスをサンプルステージ10に載せた後、スライドガラスのx軸方向の医薬品外用剤1が塗布された領域を含む領域に、医薬品外用剤1が塗布された領域と粘着テープTのy軸方向の中点の間のy軸方向の間隔が48mmとなるように粘着テープTを貼付した。次に、サンプルステージ10をy軸方向に0.2mm/sで移動させながら、DARTイオン源20を用いて、準安定励起状態のヘリウムHe
*(2
3S)を大気中の水に衝突させてペニングイオン化させて生成したプロトンをスライドガラスの医薬品外用剤1に含まれる尿素、リドカイン、ジフェンヒドラミン及び粘着テープTに含まれるポリエチレングリコールに付加して生成したイオンを、質量分析計30のイオン導入口31に導入して質量分析した。
【0033】
このとき、DARTイオン源20として、DART SVP(エーエムアール社製)を用い、ガスヒーターの温度を500℃とした。また、質量分析計30として、MicrOTOFQII(ブルカー ダルトニクス社製)を用い、測定モードをpositive ion modeとした。
【0034】
図3に、得られたマスクロマトグラムを示す。なお、
図3(a)、(b)、(c)及び(d)は、それぞれポリエチレングリコール(m/z=195)、尿素(m/z=61)、リドカイン(m/z=235)及びジフェンヒドラミン(m/z=256)のマスクロマトグラムである。
【0035】
図3から、ポリエチレングリコール由来のピークの頂点、尿素由来のピークの開始点、リドカイン由来のピークの開始点及びジフェンヒドラミン由来のピークの開始点は、それぞれ1min、5min、5min及び5minであることがわかる。このことから、医薬品外用剤1が塗布された領域と粘着テープTのy軸方向の中点の間のy軸方向の間隔は48mmとなり、精度よく測定できることがわかる。
【0036】
図4及び
図5に、それぞれ
図3の1.0min及び5.5minにおけるマススペクトルを示す。
【0037】
図4から、ポリエチレングリコール由来のピーク(m/z=151、195、239、283)が存在していることがわかる。なお、これらのピークを用いて、質量分析計30を校正した。
【0038】
図5から、尿素由来のピーク(m/z=61)、リドカイン由来のピーク(m/z=235)及びジフェンヒドラミン由来のピーク(m/z=256)が存在していることがわかる。
【0039】
[実施例2]
スライドガラスの代わりに、軍手を用い、y軸方向の医薬品外用剤1が塗布された領域と粘着テープTのy軸方向の中点の間のy軸方向の間隔が24mmとなるように粘着テープTを貼付した以外は、実施例1と同様にして、分析した。
【0040】
図6に、得られたマスクロマトグラムを示す。なお、
図6(a)、(b)、(c)及び(d)は、それぞれポリエチレングリコール(m/z=195)、尿素(m/z=61)、リドカイン(m/z=235)及びジフェンヒドラミン(m/z=256)のマスクロマトグラムである。
【0041】
図6から、ポリエチレングリコール由来のピークの頂点、尿素由来のピークの開始点、リドカイン由来のピークの開始点及びジフェンヒドラミン由来のピークの開始点は、それぞれ1min、3min、3min及び3minであることがわかる。このことから、医薬品外用剤1が塗布された領域と粘着テープTのy軸方向の中点の間のy軸方向の間隔は24mmとなり、精度よく測定できることがわかる。
【0042】
図7に、
図6の3.2minにおけるマススペクトルを示す。
【0043】
図7から、尿素由来のピーク(m/z=61)、リドカイン由来のピーク(m/z=235)及びジフェンヒドラミン由来のピーク(m/z=256)が存在していることがわかる。
【0044】
[実施例3]
スライドガラス及び医薬品外用剤1の代わりに、それぞれ箱及びジフェンヒドラミンを含む医薬品外用剤2を用い、y軸方向の医薬品外用剤2が塗布された領域と粘着テープTのy軸方向の中点の間のy軸方向の間隔が40.8mmとなるように粘着テープTを貼付した以外は、実施例1と同様にして、分析した。
【0045】
図8に、得られたマスクロマトグラムを示す。なお、
図8(a)及び(b)は、それぞれポリエチレングリコール(m/z=195)及びジフェンヒドラミン(m/z=256)のマスクロマトグラムである。
【0046】
図8から、ポリエチレングリコール由来のピークの頂点及びジフェンヒドラミン由来のピークの開始点は、それぞれ1.3min及び4.7minであることがわかる。このことから、医薬品外用剤2が塗布された領域と粘着テープTのy軸方向の中点の間のy軸方向の間隔は40.8mmとなり、精度よく測定できることがわかる。
【0047】
図9に、
図8の5.2minにおけるマススペクトルを示す。
【0048】
図9から、ジフェンヒドラミン由来のピーク(m/z=256)が存在していることがわかる。
【0049】
[実施例4]
スライドガラスに、フタル酸ジメチルの1g/Lメタノール溶液(以下、溶液1という)10μL、フタル酸ジエチルの1g/Lメタノール溶液(以下、溶液2という)10μL及びフタル酸ジイソプロピルの1g/Lメタノール溶液(以下、溶液3という)10μLを24mm間隔で直線状に塗布した。次に、
図2に示す分析方法を用いて分析した。具体的には、まず、溶液1〜3が塗布されたスライドガラスをサンプルステージ10に載せた後、スライドガラスのx軸方向の溶液1〜3が塗布された領域を含む領域に、溶液1が塗布された領域と基準線Lのy軸方向の中点の間のy軸方向の間隔が7.2mmとなるようにペンPを用いて基準線Lを描画した。次に、サンプルステージ10をy軸方向に0.2mm/sで移動させながら、DARTイオン源20を用いて、準安定励起状態のヘリウムHe
*(2
3S)を大気中の水に衝突させてペニングイオン化させて生成したプロトンをスライドガラスのフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソプロピル及び基準線Lに含まれるポリエチレングリコールに付加して生成したイオンを、質量分析計30のイオン導入口31に導入して質量分析した。
【0050】
図10に、得られたマスクロマトグラムを示す。なお、
図10(a)、(b)、(c)及び(d)は、それぞれポリエチレングリコール(m/z=327)、フタル酸ジメチル(m/z=195)、フタル酸ジエチル(m/z=223)及びフタル酸ジイソプロピル(m/z=251)のマスクロマトグラムである。
【0051】
図10から、ポリエチレングリコール由来のピークの頂点、フタル酸ジメチル由来のピークの開始点、フタル酸ジエチル由来のピークの開始点及びフタル酸ジイソプロピル由来のピークの開始点は、それぞれ1.1min、1.7min、3.7min及び5.7minであることがわかる。このことから、溶液1が塗布された領域、溶液2が塗布された領域及び溶液3が塗布された領域と、基準線Lのy軸方向の中点の間のy軸方向の間隔は、それぞれ7.2mm、31.2mm及び55.2mmとなり、溶液1、溶液2及び溶液3が24mm間隔で塗布されていることが確認され、精度よく測定できることがわかる。
【0052】
図11及び
図12に、それぞれ
図10の1.1min及び2.0minにおけるマススペクトルを示す。
【0053】
図11から、ポリエチレングリコール由来のピーク(m/z=195、239、283、327)が存在していることがわかる。なお、これらのピークを用いて、質量分析計30を校正した。
【0054】
図12から、フタル酸ジメチル由来のピーク(m/z=195)が存在していることがわかる。