【実施例】
【0042】
つぎに、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0043】
(実験例1)
被検者〔40〜50歳代の男性10人および20歳代の男性16人〕それぞれの頭髪および頭皮を無香料シャンプーで洗浄した。洗浄終了から24時間経過時に、前記ヘキサン−エタノール溶液〔ヘキサン:エタノール(体積比)=60:40〕を含浸させた脱脂綿を用いて、被検者の頭皮の表面540mm
2の範囲を拭き取った。つぎに、前記ヘキサン−エタノール溶液を用いて前記脱脂綿に吸着した頭皮皮脂を抽出した。その後、得られた抽出物を濃縮乾固させ、頭皮皮脂を得た。
【0044】
得られた頭皮皮脂10μgをクロロホルム−ヘキサン溶液〔クロロホルム:ヘキサン(体積比)=2:1〕1μLに溶解させ、試料を得た。得られた試料を、高性能薄層クロマトグラフィープレート(以下、「HPTLCプレート」という)に展着させ、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:水(体積比)=95:20:1〕で展開して、さらに展開溶媒〔ヘキサン:ジエチルエーテル:氷酢酸(体積比)=80:20:10〕で展開し、頭皮皮脂を構成する脂質を分離した。
【0045】
その後、10質量%硫酸銅水溶液をHPTLCプレートに均一に噴霧した。つぎに、前記HPTLCプレートを180℃に加熱することにより、前記HPTLCプレート上の脂質を発色させた。得られた脂質に対応するスポットの濃度および面積をデンシトメーターで解析した。デンシトメーターによる解析結果と、既知量の脂質の標準品の混合標準溶液を用いて作成された検量線とに基づき、各脂質の量(質量)を算出した。なお、脂質の標準品として、炭素数15〜30の常温(25℃)で液状の飽和炭化水素化合物〔和光純薬工業(株)製、商品名:エイコサン〕、スクワレン〔和光純薬工業(株)製、商品名:スクアレン〕、ワックスエステル〔和光純薬工業(株)製、商品名:パルミチン酸ヘキサデシル〕、トリグリセリド〔シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)製、商品名:トリオレイン〕、脂肪酸〔東京化成工業(株)製、商品名:オレイン酸〕、セラミド〔ケイマン社製、商品名:C−2 セラミド〕、コレステロール〔和光純薬工業(株)製、商品名:コレステロール〕を用いた。
【0046】
被検者それぞれの頭皮皮脂中に含まれる各脂質の量(質量)の平均値および20歳代の男性の被検者16人の頭皮皮脂中に含まれる各脂質の量(質量)の平均値を算出した。そして、HPTLCプレート上に分離された脂質の総質量を100として、各脂質の含有率を求めた。また、40〜50歳代の男性の頭皮皮脂および20歳代の男性の頭皮皮脂それぞれにおけるトリグリセリドと脂肪酸との質量比(トリグリセリド/脂肪酸)を算出した。
【0047】
その結果、40〜50歳代の男性の頭皮皮脂の組成と、20歳代の男性の頭皮皮脂の組成とは、40〜50歳代の男性の頭皮皮脂中におけるトリグリセリドの含有率が20歳代の男性の頭皮皮脂中におけるトリグリセリドの含有率と比べて多い傾向がある点および40〜50歳代の男性の頭皮皮脂中における脂肪酸の含有率が20歳代の男性の頭皮皮脂中における脂肪酸の含有率と比べて少ない傾向がある点が大きく異なっていることが見出された。
【0048】
(実験例2)
パネラー4人により、実験例1で用いた被検者(40〜50歳代の男性10人および20歳代の男性16人)の頭部の見た目のべたつき感を評価させた。見た目のべたつき感の評価基準は、以下のとおりである。
〔評価基準〕
5点:べたついている
4点:ややべたついている
3点:普通
2点:ややべたついていない
1点:全くべたついていない
【0049】
つぎに、見た目のべたつき感と実験例1で算出された頭皮皮脂中におけるトリグリセリドの含有率との関係を調べた。
【0050】
実験例2において、見た目のべたつき感と頭皮皮脂中におけるトリグリセリドの含有率との関係を調べた結果を
図1に示す。
図1中、黒三角は40〜50歳代の男性、白丸は20歳代の男性を示す。
【0051】
図1に示された結果から、頭皮皮脂中におけるトリグリセリドの含有率が多いほど、見た目のべたつき感が大きくなる傾向があることがわかる。また、
図1に示された結果から、20歳代の男性と比べ、40〜50歳代の男性のほうが、頭皮皮脂中におけるトリグリセリドの含有率が多く、見た目のべたつき感が大きい傾向があることがわかる。
【0052】
(実験例3)
実験例1において、被検者(40〜50歳代の男性10人および20歳代の男性16人)それぞれの前頭部、頭頂部、後頭部または側頭部の頭皮皮脂を採取したことを除き、実験例1と同様の操作を行ない、各脂質の量(質量)を算出した。40〜50歳代の男性の頭皮1cm
2あたりのトリグリセリドの量の平均値、40〜50歳代の男性の頭皮1cm
2あたりの脂肪酸の量の平均値、20歳代の男性の頭皮1cm
2あたりのトリグリセリドの量の平均値および20歳代の男性の頭皮1cm
2あたりの脂肪酸の量の平均値を算出した。また、HPTLCプレート上に分離された脂質の総質量を100として、40〜50歳代の男性の頭皮皮脂中におけるトリグリセリドの含有率、40〜50歳代の男性の頭皮皮脂中における脂肪酸の含有率、20歳代の男性の頭皮皮脂中におけるトリグリセリドの含有率および20歳代の男性の頭皮皮脂中における脂肪酸の含有率を算出した。
【0053】
実験例3において、頭皮の部位と頭皮におけるトリグリセリドの量との関係を調べた結果を
図2に示す。実験例3において、頭皮の部位と頭皮における脂肪酸の量との関係を調べた結果を
図3に示す。実験例3において、頭皮の部位と頭皮皮脂中におけるトリグリセリドの含有率との関係を調べた結果を
図4に示す。実験例3において、頭皮の部位と頭皮皮脂中における脂肪酸の含有率との関係を調べた結果を
図5に示す。
図2において、白色バーは20歳代の男性の頭皮におけるトリグリセリドの量および黒色バーは40〜50歳代の男性の頭皮におけるトリグリセリドの量を示す。
図3において、白色バーは20歳代の男性の頭皮における脂肪酸の量および黒色バーは40〜50歳代の男性の頭皮における脂肪酸の量を示す。
図4において、白色バーは20歳代の男性の頭皮皮脂中におけるトリグリセリドの含有率および黒色バーは40〜50歳代の男性の頭皮皮脂中におけるトリグリセリドの含有率を示す。
図5において、白色バーは20歳代の男性の頭皮皮脂中における脂肪酸の含有率および黒色バーは40〜50歳代の男性の頭皮皮脂中における脂肪酸の含有率を示す。
【0054】
図2および
図3に示された結果から、40〜50歳代の男性は、20歳代の男性と比べ、前頭部、頭頂部、後頭部および側頭部のいずれの部位においても、頭皮におけるトリグリセリドの量が多く、頭皮における脂肪酸の量が少ない傾向があることがわかる。また、
図4および
図5に示された結果から、40〜50歳代の男性は、20歳代の男性と比べ、前頭部、頭頂部、後頭部および側頭部のいずれの部位においても、頭皮皮脂中におけるトリグリセリドの含有率が高く、頭皮皮脂中における脂肪酸の含有率が低い傾向があることがわかる。
【0055】
(実施例1および比較例1)
炭化水素化合物と、スクワレンと、ワックスエステルと、トリグリセリドと、脂肪酸と、コレステロールと、セラミドとを、表1に示される組成となるように配合して、トリグリセリド/脂肪酸(質量比)が0.81/1である皮脂モデルを調製した(実施例1)。実施例1で得られた皮脂モデルは、頭部の見た目のべたつき感を与える傾向があり、かつ40〜50歳代の男性に多く見られる頭皮皮脂のモデルである。
【0056】
また、炭化水素化合物と、スクワレンと、ワックスエステルと、トリグリセリドと、脂肪酸と、コレステロールと、セラミドとを、表1に示される組成となるように配合して、トリグリセリド/脂肪酸(質量比)が0.34/1である皮脂モデル(比較例1)を調製した。比較例1で得られた皮脂モデルは、頭部の見た目のべたつき感を与えない傾向があり、かつ20歳代の男性に多く見られる頭皮皮脂のモデルである。
【0057】
前記炭化水素化合物として、常温(25℃)で液状の飽和炭化水素化合物である流動パラフィン〔ゾンネボーン・インク(Sonneborn Inc.)製、商品名:KAYDOL〕を用いた。また、前記スクワレンとして、和光純薬工業(株)製、商品名:スクワレンを用いた。前記ワックスエステルとして、パルミチン酸ヘキサデシル〔和光純薬工業(株)製、商品名:パルミチン酸ヘキサデシル〕とミリスチン酸ミリスチル〔花王(株)製、商品名:エキセパールMY−M〕とオレイン酸オレイル〔コグニスジャパン(株)製、商品名:CETIOL〕との混合物〔パルミチン酸ヘキサデシル:ミリスチン酸ミリスチル:オレイン酸オレイル(質量比)=7:2:5〕を用いた。前記トリグリセリドとして、トリステアリン〔ナカライテスク(株)製、商品名:トリステアリン〕とトリパルミチン〔和光純薬工業(株)製、商品名:トリパルミチン〕とトリミリスチン〔和光純薬工業(株)製、商品名:トリミリスチン〕とトリオレイン〔和光純薬工業(株)製、商品名:トリオレイン〕との混合物〔トリステアリン:トリパルミチン:トリミリスチン:トリオレイン(質量比)=1:8:3:9〕を用いた。前記脂肪酸として、ミリスチン酸〔ナカライテスク(株)製、商品名:ミリスチン酸〕とパルミチン酸〔ナカライテスク(株)製、商品名:パルミチン酸〕とステアリン酸〔和光純薬工業(株)製、商品名:ステアリン酸〕とオレイン酸〔和光純薬工業(株)製、商品名:オレイン酸〕との混合物〔ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸(質量比)=4:10:2:10〕を用いた。前記コレステロールとして、和光純薬工業(株)製、商品名:コレステロールを用いた。前記セラミドとして、セラミド2〔(2S,3R)−2−オクタデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール、高砂香料工業(株)製、商品名:セラミド TIC−001〕を用いた。
【0058】
【表1】
【0059】
(試験例1)
市販のシャンプーをその濃度が7質量%となるように精製水に溶解させ、シャンプー水溶液を得た。
【0060】
実施例1または比較例1で得られた皮脂モデルを60℃に加熱して液化させた。得られた皮脂モデル0.25gをケラチン布(20mm×20mm)に均一に塗布した。皮脂モデル塗布後のケラチン布を35℃で12時間以上静置した。
【0061】
つぎに、液温が45℃に保たれた前記シャンプー水溶液100mLが入った容器に、皮脂モデル塗布後のケラチン布を入れた。振動数60min
-1、振幅15mmとなるように前記容器を60分間振盪させることにより、皮脂モデル塗布後のケラチン布を洗浄した。
【0062】
洗浄後のケラチン布に残存した皮脂モデルをクロロホルムで抽出した。得られた抽出物を、GC−FIDに供し、皮脂モデルに含まれる成分(脂肪酸、スクワレン、ワックスエステルまたはトリグリセリド)に対応するピークの面積(以下、「面積A」という)を求めた。また、洗浄後のケラチン布に残存した皮脂モデルの代わりに洗浄前のケラチン布に付着した皮脂モデルを用いたことを除き、前記と同様の操作を行ない、前記成分に対応するピークの面積(以下、「面積B」という)を求めた。つぎに、前記脂質の残存率〔(面積A/面積B)×100〕を算出した。試験例1において、成分の種類と残存率との関係を調べた結果を
図6に示す。
図6中、白色バーは実施例1で得られた皮脂モデルを用いたときの成分の残存率および黒色バーは比較例1で得られた皮脂モデルを用いたときの成分の残存率を示す。
【0063】
図6に示された結果から、実施例1で得られた皮脂モデルを用いたときの成分の残存率は、比較例1で得られた皮脂モデルを用いたときの成分の残存率と比べて高いことがわかる。これらの結果から、実施例1で得られた皮脂モデルは、前記市販のシャンプーでは十分に洗浄することができないことがわかる。したがって、かかる結果から、40〜50歳代の男性の頭皮皮脂は、前記市販のシャンプーでは十分に洗浄することができないことが示唆される。
【0064】
(試験例2)
実施例1で得られた皮脂モデルおよび比較例1で得られた皮脂モデルにより、頭部のべたつき感が生じるかどうかを検証した。
【0065】
ウィッグ〔スタッフス社製、商品名:ナチュラルヘアーNo.Y−600ユーカリ〕の半頭の一方に、実施例1で得られた皮脂モデル0.5gを塗布した。また、他方の半頭に、比較例1で得られた皮脂モデル0.5gを塗布した。つぎに、ウィッグを相対湿度60%、温度23℃に保たれた実験室内で24時間静置した。
【0066】
その後、パネラー20人に、実施例1で得られた皮脂モデルを塗布した半頭および比較例1で得られた皮脂モデルを塗布した半頭のどちらが見た目または触感のべたつき感を感じさせるかを判定させることにより、べたつき感の評価を行なった。また、パネラー21人に、実施例1で得られた皮脂モデルを塗布した半頭および比較例1で得られた皮脂モデルを塗布した半頭のどちらが触感のべたつき感を感じさせるかを判定させることにより、触感のべたつき感の評価を行なった。見た目のべたつき感および触感のべたつき感を評価した結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2に示された結果から、実施例1で得られた皮脂モデルを塗布した半頭に見た目のべたつき感および触感のべたつき感を感じるパネラーの人数は、比較例1で得られた皮脂モデルを塗布した半頭に見た目のべたつき感および触感のべたつき感を感じるパネラーの人数と比べて多い傾向があることがわかる。したがって、これらの結果から、また、実施例1で得られた皮脂モデルは、頭部にべたつき感を与える頭皮皮脂として用いることができることがわかる。また、試験例1および試験例2の結果から、実施例1で得られた皮脂モデルによれば、40〜50歳代の男性で多く見られるのと同様の頭部のべたつき感と、このべたつき感を与える頭皮皮脂の洗浄困難性とを再現することができることが示唆される。
【0069】
(試験例3)
(1)皮脂モデルの調製
炭化水素化合物とスクワレンとワックスエステルとトリグリセリドと脂肪酸とコレステロールとセラミドとを、表3に示される組成となるように配合して、皮脂モデルを得た。なお、炭化水素化合物、スクワレン、ワックスエステル、トリグリセリド、脂肪酸、コレステロールおよびセラミドは、実施例1で用いられた炭化水素化合物、スクワレン、ワックスエステル、トリグリセリド、脂肪酸、コレステロールおよびセラミドと同様である。
【0070】
(2)見た目のべたつき感および触感のべたつき感の評価
ウィッグの半頭の一方に、試験番号1の皮脂モデル0.5gを塗布した。つぎに、ウィッグを、相対湿度60%、温度23℃に保たれた実験室内で24時間静置した。
【0071】
その後、パネラー5人に、皮脂モデルが塗布された半頭における見た目のべたつき感と、皮脂モデルが塗布されていない半頭におけるべたつき感とを比較させることにより、見た目のべたつき感の評価を行なった。
【0072】
また、パネラー5人に、皮脂モデルが塗布された半頭における触感のべたつき感と、皮脂モデルが塗布されていない半頭における触感のべたつき感とを比較させることにより、触感のべたつき感の評価を行なった。
【0073】
見た目または触感のべたつき感の評価は、以下のとおりである。
〔評価基準〕
5点:べたついている
4点:ややべたついている
3点:普通
2点:ややべたついていない
1点:全くべたついていない
【0074】
また、試験番号1の皮脂モデルの代わりに試験番号2〜8のいずれかの皮脂モデルを用いたことを除き、前記と同様の操作を行ない、見た目のべたつき感および触感のべたつき感の評価を行なった。
【0075】
試験例3において、見た目のべたつき感および触感のべたつき感を評価した結果を表3に示す。なお、表中の見た目のべたつき感および触感のべたつき感それぞれの評価結果において、「A」は、パネラー5人による評価の合計点が20〜25点であること、「B」は、パネラー5人による評価の合計点が15〜19点であること、「C」はパネラー5人による評価の合計点が10〜14点であること、「D」はパネラー5人による評価の合計点が5〜9点であることを示す。
【0076】
(3)トリグリセリドの残存性の評価
図6に示された結果から、実施例1で得られた皮脂モデルを用いたときの成分の残存率と比較例1で得られた皮脂モデルを用いたときの成分の残存率との差のなかでも、実施例1で得られた皮脂モデルを用いたときのトリグリセリドの残存率と比較例1で得られた皮脂モデルを用いたときのトリグリセリドの残存率との差がもっとも大きくなっていることがわかる。したがって、頭皮皮脂において、トリグリセリドの含有率の増加が、頭部のべたつき感が生じる一因や、このべたつき感を与える頭皮皮脂の洗浄が困難である一因となっていると考えられる。
【0077】
そこで、皮脂モデルの有用性の評価として、以下のようにトリグリセリドの残存性を調べた。
【0078】
まず、試験例1において、実施例1または比較例1で得られた皮脂モデルの代わりに試験番号1〜8のいずれかの皮脂モデルを用いたことを除き、試験例1と同様の操作を行ない、トリグリセリドの残存率を算出した。そして、以下の評価基準により、トリグリセリドの残存性を評価した。試験例3において、トリグリセリドの残存性を評価した結果を表3に示す。なお、表中のトリグリセリドの残存性の評価結果において、「A」は残存率が100〜75%であること、「B」は残存率が74〜50%であること、「C」は残存率が49〜25%であること、「D」は残存率が24〜0%であることを示す。
【0079】
【表3】
【0080】
表3に示された結果から、試験番号3〜8の皮脂モデルを用いた場合の見た目のべたつき感が「B」または「A」、触感のべたつき感が「B」または「A」、トリグリセリドの残存性が「B」または「A」であることがわかる。したがって、炭化水素化合物とスクワレンとワックスエステルとトリグリセリドと脂肪酸とコレステロールとセラミドとを含有する皮脂モデルにおいて、トリグリセリド/脂肪酸(質量比)を0.57/1以上とすることにより、40〜50歳代の男性で多く見られるのと同様の頭部のべたつき感と、このべたつき感を与える頭皮皮脂の洗浄困難性とを再現することができることが示唆される。
【0081】
(試験例4)
試験例1において、無香料シャンプーの代わりに市販のシャンプー(シャンプーA、シャンプーBまたはシャンプーC)を用いたことを除き、試験例1と同様の操作を行ない、トリグリセリドの残存率を算出した。試験例4において、皮脂モデルの種類およびシャンプーの種類とトリグリセリドの残存率との関係を調べた結果を
図7に示す。
【0082】
図7に示された結果から、実施例1で得られた皮脂モデルを用いた場合、市販のシャンプーAは、市販のシャンプーBおよびシャンプーCと比べ、トリグリセリドの残存率が低いことがわかる。かかる結果から、市販のシャンプーAは、市販のシャンプーBおよびCと比べ、実施例1で得られた皮脂モデルに対する洗浄性に優れることから、頭部のべたつき感を与える頭皮皮脂、特に40〜50歳代の男性で多く見られる頭皮皮脂に対する洗浄性にも優れていることが示唆される。
【0083】
一方、比較例1で得られた皮脂モデルを用いた場合、市販のシャンプーAは、市販シャンプーBおよびCと比べ、トリグリセリドの残存率が高くなっており、比較例1で得られた皮脂モデルに対する洗浄性が低いことがわかる。かかる結果から、比較例1で得られた皮脂モデルでは、頭部のべたつき感を与える頭皮皮脂、特に、40〜50歳代の男性で多く見られる頭皮皮脂に対する洗浄性を正確に評価することができないことがわかる。
【0084】
したがって、実施例1で得られた皮脂モデルを用いることにより、40〜50歳代の男性で多く見られるのと同様の頭部のべたつき感を与える頭皮皮脂に対するシャンプーなどの洗浄性を評価することができることがわかる。
【0085】
(製造例1)
アニオン界面活性剤〔新日本理化(株)製、商品名:リカマイルド ES−100、30質量%ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム〕25gを精製水125gに溶解させ、界面活性剤を5質量%含有している擬似シャンプー組成物(シャンプーD)を得た。
【0086】
(製造例2)
両性界面活性剤〔花王(株)製、商品名:アンヒトール20HD、30質量%ラウリルヒドロキシスルホベタイン〕25gを精製水125gに溶解させ、界面活性剤を5質量%含有している擬似シャンプー組成物(シャンプーE)を得た。
【0087】
(試験例5)
試験例1において、無香料シャンプーの代わりに製造例1で得られたシャンプーDまたは製造例2で得られたシャンプーEを用いたことを除き、試験例1と同様の操作を行ない、トリグリセリドの残存率を算出した。試験例5において、皮脂モデルの種類およびシャンプーの種類とトリグリセリドの残存率との関係を調べた結果を
図8に示す。
【0088】
図8に示された結果から、実施例1で得られた皮脂モデルを用いた場合、シャンプーDおよびシャンプーEそれぞれでの洗浄後のトリグリセリドの残存率の間で、差が見られることがわかる。したがって、実施例1で得られた皮脂モデルを用いることにより、頭部のべたつき感を与える頭皮皮脂、特に、40〜50歳代の男性で多く見られる頭皮皮脂に対するシャンプーなどの洗浄力の大きさを評価することができることがわかる。これに対して、比較例1で得られた皮脂モデルを用いた場合には、シャンプーDおよびシャンプーEそれぞれでの洗浄後に、トリグリセリドがほとんど残存していないことから、洗浄力の大きさを評価するのには適していないことがわかる。
【0089】
以上説明したように、炭化水素化合物とスクワレンとワックスエステルとトリグリセリドと脂肪酸とコレステロールとセラミドとを含有し、トリグリセリド/脂肪酸(質量比)が0.57/1以上である皮脂モデルを用いることにより、ヒトの頭部のべたつき感を的確に再現することができることがわかる。したがって、前記皮脂モデルによれば、べたつき感を与える皮脂、特に、40〜50歳代の男性で多く見られる皮脂に対する頭髪用洗浄剤の洗浄性を的確に評価することができることがわかる。また、前記皮脂モデルを用いることにより、人頭を用いなくてもヒトの頭部のべたつき感を的確に再現することができることから、前記皮脂に対する頭髪用洗浄剤の洗浄性を簡便な操作で評価することができることがわかる。