【文献】
改訂 医薬品添加物ハンドブック Handbook of PHARMACEUTICAL EXCIPIENTS Fifth Edition,株式会社薬事日報社,2007年 2月28日,p.936, p.958
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(組成物)
本発明の組成物は、少なくともカンデサルタンシレキセチル、及び糖類を含有し、前記カンデサルタンシレキセチルと前記糖類との混合物を、練合溶媒で練合して湿潤粉体とし、圧縮成型してなり、好ましくは結合剤を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含む。本発明の組成物は、結合剤を更に含有し、前記カンデサルタンシレキセチルと前記糖類との混合物を、前記結合剤を溶解した前記練合溶媒で練合して湿潤粉体とし、圧縮成型してなることが好ましい。
【0010】
<カンデサルタンシレキセチル>
カンデサルタンシレキセチルは、カンデサルタンのプロドラッグである。
前記カンデサルタンの化学名は、2−ブチル−1−{[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}ベンズイミダゾール−7−カルボン酸であり、その構造式は下記構造式(1)の通りである。
【化1】
【0011】
前記カンデサルタンシレキセチルの化学名は、(±)−1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル 2−エトキシ−1−{[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボキシレート)であり、その構造式は下記構造式(2)の通りである。
前記カンデサルタンシレキセチルは、胃腸管から吸収される間に、急速かつ完全にカンデサルタンに加水分解される。前記カンデサルタンシレキセチルは、白色からオフホワイトの粉末であり、水及びメタノールにはほとんど不溶性である。前記カンデサルタンシレキセチルは、従来公知の方法により製造することができ、市販品を用いることができる。該市販品としては、例えば、candesartan cilexetil(Assia Chemical Industries Ltd.,Teva−Tech site製)などが挙げられる。
【化2】
【0012】
前記カンデサルタンシレキセチルの前記組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜24質量%がより好ましい。前記含有量が、0.4質量%未満であると、1錠あたりの質量及び大きさが大きすぎることがあり、30質量%を超えると、1錠あたりの大きさが小さすぎて取り扱いにくくなることがある。一方、前記含有量が、より好ましい範囲であると、錠剤の大きさの点で有利である。
【0013】
<糖類>
前記糖類としては、マンニトール及び乳糖の少なくともいずれかであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。これらの中でも、服用感(味)の点で、マンニトールが好ましく、苛酷な条件下での経時的な錠剤物性の安定性の面で、乳糖がより好ましい。
前記糖類の前記組成物における含有量としては、70質量%〜99.6質量%が好ましく、76質量%〜99質量%がより好ましく、82質量%〜99質量%が特に好ましい。前記含有量が、70質量%未満であると、1錠あたりの大きさが小さすぎて取り扱いにくくなることがあり、99.6質量%を超えると、1錠あたりの質量及び大きさが大きすぎることがある。一方、前記含有量が、特に好ましい範囲であると、錠剤の大きさの点で有利である。
【0014】
<練合溶媒>
前記練合溶媒は、水及び含水有機溶媒のいずれかである。
前記含水有機溶媒における有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの製薬上許容される水溶性有機溶媒が挙げられる。前記練合溶媒における有機溶媒と水との配合比(有機溶媒/水の質量比)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0〜4が好ましく、0〜3がより好ましく、0.05〜0.2が特に好ましい。前記混合比が4を超えると、経済的に不利であるほか、結合剤の種類によっては沈殿を生ずるなどの不具合が生じる場合があり、また引火の危険性が増大することがある。一方、前記混合比が、特に好ましい範囲であると、成型後の錠剤物性が好適に保たれる点で有利である。
前記練合溶媒の添加量としては、前記カンデサルタンシレキセチルと、前記糖類と、前記結合剤との総量100質量部に対し、1質量部〜25質量部が好ましく、3質量部〜20質量部がより好ましい。
【0015】
<結合剤>
前記結合剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースナトリウム及びデンプングリコール酸ナトリウムから選択される少なくとも1種であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。これらの中でも、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが好ましい。
前記結合剤の前記組成物における含有量としては、0質量%であってもよいが、0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.05質量%〜3質量%がより好ましい。前記含有量が、より好ましい範囲であると、十分な錠剤の強度が維持でき、好適な錠剤物性が得られる点で有利である。
【0016】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、通常、医薬組成物に用いることができる公知の成分を目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記糖類以外の他の糖類、前記結合剤以外の他の結合剤、滑沢剤、崩壊剤、嬌味剤、香料などが挙げられる。
前記他の糖類としては、キシリトール、ソルビトールなどが挙げられる。前記他の結合剤としては、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。前記滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。前記崩壊剤としては、デンプン(トウモロコシデンプン等)、結晶セルロース、カルメロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、クロスカルメロースカルシウムなどが挙げられる。前記嬌味剤としては、例えば、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムなどが挙げられる。前記香料としては、例えば、l-メントール、バニリン、オレンジ油などが挙げられる。
【0017】
[湿製錠剤]
一実施形態において、本発明の組成物は、前記カンデサルタンシレキセチルと前記糖類との混合物を、前記練合溶媒及び前記結合剤を溶解した前記練合溶媒のいずれかで練合して湿潤粉体とし、圧縮成型してなる組成物である。これらの中でも、本発明の組成物は、圧縮成型してなる湿製錠剤であることが好ましく、該湿製錠剤は、後述する本発明の組成物の製造方法により製造することができる。
このようにして得られた組成物は、例えば、空隙率を測定することにより同定することができる。また、本発明の組成物は、空隙率が20%以上の錠剤であることが好ましく、空隙率が20%〜35%の錠剤であることがより好ましく、空隙率が20%〜30%の錠剤であることが特に好ましい。
ここで、前記「空隙率」は、例えば、水銀圧入細孔分布測定装置(オートポア、株式会社島津製作所製)を用いて下記式(1)に基づいて測定することができる。
ε(%)=Vm/Vs ・・・式(1)
ただし、式(1)中、εは、空隙率を示し、Vmは、組成物の細孔容積を示し、Vsは、組成物の体積を示す。
ここで、前記Vm及びVsは、それぞれ下記式(2)及び(3)より求める。
Vm=Wt/Ws ・・・式(2)
ただし、式(2)中、Wtは、圧入水銀量(cm
3)を示し、Wsは、組成物質量(g)を示す。
Vs=Wm/Ld ・・・式(3)
ただし、式(3)中、Wmは、組成物の容積あたりの水銀質量(g)を示し、Ldは、水銀の密度(g/cm
3)を示す。
【0018】
[湿式造粒物]
また、他の実施形態において、本発明の組成物は、前記カンデサルタンシレキセチルと前記糖類との混合物を、前記練合溶媒及び前記結合剤を溶解した前記練合溶媒のいずれかで練合して湿潤粉体とし、湿式造粒してなる組成物(湿式造粒物)である。本発明の組成物は、必要に応じて製剤化助剤を加えて湿式造粒して、顆粒剤、細粒剤とすることができ、更にカプセルに充填してカプセル剤とすることができる。
前記湿潤粉体を湿式造粒する方法としては、特に制限なく、目的に応じて適宜公知の湿式造粒法を選択することができ、例えば、円筒造粒機、ペレッター等を使用する押出造粒法、スピードミル、パワーミル等を使用して湿潤捏和物を破砕する破砕造粒法、ミニマイザー、パワーニーダー、スピードミル、マルメライザー等を使用し、主として転動作用により造粒する転動造粒法、噴霧乾燥等の方法による流動層造粒法などが挙げられる。
なお、前記湿潤粉体は、後述する錬合工程により調製することができる。
【0019】
[湿製錠剤]
更なる実施形態において、本発明の組成物は、前記カンデサルタンシレキセチルと前記糖類との混合物を、前記練合溶媒及び前記結合剤を溶解した前記練合溶媒のいずれかで練合して湿潤粉体とし、湿式造粒してなる組成物(湿式造粒物)を、さらに圧縮成型してなる組成物(湿製錠剤)である。
【0020】
(組成物の製造方法)
本発明の組成物の製造方法は、少なくとも練合工程と、圧縮成型工程とを含み、更に必要に応じて適宜選択した、乾燥工程などのその他の工程を含む。
【0021】
<練合工程>
前記練合工程は、少なくとも前記カンデサルタンシレキセチルと前記糖類とを練合する工程である。
前記練合の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法を適宜選択することができるが、カンデサルタンシレキセチルと前記糖類との混合物を、前記練合溶媒で練合して湿潤粉体とする方法が挙げられる。また、カンデサルタンシレキセチルと前記糖類との混合物を、前記結合剤を溶解した前記練合溶媒で練合して湿潤粉体とする方法が好ましい。
前記糖類及び前記結合剤の好ましい態様としては、本発明の組成物において記載したものを用いることができる。
【0022】
前記混合物を調製するための混合装置としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の装置を適宜選択することができ、例えば、高速攪拌造粒装置などの装置が挙げられる。
【0023】
前記練合を行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の装置を適宜選択することができ、例えば、リボンミキサー、高速攪拌造粒機などの装置が挙げられる。
【0024】
<圧縮成型工程>
前記圧縮成型工程は、前記練合工程において得られた湿潤粉体を、圧縮成型する工程である。
前記圧縮成型工程における充填加圧時の圧力としては、2kg/cm
2〜160kg/cm
2であり、5kg/cm
2〜80kg/cm
2が好ましく、5kg/cm
2〜60kg/cm
2がより好ましく、5kg/cm
2〜40kg/cm
2が特に好ましい。前記圧力が、2kg/cm
2未満であると、良好な成型性が得られないことがあり、160kg/cm
2を超えると、組成によっては、所望のカンデサルタンシレキセチルの環境安定性が得られないことがある。一方、前記圧力が、特に好ましい範囲であると、カンデサルタンシレキセチルの温度安定性、湿度安定性、及び光安定性の全てが向上する点で有利である。
【0025】
前記練合物を圧縮成型する方法としては、上記を満たす限り特に制限はなく、目的に応じて公知の方法を適宜選択することができ、例えば、特開平8−19589号公報に開示される錠剤製造装置、特開平8−19588号公報に開示される錠剤製造装置、ロータリー打錠機などの装置を用いて圧縮成型する方法などが挙げられる。
【0026】
<<乾燥工程>>
圧縮成型して得られた組成物を乾燥する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の装置を用いた乾燥方法を適宜選択することができ、そのような装置としては、例えば、棚式乾燥機、ベルトコンベアを備えた通風乾燥機などが挙げられる。前記乾燥工程は、例えば、錠剤の成形中及び成形後など、複数回行ってもよい。
【0027】
−湿製錠剤製造装置−
特開平8−19588号公報に開示される錠剤製造装置(1)及び特開平8−19589号公報に開示される錠剤製造装置(2)、並びに該錠剤製造装置を用いた本発明の組成物の製造方法について、以下に説明する。
【0028】
−−錠剤製造装置(1)−−
特開平8−19588号公報に開示される錠剤製造装置(1)は、複数の充填穴を備えた第1テーブルと、複数のモールド穴を備えて第1テーブルに部分的に接触して相対移動する第2テーブルとを使用し、第1テーブルの充填穴に湿潤粉体を過分に供給し、充填穴に供給された湿潤粉体を第1テーブルの充填穴と第2テーブルのモールド穴とが重なる位置で充填ピンにより第2テーブルのモールド穴に加圧充填し、次いで両テーブルを相対移動させてモールド穴内の湿潤粉体を擦り切ることにより、錠剤を成形するようにしたものである。
【0029】
したがって、前記錠剤製造装置(1)によれば、湿潤粉体を加圧してから擦り切るので、湿潤粉体の取り扱いが容易になって生産性が向上し、錠剤の空隙率や重量、寸法等のばらつきが少なくなり、機械的強度の高い、溶解性及び崩壊性に優れた錠剤を、高い精度及び品質で生産することができる。
【0030】
以下、前記錠剤製造装置(1)の一態様について説明する。
図1は、前記錠剤製造装置(1)の概略平面図、
図2は、
図1の矢視II−II方向における概略正面図である。ベッド1の上には、小径の第1テーブル2と大径の第2テーブル3とが、ステーションBの位置で、第2テーブル3の上に第1テーブル2が部分的に接触して重なるように、水平方向に回転可能に配置されている。これら第1テーブル2及び第2テーブル3は、それぞれモータ4及びこのモータ4にチェーンを介して連結された2台の間欠割出装置5を含む駆動装置により間欠回転駆動される。第1テーブル2には、円周方向に4等分された位置に、それぞれ2個ずつの充填穴6が設けられており、第2テーブル3には、円周方向に8等分された位置に、それぞれ2個ずつの成形用穴であるモールド穴7が設けられている。充填穴6とモールド穴7は同径であり、ステーションBの位置で充填穴6の下にモールド穴7が重なるように、第1テーブル2と第2テーブル3との位置が設定され、かつ間欠割出装置5により回転角を割出されて駆動される。
【0031】
充填穴6とモールド穴7が同心的に位置決めされるステーションBには、充填加圧装置8が第1テーブル2の上方に配置され、充填加圧装置8の下部には、充填穴6及びモールド穴7のよりも少し径の小さい充填ピン9が取り付けられている。この充填ピン9に対向する第1テーブル2の下部には、充填受け部材10が配置されている。ステーションBに対して180度反対側の第1テーブル2側のステーションAの位置には、第1テーブル2の上部にホッパー11が配置され、これに対向するように第1テーブル2の下部にホッパー受け部材12が配置されている。
【0032】
第2テーブル3のステーションBから時計回り方向に45度回転したステーションCの位置には、第2テーブル3を介して対向するように離型剤塗布装置114が配置されている。第2テーブル3のステーションCからさらに45度回転したステーションDの位置には、成形装置113が配置されている。この成形装置113は、第2テーブル3の両側にそれぞれ対向するように配置された同じ構造の上部成形装置121と下部成形装置122とからなり、それぞれ成形用金型である上杵123及び下杵124を有する。第2テーブル3のステーションDからさらに時計回り方向に45度ずつ回転したステーションEからF、Gにかけては、乾燥装置16が第2テーブル3の上方に配置されている。
【0033】
さらに、第2テーブル3のステーションGから時計回り方向に45度回転したステーションHの位置には、第2テーブル3の上方に取り出し装置17が配置され、その下部に取り出しピン18が取り付けられている。ステーションHの第2テーブル3の下方には、コンベア19の一端側が配置され、コンベア19の他端側はベッド1の側方に延びており、途中に乾燥装置20が配置されている。第1テーブル2と第2テーブル3とは、第1テーブル2が2回転する間に第2テーブル3が1回転するように、かつ充填穴6及びモールド穴7が、それぞれのステーションに確実に停止するように、間欠割出装置5により第1テーブル2は、90度ずつ、第2テーブル3は、45度ずつ間欠駆動される。
【0034】
次に、前記錠剤製造装置(1)の動作について
図3を参照しながら説明する。まず、ステーションAにおいては、
図3(a)に示すように、ホッパー11の中に収容した湿潤粉体Pを第1テーブル2の充填穴6に充填供給する。充填穴6の下部にはホッパー受け部材12が配置されているので、湿潤粉体Pは、確実に充填穴6内に供給される。このとき、充填穴6には湿潤粉体Pを山盛りに過分に供給しておく。実際には、充填穴6の上部をすり鉢状に形成するか、又は第1テーブル2を第2テーブル3よりも厚めに形成するか、もしくは充填穴6の周囲部分だけを厚く形成して、湿潤粉体Pが第2テーブル3のモールド穴7の容積よりも十分多く供給されるようにしておく。湿潤粉体Pを供給された充填穴6は、2ストロークでステーションBに移動し、別の充填穴6がホッパー11の下に位置する。
【0035】
使用する湿潤粉体Pは、前記カンデサルタンシレキセチルと、前記糖類と、必要に応じて、前記結合剤と、滑沢剤、崩壊剤、嬌味剤、香料などから選択される少なくとも1種の前記その他の成分と、前記練合溶媒とからなる混合粉体である。
【0036】
ステーションBにおいては、
図3(b)に示すように、湿潤粉体Pを充填供給された充填穴6は、下部を充填受け部材10により当てがわれた第2テーブル3のモールド穴7に重ねられ、その上から充填加圧装置8の充填ピン9が降下してきて、充填穴6内の湿潤粉体Pを一定の圧力で加圧して第2テーブル3のモールド穴7に押し込む。このときの圧力は、通常2kg/cm
2〜160kg/cm
2であり、5kg/cm
2〜80kg/cm
2が好ましく、5kg/cm
2〜60kg/cm
2が好ましく、5kg/cm
2〜40kg/cm
2が特に好ましい。充填穴6内には、前工程において予め過分の湿潤粉体Pが供給されているので、モールド穴7を埋め尽くしてもまだ充填穴6に湿潤粉体Pが残る状態になる。
【0037】
次に、
図3(c)に示すように、第2テーブル3がステーションCに向けて移動しようとするとき、湿潤粉体Pを充填されたモールド穴7と充填穴6とは接触しながら相対移動するので、モールド穴7に充填された湿潤粉体Pが両方の穴のエッジ部分で擦り切られることになり、モールド穴7内に錠剤となる基本部分が成形される。
【0038】
ステーションCにおいては、
図3(d)に示すように、第2テーブル3のモールド穴7内に充填された湿潤粉体Pに、その両側から離型剤塗布装置114のノズル114a,114bから離型剤(滑沢剤とも言われ、張り付き防止用の物質)が塗布される。この離型剤の塗布は、次工程における面取り成形を、湿潤粉体Pに直接接触する上杵123及び下杵124を使用して行なうので、これらの杵に湿潤粉体Pが付着しないように行なわれるものである。湿潤粉体Pは、その特有な粘りや濡れによる接着性のため、杵に付着して錠剤の形が崩れたり、杵に付着固化することにより製造上の障害を起こすからである。
【0039】
前記錠剤製造装置(1)では、離型剤の一部が錠剤となる湿潤粉体Pに付着するので、前記離型剤としては、人体に無害なものが使用される。そのような離型剤としては、特に制限することなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、セルロース糖類、コンスターチや馬鈴薯澱粉等の澱粉類、無水珪酸類、シリコン油等の医薬品の滑沢剤として使用されるものを挙げることができる。これらの中でも、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、コンスターチや馬鈴薯澱粉等の澱粉類が特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
ステーションDにおいては、
図3(e)に示すように、両面に離型剤を塗布されたモールド穴7内の湿潤粉体Pは、上部成形装置121の上杵123及び下部成形装置122の下杵124により上下から成形され、上下両面が上杵123及び下杵124の端面に形成された面取り形状に沿って成形される。湿潤粉体Pには離型剤が塗布されているので、これらの杵122,124に湿潤粉体Pが付着することがない。なお、この面取りは、錠剤の角をとって飲みやすくするためのものであり、平面による面取りのみならず、球面による丸み付けをもこの面取りに含めるものとする。また、この面取り成形を行なわない場合は、前工程の離型剤塗布も必要ない。さらに、この面取り成形とともに割線や製品マーク等を刻印するための成形を行なってもよい。
【0041】
次に、ステーションE、F、Gにおいては、
図3(f)に示すように、モールド穴7の中で成形された湿潤粉体Pが、乾燥装置16により乾燥されて固化し、錠剤となる。そして、
図3(g)に示すステーションHにおいて、モールド穴7の中で固化した湿潤粉体Pは、取り出し装置17の取り出しピン18が降下することにより下方に押し出され、回転するコンベア19のベルト上に落下する。落下した湿潤粉体Pは、乾燥装置20でさらに乾燥された後、所定のトレイに排出される。排出工程の前にも滑沢材塗布工程を設けることができる。
【0042】
このように、前記錠剤製造装置(1)及び該錠剤製造装置(1)を用いた本発明の組成物の製造方法によれば、第1テーブル2の充填穴6に供給された湿潤粉体Pを第2テーブル3のモールド穴7に充填ピン9を加圧充填した後、第1テーブル2と第2テーブル3とを相対移動させることにより、モールド穴7内の湿潤粉体Pを擦り切って錠剤の形に成形するので、製造が容易で大量生産が可能であり、また錠剤の空隙率や重量、寸法等のばらつきも少なくなり、機械的強度も高くなり、精度及び品質の高い錠剤を製造することができる。
【0043】
なお、前記錠剤製造装置(1)において、
図3(d)の面取り前工程において、離形剤を直接湿潤粉体Pに塗布する替わりに、離形剤塗布装置114をステーションDに配置して、
図4に示すように、上杵123及び下杵124の湿潤粉体Pに接触する側の端面に離形剤を塗布してから、
図3(e)の面取り工程を行なうようにしてもよい。
【0044】
また、
図5に示すように、第2テーブル3のモールド穴7の下部を、上面を面取り形状に形成し、そこに予め離型剤を塗布したスライドピン30により塞ぎ、このスライドピン30をレール31により昇降可能に構成しておくことにより、充填受け部材10、ホッパー受け部材12、下杵124、取り出しピン18等が不要になる。この場合、スライドピン30を上昇させて錠剤を抜き出した後、グリッパ等の別の手段によりベルトコンベア19上に移動させる。
【0045】
さらに、
図6に示すように、第2テーブル3のモールド穴7の替わりに、底部を閉じて空気穴32を形成するとともに、角部を面取り形状としたモールド穴33とすることにより、同様に充填受け部材10、ホッパー受け部材12、下杵124及び取り出しピン18等が不要になる。この場合は、空気穴32にエアを供給して錠剤の取り出しを行なうが、取り出された製品には、空気穴32に相当する部分に湿潤粉体の残留物が生じるので、これを除去する必要がある。
【0046】
−−錠剤製造装置(2)−−
特開平8−19589号公報に開示される錠剤製造装置(2)は、前記湿潤粉体を成形用穴に充填し、この成形用穴内の湿潤粉体の少なくとも一方の面を張り付き防止フィルムを介して成形用金型により錠剤の形に成形するようにしたものである。
【0047】
したがって、前記錠剤製造装置(2)によれば、成形用穴内の前記湿潤粉体と成形用金型との間には、張り付き防止フィルムが介在しているので、成形用金型に湿潤粉体が張り付くのを防止しながら角部の面取りや表面のマーク等を施すことができ、高齢者や小児が服用しやすく、かつ生産性や精度及び品質の高い錠剤製造方法及びその装置を実現することができる。
【0048】
以下、前記錠剤製造装置(2)の一態様について説明する。
図7は、前記錠剤製造装置(2)の概略平面図、
図8は、同装置の概略正面図である。前記錠剤製造装置(2)は、前記錠剤製造装置(1)における成形装置113及び離型剤塗布装置114に代えて、後述する成形装置213、離型剤塗布装置214及び張り付き防止フィルム送り装置215を備える以外は、前記錠剤製造装置(1)と同様の構成を備える。したがって、
図7及び
図8において、
図1及び
図2と同一の符号を有する部材及びその作動については、
図1及び
図2において説明した通りである。
【0049】
前記錠剤製造装置(2)における成形装置213は、ステーションDの位置に、第2テーブル3を介して対向するように配置されている。成形装置213には、
図7及び
図8に示すように、離型剤塗布装置214及び張り付き防止フィルム送り装置215が付属している。
図9は、成形装置213と、これに付属して配置された離型剤塗布装置214と張り付き防止フィルム送り装置215との位置関係を示している。成形装置213は、第2テーブル3の両側にそれぞれ配置された同じ構造の上部成形装置221と下部成形装置222とからなり、それぞれ成形用金型である上杵223及び下杵224を有する。上杵223及び下杵224の端面は面取り形状に形成されている。張り付きフィルム送り装置215もまた、第2テーブル3の両側に同じ構造のものが配置され、成形装置221,222のそれぞれの一方の側に配置されて、樹脂製又はゴム製のテープ状の張り付き防止フィルム225を巻かれてこれを送り出す送りリール226と、その反対側に配置されて、使用済みの張り付き防止フィルム225を巻取る巻取りリール227と、成形装置221,222の両側に配置されて、張り付き防止フィルム225に張力を与えるテンション装置228,229とを備えている。また、各送りリール226側のテンション装置228と各成形装置221,222との間には、張り付き防止フィルム225の第2テーブル3側の面に離型剤(滑沢剤とも言われ、張り付き防止用の物質)を塗布する離型剤塗布装置214が配置されている。なお、この離型剤塗布装置214は、張り付き防止フィルム225に前記湿潤粉体が付着するのを防止するためのものであり、使用する張り付き防止フィルム225が、ポリテトラフルオロエチレンなどの離型性に優れたものである場合には設ける必要はない。また、錠剤に離型剤が混入するのを嫌う場合にも設置されない。張り付き防止フィルム225としては、柔軟性があって切断しにくく、成形時に湿潤粉体が付着しにくく、医薬品の安定性等に影響せず、医薬品の包装材料として使用できるフィルムを用いるのが好ましい。例えば、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートなどのフィルムが用いられる。そのフィルムの厚みとしては、10μm〜30μmが好ましい。
【0050】
次に、前記錠剤製造装置(2)の動作について
図10を参照しながら説明する。
図10(a)〜
図10(c)における部材及びその作動については、
図3(a)〜
図3(c)において説明した通りである。
ステーションDにおいては、
図10(d)に示すように、モールド穴7内の湿潤粉体Pは、上部成形装置221の上杵223及び下部成形装置222の下杵224により、それぞれ張り付き防止フィルム225を介して上下から成形され、両面が上杵223及び下杵224の端面形状に沿って面取り成形されるとともに、上杵223及び下杵224に湿潤粉体Pが付着するのを防止する。この面取り成形は、錠剤の角をとって磨損や欠けを少なくするためのものであり、本明細書では、面取りとは平面による面取りのみならず、球面による丸み付けをも面取りに含めるものとする。
【0051】
この工程について
図9及び
図11を参照してさらに詳しく説明する。
図9及び
図11(a)では、離型剤塗布装置214により離型剤を塗布された張り付き防止フィルム225は、各成形装置221,222の両側に配置されたテンション装置228,229により張力が与えられて、それぞれ上杵223及び下杵224の端面に軽く圧接している。次に、
図11(b)では、移動してきた第2テーブル3のモールド穴7内の湿潤粉体Pに対し、各成形装置221,222によりそれぞれ上杵223及び下杵224が互いに近づくように移動して、湿潤粉体Pを張り付き防止フィルム225を介して成形する。次いで
図11(c)のように、上杵223及び下杵224が互いに離間すると、湿潤粉体Pの粘性により張り付き防止フィルム225は僅かの間だけ湿潤粉体Pに付着しているが、張り付き防止フィルム225は各テンション装置228,229により常に張力が加えられているので、
図11(d)のように湿潤粉体Pからすぐに離れる。このとき、張り付き防止フィルム225上の離型剤は、その一部が湿潤粉体Pに移し取られる。そして、
図11(e)のように、フィルム送り装置215により張り付き防止フィルム225が所定量だけ送られて、離型剤が塗布された新しい面が上杵223及び下杵224に位置することになる。なお、前記錠剤製造装置(2)において使用する離型剤としては、前記錠剤製造装置(1)において説明した離型剤と同じものを使用することができる。
【0052】
次に、
図10に戻ってステーションE、F、Gにおいては、
図10(e)に示すように、モールド穴7の中で成形された湿潤粉体Pが、乾燥装置16により乾燥されて固化し、錠剤となる。そして、
図10(f)に示すステーションHにおいて、モールド穴7の中で固化した湿潤粉体Pは、取り出し装置17の取り出しピン18により下方に押し出され、回転するコンベア19のベルト上に落下する。落下した湿潤粉体Pは、乾燥装置20でさらに乾燥された後、所定のトレイに排出される。
【0053】
このように、前記錠剤製造装置(2)及び該錠剤製造装置(2)を用いた本発明の組成物の製造方法によれば、第1テーブル2の充填穴6に供給された湿潤粉体Pを第2テーブル3のモールド穴7に充填ピン9を充填加圧した後、第1テーブル2と第2テーブル3とを相対移動させることにより、モールド穴7内の湿潤粉体Pを擦り切り、その後に成形装置213により湿潤粉体Pを上杵223及び下杵224により張り付き防止フィルム225を介して面取り成形するので、製造が容易で大量生産が可能であり、また錠剤の空隙率、質量などのばらつきも少なく、機械的強度も高くなり、精度及び品質の高い錠剤を製造することができる。
【0054】
なお、前記錠剤製造装置(2)では、第1テーブル2と第2テーブル3の相対移動によりモールド穴7内の湿潤粉体Pを擦り切るようにしているが、別のスクレーパなどの擦り切り手段を用いて擦り切るようにしてもよい。また、面取り成形の前の工程で、湿潤粉体Pを充填穴6からモールド穴7へ移動させる際に加圧しているが、面取り成形前には加圧せずに、面取り成形時にのみ同様な圧力で加圧するようにしてもよい。さらに、面取り成形の工程では、割線や製品マークなどを同時に成形するようにしてもよい。
【0055】
また、前記錠剤製造装置(2)では、
図10(f)の取り出し行程において、張り付き防止フィルムを使用することもできる。
図10(g)〜
図10(j)は、そのような態様を示している。即ち、
図10(g)〜
図10(j)の実施例においては、取り出し装置17に付属して張り付き防止フィルム送り装置244が配列されている。張り付き防止フィルム送り装置244は、張り付き防止フィルム240が巻かれている送りリール243と、その反対側に配置されて、使用済みの張り付き防止フィルム240を巻取る巻取りリール242と、巻取りリール242に隣接する位置に配置され、送りリール243から巻取りリール242へ張り付き防止フィルム240を間欠的に送るようになっている送り装置241とを有し、取り出し装置17と第2テーブル3との間を通って張り付き防止フィルム240を間欠的に移動させるようになっている。また、この態様においては、取り出し装置の取り出しピン18aの端面は、湿潤粉体Pの形状に合わせた面取り形状に形成されている。この態様において、
図10(g)の状態から、湿潤粉体Pは、取り出しピン18aによって張り付き防止フィルム240を介して
図10(h)及び
図10(i)のように押し出されて、回転するコンベヤ19のベルト上に落下する。
図10(g)から
図10(i)までの取り出しピン18aの作動の間は、送り装置241は停止しており、取り出しピン18aが
図10(g)の位置から
図10(i)の位置まで移動するにつれて、その移動量に応じた量だけ張り付き防止フィルム240は送りリール243から引き出される。湿潤粉体Pがコンベヤ19のベルト上に落下した後、
図10(j)のように取り出しピン18aは上昇し、それと同期して送り装置241が作動して、使用済みの張り付き防止フィルム240を、使用量に相当する量だけ巻取りリール242に巻き取らせる。このように張り付き防止フィルム240を使用することにより、湿潤粉体Pが取り出しピン18aに張り付くことを確実に防止することができる。なお、張り付き防止フィルム240の材質、厚みなどは、張り付き防止フィルム225のそれと同様のものでよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0057】
(実施例1)
錠剤あたり、カンデサルタンシレキセチル4mg及びD−マンニトール154.88mgに、ポリビニルアルコール1.12mgを溶解した水−エタノール(75:25、質量比)混合溶媒17.12mgを加えて練合した。この練合物を特開平8−19589号公報に開示される前記錠剤製造装置を用い、30kg/cm
2の圧力にて充填加圧することにより圧縮成型して製錠し、1錠あたり160.0mgの錠剤を得た。
【0058】
<評価>
作製した錠剤について、以下のように評価した。
<<カンデサルタンシレキセチルの類縁物質の測定>>
作製した錠剤について、カンデサルタンシレキセチルの類縁物質、即ち、カンデサルタンシレキセチルの分解物質の量を、以下のHPLC条件により測定した。また、カンデサルタンシレキセチルの類縁物質量(%)は、HPLCのカンデサルタンシレキセチル原薬に由来する全ピーク面積中の類縁物質のピーク面積の%で表した。
−試料溶液の調製−
得られた錠剤に、水4.0mlを加え、次いでアセトニトリル10.0mlを加えて溶解した後に、10分間の超音波処理を行い、遠心分離(3000rpm、10分間)、0.45μmフィルター(商品名:Millex−LH、ミリポア社製)を用いてろ過したものを、HPLCに呈する試料溶液とした。
−標準溶液の調製−
カンデサルタンシレキセチルの原薬10mgを精密に量り、アセトニトリル−水混液(3:2)を加え25mLとした。この溶液1mlを正確に量り、アセトニトリル−水混液(3:2)を加えて100mlとし、標準溶液とした。
−HPLC条件−
装置: 日立D7000
カラム: Inertsil ODS−4 3μm、4.6×150mm、30℃
注入量: 10μL
検出: UV 254nm
流量: 1.0mL/min
移動相A:アセトニトリル:水:酢酸=10:90:1(体積比)の溶液
移動相B:アセトニトリル:水:酢酸=90:10:1(体積比)の溶液
勾配スケジュール:
A B
0min〜30.0min 42%−> 0% 58%−>100%
30.0min〜32.5min 0% 100%
32.5min〜33.0min 0%−>42% 100%−> 58%
33.0min〜36.0min 42% 58%
収集時間:36min
【0059】
<<熱及び湿度安定性評価試験>>
得られた錠剤をシャーレに入れた開放条件において、下記表2に示す通りの条件下で0.5ヶ月間又は1ヶ月間保存した後、上記測定方法を用いてカンデサルタンシレキセチルの類縁物質量(%)を測定した。結果を表2に示す。
なお、表2中の「冷所」とは、約4℃、湿度成り行きの条件を示す。
【0060】
<<光安定性評価試験>>
得られた錠剤をシャーレに入れた開放条件において、キセノンランプ(キセノン光安定性試験機LTX−01、長野科学社製)を用い、照射量120万lux・hの条件下で露光した後、上記測定方法を用いてカンデサルタンシレキセチルの類縁物質を測定した。結果を表3に示す。
【0061】
(
参考例2)
実施例1において、ポリビニルアルコールに代えて
参考例2の錠剤を作製した。
得られた錠剤について、実施例1と同様に上記評価を実施した。結果を表2及び表3に示す。
【0062】
(比較例1)
表1に表す通りの配合にて、直接打錠し、比較例2の錠剤を作製した。
得られた錠剤について、実施例1と同様に上記評価を実施した。結果を表2及び表3に示す。
【0063】
(比較例2)
実施例1の錠剤に代えて、先発製剤であるブロプレス(登録商標)錠4(武田薬品工業株式会社;1錠あたりカンデサルタンシレキセチル4mgを含有する)を比較例2の錠剤として用い、実施例1と同様に上記評価を実施した。結果を表2及び表3に示す。
また、前記ブロプレス(登録商標)錠4の添付文書より、該錠剤に使用されていることが想定される成分について、表1中、「*」にて示した。
【0064】
(比較例3及び4)
特願平4−303988号公報に記載の実施例(本発明「A」:ポリエチレングリコール6000含有)及び比較例(対照「B」:ポリエチレングリコール6000非含有)と同様の処方により、比較例3及び4の錠剤を作製した。
具体的には、下記表1の処方に従い、カンデサルタンシレキセチルと、乳糖水和物と、トウモロコシデンプンと、ポリエチレングリコール6000(ただし、比較例4では、代わりに乳糖水和物を用いた)とをラボ用万能粉粒体処理装置(メカノミル、岡田精工株式会社製)を用いて混合し、ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液をスプレーして流動層造粒乾燥機(パルビスミニベット、ヤマト科学株式会社製)を用いて造粒及び乾燥後、整粒機(コーミル、スクリーン径0.8mm、株式会社パウレック製)を用いて整粒し、カルボキシメチルセルロース及びステアリン酸マグネシウムを加えて混合し、ロータリー打錠機(VIRGO、株式会社菊水製作所製)を用いて直径7.0mm、隅角平面の杵を用いて130mg/錠、圧力2,000kg/cm
2で打錠し、硬度30N〜40Nの錠剤を得た。
得られた錠剤について、実施例1と同様に上記評価を実施した。結果を表2に示す。
【0065】
(実施例
4〜9、13及び14、並びに、参考例3及び10〜12)
実施例1において、各組成を表4−1及び表4−2に表す分量添加したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例
4〜9、13及び14、並びに、参考例3及び10〜12の錠剤を作製した。
得られた錠剤について、実施例1と同様に上記評価を実施した。結果を表5−1及び表5−2に示す。
また、
参考例3、
実施例6、8及び9の空隙率を、水銀圧入細孔分布測定装置(オートポア、株式会社島津製作所製)を用いて下記式(1)に基づいて測定した。
ε(%)=Vm/Vs ・・・式(1)
ただし、式(1)中、εは、空隙率を示し、Vmは、組成物の細孔容積を示し、Vsは、組成物の体積を示す。
その結果、
参考例3、
実施例6、8及び9の空隙率は、それぞれ29%、24%、24%及び25%であり、空隙率20%を超えるものであった。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4-1】
【0070】
【表4-2】
【0071】
【表5-1】
【0072】
【表5-2】
【0073】
表2の結果から、熱及び湿度安定性試験において、本発明組成物である実施例1
及び参考例2では、比較例1〜4に比べてカンデサルタンシレキセチルの類縁物質(分解物質)が顕著に少なく、カンデサルタンシレキセチルが極めて安定であることがわかった。また、冷所の条件においても、本発明組成物である実施例1
及び参考例2では、比較例1〜4に比べてカンデサルタンシレキセチルの類縁物質(分解物質)が顕著に少なく、カンデサルタンシレキセチルが極めて安定であることがわかった。
また、表3の結果から、光安定性試験において、本発明組成物では、比較例1〜2に比べてカンデサルタンシレキセチルの類縁物質(分解物質)が顕著に少なく、カンデサルタンシレキセチルが極めて安定であることがわかった。
【0074】
表5−1及び表5−2の結果から、熱及び湿度安定性試験、及び光照射安定性試験において、本発明組成物である実施例
4〜9、13及び14、並びに、参考例3及び10〜12では、いずれも比較例1〜4に比べてカンデサルタンシレキセチルの類縁物質(分解物質)が顕著に少なく、カンデサルタンシレキセチルが極めて安定であることがわかった。また、冷所の条件においても、本発明組成物である実施例
4〜9、13及び14、並びに、参考例3及び10〜12では、いずれも比較例1〜4に比べてカンデサルタンシレキセチルの類縁物質(分解物質)が顕著に少なく、カンデサルタンシレキセチルが極めて安定であることがわかった。
【0075】
なお、実施例1
、4〜9、13、及び14、参考例2、3、及び10〜12、並びに、比較例1〜4で用いた各成分の具体的な内容は、下記表6に示す通りである。
【0076】
【表6】