(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記開閉部材は、上記インク室と連通する空間と、インク供給経路を構成する開口部とが設けられている格納部であって、当該開口部を塞ぐことができる大きさの閉塞部材が当該空間に格納されている格納部を有しており、
更に上記開閉部材は、ロッド部材を有しており、当該ロッド部材は、上記蛇腹の伸縮に伴って上記閉塞部材と接触して当該閉塞部材を持ち上げて上記開口部を開き、上記閉塞部材との接触を解除して当該閉塞部材で開口部を塞ぐ構成となっている、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインク供給装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、インクジェット印刷装置等の各種印刷装置の小型化の要請に伴い、印刷装置に搭載されるインク供給装置の小型化の要請が強くなっている。
【0011】
しかしながら、上記の従来の構成において、フィルム部材110の変位を受圧板104を介して可動バルブ105に伝達させるためには、フィルム部材110の面積を広くとる必要があり印刷装置の小型化が困難である。
【0012】
さらに、フィルム部材110の可動分の空間を設ける必要があるため、印刷装置の小型化に限界がある。すなわち、フィルム部材110が撓む分だけ、インク供給装置100に空間を設ける必要がある。
【0013】
また、フィルム部材110の変位を受圧板104を介して伝達するため動作伝達のロスが生じやすい。そのため、微妙な圧力を制御することができなかった。さらに、従来の構成においては、フィルム部材110の中央部に受圧板104を取り付ける必要があり、構造が複雑であった。
【0014】
そこで、本発明は上記の課題を解決するために為されたものである。そして、その目的は、従来の構成よりも小型化できるインク供給装置、および当該インク供給装置を備えた印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明に係るインク供給装置は、
液体インクが貯蓄されるタンクと、液体インクを吐出する印刷ヘッドとに接続されるインク供給装置であって、
上記タンクからのインクが正圧で供給される構成となっており、
少なくとも一部が蛇腹になっており、蛇腹の伸縮により容積が変わる容積可変なインク室を備えており、
上記インク室は、インク供給経路に開閉部材を有しており、
インク室の容積が所定値を超えると上記開閉部材がインク供給経路を封止し、所定値を下回ると上記開閉部材がインク供給経路を開くことにより、上記インク室を大気圧に対して負圧に保つ構成となっていることを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、蛇腹の伸縮運動を開閉部材(例えばバルブ)の開閉動作として用いることができる。また、圧力室における壁の対向面を受圧板により形成することにより、従来構成のように壁の対向面をフィルムにより形成する構成に比べて、インク室における壁の対向面の伸縮方向への断面積を少なくすることができる。その結果、インクの体積あたりの開閉部材のストローク量(バルブの移動量)が大きくなり、開口部の開閉制御性を向上させることができる。
【0017】
また本発明に係るインク供給装置は、
上記インク室には、上記開閉部材が配設される開口部が形成された壁が設けられており、
上記インク室には、上記壁との対向側に受圧板が設けられており、且つ、当該壁と当該受圧板とによって挟まれる空間を、上記少なくとも一部が蛇腹である筒構造によって閉塞しており、
上記蛇腹の伸縮に伴って上記受圧板の位置が変化することにより、上記開閉部材がインク供給経路を開閉する構成となっていることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、蛇腹の伸縮運動が、直接、受圧板の変位として表れて、その変動(動作)を開閉部材(バルブ)に伝達することができる。従来の構成においては、
図11に示すように、受圧板104がフィルム部材110の変位作用を受け取り、当該変位作用を可動バルブ105に伝達させることにより、可動バルブ105の開閉がされる構成であるため、圧力室103に可撓性のフィルム部材110を設ける必要がある。そして、フィルム部材110の変位を受圧板104を介して可動バルブ105に伝達させるためには、フィルム部材110の面積を広くとる必要がある。そのため、圧力室103が非常に大きくなってしまう。しかし、本発明に係るインク供給装置の上記構成によれば、受圧板の周囲に可撓性のあるフィルムを配置する必要はない。したがって、従来の構成よりも、インク供給装置を小型化にすることができる。
【0019】
また、受圧板の変位を直接に開閉部材(バルブ)が伝達するため動作伝達のロスが生じにくい。よって、微妙な圧力を制御することができる。さらに、受圧板の変位および蛇腹の形状の変化により、開閉部材(バルブ)を開閉することができるので、複雑な構造を必要とせずにインク室を設けることができる。
【0020】
上記の課題を解決するために、本発明に係るインク供給装置は、
上記筒構造は、樹脂により一体的に形成されており、かつ、一部が蛇腹となっていて、残りの部分は伸縮しない構造となっており、
上記受圧板は、当該受圧板の一端が上記伸縮しない構造とヒンジ構造を形成するようにして取り付けられており、受圧板の他端は、上記蛇腹と連結されるまたは一体となっていて、
上記蛇腹の伸縮に伴って、受圧板がヒンジ構造を軸として回動することにより、上記受圧板が上記開閉部材を開閉する構成となっていることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、ヒンジ構造により受圧板の一端が回転できるように取り付けられていることによって、当該受圧板の回動運動によって開閉部材を開閉して、インクを供給または遮断することができる。
【0022】
また、上記構成によれば、筒構造を樹脂により一体的に形成することにより、複数の部品を組み合わせることにより蛇腹を形成する場合よりも、部品点数を削減することができる。また、複数の部品を組立てることを必要としないため、インク供給装置の組立作業を容易にすることができる。
【0023】
また、本発明に係るインク供給装置は、上記の構成に加えて、
上記筒構造は、樹脂により一体的に形成されており、
上記蛇腹は、屈曲部と傾斜部とから構成されており、
上記屈曲部の厚さは、上記傾斜部の厚さよりも厚さが薄く構成されている、ことが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、筒構造を樹脂により一体的に形成することにより、複数の部品を組み合わせることにより蛇腹を形成する場合よりも、部品点数を削減することができる。また、複数の部品を組立てることを必要としないため、インク供給装置の組立作業を容易にすることができる。
【0025】
また、蛇腹における屈曲部を構成する部分の厚さを、傾斜部の厚さよりも薄くして、当該屈曲部を折り曲げ易くするとともに、屈曲部以外の部分を、屈曲部に比べて厚い樹脂により形成することにより、インク供給装置内へのガスの透過を防ぐまたは抑えることができる。また、屈曲部分を、傾斜部に比べて厚さの薄い樹脂により形成することによって、蛇腹を全て厚さの厚い樹脂で構成する場合と比較して、蛇腹の伸縮による開閉部材のストローク量を十分確保することができる。
【0026】
また、本発明に係るインク供給装置は、上記の構成に加えて、
上記開閉部材には、当該開閉部材が閉まる方向に当該開閉部材を付勢する付勢部材が設けられていることが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、蛇腹が復元力を有している場合に、この復元力のみによって開閉部材の閉動作を実現することも可能である。しかし、この復元力が不足している場合であっても、上記付勢部材を具備していれば、開閉部材を閉まる方向に付勢することができ、インクの供給を確実に遮断することができる。
【0028】
また、本発明に係るインク供給装置は、上記の構成に加えて、
上記開閉部材は、上記インク室と連通する空間と、インク供給経路を構成する開口部とが設けられている格納部であって、当該開口部を塞ぐことができる大きさの閉塞部材が当該空間に格納されている格納部を有しており、
更に上記開閉部材は、ロッドを有しており、当該ロッドは、上記蛇腹の伸縮に伴って上記閉塞部材と接触して当該閉塞部材を持ち上げて上記開口部を開き、上記閉塞部材との接触を解除して当該閉塞部材で開口部を塞ぐ構成となっている、
ことが好ましい。
【0029】
上記構成によれば、閉塞部材(例えばボールのような球状構造体)を利用して、インクの供給・遮断を実現することができる。また、受圧板に働く負圧が閉塞部材の重みを上回らないと当該ボールが持ち上がらない構成となっているため、所定の負圧に達しないとインク供給経路が開かないようにすることができる。このような構成とすれば、インク供給経路が閉まる方向に当該開閉部材を付勢する付勢部材を設けたことと同様の効果を得ることができるが、本構成にさらに付勢部材を設けても良い。インク供給経路の開閉動作の微調整を行うことができる。
【0030】
更に、本発明には、上記インク供給装置を備えることを特徴とする印刷装置も含まれる。
【0031】
上記構成によれば、小型化した印刷装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、小型化したインク供給装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係るについて、以下に3つの実施形態を例示して、詳述する。
【0035】
〔第1実施形態〕
本発明に係るインク供給装置の第1実施形態について、
図1に基づいて説明する。
【0036】
図1は、本実施形態のインク供給装置の断面図である。
【0037】
(インク供給装置)
図1に示す本実施形態のインク供給装置1は、液体インクが貯蓄されるタンクに接続されて当該タンクからインクの供給を受けるとともに、液体インクを吐出する印刷ヘッドに接続されて当該印刷ヘッドへインクを供給するための装置である。そのため、本実施形態のインク供給装置1は、インク供給室2(インク貯留室)と、ダンパー室である圧力室3(インク室)と、受圧板4と、第1バルブ5(開閉部材)と、壁6と、インク供給部7と、インク導出部8と、ケース11とを備えている。
【0038】
・インク供給室2
インク供給室2は、インク供給部7を介して外部にあるタンクに接続されている。タンクに貯蓄されているインクは、インク供給部7を介してインク供給室2へ供給される。
【0039】
また、インク供給室2は、上記壁6を介して圧力室3と隣接している。
【0040】
この壁6には、第1支持孔9(インク供給経路、開口部)が設けられており、第1支持孔9には第1バルブ5が貫通している。第1バルブ5の動作についての詳細は後述するが、第1バルブ5は、貫通方向に移動することによって第1支持孔9を開閉することができ、第1支持孔9が開いた場合にインク供給室2から圧力室3へインクを供給する構成となっている。
【0041】
・圧力室3
圧力室3は、インク導出部8を介して外部にある印刷ヘッドに接続されており、圧力室3はインク供給室2から供給されたインクを、インク導出部8を介して印刷ヘッドに供給する。
【0042】
圧力室3は、壁6と、受圧板4と、蛇腹構造部10とに囲まれて構成されている。具体的には、圧力室3は、蛇腹の筒構造である蛇腹構造部10と、当該筒構造の一方の開口端を閉塞する壁6と、当該筒構造の他方の開口端を閉塞する受圧板4とによって囲まれている。蛇腹の筒構造は、円筒でもよく、矩形の筒であってもよく、半円の筒であってもよい。
【0043】
蛇腹構造部10は、蛇腹を伸縮させることにより、圧力室3の容積を変化させる。蛇腹は、圧力室3の内部空間の圧力の変化に応じて伸縮する。圧力室3の内部空間の圧力は、大気圧よりも負圧(陰圧)に構成されている。これにより、圧力室3に連通する印刷ヘッドを適切な負圧に保つことができ、印刷ヘッドからインクが漏れ出すことを防止している。
【0044】
ここで、圧力室3の内部空間は、所定(所定範囲)の圧力値に維持される。これは、圧力室3の内部空間が密閉状態となっているからである。すなわち、内部空間が所定(所定範囲)の圧力値であれば、第1バルブ5によって第1支持孔9は閉鎖され、また、圧力室3のインクがインク導出部8から自然に流出することはない。
【0045】
ところが、この密閉状態において印刷ヘッドにインクが供給されると、圧力室3の内部空間の圧力値は上記所定(所定範囲)の圧力値よりも更に負圧に偏る。
【0046】
蛇腹構造部10は、圧力室3の内部空間の圧力値が上記所定(所定範囲)の圧力値よりも負圧に偏るのに応じて蛇腹を縮めて、圧力室3の内部空間の容量を狭めて、圧力値を上記所定(所定範囲)の圧力値に維持しようとする。すなわち、蛇腹構造部10の蛇腹の伸縮を用いて、圧力室3の内部空間の圧力値が上記所定の圧力値となるようにインク供給装置1を構成している。圧力室3の負圧により蛇腹を縮める力が、蛇腹の復元力や開閉部材の摺動抵抗を上回った時点で第1バルブ5が開き、インク供給室2から圧力室3にインクが供給される。
【0047】
ここで、
図4は、蛇腹構造部10の拡大断面図である。同図に示すとおり、蛇腹構造部10は、断面視において隣り合う傾斜部10aと傾斜部10cとの間に、屈曲部10bを有した構造となっている。
【0048】
蛇腹構造部10は、伸縮機構は特に制限されるものではないが、
図4に示す一例では、蛇腹構造部10を樹脂により一体成型しており、屈曲部10bの厚さを傾斜部10a・10cの厚さよりも薄くして、伸縮し易いようにしている。
【0049】
また、
図4のように屈曲部10bの厚さを薄くすれば、伸縮動作を実現するために蛇腹構造部10の全体の厚さを薄くする必要がない。すなわち、傾斜部10a・10cの厚さは比較的厚く構成することができる。傾斜部10a・10cの厚さを厚く構成することにより、ガスバリア性能を高めることができる。これにより、圧力室3のインクに外部のガス等の気体が浸透することを防ぐことができ、インクの酸化や、インク中の溶存気体が増加するのを防ぐことができる。
【0050】
蛇腹構造部10の伸縮力は、印刷ヘッドへのインクの送出によって圧力室3の内部空間の圧力値が上記所定(所定範囲)の圧力値よりも負圧に偏るのに応じて縮む一方、後述するようにインク供給室2からインクが供給され始めると元の長さまで伸長する復元力をもっていればよい。
【0051】
蛇腹構造部10を一体成型で形成するのに用いることができる樹脂としては、溶剤インクを使用する場合は、ポリエチレン、ポリパラキシレン等を好適に用いることができる。水性インクを使用する場合は、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド等を好適に用いることができる。
【0052】
蛇腹構造部10の屈曲部10bの厚さは0.1〜2.0mm程度とすることができ、蛇腹構造部10の傾斜部10a・10cの厚さは0.2〜4.0mm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。ただし、本発明では、従来構成のフィルムのように、撓む動作によってインクの供給および遮断を実現するものではない。換言すれば、蛇腹構造部10は、例えば傾斜部10a・10cがインクの供給および遮断を実現するために撓むようなことはない。
【0053】
また蛇腹構造部10と壁6とは、熱溶接等により接着することができる。また蛇腹構造部10と受圧板4とは、熱溶接等により接着することができる。
【0054】
上記第1バルブ5は、上述のように、壁6に設けられた第1支持孔9に貫通している。具体的には、第1バルブ5は、板状部材5aとロッド部材5bとから形成されている。板状部材5aはインク供給室2に配設されており、ロッド部材5bの一端に配設されている。ロッド部材5bの他端には、受圧板4が連結されている。
【0055】
ロッド部材5bは、第1支持孔9内をインク供給室2方向または圧力室3方向へ移動する。板状部材5aは第1支持孔9よりも大きな径を有しており、ロッド部材5bが圧力室3方向へ移動すると、板状部材5aが壁6のインク供給室2側の表面と接触することによって、第1支持孔9のインク供給室2側の開口部分を封止する。一方、ロッド部材5bがインク供給室2方向へ移動すると、第1支持孔9のインク供給室2側の開口部分が封止されずに開口した状態となることにより、インク供給室2のインクが、第1支持孔9を通じて、圧力室3に供給される。
【0056】
このロッド部材5bの動作は、蛇腹構造部10の伸縮、および、それに伴う受圧板4の変位によって起こる。
【0057】
上記受圧板4は、圧力室3内の圧力の変化を壁6の第1支持孔9に支持されている第1バルブ5に伝達するために用いられる。そのため、受圧板4は、圧力室3内において壁6と対向する位置に設けられている。
【0058】
印刷による圧力室3内のインクの減少に伴って蛇腹構造部10が縮むと、受圧板4が壁6に近づく方向へ移動(変位)する。すると、この移動に伴って、受圧板4は、連結しているロッド部材5bをインク供給室2方向へ押す。ロッド部材5bは受圧板4からの押圧を受けて、インク供給室2方向へ移動することにより、上述のように第1バルブ5が開く。これにより、第1支持孔9を通じてインク供給室2から圧力室3へインクが供給される。
【0059】
インク供給室2から圧力室3へインクが供給されると、インクの加圧力および蛇腹構造部10の復元力により、受圧板4が壁6から離れる方向へ移動(変位)する。そして、受圧板4の変位に伴い、受圧板4に連結されているロッド部材5bは圧力室3方向に引っ張られる。すると、第1バルブ5は、圧力室3方向へ移動して、再び第1バルブ5が第1支持孔9を封止して、インク供給室2から圧力室3へのインクの供給が停止される。
【0060】
受圧板4の材料としては、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂等を好適に用いることができる。
【0061】
受圧板4は、例えば厚さが0.5〜3.0mm程度である。
【0062】
本実施形態においては、インクの加圧力により受圧板4が変位する例を説明したが、受圧板4は蛇腹構造部10の復元力、後述する押しバネ12(付勢部材)の力、および後述する調整バネ18の力により、またはこれらを組み合わせた力により変位するような構成とすることもできる。
【0063】
なお、本実施形態においては、
図1に示すように、第1バルブ5は、壁6の略中央に配設されているが、第1バルブ5の配設位置はこれに限定されない。
【0064】
また、本実施形態においては、
図1に示すように、インク供給室2の外殻を構成するケース11の開口端部に、圧力室3が収納された構成となっている。
図1に示すように、ケース11を設けると、蛇腹の変位方向を、ロッド部材5bの移動方向に沿って平行にすることができる。
【0065】
すなわち、ケース11は凹形状でインク供給部7が設けられており、その内部に壁6が挿入配置されたことによってインク供給室2が形成されている。
【0066】
ケース11における一端面(開口面に対して垂直な面)には、液体インクを貯蓄するタンク(図示せず)からインク供給室2へインクを供給するインク供給部7が配設され、一端面に対向する面には、印刷ヘッド(図示せず)にインクを供給するインク導出部8が配設されるように構成されている。
【0067】
ケース11は、その開口径が蛇腹構造部10の径と同じか、それより僅かに大きく構成されている。これにより、蛇腹構造部10および受圧板4が、ロッド部材5bの移動方向に沿って平行に移動することができる。
【0068】
本実施形態においては、インク供給室2から圧力室3へインクが供給される構成となっているが本発明はこれに限定されない。すなわち、インク供給部7から第1支持孔9を通過して圧力室3へインクが供給される構成とすることもできる。当該構成とすれば、インク供給室2を設ける必要がなく、インク供給装置1の小型化を実現することができる。
【0069】
(印刷装置)
本発明に係る印刷装置の一実施形態は、上述した構成のインク供給装置1を備えている。
【0070】
本実施形態の印刷装置は、複数のインク供給装置1を備えている。本実施形態では、各インク供給装置1においてインクを一時的に貯留するために、そのインク(例えば、ブラックインクと、シアン、マゼンダおよびイエローの各カラーインク)に対応して、複数個具備される。
【0071】
そして、各インク供給装置1に対して、印刷装置に配設されたカートリッジホルダに装着されたインクカートリッジからインク供給路を介して、上述の各インクが供給される。
【0072】
インク供給装置1に貯留されたインクは、上述のように、インク供給装置1の圧力室3に配設されたインク導出部8を介して、印刷ヘッドに供給される。
【0073】
印刷ヘッドでは、従来周知の方法で、インクを被印刷物に吐出する。
【0074】
(本実施形態が奏する効果)
本実施形態のインク供給装置1は、蛇腹構造部10を有することにより、蛇腹構造部10の伸縮運動を第1バルブ5の開閉運動として用いることができる。そのため、受圧板4の面積を広くとる必要がない。また、受圧板4の変位を、受圧板4が第1バルブ5に直接に伝達するため、動作伝達のロスが生じにくい。よって、微妙な圧力を制御することができる。さらに、受圧板4のみを用いて第1バルブ5を開閉するので、構造が単純である。また、受圧板4は可撓性が比較的小さいので、受圧板4が撓む分の空間を設ける必要はない。したがって、本実施形態においては、インク供給装置1の小型化を実現できる。
【0075】
受圧板4が撓む程度は、圧力室3内部の圧力変化によってフィルム部材が撓む程度よりも少ない。そのため、圧力室3の伸縮方向に対する断面積、つまり、受圧板4の断面積を、フィルム部材を用いる構成に比べて小さくすることができる。したがって、フィルム部材を備える構成に比べて、インクの体積当たりの第1バルブ5のストローク量(第1バルブ5の移動距離の量)を、大きくすることができる。
【0076】
さらに、蛇腹構造部10を樹脂により一体成型することにより、部品点数を削減することができる。また、蛇腹構造部10を樹脂により一体成型することにより、インク供給装置の組立て作業を容易にすることができる。
【0077】
蛇腹構造部10は、金型に樹脂を流し込み固める方法等により成型することができる。
【0078】
さらに、屈曲部10bをその他の部分よりも薄く形成することにより、蛇腹構造の伸縮運動による第1バルブ5のストローク量を確保することができる。
【0079】
<第1実施形態の変形例1>
本実施形態においては、蛇腹構造部10と受圧板4とは別体であり、蛇腹構造部10に受圧板4を接着させている。
【0080】
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、蛇腹構造部10および受圧板4を一体的に成型することもできる。
図2および
図3は、蛇腹構造部10と受圧板4とを一体成型した場合のインク供給装置1の断面図である。
図2と
図3とは蛇腹構造部10の形状が異なる以外は同じ構成である。
【0081】
蛇腹構造部10と受圧板4とを一体成型することにより、蛇腹構造部10と受圧板4とを別個に成型する場合に必要となる蛇腹構造部10と受圧板4との接着が必要なくなり、製造工程の簡略化および部品点数の削減となる。
【0082】
蛇腹構造部10と受圧板4とを一体成型する場合は、接着作業を必要としないため、簡単に圧力室3を設けることができる。
【0083】
なお、
図2および
図3の構成においては、本実施形態とは異なり、蛇腹構造部10の周囲にケース11が配されていない。この構成においても、蛇腹構造部10の伸縮により、第1バルブ5を移動させることができる。なお、
図2および
図3の構成においても、蛇腹構造部10の平行移動を補助するために、蛇腹構造部10の周囲にケース11が配されていても良い。
【0084】
<第1実施形態の変形例2>
本実施形態においては、圧力室3にインクが供給されることによる蛇腹構造部10および受圧板4の移動に伴って、ロッド部材5bが圧力室3方向に移動して第1バルブ5が第1支持孔9を封止する構成となっている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図5に示すような変形例であってもよい。
図5は、
図1に対応する図である。
【0085】
図5に示すように、本変形例においては、本実施形態とは異なり、インク供給室2における壁6との対向面に押しバネ12が取り付けられている。
【0086】
この押しバネ12は、所定の押圧で第1バルブ5の板状部材5aを圧力室3方向に押す。
【0087】
押しバネ12を具備することにより、第1バルブ5を閉めるために必要な力を補い、インクの供給を遮断することができる。
【0088】
押しバネ12としては、板バネ、コイルバネ等の各種バネを用いることができるが、これらに限定されず弾性力を有する素材等であり、第1バルブ5を閉めるために必要な力を補うことができるものであればよい。
【0089】
〔第2実施形態〕
本発明に係るインク供給装置の第2実施形態について、
図6〜
図8に基づいて説明する。なお、本実施形態において説明すること以外の構成は、上記第1実施形態と同じである。また、説明の便宜上、第1実施形態において各図面に示す部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0090】
図6は、本実施形態におけるインク供給装置の断面図である。
【0091】
本実施形態と第1実施形態との異なる点は、圧力室3の構造にある。具体的には、第1実施形態では、
図1に示すように、圧力室3は筒構造の蛇腹構造部10を有していて、その一端に壁6があり、他端に受圧板4がある構成である。これに対して、本実施形態では、第1実施形態では伸縮する筒構造の蛇腹構造部10であった部分が、
図6に示すように、伸縮しない固定部10d(伸縮しない構造)と、固定部につながる伸縮可能な蛇腹部10eとを有した構成になっている。また、第1実施形態では、
図1に示すように、受圧板4が蛇腹構造部10の伸縮を受けて受圧板4全体が変位する構成となっている。これに対して、本実施形態では、
図6に示すように、受圧板4の一端4aが、当該固定部10dに接続されたヒンジ構造部13により回転できるように取り付けられていて、受圧板4の他端4bが蛇腹部10eに連結され又は一体となって形成されている。
【0092】
本実施形態の構成においては、第1実施形態と異なり、受圧板4の全体の変位でなく、一端4aを回動中心として回動することにより、すなわち、受圧板4の傾斜により、傾斜した受圧板4に第1バルブ5のロッド部材5bが押されて第1バルブ5が開く構成となっている。
【0093】
図7は、ヒンジ構造による受圧板4の変位を説明するための図である。
図7では、圧力室3内の負圧が所定の値よりも更に負圧になった状態を示す。
【0094】
インクがインク導出部8から送出されると、
図7に示すように、圧力室3内の負圧が所定の値よりも大きくなり、それに伴い、筒構造の蛇腹部10eが縮む。蛇腹部10eには受圧板4の他端4bが連結または一体に取り付けられている。そのため、蛇腹部10eが縮むことによって、受圧板4は、一端4aを回動中心として、他端4bを壁6に近づく方向に移動して、傾斜した状態となる。これにより、受圧板4が第1バルブ5のロッド部材5bを押すことにより、第1バルブ5が開き、圧力室3内にインクが供給される。
【0095】
受圧板4には、ロッド部材5bが連結されていることから、圧力室3内にインクが供給されて蛇腹部10eが伸長すると、それに伴って、他端4bが壁6から離れる方向に移動し、負圧が所定の値になると同時に、第1バルブ5が閉まり、圧力室3へのインクの供給が停止される。受圧板4とロッド部材5bは、受圧板4の回転運動をロッド部材5bの往復運動に変換できるよう、回動可能に連結されていることが好ましいが、受圧板4の変位が非常に小さい場合には、受圧板4とロッド部材5bとは固定されていても良い。
【0096】
このように受圧板4をヒンジ構造により、圧力室3に取り付けることによって、受圧板4の回転運動を用いて第1バルブ5を開閉することができる。
【0097】
この構成を用いる場合、
図6に示すように、壁6におけるヒンジ構造部13に近い方向へ第1バルブ5を設けることができる。壁6におけるヒンジ構造部13に近い方向へ第1バルブ5を設けた場合と、壁6における中央に第1バルブ5を設けた場合とでは、第1バルブ5のストローク量が異なる。本実施形態においては、
図6に示すように、壁6におけるヒンジ構造部13に近い方向へ第1バルブ5を設けているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、ストローク量を多くする場合は、壁6における中央または中央よりも他端4bに近い位置に第1バルブ5を設けた方が、第1バルブ5のストローク量を確保できる。このように、第1バルブ5を設ける箇所を適宜選択することにより、ストローク量を幅広く変えることができる。
【0098】
<第2実施形態の変形例>
図8は、本実施形態における受圧板4の別例の拡大図である。この受圧板4の一端4aが、湾曲部13´を中心として筒構造の固定部10dに回転可能なように固定されており、また、受圧板4の他端4bは、筒構造の蛇腹部10eと連結されている。受圧板4は、一端4aを回動中心として、他端4bを壁6に近づく方向に移動させることができ、これにより、受圧板4が一端4aを回動中心として矢印の方向に回動することを可能にしている。
【0099】
この
図8の受圧板4を、
図6の受圧板4の代わりに具備しても、
図6と同様の機能を果すことができる。
【0100】
〔第3実施形態〕
本発明に係るインク供給装置の第3実施形態について、
図9に基づいて説明する。なお、本実施形態において説明すること以外の構成は、上記第1実施形態と同じである。また、説明の便宜上、第1実施形態において各図面に示す部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0101】
図9は、本実施形態に係るインク供給装置の断面図である。
【0102】
本実施形態と上述した実施形態との異なる点は、壁6の構造にある。
【0103】
本実施形態では、
図9に示すように、壁6が中空部6´(インク供給経路)を設けた中空構造体となっている。この中空部6´には、インク供給室2から圧力室3へと向かって供給されるインクが、圧力室3へ供給される前に、一旦貯留される。
【0104】
具体的には、壁6には、上記第1実施形態と同様に、インク供給室2と圧力室3とを貫通し、第1バルブ5を支持する第1支持孔9が設けられている。さらに、本実施形態においては、壁6の圧力室3側の側面には第2バルブ15(制御部材)を支持する第2支持孔14が設けられている。
【0105】
第2バルブ15は板状部材15aとロッド部材15bとから形成されている。ロッド部材15bは、板状部材15aの中央部に形成されており、第2支持孔14内をインク供給室2方向または圧力室3方向へ移動する。
【0106】
壁6の圧力室3側の側面には、第1支持孔9に対応する位置に、第1支持孔9から圧力室3へのインクの流入を防ぐカバー16が設けられている。
【0107】
また、受圧板4には、受圧板4に対して垂直に、可動棒17(開閉部材)が取り付けられている。可動棒17がカバー16を介して第1バルブ5に、受圧板4の変位を伝達する。このような構成により、第1バルブ5が開閉される。
【0108】
可動棒17がカバー16を介して第1バルブ5を押すことにより、第1バルブ5が開かれると、中空部6´へインクが供給されて中空部6´にインクが溜まる。当該インクが中空部6´に溜まり、中空部6´内の圧力が高まると、第2バルブ15が開いて圧力室3内にインクが供給される。
【0109】
インクの加圧力により、受圧板4が壁6から離れた方向へ変位すると、当該変位に伴い可動棒17がカバーを介して第1バルブ5を押す力がなくなり、第1バルブ5が閉まる。第1バルブ5が閉まると、中空部6´へのインク供給は停止され、中空部6´内のインクが減少すると、中空部6´内の圧力は低くなる。そうすると、第2バルブ15が閉まり、中空部6´から圧力室3へのインクの供給は停止される。
【0110】
図9においては、第2バルブ15に圧力室3内の圧力を微調整する調整バネ18が取り付けられている。調整バネ18は、第2バルブ15を閉める方向(インク供給室2方向)へ作用する。調整バネ18を備えることにより、圧力室3内の圧力を微調整することができる。当該調整バネ18を用いない構成においても、中空部6´と圧力室3内との圧力差に伴い、第2バルブ15が開閉することで、本実施形態を実現することができるが、圧力室3の内部空間の圧力が所定の圧力値よりもさらに負圧に偏らないと、第2バルブ15が開かない構成とする場合には、調節バネ18および/または蛇腹の復元力を利用することが好ましい。すなわち、圧力室3の内部空間の圧力値が所定の負圧に満たない場合であっても、調節バネ18および/または蛇腹の復元力を利用することにより、第2バルブ15を移動されることができる。
【0111】
本実施形態においては、第1実施形態とは異なり、インク供給室2から壁6の中空部6´へ、中空部6´から圧力室3へ、2段階に分けてインクを供給することができる。
【0112】
また、本実施形態においては、壁6が中空部6´を設けた中空構造体となっていることにより、
図9に示すように、第1バルブ5および第2バルブ15という2つのバルブを、中空部6´に設けることができる。したがって、第1支持孔9を開閉する第1バルブ5と、第2支持孔14を開閉する第2バルブ15とを、それぞれ備えることができる。
【0113】
よって、第1バルブ5および第2バルブ15の動作条件を、それぞれ細かく管理することができる。例えば、調整バネ18の押力等を微調整することによって、第2バルブ15の開閉条件を細かく変更することができる。
【0114】
<第3実施形態の変形例>
本実施形態においては、第1バルブ5を開閉することによりインク供給室2から中空部6´へ、また、中空部6´から圧力室3へインクを供給又は遮断する構成について説明した。しかし、本発明は第1バルブ5の開閉に限定されるものではなく、例えば、
図10に示すような変形例であってもよい。
図10は、
図9に対応する図である。なお、
図10においては、インク導出部8が設けられている方向を重力方向とする。
【0115】
図10に示すように、本変形例においては、本実施形態における第1バルブ5に代わり、壁6に対してインク供給室2と圧力室3の隣接方向に沿って設けられている開閉棒19(ロッド)、および、壁6のインク供給室2側にボール24(閉塞部材)および当該ボール24を移動可能に格納する格納部21が設けられている。
【0116】
格納部21は、ボール24を保持する保持部21aと、開閉棒19をその内部において移動させる筒状部21bにより構成されている。保持部21aは筒状部21bの上に形成されている。保持部21aは、上面に上面口22を有しており、また、下面に下面口23(開口部)を有している。
【0117】
ボール24が保持部21aから飛び出すことがないように、当該上面口22および下面口23の口径は、ボール24の直径よりも小さい。
【0118】
保持部21aは、ボール24の自重により下面口23は封止される構造となっている。下面口23が封止されている状態では、インク供給室2から中空部6´へのインク供給はない。
【0119】
次にインク供給について説明する。
図9に示すインク導出部8からインクが送出されると、圧力室3内のインクの量が減り、圧力室3内の負圧が所定の値よりも更に負圧になると、蛇腹構造部10の蛇腹が縮んで、受圧板4が壁6に近づく方向へ変位する。これに伴い、受圧板4に連結された可動棒17が受圧板4の変位を開閉棒19に伝達する。すなわち、可動棒17が開閉棒19を押す。可動棒17と開閉棒19との間にはカバー16が介在している。そして、開閉棒19が筒状部21b内を、インク供給室2方向へ移動して、開閉棒19が、自重により下面口23を封止しているボール24と接触し、さらにインク供給室2方向へ移動することによりボール24を上面口22に向けて押し上げる。ボール24が上面口22に向けて押し上げられることにより、ボール24と下面口23との間に隙間が生じる。インク供給室2のインクは、上面口22から保持部21aに供給されているので、インクは更に当該隙間から中空部6´へインクが供給される。
【0120】
中空部6´に供給されたインクは、上述の本実施形態と同じ機構によって、第2バルブ15から圧力室3へと供給される。
【0121】
圧力室3内の負圧が所定の値に戻ると、受圧板4が壁6から離れた位置に変位する。それに伴い可動棒17がカバー16から離れる。つまり、可動棒17から開閉棒19への押す力がなくなる。可動棒17から開閉棒19への押す力がなくなることにより、開閉棒19が圧力室3方向へ移動する。当該移動により、開閉棒19からボール24への押し上げ力がなくなり、開閉棒19に押し上げられていたボール24は、自重により下面口23を封止する。
【0122】
ボール24が下面口23を封止することにより、インク供給室2から中空部6´へのインクの供給は停止される。中空部6´内のインクが停止されると、中空部6´内の圧力が低くなり第2バルブ15が閉まる。第2バルブ15が閉まることにより、中空部6´から圧力室3へのインクの供給が停止される。
【0123】
なお、ボール24の材質としては、ステンレススチール、真鍮、ポリエチレン被覆した金属、金属フィラー含有プラスチック等を用いることができる。
【0124】
このような構成においても、安定的にインクを供給するとともに、インク供給装置の小型化を実現できる。
【0125】
<付記事項>
以上のように、本発明に係るインク供給装置の一実施形態であるインク供給装置1は、液体インクが貯蓄されるタンクと、液体インクを吐出する印刷ヘッドとに接続されるインク供給装置1であって、上記タンクからのインクが正圧で供給される構成となっており、
少なくとも一部が蛇腹(蛇腹構造部10もしくは蛇腹部10e)になっている容積可変な圧力室3を備えており、上記圧力室3は、第1支持孔9に、開閉部材である第1バルブ5(
図1)か、もしくは、ボール24と格納部21と可動棒17と開閉棒19(
図10)かが配設されており、圧力室3の容積が所定値を超えるとこの開閉部材が第1支持孔9を封止し、所定値を下回ると当該開閉部材が第1支持孔9を開くことにより、上記圧力室3を大気圧に対して負圧に保つ構成となっていることを特徴としている。
【0126】
上記構成によれば、蛇腹構造部10の伸縮運動を上記開閉部材の開閉動作として用いることができる。また、圧力室3における壁6の対向面を受圧板4により形成することにより、従来構成のように壁の対向面をフィルムにより形成する構成に比べて、圧力室3における壁6の対向面の伸縮方向への断面積を少なくすることができる。その結果、インクの体積あたりの上記開閉部材のストローク量(第1バルブ5の移動量)が大きくなり、第1支持孔9の開閉制御性を向上させることができる。
【0127】
インク供給装置1は、圧力室3には、上記開閉部材が配設される第1支持孔9が形成された壁6が設けられており、圧力室3には、壁6との対向側に受圧板4が設けられており、且つ、当該壁6と当該受圧板4とによって挟まれる空間を、上記少なくとも一部が蛇腹(蛇腹構造部10もしくは蛇腹部10e)である筒構造によって閉塞しており、
上記蛇腹の伸縮に伴って上記受圧板4の位置が変化することにより、上記開閉部材が第1支持孔9を開閉する構成となっていることが好ましい。
【0128】
上記の構成とすれば、蛇腹の伸縮運動が、直接、受圧板4の変位として表れて、その変動(動作)を上記開閉部材に伝達することができる。そのため、受圧板4の面積を従来構成のフィルムのように広くする必要がない。したがって、従来の構成よりも、インク供給装置を小型化にすることができる。
【0129】
また上記インク供給装置1は、受圧板4を撓ませて上記開閉部材の開閉運動を起こす構成ではないため、従来構成のフィルムのように撓む分の空間を設ける必要がない。したがって、従来の構成よりも、インク供給装置の小型化に寄与することができる。
【0130】
また、受圧板4の変位を直接に上記開閉部材が伝達するため動作伝達のロスが生じにくい。よって、微妙な圧力を制御することができる。さらに、受圧板4の変位および蛇腹の形状の変化により、上記開閉部材を開閉することができるので、複雑な構造を必要とせずにインク室を設けることができる。
【0131】
また上記インク供給装置1は、上記筒構造が、樹脂により一体的に形成されており、かつ、一部が蛇腹部10eとなっていて、残りの部分は伸縮しない固定部10dとなっており、受圧板4は、当該受圧板4の一端4aが上記伸縮しない固定部10dとヒンジ構造部13を形成するようにして取り付けられており、受圧板4の他端4bは、上記蛇腹部10eと連結されるまたは一体となっていて、上記蛇腹部10eの伸縮に伴って、受圧板4がヒンジ構造部13を軸として回動することにより、上記受圧板4が上記第1バルブ5を開閉する構成となっていることが好ましい。
【0132】
上記構成によれば、ヒンジ構造部13により受圧板4の一端4aが回転できるように取り付けられていることによって、当該受圧板4の回動運動によって上記開閉部材を開閉して、インクを供給または遮断することができる。
【0133】
また上記インク供給装置1は、上記の構成に加えて、上記筒構造は、樹脂により一体的に形成されており、上記蛇腹(蛇腹構造部10もしくは蛇腹部10e)は、屈曲部10bと傾斜部10a・10cとから構成されており、上記屈曲部10bの厚さは、上記傾斜部10a・10cよりも厚さが薄く構成されている、ことが好ましい。
【0134】
上記構成によれば、筒構造を樹脂により一体的に形成することにより、複数の部品を組み合わせることにより上記蛇腹を形成する場合よりも、部品点数を削減することができる。また、複数の部品を組立てることを必要としないため、インク供給装置1の組立作業を容易にすることができる。
【0135】
また、上記屈曲部10bを構成する部分の厚さを、上記傾斜部10a・10cの厚さよりも薄くして、当該屈曲部10bを折り曲げ易くするとともに、屈曲部以外の部分を、屈曲部10bに比べて厚い樹脂により形成することにより、インク供給装置1内へのガスの透過を防ぐまたは抑えることができる。また、屈曲部10bを、傾斜部10a・10cに比べて厚さの薄い樹脂により形成することによって、蛇腹を全て厚さの厚い樹脂で構成する場合と比較して、蛇腹の伸縮による上記開閉部材のストローク量を十分確保することができる。
【0136】
また上記インク供給装置1は、上記の構成に加えて、上記開閉部材である第1バルブ5(
図1)には、第1バルブ5が閉まる方向に第1バルブ5を付勢する押しバネ12が設けられていることが好ましい。
【0137】
上記構成を採用しなくても、蛇腹が復元力を有している場合に、この復元力のみによって第1バルブ5の閉動作を実現することも可能である。しかし、この復元力が不足している場合であっても、上記押しバネ12を具備していれば、第1バルブ5を閉まる方向に付勢することができ、インクの供給を確実に遮断することができる。
【0138】
またインク供給装置1は、上記の構成に加えて、上記開閉部材は、上記圧力室3と連通する空間と、インク供給経路を構成する下面口23とが設けられている格納部21であって、当該下面口23を塞ぐことができる大きさのボール24が当該空間に格納されている格納部21を有しており、
更に上記開閉部材は、開閉棒19を有しており、当該開閉棒19は、上記蛇腹の伸縮に伴って上記受圧板4が位置を変化させるのに伴って上記ボール24と接触して当該ボール24を持ち上げて上記下面口23を開き、上記ボール24との接触を解除してボール24で下面口23を塞ぐ構成となっている、ことが好ましい。
【0139】
上記構成によれば、ボール24を利用して、インクの供給・遮断を実現することができる。
【0140】
更に、本発明に係る印刷装置の一実施形態である印刷装置は、上記インク供給装置1を備えることを特徴としている。これにより、小型化した印刷装置を実現することができる。
【0141】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。