特許第5756736号(P5756736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5756736主磁極とシールドを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756736
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】主磁極とシールドを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッド
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/31 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   G11B5/31 A
   G11B5/31 C
   G11B5/31 F
   G11B5/31 Q
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2011-241854(P2011-241854)
(22)【出願日】2011年11月4日
(65)【公開番号】特開2012-221548(P2012-221548A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2011年11月4日
【審判番号】不服2014-16391(P2014-16391/J1)
【審判請求日】2014年8月19日
(31)【優先権主張番号】13/084,168
(32)【優先日】2011年4月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500475649
【氏名又は名称】ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】500393893
【氏名又は名称】新科實業有限公司
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100107559
【弁理士】
【氏名又は名称】星宮 勝美
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 芳高
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一樹
(72)【発明者】
【氏名】飯島 淳
【合議体】
【審判長】 酒井 朋広
【審判官】 ゆずりは 広行
【審判官】 関谷 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−197619(JP,A)
【文献】 特開2010−157303(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0176214(US,A1)
【文献】 特開2011−044221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
前記記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
前記媒体対向面に配置された端面を有し、前記コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって前記情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなり、前記媒体対向面に配置された端面を有する記録シールドと、
非磁性材料よりなり、前記主磁極と前記記録シールドとの間に配置されたギャップ部と、
それぞれ磁性材料よりなり前記記録シールドに磁気的に接続され、前記主磁極を挟むように前記記録媒体の進行方向に沿って並ぶ第1および第2のヨーク層と
上面を有する基板とを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドであって、
前記第1のヨーク層は、前記主磁極に対して前記記録媒体の進行方向の後側に配置され、
前記第2のヨーク層は、前記主磁極に対して前記記録媒体の進行方向の前側に配置され、
前記記録シールドの端面は、前記主磁極の前記端面に対して前記記録媒体の進行方向の前側に配置された第1の端面部分と、前記主磁極の前記端面に対して前記記録媒体の進行方向の後側に配置された第2の端面部分とを含み、
前記コイルは、1層以上の平面渦巻き形状の巻線部分を含み、
前記磁気ヘッドは、更に、
前記媒体対向面から離れた位置に配置された、前記主磁極と前記第2のヨーク層とを磁気的に連結するための第1の連結部と、
前記媒体対向面から離れた位置に配置され、前記主磁極に接することなく前記第1のヨーク層と前記第2のヨーク層とを磁気的に連結する第2の連結部とを備え、
前記巻線部分は、前記第1の連結部の周りに巻回され、且つその一部が前記第1の連結部と第2の連結部の間を通過し、
前記記録シールドは、前記第1の端面部分を有する第1のシールドと、前記第2の端面部分を有する第2のシールドとを有し、
第2のヨーク層は、前記第1のシールドに磁気的に接続され、
前記磁気ヘッドは、更に、前記第2のシールドと前記第1のヨーク層とを磁気的に連結するための磁性層を備え、
前記コイル、主磁極、記録シールド、ギャップ部、第1のヨーク層、第2のヨーク層、第1の連結部、第2の連結部および磁性層は、前記基板の上面の上方に配置され、
前記磁性層は、前記第2のシールドに対して前記記録媒体の進行方向の後側に配置され、且つ前記第2のシールドに接し、
前記主磁極の前記端面と交差し、前記媒体対向面および前記基板の上面に垂直な断面において、前記磁性層は、前記媒体対向面に垂直な方向について前記第2のシールドよりも大きく前記第1のヨーク層よりも小さな長さを有することを特徴とする垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項2】
前記第2の連結部は、前記コイルと前記媒体対向面との間を除いた位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項3】
前記第2の連結部は、前記第1の連結部に対して、前記媒体対向面からより遠い位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項4】
前記記録シールドの端面は、更に、第3および第4の端面部分を含み、前記第3および第4の端面部分は、前記主磁極の前記端面に対してトラック幅方向の両側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項5】
更に、前記第1および第2のヨーク層に対して前記記録媒体の進行方向の後側に配置された再生ヘッド部を備え、前記再生ヘッド部は、前記記録媒体に記録された情報を再生する再生素子と、前記再生素子を挟むように配置された第1および第2の再生シールド層とを有することを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式によって記録媒体に情報を記録するために用いられる垂直磁気記録用磁気ヘッドに関し、特に、主磁極とシールドを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置における記録方式には、信号磁化の向きを記録媒体の面内方向(長手方向)とする長手磁気記録方式と、信号磁化の向きを記録媒体の面に対して垂直な方向とする垂直磁気記録方式とがある。垂直磁気記録方式は、長手磁気記録方式に比べて、記録媒体の熱揺らぎの影響を受けにくく、高い線記録密度を実現することが可能であると言われている。
【0003】
一般的に、垂直磁気記録用の磁気ヘッドとしては、長手磁気記録用の磁気ヘッドと同様に、読み出し用の磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子とも記す。)を有する再生ヘッド部と、書き込み用の誘導型電磁変換素子を有する記録ヘッド部とを、基板上に積層した構造のものが用いられる。記録ヘッド部は、記録媒体の面に対して垂直な方向の磁界を発生する主磁極を備えている。主磁極は、例えば、一端部が記録媒体に対向する媒体対向面に配置されたトラック幅規定部と、このトラック幅規定部の他端部に連結され、トラック幅規定部よりも大きな幅を有する幅広部とを有している。トラック幅規定部は、ほぼ一定の幅を有している。垂直磁気記録方式の記録ヘッド部には、高記録密度化のために、トラック幅の縮小と、記録特性、例えば重ね書きの性能を表わすオーバーライト特性の向上が求められる。
【0004】
ところで、ハードディスク装置等の磁気ディスク装置に用いられる磁気ヘッドは、一般的に、スライダに設けられる。スライダは、上記媒体対向面を有している。この媒体対向面は、空気流入端(リーディング端)と空気流出端(トレーリング端)とを有している。そして、空気流入端から媒体対向面と記録媒体との間に流入する空気流によって、スライダは記録媒体の表面からわずかに浮上するようになっている。このスライダにおいて、一般的に、磁気ヘッドは媒体対向面における空気流出端近傍に配置される。磁気ディスク装置において、磁気ヘッドの位置決めは、例えばロータリーアクチュエータによって行なわれる。この場合、磁気ヘッドは、ロータリーアクチュエータの回転中心を中心とした円軌道に沿って記録媒体上を移動する。このような磁気ディスク装置では、磁気ヘッドのトラック横断方向の位置に応じて、スキューと呼ばれる、円形のトラックの接線に対する磁気ヘッドの傾きが生じる。
【0005】
特に、長手磁気記録方式に比べて記録媒体への書き込み能力が高い垂直磁気記録方式の磁気ディスク装置では、上述のスキューが生じると、あるトラックへの信号の記録時に、記録対象のトラックに隣接する1以上のトラックに記録された信号が消去されたり減衰したりする現象(以下、隣接トラック消去と言う。)が生じる場合がある。高記録密度化のためには、隣接トラック消去の発生を抑制する必要がある。
【0006】
上述のようなスキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制すると共に記録密度を向上させる技術としては、主磁極の近傍に記録シールドを設ける技術が有効である。例えば、特許文献1や、特許文献2には、媒体対向面において主磁極の端面の周りを囲むように配置された端面を有する記録シールドを備えた磁気ヘッドが開示されている。
【0007】
一般的に、記録シールドを備えた磁気ヘッドでは、主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分と記録シールドとを接続する1つ以上の磁路が設けられる。記録シールドと1つ以上の磁路は、主磁極の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを阻止する機能を有している。また、記録シールドと1つ以上の磁路は、主磁極の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束を、主磁極に還流させる機能も有している。記録シールドを備えた磁気ヘッドによれば、隣接トラック消去の発生を抑制することが可能になると共に、記録密度のより一層の向上が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,954,340 B2号明細書
【特許文献2】特開2005−182987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1や、特許文献2には、上記1つ以上の磁路として、主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側(トレーリング端側)に配置された磁路と、主磁極に対して記録媒体の進行方向の後側(リーディング端側)に配置された磁路とを備えた磁気ヘッドが記載されている。
【0010】
記録シールドによって多くの磁束を取り込めるように、磁気ヘッドが、記録シールドから主磁極に至る2つの磁路を備えることは有効である。しかし、この場合には、以下のような問題点が生じる。すなわち、磁気ヘッドが2つの磁路を備える場合には、2つの磁路に対応する2つの平面渦巻き形状のコイルを設けるか、主磁極の周りに巻かれたヘリカル形状のコイルを設ける必要がある。しかし、いずれの場合においても、コイルの構造ならびにコイルの周辺の構造が複雑になると共に、コイルを形成するための工程数が多く必要になるという問題点がある。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、記録シールドから主磁極に至る2つの磁路を備えながら、コイルの構造を簡単にすることができるようにした垂直磁気記録用磁気ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面と、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、主磁極とを備えている。主磁極は、媒体対向面に配置された端面を有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0013】
本発明の磁気ヘッドは、更に、磁性材料よりなり、媒体対向面に配置された端面を有する記録シールドと、非磁性材料よりなり、主磁極と記録シールドとの間に配置されたギャップ部と、それぞれ磁性材料よりなり記録シールドに磁気的に接続され、主磁極を挟むように記録媒体の進行方向に沿って並ぶ第1および第2のヨーク層とを備えている。記録シールドの端面は、主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された第1の端面部分を含んでいる。コイルは、1層以上の平面渦巻き形状の巻線部分を含んでいる。
【0014】
本発明の磁気ヘッドは、更に、媒体対向面から離れた位置に配置された、主磁極と第2のヨーク層とを磁気的に連結するための第1の連結部と、媒体対向面から離れた位置に配置され、主磁極に接することなく第1のヨーク層と第2のヨーク層とを磁気的に連結する第2の連結部とを備えている。巻線部分は、第1の連結部の周りに巻回され、且つその一部が第1の連結部と第2の連結部の間を通過している。
【0015】
本発明の磁気ヘッドにおいて、第2の連結部は、コイルと媒体対向面との間を除いた位置に配置されていてもよい。また、第2の連結部は、第1の連結部に対して、媒体対向面からより遠い位置に配置されていてもよい。
【0016】
また、本発明の磁気ヘッドにおいて、第1のヨーク層は主磁極に対して記録媒体の進行方向の後側に配置され、第2のヨーク層は主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側に配置されていてもよい。あるいは、第1のヨーク層は主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側に配置され、第2のヨーク層は主磁極に対して記録媒体の進行方向の後側に配置されていてもよい。
【0017】
また、本発明の磁気ヘッドにおいて、記録シールドの端面は、更に、第2、第3および第4の端面部分を含み、第2の端面部分は、主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置され、第3および第4の端面部分は、主磁極の端面に対してトラック幅方向の両側に配置されていてもよい。
【0018】
また、本発明の磁気ヘッドは、更に、第1および第2のヨーク層に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された再生ヘッド部を備えていてもよい。この場合、再生ヘッド部は、記録媒体に記録された情報を再生する再生素子と、再生素子を挟むように配置された第1および第2の再生シールド層とを有していてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドでは、記録シールドから主磁極に至る第1および第2の磁路が形成される。第1の磁路は、第2のヨーク層および第1の連結部を経由する。第2の磁路は、第1のヨーク層、第2の連結部、第2のヨーク層および第1の連結部を経由する。コイルは、第1の連結部の周りに巻回され、且つその一部が第1の連結部と第2の連結部の間を通過している。これにより、コイルの起磁力によって、第1の連結部において合流するように、第1の磁路を通過する磁束と第2の磁路を通過する磁束が発生する。従って、本発明では、2つの磁路に対応する2つの平面渦巻き形状のコイルや、主磁極の周りに巻かれたヘリカル形状のコイルを設ける必要がない。以上のことから、本発明によれば、上記のような記録シールドから主磁極に至る第1および第2の磁路を備えながら、コイルの構造を簡単にすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルを示す平面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極の媒体対向面の近傍の部分を示す斜視図である。
図5】第1の比較例における磁束の流れを示す説明図である。
図6】第2の比較例における磁束の流れを示す説明図である。
図7】第3の比較例における磁束の流れを示す説明図である。
図8】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける磁束の流れを示す説明図である。
図9】本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
図10】本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
図11】本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1層を示す平面図である。
図12】本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2層を示す平面図である。
図13】本発明の第4の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図4を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。なお、図1は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面を示している。図1において記号Tで示す矢印は、記録媒体の進行方向を表している。図2は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図3は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルを示す平面図である。図4は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極の媒体対向面の近傍の部分を示す斜視図である。図2ないし図4において記号TWで示す矢印は、トラック幅方向を表している。
【0022】
図1および図2に示したように、本実施の形態に係る垂直磁気記録用磁気ヘッド(以下、単に磁気ヘッドと記す。)は、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al23・TiC)等のセラミック材料よりなり、上面1aを有する基板1と、この基板1の上面1a上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層81と、この絶縁層81の上に配置されたヒーター82と、絶縁層81およびヒーター82を覆うように配置された絶縁材料よりなる絶縁層83とを備えている。絶縁層81,83は、例えばアルミナ(Al23)によって形成されている。ヒーター82については、後で詳しく説明する。
【0023】
磁気ヘッドは、更に、ヒーター82に対して記録媒体の進行方向Tの前側(トレーリング端側)に配置された再生ヘッド部8を備えている。再生ヘッド部8は、絶縁層83の上に配置された磁性材料よりなる第1の再生シールド層3と、第1の再生シールド層3を覆うように配置された絶縁膜である第1の再生シールドギャップ膜4と、この第1の再生シールドギャップ膜4の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、このMR素子5の上に配置された絶縁膜である第2の再生シールドギャップ膜6と、この第2の再生シールドギャップ膜6の上に配置された磁性材料よりなる第2の再生シールド層7とを有している。
【0024】
MR素子5の一端部は、記録媒体に対向する媒体対向面2に配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
【0025】
磁気ヘッドは、更に、再生ヘッド部8に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置された記録ヘッド部9と、再生ヘッド部8と記録ヘッド部9の間に配置された膨張層84、センサ85および非磁性部86とを備えている。非磁性部86は、非磁性材料によって形成されている。非磁性部86の材料としては、例えばアルミナを用いることができる。
【0026】
非磁性部86は、非磁性層87,88,89を有している。非磁性層87は、第2の再生シールド層7の上に配置されている。膨張層84は、非磁性層87の上に配置されている。非磁性層88は、膨張層84を覆うように配置されている。センサ85は、非磁性層88の上に配置されている。非磁性層89は、センサ85を覆うように配置されている。
【0027】
磁気ヘッドは、更に、再生ヘッド部8、膨張層84および非磁性部86の周囲において基板1の上面1aの上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層71を備えている。絶縁層71は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層71および非磁性層89の上面は平坦化されている。
【0028】
記録ヘッド部9は、コイル10と、リード層11と、主磁極15と、記録シールド16と、ギャップ部17と、ヨーク層31,41とを有している。コイル10とリード層11は、いずれも、銅等の導電材料によって形成されている。リード層11は、コイル10に通電するために用いられる。図3に示したように、コイル10は、平面渦巻き形状の巻線部分10Aを含んでいる。図1および図3において、符号10Eは、コイル10のうち、リード層11に電気的に接続されるコイル接続部を示している。
【0029】
コイル10は、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。主磁極15は、媒体対向面2に配置された端面を有し、コイル10によって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。図1は、媒体対向面2に配置された主磁極15の端面と交差し、媒体対向面2および基板1の上面1aに垂直な断面(以下、主断面と言う。)を示している。
【0030】
記録シールド16は、媒体対向面2に配置された端面を有している。記録シールド16の端面は、第1ないし第4の端面部分16Aa,16Ba,16Ca,16Daを含んでいる。第1の端面部分16Aaは、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。第2の端面部分16Baは、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。第3および第4の端面部分16Ca,16Daは、主磁極15の端面に対してトラック幅方向TWの両側に配置されている。媒体対向面2において、第1ないし第4の端面部分16Aa,16Ba,16Ca,16Daは、主磁極15の端面の周りを囲むように配置されている。
【0031】
記録シールド16は、磁性材料によって形成されている。記録シールド16の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0032】
ヨーク層31,41は、記録シールド16に磁気的に接続され、主磁極15を挟むように記録媒体の進行方向Tに沿って並んでいる。ヨーク層31は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。ヨーク層41は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。ヨーク層31,41は、それぞれ磁性材料によって形成されている。ヨーク層31,41の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。本実施の形態では、ヨーク層31は、本発明における第1のヨーク層に対応し、ヨーク層41は、本発明における第2のヨーク層に対応する。
【0033】
記録ヘッド部9は、更に、ヨーク層31と記録シールド16とを磁気的に連結する磁性材料よりなる磁性層32と、ヨーク層41と記録シールド16とを磁気的に連結する磁性材料よりなる磁性層42とを有している。磁性層32,42の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0034】
記録ヘッド部9は、更に、媒体対向面2から離れた位置に配置された、主磁極15とヨーク層41とを磁気的に連結するための第1の連結部44と、第2の連結部34とを有している。第2の連結部34は、媒体対向面2から離れた位置に配置され、主磁極15に接することなくヨーク層31とヨーク層41とを磁気的に連結している。図1に示した例では、第2の連結部34は、コイル10と媒体対向面2との間を除いた位置に配置され、特に、第1の連結部44に対して、媒体対向面2からより遠い位置に配置されている。
【0035】
第1の連結部44および第2の連結部34は、それぞれ磁性材料によって形成されている。第1の連結部44および第2の連結部34の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。第1の連結部44は、1つの磁性層45によって構成されている。第2の連結部34は、磁性層35〜39を含んでいる。
【0036】
ヨーク層31は、絶縁層71および非磁性層89の上に配置されている。磁性層32,35は、いずれもヨーク層31の上に配置されている。ヨーク層31および磁性層32は、それぞれ、媒体対向面2に配置された端面を有している。磁性層35は、媒体対向面2から離れた位置に配置されている。
【0037】
磁気ヘッドは、更に、ヨーク層31の周囲において絶縁層71および非磁性層89の上に配置された絶縁材料よりなる図示しない絶縁層と、磁性層32,35の周囲においてヨーク層31および図示しない絶縁層の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層54とを備えている。図示しない絶縁層と絶縁層54は、例えばアルミナによって形成されている。磁性層32,35および絶縁層54の上面は平坦化されている。
【0038】
図2に示したように、記録シールド16は、第1のシールド16Aと、第2のシールド16Bと、2つのサイドシールド16C,16Dとを有している。2つのサイドシールド16C,16Dは、主磁極15のトラック幅方向TWの両側に配置されている。第1のシールド16Aは、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。第2のシールド16Bは、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。サイドシールド16C,16Dは、第1のシールド16Aと第2のシールド16Bを磁気的に連結している。
【0039】
第1のシールド16Aは、第1の端面部分16Aaを有している。第2のシールド16Bは、第2の端面部分16Baを有している。サイドシールド16Cは、第3の端面部分16Caを有している。サイドシールド16Dは、第4の端面部分16Daを有している。
【0040】
第2のシールド16Bは、磁性層32の上に配置されている。磁性層36は、磁性層35の上に配置されている。磁気ヘッドは、更に、絶縁材料よりなる絶縁層56を備えている。絶縁層56は、第2のシールド16Bおよび磁性層36の周囲において、磁性層32の上面の一部および絶縁層54の上面の上に配置されている。絶縁層56は、例えばアルミナによって形成されている。
【0041】
主磁極15は、基板1の上面1aにより近い端部である下端部15Lと、下端部15Lとは反対側の上面15Tと、トラック幅方向TWの両側に配置された第1および第2の側部SP1,SP2とを有している。サイドシールド16Cは、主磁極15の第1の側部SP1に対向する第1の側壁を有している。サイドシールド16Dは、主磁極15の第2の側部SP2に対向する第2の側壁を有している。
【0042】
ギャップ部17は、非磁性材料よりなり、主磁極15と、記録シールド16との間に設けられている。ギャップ部17は、主磁極15と第2のシールド16Bおよびサイドシールド16C,16Dとの間に配置された第1のギャップ層18と、主磁極15と第1のシールド16Aとの間に配置された第2のギャップ層19とを含んでいる。
【0043】
サイドシールド16C,16Dは、第2のシールド16Bの上に配置され、第2のシールド16Bの上面に接している。第1のギャップ層18は、サイドシールド16C,16Dの側壁、第2のシールド16Bの上面および絶縁層56の上面に沿って配置されている。第1のギャップ層18は、非磁性材料によって形成されている。第1のギャップ層18を構成する非磁性材料は、絶縁材料でもよいし、非磁性金属材料でもよい。第1のギャップ層18を構成する絶縁材料としては、例えばアルミナが用いられる。第1のギャップ層18を構成する非磁性金属材料としては、例えばRuが用いられる。第1のギャップ層18には、磁性層36の上面を露出させる開口部が形成されている。磁性層37は、磁性層36の上に配置されている。
【0044】
主磁極15は、金属磁性材料によって形成されている。主磁極15の材料としては、例えば、NiFe、CoNiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。主磁極15の形状については、後で詳しく説明する。
【0045】
磁気ヘッドは、更に、主磁極15、第2のシールド16B、サイドシールド16C,16Dおよび磁性層37の周囲に配置された非磁性材料よりなる非磁性層57を備えている。本実施の形態では、特に、非磁性層57は、アルミナ等の非磁性絶縁材料よりなる。
【0046】
磁気ヘッドは、更に、媒体対向面2から離れた位置において、主磁極15の上面15Tの一部の上に配置された非磁性金属材料よりなる非磁性金属層58と、この非磁性金属層58の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層59とを備えている。非磁性金属層58は、例えばRu、NiCrまたはNiCuによって形成されている。絶縁層59は、例えばアルミナによって形成されている。
【0047】
第2のギャップ層19は、主磁極15、非磁性金属層58および絶縁層59を覆うように配置されている。第2のギャップ層19は、非磁性材料によって形成されている。第2のギャップ層19の材料は、アルミナ等の非磁性絶縁材料でもよいし、Ru、NiCu、Ta、W、NiB、NiP等の非磁性導電材料でもよい。
【0048】
第1のシールド16Aは、サイドシールド16C,16Dおよび第2のギャップ層19の上に配置され、サイドシールド16C,16Dおよび第2のギャップ層19の上面に接している。媒体対向面2において、第1のシールド16Aの端面の一部は、主磁極15の端面に対して、第2のギャップ層19の厚みによる所定の間隔を開けて配置されている。第2のギャップ層19の厚みは、5〜60nmの範囲内であることが好ましく、例えば30〜60nmの範囲内である。主磁極15の端面は、第2のギャップ層19に隣接する辺を有し、この辺はトラック幅を規定している。
【0049】
記録ヘッド部9は、更に、媒体対向面2から離れた位置において主磁極15の上に配置された磁性材料よりなる磁性層43を有している。リード層11は、非磁性層57の上であって、磁性層43に対して、媒体対向面2からより遠い位置に配置されている。磁性層38は、磁性層37の上に配置されている。磁性層43の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0050】
磁気ヘッドは、更に、リード層11、第1のシールド16Aおよび磁性層38,43の周囲に配置された非磁性層61を備えている。非磁性層61は、例えば無機絶縁材料によって形成されている。この無機絶縁材料としては、例えばアルミナまたはシリコン酸化物が用いられる。リード層11、第1のシールド16A、磁性層38,43および非磁性層61の上面は平坦化されている。
【0051】
磁性層42は、第1のシールド16Aおよび非磁性層61の上に配置されている。また、磁性層42は、媒体対向面2に配置された端面を有している。磁性層45は、媒体対向面2から離れた位置において、磁性層43の上面の一部の上に配置されている。磁性層39は、磁性層38の上に配置されている。
【0052】
コイル10の巻線部分10Aは、第1の連結部44(磁性層45)の周りに巻回され、且つその一部が第1の連結部44(磁性層45)と第2の連結部34(磁性層39)の間を通過している。図3に示した例では、巻線部分10Aは、第1の連結部44(磁性層45)の周りに約3回巻かれている。
【0053】
磁気ヘッドは、更に、コイル10と磁性層39,42,43,45および非磁性層61との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁層62と、コイル10の巻線間および周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層63と、磁性層39,42および絶縁層62の周囲に配置された絶縁材料よりなる図示しない絶縁層と、コイル10および絶縁層62,63を覆うように配置された絶縁材料よりなる絶縁層64とを備えている。絶縁層62には、リード層11の上面の一部を露出させる開口部が形成されている。コイル10のコイル接続部10Eは、絶縁層62に形成された開口部を通してリード層11に電気的に接続されている。絶縁層62,64と図示しない絶縁層は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層63は、例えばフォトレジストによって形成されている。
【0054】
ヨーク層41は、磁性層39,42,45および絶縁層64の上に配置されている。また、ヨーク層41は、媒体対向面2に向いた端面を有し、この端面は、媒体対向面2から離れた位置に配置されている。第1の連結部44(磁性層45)と磁性層43は、主磁極15とヨーク層41とを磁気的に連結している。第2の連結部34(磁性層35〜39)は、ヨーク層31とヨーク層41とを磁気的に連結している。磁性層42は、記録シールド16の第1のシールド16Aとヨーク層41とを磁気的に連結している。
【0055】
記録ヘッド部9は、更に、ヨーク層41の上に配置されたストッパ層91を有している。ストッパ層91は、熱伝導率が大きく、線熱膨張係数が小さく、且つ硬い非磁性材料によって形成されている。ストッパ層91を構成する材料は、アルミナに比べて、熱伝導率が大きく、線熱膨張係数が小さく、且つビッカース硬度が大きい材料であることが好ましい。このような材料としては、SiCがある。ストッパ層91がない場合には、ヨーク層41および磁性層42が、コイル10によって発生された熱を受けて膨張して、媒体対向面2の一部を突出させる可能性がある。ストッパ層91は、コイル10によって発生された熱を吸熱すると共に、ヨーク層41および磁性層42の媒体対向面2側への膨張を抑制する。これにより、コイル10によって発生された熱によって、媒体対向面2の一部が突出することが抑制される。
【0056】
磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、記録ヘッド部9を覆うように配置された保護層70を備えている。保護層70は、例えば、アルミナ等の無機絶縁材料によって形成されている。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面2と再生ヘッド部8と記録ヘッド部9とを備えている。再生ヘッド部8と記録ヘッド部9は、基板1の上に積層されている。再生ヘッド部8は、記録ヘッド部9に対して、記録媒体の進行方向Tの後側(リーディング端側)に配置されている。
【0058】
再生ヘッド部8は、再生素子としてのMR素子5と、媒体対向面2側の一部がMR素子5を挟んで対向するように配置された、MR素子5をシールドするための第1の再生シールド層3および第2の再生シールド層7と、MR素子5と第1の再生シールド層3との間に配置された第1の再生シールドギャップ膜4と、MR素子5と第2の再生シールド層7との間に配置された第2の再生シールドギャップ膜6とを有している。
【0059】
記録ヘッド部9は、コイル10と、主磁極15と、記録シールド16と、ギャップ部17と、ヨーク層31,41と、第1の連結部44と、第2の連結部34と、磁性層32,42,43とを有している。記録シールド16は、第1のシールド16Aと、2つのサイドシールド16C,16Dと、第2のシールド16Bとを有している。ギャップ部17は、第1のギャップ層18と第2のギャップ層19とを含んでいる。
【0060】
ヨーク層31,41は、主磁極15を挟むように記録媒体の進行方向Tに沿って並んでいる。ヨーク層31は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。ヨーク層41は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。ヨーク層41は、磁性層42を介して記録シールド16の第1のシールド16Aに磁気的に接続されている。前記主断面において、ヨーク層41は、媒体対向面2に垂直な方向について第1のシールド16Aよりも大きな長さを有している。
【0061】
ヨーク層31は、磁性層32を介して記録シールド16の第2のシールド16Bに磁気的に接続されている。磁性層32は、媒体対向面2において第2のシールド16Bの端面に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置された端面を有している。前記主断面において、ヨーク層31は、媒体対向面2に垂直な方向について第2のシールド16Bよりも大きな長さを有している。前記主断面において、磁性層32は、媒体対向面2に垂直な方向について第2のシールド16Bよりも大きくヨーク層31よりも小さな長さを有している。
【0062】
第1の連結部44(磁性層45)と磁性層43は、主磁極15とヨーク層41とを磁気的に連結している。第2の連結部34(磁性層35〜39)は、ヨーク層31とヨーク層41とを磁気的に連結している。
【0063】
コイル10は、平面渦巻き形状の巻線部分10Aを含んでいる。巻線部分10Aは、第1の連結部44(磁性層45)の周りに巻回され、且つその一部が第1の連結部44(磁性層45)と第2の連結部34(磁性層39)の間を通過している。
【0064】
また、磁気ヘッドは、ヒーター82と、膨張層84と、センサ85と、非磁性部86とを備えている。膨張層84、センサ85および非磁性部86は、再生ヘッド部8と記録ヘッド部9の間に配置されている。ヒーター82は、膨張層84およびセンサ85に対して、記録媒体の進行方向Tの後側(リーディング端側)に配置されている。非磁性部86は、膨張層84およびセンサ85の周囲に配置されている。
【0065】
ここで、ヒーター82、膨張層84およびセンサ85について詳しく説明する。始めに、ヒーター82および膨張層84について説明する。ヒーター82および膨張層84は、再生ヘッド部8および記録ヘッド部9と記録媒体の表面との間の距離を小さくするために、媒体対向面2の一部を突出させるためのものである。ヒーター82は、媒体対向面2の一部を突出させるための熱を発生する。膨張層84は、ヒーター82によって発生された熱を受けて膨張して、媒体対向面2の一部を突出させる。
【0066】
ヒーター82は、電流が流されることによって発熱する金属等の導電材料によって形成されている。ヒーター82は、例えば、Ta膜、NiCu膜およびTa膜からなる積層膜や、NiCr膜によって形成されている。
【0067】
膨張層84は、非磁性部86に比べて、熱伝導率および線熱膨張係数が大きい材料によって形成されている。非磁性部86がアルミナによって形成されている場合には、膨張層84の材料としては、アルミナに比べて、熱伝導率および線熱膨張係数が大きい材料とする必要がある。アルミナの25℃における熱伝導率は30W/m・K程度である。アルミナの25〜100℃における線熱膨張係数は6.5×10−6/℃程度である。膨張層84の材料としては、金属材料を用いることができる。膨張層84を構成する金属材料は、非磁性金属材料でもよいし、磁性金属材料でもよい。膨張層84を構成する非磁性金属材料としては、例えばAl、Cu、Auのいずれかを用いることができる。膨張層84を構成する磁性金属材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0068】
次に、ヒーター82および膨張層84によって、再生ヘッド部8および記録ヘッド部9と記録媒体の表面との間の距離を小さくする方法について説明する。ヒーター82には、所定の大きさの電流が流される。これにより、ヒーター82によって、媒体対向面2の一部を突出させるための熱が発生される。
【0069】
磁気ヘッドの構成要素は、ヒーター82によって発生された熱を受けて膨張する。特に、膨張層84は、その周囲に配置された非磁性部86に比べて、熱伝導率が大きい材料によって形成されている。そのため、膨張層84では、非磁性部86に比べて、ヒーター82によって発生された熱が速やかに均一に分布する。また、膨張層84は、非磁性部86に比べて、線熱膨張係数が大きい材料によって形成されている。そのため、膨張層84は、ヒーター82によって発生された熱を受けて、非磁性部86に比べて、速やかに、且つ大きく膨張して、媒体対向面2の一部を突出させる。これにより、再生ヘッド部8および記録ヘッド部9と記録媒体の表面との間の距離が小さくなる。媒体対向面2の一部の突出量は、ヒーター82に流される電流の大きさを調整することによって制御することができる。
【0070】
次に、センサ85について説明する。センサ85は、媒体対向面2の一部が記録媒体に接触したことを検出するためのものである。センサ85は、媒体対向面2の一部が記録媒体に接触したときに自身の温度変化によって抵抗値が変化する抵抗体である。センサ85の材料としては、温度変化に対する抵抗値の変化の割合、すなわち抵抗の温度係数がある程度大きい金属材料や半導体材料が用いられる。具体的には、センサ85の材料としては、例えば、NiFe、W、Cu、Ni、Ptのいずれかを用いることができる。
【0071】
媒体対向面2の一部が記録媒体に接触すると、接触による摩擦熱によって、媒体対向面2のうち、記録媒体に接触した部分およびその近傍の部分の温度が上昇する。このような温度の上昇に伴って、センサ85自身の温度も上昇する。その結果、センサ85の抵抗値が変化する。そのため、センサ85の抵抗値を測定することによって、媒体対向面2の一部が記録媒体に接触したことを検出することができる。
【0072】
次に、図4を参照して、主磁極15の形状について詳しく説明する。図4に示したように、主磁極15は、媒体対向面2に配置された端面とその反対側の端部とを有するトラック幅規定部15Aと、トラック幅規定部15Aの端部に接続された幅広部15Bとを含んでいる。また、図4に示したように、主磁極15は、基板1の上面1aにより近い端部である下端部15Lと、下端部15Lとは反対側の上面15Tと、第1の側部SP1と、第2の側部SP2とを有している。幅広部15Bにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、トラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅よりも大きい。
【0073】
トラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、媒体対向面2からの距離によらずにほぼ一定である。幅広部15Bにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、例えば、トラック幅規定部15Aとの境界位置ではトラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅と等しく、媒体対向面2から離れるに従って、徐々に大きくなった後、一定の大きさになっている。ここで、媒体対向面2に垂直な方向についてのトラック幅規定部15Aの長さをネックハイトと呼ぶ。ネックハイトは、例えば0〜0.3μmの範囲内である。ネックハイトが0の場合は、トラック幅規定部15Aがなく、幅広部15Bの端面が媒体対向面2に配置される。
【0074】
下端部15Lは、媒体対向面2に近い順に、連続するように配置された第1の部分15L1、第2の部分15L2および第3の部分15L3を含んでいる。第1の部分15L1は、媒体対向面2に配置された端部を有している。第1および第2の部分15L1,15L2は、2つの面が交わってできるエッジでもよいし、2つの面を連結する面でもよい。第3の部分15L3は、実質的に媒体対向面2に垂直な方向に延在する面になっている。上面15Tは、媒体対向面2に近い順に、連続するように配置された第4の部分15T1、第5の部分15T2および第6の部分15T3を含んでいる。第4の部分15T1は、媒体対向面2に配置された端部を有している。
【0075】
第1および第2の部分15L1,15L2における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、任意の位置が媒体対向面2から離れるに従って小さくなっている。媒体対向面2に垂直な方向に対する第2の部分15L2の傾斜角度は、媒体対向面2に垂直な方向に対する第1の部分15L1の傾斜角度よりも大きい。第2のシールド16Bは、ギャップ部17(第1のギャップ層18)を介して第1および第2の部分15L1,15L2に対向する上面を有している。この第2のシールド16Bの上面における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、任意の位置が媒体対向面2から離れるに従って小さくなっている。
【0076】
また、第4および第5の部分15T1,15T2における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、任意の位置が媒体対向面2から離れるに従って大きくなっている。媒体対向面2に垂直な方向に対する第5の部分15T2の傾斜角度は、媒体対向面2に垂直な方向に対する第4の部分15T1の傾斜角度よりも大きい。第6の部分15T3は、実質的に媒体対向面2に垂直な方向に延在している。第1のシールド16Aは、ギャップ部17(第2のギャップ層19)を介して第4および第5の部分15T1,15T2に対向する下面を有している。第1のシールド16Aの下面における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、任意の位置が媒体対向面2から離れるに従って大きくなっている。
【0077】
第1の部分15L1の傾斜角度および第4の部分15T1の傾斜角度は、いずれも、15°〜45°の範囲内であることが好ましい。第2の部分15L2の傾斜角度および第5の部分15T2の傾斜角度は、いずれも、45°〜85°の範囲内であることが好ましい。
【0078】
また、図4に示したように、媒体対向面2に配置された主磁極15の端面は、第2のギャップ層19に隣接する第1の辺A1と、第1の辺A1の一端部に接続された第2の辺A2と、第1の辺A1の他端部に接続された第3の辺A3とを有している。第1の辺A1はトラック幅を規定する。記録媒体に記録される記録ビットの端部の位置は、第1の辺A1の位置によって決まる。媒体対向面2に配置された主磁極15の端面のトラック幅方向TWの幅は、主磁極15の下端部15Lに近づくに従って、すなわち基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。第2の辺A2と第3の辺A3がそれぞれ基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度は、例えば7°〜17°の範囲内であり、10°〜15°の範囲内であることが好ましい。第1の辺A1の長さは、例えば0.05〜0.20μmの範囲内である。
【0079】
媒体対向面2における主磁極15の厚み(基板1の上面1aに垂直な方向の長さ)は、例えば0.05〜0.2μmの範囲内である。第3の部分15L3と第6の部分15T3との距離は、例えば0.4〜0.8μmの範囲内である。
【0080】
なお、図4には、第2の部分15L2と第3の部分15L3の境界位置と媒体対向面2との間の距離と、第5の部分15T2と第6の部分15T3の境界位置と媒体対向面2との間の距離が、いずれも、トラック幅規定部15Aと幅広部15Bとの境界位置と媒体対向面2との間の距離すなわちネックハイトと等しい例を示している。しかし、第2の部分15L2と第3の部分15L3の境界位置と媒体対向面2との間の距離と、第5の部分15T2と第6の部分15T3の境界位置と媒体対向面2との間の距離は、それぞれ、ネックハイトよりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0081】
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの作用および効果について説明する。この磁気ヘッドでは、記録ヘッド部9によって記録媒体に情報を記録し、再生ヘッド部8によって、記録媒体に記録されている情報を再生する。記録ヘッド部9において、コイル10は、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。主磁極15は、コイル10によって発生された磁界に対応する磁束を通過させて、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0082】
記録シールド16は、磁気ヘッドの外部から磁気ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む。これにより、外乱磁界が主磁極15に集中して取り込まれることによって記録媒体に対して誤った記録が行なわれることを防止することができる。また、記録シールド16は、主磁極15の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを阻止する機能を有している。
【0083】
また、記録シールド16、ヨーク層31,41、第1の連結部44、第2の連結部34および磁性層32,42,43は、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束を還流させる機能を有している。具体的に説明すると、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束の一部は、記録シールド16、磁性層42、ヨーク層41、第1の連結部44(磁性層45)および磁性層43を通過して主磁極15に還流する。また、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束の他の一部は、記録シールド16、磁性層32、ヨーク層31、第2の連結部34(磁性層35〜39)、ヨーク層41、第1の連結部44および磁性層43を通過して主磁極15に還流する。このように、本実施の形態では、記録シールド16から主磁極15に至る第1および第2の磁路が形成される。第1の磁路は、ヨーク層41および第1の連結部44を経由する。第2の磁路は、ヨーク層31、第2の連結部34、ヨーク層41および第1の連結部44を経由する。
【0084】
記録シールド16は、第1のシールド16Aと、第2のシールド16Bと、2つのサイドシールド16C,16Dとを有している。これにより、本実施の形態によれば、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側および後側ならびにトラック幅方向TWの両側において、主磁極15の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを抑制することができる。その結果、本実施の形態によれば、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。第1のシールド16Aおよび第2のシールド16Bは、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することに寄与する他に、記録磁界の勾配を大きくすることに寄与する。サイドシールド16C,16Dは、特に隣接トラック消去を抑制することへの寄与が大きい。このような記録シールド16の機能により、本実施の形態によれば、記録密度を高めることができる。
【0085】
また、本実施の形態では、図4に示したように、媒体対向面2において、トラック幅方向TWにおける主磁極15の第1および第2の側部SP1,SP2の間隔すなわち主磁極15の端面の幅は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。本実施の形態によれば、この特徴によっても、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
【0086】
また、本実施の形態では、媒体対向面2において、トラック幅方向TWにおけるサイドシールド16C,16Dにおける第1および第2の側壁の間隔は、主磁極15の第1および第2の側部SP1,SP2の間隔と同様に、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。従って、本実施の形態によれば、媒体対向面2において、第1の側部SP1と第1の側壁との間隔、ならびに第2の側部SP2と第2の側壁との間隔を、小さく、且つ均一にすることが可能になる。これにより、サイドシールド16C,16Dによって、主磁極15の端面より発生されてトラック幅方向TWの両側に広がる磁束を、効果的に取り込むことができる。その結果、本実施の形態によれば、特にサイドシールド16C,16Dの機能を高めることが可能になり、スキューに起因した隣接トラック消去の発生をより効果的に抑制することが可能になる。
【0087】
記録シールド16の機能を効果的に発揮させるためには、記録シールド16によって多くの磁束を取り込めることが重要である。そのため、本実施の形態のように、磁気ヘッドが、記録シールド16から主磁極15に至る第1および第2の磁路を備えることは有効である。
【0088】
ここで、磁性層32の役割について説明する。まず、磁性層32がなく、第2のシールド16Bとヨーク層31が磁気的に連結されていない場合を考える。この場合、第2のシールド16Bまたはサイドシールド16C,16Dで取り込まれて下方に向かった磁束は、ヨーク層31の方へ流れることができないため、上方に向かうように戻る。その結果、第2のシールド16Bまたはサイドシールド16C,16Dにおいて、下方に向かう磁束と上方に向かう磁束が生じ、その結果、第2のシールド16Bまたはサイドシールド16C,16Dで取り込まれた磁束の一部が媒体対向面2の外部に漏れ出す。これにより、隣接トラック消去が生じるおそれがある。これに対し、磁性層32によって第2のシールド16Bとヨーク層31が磁気的に連結されていると、サイドシールド16C,16Dで取り込まれた磁束は上方と下方へ分流し、第2のシールド16Bで取り込まれた磁束は主に下方に向かう。これにより、第2のシールド16Bまたはサイドシールド16C,16Dで取り込まれた磁束の一部が媒体対向面2の外部に漏れ出すことによる隣接トラック消去の発生が防止される。
【0089】
また、前記主断面において、媒体対向面2に垂直な方向についての第2のシールド16Bの長さが大きすぎると、主磁極15から第2のシールド16Bへの磁束の漏れが多くなり、主磁極15によって多くの磁束を媒体対向面2まで導くことができなくなる。そのため、前記主断面において、媒体対向面2に垂直な方向についての第2のシールド16Bの長さは大きすぎないようにする必要がある。この場合、前記主断面において、媒体対向面2に垂直な方向についての磁性層32の長さが第2のシールド16Bの長さと等しいか、それより小さい場合には、磁性層32によって第2のシールド16Bからヨーク層31へ多くの磁束を導くことができなくなる。これに対し、本実施の形態では、前記主断面において、磁性層32は、媒体対向面2に垂直な方向について第2のシールド16Bよりも大きくヨーク層31よりも小さな長さを有している。これにより、本実施の形態によれば、磁性層32によって第2のシールド16Bからヨーク層31へ多くの磁束を導くことが可能になる。
【0090】
また、本実施の形態によれば、記録シールド16から主磁極15に至る第1および第2の磁路を備えながら、コイル10の構造を簡単にすることができる。以下、これについて、図5ないし図8を参照して説明する。図5は、第1の比較例における磁束の流れを示す説明図である。図6は、第2の比較例における磁束の流れを示す説明図である。図7は、第3の比較例における磁束の流れを示す説明図である。図8は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける磁束の流れを示す説明図である。図5ないし図8では、磁気ヘッドの構成要素を簡略化して描いている。また、図5ないし図8において、矢印は磁束の流れを表している。
【0091】
始めに、第1の比較例の磁気ヘッドについて説明する。第1の比較例の磁気ヘッドでは、本実施の形態における、ヨーク層31とヨーク層41とを磁気的に連結する第2の連結部34は設けられていない。第1の比較例の磁気ヘッドは、ヨーク層31と主磁極15とを磁気的に連結する連結部134を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。第1の比較例の磁気ヘッドにおけるその他の構成は、本実施の形態に係る磁気ヘッドと同様である。
【0092】
第1の比較例では、ヨーク層31と主磁極15との間にコイルは設けられていない。そのため、ヨーク層31では、磁束が生じないか、あるいは、破線で示したように、コイル10の起磁力によって、ヨーク層41における磁束とは逆方向に流れる磁束が生じる。前者の場合には、ヨーク層31は、記録シールド16から主磁極15に至る磁路として機能しない。後者の場合には、主磁極15とヨーク層31を同じ方向に磁束が流れるため、媒体対向面2において、主磁極15の端面とヨーク層31の端面から同じ方向に磁界が発生し、その結果、隣接トラック消去が発生するおそれがある。
【0093】
これに対し、本実施の形態では、図8に示したように、コイル10の起磁力によって、第1の連結部44において合流するように、第1の磁路を通過する磁束と第2の磁路を通過する磁束が発生する。ヨーク層31,41では、いずれも主磁極15とは反対の方向に磁束が流れる。これにより、本実施の形態によれば、記録シールド16の機能を効果的に発揮させることができる。
【0094】
次に、第2の比較例の磁気ヘッドについて説明する。第2の比較例の磁気ヘッドは、連結部134を備えた第1の比較例の磁気ヘッドにおいて、更に、連結部134の周りに巻回された平面渦巻き形状のコイル120を備えたものである。コイル10とコイル120は、直列または並列に接続されている。
【0095】
図6に示したように、第2の比較例では、コイル10の起磁力によって、ヨーク層41および第1の連結部44を経由する磁路を通過する磁束が発生する。また、コイル120の起磁力によって、ヨーク層31および連結部134を経由する磁路を通過する磁束が発生する。主磁極15は、コイル10の起磁力によって発生された磁束とコイル120の起磁力によって発生された磁束とを通過させる。ヨーク層31,41を流れる磁束の方向は、主磁極15における磁束とは逆方向である。
【0096】
第2の比較例の磁気ヘッドでは、2つの磁路に対応する2つの平面渦巻き形状のコイル10,120を備えているため、コイル10,120の構造ならびにコイル10,120の周辺の構造が複雑になると共に、コイル10,120を形成するための工程数が多く必要になるという問題点がある。
【0097】
これに対し、本実施の形態では、1つのコイル10の起磁力によって、第1の連結部44において合流するように、第1の磁路を通過する磁束と第2の磁路を通過する磁束を発生させることができる。そのため、本実施の形態に係る磁気ヘッドによれば、記録シールド16から主磁極15に至る第1および第2の磁路を備えながら、コイルの構造を簡単にすることができ、その結果、上記の第2の比較例における問題点は生じない。
【0098】
次に、第3の比較例の磁気ヘッドについて説明する。第3の比較例の磁気ヘッドは、第2の比較例の磁気ヘッドにおけるコイル10,120の代りに、主磁極15の周りに巻かれたヘリカル形状のコイル210を備えている。図7に示したように、第3の比較例では、コイル210の起磁力によって、ヨーク層41および第1の連結部44を経由する磁路を通過する磁束と、ヨーク層31および連結部134を経由する磁路を通過する磁束が発生する。主磁極15は、コイル210の起磁力によって発生されたこれらの磁束を通過させる。ヨーク層31,41を流れる磁束の方向は、主磁極15における磁束とは逆方向である。
【0099】
第3の比較例の磁気ヘッドでは、主磁極15の周りに巻かれたヘリカル形状のコイル210を備えているため、コイル210の構造ならびにコイル210の周辺の構造が複雑になると共に、コイル210を形成するための工程数が多く必要になるという問題点がある。
【0100】
これに対し、本実施の形態では、前述のとおり、記録シールド16から主磁極15に至る第1および第2の磁路を備えながら、コイルの構造を簡単にすることができ、その結果、上記の第3の比較例における問題点は生じない。
【0101】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドによれば、記録シールド16から主磁極15に至る第1および第2の磁路を備えながら、コイル10の構造を簡単にすることができ、且つ記録シールド16の機能を効果的に発揮させることができる。
【0102】
なお、本実施の形態では、再生ヘッド部8と主磁極15との間にはコイルが設けられていない。そのため、本実施の形態によれば、再生ヘッド部8と主磁極15との間にコイルの少なくとも一部が設けられる第2および第3の比較例に比べて、再生ヘッド部8と主磁極15との間の距離を小さくすることが可能になる。
【0103】
ところで、第2の連結部34がコイル10と媒体対向面2との間に位置していると、第1の連結部44と媒体対向面2との間の距離が大きくなって、主磁極15の端面より発生される磁束の方向の変化の速度が低下するおそれがある。本実施の形態では、第2の連結部34は、コイル10と媒体対向面2との間を除いた位置に配置されている。これにより、本実施の形態によれば、第1の連結部44と媒体対向面2との間の距離を小さくして、主磁極15の端面より発生される磁束の方向の変化の速度を大きくすることができる。
【0104】
以下、本実施の形態におけるその他の効果について説明する。本実施の形態では、主磁極15の下端部15Lは、媒体対向面2に近い順に、連続するように配置された第1の部分15L1、第2の部分15L2および第3の部分15L3を含んでいる。主磁極15の上面15Tは、媒体対向面2に近い順に、連続するように配置された第4の部分15T1、第5の部分15T2および第6の部分15T3を含んでいる。第1および第2の部分15L1,15L2における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、任意の位置が媒体対向面2から離れるに従って小さくなっている。第4および第5の部分15T1,15T2における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、任意の位置が媒体対向面2から離れるに従って大きくなっている。これにより、本実施の形態によれば、媒体対向面2における主磁極15の厚みを小さくすることができることから、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。しかも、本実施の形態によれば、媒体対向面2から離れた位置では主磁極15の厚みを大きくすることができることから、主磁極15によって多くの磁束を媒体対向面2まで導くことができ、その結果、オーバーライト特性等の記録特性を向上させることができる。
【0105】
本実施の形態における主磁極15では、第1および第4の部分15L1,15T1の傾斜角度を小さくすることによって、媒体対向面2の位置の変動に伴う記録特性の変動を抑制することができる。しかも、この主磁極15では、第2および第5の部分15L2,15T2の傾斜角度を大きくすることによって、媒体対向面2における主磁極15の厚みを小さくしながら、第3の部分15L3と第6の部分15T3との距離を大きくすることができ、その結果、スキューに起因した問題の発生を防止でき、且つ記録特性を向上させることができる。このように、本実施の形態によれば、媒体対向面2の位置の変動に伴う記録特性の変動を抑制しながら、スキューに起因した問題の発生を防止し、且つ記録特性を向上させることが可能になる。
【0106】
[第2の実施の形態]
次に、図9を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図9は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。なお、図9は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面、特に前記主断面を示している。
【0107】
本実施の形態に係る磁気ヘッドは、以下の点で第1の実施の形態に係る磁気ヘッドと異なっている。本実施の形態では、ヨーク層31および磁性層32は、それぞれ、媒体対向面2に向いた端面を有し、これらの端面は、媒体対向面2から離れた位置に配置されている。磁気ヘッドは、ヨーク層31の周囲において絶縁層71および非磁性層89の上に形成された絶縁層51を備えている。ヨーク層31の上記端面と媒体対向面2との間には、絶縁層51の一部が介在している。また、磁気ヘッドは、磁性層32の上記端面と媒体対向面2との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁層52を備えている。
【0108】
また、本実施の形態では、記録ヘッド部9は、磁性層32と第2のシールド16Bとの間に配置された磁性材料よりなる磁性層33を有している。本実施の形態では、磁性層33,35および絶縁層54の上面が平坦化されている。磁性層33,32は、記録シールド16の第2のシールド16Bとヨーク層31とを磁気的に連結している。磁性層33の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0109】
磁性層33は、媒体対向面2において第2のシールド16Bの端面に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置された端面を有している。前記主断面において、磁性層33は、媒体対向面2に垂直な方向について第2のシールド16Bよりも大きくヨーク層31よりも小さな長さを有している。
【0110】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0111】
[第3の実施の形態]
次に、図10ないし図12を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図10は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。なお、図10は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面、特に前記主断面を示している。図11は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1層を示す平面図である。図12は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2層を示す平面図である。
【0112】
本実施の形態に係る磁気ヘッドは、以下の点で第2の実施の形態に係る磁気ヘッドと異なっている。本実施の形態では、第1の連結部44は、磁性層45に加えて、磁性層45の上に配置された磁性層46を含んでいる。また、第2の連結部34は、磁性層35〜39に加えて、磁性層39の上に配置された磁性層40を含んでいる。また、記録ヘッド部9は、磁性層42の上に、この順に積層された磁性材料よりなる磁性層47,48を有している。磁性層47,48は、それぞれ、媒体対向面2に向いた端面を有し、これらの端面は、媒体対向面2から離れた位置に配置されている。磁性層47,48の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0113】
また、本実施の形態では、記録ヘッド部9は、コイル10の代りに、コイル20を有している。コイル20は、直列に接続された第1層21および第2層22を含んでいる。図11に示したように、第1層21は、平面渦巻き形状の巻線部分21Aを含んでいる。巻線部分21Aは、第1の連結部44(磁性層45)の周りに巻回され、且つその一部が第1の連結部44(磁性層45)と、第2の連結部34(磁性層39)との間を通過している。図10および図11において、符号21Eは、第1層21のうち、第2層22に接続されるコイル接続部を示している。図11に示した例では、巻線部分21Aは、第1の連結部44(磁性層45)の周りに約2回巻かれている。
【0114】
図12に示したように、第2層22は、平面渦巻き形状の巻線部分22Aを含んでいる。巻線部分22Aは、第1の連結部44(磁性層46)の周りに巻回され、且つその一部が第1の連結部44(磁性層46)と、第2の連結部34(磁性層40)との間を通過している。図10および図12において、符号22Sは、第2層22のうち、第1層21のコイル接続部21Eに接続されるコイル接続部を示している。図12に示した例では、巻線部分22Aは、第1の連結部44(磁性層46)の周りに約2回巻かれている。
【0115】
また、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、コイル20の第1層21と磁性層39,42,45,47および非磁性層61との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁層72と、第1層21の巻線間に配置された絶縁材料よりなる絶縁層73と、磁性層39,42,47および絶縁層72の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層74と、第1層21および絶縁層72,73を覆うように配置された絶縁材料よりなる絶縁層75とを備えている。絶縁層75には、第1層21のコイル接続部21Eの上面を露出させる開口部が形成されている。第1層21、磁性層39,45,47および絶縁層73,74の上面は平坦化されている。絶縁層72,74,75は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層73は、例えばフォトレジストによって形成されている。
【0116】
本実施の形態に係る磁気ヘッドは、更に、コイル20の第2層22と磁性層40,46,48および絶縁層75との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁層76と、第2層22の巻線間に配置された絶縁材料よりなる絶縁層77と、磁性層40,48および絶縁層76の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層78と、第2層22および絶縁層76,77を覆うように配置された絶縁材料よりなる絶縁層79とを備えている。絶縁層76には、第1層21のコイル接続部21Eの上面を露出させる開口部が形成されている。第2層22のコイル接続部22Sは、絶縁層75,76に形成された開口部を通して、コイル接続部21Eに電気的に接続されている。第2層22、磁性層40,46,48および絶縁層77,78の上面は平坦化されている。絶縁層76,78,79は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層77は、例えばフォトレジストによって形成されている。
【0117】
本実施の形態では、ヨーク層41は、磁性層40,46,48および絶縁層79の上に配置されている。第1の連結部44(磁性層45,46)と磁性層43は、主磁極15とヨーク層41とを磁気的に連結している。第2の連結部34(磁性層35〜40)は、ヨーク層31とヨーク層41とを磁気的に連結している。磁性層42,47,48は、記録シールド16の第1のシールド16Aとヨーク層41とを磁気的に連結している。なお、本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、ストッパ層91が設けられていない。
【0118】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
【0119】
[第4の実施の形態]
次に、図13を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図13は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。なお、図13は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面、特に前記主断面を示している。
【0120】
本実施の形態に係る磁気ヘッドは、以下の点で第1の実施の形態に係る磁気ヘッドと異なっている。本実施の形態では、磁性層43、絶縁層54,62〜64およびストッパ層91が設けられていない。また、本実施の形態では、第1の連結部44は、磁性層45の代りに、1つの磁性層49によって構成されている。磁性層49は、媒体対向面2から離れた位置においてヨーク層31の上に配置されている。また、磁性層49は、磁性層32と磁性層35との間に配置されている。
【0121】
また、本実施の形態では、コイル10の巻線部分10Aは、第1の連結部44(磁性層49)の周りに巻回され、且つその一部が第1の連結部44(磁性層49)と第2の連結部34(磁性層35)との間を通過している。図13に示した例では、巻線部分10Aは、第1の連結部44(磁性層49)の周りに約3回巻かれている。
【0122】
また、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、コイル10とヨーク層31および磁性層32,35,49との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁層53と、コイル10の巻線間および周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層55と、磁性層32,35および絶縁層53の周囲に配置された絶縁材料よりなる図示しない絶縁層とを備えている。コイル10、磁性層32,35および図示しない絶縁層の上面は平坦化されている。絶縁層53と図示しない絶縁層は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層55は、例えばフォトレジストによって形成されている。
【0123】
また、本実施の形態では、記録ヘッド部9は、リード層11の代りに、接続層12およびリード層13を有している。接続層12とリード層13は、いずれも、銅等の導電材料によって形成されている。接続層12とリード層13は、コイル10に通電するために用いられる。接続層12は、コイル10のコイル接続部10Eの上に配置されている。
【0124】
記録ヘッド部9は、更に、磁性層49の上に配置された磁性材料よりなる磁性層50を有している。本実施の形態では、絶縁層56は、第2のシールド16B、磁性層36,50および接続層12の周囲において、コイル10および絶縁層53,55を覆うように配置されている。磁性層50の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0125】
また、本実施の形態では、第1のギャップ層18には、接続層12の上面を露出させる開口部と、磁性層50の上面を露出させる開口部とが形成されている。媒体対向面2から離れた位置において、主磁極15の下端部は、磁性層50の上面に接している。リード層13は、第1のギャップ層18に形成された開口部を通して接続層12に電気的に接続されている。コイル10のコイル接続部10Eは、接続層12を介してリード層13に電気的に接続されている。本実施の形態では、非磁性層57は、主磁極15、第2のシールド16B、サイドシールド16C,16D、磁性層37およびリード層13の周囲に配置されている。
【0126】
本実施の形態では、非磁性層61は、第1のシールド16Aおよび磁性層38の周囲に配置されている。また、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、更に、磁性層39,42の周囲において非磁性層61の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層80を備えている。磁性層39,42および絶縁層80の上面は平坦化されている。ヨーク層41は、磁性層39,42および絶縁層80の上に配置されている。絶縁層80は、例えばアルミナによって形成されている。
【0127】
本実施の形態では、第1の連結部44(磁性層49)と磁性層50は、主磁極15とヨーク層31とを磁気的に連結している。また、第2の連結部34(磁性層35〜39)は、ヨーク層41とヨーク層31とを磁気的に連結している。本実施の形態では、第1の実施の形態と異なり、ヨーク層31が本発明における第2のヨーク層に対応し、ヨーク層41が本発明における第1のヨーク層に対応する。すなわち、本実施の形態では、第1のヨーク層41は主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置され、第2のヨーク層31は主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。
【0128】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0129】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、第2の連結部34は、第1の連結部44に対して、トラック幅方向の両側の少なくとも一方に配置されていてもよい。
【0130】
また、コイルは、それぞれ第1の連結部の周りに巻回され、且つその一部が第1の連結部と第2の連結部の間を通過する、積層された3層以上の巻線部分を有していてもよい。
【符号の説明】
【0131】
10…コイル、10A…巻線部分、15…主磁極、16…記録シールド、31,41…ヨーク層、34…第2の連結部、44…第1の連結部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13