(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756753
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】緑茶多糖体の製造方法並びにこれを含有する皮膚美白、保湿及びしわ改善用化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/97 20060101AFI20150709BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20150709BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20150709BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
A61K8/97
A61Q19/02
A61Q19/00
A61Q19/08
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-519971(P2011-519971)
(86)(22)【出願日】2009年5月6日
(65)【公表番号】特表2011-529045(P2011-529045A)
(43)【公表日】2011年12月1日
(86)【国際出願番号】KR2009002365
(87)【国際公開番号】WO2010011020
(87)【国際公開日】20100128
【審査請求日】2012年4月9日
(31)【優先権主張番号】10-2008-0070987
(32)【優先日】2008年7月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】株式会社アモーレパシフィック
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】クォン スン サン
(72)【発明者】
【氏名】ヨム ミョン フン
(72)【発明者】
【氏名】キム ドク ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム ハン コン
(72)【発明者】
【氏名】パク ノク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】アン ソー ミ
【審査官】
今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−024937(JP,A)
【文献】
特開2001−122765(JP,A)
【文献】
特開2005−176743(JP,A)
【文献】
特開平04−124139(JP,A)
【文献】
特開平06−080580(JP,A)
【文献】
特開2005−239571(JP,A)
【文献】
Biosci. Biotechnol. Biochem,2007年 8月23日,Vol.71, No.8,pp.1879-1885
【文献】
Food Chemistry,2008年 1月15日,Vol.106, No.2,pp.559-563
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/ 99
A61Q 1/00−90/ 00
A61K 36/00−36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)溶媒を利用して緑茶粉末から葉緑素及び低分子量のポリフェノールを除去する段階と、
b)上記a)段階の緑茶残渣から水溶性活性成分を熱水抽出する段階と、
c)上記b)段階の熱水抽出物から遊離タンパク質を除去するための限外濾過、及びエタノール沈殿反応で緑茶多糖体を分離する段階と、を含む化粧料用緑茶多糖体の製造方法。
【請求項2】
上記a)段階の溶媒は、ヘキサン、エタノール及びメタノールよりなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料用緑茶多糖体の製造方法。
【請求項3】
上記b)段階の熱水抽出温度は、30〜40℃であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料用緑茶多糖体の製造方法。
【請求項4】
上記b)段階の熱水抽出時間は、6〜8時間であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料用緑茶多糖体の製造方法。
【請求項5】
上記c)段階の限外濾過時に、緑茶多糖体の分子量が10万乃至30万ダルトンであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料用緑茶多糖体の製造方法。
【請求項6】
上記c)段階のエタノール沈殿反応時に、エタノールの添加速度が100〜200ml/minであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料用緑茶多糖体の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の方法で製造された化粧料用緑茶多糖体を有効成分として含有する化粧料組成物であって、前記緑茶多糖体は、葉緑素、低分子量のポリフェノール、及び遊離タンパク質が除去されたものであることを特徴とする化粧料組成物。
【請求項8】
上記化粧料用緑茶多糖体は、組成物の全体重量に対して0.1〜20重量%で含有されるものであることを特徴とする請求項7に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載の方法で製造された化粧料用緑茶多糖体を有効成分として含有する皮膚美白用化粧料組成物。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれかに記載の方法で製造された化粧料用緑茶多糖体を有効成分として含有する皮膚保湿用化粧料組成物。
【請求項11】
請求項1乃至6のいずれかに記載の方法で製造された化粧料用緑茶多糖体を有効成分として含有する皮膚しわ改善用化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
化粧料用緑茶多糖体の製造方法に関し、より詳細には、a)溶媒を利用して緑茶粉末から葉緑素及び低分子量のポリフェノールを除去する段階と、b)上記a)段階の緑茶残渣から水溶性活性成分を熱水抽出する段階と、c)上記b)段階の熱水抽出物から
遊離タンパク質を除去するための限外濾過
、及びエタノール沈殿反応で緑茶多糖体を分離する段階とを含む
化粧料用緑茶多糖体の製造方法に関する。また、本発明は、上記
化粧料用緑茶多糖体
(以下、単に緑茶多糖体と言う場合がある)を有効成分として含有する皮膚美白用、保湿用及びしわ改善用化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶には、人体に有益な多くの活性物質が含有されている。このような緑茶の活性物質としては、抗腫瘍、抗酸化、抗菌、重金属解毒及び血圧上昇抑制の作用などが知られたカテキン類(エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート)が挙げられる。最近、緑茶内のカテキン類以外の薬理活性成分を究明する研究が活発に進行されている。緑茶から抽出したポリフェノールの光老化抑制作用が報告されていて、これは、紫外線防御剤として使用可能である。また、異性質体として新規物質であるガロカテキンガレートの抽出方法に対する研究も活発に進行されている。また、緑茶抽出物を含有する皮膚外用剤が皮膚老化時に誘発される皮膚のしわ及び弾力を改善させることができることが研究された。これは、緑茶に含有されたポリフェノール成分が自由ラジカルを消去するか、または抗酸化と関連した皮膚内防御因子の活性を高めることによって、皮膚しわを改善し、皮膚弾力を増進させることができるからである。
【0003】
また、緑茶に存在する成分のうち水溶性多糖体は、免疫機能、抗放射性、抗血液凝固、抗癌、抗−HIV及び血糖降下の作用などがあると知られている。緑茶の葉から分離精製した緑茶多糖体は、皮膚ニキビ桿菌とアトピー黄色ブドウ球菌との人体細胞結合を阻害する活性を有していて、ヘリコバクター・ピロリと人体宿主細胞との結合を阻害する阻害能がある。上記先行文献では、緑茶多糖体を分離するためにイオン交換及びゲル濾過クロマトグラフィー法を使用した。しかし、このようなイオン交換及びゲル濾過クロマトグラフィー法は、非常に長い時間がかかり、大量生産のための技術が確立されていないため、経済性の問題点がある。
【0004】
このように、緑茶が多様な活性物質を含有しているにもかかわらず、緑茶抽出物自体は、変色などに起因して剤形安定性が良くないだけでなく、所望の効能、例えば、美白、保湿及びしわ改善などの効能を得ることができる分だけ多量で使用しにくいため、他の有効成分と混合して使用していた。
【0005】
また、緑茶の代表的な活性成分であり且つ抗酸化能力を有するものと知られたポリフェノールも、剤形での安定性またはその物質自体の安定性に乏しいので、カプセルなどの形態で二次加工して使用されている。しかし、ポリフェノールをカプセル化して使用しても、時間経過によって変色が容易なので、化粧料として使用しにくいのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これより、本発明者らは、さらに経済性が高い緑茶多糖体の製造方法を探すために研究した結果、a)溶媒を利用して緑茶粉末から葉緑素及び低分子量のポリフェノールを除去する段階と、b)上記a)段階の緑茶残渣から水溶性活性成分を熱水抽出する段階と、c)上記b)段階の熱水抽出物から
遊離タンパク質を除去するための限外濾過
、及びエタノール沈殿反応で緑茶多糖体を分離する段階とを利用して
化粧料用緑茶多糖体を製造する場合、製造時間が短く、且つ大量生産が可能なので、経済性に優れていることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
また、上記緑茶多糖体を含有する化粧料組成物が優れた皮膚美白、保湿及びしわ改善効果を示すことを知見し、本発明を完成した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、優れた経済性を有する
化粧料用緑茶多糖体の製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、優れた皮膚美白、保湿及びしわ改善効果を有する化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、a)溶媒を利用して緑茶粉末から葉緑素及び低分子量のポリフェノールを除去する段階と、b)上記a)段階の緑茶残渣から水溶性活性成分を熱水抽出する段階と、c)上記b)段階の熱水抽出物から
遊離タンパク質を除去するための限外濾過
、及びエタノール沈殿反応で緑茶多糖体を分離する段階とを含むことを特徴とする
化粧料用緑茶多糖体の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明では、
上記方法によって得られた化粧料用緑茶多糖体を有効成分として含有する皮膚美白用、保湿用及びしわ改善用の化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による製造方法によって
化粧料用緑茶多糖体を製造する場合、製造時間を短縮させることができ、大量生産が可能なので、経済性に優れている。また、本発明による化粧料組成物は、
上記で得られた緑茶多糖体を有効成分として含有することによって、皮膚刺激がなく、優れた皮膚美白、保湿及びしわ改善効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、緑茶多糖体の細胞毒性実験結果を示すグラフである。
【
図2】
図2は、緑茶多糖体のメラニン生成抑制効果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、緑茶多糖体のマトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1:Matrix metalloprotease-1)発現抑制効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、a)溶媒を利用して緑茶粉末から葉緑素及び低分子量のポリフェノールを除去する段階と、b)上記a)段階の緑茶残渣から水溶性活性成分を熱水抽出する段階と、c)上記b)段階の熱水抽出物から
遊離タンパク質を除去するための限外濾過
、及びエタノール沈殿で緑茶多糖体を分離する段階とを含む
化粧料用緑茶多糖体の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、
上記方法によって得られた緑茶多糖体を有効成分として含有する皮膚美白用、保湿用及びしわ改善用の化粧料組成物を提供する。
【0016】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の緑茶多糖体は、緑茶(camellia sinensis)から由来する植物分類学上ツバキ科(Theaceae)、ツバキ属(Camellia)に属する常緑性低木(evergreen shrub)であって、免疫機能、抗放射性、抗血液凝固、抗癌、抗−HIV及び血糖降下の作用などが報告されている。また、緑茶多糖体は、細胞毒性がないため、皮膚刺激を誘導しないだけでなく、メラニンの生成及びマトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1:Matrix metalloprotease-1)発現を抑制し、皮膚保湿力を増加させるので、皮膚美白、保湿及びしわ改善に優れた効果を示す。
【0017】
以下、緑茶多糖体を製造する方法を各段階別に具体的に説明する。
a)溶媒を利用して緑茶粉末から葉緑素及び低分子量のポリフェノールを除去する段階:
緑茶粉末から葉緑素及び低分子量のポリフェノールを除去するために、溶媒抽出方法を使用する。抽出溶媒として、ヘキサン、エタノール及びメタノールよりなる群から選択された1種以上を使用することが好ましく、化粧料への適用時に、残存溶媒に起因する毒性問題を防止するために、エタノールを使用することがさらに好ましい。
【0018】
緑茶粉末に上記溶媒を入れ、常温で充分に撹拌した後、遠心分離により葉緑素及び低分子量のポリフェノールが溶解されている溶媒を除去する。得られた緑茶残渣を乾燥すれば、葉緑素及び低分子量のポリフェノールが含有されていない緑茶残渣を得ることができる。
【0019】
b)上記a)段階の緑茶残渣から水溶性活性成分を熱水抽出する段階:
上記で製造された緑茶残渣から水溶性活性成分を抽出するために熱水抽出を行う。熱水抽出は、30〜40℃の温度で行うことが好ましい。これは、40℃超過の場合は、高温に起因して熱変性が発生することがあり、30℃未満の場合は、多糖体が充分に抽出されないからである。また、熱水抽出時間は、6〜8時間が好ましい。これは、8時間超過の場合は、微生物による汚染が発生することがあり、6時間未満の場合は、多糖体が充分に抽出されないからである。熱水抽出により得られた抽出液は、濾過機器を利用して濾過した後、減圧濃縮される。
【0020】
c)上記b)段階の熱水抽出物から
遊離タンパク質を除去するための限外濾過
、及びエタノール沈殿反応で緑茶多糖体を分離する段階:
上記b)段階の熱水抽出物から多糖体のみを分離するために、限外濾過及びエタノール沈殿反応を行う。多糖体は、多糖類(polysaccharide)部分が約60〜65%存在し、タンパク質(protein)部分が約8〜9%存在する。この2つの部分がアミノ酸−糖(amino acid-sugar)結合によって連結されていて、残りは、遊離タンパク質として存在する。したがって、多糖体は、10万乃至30万ダルトン(dalton)の分子量を有していて、これは、遊離タンパク質の分子量より極めて大きい値である。このような分子量の差異を利用して限外濾過を行うことによって、緑茶多糖体を分離することができる。また、限外濾過は、連続式工程として低分子量物質の分離及び濾過液の濃縮を同時に進行することができると共に、工程が常温で行われるので、熱変性の問題が発生しないという長所を有する。
【0021】
次に、上記限外濾過濃縮液にエタノールを徐々に加えてエタノール沈殿反応を進行する。この時、エタノールの添加速度は、100〜200ml/minが好ましく、200ml/minを超過する場合は、最終生成粒子のサイズが極めて大きくなるか、又はかたまりになる。エタノール沈殿反応が完了すれば、エタノールを除去した後、40〜50℃で真空乾燥すれば、パウダー形状の緑茶多糖体を得ることができる。
【0022】
本発明による緑茶多糖体は、剤形安定性だけでなく、熱安定性、pHの影響に対する安定性、及び人体安定性も優れている。また、本発明によれば、比較的高い収率で緑茶多糖体を製造することが可能である。
【0023】
また、本発明による緑茶多糖体は、ポリフェノールなど変色の原因となる成分を含有していないので、従来、変色などの問題に起因して使用量が制限されて来た緑茶抽出物とは異なって、その使用量が制限されないので、剤形内で多量に使用することができる。したがって、上記緑茶多糖体を含有する化粧料組成物は、既存の緑茶抽出物を含有する化粧料組成物とは異なって、他の有効成分をさらに追加しなくても、皮膚美白、保湿及びしわ改善效能を極大化させることができる。
【0024】
したがって、本発明による化粧料組成物は、緑茶多糖体を有効成分として含有し、優れた皮膚美白、保湿及びしわ改善効果を示す。本発明による化粧料組成物は、その剤形は特に限定されないが、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、ゲル、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーオイルまたはボディーエッセンスの形態に剤形化されることができる。各剤形の化粧料組成物は、上記緑茶多糖体以外の他の成分を剤形や使用目的などによって、当業者が何らの困難なく適宜選定して配合することができる。
【0025】
また、本発明による化粧料組成物は、上記緑茶多糖体を組成物の全体重量に対して0.1〜20重量%で含有することが好ましい。上記緑茶多糖体の含量が20重量%を超過する場合には、相分離などの剤形安定性に影響を及ぼすことがあり、0.1重量%未満の場合には、剤形内の皮膚効能を期待しにくいからである。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の内容を実施例及び試験例によりさらに具体的に説明する。これら実施例は、本発明の内容を理解するために提示されるものに過ぎず、本発明の権利範囲がこれら実施例に限定されるものではなく、当業界において通常的に周知された変形、置換及び挿入などを行うことができ、これも本発明の範囲に含まれる。
【0027】
[実施例1]緑茶多糖体の製造
乾燥した緑茶葉を粉砕し、篩掛け及び分級処理して製造された緑茶粉末(d50=100〜1000μm)10kgを、95%(v/v)エタノール150Lに分散し、常温で撹拌した。得られた混合液を遠心分離し、葉緑素及び低分子量のポリフェノールが除去された緑茶残渣を回収した。回収した残渣は、上記溶媒抽出工程を1回繰り返した後、乾燥した。
【0028】
上記溶媒抽出工程で葉緑素及び低分子量ポリフェノールを除去した緑茶粉末に水125Lを添加し、35℃で7時間撹拌して熱水抽出を進行した。得られた緑茶多糖体抽出液は、フィルタプレス機器を利用して濾過及び回収した後、初期体積の1/10となるように62℃で減圧濃縮した。
【0029】
次に、上記緑茶多糖体濃縮液を限外濾過(分子量CUT OFF:30,000ダルトン)して低分子量の遊離タンパク質を除去し、最終限外濾過濃縮液の5倍体積のエタノールを100ml/minの速度で徐々に加えてエタノール沈殿反応を進行した。沈殿した緑茶多糖体を45℃で真空乾燥し、パウダー状の緑茶多糖体250gを得た。
【0030】
[試験例1]細胞毒性実験
ヒト角質形成細胞株であるHaCaT細胞を96ウェルプレート(well plate)の各ウェルに1×10
4個ずつ播種し(seeding)、24時間培養した。各ウェルにリン酸塩緩衝食塩水(PBS:Phosphate Buffered Saline)100μLを入れて1回洗浄し、1、10、50及び100ppmの緑茶多糖体が含有された培地に交替し、48時間培養した。ウェル当たりWST−1溶液(Roche Diagnostic GmbH., Germany)を培地に1/10の濃度に希釈して処理した後、37℃で2時間培養し、450nmで吸光度を測定した。対照群(CTL)は、試料を溶解させるための溶媒としてジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)を使用した。各データ値は、対照群で補正し、その結果を
図1に示した。
【0031】
図1の結果から、本発明の緑茶多糖体は、対照群と類似の水準の細胞生存率を示しているので、使用された濃度範囲で細胞毒性がなく、皮膚刺激を誘導しないことが分かった。
【0032】
[試験例2]メラニンの生成抑制効果
緑茶酸性多糖体の細胞内でメラニン合成抑制効能を比較するために、メラニン生成抑制物質として知られたアルブチン(arbutin)を使用した。まず、Melanin A細胞を24ウェルプレートの各ウェルに3×10
4個ずつ播種し、翌日、各々のウェルを、10、50及び100ppmのアルブチンか、又は、1、10、50及び100ppmの緑茶多糖体で、3回ずつ繰り返して処理した。37℃で3日間培養した後、上記と同一の方法により、アルブチン又は緑茶多糖体でさらに処理した。3日間培養し、細胞をリン酸塩緩衝食塩水で洗浄した後、1N NaOH溶液で生成されたメラニンを溶解し、405nmで吸光度を測定した。対照群(CTL)は、試料を溶解させるための溶媒としてジメチルスルホキシドを使用した。各データ値は、対照群で補正し、その結果を
図2に示した。
【0033】
図2の結果から、本発明の緑茶多糖体は、濃度増加によってメラニン生成を抑制し、緑茶多糖体のIC
50が50ppmであることを確認し、これにより、本発明の緑茶多糖体がアルブチンと同様の水準でメラニン生成を抑制することを確認した。上記IC
50は、添加した試料によって吸光度が50%減少した時の試料濃度である。
【0034】
[試験例3]UVによるMMP−1の発現抑制効能
紫外線によって増加されるマトリックスMMP−1発現の抑制効果を確認するために、繊維芽細胞(p6)を12ウェルプレートの各ウェルに0.75×10
5個ずつ播種し、24時間飢餓状態(starvation)にした後、リン酸塩緩衝食塩水で洗浄し、UV(40mJ)を照射した。次に、10μMのレチノイン酸(Retinoic Acid;RA)(陽性対照群)、又は、1、10、及び50ppmの緑茶多糖体で48時間に2回ずつ処理した。培地中に遊離されたMMP−1の量は、キット(Amersham、RPN2610)を使用して測定した。各データ値は、対照群で補正し、その結果を
図3に示した。
【0035】
図3の結果から、本発明の緑茶多糖体は、濃度が増加するにつれてMMP−1の発現を抑制した。特に、50ppmの濃度では、紫外線を照射しない群と同様の水準でMMP−1の発現を抑制した。
【0036】
[剤形例1及び比較剤形例1]栄養化粧水の製造
下記表1に記載された組成によって通常の方法で剤形例1及び比較剤形例1の栄養化粧水を製造した(単位:重量%)。
【0037】
【表1】
【0038】
[試験例4]人体での皮膚保湿力増加
皮膚乾燥症を示す50〜60代の成人男女50名を2個のグループに分けて、剤形例1及び比較剤形例1で製造した栄養化粧水を毎日2回ずつ4週にわたって顔面に塗布するようにした。塗布開始前に、恒温、恒湿条件(24℃、相対湿度40%)でコルネオメーター(corneometer)を利用して皮膚水分量を測定して基本値にし、1週、2週、及び4週経過後並びに塗布中止後2週経過(全体6週経過)後の皮膚水分量を測定した。その結果を下記表2に示し、実験結果は、実験開始前に測定したコルネオメーター値を基準にして一定期間処理した後の皮膚水分量増加率を表示した数値である。
【0039】
【表2】
【0040】
上記表2の結果から、本発明の緑茶多糖体を含む剤形例1を使用した場合、緑茶多糖体を含有しない比較剤形例1を使用した場合より皮膚水分量が増加した。また、剤形例1を使用した場合、塗布を中止した後2週経過時(全体6週経過)にも、塗布してから1〜2週経過した時と同様の皮膚水分量を維持していて、剤形例1の塗布を中止しても、一定期間皮膚水分量が維持されることを確認することができた。