特許第5756788号(P5756788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成建材株式会社の特許一覧 ▶ ユニタイト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5756788-パイプ締結構造 図000002
  • 特許5756788-パイプ締結構造 図000003
  • 特許5756788-パイプ締結構造 図000004
  • 特許5756788-パイプ締結構造 図000005
  • 特許5756788-パイプ締結構造 図000006
  • 特許5756788-パイプ締結構造 図000007
  • 特許5756788-パイプ締結構造 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756788
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】パイプ締結構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/24 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   E02D5/24 103
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-230752(P2012-230752)
(22)【出願日】2012年10月18日
(65)【公開番号】特開2014-80825(P2014-80825A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2014年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592155832
【氏名又は名称】ユニタイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小橋 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】沼田 茂己
(72)【発明者】
【氏名】宮田 勝治
(72)【発明者】
【氏名】石崎 雅之
【審査官】 坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−205134(JP,A)
【文献】 特開2001−200535(JP,A)
【文献】 特開2007−077695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22− 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って並べられる2本のパイプ上において、互いに対向する各締結端部に取り付けられる環状の部材であって、上面に凹部と凹溝とが互いに離間して形成された第1の締結具と、
該第1の締結具の内側に配備されて、外周面の少なくとも一部が該第1の締結具の内周面に接するとともに、外周面と内周面を貫通するボルト貫通孔を設けた第2の締結具と、
両締結端部に取り付けられた前記第1の締結具が互いに突き合わさった状態で、前記凹溝どうしが合わさって形成される貫通穴に、前記第2の締結具の内側から前記ボルト貫通孔を通って挿入されるボルトと、
両締結端部に取り付けられた前記第1の締結具が互いに突き合わさった状態で、前記凹部どうしが合わさって形成される収納空間内に配置される係合体を備え、
該係合体は側面に少なくとも1つの平面を有し、前記凹部の内周面は該係合体の外周面に対応して平面を有するように形成されて、前記係合体の平面が前記凹部の内周面に接
前記凹部は前記第1の締結具の内外周面に跨って形成されて、前記第1の締結具の内外周面に開口を形成し
前記第1の締結具の内外周面に形成された開口は、前記第1の締結具の外周面の開口である外側開口と、前記第1の締結具の内周面の開口である内側開口であり
前記凹部の側面は前記外側開口から互いに広がるように内向きに延びた第1面と、前記内側開口から互いに広がるように外向きに延びて前記第1面に連なる第2面を備え
前記第1面は前記第2面よりも面積が大きく形成される、パイプ締結構造。
【請求項2】
前記凹部は前記第1の締結具の内外周面に跨って形成されて、前記第1の締結具の内外周面に開口を形成し、前記係合体の外周面は一部が前記第1の締結具の外周面の開口に臨出し、前記係合体の中心は前記第1の締結具の外周面と内周面の中間面よりも内側に位置する、請求項1に記載のパイプ締結構造。
【請求項3】
前記貫通穴を通った前記ボルトの先端部には、前記ボルトの頭部との間で、前記第2の締結具と両第1の締結具を締結するナットが螺合している、請求項1又は2に記載のパイプ締結構造。
【請求項4】
前記両第1の締結具は互いに突き合わさった状態で、内側に嵌合突起を形成し、前記第2の締結具は該嵌合突起が嵌まる嵌合空間を形成している、請求項1乃至3の何れかに記載のパイプ締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に建設現場或いは土木現場で地盤の強化等のために打ち込まれるパイプ締結体に用いられるパイプ締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場あるいは土木現場では、地盤の強化等のため、複数のパイプをその長手方向に沿って並べ、隣り合うパイプの端部どうしを締結して構成されたパイプ締結体を地盤に埋め込むことがある。このパイプ締結体を地盤に埋め込む際には、地盤へパイプ締結体をねじ込み、又はパイプ締結体を打ち込むが、この際にパイプどうしの締結箇所に、大きな捩り力とせん断力が加わる。この大きな捩り力とせん断力に耐久性のあるパイプ締結構造として、出願人は特許文献1に示すものを以前に開示している。
これは、上側パイプの下端面と下側パイプの上端面に、環状の第1の締結具を夫々取り付け、両締結具の内側に円弧状の第2の締結具を設ける。互いに突き合わさる第1の締結具の端面には、断面半円状の凹溝が第1の締結具の半径方向に沿って設けられ、両第1の締結具が突き合わさった状態で凹溝が合わさって貫通穴を形成する。第2の締結具の内側からボルトを、第2の締結具及び該貫通穴に通し、ボルトの先端部にナットを螺合する。ボルトの頭部とナットによって、第2の締結具と両第1の締結具を締結する。パイプどうしの締結箇所に、加わる捩り力とせん断力は、ボルトによって受けられる。
互いに突き合わさる第1の締結具の端面にはまた、平面視で略円形の凹部が形成されている。凹部は第1の締結具の外周面に開口している。両第1の締結具が突き合わさった状態で凹部が合わさって収納空間が形成される。該収納空間内に円柱状の係合体が配置され、パイプどうしの締結箇所に、加わる捩り力とせん断力は、係合体によっても受けられる。即ち、パイプどうしの締結箇所に、加わる捩り力とせん断力は、ボルトと係合体にて受けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−77695号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成では、係合体が円柱状で、凹部が平面視で円形であるが、係合体を凹部に嵌めるためには、凹部の内周面と係合体の外周面との間に、隙間を設ける必要がある。従って、この隙間故に、実際には係合体は凹部の内周面とは線接触又は点接触している。これでは、係合体はパイプどうしの締結箇所に加わる捩り力とせん断力を十分に受けることができない。
また、係合体が捩り力とせん断力を受けた結果、係合体にパイプの半径方向に沿った外向きの力が加わることがある。この場合、係合体が第1の締結具の外周面の開口から外向きに脱落する可能性もある。これでは、係合体が地盤の中に埋まってしまい、探すことが困難となる。
本発明の目的は、係合体にてパイプどうしの締結箇所に、加わる捩り力とせん断力を十分に受けることにある。また、係合体が第1の締結具の外周面の開口から外向きに脱落する可能性を防ぐことも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
パイプ締結構造は、長手方向に沿って並べられる2本のパイプ上において、互いに対向する各締結端部に取り付けられる環状の部材であって、上面に凹部と凹溝とが互いに離間して形成された第1の締結具と、
該第1の締結具の内側に配備されて、外周面の少なくとも一部が該第1の締結具の内周面に接するとともに、外周面と内周面を貫通するボルト貫通孔を設けた第2の締結具と、
両締結端部に取り付けられた前記第1の締結具が互いに突き合わさった状態で、前記凹溝どうしが合わさって形成される貫通穴に、前記第2の締結具の内側から前記ボルト貫通孔を通って挿入されるボルトと、
両締結端部に取り付けられた前記第1の締結具が互いに突き合わさった状態で、前記凹部どうしが合わさって形成される収納空間内に配置される係合体を備え、
該係合体は側面に少なくとも1つの平面を有し、前記凹部の内周面は該係合体の外周面に対応して平面を有するように形成されて、前記係合体の平面が前記凹部の内周面に接する。
また、前記凹部は前記第1の締結具の内外周面に跨って形成されて、前記第1の締結具の内外周面に開口を形成し、前記係合体の外周面は一部が前記第1の締結具の外周面の開口に臨出し、前記係合体の中心は前記第1の締結具の外周面と内周面の中間面よりも内側に位置する。
【発明の効果】
【0006】
1.係合体は外周面が少なくとも1つの平面を有するように形成され、凹部の内周面は該係合体の外周面に対応して平面を有するように形成されているから、係合体は凹部の内周面に面接触する。これにより、係合体にてパイプどうしの締結箇所に、加わる捩り力とせん断力を十分に受けることができる。
2.係合体の外周面は、第1の締結具の外周面の開口に臨出しているが、係合体の中心を第1の締結具の外周面と外周面の中間面よりも内側に位置させることにより、該開口を小さくすることができる。これにより、係合体が開口から第1の締結具の外側に脱落する可能性を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】パイプ締結構造を示す側面図である。
図2図1をI―I線を含む面にて破断し矢視した断面図である。
図3】第1の締結具の斜視図である。
図4】第2の締結具の斜視図である。
図5図2をII―II線を含む面にて破断し矢視した断面図である。
図6】第1の締結具どうしの締結手順の説明図である。
図7】第1の締結具に嵌まった係合体の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態を図を用いて、詳述する。
図1は、パイプ締結構造を示す側面図、図2は、図1をI―I線を含む面にて破断し矢視した断面図である。本実施形態では、パイプ締結構造は、上下に隣り合うパイプを接続する構造として説明するが、同様の構造は横方向にて隣り合うパイプを接続するにも有効である。
図1に示すように、上側パイプAの締結側端部、即ち下端部には第1の締結具2が溶接部10にて固着されている。該上側パイプA及び第1の締結具2はともに金属製であって、予め工場等にて上側パイプAと第1の締結具2との間に溶接部10が形成される。また、下側パイプBの締結側端部、即ち上端部に、物理的に同じ構成の第1の締結具2が溶接部10にて固着されている。下側パイプBも上側パイプAと同じ金属製である。
【0009】
図2に示すように、第1の締結具2は環状であって、第1の締結具2の内側には、円弧状の複数の第2の締結具3が配備される。第1の締結具2と第2の締結具3とは、第2の締結具3の内側から挿入されるボルト4の先端部にナット40を螺合させることによって締結される。尚、後記の如く、第2の締結具3は第1の締結具2の周方向に沿って、等間隔に4つ配備されるが、図2では図示の便宜上、2つだけ図示する。
図3は、第1の締結具2の斜視図である。第1の締結具2は上部に位置する第1環20と、該第1環20よりも下側に位置して内径が大きな第2環21を一体に形成している。即ち、第1環20は第2環21に比して内向きに突出した環状の突部26を有する。
【0010】
第1の締結具2の第1環20は、上面に凹部6と、第1の締結具2の外周面から内周面に向かって半径方向に延びた凹溝23とを互いに離間して形成している。凹部6は第1の締結具2の中心点C(図2参照)に対して対称となるように2つ形成され、凹溝23は該中心点Cを中心として90°ずつ離間するように4つ形成されている。尚、凹部6と凹溝23の数はこれに限定されない。
【0011】
凹部6は、 第1の締結具2の内外周面に跨って形成されて、該内外周面に開口を形成している。即ち、第1の締結具2の外周面には外側開口60が、内周面には内側開口61が夫々開設されている。凹部6には多角柱状、図3では六角柱状の係合体5が嵌まり、凹部6は係合体5の外周面に対応して、側面が多面体に形成される。具体的には凹部6の側面は、外側開口60から互いに内向きに広がるように形成された第1面62と、内側開口61から互いに外向きに広がるように形成されて第1面62に連なる第2面63とを一体に備える。
【0012】
図4は、第2の締結具3の斜視図である。第2の締結具3は、縦向きの壁片30と、該壁片30の上下端部から第1の締結具2に向けて水平に延びた一対の水平片31とを一体に形成している。両水平片31の間には、嵌合空間32が形成される。
壁片30にはボルト4が貫通するボルト貫通孔33が開設され、該壁片30の内周面には該ボルト4の頭部42が接する。ボルト4の先端部には、座金41が嵌まるとともに、前記の如くナット40が螺合する。
【0013】
図5は、図2をII―II線を含む面にて破断し矢視した断面図である。両第1の締結具2は、互いの凹部6及び凹溝23が対向するように配備されて、両第1の締結具2が突き合わさった状態で、2つの凹溝23が合わさって、前記のボルト4が通る貫通穴22を形成する。また、突部26どうしが合わさって、嵌合突起25を構成する。即ち、嵌合突起25の内側に貫通穴22が位置する。嵌合突起25は周面が先端に向かって縮径するようにテーパ面を形成している。該嵌合突起25の外周面が、第2の締結具3の嵌合空間32に嵌まる。即ち、第2の締結具3は凹溝23の位置に応じて設けられ、図2では第2の締結具3は2つしか示されていないが、本来は凹溝23の数に応じて、4つ設けられる。また、嵌合突起25の基端部の上下寸法を嵌合空間32の上下幅よりも少し大きく形成すれば、楔のように嵌合突起25が嵌合空間32に緊密に嵌まることができる。
【0014】
一方、図1に示すように、両第1の締結具2が突き合わさった状態で、2つの凹部6が合わさって、前記の係合体5を収納する収納空間64を形成する。外側開口60からは係合体5の外周面の一部が見えるから、係合体5が収納空間64に収納されているかを容易に確認することができる。
第2の締結具3によって、両第1の締結具2が突き合わさって締結される。これによって、上側パイプAと下側パイプBが締結されて、パイプ締結体11が構成される。
従来と同様に、パイプ締結体11を地盤に埋め込む際には、地盤へパイプ締結体11をねじ込み、又はパイプ締結体11を打ち込む。この際に第1の締結具2どうしの締結箇所に、大きな捩り力とせん断力が加わる。この捩り力とせん断力は、ボルト4と係合体5にて受けられる。
【0015】
(第1の締結具どうしの締結手順)
上述のように構成された第1の締結具2と第2の締結具3は、締結しようとするパイプA、Bの端面に溶接により予め工場等で固着される。両パイプA、Bの第1の締結具2は以下の如く、固着することができる。
図6に示すように、まず、下側パイプBの端面に固着された第1の締結具2の凹部6に係合体5を挿入する。次に、ボルト4を貫通させた第2の締結具3を用意し、ボルト4に座金41を嵌め、該ボルト4の先端部にナット40を螺合させる。この状態で、ボルト4を凹溝23に載置し、ナット40を内向きに押して、座金41を第1の締結具2の外周面に当接させる。第2の締結具3は第1の締結具2の内周面から離間し、ナット40の回転により外向きに移動可能となる。
【0016】
次に、下側パイプB上の第1の締結具2に、上側パイプAの端面に固着された第1の締結具2を凹部6どうし、及び凹溝23どうしが合わさるように重ねる。凹部6どうしが合わさって係合体5が収納される収納空間64が形成され、凹溝23どうしが合わさってボルト4が貫通するボルト貫通孔33が形成される。この状態でナット40を締め付けると、第2の締結具3が第1の締結具2に向かって移動する。第2の締結具3の嵌合空間32が第1の締結具2の嵌合突起25に嵌まり、第1の締結具2どうしが固定される。更に、ナット40を締め付けると、ボルト4の頭部42とナット40及び座金41とによって、両第1の締結具2と第2の締結具3とが強固に締結され、パイプ締結体11が完成する。尚、ボルト4を凹溝23に載置した後に、係合体5を凹部6に挿入してもよい。
【0017】
図7は、第1の締結具2に嵌まった係合体5の拡大平面図である。図7にて、第1の締結具2の外周面と内周面の中間に位置する仮想面を中間面Tとし、係合体5の中心をC1とする。図7にて、係合体5の中心C1は、中間面Tよりも内側に位置している。これにより、第1の締結具2の外側開口60の面積を小さくし、パイプ締結体11の地盤への埋め込み時に、パイプどうしの締結箇所に捩り力やせん断力が加わっても、係合体5が第1の締結具2から外向きに脱落することを防いでいる。
また、係合体5は外周面が六角形に形成され、凹部6の内周面は該係合体5の外周面に対応して第1面62と第2面63を連ねた多面体に形成されているから、係合体5は凹部6の第1面62と第2面63に面接触する。これにより、係合体5にてパイプどうしの締結箇所に、加わる捩り力とせん断力を十分に受けることができる。
【0018】
更に、係合体5の中心C1は、中間面Tよりも内側に位置しているから、第1面62と第2面63の境界線も中間面Tよりも内側に位置する。従って、斜め内向きに形成された第1面62は、斜め外向きに形成された第2面63よりも面積が大きい。このため、図7に示すように、第1の締結具2に捩り力やせん断力が加わり、同じ応力が第1面62及び第2面63に加わっても、第1面62により係合体5に加えられる力F1は、第2面63により係合体5に加えられる力F2よりも大きい。従って、係合体5は内向きに付勢される。これによっても、係合体5が第1の締結具2から外向きに脱落する可能性を防いでいる。
【0019】
上記記載では係合体5は六角柱であるとしたが、これに限らず側面に少なくとも1つの平面を設けていればよい。これに応じて、凹部6も係合体5の平面に接する平面を有すればよい。
また、第1の締結具2及び第2の締結具3は、鍛造により製造されたものを使用しているが、鋳造品であっても機械加工で製造されたものであってもよい。更に係合体5は機械的強度が大きい炭素鋼から製造されることが多いが、工具鋼やステンレス鋼、その他の合金から製造されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係るパイプ締結構造は、建設現場或いは土木現場で地盤の強化等のために打ち込まれるパイプ締結体に用いると有効である。
【符号の説明】
【0021】
2 第1の締結具
3 第2の締結具
4 ボルト
5 係合体
6 凹部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7