(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0047】
図1は、実施形態に係るX線撮影装置1の概略斜視図である。
図2は、セファロスタット43が装着されたX線撮影装置1の部分正面図である。
図3は、X線撮影装置1の構成を示すブロック図である。
【0048】
X線撮影装置1は、撮影領域CAを設定するともに、表示手段として機能する操作表示部61,62と、該操作表示部61,62によって設定された撮影領域CAに対してX線撮影を実行して、X線の投影データ(フレームデータ)を収集する本体部2と、本体部2において収集された投影データを処理して、各種画像を生成する画像処理装置8とに大別される。
【0049】
本体部2の本体制御部60、画像処理装置8の制御部と画像処理部801b,位置設定部801c(
図3参照)は、X線撮影を含むX線撮影のプログラムIMP(図示省略)に従ってX線撮影を実行する。
【0050】
本体部2はX線撮影の現場において、中空の縦長直方体状の防X線室70に収容することが望ましく、本体部2と、防X線室70の壁面に装着された操作表示部61と、防X線室70の外部に配置された画像処理装置8とは、接続ケーブル83によって相互に接続されている。
【0051】
本体部2は、被写体M1に向けてX線の束で構成されるX線ビームBX(後述するX線コーンビームBX1やX線細隙ビーム等)を出射するX線発生部10と、X線発生部10で出射されたあと、被写体M1を透過したX線ビームを検出するX線検出部20とを備えている。また本体部2は、X線発生部10とX線検出部20とをそれぞれ支持する支持体である旋回アーム30と、鉛直方向に延びる支柱50と、旋回アーム30を吊り下げるとともに、支柱50に対して鉛直方向に昇降移動可能な昇降部40と、本体制御部60とをさらに備えている。X線発生部10、X線検出部20、および、X線発生部10のX線検出部20側に配置されているX線ビーム形成機構13により撮像機構3が構成されている。
【0052】
X線発生部10およびX線検出部20は、旋回アーム30の旋回部30cの両端部にそれぞれ吊り下げ固定されており、互いに対向するように支持されている。旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を介して、昇降部40に吊り下げ固定されている。
【0053】
旋回アーム30は、正面視略逆U字状であり、旋回部30cの上端部に備えた旋回軸31を旋回中心Scとして旋回する。なお、本実施形態において、昇降部40は昇降部40の上部から正面視で手前に向けて伸長する上部フレーム41を備え、旋回中心Scは上部フレーム41に対して固定された位置とされている。
【0054】
なお、本実施形態に係る旋回アーム30は、U字状に形成されているが、その他の形状とされてもよい。例えば、旋回アームの代わりに、被写体M1の上方に固定された円柱状部材の外周部に、ボール軸受け等を介して回転可能に嵌め込まれた環状部材を採用することも考えられる。この場合、該環状部材にX線発生部10とX線検出部20とが対向するように取り付けられる。そして、環状部材が円柱状部材の外周部を回転移動することにより、X線発生部10およびX線検出部20を、被写体M1の頭部M10を挟んだ状態で、該頭部M10周りに回転させることができる。
【0055】
以下においては、旋回軸31の軸方向と平行な方向(ここでは、鉛直方向、すなわち縦方向)を「Z軸方向」とし、このZ軸に交差する方向を「X軸方向」とし、さらにX軸方向およびZ軸方向に交差する方向を「Y軸方向」とする。なお、X軸およびY軸方向は任意に定め得るが、ここでは、被写体M1である被検者がX線撮影装置1において位置決めされて支柱50に正対したときの、被検者の左右の方向をX軸方向とし、被検者の前後の方向をY軸方向と定義する。X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は、本実施形態では互いに直交するものとする。また、以下において、Z戦方向を鉛直方向、X軸方向とY軸方向の2次元方向で規定される平面上の方向を水平方向と呼ぶこともある。
【0056】
これに対して、旋回する旋回アーム30上の三次元座標については、X線発生部10とX線検出部20とが対向する方向を「y軸方向」とし、y軸方向に直交する水平方向を「x軸方向」とし、これらx軸およびy軸方向に直交する鉛直方向を「z軸方向」とする。本実施形態および以降の各実施形態では、z軸方向とZ軸方向は平行となっている。また、本実施形態に係る旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を回転軸(旋回軸)として旋回する。したがって、xyz直交座標系は、XYZ直交座標系に対してZ軸(=z軸)周りに回転することとなる。
【0057】
また、本実施形態においては、
図1に示したように、被検者が支柱50に正対したときの右手方向を(+X)方向、背面方向を(+Y)方向、鉛直方向上向きを(+Z)方向としている。また、X線発生部10、X線検出部20を上から平面視したときにX線発生部10からX線検出部20へ向かう方向を(+y)方向、(−y)側から(+y)方向に向いたときの左手方向を(+x)方向、鉛直方向上向きを(+z)方向としている。
【0058】
昇降部40は、上部フレーム41(第一支持体保持部)と下部フレーム42とで構成されており、鉛直方向に沿って立設された支柱50に係合している。支持体の保持部として機能する上部フレーム41には、旋回軸31が取り付けられている。昇降部40が支柱50に沿って鉛直方向に移動することによって、旋回アーム30が上下に移動する。
【0059】
なお、旋回アーム30を旋回させる構造としては、上部フレーム41に対しては旋回不能に固定された旋回軸31に対し、旋回アーム30を旋回可能に設け、旋回アーム30を旋回軸31に対して旋回駆動するようにしてもよい。また、上部フレーム41に対して旋回可能に設けた旋回軸31に旋回アーム30を旋回不能に固定し、旋回軸31を旋回駆動することで旋回アーム30を旋回するようにしてもよい。
【0060】
前者の場合、例えば、不図示のベルトやプーリ等の動力伝達機構により、旋回用モータ(支持体旋回駆動部)の回転力が、旋回アーム30に作用させることができる。例えば、旋回用モータを旋回アーム30内部に固定し、旋回用モータの回転軸に固定したプーリと旋回軸31の双方に環状のベルトをかけ渡し、旋回用モータの回転力が旋回アーム30に作用するよう構成する。この場合、旋回軸31と旋回アーム30との間にはベアリング等の軸受部材を介在させればよい。
【0061】
また、上部フレーム41に、旋回軸31を中心として、旋回アーム30を旋回させる旋回用モータを設け、不図示のベルトやプーリ、回転軸等からなり、旋回軸31中を通る伝達機構により、旋回用モータによる回転力が旋回アーム30に伝達されることで、旋回アーム30が旋回するようにしてもよい。
【0062】
無論、後者のように、上部フレーム41に対して旋回可能に設けた旋回軸31に旋回アーム30を旋回不能に固定し、旋回軸31を旋回駆動することで旋回アーム30を旋回する構造を採用してもよく、この場合、旋回用モータを上部フレーム41内部に固定し、不図示のローラ等の伝達機構により、旋回用モータの回転力が旋回軸31の回転に作用するようにすることができる。この場合、旋回軸31と上部フレーム41との間にはベアリング等の軸受部材を介在させればよい。
【0063】
また、本実施形態では、旋回軸31は、鉛直方向に沿って延びるように構成されている。しかしながら、旋回軸31を、鉛直方向に対して任意の角度で傾けて配置することも考えられる。
【0064】
旋回軸31と旋回アーム30の間には、不図示のベアリングが介在している。このため、旋回アーム30は、旋回軸31に対してスムーズに回転することができる。なお、旋回軸31、ベアリング、ベルトやプーリ、回転軸等からなる伝達機構および旋回用モータは、旋回アーム30を旋回させる旋回部201(
図3参照)の一例である。つまり、旋回部201は、旋回アーム30(支持体)を被写体M1の頭部M10に対して、旋回軸31周りに相対的に旋回させる。これにより、旋回部201は、X線発生器10aおよびX線検出器21を被写体M1の頭部M10周りに相対的に旋回させる。
【0065】
本実施形態では、定位置に回転しないように固定された旋回軸31に対して旋回アーム30が旋回する。しかしながら、前述のとおり、旋回アーム30に固定された旋回軸31を上部フレーム41に対して回転させることで、旋回アーム30を旋回させることも考えられる。この場合、上部フレーム41側に、旋回軸31を回転可能に支持するベアリングが形成される。
【0066】
また、本体部2は、旋回アーム30を被写体M1の頭部M10に対して旋回軸に垂直な方向(X方向またはY方向)に相対的に移動させる移動部202を備えている。移動部202は、上部フレーム41側または旋回アーム30に固定される不図示のXYテーブルで構成することができる。このようなXYテーブルは、X軸方向に移動するテーブル部材、Y軸方向に移動するテーブル部材、および、これらのテーブル部材をX軸方向またはY軸方向に移動させるためのモータ類等で構成される。XYテーブルが上部フレーム41に固定される場合は、旋回軸31の上端部にXYテーブルが固定される。この場合、XYテーブルが駆動されることにより、旋回軸31とともに旋回アーム30が旋回軸31に垂直な方向へ移動する。また、XYテーブルが旋回アーム30側に固定される場合は、旋回軸31の下端部にXYテーブルが固定される。この場合、旋回アーム30のみが、旋回軸31に垂直な方向に移動することとなる。
【0067】
なお、上述のXYテーブルを用いて、機械的な旋回軸である旋回軸31とは別の箇所にX線発生器10aとX線検出器21との旋回中心を定めることも可能である。
【0068】
例えばCT撮影においては、Z方向からX線発生器10aとX線検出器21と撮影領域CAを見下ろした状態で、X線発生器10aとX線検出器21の中心を結ぶ線上に撮影領域CAの中心が設定される。そして、旋回軸31の軸中心がX線発生器10aとX線検出器21の中心を結ぶ線上の撮影領域CAとは別の箇所に設定される。このような幾何学的条件下において、旋回アーム30を旋回軸31周りに旋回させるとともに、旋回アーム30の旋回角度と同じ角度分、XYテーブルが、旋回軸31を撮影領域CAの中心周りに回動させる。これにより、線発生器10aとX線検出器21が撮影領域CAの中心を旋回中心にして旋回しつつ撮影領域CAにX線コーンビームを照射してCT撮影する構成も可能である。
【0069】
このような撮影を実現する構成は、本願出願人の出願にかかる特許文献2(特開2007−29168号公報)または特許文献3(国際公開第2009/063974号)に開示されており、本願においても適宜摘要可能である。
【0070】
このように、本実施形態では、旋回部201および移動部202により構成される移動機構200により、旋回アーム30を被写体M1の頭部M10に対して相対的に移動させることができる。ただし、移動機構はこのような構成に限定されるものではない。例えば、移動機構が、被写体M1自体を、所定の回転軸周りに回転させたり、あるいは、その回転軸に垂直な方向に移動させたりするように、本体部2を構成してもよい。
【0071】
下部フレーム42には、人体である被写体M1の頭部M10を左右の両側から固定するイヤーロッドや、顎を固定するチンレスト等で構成される、被写体保持部421が設けられている。
【0072】
旋回アーム30は、被写体M1の身長に合わせて昇降部40が昇降することにより、適当な位置に配置される。そして、その状態で被写体M1が被写体保持部421に固定される。なお、被写体保持部421は、
図1に示される例では、被写体M1の体軸MX1が旋回軸31の軸方向とほぼ同じ方向となるように被写体M1を保持する。なお、本願でいう「体軸」とは、人体をその正面から見て、該人体をおおむね左右対称と考えたときに設定される対称軸をいう。
【0073】
昇降部40および移動機構200は、本体制御部60の支持体駆動制御部602(
図3参照)により、その動作が制御される。
【0074】
本体制御部60は、本体部2の各構成の動作を制御する制御部であり、例えば、X線規制制御部および駆動制御部として機能する。本体制御部60は、
図1に示されるように、X線検出部20の内部に配置されている。
【0075】
また、本体制御部60の外側、すなわちX線検出部20の+y側の面には、各種命令を入カするためのボタン類、または、各種情報を表示するタッチパネルで構成された操作表示部62が取り付けられている。
【0076】
本体部2を収容する防X線室70の壁の外側には、本体制御部60に接続され、各種命令を入力操作するためのボタン等や各種情報を表示するタッチパネルで構成された操作表示部61が取り付けられている。
【0077】
なお、操作者(例えば、術者)は操作表示部62を介して本体部2を操作するようにしてもよいし、操作表示部61を介して本体部2を操作するようにしてもよい。操作表示部62と操作表示部61とで操作内容や表示内容が、異なっていてもよい。あるいは、操作表示部62と操作表示部61とで、操作内容や表示内容の一部あるいは全部が、共通するようにしてもよい。
【0078】
また、防X線室70が省略される等の場合は、操作表示部61が省絡されてもよい。また、操作表示部62と操作表示部61のどちらか一方を省略することもできる。以下においては、操作表示部61による表示や操作について説明するが、操作表示部62による表示や操作に置き換えてもよい。
【0079】
操作表示部61は、生体器官等の撮影領域の位置等を指定すること等にも用いられる。また、X線撮影には各種のモードがあるが、操作表示部61の操作によって、モードの選択ができるように構成してもよい。
【0080】
画像処理装置8は、画像処理本体部80と、例えば液晶モニタ等のディスプレイ装置で構成される表示部81、および、キーボードやマウス等で構成される操作部82を備えている。操作者(術者等)は、操作部82を介して画像処理装置8に対して各種指令を入力することができる。なお、表示部81は、タッチパネルで構成されていてもよく、この場合は、表示部81が操作部82の機能の一部または全部を備えていてもよい。
【0081】
画像処理本体部80は、例えばコンビュータやワークステーション等で構成されている。画像処理本体部80は、通信ケーブルである接続ケーブル83を介して、本体部2との問で各種データを送受信する。ただし、本体部2と画像処理本体部80との間で、無線通信によるデータ通信が行われてもよい。
【0082】
画像処理装置8は、例えば、本体部2で取得された投影データを加工して、ボクセルで表現される三次元データ(ボリュームデータ)を再構成する。例えば、この三次元データに特定の裁断面を設定し、その特定の裁断面における断層画像が再構成される。
【0083】
なお、X線撮影装置1は、X線撮影によりフレームデータのみを収集する装置として利用することも想定される。このような場面では、画像処理装置8を省略することも考えられる。
【0084】
図2に示されるように、X線撮影装置1にセファロスタット43を装着してもよい。セファロスタット43は、例えば、昇降部40の途中から水平方向に延びるアーム501に取り付けられる。セファロスタット43には、頭部M10を定位置に固定するための固定具431や、セファロ撮影用のX線検出器432が備えられる。なお、セファロスタット43は、例えば、特許文献4(特開2003−245277号公報)に開示されているセファロスタット、または、これに類するもの採用することができる。
【0085】
<照射方向変更部>
図4は、X線ビーム形成機構13(X線規制部)の概略斜視図である。
図5は、照射範囲が規制されたX線コーンビームBX1を照射しているX線発生部10の概略斜視図である。
図6および
図7は、縦方向遮蔽板14および横方向遮蔽板15の位置調整についての説明図である。さらに
図8および
図9は、2枚のL型遮蔽板18,18の位置調整についての説明図である。
【0086】
旋回アーム30において、X線検出部20に対向配置されたX線発生部10は、ハウジング11に収容されたX線管を含むX線発生器10aを備えている(
図3参照)。なお、ハウジング11の前面には、X線管で発生したX線の透過を許容する出射口12が設けられている。そして、出射口12の前方(
図4における手前側であり、X線発生部10に対してy軸方向)に、X線規制部として機能するX線ビーム形成機構13が配置されている。
【0087】
X線ビーム形成機構13は、X線の照射方向を、縦方向(z軸方向)に移動して遮蔽する縦方向遮蔽板14と、横方向(x軸方向)に移動して遮蔽する横方向遮蔽板15と、縦方向遮蔽板14および横方向遮蔽板15をそれぞれ移動させる遮蔽板移動機構16とで構成されている。遮蔽板移動機構16は、
図3に示されるX線規制部駆動部の一例である。X線ビーム形成機構13(具体的には、遮蔽板移動機構16)の駆動制御は、本体制御部60のX線規制部駆動制御部605により行われる。縦方向遮蔽板14と横方向遮蔽板15は、X線発生器10aから発生したX線の遮蔽量を制限可能に規制するために用いられる、X線遮蔽部材の例である。
【0088】
縦方向遮蔽板14は、出射口12の正面視上下(+z側および−z側)のそれぞれに配置された、横長板状の上側縦方向遮蔽板14aおよび下側縦方向遮蔽板14bで構成されている。また、横方向遮蔽板15は、出射口12の正面視左右(−x側および+x側)のそれぞれに配置された、縦長板状の左側横方向遮蔽板15aおよび右側横方向遮蔽板15bで構成されている。なお、
図4に示される例では、横方向遮蔽板15が縦方向遮蔽板14のハウジング11側(−y側)に配置されている。しかしながら、縦方向遮蔽板14を横方向遮蔽板15のハウジング11側に配置されていてもよい。
【0089】
遮蔽板移動機構16は、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bをそれぞれ縦方向に移動させる一対の遮蔽板縦方向移動機構16aと、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bをそれぞれ横方向に移動させる一対の遮蔽板横方向移動機構16bとで構成されている。
【0090】
遮蔽板縦方向移動機構16aは、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bのそれぞれに取り付けられているナット部材141と、ナット部材141が螺合するとともに縦方向に延びる縦方向ネジシャフト161aと、ネジシャフト161aを正・逆回転させる位置調整モータ162a(162)と、を備えている。位置調整モータ162aの駆動によりネジシャフト161aが正回転または逆回転することで、ナット部材141が縦方向に沿って上下に移動する。これにより、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bは、独立して、縦方向に移動する。本体制御部60(具体的には、X線規制部駆動制御部605)の制御に基づき、遮蔽板縦方向移動機構16aは、X線発生器10aから出射されたX線ビームの縦方向に関する遮蔽量を、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bにより調整する。遮蔽板縦方向移動機構16aは、X線ビームの縦方向、すなわち旋回軸31の軸方向に関する広がり(照射範囲)を調整することで、照射方向(照射範囲の中心線が延びる方向)を制御する、第1昇降機構の一例である。
【0091】
なお、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bのそれぞれには、規制筒状体142が取り付けられている。規制筒状体142には、縦方向に沿って貫通する貫通孔が形成されている。また、規制筒状体142には、縦方向に延びる規制シャフト143が嵌挿されており、規制筒状体142の縦方向の移動が規制シャフト143によって規制されている。このため、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bは、傾くことなく縦方向に移動する。
【0092】
遮蔽板横方向移動機構16bは、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bのそれぞれに取り付けられたナット部材161と、ナット部材161が螺合するととともに横方向に延びる横方向ネジシャフト161bと、ネジシャフト161bを正・逆回転させる位置調整モータ162b(162)と、を備えている。位置調整モータ162bの駆動によりネジシャフト161bが正・逆回転することで、ナット部材161が横方向に沿って左右に移動する。これにより、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bは、独立して、横方向に移動する。本体制御部60の制御に基づき、遮蔽板横方向移動機構16bは、X線発生器10aから出射されたX線ビームの横方向に関する遮蔽量を、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bにより調整する。遮蔽板横方向移動機構16bは、X線ビームの横方向に関する照射範囲を調整することにより、照射方向を制御する横方向照射位置制御部の一例である。
【0093】
なお、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bのそれぞれには、規制筒状体152が取り付けられている。規制筒状体152には、横方向に沿って貫通する貫通孔が形成されている。また、規制筒状体152には、縦方向に延びる規制シャフト153が嵌挿されており、規制筒状体152の横方向の移動が規制シャフト153によって規制されている。このため、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bは、傾くことなく横方向に移動する。
【0094】
このように、本実施形態では、X線ビーム形成機構13が縦方向遮蔽板14、横方向遮蔽板15および遮蔽板移動機構16で構成され、該X線ビーム形成機構13がX線発生部10における出射口12の前方に配置される。これにより、X線発生部10にて発生したX線の照射範囲が遮蔽により規制され、X線検出部20に向けて角錐台状に広がるX線コーンビームBX1が形成されることとなる(
図5参照)。
【0095】
詳細には、上側縦方向遮蔽板14aおよび下側縦方向遮蔽板14bにおける対向縁部14c、14c間の間隔が、遮蔽板縦方向移動機構16aによって調整され、左側横方向遮蔽板15aおよび右側横方向遮蔽板15bにおける対向縁部15c、15c間の間隔が、遮蔽板横方向移動機構16bによって調整される。そして、対向縁部14c、14cおよび対向縁部15c、15cによって、所望形状のX線コーンビームBX1を形成するための正面視四角形状の開口17が形成される。
【0096】
例えば、
図6に示されるように、対向縁部14c、14c間の間隔が広く調整され、対向縁部15c、15c間の間隔が広く調整されることで、開口17が正面視において比較的大きな正方形状の大照射野用開口17aとなる。大照射野用開口17aを透過したX線は、断面が正方形となり、X線検出部20に向けて正四角錐台状に広がるX線コーンビームBX1となる。
【0097】
また、
図7に示されるように、対向縁部14c、14c間の間隔が広く調整され、対向縁部15c、15c間の間隔が狭く調整されることで、開口17が正面視縦長である長方形状のパノラマ撮影用開口17cとなる。パノラマ撮影用開口17cを透過したX線は、X線検出部20に向けて縦長角錐台状に広がるX線細隙ビームとなる。
【0098】
なお、
図8,9に示されるように、X線ビーム形成機構が、開口17の中心に対して点対称配置された、正面視L型の2枚のL型遮蔽板18、18により、構成されていてもよい。この場合、開口17が、2枚のL型遮蔽板18、18の内角部を構成する縁部18a、18aによって、構成される。
【0099】
例えば、開口17の形状は、遮蔽板縦方向移動機構16a、遮蔽板横方向移動機構16bの両方を設け、各L型遮蔽板18、18を縦方向および横方向に移動することで調整することができる。
【0100】
例えば、遮蔽板横方向移動機構16bと同様の横方向移動機構によって横方向に変位する不図示の基台上に、遮蔽板縦方向移動機構16aと同様の縦方向移動機構を設け、この縦方向移動機構によって、1枚のL型遮蔽板18を縦方向に変位させる。このような横方向移動機構、基台、縦方向移動機構によって、各L製遮蔽板18を縦方向または横方向に移動させることができる。例えば、
図8に示すように、開口17を拡げることで、X線コーンビームBX1を成形することが可能であるし、
図9に示すように、開口17を細長くすることで、X線細隙ビームを形成することが可能である。
【0101】
<撮影モード選択画面>
図10は、撮影モードを設定するための、撮影モード設定画面MSWを示す図である。
図10に示される撮影モード設定画面MSWは、擬似口内法撮影モードボタンFIM、パノラマ撮影モードボタンPM、CT撮影モードボタンCM、および、セファロ撮影モードボタンSMを備えている。擬似口内法撮影モードボタンFIMは、擬似口内法撮影モードを選択するためのボタンである。パノラマ撮影モードボタンは、パノラマ撮影モードを選択するためのボタンである。CT撮影モードボタンCMは、CT撮影モードを選択するためのボタンである。セファロ撮影モードは、セファロ撮影モードを選択するためのボタンである。
【0102】
撮影モード選択画面MSWは、X線撮影装置1を起動したあと、撮影を開始する前に、例えば、操作表示部61または操作表示部62に表示される画面である。オペレータは、撮影モード選択画面MSWを介して、所望の撮影モードを選択する。すると、本体制御部60のモード設定部601(
図3参照)が、本体制御部60の撮影モードを、選択された撮影モードに設定する。これにより、X線撮影装置1において、設定された種類のX線撮影に応じた撮影条件(撮影領域の位置、形状等)の設定等が実行可能となる。このように、操作表示部61または操作表示部62は、モード選択部として機能する。なお、画像処理装置8の表示部81に撮影モード選択画面MSWを表示して、操作部82を介してモード選択が行われるようにしてもよい。
【0103】
擬似口内法撮影モードは、擬似口内撮影を行うモードである。擬似口内法撮影は、歯列弓に沿って拡がる歯列の一部(例えば、数本の歯)または歯茎の一部の領域を撮影対象とし、従来の口内法撮影(デンタル撮影)を、X線撮影装置1で擬似的に行うものである。ここで、従来の口内法撮影で得られるX線画像は、従来X線フィルム等を口腔内に装着して、X線を一方向から照射して得られる単純投影画像である。これに対して、擬似口内法撮影では、この単純投影画像と同等の画像を、断層画像として取得することが可能となっている。
【0104】
より具体的に、擬似口内法撮影では、撮影領域(擬似口内法撮影領域)の全部を含むように照射範囲が規制されたX線コーンビームBX1が形成される。そして、撮影領域に対するX線コーンビームBX1の照射が、複数方向(所用範囲の各方向)から行われ、フレームデータを得られる。そして画像処理装置8の画像処理部801bが、得られたフレームデータについて、後述する重ね合わせ法(シフト加算法)を適用し、フレームデータが示すX線投影画像同士の重ね合わせを行うことで、特定の裁断面に関する断層画像を生成する。このようにして生成された断層画像は、厳密には、従来の口内法撮影で得られるX線画像とは性質が異なるものの、画像診断上は極めて近い画像となっている。
【0105】
また、画像処理部801bは、得られたフレームデータについて、後述するフィルター逆投影法を適用して、特定の裁断面の断層画像を生成する。このように、画像処理部801bは、擬似口内法撮影によって取得されたフレームデータ(X線投影画像データ)について、重ね合わせ方およびフィルター逆投影法という、互いに異なる画像処理方法で処理する。
【0106】
また、
図3に示される画像処理装置8の位置設定部801cは、裁断面の位置を設定したとき、あるいは、裁断面の位置を変更したとき等において、その裁断面の位置を特定するための座標演算を中心に実行する。画像処理部801bは、位置設定部801cによって特定された裁断面の座標を元に、断層画像を生成する。
【0107】
パノラマ撮影モードは、パノラマ撮影(パノラマ線撮影)を行うモードである。パノラマ撮影では、X線細隙ビームに形成されたX線ビームを、歯列弓に沿って歯列に照射することで、フレームデータが取得される。画像処理装置8(画像処理部801b)は、フレームデータが示す投影画像の端部同士をつなぎ合わせていくことで、1枚のパノラマ画像(パノラマX線画像)を生成する。
【0108】
CT撮影モードは、CT撮影を行うモードである。CT撮影では、撮影領域(CT撮影領域)の全部を含むように照射範囲が規制されたX線コーンビームBX1が形成される。そして、頭部M10に対して、旋回アーム30を、例えば180度以上相対的に旋回させる。これにより、撮影領域に対するX線コーンビームBX1の照射が、多方向(180度以上の範囲の各方向)から行われ、X線投影画像を示すフレームデータが取得される。そして、画像処理装置8(具体的には、画像処理部801b)が、得られたフレームデータについて、フィルター逆投影法を適用することにより、特定の裁断面の断層画像を再構成する。
【0109】
セファロ撮影モードは、セファロ撮影を行うモードである。セファロ撮影では、
図2に示されるように、上述したセファロスタット43がX線撮影装置1に装着され、セファロ撮影用に形成されたX線細隙ビームが、被験者の頭部M10に照射され、フレームデータが取得される。画像処理装置8(具体的には、画像処理部801b)は、取得されたフレームデータが示す投影画像の端部同士をつなぎ合わせることで、頭部M10全体の投影画像(頭部X線規格写真)を生成する。
【0110】
<撮影領域設定画面>
図11は、撮影領域CAを設定するための、撮影領域設定画面300を示す図である。
図11に示される撮影領域設定画面300は、画像表示部310、上下顎選択部320、選択範囲設定部330および条件設定部340を備えている。条件設定部340は、Setボタン341、Resetボタン342、Startボタン343、Modeボタン344、Returnボタン345を備えている。
【0111】
画像表示部310には、歯列弓画像211、各点を指定するための指定カーソル312、および、指定カーソル312によって指定された中心と、後述する選択範囲設定部330で指定された半径に応じた真円状の撮影領域ライン313が重畳表示される。歯列弓画像211は、標準的な大きさである歯列の平面図を模式化した模式図となっている。歯列弓画像211は、領域指定用画像の一例である。
【0112】
上下顎選択部320は、撮影領域CAを上顎に設定するためのUPPERボタン321と、上顎および下顎の両方に設定するためのFULLボタン322と、下顎に設定するためのLOWERボタン323とで構成されている。この上下顎選択部320を介した選択により、本体部2の撮影モードが、上顎および下顎の双方にわたる領域をCT撮影の対象領域とするCT撮影モード(第1CT撮影モード)、または、上顎および下顎のいずれか一方の領域をCT撮影の対象領域とするCT撮影モード(第2CT撮影モード)のどちらかに、設定される。
【0113】
条件設定部340は、Setボタン341と、Resetボタン342と、Startボタン343と、Modeボタン344と、Returnボタン345とで構成されている。Setボタン341は、画像表示部310、上下顎選択部320および選択範囲設定部330を介して設定された、撮影領域CAの指定内容を決定するために操作される。Resetボタン342は、画像表示部310、上下顎選択部320および選択範囲設定部330で設定された撮影領域CAの指定内容をリセットする際に操作される操作ボタンである。
【0114】
Startボタン343は、Setボタン341で確定された指定内容に基づいてCT撮影領域CAの撮影を開始指示する操作ボタンである。Modeボタン344は、各種モードを選択するためのボタンである。Modeボタン344が選択操作されることにより、このボタンが選択操作されることにより、
図10に示した撮影モード選択画面MSWが表示される。このため、Modeボタン344は、擬似口内法撮影モードと、CT撮影モードと、パノラマ撮影モードと、セファロ撮影モードとの間で、撮影モードを切り替えるためのボタンである。つまり、Modeボタン344は、X線撮影装置1が実行する撮影モードを切り替える撮影モード切換部として機能する。Returnボタン345は、初期画面(例えば、
図10に示される、撮影モード設定画面MSW)に戻るための操作ボタンである。
【0115】
この撮影領域設定画面300によると、CT撮影の撮影領域を設定したり、あるいは、擬似口内法撮影の撮影領域を設定したりすることが可能である。また、パノラマ撮影においても、撮影領域設定画面300を利用することも考えられる。つまり、撮影領域設定画面300の上下顎選択部320を介して、上顎、下顎または上下顎を選択し、選択された部位のパノラマ撮影が実施されるようにすればよい。また、画像表示部310に表示された歯列弓画像211において、撮影領域CAを指定された部分(すなわち、歯列弓の一部)のみについてパノラマ撮影する、部分パノラマ撮影が実行されるにすることも考えられる。このように、パノラマ撮影する領域を限定することで、不要なX線被曝を避けることができる。
【0116】
撮影領域CAを設定するため、操作表示部61に表示された撮影領域設定画面300において、撮影対象物OBを取り囲むように撮影領域ライン313が設定される。詳細には、撮影対象物の位置に応じて、上顎、下顎、上下額のいずれかが、上下顎選択部320にて選択される。そして、画像表示部310に表示された歯列弓画像211において、指定カーソル312により撮影領域ライン313の中心が指定され、テキストボックス331に撮影領域ライン313の半径(または直径)が入力される。このようにして、局所的撮影対象物が撮影領域ライン313に取り囲まれるよう、撮影領域ライン313の位置、および、大きさが設定される。
【0117】
なお、このようにして設定された撮影領域ライン313をそのまま撮影領域CAとした場合、該撮影領域CAは、平面視が真円の円柱体である。この円柱体の高さは、上下顎選択部320を介して指定された領域(上顎、下顎または上下顎)によって定まる。CT撮影の場合は、このような円筒体の撮影領域CAについて、X線コーンビームBX1が照射されることとなる。また擬似口内法撮影の場合は、設定された撮影領域CAに含まれる歯が、撮影対象となる。したがって、操作表示部61(または操作表示部62)は、擬似口内法撮影の撮影領域(擬似口内法撮影領域)の指定を受け付ける、撮影領域指定受付部610(
図3参照)として機能する。
【0118】
なお、CT撮影において、体軸MX1の軸方向から見た撮影領域CAの広さを決定する際に、撮影領域CAの広さを、少なくとも、「局所(例えば、顎部の一部であって直径40mm程度)」および「広域(例えば、顎部全体を含む直径100mm程度)」の少なくとも2つの中から選択できるようにしてもよい。この場合において、局所が選択されることで、本体制御部60のモード設定部601により、本体部2の撮影モードが局所CT撮影モードに設定され、広域が選択されることで、本体部2の撮影モードが広域CT撮影モードに設定される。そして、X線ビーム形成機構13が、設定されたCT撮影領域の大きさに応じたX線コーンビームBX1を形成して、局所CT撮影または広域CT撮影が行われればよい。
【0119】
また、撮影モード選択画面MSWにおいて、CT撮影モードボタンCMが選択操作された場合に、局所CT撮影モードおよび広域CT撮影モードのうちどちらかを選択する選択画面が表示されるようにしてもよい。この画面上での選択操作に基づき、局所CT撮影モードまたは広域CT撮影モードの設定が行われるようにしてもよい。
【0120】
また、上述の説明では、操作表示部61(または操作表示部62)がタッチパネルで構成され、撮影領域設定画面300に表示された指定カーソル312の操作により、撮影領域CAの設定操作を受け付けられている。しかしながら、操作表示部61が液晶画面で構成され、マウス等のポインティングデバイス、あるいは、操作表示部61近傍に設置された操作ボタン類を介して、撮影領域CAの設定操作が受け付けられるようにしてもよい。
【0121】
また、上述の説明では、操作表示部61に撮影領域設定画面300が表示されて撮影領域CAの設定操作が受け付けられている。しかしながら、撮影領域設定画面300が、画像処理装置8の表示部81に表示されるようにして、画像処理装置8において、撮影領域CAの設定操作が受け付けられるようにしてもよい。
【0122】
<撮影領域設定画面のその他の例>
図12は、その他の撮影領域設定画面300Aを示す図である。撮影領域設定画面300Aは、
図11に示される撮影領域設定画面300と同様に、画像表示部310A、上下顎選択部320および条件設定部340を備えている。撮影領域設定画面300Aにおける上下顎選択部320および条件設定部340の機能は、それぞれ、撮影領域設定画面300における上下顎選択部320、条件設定部340の機能と同様である。
図12に示される撮影領域設定画面300Aの特徴的な点は、歯列弓をY軸方向から見た図(パノラマ画像211A)が表示される点である。
【0123】
画像表示部310Aには、歯列弓画像211の代わりに、被写体M1の歯列弓領域を予めX線を用いてパノラマ撮影した、パノラマ画像211Aが表示される。画像表示部310Aでは、このパノラマ画像211A上において、撮影領域CAが設定される。つまり、領域指定用画像として、パノラマ画像211Aが使用される。
図12に示される例では、撮影領域ライン313Aがまず設定される。この撮影領域ライン313Aの指定は、図示を省略するが、上述した指定カーソル312等を用いて行われる。
図12において、撮影領域ライン313のサイズは、実線および二点鎖線で示されるように、任意に変更できるようにしてもよい。
【0124】
画像表示部310Aにおいて、パノラマ画像211Aに対して、撮影領域CAを指定するために入力された指定情報は、画像処理装置8に送信される。画像処理装置8は、受け付けた指定情報に対応する撮影領域ライン313Aに関する情報を操作表示部61に送信する。
【0125】
撮影領域ライン313Aに関する情報を受信した操作表示部61は、CT撮影領域設定画面300Aの画像表示部310Aに、パノラマ画像211Aと、受信した情報に基づく撮影領域ライン313Aとを重畳表示させる。重畳表示後の処理フローは、撮影領域設定画面300における処理フローと同様である。
【0126】
なお、被写体保持部421に固定された被写体M1のパノラマ断層位置の三次元位置情報は、被写体保持部421と設定されているパノラマ断層位置との位置関係から、画像処理部801bによる演算処理によって容易に特定できる。したがって、パノラマ画像211Aに対して指定された位置の三次元座標は、演算により取得される。
【0127】
また、パノラマ画像211Aは、X線撮影装置1により取得されたものに限定されず、他の撮影装置で取得されたパノラマ画像であってもよい。この場合でも、パノラマ撮影した際の、パノラマ断層の位置情報さえ既知であれば、パノラマ画像211A上で指定された位置の三次元座標を、演算により取得することができる。
【0128】
図13は、その他の撮影領域設定画面300Bを示す図である。
図12に示される撮影領域設定画面300Aでは、被写体M1をパノラマ撮影して得た実写画像をパノラマ画像211Aとして画像表示部310Aに表示しているが、必ずしも実写画像である必要はない。
図13に示される撮影領域設定画面300Bでは、画像表示部310Bに、実写のパノラマ画像を模したイラスト画像211Bが表示されている。このイラスト画像211Bには、右上顎、左上顎、右下顎および左下顎毎に8本の歯のイラストが描かれている。このようなイラスト画像211B上で、矩形状の撮影領域ライン313Bを設定するように構成されている。パノラマ画像211Aは、必ずしも被写体M1をパノラマ撮影して得た実写画像でなくてもよい。例えば、標準骨格の顎部のパノラマ断層の画像、もしくは、実写のパノラマ画像を模したイラスト等がパノラマ画像211Aとして用いられてもよい。
【0129】
また、上述の説明では、操作表示部61に撮影領域設定画面300が表示されて撮影領域CAの設定操作が受け付けられている。しかしながら、撮影領域設定画面300が、画像処理装置8の表示部81に表示されるようにして、画像処理装置8において、撮影領域CAの設定操作が受け付けられるようにしてもよい。
【0130】
収集されたフレームデータは、逐次画像処理装置8に転送され、記憶部802に記憶される。そして収集されたフレームデータは、画像処理部801bにおいて、各撮影モードに応じて演算処理される。例えば、CT撮影の場合、フレームデータが三次元データに再構成される。
【0131】
擬似口内法撮影モードの場合にも、UPPERボタン321によって撮影領域CAが上顎に設定され、あるいは、LOWERボタン323によって撮影領域CAが下顎に設定されるようにすることも可能である。
【0132】
なお、擬似口内法撮影モードの場合において、撮影領域CAを設定する際、撮影領域ライン313を用いてもよい。もしくは、図示のように、歯列弓に沿った長円形状の撮影領域ライン314を表示して、この形状に対応した撮影領域CAを設定できるようにしてもよい。
【0133】
擬似口内法撮影モードの場合は、CT撮影モードの場合と異なり、特定の歯牙が撮影対象となるので、X線照射を受ける領域を厳密に撮影領域として表示する必要はない。したがって、閉領域を示す撮影領域ライン313,314ではなく、単に断層を示す線状のライン315で撮影領域が設定されるようにしてもよい。もちろん、撮影領域ライン313,314とライン315が併せて表示されるようにしてもよい。
【0134】
撮影領域ライン313,314またはライン315で指定される撮影領域CAは、歯牙ごとに定まった領域が設定されていてもよいが、大きさや位置を可変調整できるようにしてもよい。この可変調整は、例えばマウス操作に基づいたポインタの移動操作で、撮影領域ライン313,314またはライン315を動かすことでなされるようにできる。このようにして調整された領域に合わせて、ビーム形成機構13によるX線コーンビームBX1の幅の調整や移動機構200による旋回アーム30の位置調整が行われる。
【0135】
パノラマ撮影についても、縦方向遮蔽板14および横方向遮蔽板15の位置調整によって全顎のパノラマ撮影、上顎のみのパノラマ撮影、下顎のみのパノラマ撮影といったように、撮影対象選択できるようにしてもよい。この場合において、UPPERボタン321によって撮影領域CAを上顎に設定し、LOWERボタン323によって下顎に設定し、FULLボタン322によって上下顎すなわち全顎に設定することが考えられる。
【0136】
また、歯列弓の一部の領域のみをパノラマ撮影する部分パノラマ撮影が可能なように設定することもでき、その範囲指定において擬似口内法撮影の場合と同様に撮影領域設定画面300上で撮影領域ラインを設定するようにしてもよい。なお、この際の操作については、擬似口内法撮影モードにおける、撮影領域の指定と同様に行うことが可能である。
【0137】
<X線ビームの照射方向>
<<パノラマ撮影時の照射方向の制御>>
図14は、パノラマ撮影時における、X線ビームBXの照射方向を説明するための図である。
図14では、被写体M1の真後ろから、X線ビームBX(具体的には、X線細隙ビーム)を照射している状態を示している。
図14に示される様に、パノラマ撮影では、X線ビームBXの上下が、被写体M1の頭部M10にある上顎および下顎を含んでいればよいため、X線ビームBXの照射方向は特に限定されていない。例えば、上顎前歯FT1の中心部を透過するX線UP1と上顎前歯の歯軸AX1とが成す角θUは90度ではなく、また、下顎前歯FT2の中心部を透過するX線LW1と下顎前歯FT2の歯軸AX2とが成す角θLも90度ではない。ただし、パノラマ撮影時のX線ビームBXは、その中心軸BXCが、体軸MX1の軸方向に直交する方向(ここでは、Y軸方向等の水平方向)に対して、上向きとなるように、照射方向が制御される。X線撮影装置1においては、昇降部40、X線ビーム形成機構13により、被写体M1の頭部M10に対するX線ビームBXの照射方向を、体軸MX1の軸方向に関して相対的に変更することができる。X線ビーム形成機構13は、照射方向変更部の一例である。
【0138】
<<擬似口内法撮影時の照射方向の制御>>
図15は、上顎前歯FT1を撮影対象とした擬似口内法撮影時における、X線ビームBXの照射方向を説明するための図である。
図15に示されるように、擬似口内法撮影では、歯列の一部である上顎前歯FT1の歯軸AX1に対して、該上顎前歯FT1の中心部を通るX線UP1が直交する(つまり、角θUが90度となる)ように、X線ビームBXが照射される。ここで、上顎前歯FT1の歯軸AX1は、上方が被写体M1の後側(つまり、+Y側)に、下方が被写体M1の前側(つまり、−Y側)に傾斜している。このため、X線ビームBXの照射方向を、上向きに制御する必要がある。なお、厳密に直交していなくてもよく、略直交しておればよい。
【0139】
X線発生器10aのX線管において、陰極で発生した熱電子は陽極に衝突してX線が発生する。X線は陽極の熱電子が衝突した箇所を起点として広がりつつ進む。このX線発生の起点となるところを実焦点と呼び、X線照射を受ける方向から見た実焦点を実効焦点と呼ぶことがある。
図14にて上述の実焦点、実効焦点をそれぞれ実焦点FC、実効焦点FC1で示す。上記のX線UP1はこの実効焦点FC1から発生して上顎前歯FT1の中心部を通るものである。
【0140】
このようなX線ビームBXの照射を実現するため、
図15に示される例では、昇降部40を駆動することにより、旋回アーム30(支持体)を、パノラマ撮影時の高さ(破線で示す)よりも下側に下降させている。このように、旋回アーム30を下げることにより、被写体M1(被験者)の頭部に対してX線発生器10aの位置(より詳細には実効焦点FC1の位置)が下がり、X線ビームBXの照射方向を上向きにすることを可能にする。つまり、昇降部40は、旋回アーム30を旋回軸31の軸方向と平行に昇降変位することで、X線ビームBXが出射される高さ位置を変更する、第3昇降機構として機能する。旋回アーム30自体を被写体M1に対して昇降するようにすることで、被写体M1を昇降させずに済む。これにより、被写体M1(被験者)に負担がかかることを抑制できる。
【0141】
また、
図15に示される撮影では、X線ビーム形成機構13を駆動することで、X線ビームBXの照射方向(X線ビームBXの中心軸BXCの軸方向)が上向くように制御している。このように、X線ビーム形成機構13は、被写体M1の頭部M10に対するX線ビームBXの照射方向を、体軸MX1の軸方向に対して、相対的に変更する。上述したように、X線ビームBXの照射方向は、X線ビーム形成機構13の第1昇降機構である遮蔽板縦方向移動機構16a(
図4参照)により変更される。また、X線ビームBXが検出面に支障なく入射するように、第1昇降機構による照射方向の変更に連動して、第2昇降機構として機能するX線検出器駆動部45が駆動され、X線検出器21を所要の高さにまで上昇させている。X線検出器駆動部45は、本体制御部60のX線検出器駆動制御部603(
図3参照)により制御される。
【0142】
X線検出器駆動部45は、図示を省略するが、例えば、X線検出器21をZ方向に沿って案内する部材と、X線検出器駆動部45の基部に固定したモータの軸にローラとで構成され、当該ローラをX線検出器21の背面に当接させてX線検出器21を昇降駆動することが考えられる。もしくは、X線検出器駆動部45は、X線検出器21をZ方向に沿って案内する部材と、X線検出器21の背面に固定した雌ネジ部をX線検出器駆動部45の基部に回動可能に固定した雄ネジ部とで構成され、モータを駆動源としてX線検出器21をZ方向に昇降駆動すること等も考えられる。
【0143】
一般的な形状の歯列弓においては、上顎前歯FT1の歯軸AX1は、上方が被写体M1の後側(つまり、+Y側)に、下方が被写体M1の前側(つまり、−Y側)に傾斜している。一方、前歯または前歯近傍の歯以外の歯の歯軸は舌側から頬側に向かう方向またはその反対方向に関する限りはほぼ傾斜がないので、体軸MX1の軸方向に対するX線ビームBXの照射方向は、前歯の擬似口内法撮影をするときとは異なり、水平方向になるように設定される。すなわち、擬似口内法の撮影領域の位置に応じて、体軸MX1の軸方向に対するX線ビームBXの照射方向は異なることとなる。
【0144】
<歪の補正>
上顎前歯FT1の擬似口内法撮影を
図15に示される構成によって行う場合、X線検出器21で得られる上顎前歯FT1のX線画像は、上側(歯根部側)がX線検出器21の検出面から遠く、下側(歯冠部側)がX線検出器21の検出面に近い関係にあるために拡大率の差から生じる歪がある。したがって、これらの歪を、画像処理上の補正をすることが好ましい。具体的には、次のような処理をすればよい。
【0145】
まず、説明の便宜のため、X線検出器21の検出面で受ける上顎前歯FT1のX線画像を図示しないFT1Iとし、歯根部側の拡大率をEL1とし、歯冠部側の拡大率をEL2とする。ここで、X線画像FT1Iにおける拡大率EL1と拡大率EL2の関係は、EL1>EL2の関係にある。また、X線画像FT1Iの縦方向(z方向)の幅と横方向(x方向)幅の比(縦方向の幅/横方向の幅)AS1と、この比に対応する、前歯FT1の縦方向の幅の実寸と横方向の幅の実寸の比(縦方向の幅/横方向の幅)AS2とは、AS1>AS2の関係にある。
【0146】
画像補正処理として、次のいずれかの処理を行う。
処理1:EL1=EL2となるように補正する。
処理2:AS1=AS2となるように補正する。
処理3:EL1=EL2となり、かつ、AS1=AS2となるように補正する。
【0147】
歪は、歯冠部と歯根部の間以外の部分についても存在するので、拡大率の補正を歯根部から歯冠部にわたって行う。これにより、X線画像FT1Iを、X線UP1に垂直交するように配置したX線検出面で受光したときのX線画像に近付けることができる。
【0148】
このような補正は、上顎前歯FT1以外を撮影対象として、実際の歯牙に対してX線検出器21の検出面で受光したX線画像が歪を有するときにおいても、行うことが好ましい。
【0149】
図16は、下顎前歯FT2を撮影対象とした擬似口内法撮影時における、X線ビームBXの照射方向を説明するための図である。下顎前歯FT2の歯軸は、上側が被写体M1の前側(つまり−Y側)に、下側が被写体M1の後側(つまり、+Y側)に傾斜している。このため、X線ビームBXの照射方向を、下向きに制御する必要がある。
【0150】
このようなX線ビームBXの照射を実現するため、
図16に示される例では、昇降部40を駆動して、旋回アーム30がパノラマ撮影時の高さ(破線で示す)よりも上側に上昇させている。そして、X線ビーム形成機構13を駆動して、X線ビームBXの照射方向を下向くように制御している。また、X線ビームBXが検出面に入射するように、X線検出器駆動部45を駆動して、X線検出器21を所要の高さにまで下降させている。
【0151】
基本的に、歯牙を舌側(口腔内側)から頬側に、あるいはその逆方向に歯牙を観察するときの視線方向は、歯軸に直交していることが望ましい。仮に、X線ビームBXの中心軸が、撮影対象の歯牙に直交しない場合には、歯牙を斜め上から見下ろしたような、または斜め下から見上げたようなX線画像が取得される。この場合、歯牙が実際より短く見える画像になる。したがって、X線ビームの中心軸を対象歯牙に直交入射させる(つまり、X線ビームBXの中心軸を歯軸に直交させる)ことで、ひずみの少ない、歯牙の形状に忠実な画像を取得することができる。ただし、厳密に直交していなければならないものではなく、略直交しておればよい。
【0152】
下顎を撮影対象として、擬似口内法撮影領域の位置に応じて、体軸MX1の軸方向に対するX線ビームBXの照射方向を異ならせる点は、上顎を撮影対象とした場合と同じである。つまり、撮影対象が顎全体であるか、部分であるか、上顎の歯であるか下顎の歯であるか、上顎のどの領域の歯であるか、下顎のどの領域の歯であるかといった撮影領域毎に、X線ビームBXのZ軸方向に関する照射角度、照射範囲、旋回アーム30の位置、旋回アーム30の旋回角度等が異なってくる。このため、撮影領域毎に、支持体駆動制御部602による昇降部40の昇降制御、移動機構200による旋回アーム30の位置制御、X線規制部駆動制御部605の制御に基づくX線規制部駆動部101によるビーム成形機構13の駆動制御、X線検出器駆動制御部603の制御に基づくX線検出器駆動部45によるX線検出器21の位置制御が適宜行われる。被写体保持部駆動部MH1による被写体保持部421の駆動が必要な場合は、被写体保持部駆動制御部604の制御に基づく被写体保持部駆動部MH1の制御も適宜行われる。
【0153】
<<CT撮影時の照射方向の制御>>
図17は、上顎および下顎を撮影対象としたCT撮影時における、X線ビームBXの照射方向を説明するための図である。CT撮影では、撮影領域(有効視野、FOV:Field of View)に対し、180度以上の方向からX線ビームBXを照射する。このとき、X線ビームの中心軸BXCは、撮影領域の中心部を通るように、X線ビームの照射方向が制御される。
【0154】
例えば
図17に示されるCT撮影では、直径が例えば80〜100mm程度であって、上顎および下顎の双方を含む円柱状の撮影領域FOV1について、X線ビームBXの照射が行われている。この撮影領域FOV1は、体軸MX1に沿って延びる領域である。この撮影領域FOV1を撮影対象とする場合、
図17に示されるように、X線ビームBXの中心軸BXCが、撮影領域FOV1の中心を透過し、かつ、体軸MX1に対して直交するよう、X線ビームBXを照射する。体軸MX1は、Z軸方向に平行であるため、中心軸BXCは、XY平面(水平面)に平行とされている。
【0155】
なお、図示を省略するが、X線撮影装置1において、上顎(または下顎)の一部の歯または歯茎を、撮影対象とするCT撮影を実行することも可能である。この場合、撮影領域を
図17に示される撮影領域FOV1を狭めて小さくした領域として、CT撮影が実行される。この場合においても、この比較的小さな撮影領域の中心に、X線ビームBXの中心軸BXCが透過し、かつ、体軸MX1に対して直交するように、X線の照射方向が制御される。
【0156】
<擬似口内法撮影>
図18は、擬似口内法撮影の様子を+Z側から−Z方向に向かって見たときの概略平面図である。
図18に示される例では、下顎における右側4本の歯牙を撮影対象としている。なお、このような撮影する歯牙の指定は、
図11に示す撮影領域設定画面300等を介して行われたものである。
【0157】
図18に示される様に、擬似口内法撮影は、従来のトモシンセシスと同様に、被写体M1の頭部M10を間に挟んだ状態でX線発生器10aおよびX線検出器21を180度以下の角度分(例えば、15度〜50度程度)旋回させることにより、撮影対象物(ここでは、4本の歯牙)に対して、多方向からX線ビームBXが照射される。そして、複数の方向から撮影して得た投影画像を、旋回方向に合わせて適量シフトさせて重ね合わせる重ね合わせ法(シフト加算法)、および、フィルターを用いたフィルター逆投影法により、任意の裁断面(断層面)の断層画像が再構成される。この画像処理については、後に詳述する。
【0158】
X線撮影時の旋回アーム30の移動制御は、前述のXYテーブルを用いて、旋回軸31とは別の箇所にX線発生器10aとX線検出器21との旋回中心を定める制御により実現が可能である。あるいは、前述のXYテーブルを用いて、撮影対象領域の中心または中心近傍に旋回軸31の軸中心がくるように旋回アームの移動制御をして、旋回軸31の移動をせずに旋回アーム30を旋回してX線撮影を行うことも可能である。
【0159】
なお、擬似口内法撮影において、X線ビームBXの拡がりを、撮影領域CA(擬似口内法撮影領域)よりも狭小としても、旋回アーム30の旋回角度を大きくすることで、撮影領域CA内の断層画像を生成することは一応可能である。しかしながら、X線ビームBXの拡がりを、少なくとも撮影領域CAよりも広くすることで、小さい旋回角度でも、撮影領域CA内のX線吸収に関する情報が豊富なX線投影画像データを収集できるため、断層画像を支障なく生成することができる。
【0160】
また、断層画像を再構成する際の裁断面の位置は、旋回軸31の軸方向に垂直な方向(ここでは、水平方向)に関して、任意に設定できるようにしてよい。例えば、
図18に示されるように、撮影領域CAの略中心を通る平面裁断面A1、該平面裁断面A1よりも頭部M10の外側の平面裁断面A1a、または、該平面裁断面A1よりも頭部M10の内側の平面裁断面A1bといったように、裁断面の位置を設定できるようすればよい。これにより、読影者が、観察したい位置に焦点の合う断層画像を生成することが可能となる。
【0161】
また、
図18に示されるように、平面状である平面裁断面A1とすることも可能であるが、例えば、歯列弓90に合わせて湾曲する湾曲面状の湾曲裁断面A2とすることも可能である。この歯列弓90の形状は、標準的な歯列弓の形状としてもよいし、あるいは、被写体M1の実際の歯型、X線写真などから特定された歯列弓の形状としてもよい。
【0162】
裁断面の位置および形状は、後述する再構成の演算方法、すなわち、重ね合わせを行うときの、シフト量を適宜に変更することによって、任意に決定することができる。したがって、画像診断の診断目的等に合わせて、裁断面の位置および形状を任意に設定すればよい。
【0163】
また、パノラマ撮影は、上顎全体、下顎全体または上下顎全体といったように、比較的広い範囲を1度に診ることを目的として行われるのに対して、擬似口内法撮影は、歯列または歯茎の一部といったように、局所的な部分を診ることを目的として行われる。このため擬似口内法撮影では、なるべく撮影対象物を大きく拡大して観察できるようにすることが望ましい。そこで、本実施形態では、本体制御部60は、移動部202を制御することにより、X線検出器21を頭部M10との間の距離を変更することにより、擬似口内法撮影時と、パノラマ撮影時とで、取得されるX線投影画像の拡大率をそれぞれ変更する。
【0164】
より具体的には、擬似口内法撮影に、X線検出器21と頭部10Mとの間の距離が、パノラマ撮影のときよりも大きくなるように維持される。これにより、擬似口内法撮影のときに、同じ部位をパノラマ撮影するときよりも拡大率を上げることができる。このため、撮影対象物を高きく撮影することができ、診断に適した断層画像を得ることができる。
【0165】
また、X線検出器21のX線検出の空間解像度を、CT撮影と擬似口内法撮影とに応じて、変更するようにしてもよい。これにより、擬似口内法撮影およびCT撮影で、それぞれに適した空間解像度のX線投影画像を取得することができる。例えば、CT撮影時に高解像度とすることで、高精細な投影データを得ることが可能となり、解像度の優れたCT画像(断層画像)を生成することが可能となる。また、これと同様に、X線検出器21のX線検出の空間解像度を、パノラマ撮影と擬似口内法撮影とに応じて、変更するようにしてもよい。これにより、擬似口内法撮影およびパノラマ撮影について、それぞれに適した空間解像度のX線投影画像を取得することができる。
【0166】
<重ね合わせ法(シフト加算法)>
図19は、擬似口内法撮影により取得したフレームデータについて、重ね合わせ法を適用して、断層画像を取得する過程を説明するための説明図である。
図19に示される例では、被写体M1の頭部M10内において、物体OB1(三角形で示す。)、物体OB2(円形で示す。)、および、物体OB3(四角形で示す。)が、この順に、X線発生器11a側からX線検出器21側に向く方向に一列に並んでいるものとする。また、この擬似口内法撮影は、物体OB2を旋回中心として、X線ビームBX(X線コーンビーム)が旋回するように、旋回アーム30が移動制御されている。これにより、X線発生器10aは、位置P1から位置P2を経て、位置P3へ移動するものとする。そして、それぞれの位置P1〜P3で取得されるフレームデータが示すX線投影画像を、X線投影画像IP1,IP2,IP3とする。
【0167】
X線発生器10aが位置P2にあるとき、X線ビームBXの照射方向(中心軸BXCの軸方向)と、物体OB1〜OB3の並ぶ方向は、平行となる。このため、X線投影画像IP2においては、物体OB1〜OB3の全てが、中心部に写り込むこととなる。これに対して、X線発生器10aが位置P1,P3にあるとき、物体OB2は、X線投影画像IP2,IP3において、中心部に写り込むが、その他の物体OB1,OB3は、中心から左側または右側に外れた位置に写り込むこととなる。
【0168】
ここで、断層画像を再構成するときの裁断面が、物体OB2を通る平面裁断面A11に設定されている場合、
図19中、左側に示されるように、取得されたX線投影画像IP1,IP2,IP3を、そのまま単純に重ね合わせる(すなわち、シフトさせずに重ね合わせる)ことにより、断層画像Ti11が取得される。断層画像Ti11においては、物体OB1,OB3に関する情報量は、左右に分散され、中心部に3つ分の物体OB2に関する情報量が集まることとなる。これにより、平面裁断面A11上にある物体(例えば、物体OB2)のX線吸収に関する情報を多く持つ、断層画像Ti11を得ることができる。換言すると、平面裁断面A11上にある物体に大きく重み付けされた断層画像Ti11を取得することができる。
【0169】
一方、裁断面が、物体OB1を通る平面裁断面A12に設定されている場合、
図19中、右側に示されるように、X線投影画像IP1〜IP3が、それぞれ所要方向に所要分だけシフトさせて重ね合わせることにより、断層画像Ti12が取得される。具体的に、平面裁断面A12の中心部には、物体OB1が位置しているので、各X線投影画像IP1〜IP3のうち、物体OB1が写り込む位置を中心に合うよう、左または右側にシフトさせることにより、中心部に3つ分の物体OB1に関する情報が集まることとなる。これにより、平面裁断面A12上にある物体(例えば、物体OB1)のX線吸収に関する情報を多く持つ、断層画像Ti12を得ることができる。
【0170】
また、図示を省略するが、裁断面が、物体OB3を通る平面裁断面A13に設定されている場合にも、上記と同じ要領で、X線投影画像IP1〜IP3を所要方向に所要分だけシフトさせて重ね合わせることにより、その裁断面に関する断層画像を得ることが可能である。
【0171】
図20は、X線ビームBXと目的断層DT1の関係を説明するための説明図である。
図20に示されるように、擬似口内法撮影などのX線撮影の最中において、X線ビームBXのファン角(水平方向の拡がりの角度)が一定とされる場合、旋回アーム30の旋回することで、目的断層DT1の投影像の幅DTW1が伸縮変動することとなる。このように投影像の幅DTW1が変動したとしても、演算処理により幅DTW1を補正することで、問題なく断層画像を再構成することが可能である。
【0172】
以上が、シフト加算に基づく重ね合わせ法の原理の説明である。次に、フィルター逆投影法について説明する。
【0173】
<フィルター逆投影法>
X線撮影装置1は、擬似口内法撮影によって取得されたフレームデータについて、上記重ね合わせ法とは異なるフィルター逆投影法(FBP(Filtered Back Projection)法)を適用することで、断層画像を生成する。
【0174】
図21は、フィルター関数F1を適用したフィルター逆投影法を示す図である。また、
図22は、その他のフィルター関数F2を適用したフィルター逆投影法を示す図である。フィルター逆投影法では、従来のCT画像を生成する過程と同様に、X線投影画像を示すフレームデータを一次元フーリエ変換した後、被写体分布を求める逆投影(具体的には、一次元フーリエ逆変換)を行う前に、重畳積分のフィルター(フィルター関数F1またはフィルター関数F2)を適用するものである。フィルター関数F1は、原点が「負」で、原点から離れるに連れて0に近づくものである。また、フィルター関数F2は、原点が「正」で、その周囲が「負」のものである。なお、フィルター関数は、
図21,22に示されるフィルター関数F1,F2に限定されるものではなく、種々のものが考えられる。また、使用するフィルター関数は、撮影対象物に応じて、最適なものが適宜選択されればよい。
【0175】
図23は、重ね合わせ法と同等のフィルター関数F3を適用したフィルター逆投影法を示す図である。フィルター関数F3は、原点が「1」となっており、その他は「0」となっている。このようなフィルター関数F3を用いた場合、結果的には、上述した重ね合わせ法により取得される断層画像と同等の断層画像が生成されることとなる。
【0176】
フィルター関数F1を用いるフィルター逆投影法をBP1とし、フィルター関数F2を用いるフィルター逆投影法をBP2とし、フィルター関数F1を用いるフィルター逆投影法をBP3とする。フィルター逆投影法BP1、BP2、BP3が特定の断層面の前後におけるX線吸収に関する情報量が互いに相違する画像処理となるようなフィルター関数F1、F2、F3を用いることができる。
【0177】
フィルター逆投影法では、一次フーリエ変換後の投影データに周波数空間上でフィルター関数が適用された後、一次フーリエ逆変換(すなわち逆投影)することで、元の撮影領域CAを示す3次元データ(ボクセルデータ)が取得される。この3次元データから、目的の裁断面を表す断層画像が生成される。
【0178】
フィルター逆投影法によると、目的の裁断面上に存在する物体のX線吸収率に依存した断層画像が得られるため、物体の輪郭がはっきりとした形で視認することができる。すなわち、目的の裁断面の前後に存在する物体のX線吸収に関する情報量が、ほとんど無い状態の画像が得られる。ただし、金属等のX線吸収率が高い物質が存在した場合には、金属アーチファクトとして画像中に写り込む場合がある。
【0179】
これに対して、上述した重ね合わせ法(シフト加算法)では、
図19で説明したように、目的の裁断面の前後に位置する物体も、断層画像に写り込むこととなるため、輪郭が若干ぼやけた画像となってしまう。しかしながら、重ね合わせ法によって得られる断層画像は、フィルター逆投影法で発生する金属アーチファクトが発生しない点で、画像診断上、極めて有効である。
【0180】
もちろん、互いに相違する複数の重畳積分のフィルター関数を用いて、フィルター逆投影法に基づく断層画像を複数生成するようにしてもよい。これにより、目的の裁断面の前後に位置する物体に関する情報の量が、互いに相違する複数の断層画像が得られることとなり、読影者が診断により適した画像を選択することが可能となる。
【0181】
このように、目的の裁断面の前後におけるX線吸収に関する情報量が異なる複数の断層画像を生成することにより、同じX線撮影で得たデータから、複数の診断目的のそれぞれに適合しうる複数の断層画像を生成できる。これにより、多角的な画像診断を実現することができる。また、複数の断層画像の中から、診断目的により適合する断層画像を選択して適切な画像診断を実現することもできる。
【0182】
また、重ね合わせ法により、複数のX線投影画像を重ね合わせることにより、従来の口内法撮影(デンタル撮影)に近い断層画像を生成できる。この断層画像では、金属アーチファクトが出ないため、目的の箇所を適切に画像診断することができる。また、フィルター逆投影法により、コントラストに優れた断層画像を取得できる。このため、目的の箇所を、鮮明に観察して、画像診断することが可能となる。これらの断層画像の双方を生成することで、双方の欠点を補いつつ、適切な画像診断を行うことが可能となる。
【0183】
<X線撮影装置の動作フロー>
図24は、X線撮影装置1におけるX線撮影のフロー図である。なお、特に断らない限り、以下において説明するX線撮影装置1の動作は、主に、本体制御部60の制御下のもとに行われるものとする。
【0184】
X線撮影が開始されると、まず、撮影モードの設定が行われる(
図24:ステップS11)。具体的には、
図11に示される撮影モード選択画面MSWが表示され、この画面を介したオペレータによる操作入力に基づき、モード設定部601が本体部2の撮影モードを設定する。
【0185】
次に、撮影領域の指定が行われる(
図24:ステップS12)。具体的に、擬似口内法撮影の場合は、上顎または下顎、および、歯の指定(撮影領域設定画面300等を介した撮影対象の歯の指定、または、領域画面各歯に割り当てられた番号の指定等)が行われる。また、パノラマ撮影の場合は、上顎および下顎を含む全顎、または、上顎および下顎のどちらか一方のどちらかの指定が行われる。また、CT撮影の場合は、撮影領域設定画面300等を介した撮影領域の大きさ、位置の指定が行われる。
【0186】
撮影領域の指定が行われた後、旋回アーム30の位置調整が行われる(
図24:ステップS13)。具体的には、旋回アーム30の高さや、旋回アーム30の水平方向の二次元位置、または、旋回アーム30の旋回開始位置等が、各撮影モードおよび撮影領域に適するように調整される。また、X線ビーム形成機構13の調整(
図24:ステップS14)、被写体保持部421の昇降駆動が可能な構成の場合の被写体保持部421の高さ調整(
図24:ステップS15)が必要に応じて行われる。これにより、X線ビームBXの照射範囲や照射方向、X線ビームBXの高さが調整される。また、X線検出器21の高さ調整(
図24:ステップS16)が必要に応じて行われる。
【0187】
以上のように各部の調整が完了すると、本体部2は、X線撮影を実行する(
図24:ステップS17)。具体的には、本体部2は、旋回アーム30を旋回させて、X線発生器10aおよびX線検出器21を、各撮影モード、撮影領域に合わせた軌跡上を移動させるとともに、X線発生器10aから所要形状のX線ビームBXを出射する。そして、本体部2は、X線検出器21でそのX線ビームBXを検出して、フレームデータとして画像処理装置8に出力する。
【0188】
フレームデータが収集されると、X線撮影装置1は、画像処理装置8にて画像処理を行うことにより、それぞれの撮影モードに応じたX線画像を生成して、表示部81等に該X線画像を表示する(
図24:ステップS18)。以上が、X線撮影装置1の基本的な動作の流れである。次に、ステップS11において、擬似口内法撮影モードが選択された場合における、ステップS18の画像生成処理、および、表示処理について、より詳細に説明する。
【0189】
図25は、擬似口内法撮影モードにおける、画像生成処理および表示処理の詳細なフロー図である。擬似口内法撮影によってフレームデータが収集されると、まず、重ね合わせ法による断層画像を生成するかどうか、判定される(
図25:ステップS101)。ステップS101において、画像生成方法として、重ね合わせ法ではなく、フィルター逆投影法が選択されている場合は、X線撮影装置1は、ステップS105にすすむ。なお、このような断層画像の生成方法の選択は、具体的には、不図示の画像生成方法選択画面が表示部81に表示され、オペレータが操作部82を介して断層画像の生成方法を選択することにより実現される。つまり、操作部82は、画像処理方法選択部として機能する(
図3参照)。
【0190】
ステップS101において、重ね合わせ法の実行が選択された場合、裁断面の位置設定が行われる(
図25:ステップS102)。ここでは、一旦、任意の初期位置に、裁断面の位置が設定される。そして、重ね合わせ法(シフト加算法)が実行されることで、設定された裁断面に関する断層画像が生成される(
図25:ステップS103)。
【0191】
次に、X線撮影装置1は、フィルター逆投影法による断層画像の生成が必要かどうか、判定する(
図25:ステップS104)。生成する必要がある場合は、フィルター逆投影を実行する(
図25:ステップS105)。このフィルター逆投影法の内容については、
図21,22で説明した通りである。フィルター逆投影法が不要な場合、X線撮影装置1は、ステップS108に進む。
【0192】
フィルター逆投影法が実行されると、裁断面の位置設定が行われる(ステップS106)。ここでは、ステップS102と同様、一旦、任意の初期位置に、裁断面の位置が設定される。そして、フィルター逆投影法により生成した3次元データに基づき、設定した裁断面に関する断層画像が生成される(
図25:ステップS107)。
【0193】
以上のようにして、重ね合わせ法による断層画像、フィルター逆投影法による断層画像、またはそれら双方の断層画像が生成されると、X線撮影装置1は、その生成した断層画像を表示部81に表示する(ステップS108)。
【0194】
そして、X線撮影装置1は、裁断面の位置を変更するかどうか判定する(ステップS109)。裁断面の位置に変更があった場合、X線撮影装置1はステップS101に戻って、重ね合わせ法またはフィルター逆投影法の裁断面の位置設定が行われる(
図25:ステップS102,S106)。そして、新たな裁断面の位置に関する断層画像が生成される(
図25:ステップS103,S107)。
【0195】
裁断面の位置の変更は、操作部82を介した所定の操作入力に基づいてなされる。このとき、例えば、
図18に示されるような、標準的な歯列弓90と裁断面(例えば、平面裁断面A1)の画像を表示部81に表示しておき、裁断面を前後に移動させて、最終的に位置が決定されるようにしてもよい。また、このとき、裁断面の形状を変更できるようにしてもよい。ステップS110については後述する。
【0196】
図26は、重ね合わせ法による断層画像Ti1およびフィルター逆投影法による断層画像Ti2の表示例を示す図である。
図26に示されるように、重ね合わせ法による断層画像Ti1は、従来の口内法撮影で得られるX線画像に近い画像となっている。また、フィルター逆投影法による断層画像Ti2は、断層画像Ti1に比べて、コントラストに優れており、輪郭が明瞭で、歯や歯茎の構造が分かりやすくなっている。しかしながら、フィルター逆投影法では、アーチファクトが発生しやすい。したがって、アーチファクトが発生する場合であったとしても、重ね合わせ法による断層画像Ti1を利用することができるので、画像診断を適切に行うことができる。
【0197】
なお、
図26に示される例は、断層画像Ti1,Ti2が同時に表示される例である。しかしながら、これら断層画像Ti1,Ti2が、順次時に表示されるようにしてもよい。つまり、断層画像Ti1と断層画像Ti2とが、所要時間毎に、切り替わりながら表示されるようにしてもよい。
【0198】
図25に戻って、ステップS109が完了すると、X線撮影装置1は、表示方法に変更がないか判定する(ステップS110)。具体的には、例えば、複数の断層画像が表示されている場合に、特定の断層画像が選択される操作が行われると、該特定の断層画像を残余の断層画像よりも強調して表示される。この特定の断層画像の選択は、例えば、操作部82を介して行われる。つまり、操作部82が、特定の断層画像を選択する入力操作を受け付ける、画像選択部として機能する。
【0199】
なお、特定の断層画像の強調する態様としては、以下のようなものが考えられる。つまり、(a)残余の断層画像を非表示とする態様、(b)残余の断層画像よりも、特定の断層画像を大きく表示する態様、(c)特定の断層画像を、予め取得されている歯列弓全体のパノラマ画像上に表示する態様、または、(d)特定の断層画像に選択されていることを示す枠FR1(
図26参照)を表示する態様、である。
【0200】
ここで、(c)の態様は、X線撮影装置1において、予めパノラマ撮影を行って得たパノラマ画像が用いられてもよいし、あるいは、別のX線撮影装置で取得されたパノラマ画像が用いられてもよい。また、(c)の態様において、パノラマ画像において、特定の断層画像が重ねられる部分が、データが破棄等されることで空白とされ、その部分に該特定の断層画像がはめ込まれて表示されるようにしてもよい。もしくは、完全なパノラマ画像上に断層画像を別レイヤーとして重ねて表示するようにしてもよい。
【0201】
なお、強調表示の態様は、上記(a)〜(d)のものに限定されるものではなく、特定の断層画像が他の断層画像よりも注意を引くように表示できるのであれば、どのような表示態様であってもよい。
【0202】
以上のように、選択された特定の断層画像を強調表示することで、読影者が強調表示された断層画像に集中して、画像診断を行うことが可能となる。
【0203】
複数の断層画像が表示されている場合に、
図25に示すステップS109について説明した前述の裁断面の位置の変更は、複数の断層画像の双方に行ってもよいし、一方のみに行ってもよい。一方について裁断面の位置の変更をした後に他方について同じ裁断面の位置の変更を行うようにしてもよい。
【0204】
裁断面の位置の変更を複数の断層画像の双方に行う場合、一方の画像に対して裁断面の位置の変更操作をすると、自動的に他方についても裁断面の位置の変更が行われるようにしてもよい。
【0205】
図25は断層画像の生成方法を、重ね合わせ法とフィルター逆投影法との間で選択するプロセスの例であるが、異なるフィルター関数を用いる複数のフィルター逆投影法の間で選択が行われるプロセスに置き換えてもよい。
【0206】
例えば、前述のフィルター関数F1を用いるフィルター逆投影法とフィルター関数F2を用いるフィルター逆投影法との間で選択を行う構成が考えられる。
【0207】
この場合、ステップS101における重ね合わせ法による画像処理がフィルター関数F1を用いるフィルター逆投影法に置き換わり、ステップS105におけるフィルター逆投影法による画像処理として、フィルター関数F2を用いるフィルター逆投影法が用いられる。
【0208】
なお、表示されるべき複数の断層画像の数は2つに限定されない。例えば、重ね合わせ法を用いた画像処理による断層画像と、フィルター逆投影法BP1による断層画像と、フィルター逆投影法BP2による断層画像の組からなる3つの断層画像を生成して表示するようにしてもよく、フィルター逆投影法BP1による断層画像と、フィルター逆投影法BP2による断層画像と、フィルター逆投影法BP3による断層画像の組からなる3つの断層画像を生成して表示するようにしてもよく、さらに4つ以上の断層画像を生成して表示するようにしてもよい。
【0209】
図27は、擬似口内法撮影モードにおける、画像生成処理および表示処理の他の詳細なフロー図である。
図27に示されるフロー中の工程のうち、
図25に示されるフロー中の工程と同様の工程については、同じ符号を付している。
図25に示されるフローでは、断層画像の生成方法を、重ね合わせ法とフィルター逆投影法との間で選択するようになっている。これに対して、
図27に示されるフローでは、そのような選択工程が省略されており、重ね合わせ法とフィルター逆投影法との双方を適用して、断層画像が生成される。
【0210】
また、
図27に示されるフローでは、断層画像が生成された後、重ね合わせ法による断層画像と、フィルター逆投影法による断層画像とのうち、どちらか一方のみの表示を行うかどうか判定される(
図27:ステップS111)。具体的に、重ね合わせ法による断層画像のみの表示、フィルター逆投影法による断層画像のみの表示、またはその双方の断層画像の表示のうち、いずれかを選択する選択画面が、表示部81に表示され、操作部82を介して、選択操作が行われる。つまり、操作部82が、表示画像選択部として機能する。この選択操作に基づき、ステップS111の判定が行うことが考えられる。そして、その選択にしたがって、どちらか一方のみの表示(
図27:ステップS112)、または、両方の表示(
図27:ステップS113)が行われる。
【0211】
以上が、本実施形態のフローの説明である。
【0212】
なお、
図19に示す重ね合わせ法による画像処理の構成において、画質を向上させるために、さらに障害となる陰影を除去する処理を行ってもよい。詳細には、本件のX線撮影装置の機械構成によれば、擬似口内法撮影領域のX線撮影をする際に頚椎部分など、X線画像データにぼやけてはいるが読影の障害となる陰影を落とす部位をX線ビームが通過することがある。このような部位を、本願では、障害陰影原因部位と称することとする。
【0213】
例えば、前述の重ね合わせ法による画像処理を応用して、擬似口内法撮影で得たフレームデータに写り込んでいる障害陰影原因部位の断層画像データを生成することができる。このような障害陰影原因部位の断層画像データに基づき、障害陰影原因部位の像が擬似口内法撮影の目的の裁断面に投影された場合のボケ像を演算でシミュレーションして生成して、擬似口内法撮影の目的の裁断面の断層画像から減算処理することも可能である。
【0214】
本願出願人の出願にかかる特許文献5(特開平4−144548号公報)にこのような画像処理が開示されており、本願にも適宜適用可能である。当該特許文献5に開示の技術はパノラマ画像に関するものであるが、障害陰影除去の手法を
図19に示す画像処理に応用できる。障害陰影原因部位の断層画像データを生成する際に、フィルター逆投影法による画像処理をするようにしてもよい。
【0215】
なお、本実施形態に係るX線撮影装置1は、擬似口内法撮影とともに、パノラマ撮影、CT撮影およびセファロ撮影を実行可能に構成されている。しかしながら、本発明に係るX線撮影装置は、擬似口内法撮影とともに、パノラマ撮影、CT撮影またはセファロ撮影の中のいずれか1つ以上を実行可能に構成されていてもよい。
【0216】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。