特許第5756818号(P5756818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5756818-車外設置用撮像装置 図000002
  • 特許5756818-車外設置用撮像装置 図000003
  • 特許5756818-車外設置用撮像装置 図000004
  • 特許5756818-車外設置用撮像装置 図000005
  • 特許5756818-車外設置用撮像装置 図000006
  • 特許5756818-車外設置用撮像装置 図000007
  • 特許5756818-車外設置用撮像装置 図000008
  • 特許5756818-車外設置用撮像装置 図000009
  • 特許5756818-車外設置用撮像装置 図000010
  • 特許5756818-車外設置用撮像装置 図000011
  • 特許5756818-車外設置用撮像装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756818
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】車外設置用撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 11/04 20060101AFI20150709BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20150709BHJP
   G03B 17/02 20060101ALI20150709BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   G03B11/04 A
   G03B15/00 V
   G03B15/00 S
   G03B17/02
   H04N5/225 E
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-2262(P2013-2262)
(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公開番号】特開2014-134649(P2014-134649A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2014年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 尚秀
【審査官】 井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−176207(JP,A)
【文献】 特開2011−244417(JP,A)
【文献】 特開2010−014494(JP,A)
【文献】 特表2005−518519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 11/04
G03B 15/00
G03B 17/02
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子と、
前記受光素子の前面に配置され、該受光素子に光を導く透過部材と、
前記透過部材の前面に間隙を維持した状態で該透過部材の前面の一部もしくは全部を被覆する被覆位置、および、該被覆位置よりも該透過部材の前面から退避した退避位置の間を可動する可動体と、
前記透過部材の前面における、水分を含む付着物の付着状態を判定する付着判定部と、
前記付着判定部によって前記付着物が付着していると判定されると、前記可動体を前記退避位置から前記被覆位置へと可動した後、該可動体を該被覆位置から該退避位置へと復帰させる可動制御部と、
前記透過部材の前面に洗浄液を吐出する洗浄手段と、
を備え、
前記可動体は、少なくとも前記被覆位置において前記透過部材に対向する部位の表面濡れ性が、該透過部材の前面の表面濡れ性よりも高く、前記被覆位置から前記退避位置への可動過程で、前記透過部材の表面に付着した水分を可動方向に退避させ
前記付着判定部は、
付着物が付着していると判定した場合に、前記可動制御部が、前記可動体を前記退避位置から前記被覆位置へと可動した後、該可動体を該被覆位置から該退避位置へと復帰させると、付着物の付着状態を再判定し、
前記洗浄手段は、
前記再判定によって付着物が付着していると判定されると、前記洗浄液を吐出することを特徴とする車外設置用撮像装置。
【請求項2】
前記可動制御部は、前記洗浄液の吐出後、再度、前記可動体を前記退避位置から前記被覆位置へと可動した後、該可動体を該被覆位置から該退避位置へと復帰させることを特徴とする請求項1記載の車外設置用撮像装置。
【請求項3】
前記透過部材は、凸レンズであることを特徴とする請求項1または2記載の車外設置用撮像装置。
【請求項4】
記付着判定部は、
前記付着物として水分と汚れとを識別可能に判定し、
前記付着判定部によって汚れが付着していると判定されると、前記洗浄手段は、前記洗浄液を吐出するとともに、前記可動制御部は、前記可動体を前記退避位置から前記被覆位置へと可動した後、該可動体を該被覆位置から該退避位置へと復帰させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の車外設置用撮像装置。
【請求項5】
前記付着判定部は、
時系列に撮像された画像データに基づいて付着物の付着状態を判定するとともに、付着状態と判定された画像領域の輝度に基づいて、水分と汚れとを識別することを特徴とする請求項記載の車外設置用撮像装置。
【請求項6】
前記可動制御部は、
前記洗浄手段によって洗浄液が吐出される場合、該洗浄液の吐出開始後に、前記可動体の前記退避位置から前記被覆位置への可動を開始し、該洗浄液の吐出終了後に、該可動体の該被覆位置から該退避位置への可動を開始することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の車外設置用撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両外の環境を撮像する車外設置用撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の前方や後方あるいは側方を撮像するための撮像装置が搭載され、撮像装置によって撮像された撮像画像をモニターに表示したり、撮像画像から車外環境を分析して走行制御したりする等、さまざまな運転支援を行う車両が広く普及している。
【0003】
こうした撮像装置が車外に設置される場合には、雨滴や汚れ等の付着物がレンズに付着してしまい、車外環境を正確に把握することができず、運転支援に支障が生じるおそれがある。そこで、例えば特許文献1に示されるように、レンズに洗浄液を吐出する洗浄装置を備え、付着物を除去して正確に車外環境を認識することができるようにした撮像装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−220719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示される撮像装置によれば、付着物を除去するために吐出した洗浄液がレンズに付着して残ってしまい、撮像画像が劣化してしまうことがある。また、付着物を除去するたびに洗浄液を吐出することとなると、頻繁に洗浄液を補充しなければならず、メンテナンス作業が煩雑になり、また、洗浄液が不足した場合には、付着物を除去することができなくなってしまうおそれがある。
【0006】
一方で、レンズに付着した付着物を除去するためのワイパーを設けることも考えられるが、こうしたワイパーは一般的にゴム材料であることから、定期的に部品を交換しなければならず、やはりメンテナンス作業が煩雑になってしまう。また、広角レンズのように、曲面形状のレンズを採用した撮像装置においては、ワイパーを曲面に沿わせなければならず、付着物の除去が困難になってしまう。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、付着物を確実に除去しながらも、メンテナンスの頻度を減少させることができる車外設置用撮像装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の車外設置用撮像装置は、受光素子と、受光素子の前面に配置され、受光素子に光を導く透過部材と、透過部材の前面に間隙を維持した状態で透過部材の前面の一部もしくは全部を被覆する被覆位置、および、被覆位置よりも透過部材の前面から退避した退避位置の間を可動する可動体と、透過部材の前面における、水分を含む付着物の付着状態を判定する付着判定部と、付着判定部によって付着物が付着していると判定されると、可動体を退避位置から被覆位置へと可動した後、可動体を被覆位置から退避位置へと復帰させる可動制御部と、透過部材の前面に洗浄液を吐出する洗浄手段と、を備え、可動体は、少なくとも被覆位置において透過部材に対向する部位の表面濡れ性が、透過部材の前面の表面濡れ性よりも高く、被覆位置から退避位置への可動過程で、透過部材の表面に付着した水分を可動方向に退避させ、付着判定部は、付着物が付着していると判定した場合に、可動制御部が、可動体を退避位置から被覆位置へと可動した後、可動体を被覆位置から退避位置へと復帰させると、付着物の付着状態を再判定し、洗浄手段は、再判定によって付着物が付着していると判定されると、洗浄液を吐出することを特徴とする。
また、可動制御部は、洗浄液の吐出後、再度、可動体を退避位置から被覆位置へと可動した後、可動体を被覆位置から退避位置へと復帰させてもよい。
【0009】
また、透過部材は、凸レンズであってもよい。
【0012】
また、付着判定部は、付着物として水分と汚れとを識別可能に判定し、付着判定部によって汚れが付着していると判定されると、洗浄手段は、洗浄液を吐出するとともに、可動制御部は、可動体を退避位置から被覆位置へと可動した後、可動体を被覆位置から退避位置へと復帰させるとよい。
【0013】
また、付着判定部は、時系列に撮像された画像データに基づいて付着物の付着状態を判定するとともに、付着状態と判定された画像領域の輝度に基づいて、水分と汚れとを識別するとよい。
【0014】
また、可動制御部は、洗浄手段によって洗浄液が吐出される場合、洗浄液の吐出開始後に、可動体の退避位置から被覆位置への可動を開始し、洗浄液の吐出終了後に、可動体の被覆位置から退避位置への可動を開始するとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、付着物を確実に除去しながらも、メンテナンスの頻度を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の撮像装置の斜視図である。
図2図1に示す状態からさらに一部の部品を取り外した状態を示す図である。
図3】可動体が被覆位置から退避位置へ可動する際の動力伝達を説明する図である。
図4】可動体が退避位置から被覆位置へ可動する際の動力伝達を説明する図である。
図5】透過部材の表面に付着した水分の除去方法を説明する図である。
図6】撮像装置の適用例を説明する機能ブロック図である。
図7】画像データ生成処理を説明するフローチャートである。
図8】付着物除去処理を説明するフローチャートである。
図9】水分が付着した場合の撮像画像について説明する図である。
図10】汚れが付着した場合の撮像画像について説明する図である。
図11】洗浄モータおよび可動体モータの制御タイミングを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(撮像装置1)
図1および図2は、本実施形態の撮像装置1の斜視図である。撮像装置1は、後述する受光素子をはじめとする、画像を撮像するための光学部品等、各種の部品が収容された筐体3を備えている。この筐体3は、ベース部材と、このベース部材に固定されて各種の部品を収容するカバー部材とで構成される。なお、図1は、筐体3から一部のカバー部材を取り外した状態を示しており、図2は、図1に示す状態からさらに一部の部品を取り外した状態を示している。また、以下では、図1および図2に示すx方向を、撮像装置1の幅方向とし、y方向を撮像装置1の高さ方向とし、z方向を撮像装置1の前後方向として説明する。
【0019】
筐体3には、広角(広画角)レンズである凸レンズで構成される透過部材5が固定されている。この透過部材5は、筐体3内に収容された受光素子の前面に配置されており、透過部材5を介して受光素子に光が導かれるように構成されている。なお、ここでは、透過部材5が凸レンズで構成される場合について説明するが、受光素子に光を導くことができれば、透過部材5の形状は例えば平面でもよく、その形状は特に限定されるものではない。
【0020】
また、筐体3には、可動体7が撮像装置1の高さ方向にスライド自在に設けられている。本実施形態では、相対的に上方に位置する可動体7を7aとし、相対的に下方に位置する可動体7を7bとして説明するが、これら可動体7の数や可動方向は特に限定されるものではない。
【0021】
可動体7a、7bは、透過部材5の前面に間隙を維持して配置されており、透過部材5の前面を被覆する被覆位置、および、被覆位置よりも透過部材5の前面から退避した退避位置の間を可動する。より詳細には、可動体7a、7bが互いに近接する方向に可動して被覆位置に達すると、透過部材5の前面全てが可動体7a、7bによって被覆された状態となり、受光素子への光の導通(透過)が遮断される。一方、可動体7a、7bが互いに離間する方向に可動して退避位置に達すると、透過部材5の前面が外部に露出して、受光素子への光の導通(透過)が可能となる。
【0022】
筐体3内には、可動体7a、7bを可動するための可動体モータMが収容されており、この可動体モータMの動力が、伝達機構9を介して可動体7a、7bに伝達される。具体的には、伝達機構9は、図1に示すピニオン11、伝達ギヤ13を備えている。筐体3には、仕切板3aが固定されており、この仕切板3aを境にして撮像装置1の幅方向外方にピニオン11、伝達ギヤ13が位置している。可動体モータMのモータ軸M1は、仕切板3aを貫通して撮像装置1の幅方向外方まで突出し、この突出先端部にピニオン11が固定されている。また、伝達ギヤ13は、仕切板3aを貫通しつつ筐体3に回転自在に軸支された回転軸13aに固定されており、ピニオン11に噛合している。したがって、可動体モータMが駆動すると、可動体モータMの回転動力によってピニオン11および伝達ギヤ13が一体回転することとなる。
【0023】
また、伝達機構9は、図2に示すように、仕切板3aを境にして撮像装置1の幅方向内方に位置する駆動ギヤ15、上開閉ギヤ17、下開閉ギヤ19、ラック21、連結ギヤ23をさらに備えている。駆動ギヤ15、上開閉ギヤ17、下開閉ギヤ19は、それぞれ、筐体3と仕切板3aとの間に回転自在に架け渡される回転軸15a、17a、19aに固定されている。
【0024】
なお、図2に示すように、上開閉ギヤ17は、歯数を異にして同軸上に配される大径ギヤ部と小径ギヤ部とを備えているが、駆動ギヤ15および下開閉ギヤ19も、上開閉ギヤ17と同様に、大径ギヤ部と小径ギヤ部とを備えている。ただし、駆動ギヤ15および下開閉ギヤ19は、その小径ギヤ部が、大径ギヤ部よりも撮像装置1の幅方向内方に位置しており、図2においては不図示となっている。駆動ギヤ15は、その大径ギヤ部が連結ギヤ23に噛合しており、小径ギヤ部が下開閉ギヤ19の大径ギヤ部に噛合し、下開閉ギヤ19の大径ギヤ部は、上開閉ギヤ17の大径ギヤ部に噛合している。
【0025】
そして、図2では不図示であるが、仕切板3aを境にして撮像装置1の幅方向内方には、上記の伝達ギヤ13の回転軸13aに固定され、駆動ギヤ15の大径ギヤ部に噛合するギヤを備えている。したがって、伝達ギヤ13が回転すると、回転軸13aに固定された不図示のギヤが回転軸13aと一体回転し、このギヤに噛合する駆動ギヤ15が回転する。これにより、駆動ギヤ15の大径ギヤ部に噛合する連結ギヤ23が回転するとともに、駆動ギヤ15の小径ギヤ部に噛合する下開閉ギヤ19が回転し、この下開閉ギヤ19に噛合する上開閉ギヤ17も、下開閉ギヤ19と一体回転することとなる。
【0026】
また、可動体7aには、撮像装置1の幅方向両端部から、撮像装置1の高さ方向(下方)に屈曲するガイド片7aが設けられ、可動体7bには、撮像装置1の幅方向両端部から、撮像装置1の高さ方向(上方)に屈曲するガイド片7bが設けられている。これらガイド片7a、7bには、撮像装置1の高さ方向に延在する長孔形状のガイド孔7a、7bがそれぞれ形成されており、これらガイド孔7a、7bに、ガイドピン25が挿通されている。これにより、可動体7a、7bは、ガイドピン25にガイドされて、撮像装置1の高さ方向に可動することとなる。
【0027】
そして、ガイド片7a、7bには、伝達機構9を構成するラック21がそれぞれ形成されており、このラック21に、上開閉ギヤ17および下開閉ギヤ19の小径ギヤ部が噛合する。より詳細には、可動体7aのガイド片7aに形成されたラック21には、上開閉ギヤ17の小径ギヤ部が噛合しており、可動体7bのガイド片7bに形成されたラック21には、下開閉ギヤ19の小径ギヤ部が噛合している。したがって、可動体7a、7bは、上開閉ギヤ17および下開閉ギヤ19の回転に伴って、上記の被覆位置および退避位置の間を可動することとなる。
【0028】
図3は、可動体7が被覆位置から退避位置へ可動する際の動力伝達を説明する図であり、図4は、可動体7が退避位置から被覆位置へ可動する際の動力伝達を説明する図である。例えば、可動体7a、7bを被覆位置から退避位置へと可動する場合には、ピニオン11が、図3(a)の矢印a1方向に回転するように可動体モータMを駆動する。すると、伝達ギヤ13がピニオン11と一体となって矢印b1方向に回転するとともに、この伝達ギヤ13の回転に伴って、回転軸13aも矢印b1方向に回転する。回転軸13aが矢印b1方向に回転すると、この回転軸13aに固定され、駆動ギヤ15の大径ギヤ部に噛合するギヤも矢印b1方向に回転し、これによって、図3(b)に示すように、駆動ギヤ15が矢印c1方向に回転する。駆動ギヤ15が矢印c1方向に回転すると、駆動ギヤ15の小径ギヤ部に噛合する下開閉ギヤ19が矢印d1方向に回転するとともに、この下開閉ギヤ19に噛合する上開閉ギヤ17が、矢印e1方向に回転する。
【0029】
したがって、上開閉ギヤ17の回転動力がラック21を介して可動体7aに伝達されるとともに、下開閉ギヤ19の回転動力がラック21を介して可動体7bに伝達され、可動体7aが矢印f1方向に、可動体7bが矢印g1方向に可動する。これにより、可動体7が、被覆位置から退避位置まで可動することとなる。
【0030】
一方、可動体7a、7bを退避位置から被覆位置へと可動する場合には、ピニオン11が、図4(a)の矢印a2方向に回転するように可動体モータMを駆動する。すると、伝達ギヤ13がピニオン11と一体となって矢印b2方向に回転するとともに、この伝達ギヤ13の回転に伴って、回転軸13aも矢印b2方向に回転する。回転軸13aが矢印b2方向に回転すると、この回転軸13aに固定され、駆動ギヤ15の大径ギヤ部に噛合するギヤも矢印b2方向に回転し、これによって、図4(b)に示すように、駆動ギヤ15が矢印c2方向に回転する。駆動ギヤ15が矢印c2方向に回転すると、駆動ギヤ15の小径ギヤ部に噛合する下開閉ギヤ19が矢印d2方向に回転するとともに、この下開閉ギヤ19に噛合する上開閉ギヤ17が、矢印e2方向に回転する。
【0031】
したがって、上開閉ギヤ17の回転動力がラック21を介して可動体7aに伝達されるとともに、下開閉ギヤ19の回転動力がラック21を介して可動体7bに伝達され、可動体7aが矢印f2方向に、可動体7bが矢印g2方向に可動する。これにより、可動体7が、退避位置から被覆位置まで可動することとなる。
【0032】
なお、ここでは、撮像装置1の幅方向の一端側に設けられた伝達機構9について説明したが、撮像装置1の幅方向の他端側にも上記と同様に伝達機構9が設けられており、双方の伝達機構9が、連結ギヤ23に固定された回転伝達軸を介して連結されている。したがって、可動体モータMの動力は、2つの伝達機構9を介して可動体7に伝達されることとなる。
【0033】
上記の構成からなる撮像装置1は、主に自動車等の車両外部に設置され、自車両の前方や後方あるいは側方を撮像するものとして利用される。この撮像装置1によって撮像された撮像画像は、車両内に設けられたモニターに表示したり、撮像画像から車外環境を分析して走行制御したりする等、さまざまな方法で運転支援に活用される。このように、撮像装置1が車外に設置される場合には、雨滴をはじめとする水分が透過部材5に付着してしまい、車外環境を正確に把握することができず、運転支援に支障が生じるおそれがある。
【0034】
そこで、本実施形態では、可動体7、より詳細には、可動体7のうち、被覆位置において透過部材5に対向する部位の表面濡れ性を、透過部材5の表面(前面)の表面濡れ性よりも高くし、被覆位置から退避位置への可動体7の可動過程で、透過部材5の表面に付着した水分を可動方向に退避させる。以下に、透過部材5の表面に付着した水分の除去方法について説明する。
【0035】
図5は、透過部材5の表面に付着した水分の除去方法を説明する図である。車両の走行時等、通常時においては、可動体7a、7bが、図5(a)に示すように退避位置に保持されており、撮像装置1による車外環境の撮像が可能となっている。そして、図5(a)に示すように、透過部材5の表面に水分Wが付着したとする。この水分Wを除去する場合には、可動体7を、図5(a)に示す退避位置から、図5(b)に示す被覆位置まで可動する。このとき、可動体7のうち、透過部材5の前面に対向する部分は、透過部材5とほぼ等しい曲率を有する湾曲形状に形成されており、被覆位置においては、透過部材5の前面と可動体7a、7bの背面との間に、0.3mm程度の間隙が維持される。
【0036】
このように、可動体7a、7bを退避位置から被覆位置へと可動した後、可動体7a、7bを被覆位置から退避位置へと復帰させる。すると、可動体7a、7bは、透過部材5の前面よりも表面濡れ性が高いため、透過部材5の表面に付着した水分Wは、図5(c)に示すように、被覆位置から退避位置への可動過程で、可動体7a、7bによって可動方向に引き寄せられる。このようにして、透過部材5の表面に付着した水分Wを、透過部材5の前面から退避させることが可能となる。なお、図5(c)に示すように、可動体7aによって上方に引き寄せられた水分Wは、重力によって透過部材5の表面を流れ落ちるため、一度退避した水分Wが透過部材5の表面に再度付着することはない。
【0037】
上記のように、撮像装置1によれば、透過部材5の表面に付着した水分を適切に除去することが可能である。ただし、例えば、透過部材5の表面に付着した水分が、可動体7と透過部材5との間隙(0.3mm)よりも小さい場合や、泥や砂等の固形状の付着物が付着した場合には、これらの付着物を全て除去するのは難しい。そこで、以下では、上記のさまざまな付着物を適切に除去することが可能となる撮像装置1の適用例について説明する。
【0038】
図6は、撮像装置1の適用例を説明する機能ブロック図である。ここでは、図6に示すように、筐体3の上部に設けられたノズル31と、不図示の洗浄タンクに貯留された洗浄液を吸引してノズル31から透過部材5の前面に吐出する洗浄モータWMと、をさらに備えている。この洗浄モータWMおよび上記の可動体モータMを制御するのが中央制御部51である。中央制御部51は、画像データ生成部53、画像データ保持部55、付着判定部57、可動制御部59、洗浄制御部61を備えている。
【0039】
画像データ生成部53は、筐体3内に設けられた受光素子33への入射光に基づいて画像データを生成し、画像データ保持部55は、画像データ生成部53によって生成された画像データを保持する。付着判定部57は、画像データ保持部55によって保持された画像データから、透過部材5への付着物の有無を判定し、可動制御部59および洗浄制御部61は、それぞれ付着判定部57の判定結果に基づいて、可動体モータMおよび洗浄モータWMを制御する。以下に、付着物の除去にかかる中央制御部51の主な処理について、図7および図8を用いて説明する。
【0040】
図7は、中央制御部51による画像データ生成処理を説明するフローチャートである。この処理は、透過部材5に付着物が付着しているか否かを判定する際に用いる画像データを取得するためのものであり、例えば数m秒〜数秒の間隔で、一定の期間に亘って繰り返し行われる。
【0041】
(ステップS101)
まず、画像データ生成部53は、受光素子33への入射光に基づき、画像データを生成、取得する。
【0042】
(ステップS103)
次に、画像データ保持部55は、画像データ生成部53によって生成された画像データを時系列に記憶し、当該画像データ生成処理を終了する。
【0043】
なお、例えば、撮像装置1によって撮像された撮像画像によって、車両の走行制御を行っている場合には、走行制御処理において撮像画像が常に取得されている。したがって、この場合には、走行制御処理において取得された撮像画像を用いればよく、透過部材5に付着物が付着しているか否かを判定するための専用の画像データ生成処理を行う必要はない。
【0044】
図8は、中央制御部51による付着物除去処理を説明するフローチャートである。この処理は、例えば数秒〜数分の間隔で定期的に行ってもよいし、予め設定された信号が入力された場合に行ってもよく、当該付着物除去処理の開始契機は適宜設計可能である。
【0045】
(ステップS201)
まず、付着判定部57は、透過部材5から付着物の除去が可能な状態であるか、すなわち、透過部材5から付着物を除去しても支障が生じない状態であるかを判定する。その結果、付着物の除去が可能な状態であると判定した場合にはステップS203に処理を移し、付着物の除去が不可能な状態であると判定した場合には当該付着物除去処理を終了する。
【0046】
(ステップS203)
付着判定部57は、透過部材5に付着物が付着しているか否かを判定する付着物判定処理を行う。この付着物判定処理について、図9および図10を用いて説明する。
【0047】
図9は、水分が付着した場合の撮像画像について説明する図であり、図10は、汚れが付着した場合の撮像画像について説明する図である。付着物判定処理においては、上述の画像データ生成処理において時系列で記憶された画像データを解析し、画像データの変移から車両が走行状態であるかを判定する。図9および図10では、車両の走行時に撮像された撮像画像を、(a)、(b)、(c)の順に時系列で示している。これらの図からも明らかなように、車両の走行時には、外部環境に特有の変移が見られることから、時系列に記憶された画像データを解析することで、車両が走行状態であるか否かを判定することができる。
【0048】
一方で、図9(a)に示すように、雨滴等の水分が付着した水分付着部Xや、図10(a)に示すように、砂や泥等の汚れが付着した汚れ付着部Yが存在する場合、これら水分付着部Xおよび汚れ付着部Yにおいては、時系列で記憶された画像データを比較しても、画像データ上に変移が見られない。したがって、付着部判定処理においては、時系列に記憶された画像データを解析し、車両の走行時であるにも拘わらず、一定の期間に亘って画像データに変移が見られない画像領域があった場合に、水分または汚れが付着していると判定する。
【0049】
また、図9および図10を比較しても理解できるように、水分付着部Xは汚れ付着部Yよりも輝度が高い。つまり、水分付着部Xおよび汚れ付着部Yは、いずれも画像データに変移が見られないという点で共通するが、両者は輝度が異なることから、付着物の付着状態と判定された画像領域の輝度を判定することによって、水分付着部Xおよび汚れ付着部Yのいずれが存在するかを識別することが可能である。このように、付着物判定処理においては、時系列の画像データの変移から付着物が付着しているか否かを判定し、付着物が付着していると判定した場合には、該当部位における輝度から、それが水分であるのか汚れであるのかを識別することとなる。
【0050】
(ステップS205)
図8に戻り、付着判定部57は、上記の付着物判定処理の結果、透過部材5に付着部(水分付着部Xまたは汚れ付着部Y)が存在するか否かを判定する。その結果、付着部が存在すると判定した場合にはステップS207に処理を移し、付着部は存在しないと判定した場合には当該付着物除去処理を終了する。
【0051】
(ステップS207)
付着判定部57は、付着部の輝度が予め設定された閾値以上であるか、すなわち、付着物が水分であるかを判定する。その結果、付着物が水分であると判定した場合にはステップS209に処理を移し、付着物は水分ではない(汚れである)と判定した場合にはステップS215に処理を移す。
【0052】
(ステップS209)
可動制御部59は、可動体モータMを駆動し、可動体7を退避位置から被覆位置へと可動した後、可動体7を被覆位置から退避位置へと復帰させる。このように、可動体7が被覆位置から退避位置へと可動する過程で、上述のように、透過部材5の表面に付着した水分が透過部材5の表面から退避する。
【0053】
(ステップS211)
上記ステップS209において可動体7が退避位置に復帰すると、付着判定部57は、上記ステップS203と同様に、付着物判定処理を再度行う。
【0054】
(ステップS213)
付着判定部57は、ステップS211における付着物再判定処理の結果、透過部材5に付着部(水分付着部Xまたは汚れ付着部Y)が存在するか否かを判定する。その結果、付着部が存在すると判定した場合にはステップS215に処理を移し、付着部は存在しないと判定した場合には当該付着物除去処理を終了する。
【0055】
(ステップS215)
洗浄制御部61は、洗浄モータWMを駆動し、透過部材5に洗浄剤を吐出するとともに、可動制御部59は、可動体モータMを駆動し、可動体7を退避位置から被覆位置へと可動した後、可動体7を被覆位置から退避位置へと復帰させる。ここで、洗浄モータWMおよび可動体モータMは、次のようにして制御される。
【0056】
図11は、洗浄モータWMおよび可動体モータMの制御タイミングを説明する図である。ステップS215では、図11に示すとおり、洗浄液の吐出開始後に、可動体7の退避位置から被覆位置への可動を開始し、洗浄液の吐出終了後に、可動体7の被覆位置から退避位置への可動を開始する。このように、洗浄液を吐出する場合、洗浄液の吐出開始後に、可動体7の退避位置から被覆位置への可動を開始することで、透過部材5と可動体7との間に汚れが噛みこんでしまい、可動体7に汚れが付着してしまったり、透過部材5を損傷させてしまったりするおそれを低減することができる。また、洗浄液の吐出終了後に、可動体7の被覆位置から退避位置への可動を開始することで、洗浄液が透過部材5に付着して残ってしまうことなく、透過部材5から確実に洗浄液を除去することができる。
【0057】
上記の付着物除去処理によれば、付着判定部57が、透過部材5への付着物の付着状態を撮像された画像に基づいて判定し、また、撮像された画像の輝度に基づいて、水分と汚れとを識別する。そして、水分が付着していると判定した場合(ステップS207のYES)には、可動体7を退避位置から被覆位置へと可動した後、当該被覆位置から退避位置へと可動体7を復帰させる(ステップS209)。可動体7は透過部材5よりも表面濡れ性が高いため、この可動体7の可動により、透過部材5の表面から水分を除去することができる。
【0058】
このように、可動体7を可動するだけで透過部材5の表面に付着した水分を除去することができるので、洗浄液の消費を低減することができ、洗浄液の補充にかかるメンテナンスの頻度を低減することができる。また、可動体7の可動によって水分を除去することができれば、洗浄液を用いないため、洗浄液がレンズに付着して残ってしまい、撮像画像が劣化してしまうこともない。
【0059】
そして、可動体7の可動後、付着判定部57が、付着物の付着状態を再判定する(ステップS211)とともに、再判定によって、付着物が付着していると判定されると(ステップS213のYES)、洗浄制御部61は、洗浄液を吐出するとともに、可動制御部59は、再度、可動体7を退避位置から被覆位置へと可動した後、可動体7を被覆位置から退避位置へと復帰させる(ステップS215)。したがって、透過部材5に付着した水分が、透過部材5と可動体7との間隙よりも小さく、可動体7の可動によって除去することができない場合には、洗浄剤によって水分が除去されることとなり、洗浄剤の消費を低減しつつ、透過部材5に付着した水分を確実に除去することができる。
【0060】
なお、上記実施形態における撮像装置1の各部品の形状、構造、材質、寸法等は一例に過ぎず、適宜設計可能であることは言うまでもない。透過部材5および可動体7の材質としては、例えば、透過部材5をガラス製とし、可動体7をABS樹脂で構成することが考えられるが、可動体7の表面濡れ性が、透過部材5の表面濡れ性よりも高く、被覆位置から退避位置への可動過程で、透過部材5の表面に付着した水分を可動方向に退避させることができる関係性を維持していれば、両部材の材質はこれに限定されるものではない。
【0061】
なお、ここでは、透過部材5と可動体7との表面濡れ性の関係から、透過部材5に付着した水分を除去することとしたが、例えば、可動体7のうち、透過部材5に対向する部位を毛細管構造とし、毛細管現象によって、透過部材5の表面に付着した水分を、可動体7の可動方向に除去することも可能である。この場合であっても、上記の付着物除去処理によって、透過部材5に付着した付着物を適切に除去することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、可動体7全体を、透過部材5よりも表面濡れ性の高い部材で構成する場合について説明したが、少なくとも被覆位置において透過部材5に対向する部位の表面濡れ性が、透過部材5の前面の表面濡れ性よりも高ければよい。
【0063】
また、上記実施形態で説明した付着物の付着状態の判定方法は一例に過ぎない。いずれにしても、透過部材5の前面における、水分を含む付着物の付着状態を判定することができれば、その具体的な処理方法は特に限定されるものではない。また、上記実施形態では、水分と汚れとを識別可能に判定することとしたが、必ずしも水分と汚れとを識別しなくともよい。
【0064】
なお、本明細書の各制御処理は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、自車両外の環境を撮像する車外設置用撮像装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 …撮像装置
5 …透過部材
7、7a、7b …可動体
33 …受光素子
51 …中央制御部
57 …付着判定部
59 …可動制御部
61 …洗浄制御部(洗浄手段)
WM …洗浄モータ(洗浄手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図11
図9
図10