特許第5756863号(P5756863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5756863位相差フィルム及びそれを備える液晶表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756863
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】位相差フィルム及びそれを備える液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20150709BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20150709BHJP
   C08F 212/06 20060101ALI20150709BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02F1/13363
   C08F212/06
   C08J5/18CET
【請求項の数】9
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-542988(P2013-542988)
(86)(22)【出願日】2012年11月6日
(86)【国際出願番号】JP2012078740
(87)【国際公開番号】WO2013069642
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2014年1月16日
(31)【優先権主張番号】特願2011-246610(P2011-246610)
(32)【優先日】2011年11月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-246612(P2011-246612)
(32)【優先日】2011年11月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JX日鉱日石エネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】松尾 彰
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕司
(72)【発明者】
【氏名】高木 彰
(72)【発明者】
【氏名】曾禰 央司
【審査官】 藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−078905(JP,A)
【文献】 特開平03−091517(JP,A)
【文献】 特開2008−144006(JP,A)
【文献】 国際公開第99/041312(WO,A1)
【文献】 特表平10−501831(JP,A)
【文献】 特開2012−226996(JP,A)
【文献】 特開2011−118137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C08F 212/06
C08J 5/18
G02F 1/13363
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される第一の構造単位及び下記式(2)で表される第二の構造単位を有する共重合体を含有する樹脂組成物からなる樹脂フィルムを、少なくとも一軸方向に延伸してなる位相差フィルムであって、
前記共重合体における前記第一の構造単位の含有比率が、前記第一の構造単位及び前記第二の構造単位の合計を基準として、3〜50モル%であり、
前記共重合体の重量平均分子量Mwが、5万〜50万である、位相差フィルム。
【化1】

[式中、a及びbはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜12の有機残基を示す。a又はbが2以上の整数であるとき、複数存在するR又はRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化2】

[式中、cは0〜5の整数を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜4の有機残基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜12の有機残基を示す。cが2以上の整数であるとき、複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
下記式(1)で表される第一の構造単位及び下記式(2)で表される第二の構造単位を有する共重合体とポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)とを含有する樹脂組成物からなる樹脂フィルムを、少なくとも一軸方向に延伸してなる位相差フィルムであって、
前記樹脂組成物における前記ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)の含有比率が、前記樹脂組成物の総量基準で5〜30質量%であり、
前記共重合体の重量平均分子量Mwが、5万〜50万である、位相差フィルム。
【化3】

[式中、a及びbはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜12の有機残基を示す。a又はbが2以上の整数であるとき、複数存在するR又はRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化4】

[式中、cは0〜5の整数を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜4の有機残基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜12の有機残基を示す。cが2以上の整数であるとき、複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項3】
前記共重合体における前記第一の構造単位の含有比率が、前記第一の構造単位及び前記第二の構造単位の合計を基準として、3〜50モル%である、請求項2に記載の位相差フィルム。
【請求項4】
前記共重合体のガラス転移温度が105〜170℃である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の位相差フィルム。
【請求項5】
光弾性係数の絶対値が5.0×10−12(/Pa)以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の位相差フィルム。
【請求項6】
波長分散値Dが0.70<D<1.06である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の位相差フィルム。
【請求項7】
前記樹脂組成物のガラス転移温度が120℃以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の位相差フィルム。
【請求項8】
前記位相差フィルムの主延伸方向をx軸方向、前記位相差フィルムの面内において前記x軸方向と直交する方向をy軸方向、前記x軸方向及び前記y軸方向とそれぞれ直交する方向をz軸方向としたとき、前記x軸方向における屈折率Nx、前記y軸方向における屈折率Ny及び前記z軸方向における屈折率Nzが、Nz≧Ny>Nxの関係を満たす、請求項1〜7のいずれか一項に記載の位相差フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の位相差フィルムを備える、液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルム及びそれを備える液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)等の液晶表示装置には、光学補償を目的として光学異方性が制御された位相差フィルムが利用されており、従来は主にポリカーボネートや環状ポリオレフィンといった正の複屈折性を有する材料からなる位相差フィルムが利用されてきた(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
一方、負の複屈折性を有する材料からなる位相差フィルムとしては、特許文献2にポリスチレンからなる位相差フィルムが開示されている。
【0004】
また、特許文献3にはシンジオタクチック構造を有するポリスチレン樹脂とポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)を含む、逆波長分散特性を有する位相差フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−255102号公報
【特許文献2】米国特許第5612801号公報
【特許文献3】特開2010−78905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
負の光学異方性を有する材料とは、この材料のフィルムを一軸延伸した場合には延伸方向の屈折率、二軸延伸した場合にはより配向度が上がるように延伸した方向の屈折率、すなわち化学構造的に高分子主鎖の配向方向の屈折率が最小となる材料を言う。なお、正の光学異方性を有する材料とは、化学構造的に高分子主鎖の配向方向の屈折率が最大となる材料を言う。
【0007】
負の複屈折性を有する樹脂の延伸によって得られる位相差フィルムは、厚さ方向の位相差Rthが負である「負の位相差フィルム」となる。位相差Rthは、主延伸方向をフィルム面内のx軸とするとき、上記x軸方向における屈折率をNx、フィルム面内にて上記x軸と直交するy軸方向の屈折率をNy、上記x軸および上記y軸方向のそれぞれと直交する方向における屈折率をNz、フィルムの厚さをdとしたときに、式{(Nx+Ny)/2−Nz}×dにより与えられる。
【0008】
逆波長分散特性を有する位相差フィルムとは、複屈折Δn=|Nx−Ny|が短波長ほど小さく、長波長ほど大きくなる位相差フィルムのことであり、波長分散値Dが1未満となる位相差フィルムである。ここで波長分散値Dは波長450nmにおける複屈折Δn_450と波長550nmにおける複屈折Δn_550との比であり、式Δn_450/Δn_550により与えられる。
【0009】
負の位相差フィルムは、IPSやFFSモード、円偏光型VAモード等における視野角補償フィルムとしての利用が期待されるが、特許文献2に記載の位相差フィルムには、耐熱性が低いという問題がある。
【0010】
同様に特許文献3に記載の光学フィルムについても、文献中に記載は無いがポリスチレンとポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)のブレンドであることから実施例に記載のフィルムのガラス転移温度は115℃程度と推測され、位相差フィルムとして十分な耐熱性を備えているとは言えない。
【0011】
そこで本発明は、耐熱性及び光学特性に優れた、負の位相差フィルムを提供することを目的とする。また本発明は、該位相差フィルムを備える液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面は、下記式(1)で表される第一の構造単位及び下記式(2)で表される第二の構造単位を有する共重合体を含有する樹脂組成物からなる樹脂フィルムを、少なくとも一軸方向に延伸してなる位相差フィルムであって、上記共重合体における上記第一の構造単位の含有比率が、上記第一の構造単位及び上記第二の構造単位の合計を基準として、3〜50モル%である、位相差フィルムに関する。
【化1】
[式中、a及びbはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜12の有機残基を示す。a又はbが2以上の整数であるとき、複数存在するR又はRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化2】
[式中、cは0〜5の整数を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜4の有機残基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜12の有機残基を示す。cが2以上の整数であるとき、複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0013】
このような位相差フィルムは、耐熱性及び光学特性に優れた負の位相差フィルムとして好適に用いることができる。
【0014】
また本発明の他の側面は、下記式(1)で表される第一の構造単位及び下記式(2)で表される第二の構造単位を有する共重合体とポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)とを含有する樹脂組成物からなる樹脂フィルムを、少なくとも一軸方向に延伸してなる位相差フィルムであって、上記樹脂組成物における上記ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)の含有比率が、前記樹脂組成物の総量基準で5〜30質量%である、位相差フィルムに関する。
【化3】
[式中、a及びbはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜12の有機残基を示す。a又はbが2以上の整数であるとき、複数存在するR又はRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化4】
[式中、cは0〜5の整数を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜4の有機残基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜12の有機残基を示す。cが2以上の整数であるとき、複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0015】
このような位相差フィルムは、耐熱性及び光学特性に優れた負の位相差フィルムとして好適に用いることができる。
【0016】
また、このような位相差フィルムにおいて、上記共重合体における上記第一の構造単位の含有比率は、上記第一の構造単位及び上記第二の構造単位の合計を基準として、3〜50モル%であってよい。これにより、位相差フィルムの光学特性が一層優れる。
【0017】
本発明の一態様において、上記共重合体のガラス転移温度は、105〜170℃であってよい。このような位相差フィルムは、耐熱性に一層優れる。
【0018】
本発明の一態様において、上記位相差フィルムは、光弾性係数の絶対値が5.0×10−12(/Pa)以下であってよい。本発明によれば、光弾性係数の絶対値を十分に小さくすることができ、例えば、光弾性係数の絶対値が5.0×10−12(/Pa)以下である位相差フィルムは、外力による複屈折の変化が小さいため、これを大型の液晶表示装置等に使用した場合にコントラストや画面の均一性に優れる。
【0019】
本発明の一態様において、上記樹脂組成物のガラス転移温度は120℃以上であってよい。このような位相差フィルムは、耐熱性に一層優れる。
【0020】
本発明の一態様においては、上記位相差フィルムについて、十分に小さな波長分散特性を達成することができ、例えば波長分散値Dは1.06未満とすることができ、0.70<D<1.06とすることもできる。波長分散値Dが0.70<D<1.06である位相差フィルムは、補償フィルムとして用いた際に、1.06<Dである位相差フィルムを用いた場合に比べてコントラストや色味の視野角特性が優れる。なお、波長分散値Dは、例えば、上記共重合体及びポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)のブレンド比により制御することができる。
【0021】
本発明の一態様において、上記位相差フィルムの主延伸方向をx軸方向、上記位相差フィルムの面内において上記x軸方向と直交する方向をy軸方向、上記x軸方向及び上記y軸方向とそれぞれ直交する方向をz軸方向としたとき、上記x軸方向における屈折率Nx、上記y軸方向における屈折率Ny及び上記z軸方向における屈折率Nzは、Nz≧Ny>Nxの関係を満たすことが好ましい。なお、本明細書において、主延伸方向は、一軸延伸した場合は延伸方向、二軸延伸した場合にはより配向度が上がるように延伸した方向を言う。このような位相差フィルムは、偏光板や、偏光板と液晶セルの間に配置される構成部材の位相差値に起因して生じる、液晶パネル(液晶表示装置)の黒表示における斜め方向の光漏れを小さくする効果がある。
【0022】
本発明の他の側面はまた、上記位相差フィルムを備える、液晶表示装置に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、耐熱性及び光学特性に優れた負の複屈折性を有する位相差フィルムが提供される。また、本発明によれば、該位相差フィルムを備える液晶表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の位相差フィルムの第一実施形態を示す斜視図である。
図2】本発明の位相差フィルムの第二実施形態を示す斜視図である。
図3】位相差フィルムに含まれる共重合体のガラス転移温度と第一の構造単位の含有比率との関係を示す図である。
図4】位相差フィルムに含まれる共重合体の光弾性係数と第一の構造単位の含有比率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の好適な実施形態について以下に説明する。
【0026】
図1は、本発明の位相差フィルムの第一実施形態を示す斜視図である。位相差フィルム10は、樹脂フィルムを一軸方向に延伸してなる位相差フィルムであり、樹脂フィルムは、下記式(1)で表される第一の構造単位及び下記式(2)で表される第二の構造単位を有する共重合体を含有する樹脂組成物からなる。また、共重合体における第一の構造単位の含有比率は、第一の構造単位及び第二の構造単位の合計を基準として、3〜50モル%である。
【0027】
【化5】
【0028】
式中、a及びbはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜12の有機残基を示す。a又はbが2以上の整数であるとき、複数存在するR又はRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0029】
【化6】
【0030】
式中、cは0〜5の整数を示し、Rは水素原子又は水素原子又は炭素数1〜4の有機残基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜12の有機残基を示す。cが2以上の整数であるとき、複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0031】
このような位相差フィルム10は、耐熱性及び光学特性に優れた負の位相差フィルムである。以下、共重合体、樹脂フィルム及び位相差フィルム10について順に説明する。
【0032】
(共重合体)
上述したとおり、共重合体は、式(1)で表される第一の構造単位及び式(2)で表される第二の構造単位を有し、共重合体における第一の構造単位の含有比率は、第一の構造単位及び第二の構造単位の合計を基準として、3〜50モル%である。位相差フィルム10は、共重合体の第一の構造単位の含有比率を3〜50モル%とすることで、優れた耐熱性と、光弾性係数の絶対値の小ささとを両立することができる。
【0033】
式(1)において、R及びRは、炭素数1〜12の有機残基である。有機残基は、好ましくは、炭素原子及び水素原子からなる基、又は、炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる基である。また、有機残基は、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルコキシアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
【0034】
及びRにおける有機残基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。R及びRにおける有機残基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、n−オクチル基、2−オクチル基、3−オクチル基等が挙げられる。
【0035】
式(1)において、a及びbは、0〜3の整数であることが好ましく、耐熱性の点からは0であることがより好ましい。
【0036】
式(2)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜4の有機残基である。有機残基としては、炭素原子及び水素原子からなる基、又は、炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる基が好ましい。このような有機残基としては、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基が好ましい。
【0037】
における有機残基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rにおける有機残基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等が挙げられる。
【0038】
式(2)において、Rは、炭素数1〜12の有機残基である。有機残基は、好ましくは、炭素原子及び水素原子からなる基、又は、炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる基である。また、有機残基は、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルコキシアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
【0039】
における有機残基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rにおける有機残基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、n−オクチル基、2−オクチル基、3−オクチル基等が挙げられる。
【0040】
式(2)において、cは、0〜3の整数であることが好ましく、重合のしやすさの点からは0であることがより好ましい。
【0041】
共重合体における第一の構造単位の含有比率は、第一の構造単位及び第二の構造単位の合計を基準として、5〜35モル%であることが好ましく、10〜30モル%であることがより好ましい。第一の構造単位の含有比率が5モル%以上であると、ガラス転移温度が110℃以上かつ光弾性定数が5.0×10−12/Paとなり、位相差フィルムとして一層好ましい耐熱性と光弾性定数を兼ね備えることが出来る。35モル%以下であると、フィルムのもろさが一層改善されるという効果が奏される。
【0042】
なお、第一の構造単位の含有比率は、共重合体のH−NMRを測定して、第一の構造単位に由来するピークのピーク面積と第二の構造単位に由来するピークのピーク面積とから算出することができる。
【0043】
共重合体の重量平均分子量Mwは、5万〜50万であることが好ましく、10万〜35万であることがより好ましい。Mwが50万以下であると、押し出し延伸加工に十分な流動性が得られ、溶融押し出し、延伸成膜が大きな支障なく行える。また、Mwが5万以上であると、延伸安定性とフィルムに十分な配向度を与えることが出来る。
【0044】
なお、共重合体の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnは、カラム(TSKgel SuperHM−M)が3本接続され、RI検出器が備えられたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製 HLC−8020)を用い、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnとして測定される値を示す。
【0045】
共重合体のガラス転移温度は、105〜170℃であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましい。このような共重合体を含有する位相差フィルムは、耐熱性に一層優れるものとなる。
【0046】
共重合体は、負の位相差フィルムが得られる限り第一の構造単位及び第二の構造単位以外の構造単位をさらに有していてもよい。例えば、共重合体は、(メタ)アクリル酸メチル単位、(メタ)アクリルエチル単位、(メタ)アクリル酸n−ブチル単位、(メタ)アクリル酸イソブチル単位、(メタ)アクリル酸t−ブチル単位、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル単位、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル単位、アクリロニトリル単位、ビニルナフタレン単位、ビニルアントラセン単位、N−ビニルピロリドン単位、アクリロニトリル単位、N−ビニルイミダゾール単位、N−ビニルアセトアミド単位、N−ビニルホルムアルデヒド単位、N−ビニルカプロラクタム単位、N−ビニルカルバゾール単位、N−フェニルマレイミド単位、2−ビニルピリジン単位、4−ビニルピリジン単位、ブタジエン単位およびブタジエン単位の水添によって得られる飽和脂肪族構造単位、イソプレン単位およびイソプレン単位の水添によって得られる飽和脂肪族構造単位、等の構造単位を有していてもよい。
【0047】
共重合体の総量に対する第一の構造単位及び第二の構造単位の総量は、80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましい。このような共重合体によれば、本発明の効果が一層顕著に奏される。
【0048】
共重合体は、例えば、下記式(3)で表される第一のモノマーと下記式(4)で表される第二のモノマーとの共重合反応により、得ることができる。なお、式中、a、b、c、R、R、R及びRは上記と同義である。
【0049】
【化7】
【0050】
【化8】
【0051】
共重合反応は、例えば、第一のモノマーと第二のモノマーとを含有する反応溶液に、アニオン重合開始剤を添加して行うことができる。
【0052】
アニオン重合開始剤としては、例えば、有機アルカリ金属化合物が用いられる。有機アルカリ金属としては、例えば、アルキルリチウム、アリールリチウム、アルキルナトリウム、アリールナトリウム等が挙げられる。具体的なアニオン重合開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物や、ナフタレンナトリウム等の有機ナトリウム化合物が用いられる。この中で好ましいアニオン重合開始剤はn−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物である。
【0053】
アニオン重合開始剤の添加量を適宜変更することで、共重合体の数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを調整することができる。アニオン重合開始剤の添加量は、第一のモノマー及び第二のモノマーの総量を基準として、0.02〜0.5モル%であることが好ましく、0.04〜0.1モル%であることがより好ましい。このような添加量とすることで、好適な範囲の数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを有する共重合体が得られやすくなる。
【0054】
共重合反応の反応温度は、0〜130℃とすることが好ましく、50〜90℃とすることがより好ましい。反応温度を低くすると、共重合体の分子量分布Mw/Mnの値が小さくなる傾向があり、反応温度を高くすると、共重合体の分子量分布Mw/Mnの値が大きくなる傾向がある。
【0055】
共重合反応の反応時間は、0.5〜12時間とすることが好ましく、1〜6時間とすることがより好ましい。
【0056】
共重合反応は、溶媒中で行うことが好ましく、重合溶媒は有機アルカリ金属化合物と反応しない溶媒が好ましい。当該溶媒としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、t−ブチルベンゼン等を用いることが好ましい。
【0057】
(樹脂フィルム)
樹脂フィルムは、上記共重合体を含有する樹脂組成物からなるフィルムである。樹脂フィルムの製造方法は特に限定されず、例えば、キャスティング法、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法等の公知の方法を用いればよい。
【0058】
キャスティング法で用いられる成形装置としては、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーター法等が使用できる。また、溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられる。
【0059】
キャスティング法では、上記共重合体を含有する成膜溶液を用いて樹脂フィルムを作製することができる。ここで成膜溶液の溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレン等のハロゲン化アルカン;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の環状脂肪族溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
【0060】
樹脂フィルムを構成する樹脂組成物は、上記共重合体以外の成分を含有していてもよい。例えば、樹脂組成物には、上記溶媒が含まれていてもよい。溶媒の含有量は、耐熱性および延伸操作における位相差発現の観点から、5000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましい。
【0061】
また、樹脂フィルムを構成する樹脂組成物は、本発明の主旨を超えない範囲で、上記共重合体以外の高分子、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、シリカ、アルミナ、色素材料、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、可塑剤、オイル等を含有していてもよい。
【0062】
樹脂フィルムを構成する樹脂組成物における、上記共重合体の含有量は、樹脂組成物の総量を基準として50〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましい。共重合体の含有量が上記範囲であると、本発明の効果が一層顕著に奏される。
【0063】
(位相差フィルム10)
位相差フィルム10は、樹脂フィルムを延伸して得られるフィルムである。フィルムの延伸方法は、一般的にフィルム面内方向に延伸するフラット法延伸とチューブ状に膨らませて延伸するチューブラ法延伸に大分類されるが、厚み及び延伸倍率の精度の高いフラット法延伸が特に好ましい。またフラット法延伸は、一軸延伸法と二軸延伸法に分類され、一軸延伸法としては、自由幅一軸延伸法と一定幅一軸延伸法がある。一方、二軸延伸法としては、二段階自由幅二軸延伸法、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法があり、さらに逐次二軸延伸には全テンター方式とロールテンター方式がある。本発明の透明性樹脂組成物から位相差フィルムを製造するための延伸方法は、上記延伸方法のいずれを用いても良く、要求される3次元屈折率および位相差量により適宜最も適した方法を選択すればよい。
【0064】
延伸時の温度は、共重合体のガラス転移温度をTgとして、Tg+5℃〜Tg+40℃であることが好ましく、Tg+5℃〜Tg+25℃であることがより好ましい。このような延伸温度で延伸を行うことで、位相差フィルムの機械特性及び光学特性が一層向上する。
【0065】
位相差フィルム10の厚みは特に限定されないが、10〜500μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましい。位相差フィルムの厚みを10μm以上とすることで、機械特性及び2次加工時におけるハンドリング性が一層向上する傾向があり、500μm以下とすることで可とう性が一層向上する傾向がある。
【0066】
位相差フィルム10は、上記特定の共重合体を用いて作製されているため、光弾性係数の絶対値が十分に小さい。位相差フィルム10の光弾性係数の絶対値は、5.0×10−12(/Pa)以下であることが好ましく、3.0×10−12(/Pa)以下であることがより好ましい。このような位相差フィルム10は、外力による複屈折の変化が十分に小さく、液晶表示装置等の用途に一層好適に用いることができる。
【0067】
位相差フィルム10は、位相差フィルム10の主延伸方向をx軸方向、位相差フィルム10の面内においてx軸方向と直交する方向をy軸方向、x軸方向及びy軸方向とそれぞれ直交する方向(位相差フィルム10の主面と直交する方向)をz軸方向としたとき、x軸方向における屈折率Nx、y軸方向における屈折率Ny及びz軸方向における屈折率Nzが、Nz≧Ny>Nxの関係を満たすことが好ましい。
【0068】
なお、本明細書において、主延伸方向は、一軸延伸した場合は延伸方向、二軸延伸した場合にはより配向度が上がるように延伸した方向を言う。このような位相差フィルムは、偏光板や、偏光板と液晶セルの間に配置される構成部材の位相差値に起因して生じる、液晶パネル(液晶表示装置)の黒表示における斜め方向の光漏れを小さくする効果がある。
【0069】
本実施形態においては、上記共重合体を含む樹脂組成物により形成された樹脂フィルムを延伸することで、上記関係を満たす位相差フィルム10を容易に得ることができる。
【0070】
位相差フィルム10には、ガスバリヤー性、耐傷つき性、耐薬品性、防眩性等の機能を付与する目的で、少なくとも一方面上に薄膜が形成されていてもよい。このような薄膜を形成する方法としては、薄膜を形成するための樹脂溶液を、グラビアロールコーティング法、マイヤーバーコーティング法、リバースロールコーティング法、ディップコーティング法、エアーナイフコーティング法、カレンダーコーティング法、スキーズコーティング法、キスコーティング法、ファンテンコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法等の方法により、位相差フィルム10の一面上に塗工する方法が挙げられる。
【0071】
なお、薄膜を形成するための樹脂溶液としては、熱可塑性樹脂;アミノ基、イミノ基、エポキシ基、シリル基等を有する熱硬化性樹脂;これらの樹脂の混合物;等を含有する樹脂溶液が挙げられる。また、当該樹脂溶液には、重合禁止剤、ワックス類、分散剤、色素材料、溶剤、可塑剤、紫外線吸収剤、無機フィラー等が添加されていてもよい。
【0072】
上記薄膜は、上記塗工後、必要に応じて放射線照射による硬化又は加熱による熱硬化を行い、硬化薄膜層としたものであってもよい。また、このような薄膜を形成する際に印刷を行う場合には、グラビア方式、オフセット方式、フレキソ方式、シルクスクリーン方式等の方法を用いることができる。
【0073】
また、位相差フィルム10には、ガスシール性等を付与する目的から、少なくとも一方面上に、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、亜鉛等を主成分とする金属酸化物層が形成されていてもよい。このような金属酸化物層は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等により形成することができる。
【0074】
位相差フィルム10は、他のフィルムと積層化して用いることができる。積層化の方法としては、従来公知の方法が適宜採用でき、例えば、ヒートシール法、インパルスシール法、超音波接合法、高周波接合法等の熱接合方法、押出ラミネート法、ホットメルトラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、無溶剤接着ラミネート法、サーマルラミネート法、共押出法等のラミネート加工方法等が挙げられる。
【0075】
また、積層化させるフィルムとしては、例えば、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、ポリフッ化ビニル樹脂フィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂フィルム、ポリアクリロニトリル樹脂フィルム、ナイロン系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、アセテート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリアクリレート系樹脂フィルム等が挙げられる。
【0076】
次いで、本発明の第二実施形態について説明する。図2は、本発明の位相差フィルムの第二実施形態を示す斜視図である。位相差フィルム20は、樹脂フィルムを少なくとも一軸方向に延伸してなる位相差フィルムであり、樹脂フィルムは、下記式(1)で表される第一の構造単位及び下記式(2)で表される第二の構造単位を有する共重合体とポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)とを含有する樹脂組成物からなる。また、樹脂組成物におけるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)の含有比率は、樹脂組成物の総量基準で5〜30質量%である。
【0077】
【化9】
【0078】
式中、a及びbはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜12の有機残基を示す。a又はbが2以上の整数であるとき、複数存在するR又はRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0079】
【化10】
【0080】
式中、cは0〜5の整数を示し、Rは水素原子又は水素原子又は炭素数1〜4の有機残基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜12の有機残基を示す。cが2以上の整数であるとき、複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0081】
このような位相差フィルム20は、耐熱性及び光学特性に優れた負の位相差フィルムである。以下、共重合体、樹脂フィルム及び位相差フィルム20について順に説明する。
【0082】
(共重合体)
上述したとおり、共重合体は、式(1)で表される第一の構造単位及び式(2)で表される第二の構造単位を有する。
【0083】
式(1)において、R及びRは、炭素数1〜12の有機残基である。有機残基は、好ましくは、炭素原子及び水素原子からなる基、又は、炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる基である。また、有機残基は、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルコキシアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
【0084】
及びRにおける有機残基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。R及びRにおける有機残基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、n−オクチル基、2−オクチル基、3−オクチル基等が挙げられる。
【0085】
式(1)において、a及びbは、0〜3の整数であることが好ましく、耐熱性の点からは0であることがより好ましい。
【0086】
式(2)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜4の有機残基である。有機残基としては、炭素原子及び水素原子からなる基、又は、炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる基が好ましい。このような有機残基としては、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基が好ましい。
【0087】
における有機残基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rにおける有機残基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等が挙げられる。
【0088】
式(2)において、Rは、炭素数1〜12の有機残基である。有機残基は、好ましくは、炭素原子及び水素原子からなる基、又は、炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる基である。また、有機残基は、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルコキシアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
【0089】
における有機残基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rにおける有機残基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、n−オクチル基、2−オクチル基、3−オクチル基等が挙げられる。
【0090】
式(2)において、cは、0〜3の整数であることが好ましく、重合のしやすさの点からは0であることがより好ましい。
【0091】
共重合体における第一の構造単位の含有比率は、第一の構造単位及び第二の構造単位の合計を基準として、3〜50モル%であることが好ましく、5〜35モル%であることがより好ましく、10〜30モル%であることが更に好ましい。第一の構造単位が3モル%以上であるとガラス転移温度が110℃以上の好適な値となり易く、位相差フィルムにおける耐熱性が一層向上する傾向にある。50モル%以下であると、フィルムのもろさが一層改善されるという効果が奏される。
【0092】
なお、第一の構造単位の含有比率は、共重合体のH−NMRを測定して、第一の構造単位に由来するピークのピーク面積と第二の構造単位に由来するピークのピーク面積とから算出することができる。
【0093】
共重合体の重量平均分子量Mwは、5万〜50万であることが好ましく、10万〜35万であることがより好ましい。Mwが50万以下であると、押し出し延伸加工に十分な流動性が得られ、溶融押し出し、延伸成膜が大きな支障なく行える。また、Mwが5万以上であると、延伸安定性とフィルムに十分な配向度を与えることが出来る。
【0094】
なお、共重合体の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnは、カラム(TSKgel SuperHM−M)が3本接続され、RI検出器が備えられたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製 HLC−8020)を用い、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnとして測定される値を示す。
【0095】
共重合体のガラス転移温度は、105〜170℃であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましい。このような共重合体をポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)とブレンドすることで、位相差フィルムの耐熱性が一層向上する傾向にある。
【0096】
共重合体は、負の位相差フィルムが得られる限り第一の構造単位及び第二の構造単位以外の構造単位をさらに有していてもよい。例えば、共重合体は、(メタ)アクリル酸メチル単位、(メタ)アクリルエチル単位、(メタ)アクリル酸n−ブチル単位、(メタ)アクリル酸イソブチル単位、(メタ)アクリル酸t−ブチル単位、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル単位、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル単位、アクリロニトリル単位、ビニルナフタレン単位、ビニルアントラセン単位、N−ビニルピロリドン単位、アクリロニトリル単位、N−ビニルイミダゾール単位、N−ビニルアセトアミド単位、N−ビニルホルムアルデヒド単位、N−ビニルカプロラクタム単位、N−ビニルカルバゾール単位、N−フェニルマレイミド単位、2−ビニルピリジン単位、4−ビニルピリジン単位、ブタジエン単位およびブタジエン単位の水添によって得られる飽和脂肪族構造単位、イソプレン単位およびイソプレン単位の水添によって得られる飽和脂肪族構造単位、等の構造単位を有していてもよい。
【0097】
共重合体の総量に対する第一の構造単位及び第二の構造単位の総量は、80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましい。このような共重合体によれば、本発明の効果が一層顕著に奏される。
【0098】
共重合体は、例えば、下記式(3)で表される第一のモノマーと下記式(4)で表される第二のモノマーとの共重合反応により、得ることができる。なお、式中、a、b、c、R、R、R及びRは上記と同義である。
【0099】
【化11】
【0100】
【化12】
【0101】
共重合反応は、例えば、第一のモノマーと第二のモノマーとを含有する反応溶液に、アニオン重合開始剤を添加して行うことができる。
【0102】
アニオン重合開始剤としては、例えば、有機アルカリ金属化合物が用いられる。有機アルカリ金属としては、例えば、アルキルリチウム、アリールリチウム、アルキルナトリウム、アリールナトリウム等が挙げられる。具体的なアニオン重合開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物や、ナフタレンナトリウム等の有機ナトリウム化合物が用いられる。この中で好ましいアニオン重合開始剤はn−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物である。
【0103】
アニオン重合開始剤の添加量を適宜変更することで、共重合体の数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを調整することができる。アニオン重合開始剤の添加量は、第一のモノマー及び第二のモノマーの総量を基準として、0.02〜0.5モル%であることが好ましく、0.04〜0.1モル%であることがより好ましい。このような添加量とすることで、好適な範囲の数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを有する共重合体が得られやすくなる。
【0104】
共重合反応の反応温度は、0〜130℃とすることが好ましく、50〜90℃とすることがより好ましい。反応温度を低くすると、共重合体の分子量分布Mw/Mnの値が小さくなる傾向があり、反応温度を高くすると、共重合体の分子量分布Mw/Mnの値が大きくなる傾向がある。
【0105】
共重合反応の反応時間は、0.5〜12時間とすることが好ましく、1〜6時間とすることがより好ましい。
【0106】
共重合反応は、溶媒中で行うことが好ましく、重合溶媒は有機アルカリ金属化合物と反応しない溶媒が好ましい。当該溶媒としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、t−ブチルベンゼン等を用いることが好ましい。
【0107】
(樹脂フィルム)
樹脂フィルムは、上記共重合体とポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)とを含有する樹脂組成物からなるフィルムである。樹脂フィルムの製造方法は特に限定されず、例えば、キャスティング法、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法等の公知の方法を用いればよい。
【0108】
キャスティング法で用いられる成形装置としては、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーター法等が使用できる。また、溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられる。
【0109】
キャスティング法では、上記共重合体を含有する成膜溶液を用いて樹脂フィルムを作製することができる。ここで成膜溶液の溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレン等のハロゲン化アルカン;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
【0110】
樹脂フィルムを構成する樹脂組成物は、上記共重合体とポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)とを含有する。
【0111】
樹脂組成物におけるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)の含有比率は、樹脂組成物の総量基準で5〜30質量%である。本実施形態においては、上記共重合体及びポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)をブレンドし、更にポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)の含有比率を上記範囲内とすることで、位相差フィルム20における優れた耐熱性と優れた光学特性との両立が達成される。
【0112】
樹脂組成物のガラス転移温度Tgは、耐熱性の観点から120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。Tgが120℃以上であると、高温環境等に曝された場合の位相差値の変動や寸法変化等が十分に抑制される。
【0113】
樹脂フィルムを構成する樹脂組成物は、上記共重合体及びポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)以外の成分を含有していてもよい。例えば、樹脂組成物には、上記溶媒が含まれていてもよい。溶媒の含有量は、耐熱性および延伸操作における位相差発現の観点から、5000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましい。
【0114】
また、樹脂フィルムを構成する樹脂組成物は、本発明の主旨を超えない範囲で、上記以外の高分子、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、シリカ、アルミナ、色素材料、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、可塑剤、オイル等を含有していてもよい。
【0115】
樹脂フィルムを構成する樹脂組成物において、上記共重合体及びポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)の合計量は、樹脂組成物の総量基準で、50〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましい。上記合計量が上記範囲内であると、本発明の効果が一層顕著に奏される。
【0116】
(位相差フィルム20)
位相差フィルム20は、樹脂フィルムを延伸して得られるフィルムである。フィルムの延伸方法は、一般的にフィルム面内方向に延伸するフラット法延伸とチューブ状に膨らませて延伸するチューブラ法延伸に大分類されるが、厚み及び延伸倍率の精度の高いフラット法延伸が特に好ましい。またフラット法延伸は、一軸延伸法と二軸延伸法に分類され、一軸延伸法としては、自由幅一軸延伸法と一定幅一軸延伸法がある。一方、二軸延伸法としては、二段階自由幅二軸延伸法、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法があり、さらに逐次二軸延伸には全テンター方式とロールテンター方式がある。本発明の透明性樹脂組成物から位相差フィルムを製造するための延伸方法は、上記延伸方法のいずれを用いても良く、要求される3次元屈折率および位相差量により適宜最も適した方法を選択すればよい。
【0117】
延伸時の温度は、共重合体のガラス転移温度をTgとして、Tg+5℃〜Tg+40℃であることが好ましく、Tg+5℃〜Tg+25℃であることがより好ましい。このような延伸温度で延伸を行うことで、位相差フィルムの機械特性及び光学特性が一層向上する。
【0118】
位相差フィルム20の厚みは特に限定されないが、10〜500μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましい。位相差フィルムの厚みを10μm以上とすることで、機械特性及び2次加工時におけるハンドリング性が一層向上する傾向があり、500μm以下とすることで可とう性が一層向上する傾向がある。
【0119】
位相差フィルム20の波長分散値Dは1.06未満であることが好ましい。このような位相差フィルム20は、補償フィルムとして用いた際に、波長分散値Dが1.06以上である位相差フィルムを用いた場合に比べてコントラストや色味の視野角特性が優れる。また、位相差フィルム20の波長分散値Dは、1.00未満であってもよい。波長分散値Dが1.00未満のフィルムは逆波長分散フィルムと呼ばれ、補償フィルムとして用いた際にコントラストや色味の視野角特性を一層大きく改善することができる。
【0120】
位相差フィルム20は、位相差フィルム20の主延伸方向をx軸方向、位相差フィルム20の面内においてx軸方向と直交する方向をy軸方向、x軸方向及びy軸方向とそれぞれ直交する方向(位相差フィルム20の主面と直交する方向)をz軸方向としたとき、x軸方向における屈折率Nx、y軸方向における屈折率Ny及びz軸方向における屈折率Nzが、Nz≧Ny>Nxの関係を満たすことが好ましい。
【0121】
なお、本明細書において、主延伸方向は、一軸延伸した場合は延伸方向、二軸延伸した場合にはより配向度が上がるように延伸した方向を言う。このような位相差フィルムは、偏光板や、偏光板と液晶セルの間に配置される構成部材の位相差値に起因して生じる、液晶パネル(液晶表示装置)の黒表示における斜め方向の光漏れを小さくする効果がある。
【0122】
本実施形態においては、上記共重合体を含む樹脂組成物により形成された樹脂フィルムを延伸することで、上記関係を満たす位相差フィルム20を容易に得ることができる。
【0123】
位相差フィルム20には、ガスバリヤー性、耐傷つき性、耐薬品性、防眩性等の機能を付与する目的で、少なくとも一方面上に薄膜が形成されていてもよい。このような薄膜を形成する方法としては、薄膜を形成するための樹脂溶液を、グラビアロールコーティング法、マイヤーバーコーティング法、リバースロールコーティング法、ディップコーティング法、エアーナイフコーティング法、カレンダーコーティング法、スキーズコーティング法、キスコーティング法、ファンテンコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法等の方法により、位相差フィルム20の一面上に塗工する方法が挙げられる。
【0124】
なお、薄膜を形成するための樹脂溶液としては、熱可塑性樹脂;アミノ基、イミノ基、エポキシ基、シリル基等を有する熱硬化性樹脂;これらの樹脂の混合物;等を含有する樹脂溶液が挙げられる。また、当該樹脂溶液には、重合禁止剤、ワックス類、分散剤、色素材料、溶剤、可塑剤、紫外線吸収剤、無機フィラー等が添加されていてもよい。
【0125】
上記薄膜は、上記塗工後、必要に応じて放射線照射による硬化又は加熱による熱硬化を行い、硬化薄膜層としたものであってもよい。また、このような薄膜を形成する際に印刷を行う場合には、グラビア方式、オフセット方式、フレキソ方式、シルクスクリーン方式等の方法を用いることができる。
【0126】
また、位相差フィルム20には、ガスシール性等を付与する目的から、少なくとも一方面上に、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、亜鉛等を主成分とする金属酸化物層が形成されていてもよい。このような金属酸化物層は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等により形成することができる。
【0127】
位相差フィルム20は、他のフィルムと積層化して用いることができる。積層化の方法としては、従来公知の方法が適宜採用でき、例えば、ヒートシール法、インパルスシール法、超音波接合法、高周波接合法等の熱接合方法、押出ラミネート法、ホットメルトラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、無溶剤接着ラミネート法、サーマルラミネート法、共押出法等のラミネート加工方法等が挙げられる。
【0128】
また、積層化させるフィルムとしては、例えば、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、ポリフッ化ビニル樹脂フィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂フィルム、ポリアクリロニトリル樹脂フィルム、ナイロン系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、アセテート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリアクリレート系樹脂フィルム等が挙げられる。
【0129】
次に、本発明の液晶表示装置の好適な実施形態について説明する。
【0130】
第一実施形態に係る液晶表示装置は、位相差フィルム10を備えることを特徴とする。位相差フィルム10は、液晶表示装置における位相差フィルムとして好適に用いることができる。より具体的には、位相差フィルム10は、反射型液晶表示装置における1/4λ板、透過型液晶表示装置における1/4λ板、液晶プロジェクタ装置における1/2λ板又は1/4λ板、液晶表示装置中の偏光フィルムの保護フィルム又は反射防止フィルム、等の用途に好適に用いることができる。
【0131】
すなわち、液晶表示装置は、1/4λ板、1/2λ板、保護フィルム又は反射防止フィルムとして位相差フィルム10を備えることが好ましい。液晶表示装置の位相差フィルム10以外の構成は、特に制限されず、従来公知の液晶表示フィルムと同様のものでよい。
【0132】
また、位相差フィルム10は、少なくとも一方面上に、インジウムスズオキサイド、インジウムジンクオキサイド等のセラミック薄膜を、DC又はグロー放電を用いたプラズマプロセスにより成膜した上で、タッチパネル等の液晶表示装置における透明電極フィルムとして、使用することもできる。
【0133】
また、第二実施形態に係る液晶表示装置は、位相差フィルム20を備えることを特徴とする。位相差フィルム20は、液晶表示装置における位相差フィルムとして好適に用いることができる。より具体的には、位相差フィルム20は、IPS、FFSモードや円偏光型VAモード等の視野角補償フィルム用途に好適に用いることができる。
【0134】
すなわち、液晶表示装置は、視野角補償フィルムとして位相差フィルム20を備えることが好ましい。液晶表示装置の位相差フィルム20以外の構成は、特に制限されず、従来公知の液晶表示フィルムと同様のものでよい。
【0135】
また、位相差フィルム20は、少なくとも一方面上に、インジウムスズオキサイド、インジウムジンクオキサイド等のセラミック薄膜を、DC又はグロー放電を用いたプラズマプロセスにより成膜した上で、タッチパネル等の液晶表示装置における透明電極フィルムとして、使用することもできる。
【0136】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0137】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0138】
まず、第一実施形態に係る位相差フィルムに係る実施例について説明する。
【0139】
(合成例1−1:共重合体1−1の合成)
100mL容積のガラス製反応器に、窒素雰囲気下にてスチレン6.33g(60.9mmol)と1,1−ジフェニルエチレン1.26g(7.00mmol)とを計り取り、シクロヘキサン20mLで希釈した。この溶液を氷浴にて冷却した後、0.10Mのs−ブチルリチウム/シクロヘキサン溶液を少量ずつ、系が淡黄色を呈するまで滴下し残存水分を取り除いた。
【0140】
ついで0.10Mのs−ブチルリチウム/シクロヘキサン溶液0.25mL(s−ブチルリチウムとして0.025mmol)を加えた。この溶液を撹拌しながら50℃のオイルバスにて加熱すると濃赤色に変化し、重合反応の進行に伴う粘度の上昇が観察された。そのまま4時間加熱撹拌を続けた後、メタノール5mLを加えて反応を停止した。反応溶液を2Lのメタノール中へ注ぎ、白色沈殿を濾別した。得られた沈殿を沸騰メタノールで洗浄した後、120℃、減圧下で12時間乾燥し、スチレン/1,1−ジフェニルエチレン共重合体を得た(以下、「共重合体1−1」と称する。)。
【0141】
得られた共重合体1−1について、下記の方法で、第一の構造単位及び第二の構造単位の含有比率、分子量、分子量分布及びガラス転移温度(Tg)を測定した。測定結果は、表1に示すとおりであった。
【0142】
(含有比率の測定)
超伝導核磁気共鳴吸収装置(NMR、Varian社製 INOVA600)を用い、で得られた共重合体のH−NMRを測定し、芳香族プロトン、メチル、メチレン、メチンのピーク面積比から、第一の構造単位及び第二の構造単位の含有比率を算出した。
【0143】
(分子量及び分子量分布の測定)
カラム(TSKgel SuperHM−M)を3本接続し、RI検出器を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製 HLC−8020)を用いて測定した。溶媒としてテトラヒドロフランを用い、得られた共重合体のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0144】
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
示差走査熱量計(DSC、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 DSC7020)を用いて測定した。具体的には、窒素下、20℃/minで室温(25℃)から230℃まで昇温し、その後20℃/minで室温まで戻し、再び10℃/minで230℃まで昇温した。2度目の昇温過程で測定されるガラス転移温度をTgとした。なお、測定には、得られた共重合体を再沈殿精製して得られたパウダーを用いた。
【0145】
(合成例1−2:共重合体1−2の合成)
スチレンの使用量を5.33g(51.3mmol)とし、1,1−ジフェニルエチレンの使用量を2.29g(12.7mmol)としたこと以外は、合成例1−1と同様にして、スチレン/1,1−ジフェニルエチレン共重合体を得た(以下、「共重合体1−2」と称する。)。
【0146】
得られた共重合体1−2について、上記の方法で、第一の構造単位及び第二の構造単位の含有比率、分子量、分子量分布及びガラス転移温度(Tg)を測定した。測定結果は、表1に示すとおりであった。
【0147】
(合成例1−3:共重合体1−3の合成)
スチレンの使用量を4.61g(44.3mmol)とし、1,1−ジフェニルエチレンの使用量を3.45g(19.2mmol)としたこと以外は、合成例1−1と同様にして、スチレン/1,1−ジフェニルエチレン共重合体を得た(以下、「共重合体1−3」と称する。)。
【0148】
得られた共重合体1−3について、上記の方法で、第一の構造単位及び第二の構造単位の含有比率、分子量、分子量分布及びガラス転移温度(Tg)を測定した。測定結果は、表1に示すとおりであった。
【0149】
【表1】
【0150】
(実施例1−1)
合成例1−1で得られた共重合体1−1を10質量%含むクロロベンゼン溶液を調製し、ガラス板上にキャスト法によってフィルム状に供給し、72時間自然乾燥させた。得られたフィルムをガラス板から剥離した後、減圧下、120℃でクロロベンゼン濃度が500massppm以下になるまで乾燥し、未延伸フィルム1−1を得た。得られた未延伸フィルム1−1の透明性は高く、膜厚は36μmであった。
【0151】
次に、得られた未延伸フィルム1−1を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、共重合体1−1のTg+12℃(134℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率2.0倍の一軸延伸を行い、厚み25μmの位相差フィルム1−1を得た。
【0152】
(実施例1−2)
共重合体1−1にかえて共重合体1−2を用いたこと以外は実施例1−1と同様の方法により、未延伸フィルム1−2を得た。得られた未延伸フィルム1−2の透明性は高く、膜厚は42μmであった。
【0153】
次に、得られた未延伸フィルム1−2を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、共重合体1−2のTg+12℃(148℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率2.0倍の一軸延伸を行い、厚み30μmの位相差フィルム1−2を得た。
【0154】
(実施例1−3)
共重合体1−1にかえて共重合体1−3を用いたこと以外は実施例1−1と同様の方法により、未延伸フィルム1−3を得た。得られた未延伸フィルム1−3の透明性は高く、膜厚は53μmであった。
【0155】
次に、得られた未延伸フィルム1−3を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、共重合体1−3のTg+12℃(167℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率2.0倍の一軸延伸を行い、厚み37μmの位相差フィルム1−3を得た。
【0156】
(実施例1−4)
実施例1−2と同様の方法により、透明性の高い膜厚42μmの未延伸フィルム1−4を得た。
【0157】
次に、得られた未延伸フィルム1−4を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、共重合体1−2のTg+12℃(148℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率1.4倍の同時二軸延伸を行い、厚み29μmの位相差フィルム1−4を得た。
【0158】
(実施例1−5)
実施例1−2と同様の方法により、透明性の高い膜厚51μmの未延伸フィルム1−5を得た。
【0159】
次に、得られた未延伸フィルム1−5を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、共重合体1−2のTg+12℃(148℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率1.7倍の同時二軸延伸を行い、厚み24μmの位相差フィルム1−5を得た。
【0160】
(比較例1−1)
共重合体1−1にかえて、市販のポリスチレン(和光純薬、ガラス転移温度:100℃、重量平均分子量Mw:165×10、分子量分布Mw/Mn:2.0)を用いたこと以外は実施例1−1と同様の方法により、未延伸フィルム1−6を得た。得られた未延伸フィルム1−6の透明性は高く、膜厚は35μmであった。
【0161】
次に、得られた未延伸フィルム1−6を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、ポリスチレンのTg+12℃(112℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率2.0倍の一軸延伸を行い、厚み25μmの位相差フィルム1−6を得た。
【0162】
実施例1−1〜1−5及び比較例1−1で得られた位相差フィルムについて、それぞれ下記の方法でレターデーション、屈折率及び光弾性係数を測定した。測定結果は表2に示すとおりであった。
【0163】
(屈折率及びレターデーションの測定)
レターデーション測定器(王子計測社製 KOBRA−21ADH)を用いて、下記式により定義されるレターデーション(Re、Rth)を測定した。
Re=|Nx−Ny|×d
Rth=|Nz−(Nx+Ny)/2|×d
(Nx:主延伸方向の屈折率、Ny:主延伸方向に対して垂直方向の面内屈折率、Nz:面に対して垂直(Nx及びNyに対して垂直)方向の屈折率、d:フィルムの厚み(μm))
【0164】
(光弾性係数の測定)
光弾性係数測定装置(ユニオプト社製 PHEL−20A)を用い、実施例及び比較例でそれぞれ得られたフィルムから切り出した9mm×80mmの試験片に22℃で0.1mm/minの速度で圧縮荷重をかけて測定した。
【0165】
【表2】
【0166】
表2に示すように、実施例で得られた延伸フィルムは、位相差フィルムとして良好に機能するものであることが確認された。また、実施例の位相差フィルムは、下記式(I)を満たし、いわゆる負の位相差フィルムとして機能するものであることが確認された。
Nz≧Ny>Nx (I)
【0167】
また、実施例で得られた位相差フィルムは、光弾性係数の絶対値が小さく、共重合体のガラス転移温度が高いことから、優れた耐熱性と光学性能とを両立するものであることが確認された。これに対して、比較例1−1のフィルムは、光弾性係数の絶対値が大きく、位相差フィルムに適するものではなかった。
【0168】
図3は、実施例1−1〜1−3及び比較例1−1の位相差フィルムに含まれる重合体(共重合体1−1〜1−3及びポリスチレン)のガラス転移温度Tgと、第一の構造単位の含有比率と、の関係を示す図である。
【0169】
図4は、実施例1−1〜1−3及び比較例1−1の位相差フィルムに含まれる重合体(共重合体1−1〜1−3及びポリスチレン)における第一の構造単位の含有比率と、光弾性係数と、の関係を示す図である。
【0170】
図3及び図4に示すように、第一の構造単位の含有比率を所定の範囲とすることで、高いガラス転移温度を得つつ、光弾性係数の絶対値を十分に小さくすることができる。
【0171】
次いで、第二実施形態に係る位相差フィルムに係る実施例について説明する。
【0172】
(合成例2−1:共重合体1の合成)
100mL容積のガラス製反応器に、窒素雰囲気下にてスチレン5.33g(51.3mmol)と1,1−ジフェニルエチレン2.29g(12.7mmol)とを計り取り、シクロヘキサン20mLで希釈した。この溶液を氷浴にて冷却した後、0.10Mのs−ブチルリチウム/シクロヘキサン溶液を少量ずつ、系が淡黄色を呈するまで滴下し残存水分を取り除いた。
【0173】
ついで0.10Mのs−ブチルリチウム/シクロヘキサン溶液0.25mL(s−ブチルリチウムとして0.025mmol)を加えた。この溶液を撹拌しながら50℃のオイルバスにて加熱すると濃赤色に変化し、重合反応の進行に伴う粘度の上昇が観察された。そのまま4時間加熱撹拌を続けた後、メタノール5mLを加えて反応を停止した。反応溶液を2Lのメタノール中へ注ぎ、白色沈殿を濾別した。得られた沈殿を沸騰メタノールで洗浄した後、120℃、減圧下で12時間乾燥し、スチレン/1,1−ジフェニルエチレン共重合体を得た(以下、「共重合体2−1」と称する。)。
【0174】
得られた共重合体2−1について、下記の方法で、第一の構造単位及び第二の構造単位の含有比率、分子量、分子量分布及びガラス転移温度(Tg)を測定した。測定結果は、表3に示すとおりであった。
【0175】
(含有比率の測定)
超伝導核磁気共鳴吸収装置(NMR、Varian社製 INOVA600)を用い、で得られた共重合体のH−NMRを測定し、芳香族プロトン、メチル、メチレン、メチンのピーク面積比から、第一の構造単位及び第二の構造単位の含有比率を算出した。
【0176】
(分子量及び分子量分布の測定)
カラム(TSKgel SuperHM−M)を3本接続し、RI検出器を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製 HLC−8020)を用いて測定した。溶媒としてテトラヒドロフランを用い、得られた共重合体のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0177】
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
示差走査熱量計(DSC、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 DSC7020)を用いて測定した。具体的には、窒素下、20℃/minで室温(25℃)から230℃まで昇温し、その後20℃/minで室温まで戻し、再び10℃/minで230℃まで昇温した。2度目の昇温過程で測定されるガラス転移温度をTgとした。なお、測定には、得られた共重合体を再沈殿精製して得られたパウダーを用いた。
【0178】
【表3】
【0179】
(実施例2−1)
合成例2−1で得られた共重合体2−1とポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)[アルドリッチ社製、カタログNo25134−01−4、重量平均分子量=244000、ガラス転移温度=211℃]を90:10の質量比でブレンドした樹脂混合物2−1を10質量%含むクロロホルム溶液を調製し、ガラス板上にキャスト法によってフィルム状に供給し、72時間自然乾燥させた。得られたフィルムをガラス板から剥離した後、減圧下、140℃でクロロホルム濃度が500massppm以下になるまで乾燥し、未延伸フィルム2−1を得た。得られた未延伸フィルム2−1の透明性は高く、膜厚は83μmであり、未延伸フィルム1を構成する樹脂組成物2−1のTgは136℃であった。
【0180】
次に、得られた未延伸フィルム2−1を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、樹脂組成物2−1のTg+12℃(148℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率2.0倍の一軸延伸を行い、厚み59μmの位相差フィルム2−1を得た。
【0181】
(実施例2−2)
樹脂混合物2−1を、共重合体2−1とポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)を80:20の質量比でブレンドした樹脂混合物2−2に変更したこと以外は実施例2−1と同様の方法により、未延伸フィルム2−2を得た。得られた未延伸フィルム2−2の透明性は高く、膜厚は74μmであり、未延伸フィルム2−2を構成する樹脂組成物2−2のTgは143℃であった。
【0182】
次に、得られた未延伸フィルム2−2を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、樹脂組成物2−2のTg+12℃(155℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率2.0倍の一軸延伸を行い、厚み52μmの位相差フィルム2−2を得た。
【0183】
(実施例2−3)
樹脂混合物2−1を、共重合体2−1とポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)を78:22の質量比でブレンドした樹脂混合物2−3に変更したこと以外は実施例2−1と同様の方法により、未延伸フィルム2−3を得た。得られた未延伸フィルム2−3の透明性は高く、膜厚は79μmであり、未延伸フィルム2−3を構成する樹脂組成物2−3のTgは145℃であった。
【0184】
次に、得られた未延伸フィルム2−3を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、樹脂組成物2−3のTg+12℃(157℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率2.0倍の一軸延伸を行い、厚み56μmの位相差フィルム2−3を得た。
【0185】
(実施例2−4)
樹脂混合物2−1を、共重合体2−1とポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)を75:25の質量比でブレンドした樹脂混合物2−4に変更したこと以外は実施例2−1と同様の方法により、未延伸フィルム2−4を得た。得られた未延伸フィルム2−4の透明性は高く、膜厚は85μmであり、未延伸フィルム2−4を構成する樹脂組成物2−4のTgは147℃であった。
【0186】
次に、得られた未延伸フィルム2−4を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、樹脂組成物2−4のTg+12℃(159℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率2.0倍の一軸延伸を行い、厚み60μmの位相差フィルム2−4を得た。
【0187】
(実施例2−5)
樹脂混合物2−1を、共重合体2−1とポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)を72:28の質量比でブレンドした樹脂混合物2−5に変更したこと以外は実施例2−1と同様の方法により、未延伸フィルム2−5を得た。得られた未延伸フィルム2−5の透明性は高く、膜厚は83μmであり、未延伸フィルム2−5を構成する樹脂組成物2−5のTgは149℃であった。
【0188】
次に、得られた未延伸フィルム2−5を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、樹脂組成物2−5のTg+12℃(161℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率2.0倍の一軸延伸を行い、厚み59μmの位相差フィルム2−5を得た。
【0189】
(実施例2−6)
実施例2−4と同様の方法により、透明性の高い膜厚77μmの未延伸フィルム2−6を得た。
【0190】
次に、得られた未延伸フィルム2−6を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、樹脂組成物2−4のTg+12℃(159℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率1.4倍の同時二軸延伸を行い、厚み55μmの位相差フィルム2−6を得た。
【0191】
(実施例2−7)
実施例2−4と同様の方法により、透明性の高い膜厚76μmの未延伸フィルム2−7を得た。
【0192】
次に、得られた未延伸フィルム2−7を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、樹脂組成物2−4のTg+12℃(159℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率1.8倍の同時二軸延伸を行い、厚み33μmの位相差フィルム2−7を得た。
【0193】
(比較例2−1)
樹脂混合物2−1を共重合体2−1に変更した(共重合体2−1とポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)の質量比を100:0とした)こと以外は、実施例2−1と同様の方法により、未延伸フィルム2−8を得た。得られた未延伸フィルム2−8の透明性は高く、膜厚は42μmであり、未延伸フィルム2−8を構成する樹脂組成物2−8のTgは133℃であった。
【0194】
次に、得られた未延伸フィルム2−8を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、樹脂組成物2−8のTg+12℃(145℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率2.0倍の一軸延伸を行い、厚み30μmの位相差フィルム2−8を得た。
【0195】
(比較例2−2)
樹脂混合物2−1を、共重合体2−1とポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)を60:40の質量比でブレンドした樹脂混合物2−9に変更したこと以外は実施例2−1と同様の方法により、未延伸フィルム2−9を得た。得られた未延伸フィルム2−9の透明性は高く、膜厚は82μmであり、未延伸フィルム2−9を構成する樹脂組成物2−9のTgは158℃であった。
【0196】
次に、得られた未延伸フィルム2−9を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、樹脂組成物2−9のTg+12℃(170℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率2.0倍の一軸延伸を行い、厚み58μmの位相差フィルム2−9を得た。
【0197】
(比較例2−3)
共重合体2−1にかえて、市販のポリスチレン(和光純薬、ガラス転移温度:91℃、重量平均分子量Mw:165×10、分子量分布Mw/Mn:2.0)を用いたこと以外は実施例2−4と同様の方法により、未延伸フィルム2−10を得た。得られた未延伸フィルム2−10の透明性は高く、膜厚は79μmであり、未延伸フィルム2−10を構成する樹脂組成物2−10のTgは115℃であった。
【0198】
次に、得られた未延伸フィルム2−10を7×7cmに切り出し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC−190A型)を用いて、樹脂組成物2−10のTg+12℃(127℃)の温度条件下で、120mm/min.の引張速度で倍率2.0倍の一軸延伸を行い、厚み56μmの位相差フィルム2−10を得た。
【0199】
実施例2−1〜2−7及び比較例2−1〜2−3で得られた位相差フィルムについて、それぞれ下記の方法でレターデーション及び屈折率を測定した。測定結果は表4に示すとおりであった。
【0200】
(屈折率及びレターデーションの測定)
レターデーション測定器(王子計測社製 KOBRA−21ADH)を用いて、下記式により定義されるレターデーション(Re、Rth)を測定した。
Re=|Nx−Ny|×d
Rth=|Nz−(Nx+Ny)/2|×d
(Nx:主延伸方向の屈折率、Ny:主延伸方向に対して垂直方向の面内屈折率、Nz:面に対して垂直(Nx及びNyに対して垂直)方向の屈折率、d:フィルムの厚み(μm))
【0201】
【表4】
【0202】
表4に示すように、実施例で得られた延伸フィルムは、主延伸方向の屈折率が最も小さい負の複屈折性を示し、波長分散値Dも0.70<D<1.06を満たすことから位相差フィルムとして良好に機能するものであることが確認された。
【0203】
比較例2−1及び2−2で得られた位相差フィルムは波長分散値Dが1.06以上であった。また比較例2−3で得られたフィルムはTgが115℃と低く位相差フィルムに適する耐熱性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明によれば、耐熱性及び光学特性に優れた負の位相差フィルム、並びにそれを備える液晶表示装置が提供される。
【符号の説明】
【0205】
10,11…位相差フィルム。
図1
図2
図3
図4