(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置は、前記エンジンからの排気ガスを導入する排気ガス導入口と、前記選択触媒還元装置へ排気ガスを導出する排気ガス導出口とを有し、
前記排気ガス導入口は、背面視において前記第1側方と逆側の第2側方側に位置し、
前記排気ガス導出口は、前記第1側方側に位置する、請求項7に記載のホイールローダ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホイールローダにおいても排気ガス中に含まれる窒素酸化物を浄化するために、上述した油圧ショベルと同様、ホイールローダに選択触媒還元装置を搭載することが考えられる。このために、ホイールローダは、還元剤を貯留する還元剤タンクを備える必要がある。この還元剤タンク内の還元剤は使用に伴い減少するため、還元剤タンクに還元剤を適宜補充する必要があり、地上からアクセスしづらい位置に還元剤タンクを配置すると利便性が損なわれるという問題が生じる。
【0005】
本発明の課題は、地上からアクセスしやすい場所に還元剤タンクを配置することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面に係るホイールローダは、エンジン、選択触媒還元装置、キャブ、梯子、還元剤タンク、及び噴射装置を備える。選択触媒還元装置は、エンジンからの排気ガスを処理する。キャブは、内部に運転席が設けられる。梯子は、キャブの側方に設けられ、キャブに乗降する際に使用される。還元剤タンクは、梯子の裏側に配置され、還元剤を貯留する。噴射装置は、エンジンから選択触媒還元装置へ送られる排気ガスに還元剤タンクの還元剤を噴射する。
【0007】
上記構成によれば、還元剤タンクは梯子の裏側に配置されるため、作業者は地上から容易に還元剤タンクにアクセスすることができる。また、ホイールローダは、前部車体と後部車体とが互いに水平方向に揺動可能に接続され、後部車体の一部である梯子の前方に、前部車体に設けられる前輪が位置する。このため、前部車体を後部車体に対して還元剤タンクが配置される側と逆側に揺動させることで、梯子と前輪との間に作業スペースが形成される。このため、梯子の裏に配置される還元剤タンクに対する作業、例えば還元剤の補充などを容易に行うことができる。
【0008】
好ましくは、噴射装置は背面視において第1側方側に配置され、還元剤タンクはキャブの第1側方に設けられる梯子の裏側に配置される。
【0009】
この構成によれば、噴射装置と還元剤タンクとはホイールローダの同一側方に配置されるため、噴射装置と還元剤タンクとを接続する還元剤配管の長さを短くすることができる。
【0010】
好ましくは、ホイールローダは、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置、及び接続管をさらに備える。接続管は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置と選択触媒還元装置とを接続する。ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置、選択触媒還元装置、及び接続管は、長手方向が車幅方向を向くように配置される。
【0011】
この構成によれば、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置によって、エンジンからの排気ガス中に含まれる煤等の粒子状物質を捕集することができる。
【0012】
好ましくは、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置は、排気ガス導入口と排気ガス導出口とを有する。排気ガス導入口は、エンジンからの排気ガスを導入する。排気ガス導出口は、選択触媒還元装置へ排気ガスを導出する。排気ガス導入口は第2側方側に位置し、排気ガス導出口は第1側方側に位置する。
【0013】
この構成によれば、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導出口と噴射装置とが共に第1側方側に位置する。このため、噴射装置は、接続管の長さを有効に利用して、排気ガス中に還元剤を混合させることができる。
【0014】
好ましくは、ホイールローダは、第2側方側に配置されるターボチャージャをさらに備える。
【0015】
この構成によれば、ターボチャージャをディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口が位置する第2側方側に配置することによって、ターボチャージャとディーゼル微粒子捕集フィルタ装置とを接続する配管の長さを短くすることができる。
【0016】
好ましくは、還元剤タンクは、還元剤を補充するための補充口を有し、補充口は、前方を向いて設けられる。
【0017】
この構成によれば、補充口が前方を向いているため、梯子と前輪との間のスペースを利用して、還元剤タンクに対する作業、例えば還元剤タンクに還元剤を補充する作業を行うことができる。
【0018】
好ましくは、ホイールローダは、保持部材及び支持フレームをさらに備える。保持部材は還元剤タンクを保持する。支持フレームは、保持部材を前方に摺動可能に支持し、梯子の裏側に設置される。
【0019】
この構成によれば、還元剤タンクを保持する保持部材が支持フレームによって前方に摺動可能に支持されるため、還元剤タンクを前方に容易に引き出すことができる。
【0020】
好ましくは、保持部材は、底板、前記底板の後端から上方に延びる後板、及び前記底板の両側端から上方に延びる一対の側板を有する。還元剤タンクは、底板、後板、及び一対の側板によって画定される空間に収容される。
【0021】
この構成によれば、還元剤タンクの側面及び後面が、保持部材の後板及び側板によって支持されるため、保持部材は還元剤タンクを安定して保持することができる。
【0022】
好ましくは、保持部材は、還元剤タンクの前方及び上方への移動を規制する規制部材を有する。
【0023】
この構成によれば、還元剤タンクが意図せずに保持部材から前方又は上方に飛び出してしまうことを規制部材によって防止することができる。
【0024】
好ましくは、還元剤は尿素水である。高温下において排気ガス中に尿素水が噴射されると、尿素水が加水分解されてアンモニアが得られる。このアンモニアが窒素酸化物と化学反応し、窒素酸化物が窒素と水とに還元される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、地上からアクセスしやすい場所に還元剤タンクを配置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るホイールローダの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、ホイールローダ1の右側面図である。なお、以下の説明において、「前」及び「後」とは車体3の前後を意味する。すなわち、
図1の右が「前」、左が「後」となる。また、以下の説明における「右」、「左」、「上」、及び「下」とは運転室から前方を見た方向を基準とし、「車幅方向」は「左右方向」と同義である。また、「幅」とは、左右方向の長さを意味する。
【0028】
図1に示すように、ホイールローダ1は、作業機2、車体3、前輪4、及び後輪5を有する。このホイールローダ1は、前輪4及び後輪5が回転駆動されることにより自走可能であり、作業機2を用いて所望の作業を行う。
【0029】
作業機2は、油圧ポンプ(図示省略)によって加圧された作動油によって駆動される機構であり、車体3の前方に配置される。作業機2は、バケット2a、ブーム2b、リフトシリンダ2c、及びバケットシリンダ2dを有する。バケット2aは、ブーム2bの先端に取り付けられる。ブーム2bは、バケット2aを持ち上げるための部材であり、後述する前部車体3aの前部に装着される。リフトシリンダ2cは、油圧ポンプから吐出される圧油によってブーム2bを駆動する。バケットシリンダ2dは、油圧ポンプから吐出される圧油によってバケット2aを駆動する。
【0030】
車体3は、前部車体3a及び後部車体3bを有する。前部車体3aと後部車体3bとは互いに左右方向に揺動可能に連結される。前部車体3aには作業機2及び前輪4が設けられ、後部車体3bには後輪5が設けられる。前部車体3aが左側を向くように前部車体3aを後部車体3bに対して揺動させると、後述する尿素水タンク13の前方に大きなスペースが形成される。
【0031】
後部車体3bは、リアフレーム6、キャブ7、作動油タンク8、エンジン室9、冷却室10、及び冷却ファン11を有する。リアフレーム6は、後部車体3bの全体形状を構成するフレームであり、後輪5、キャブ7、作動油タンク8、エンジン18、及び冷却ユニット19などを支持する。
【0032】
キャブ7は、内部に運転室が設けられるとともに、各種の操作部材及び操作盤が設けられる。キャブ7の後方には、作動油タンク8が配置され、作動油タンク8の下方には複数の油圧ポンプ(図示省略)が配置される。作動油タンク8内には作業機2などを駆動するための作動油が貯留され、油圧ポンプによって作動油を作業機2などに供給する。
【0033】
キャブ7の右側(第1側方側の一例)において、キャブ7に対して乗降するための梯子12が設けられる。梯子12は、リアフレーム6に固定され、キャブ7の下端部から地上近傍まで延びる。梯子12はリアフレーム6と所定距離だけ離れて設けられるため、梯子12とリアフレーム6との間、すなわち梯子12の裏側には空間が形成される。
【0034】
図2は、左前方から見た尿素水タンク13の周囲を示す斜視図、
図3は、左側から見た尿素水タンク13の側面断面図である。
図2に示すように、梯子12の裏側に形成される空間に尿素水タンク(還元剤タンクの一例)13が設置される。
図3に示すように、尿素水タンク13は、タンク本体13a、補充口13b、レベルゲージ13c、第1ポート13d、及び第2ポート13eを有する。
【0035】
タンク本体13aは、略直方体状であって、内部に尿素水(還元剤の一例)が貯留される。タンク本体13aの下面には、下方に突出する平面視円形の突出部13fが形成される。突出部13fは、前後方向において中央部より後方に位置する。タンク本体13aの上部には補充口13bが設けられ、この補充口13bからタンク本体13a内に尿素水が補充される。この補充口13bは、尿素水タンク13が梯子12の裏側に設置された状態において、前方側を向く。
【0036】
レベルゲージ13cは、タンク本体13a内をタンク本体13aの上面から下方へ延び、タンク本体13a内の尿素水の残量を計測する。タンク本体13aの上面には、第1及び第2ポート13d、13eが形成される。第1及び第2ポート13d、13eは、それぞれ配管を介して尿素水ポンプ14に接続される。なお、尿素水ポンプ14は、梯子12の裏側において、尿素水タンク13の上方に設置される(
図2参照)。尿素水ポンプ14は、第1ポート13dを介してタンク本体13a内から吸引する尿素水を、尿素水配管25を介して、後述する噴射装置24へと吐出する。また、尿素水ポンプ14は、余剰分の尿素水を第2ポート13eを介してタンク本体13a内に戻す。
【0037】
タンク本体13a内には、冷却水戻り配管15が延びる。この冷却水戻り配管15は、後述するエンジン18と冷却ユニット19とに接続し、内部に冷却水が流れる。この冷却水は、エンジン18から吸熱して高温となった水である。この高温の水が流れる冷却水戻り配管15がタンク本体13a内を延びることにより、タンク本体13a内に貯留する尿素水が凍結することを防止できる。
【0038】
図2に示すように、尿素水タンク13は、保持部材16に保持された状態で支持フレーム17内に収容される。支持フレーム17は、梯子12の裏側空間において、リアフレーム6に固定される。この支持フレーム17の空間内に尿素水タンク13が収容される。支持フレーム17は、レール部17a(
図5参照)と、底板17b(
図5参照)とを有する。レール部17aは、後述するように保持部材16を前方に引き出すための部材であり、第1傾斜部17c及び第2傾斜部17dを有する。底板17bは、尿素水タンク13を保持する保持部材16を下方から支持する。
【0039】
図4は、尿素水タンク13を保持した状態の保持部材16の斜視図である。保持部材16は、尿素水タンク13を保持するための部材である。
図4に示すように、保持部材16は、底板16a、後板16b、一対の側板16c、第1規制バー(規制部材の一例)16d、及び第2規制バー(規制部材の一例)16eを有する。
【0040】
保持部材16の底板16aは矩形状であり、開口部16fが形成される。保持部材16が尿素水タンク13を保持した状態において、尿素水タンク13の突出部13fが、底板16aの開口部16fを貫通して下方に突出する。また、底板16aの後端から後板16bが上方に延び、底板16aの両側端からは一対の側板16cが上方に延びる。この底板16a、後板16b、及び一対の側板16cによって画定される空間に尿素水タンク13が収容される。
【0041】
一対の側板16cは、その前部において尿素水タンク13の下部から上部まで保持する。また、一対の側板16cは、その中央部及び後部において尿素水タンク13の下部を保持する。すなわち、各側板16cは、前部の方が、中央部及び後部よりも上方に延びる。なお、各側板16cの後部は、中央部よりも上方に延び、後板16bと同じ高さである。このように、保持部材16は、一対の側板16cで尿素水タンク13の側面全体を保持するのではなく、尿素水タンク13の側面中央部などを露出させるため、尿素水が凍結して尿素水タンク13が膨張した場合であっても、保持部材16が変形することを防ぐことができる。
【0042】
保持部材16の各側板16cは、作業者が保持部材16と共に尿素水タンク13を前方に引き出したり、元に戻したりするための把手16gを有する。また、各側板16cは、側方に突出する第1凸部16hを前部に、第2凸部16iを後部に有する。第1凸部16hは、第2凸部16iよりも上に位置する。第1及び第2凸部16h、16iは、支持フレーム17のレール部17a上を前後方向に摺動する。
【0043】
一対の側板16cの前部の上端から上方に取付金具16jが延びる。この取付金具16jを介して、第1規制バー16dは側板16cに取り付けられる。第1規制バー16dは、車幅方向に延び、両端部においてボルト及びナットなどを用いて取付金具16jに取り付けられる。第1規制バー16dは、保持部材16が尿素水タンク13を保持した状態において、尿素水タンク13の前部の上方に位置し、尿素水タンク13が上方に移動することを規制し、ひいては尿素水タンク13が保持部材16から上方へ飛び出ることを防止する。
【0044】
一対の側板16cの前部の中央部から前方に取付金具16kが延びる。この取付金具16kを介して、第2規制バー16eは側板16cに取り付けられる。第2規制バー16eは、車幅方向に延び、両端部においてボルト及びナットなどを用いて取付金具16kに取り付けられる。第2規制バー16eは、保持部材16が尿素水タンク13を保持した状態において、尿素水タンク13の前方に位置し、尿素水タンク13が前方に移動することを規制し、ひいては尿素水タンク13が保持部材16から前方に飛び出ることを防止する。
【0045】
図5から
図7は、尿素水タンク13を保持する保持部材16が前方に摺動する様子を示す図である。
図5は、尿素水タンク13を保持する保持部材16の摺動前の状態を示し、
図6は、尿素水タンク13を保持する保持部材16の摺動途中の状態を示し、
図7は、尿素水タンク13を保持する保持部材16の摺動後の状態を示す。
【0046】
図5に示すように、摺動前の状態では、保持部材16の各側板16cの第1凸部16hは、レール部17aの第1傾斜部17cの後方に位置し、第2凸部16iは、第2傾斜部17dの後方に位置する。この状態では、尿素水タンク13の突出部13fが、支持フレーム17の底板17bに形成される凹部17eと嵌合する。
【0047】
図5の状態から、作業者が把手16gを持って保持部材16を前方に引っ張ると、保持部材16の第1凸部16hがレール部17aの第1傾斜部17cに沿って摺動し、第2凸部16iが第2傾斜部17dに沿って摺動する。この結果、保持部材16は、前方に移動するだけでなく、第1及び第2傾斜部17c、17dの分だけ上方に移動し、尿素水タンク13の突出部13fが支持フレーム17の底板17bの凹部17eから抜け出す。そして、尿素水タンク13を保持する保持部材16は、
図6に示す状態となる。
【0048】
図6の状態から、作業者が保持部材16をさらに前方に引っ張ると、第1及び第2凸部16h、16iがレール部17aに沿って前方へと摺動する。そして、尿素水タンク13の突出部13fが、支持フレーム17の底板17bの前端まで来ると、
図7に示すように、尿素水タンク13の突出部13fと底板17bの前端との接触点を中心として、尿素水タンク13が前方に倒れるように回転する。ここで、保持部材16の第2凸部16iが、U字状となったレール部17aの先端部と係合することにより、尿素水タンク13の回転は、
図7に示す状態で停止する。このように、尿素水タンク13が支持フレーム17から前方に引き出されて前方に傾斜した状態となるため、尿素水タンク13の上面に設置されるレベルゲージ13cなどのセンサ類などのメンテナンスが容易となる。また、尿素水タンク13を保持部材16から取り出すことも容易となる。なお、尿素水タンク13は、第1及び第2規制バー16d、16eを取り外した後に、保持部材16から取り出し可能となる。
【0049】
図8は、左側から見た後部車体3bの側面断面図である。
図8に示すように、エンジン室9は作動油タンク8の後方に配置される。エンジン室9は、両側面及び上面が車体カバー40(
図1参照)によって画定され、後面が隔壁9aによって画定される。なお、車体カバー40は、リアフレーム6に取り付けられる。車体カバー40は、後部車体3b内部(エンジン室9及び冷却室10)へのアクセスを容易にするために、複数の部分に分割され、部分ごとに独立して開閉可能である。
【0050】
具体的には、車体カバー40は、
図1に示すように、主に、上部カバー41、下部カバー42、及び天板43を有する。上部カバー41は、後部車体3bの側面上部をカバーする部材である。上部カバー41は、エンジン室9の前端部、すなわちエンジン室9と作動油タンク8との境界部においてリアフレーム6にヒンジを介して固定される。上部カバー41は、このヒンジを中心に水平方向に開閉することができる。下部カバー42は、後部車体3bの側面下部をカバーする部材である。下部カバー42は、上部カバー41側の端部において、リアフレーム6にヒンジを介して固定され、このヒンジを中心に上下方向に開閉可能である。天板43は、後部車体3bの上面をカバーする部材である。
【0051】
図8に示すように、エンジン室9の後方には冷却室10が配置され、冷却室10内には各種冷却ユニット19が収容される。冷却ユニット19は、冷却ユニット19の内部を流れる液体又は気体の温度を低下させるためのユニットであり、例えば、コンデンサ、及びラジエータなどを例示することができる。冷却室10は、前面が隔壁9a、両側面及び上面が車体カバー40、後面がグリル44によって画定される。冷却ファン11が回転駆動されることによって、冷却室10内の空気がグリル44の開口部を介して後方の外部へと排気される。
【0052】
図8に示すように、エンジン室9は、エンジン18及び排気ガス後処理装置20などを収容する。また、エンジン室9は、エンジン18の回転力を補機類に伝えるためのベルト18aなども収容する。エンジン18は、エンジン室9の下部に配置され、クランク軸が前後方向に延びる、いわゆる縦置きエンジンである。
【0053】
図9は、左側から見たエンジン室9の周辺の側面図である。なお、説明の便宜上、
図9では車体カバー40の記載を省略する。
図9に示すように、作動油タンク8の左側にエアクリーナ18bが配置される。エアクリーナ18bは、エンジン18に送られる空気から異物を取り除く。
【0054】
ターボチャージャ18cは、可撓性の吸気管18dを介してエアクリーナ18bと接続する。ターボチャージャ18cは、エンジン18からの排気ガスによってタービンを回し、エアクリーナ18bからの空気を圧縮してエンジン18に押し込む。ターボチャージャ18cは、エンジン室9内の左端部(第2側方側の一例)に配置される。具体的には、ターボチャージャ18cは、エンジン室9内においてエンジン18の左側に設置される。
【0055】
エンジン室9に収容される排気ガス後処理装置20は、エンジン室9の上部に配置される。すなわち、排気ガス後処理装置20は、エンジン18の上方に配置される。
図10は、左後方から見た排気ガス後処理装置20の斜視図である。
図10に示すように、排気ガス後処理装置20は、排気ガスが流れる順に、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21、接続管22、及び選択触媒還元装置23を備える。接続管22には、噴射装置24が取り付けられる。
【0056】
ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21は、配管18eを介してエンジン18と接続し、エンジン18から排出される排気ガスを処理する装置である。具体的には、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21は、エンジン18から排出される排気ガス中の煤等の粒子状物質をフィルタによって捕集する装置である。ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21は、排気ガス導入口21aと、排気ガス導出口21bとを有する。ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21は、排気ガス導入口21aを介して、エンジン18からの排気ガスを内部に取り込む。また、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21は、排気ガス導出口21bを介して、処理した排気ガスをディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21内から排出する。ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21は、捕集した粒子状物質をフィルタに付設されるヒータによって焼却する。
【0057】
接続管22は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21と選択触媒還元装置23とを接続する管である。接続管22は、全体としてS字状に形成され、第1屈曲部22a、直線部22b、及び第2屈曲部22cを有する。第1屈曲部22aはディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21の排気ガス導出口21bと接続し、第2屈曲部22cは選択触媒還元装置23の排気ガス導入口23aと接続する。直線部22bは、第1屈曲部22aと第2屈曲部22cとの間を延びる。
【0058】
第1屈曲部22aには、噴射装置24が取り付けられる。噴射装置24は、エンジン室9内において、右端部(第1側方側の一例)に配置される。噴射装置24は、尿素水タンク13から尿素水ポンプ14によって吸い上げられ尿素水配管25を介して送られる尿素水を接続管22内に噴射し、排気ガス中に還元剤としての尿素水を添加する装置である。添加された尿素水は排気ガスの熱で加水分解されてアンモニアとなり、アンモニアは排気ガスとともに接続管22を介して選択触媒還元装置23に供給される。
【0059】
選択触媒還元装置23は、噴射装置24からのアンモニアが還元剤として使用されて、排気ガス中の窒素酸化物を還元浄化する装置である。
【0060】
ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21、接続管22、及び選択触媒還元装置23は、それぞれ並列に配置される。具体的には、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21及び選択触媒還元装置23は、共に実質的に円筒形状である。ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21及び選択触媒還元装置23の中心軸が延びる方向が、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21及び選択触媒還元装置23の長手方向である。これら装置は、その長手方向が左右方向を向くように配置される。このため、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21は、排気ガス導入口21aが、エンジン室9内の左側(第2側方側の一例)に位置する。また、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21の排気ガス導出口21bは、エンジン室9内の右側(第1側方側の一例)に位置する。
【0061】
また、接続管22の直線部22bも、実質的に円筒形状である。この直線部22bの中心軸が延びる方向が、接続管22の長手方向である。接続管22は、長手方向が左右方向を向くように配置される。
【0062】
図11は右前方から見た噴射装置24の周辺を示す斜視図であり、
図12は噴射装置24の周辺を示す平面図である。
図11及び
図12に示すように、選択触媒還元装置23と車体カバー40との間に第1仕切板31が配置される。具体的には、第1仕切板31は、選択触媒還元装置23と上部カバー41との間に配置される。また、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21と車体カバー40との間に第2仕切板32が配置される。具体的には、第2仕切板32は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21と上部カバー41との間に配置される。第1仕切板31と第2仕切板32とは、前後方向に並んで配置される。第1仕切板31は、第2仕切板32の前方に位置する。仕切板を第1仕切板31と第2仕切板32との2つに分け、第1仕切板31と第2仕切板32とを間隔をあけて配置することで、この隙間に配管などを通すことができる。
【0063】
第1仕切板31は、ベース部(第1仕切部)31aと周壁部31bとを有し、取付金具6aを用いてリアフレーム6に固定される。第1仕切板31は、遮熱性を有し、例えば、耐熱塗装を施した鋼板によって形成される。第1仕切板31のベース部31aは、エンジン室9の前端部から噴射装置24近傍まで前後方向に延びる板状であって、概ね矩形状に形成される。車体カバー40を取り外した際に噴射装置24の右側面が露出するよう、ベース部31aの後端部は扇型に切り取られる。すなわち、ベース部31aは、噴射装置24の側方には延びていない。また、ベース部31aは、選択触媒還元装置23と車体カバー40との間に配置される。これによって、選択触媒還元装置23から車体カバー40への輻射熱を遮ることもでき、ひいては車体カバー40の塗装の損傷も防ぐことができる。
【0064】
第1仕切板31の周壁部31bは、ベース部31aの後縁から左側方に向かって延び、噴射装置24と対向するように、噴射装置24を前方から上方に亘って覆う。すなわち、周壁部31bは、噴射装置24と選択触媒還元装置23との間に配置される部分である第2仕切部31b1、及び噴射装置24と天板43との間に配置される部分である第3仕切部31b2とを有する。周壁部31bは、ベース部31aから接続管22の右側面近傍まで延びる。また、周壁部31bは、概ね、接続管22の右側面の輪郭に沿って延びる。これにより、噴射装置24の左側方、前方、及び上方を周壁部31bと接続管22の右側面とによって覆うことができる。
【0065】
第2仕切板32は、遮熱性を有し、例えば、耐熱塗装を施した鋼板によって形成される。第2仕切板32は、ベース部32aと周壁部32bとを有し、上部カバー41の内側面にボルトなどを用いて固定される。上部カバー41を開けると第2仕切板32も一緒に取り払われるため、噴射装置24などのメンテナンスが容易となる。
【0066】
第2仕切板32のベース部32aは、噴射装置24近傍からエンジン室9の後端部まで前後方向に延びる板状であって、矩形状に形成される。なお、ベース部32aの前端は、噴射装置24よりも後方に位置する。ベース部32aは、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置13aと車体カバー40との間に配置される。これによって、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置13aから車体カバー40への輻射熱を遮ることができ、ひいては車体カバー40の塗装の損傷を防ぐことができる。
【0067】
第2仕切板32の周壁部32bは、ベース部32aの前縁から左側方に向かって延び、噴射装置24と対向するように噴射装置24の後方を覆う。すなわち、周壁部32bは、噴射装置24とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置13aとの間に配置される第4仕切部である。周壁部32bは、ベース部32aから接続管22の右側面近傍まで延びる。以上のように、噴射装置24は、第1仕切板31の周壁部31b、第2仕切板32の周壁部32b、車体カバー40、及び接続管22によって確定される収容空間S内に配置される。
【0068】
図13は、尿素水配管25の設置例を示す右側面図であり、
図14は、尿素水配管25に対して配管カバーを取り付けた状態を示す右側面図である。
図13に示すように、尿素水配管25は、第1端部25aにおいて噴射装置24と接続し(
図11、
図12参照)、第2端部25bにおいて尿素水ポンプ14と接続する。尿素水配管25は、尿素水ポンプ14が尿素水タンク13から吸引する尿素水を噴射装置24へ送るための配管である。
【0069】
尿素水配管25は、尿素水ポンプ14から尿素水タンク13近傍まで下方に延びて尿素水タンク13の上方を水平方向に延び、尿素水タンク13の後方で一旦下方に下がる。そして、尿素水配管25は、フレーム6及び車体カバー40の外側面に沿って上方へと延び、車体カバー40の上部カバー41の前端からエンジン室9内へと引き込まれる。詳細には、上部カバー41は、前端部において外方に膨らむ膨出部41aを有する。膨出部41aは、前後方向に延び、前端において、尿素水配管25をエンジン室9内に引き込むための配管導入口41bを有する。なお、この配管導入口41bは、上部カバー41を開けた際に上部カバー41が尿素水配管25と干渉しない程度の大きさに設計される。なお、
図14に示すように、尿素水配管25は、通常時において複数の配管カバー27によって外部に露出しないよう保護される。
【0070】
図11及び
図12に示すように、尿素水配管25は、エンジン室9内において、第1仕切板31のベース部31aと車体カバー40との間を延びる。これによって、選択触媒還元装置23から尿素水配管25への輻射熱を遮ることができ、ひいては尿素水配管25内を流れる尿素水が加熱されてアンモニアに変化することを防ぐことができる。また、尿素水配管25の第1端部25aと選択触媒還元装置23との間に、第1仕切板31の周壁部31bが配置される。よって、周壁部31bによっても、選択触媒還元装置23から尿素水配管25への輻射熱を遮ることができる。
【0071】
尿素水配管25は、エンジン室9内において、複数の取付金具6bによって支持される。尿素水配管25は、取付金具6bによって支持されることにより、第1仕切板31から所定距離をおいた状態を維持する。各取付金具6bは、リアフレーム6から上方に延び、第1仕切板31から離れる方向に傾斜する。また、各取付金具6bは、前後方向に互いに所定距離をおいて配置される。
【0072】
図13に示すように、作動油タンク8の右側に中継部材26が設置される。中継部材26は、配管同士を接続するための部材である。噴射装置24と尿素水ポンプ14とを接続する尿素水配管25は、第1配管25cと第2配管25dとの2つの配管から構成される。第1配管25cと第2配管25dとは、中継部材26によって互いに流体連通可能に接続される。第1配管25cは、中継部材26と噴射装置24とを接続する。第2配管25dは、中継部材26と尿素水ポンプ14とを接続する。
【0073】
第1及び第2配管25c、25dは、内部を流れる尿素水が凍結しないよう電熱線を有する。第1配管25cの電熱線と第2配管25dの電熱線とは、互いに独立して制御される。すなわち、第1配管25cの電熱線のみを加熱させたり、第2配管25dの電熱線のみを加熱させたり、第1及び第2配管25c、25dの両方の電熱線を加熱させたりすることができる。
[特徴]
本実施形態に係るホイールローダ1は、次の特徴を有する。
【0074】
(1)尿素水タンク13は梯子12の裏側に配置されるため、作業者は地上から容易に尿素水タンク13にアクセスすることができる。また、ホイールローダ1は、前部車体3aと後部車体3bとが互いに水平方向に揺動可能に接続され、梯子12の前方に前輪4が位置する。このため、前部車体3aを後部車体3bに対して左側、すなわち尿素水タンク13が配置される側と逆側に揺動させることで、梯子12と前輪4との間に作業スペースが形成される。このため、梯子12の裏に配置される尿素水タンク13に対する作業、例えば尿素水の補充などを容易に行うことができる。
【0075】
(2)噴射装置24と尿素水タンク13とは、両方ともホイールローダ1の右側に配置されるため、噴射装置24と尿素水タンク13とを接続する尿素水配管25の長さを短くすることができる。
【0076】
(3)ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21の排気ガス導出口21bと噴射装置24とが共にホイールローダ1の右側に位置する。このため、噴射装置24は、接続管22の長さを有効に利用して、排気ガス中に尿素水を混合させることができる。
【0077】
(4)ターボチャージャ18cと、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21の排気ガス導入口21aとが共にホイールローダ1の左側に位置することによって、ターボチャージャ18cとディーゼル微粒子捕集フィルタ装置21とを接続する配管18eの長さを短くすることができる。
【0078】
(5)尿素水タンク13の補充口13bが前方を向くため、梯子12と前輪4との間のスペースを利用して、尿素水タンク13に対する作業、例えば尿素水タンク13に尿素水を補充する作業を行うことができる。
【0079】
(6)尿素水タンク13を保持する保持部材16が支持フレーム17によって前方に摺動可能に支持されるため、尿素水タンク13を前方に容易に引き出すことができる。
【0080】
(7)尿素水タンク13の側面及び後面が、保持部材16の後板16b及び一対の側板16cによって支持されるため、保持部材16は尿素水タンク13を安定して保持することができる。
【0081】
(8)第1規制バー16dによって、尿素水タンク13が意図せずに保持部材16から上方に飛び出してしまうことを防止することができる。また、第2規制バー16eによって、尿素水タンク13が意図せずに保持部材16から前方に飛び出してしまうことを防止することができる。
[変形例]
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
変形例1
【0083】
上記実施形態では、尿素水タンク13は、キャブ7の右側から下方に延びる梯子12の裏側に設置されるが、特にこれに限定されず、キャブ7の左側から下方に延びる梯子の裏側に設置してもよい。
変形例2
【0084】
上記実施形態では、尿素水タンク13は保持部材16を介して支持フレーム17に支持されるが、特にこれに限定されず、保持部材16を省略して支持フレーム17が尿素水タンク13を直接支持してもよい。
変形例3
【0085】
上記実施形態では、還元剤として尿素水を使用するが、特にこれに限定されず、他の還元剤を用いてもよい。