(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756945
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】原水の処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/52 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
C02F1/52 Z
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2010-208129(P2010-208129)
(22)【出願日】2010年9月16日
(65)【公開番号】特開2012-61426(P2012-61426A)
(43)【公開日】2012年3月29日
【審査請求日】2013年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【審査官】
金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−304411(JP,A)
【文献】
特開2009−279512(JP,A)
【文献】
特開平07−108458(JP,A)
【文献】
米国特許第05584959(US,A)
【文献】
特開平02−251294(JP,A)
【文献】
米国特許第05034137(US,A)
【文献】
特開平04−341306(JP,A)
【文献】
実開昭57−002105(JP,U)
【文献】
特開2001−327981(JP,A)
【文献】
実開平07−017301(JP,U)
【文献】
実開平02−117006(JP,U)
【文献】
特開2007−000737(JP,A)
【文献】
特開昭57−130512(JP,A)
【文献】
特開2002−336603(JP,A)
【文献】
特開平06−063104(JP,A)
【文献】
化学大辞典編集委員会,化学大辞典4,共立出版株式会社,1974年 3月10日,縮刷版第16刷,p.830
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/01
C02F 1/52− 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内に小区画域を設け、該小区画域内には 多表面積接触体を内在させ、かかる小区画域内に、酸性凝集剤と、該酸性凝集剤が弱酸性から弱アルカリ性のpHに調整するのに必要な化学当量の アルカリ剤とを添加することを特徴とする原水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原水の処理方法としては種々の方法が提案されているが、特に凝集剤を用いる方法が広く用いられている。しかしながら、原水に凝集剤を添加する方法は、原水の処理量、汚濁度、処理の滞留時間、攪拌時間、水温、アルカリ度、pH等の水質の要因に合わせた凝集法を採用しなければ良好な処理は不可能であった。このように従来法は、原水の諸要因により処理効率が左右されてしまう欠点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記したような原水の諸要因に実質的に影響されないような、凝集剤を用いる方法について種々研究を重ねた結果本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明は処理槽内に小区画域を設け、該小区画域内に
は 多表面積接触体を内在させ、かかる小区画域内に、酸性凝集剤と、該酸性凝集剤が弱酸性から弱アルカリ性のpHに調整するのに必要な化学当量
の アルカリ剤とを添加することを特徴とする原水の処理方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明方法によれば、小区画域内に酸性凝集剤とアルカリ剤とを添加することによって、両者の拡散が防止されることによって比較的高濃度の状態に維持することができるので、速やかに模擬フロックを形成させることができ、これによって原水中で短時間に良好なフロックを形成させることができる。また酸性凝集剤の残留イオンの発生を防止することができる。さらに運転管理が容易となり、最小の凝集剤の注入量で良好な処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図5b】レッシングリング形多表面積接触体の斜視図
【
図5c】パーティションリング形多表面積接触体の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に本発明を図面を参照しながら説明するが、本発明は以下の説明のみに限定されるものではない。
図1は、処理槽の一種である横流沈殿池の横断面図を示すものである。この横流沈殿池1の原水A流入部近傍に小区画域として例えば
図3に示すような上下が開放されかつ筒壁の周縁に複数のスリット2を設けた筒状体3を設置する。この筒状体3の上部には管4と管5をそれぞれ別々に筒状体3上に設ける。
そして管4から酸性凝集剤溶液を供給し、管5か
ら アルカリ剤溶液を供給する。管4から供給された酸性凝集剤溶液と管5から供給されたアルカリ剤溶液は、筒状体3内に添加され原水を介して合わされる。また管4と管5をジョイントさせた管を設け、管4から供給された酸性凝集剤溶液と管5から供給されたアルカリ剤溶液は管で合わされて、筒状体3内に添加させてもよい。
【0008】
筒状体3には、水面に浮
く 多表面積触媒体7が多数入れられている。
多表面積接触体7としては、
図5に示すようにラシッヒリング形(
図5a)、レッシングリング形(
図5b)、パーティションリング形(
図5c)、網目状リング形(
図5d)、クラ形(
図5e)等の中空の合成樹脂製のものが揚げられる。また、
図5fに示すようにブラシ状のものも使用できる。またこの回転ブラシ状のものは適宜の手段によって回転させることによって一層模擬フロックを形成させ易くすることができる。
【0009】
本発明の小区画域として用いられるものとしては、
図3の筒状体3の外、
図2に示す上下が開放された筒状体9や
図4に示す上下が開放されたロート形の筒状体10が用いられる。このロート形の筒状体10の場合、下部の排出口11より大きな形状を有する多表面積接触体7を用いれば水より比重の重い材質で作製したものでも使用できる。また筒状体10の周壁面には
図3の筒状体3のようにスリット2を設けることもできる。
前記の各筒状体は、円形の他、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形体のものも使用することができる。前記小区画域は処理槽の大きさにもよるが一般的には通常1,000〜200,000cm
3程度の容積のものが使用できる。
【0010】
本発明で使用する酸性凝集剤としては、PAC、硫酸バンド、ポリ硫酸鉄、ポリシリカ鉄等が挙げられる。
またアルカリ剤としては、消石灰、生石灰、石灰、苛性ソーダ、ソーダ灰等が挙げられる。
【0011】
酸性凝集剤とアルカリ剤との添加割合については、例えば、硫酸バンド溶液(Al
2O
3として8%)の場合、硫酸バンド1mg/L注入によるアルカリ度の減少は0.24mg/Lであり、ポリ塩化アルミニウム溶液(Al
2O
3として10%,塩基度50%)の場合同じくアルカリ度の減少は0.15mg/Lである。
【0012】
またアルカリ剤は、アルカリ度1mg/L高めるためには、消石灰(CaOとして72%)の場合、0.77mg/Lが必要であり、ソーダ灰(Na
2CO
3として99%)の場合1.07mg/Lが必要であり、さらに液体苛性ソーダ(NaOHとして45%)の場合1.78mg/Lが必要であり、また液体苛性ソーダ(NaOHとして20%)の場合4.0mg/Lが必要である。
【0013】
本発明においては、前記したように使用する酸性凝集剤の使用量と調整するpH値を決定することによって使用するアルカリ剤の使用量は決定される。また一般的には必要ではないが、処理する原水のpHが調整するpH値より差が大きい場合には、それらを考慮してアルカリ剤の使用量を調整すればよい。
【0014】
次に本発明方法を
図1の横流沈殿池の場合について説明する。横流沈殿池の原水A流入口の近傍に
図3に示したスリットを有する筒状体3を設ける。次に筒状体2の上部から一定割合の酸性凝集剤とアルカリ剤とを添加すると、この両者によって筒状体3内で模擬フロックが形成され、この模擬フロック
が 多表面積接触体の表面に付着することによって反応性(模擬凝集性)が富み、凝集反応が早められ、生成物質であるフロックが形成される。形成されたフロックは筒状体3のスリット部2および筒状体3の下部の開放部より外部に流出し、処理槽内において原水中の汚濁物質を取り込んだフロックを形成する。形成されたフロックは分離され、清澄水Bは横流沈殿池の排出口より外部に放流される。
【0015】
前記処理槽としては横流沈殿池の他、クラリファイアー、高速沈殿池、シックナー等が挙げられる。
【符号の説明】
【0016】
3・・・・筒状体
7・・・・多表面積接触体