【実施例】
【0086】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するためのものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
【0087】
試薬・溶媒など
試薬及び溶媒は、標準的な供給業者から購入し、さらに精製することなく使用した。
1H−NMR(300MHz、270MHz)および
31P−NMR(121MHz)スペクトルは、BRUKER AV300もしくはJEOL核磁気共鳴スペクトロメーター上に記録した。合成したヌクレオシド誘導体は、分取用カラム(Waters Microbond Sphere,C18,19mm x 150mm、流速10ml/分)、ヌクレオシド5’−三リン酸は、分取用カラム(PEGASIL C8,センシュウ科学,10mm x 150mm、流速6ml/分)を用いてGilson HPLCシステムで精製を行った。エレクトロスプレイ−イオン化マススペクトル(ESI−MS)は、Waters2690 LCシステムを伴ったWaters ZMD 4000マスシステム上に記録した。蛍光スペクトルは、JASCO FP6500蛍光分光計により測定し、蛍光量子収率は、硫酸キニーネを標準にして決定した。
【0088】
実施例1:ヌクレオシドの合成;7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(dDss)および7−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(dDsss)の合成
条件:
(a)5−トリブチルスタンニル−2,2’−ビチオフェン又は5−トリブチルスタンニル−2,2’、5’、2”−ターチオフェン、Pd(PPh
3)
2Cl
2、DMF;
(b)Pd/C、NaBH
4、ピリジン、H
2O;
(c)HCOOH;
(d)NaH、2−デオキシ3,5−ジ−O−p−トルオイル−α−D−エリスロ−ペントフラノシルクロリド、CH
3CN、そしてNaOMe、MeOH、CH
2Cl
2。
Rは2,2’−ビチエン−5−イル基又は2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル基である。
【0089】
(1−1)
4−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−ニトロピリジン−2−アミンおよび4−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)−3−ニトロピリジン−2−アミンの合成
2,2’−ビチオフェン(830mg、5.0mmol)のTHF(50ml)溶液にn−ブチルリチウム(1.57Mのヘキサン溶液3.2ml、5.0mmol)を−78℃で加えた。この溶液を−78℃で30分撹拌した後、トリブチルスタンニルクロリド(1.5ml)を加えた。反応溶液を室温で30分間撹拌した後、水と酢酸エチルを用いて分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮したのち、2−アミノ−3−ニトロ−4−クロロピリジン(519mg、3.0mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(105mg、0.15mmol)のDMF(18ml)溶液に加えた。この溶液を100℃で5時間撹拌したのち、酢酸エチルと水で分液した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち、減圧下で濃縮した。4−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−ニトロピリジン−2−アミン(809mg、89%)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(2%酢酸エチルの塩化メチレン溶液で溶出)で精製して得た。
【0090】
4−(2,2’,5’,2”−ターチオフェン−5−イル)−3−ニトロピリジン−2−アミンの合成は、2,2’,5’,2”−ターチオフェン(1.24g、5.0mmol)を用いて同じ反応により、250mg、22%の収率で得た。
4−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−ニトロピリジン−2−アミン:
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6)δ8.19(d,1H,J=5.1Hz),7.60(dd,1H,J=1.1,5.1Hz),7.41(dd,1H,J=1.2,3.6Hz),7.35(d,1H,J=3.8Hz),7.20(d,1H,J=3.9Hz),7.14(dd,1H,J=3.6,5.1Hz),6.97(bs,1H),6.80(d,1H,J=5.1Hz).HRMS(FAB、3−NBAマトリクス)C
13H
10N
3O
2S
2について(M+H)
+ 計算値:304.0214、実測値:304.0172.
4−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)−3−ニトロピリジン−2−アミン:
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6)δ8.19(d,1H,J=5.0Hz),7.57(dd,1H,J=1.1,5.1Hz),7.40(m,3H),7.32(d,1H,J=3.8Hz),7.22(d,1H,J=3.9Hz),7.13(dd,1H,J=3.7,5.1Hz),6.99(bs,2H),6.80(d,1H,J=5.0Hz).
【0091】
(1−2)
4−(2,2’−ビチエン−5−イル)ピリジン−2,3−ジアミンおよび4−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)ピリジン−2,3−ジアミンの合成
4−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−ニトロピリジン−2−アミン(760mg,2.5mmol)とパラジウム(10%カーボン)のピリジン(25ml)溶液に、1M NaBH
4(7.5ml)を0℃で加えた。0℃で30分間撹拌したのち、5%アンモニウムクロリド水溶液を加えた。5分間撹拌したのち、溶液をろ過した。ろ液を塩化メチレンと水で分液した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して濃縮した。4−(2,2’−ビチエン−5−イル)ピリジン−2,3−ジアミン(448mg、65%)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)で精製して得た。
【0092】
4−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)ピリジン−2,3−ジアミンの合成は、4−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)−3−ニトロピリジン−2−アミン(250mg、0.65mmol)を用いて同じ反応により、103mg、45%の収率で得た。
【0093】
4−(2,2’−ビチエン−5−イル)ピリジン−2,3−ジアミン:
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6)δ7.54(dd,1H,J=7.54Hz),7.36−7.32(m,4H),7.12(dd,1H,J=3.6,5.1Hz),6.51(d,1H,J=5.3Hz),5.70(bs,2H),4.77(bs,2H).HRMS(FAB,3−NBAマトリクス)C
13H
12N
3S
2について(M+H)
+ 計算値:274.0473、実測値:274.0470.
4−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)ピリジン−2,3−ジアミン:
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6)δ7.55(dd,1H,J=1.1,5.1Hz),7.39−7.29(m,6H),7.12(dd,1H,J=3.6,5.1Hz),6.52(d,1H,J=5.3Hz),5.71(bs,2H),4.79(bs,2H).
【0094】
(1−3)
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンおよび7−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンの合成
4−(2,2’−ビチエン−5−イル)ピリジン−2,3−ジアミン(273mg,1.0mmol)のギ酸(3.0ml)溶液を140℃で12時間還流した。反応溶液を0℃に冷却して、28%アンモニア水(5.0ml)を加えた。この溶液を酢酸エチルと水で分液し、有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧下で濃縮して7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(272mg、96%)を得た。
【0095】
7−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンは、4−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)ピリジン−2,3−ジアミン(100mg、0.29mmol)を用いて同じ反応により、106mg、99%の収率で得た。
【0096】
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン:
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6)δ13.25(bs,1H),8.50(s,1H),8.32(s,1H,J=5.2Hz),8.22(d,1H,J=3.9Hz),7.61(d,1H,J=5.0H),7.59(dd,1H,J=5.0,6.2Hz),7.47(dd,1H,J=1.1,3.6Hz),7.45(d,1H,J=4.1Hz),7.15(dd,1H,J=3.6,5.1Hz).HRMS(FAB,3−NBAマトリクス)C
14H
10N
3S
2について(M+H)
+ 計算値:284.0316、実測値:284.0365.
7−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン:
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6)δ13.25(bs,1H),8.51(s,1H),8.33(d,1H,J=5.2Hz),8.23(d,1H,J=4.0Hz),7.62(d,1H,J=5.3H),7.57(dd,1H,J=1.2,5.1Hz),7.50(d,1H,J=3.9Hz),7.44(d,1H,J=3.8Hz),7.40(dd,1H,J=1.2,3.6Hz),7.34(d,1H,J=3.8Hz),7.13(dd,1H,J=3.6,5.1).
【0097】
(1−4)
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(dDss)および7−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(dDsss)の合成
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(142mg、0.5mmol)のCH
3CN(10ml)溶液に、NaH(24mg、0.6mmol、鉱物油中60%分散液)を加えた。反応溶液を室温で30分、40℃で30分撹拌したのち、2−デオキシ−3,5−ジ−O−p−トルオイル−α−D−エリスロ−ペントフラノシルクロリド(233mg、0.6mmol)を室温で加えた。この反応溶液を室温で12時間撹拌した後、酢酸エチルと水で分液し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下で濃縮した。7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−3,5−ジ−O−トルオイル−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(227mg、0.36mmol)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(2% メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)で精製して得た。7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−3,5−ジ−O−トルオイル−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(227mg、0.36mmol)の塩化メチレン(3.5ml)とメタノール(3.5ml)溶液に、28% NaOCH
3のメタノール溶液(208mg)を加えて、室温で30分間撹拌した。反応溶液を、酢酸エチルと飽和塩化アンモニウム水溶液で分液し、有機層を水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(90mg、45%、2段階収率)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(2%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)で精製後、RP−HPLC精製により得た。
【0098】
7−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジンの合成は、7−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(100mg、0.27mmol)を用いて(NaHを加えて12時間リフラックスすること以外)同じ反応により22mg、17%、2段階収率で得た。
【0099】
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン:
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6) δ8.77 (s, 1H), 8.35 (d, 1H, J = 5.2 Hz), 8.23 (d, 1H, J = 3.9 Hz), 7.68 (d, 1H, J = 5.2 Hz), 7.60 (dd, 1H, J = 1.0, 5.1 Hz), 7.48-7.45 (m, 2H), 7.15 (dd, 1H, J = 3.7, 5.1 Hz), 6.54 (t, 1H, J = 6.8 Hz), 5.34 (d, 1H, J = 4.1 Hz), 5.11 (t, 1H, J = 5.8 Hz), 4.47 (m, 1H), 3.92 (m, 1H), 3.69-3.52 (m, 2H), 2.81 (m, 1H), 2.36 (ddd, 1H, J = 3.3, 6.2, 13.2 Hz).
13C NMR(75MHz,DMSO−d
6)
δ147.06, 144.01, 143.65, 140.02, 136.11, 135.50, 131.45, 130.82, 129.95, 128.56, 126.24, 124.74, 124.55, 113.51, 87.89, 83.77, 70.78, 61.71, 39.39.HRMS(FAB、3−NBAマトリクス)C
19H
18N
3O
3S
2について(M+H)
+ 計算値:400.0790、実測値:400.0815.
7−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン:
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6)δ8.77 (s, 1H), 8.36 (d, 1H, J = 5.2 Hz), 8.24 (d, 1H, J = 4.0 Hz), 7.70 (d, 1H, J = 5.2 Hz), 7.57 (dd, 1H, J = 1.1, 5.1 Hz), 7.51 (d, 1H, J = 3.9 Hz), 7.45 (d, 1H, J = 3.8 Hz), 7.40 (dd, 1H, J = 1.1, 3.6 Hz), 7.34 (d, 1H, J = 3.8 Hz), 7.13 (dd, 1H, J = 3.6, 5.1 Hz), 6.54 (t, 1H, J = 6.8 Hz), 5.34 (d, 1H, J = 2.4 Hz), 5.11 (t, 1H, J = 5.3 Hz), 4.46 (m, 1H), 3.92 (m, 1H), 3.60 (m, 2H), 2.81 (m, 1H), 2.36 (ddd, 1H, J = 3.3, 6.2, 13.2 Hz).
【0100】
実施例2:ヌクレオシドの合成;2−アミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)プリン(dss)および2−アミノ−6−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)プリン(dsss)の合成
条件:(a)5−トリブチルスタンニル−2,2’−ビチオフェン又は5−トリブチルスタンニル−2,2’,5’,2”−ターチオフェン、Pd(PPh
3)
4、LiCl、ジオキサン;次いでTBAF、THF。Rは2,2’−ビチエン−5−イル基又は2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル基である。
【0101】
6−O−トシル−3’,5’−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル−デオキシグアノシン(650mg、1.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(58mg、0.05mmol)、リチウムクロリド(84mg、2.0mmol)、および5−トリブチルスタニル−2,2’−ビチオフェン(5.0mmol)のジオキサン溶液を120℃で4.5時間還流した。反応溶液を酢酸エチルと水で分液し、有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧下で濃縮した。2−アミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−3,5−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル−β−D−リボフラノシル)プリン(550mg、86%)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)で精製した。2−アミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−3,5−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル−β−D−リボフラノシル)プリン(550mg)のTHF(8.6ml)溶液に、1M テトラブチルアンモニウムフルオリドのTHF溶液(2.6ml)を加えて、室温で1時間撹拌した。反応溶液を濃縮後、2−アミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)プリン(264mg、64%、2段階収率)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよびRP−HPLC精製により得た。
【0102】
2−アミノ−6−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)プリン(dsss)(405mg、81%、2段階収率)は、5−トリブチルスタニル−2,2’,5’,2”−ターチオフェン(5.0mmol)を用いて同じ反応により得た。
【0103】
2−アミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)プリン(dss):
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6)δ8.45(d,1H,J=3.9Hz),8.38(s,1H),7.61(dd,1H,J=1.1,5.1Hz),7.48−7.46(m,2H),7.16(dd,1H,J=3.7,5.1Hz),6.57(bs,2H),6.29(t,1H,J=7.4Hz),5.30(d,1H,J=4.1Hz),4.98(t,1H,J=5.5Hz),4.40(m,1H),3.85(m,1H),3.58(m,2H),2.66(m,1H),2.28(m,1H).
2−アミノ−6−(2,2’,5’,2”−ターチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)プリン(dsss):
1H NMR(270MHz,DMSO−d
6)δ8.44(d,1H,J=4Hz),8.37(s,1H),7.56(dd,1H,J=1.1,4.9Hz),7.49(d,1H,J=4.0Hz),7.43(d,1H,J=4.0Hz),7.39(dd,1H,J=1.0,3.6Hz),7.32(d,1H,J=4.0Hz),7.12(dd,1H,J=3.6,4.9Hz),6.56(bs,2H),6.28(t,1H,J=6.9Hz),5.29(d,1H,J=4.0Hz),4.96(t,1H,J=5.6Hz),4.38(m,1H),3.85(m,1H),3.55(m,2H),2.65(m,1H),2.28(m,1H).
【0104】
実施例3:ヌクレオシドの合成;1−[2−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−4−(2,2’−ビチエン−5−イル)−ピロロ[2,3−b]ピリジン(dDsas)、1−[2−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−4−[2−(2−チアゾリル)チエン−5−イル]ピロロ[2,3−b]ピリジン(dDsav)および1−[2−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−4−[5−(2−チエニル)チアゾール−2−イル]ピロロ[2,3−b]ピリジン(dDvas)の合成
Rは、2,2’−ビチエン−5−イル基、2−(2−チアゾリル)チエン−5−イル基、又は5−(2−チエニル)チアゾール−2−イル基。
試薬および略号:
(a)mCPBA、EtOAc、次いでメタンスルホニルクロリド、DMF;
(b)NaI、CH
3COCl、CH
3CN;
(c)NaH、2−デオキシ−3,5−ジ−O−p−トルオイル−α−D−エリスロ−ペントフラノシルクロリド、CH
3CN;
(d)ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリブチルスタンニル誘導体、DMF;
(e)NH
3、メタノール又はNaOMe、メタノール
【0105】
(3−1)
4−ヨード−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンの合成
1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン(5.3g,45mmol)を酢酸エチル(45ml)に溶解し、酢酸エチル(30ml)に溶解したメタ−クロロ化安息香酸(14g,54mmol)溶液を0℃で撹拌しながら1時間かけて滴下して加えた。滴下後室温で3時間撹拌した後、0℃で静置した。結晶をろ過し、酢酸エチルで洗浄後、減圧下で乾燥した。これを水(30ml)に溶解後、30%K
2CO
3をpH10になるまで加え、室温で1時間、0℃で1時間静置した後、沈殿をろ過、エーテルで洗浄してN−オキシドを3.5g(58%)得た。N−オキシド(3.0g、22mmol)をDMF(16ml)に溶解し50℃で加熱した。メタンスルホニルクロリド(4.7ml,60mmol)のDMF(6.4ml)溶液を70℃で滴下し、この反応溶液を75℃で2時間撹拌した。反応溶液を氷に加えた後、0℃で10NのNaOHを用いて中和した。室温で1時間撹拌し生成した沈殿をろ過して水で洗浄した後、60℃で減圧乾燥して目的とする4−クロロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンを2.7g(80%)得た。4−クロロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン(2.7g、18mmol)、NaI(13g、88mmol)をアセトニトリル(28ml)に溶解し、室温で撹拌しながらCH
3COCl(3.5ml、50mmol)を加えた。反応溶液を85℃で12時間加熱した。反応溶液を室温に戻した後、10%Na
2CO
3(28ml)、10%NaHSO
3(28ml)を加えて室温で15分撹拌した。酢酸エチルを加えて分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮後、シリカゲルカラムで精製して4−ヨード−1−N−アセチル−ピロロ[2,3−b]ピリジン(2.0g)ならびに4−ヨード−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン(2.3g)を得た。4−ヨード−1−N−アセチル−ピロロ[2,3−b]ピリジン(2.0g、7.0mmol)は、エタノール(70ml)に溶解し、メタノール中28%ナトリウムメトキシド(1.4ml、7.0mmol)を加えて1時間還流した。反応溶液を濃縮後、酢酸エチルと飽和アンモニウムクロリド水溶液で分液し、有機層を飽和アンモニウムクロリド水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮後、先に得られた4−ヨード−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン(2.3g)とあわせてエタノールで再結晶して4−ヨード−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン(4.0g,92%)を得た。
【0106】
4−ヨード−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン:
1H NMR(500MHz,DMSO−d
6)δ12.01(s,1H),7.89(d,1H,J=5.0Hz),7.59(t,1H,J=3.1Hz),7.51(d,1H,J=5.0Hz),6.27(d,1H,J=3.4Hz).
【0107】
(3−2)
1−[2−デオキシ−3,5−ジ−O−(トルオイル)−β−D−リボフラノシル]−4−ヨード−ピロロ[2,3−b]ピリジンの合成
4−ヨード−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン(950mg、3.9mmol)のアセトニトリル(39ml)溶液に、NaH(156mg、60%油中分散液、3.9mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、2−デオキシ−3,5−ジ−O−p−トルオイル−α−D−エリスロペントフラノシルクロリド(1.8g、1.2当量)を加えて室温で1.5時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルと飽和アンモニウムクロリド水溶液で分液し、有機層を飽和アンモニウムクロリド水溶液と飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲルカラムで精製して1−[2−デオキシ−3,5−ジ−O−(トルオイル)−β−D−リボフラノシル]−4−ヨード−ピロロ[2,3−b]ピリジンを1.8g(77%)得た。
【0108】
(3−3)
1−[2−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−4−(2,2’−ビチエン−5−イル)−ピロロ[2,3−b]ピリジン(dDsas)の合成
2−トリブチルスタニル−5,2−ビチオフェン(0.3mmol)、1−[2−デオキシ−3,5−ジ−O−(トルオイル)−β−D−リボフラノシル]−4−ヨード−ピロロ[2,3−b]ピリジン(120mg,0.2mmol)、ジクロロビストリフェニルフォスフィンパラジウム(7mg)のDMF(2ml)の溶液を100℃で1時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルと水で分液し、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮してシリカゲルカラムにより精製して、1−[2−デオキシ−3,5−ジ−O−(トルオイル)−β−D−リボフラノシル]−4−(2,2’−ビチエン−5−イル)−ピロロ[2,3−b]ピリジンを得た。これを、塩化メチレン(10ml)とメタノール(2ml)に溶解し、28%ナトリウムメチラート(0.12ml)を加えて室温で30分撹拌した。シリカゲルカラムならびにHPLCにより精製して1−[2−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−4−(2,2’−ビチエン−5−イル)−ピロロ[2,3−b]ピリジン(dDsas、54mg、68%)を得た。
【0109】
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6)δ8.26(d,1H,J=5.1Hz),7.88(d,1H,J=3.8Hz),7.80(d,1H,J=3.9Hz),7.58(dd,1H,J=1.1,5.1Hz),7.44(m,3H),7.14(dd,1H,J=3.7,5.1Hz),6.96(d,1H,J=3.8Hz),6.75(dd,1H,J=6.1,8.1Hz),5.26(d,1H,J=4.1Hz),5.00(t,1H,J=5.6Hz),4.39(m,1H),3.84(m,1H),3.56(m,2H),2.59(m,1H),2.23(m,1H).
【0110】
(3−4)
1−[2−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−4−[2−(2−チアゾリル)チエン−5−イル]ピロロ[2,3−b]ピリジン(dDsav)の合成
2−ブロモチアゾール(0.9ml、10mmol)、ジクロロビストリフェニルフォスフィンパラジウム(350mg)のDMF(50ml)の溶液に2−トリブチルスタンニルチオフェン(3.5ml、11mmol)を加え、90℃で3時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、酢酸エチルと水で分液後、飽和食塩水で有機層を洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後シリカゲルカラムで精製して2,2’−チエニルチアゾール(1.4g,87%)で得た。2,2’−チエニルチアゾール(251mg、1.5mmol)のTHF(15ml)の溶液を−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(0.96ml,1.5mmol,1.57Mヘキサン溶液)を加え、−78℃で30分間撹拌した。これにトリメチルシリルクロリド(1.5mmol、0.19ml)を加えて−78℃で30分間撹拌した。さらにn−ブチルリチウム(0.96ml、1.5mmol、1.57Mヘキサン溶液)を加え、−78℃で30分間撹拌した後、トリブチルスタンニルクロリド(0.45ml、1.6mmol)を加えて室温で30分撹拌した。反応溶液を酢酸エチルと水で分液し、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮してシリカゲルカラムにより精製して、2−トリブチルスタンニル−5−(5’−トリメチルシリル−2−チエニル)チオフェン(735mg)を得た。1−[2−デオキシ−3,5−ジ−O−(トルオイル)−β−D−リボフラノシル]−4−ヨード−ピロロ[2,3−b]ピリジン(298mg、0.5mmol)、ジクロロビストリフェニルフォスフィンパラジウム(18mg、0.025mmol)のDMF(5ml)の溶液に、2−トリブチルスタンニル−5−(5’−トリメチルシリル−2−チエニル)チオフェン(397mg,0.75mmol)を加え、100℃で1時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルと水で分液し、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮してシリカゲルカラムにより精製して、1−[2−デオキシ−3,5−ジ−O−(トルオイル)−β−D−リボフラノシル]−4−(2−(5−(5’−トリメチルシリル−2−チエニル)チオフェン)−ピロロ[2,3−b]ピリジン(335mg)を得た。これを、塩化メチレン(5ml)とメタノール(5ml)に溶解し、28%ナトリウムメチラート(290mg,1.5mmol)を加えて室温で30分撹拌した。反応溶液にアンモニウムクロリド(80mg)を加えて濃縮した後、シリカゲルカラムならびにHPLCにより精製して1−[2−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−4−[2−(2−チアゾリル)チエン−5−イル]−ピロロ[2,3−b]ピリジン(dDsav,112mg)ならびに、1−[2−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−4−[2−(2−チエニル)チアゾール−5−イル]ピロロ[2,3−b]ピリジン(dDv’as、26mg)を得た。
【0111】
dDsav:
1H NMR(300MHz、DMSO−d
6)δ 8.30(d,1H,J=5.1Hz),7.91(d,1H,J=3.8Hz),7.87(m,2H),7.79(m,2H),7.48(d,1H,J=5.1Hz),6.96(d,1H,J=3.8Hz),6.76(dd,1H,6.1,8.0Hz),5.27(d,1H,J=4.1Hz),4.99(t,1H,J=5.6Hz),4.38(m,1H),3.85(m,1H),3.56(m,2H),2.56(m,1H),2.24(m,1H).
dDv’as:
1H NMR(300MHz、DMSO−d
6)δ 8.51(s,1H),8.30(d,1H,J=5.1Hz),7.93(d,1H,J=3.8Hz),7.79(m,2H),7.47(d,1H,J=5.1Hz),7.22(dd,1H,J=4.0,4.9Hz),7.94(d,1H,J=3.8Hz),6.75(dd,1H,J=6.2,7.9Hz),5.27(d,1H,J=4.1Hz),4.99(t,1H,J=5.6Hz),3.38(m,1H),3.59(m,2H),2.57(m,1H),2.24(m,1H).
【0112】
(3−5)
1−[2−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−4−[5−(2−チエニル)チアゾール−2−イル]ピロロ[2,3−b]ピリジン(dDvas)の合成
5−(2−チエニル)チアゾール(0.4mmol)のジエチルエーテル溶液を−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(0.4mmol、1.57M ヘキサン溶液)を加えて−78℃で30分間撹拌した。トリブチルスタニルクロリドを加えた後、室温で30分間撹拌し、反応溶液を酢酸エチルと水で分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄濃縮後、1−[2−デオキシ−3,5−ジ−O−(トルオイル)−β−D−リボフラノシル]−4−ヨード−ピロロ[2,3−b]ピリジン(120mg、0.2mmol)、クロロビストリフェニルフォスフィンパラジウム(5% mol)、DMF(2ml)を加えて100℃で1時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルと水で分液し、飽和食塩水と水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。シリカゲルカラムで精製後、ナトリウムメトキシド(1.6ml)を加えて室温で30分間撹拌し、シリカゲルカラムで精製後、HPLCで精製してdDvasヌクレオシド(34mg)得た。
【0113】
dDvas :
1H NMR(300MHz、DMSO−d
6)δ 8.37(d,1H,J=5.1Hz),8.31(s,1H),7.96(d,1H,J=3.8Hz),7.68(m,2H),7.54(dd,1H,J=1.1,3.6Hz),7.19(dd,1H,3,7,5,1Hz),7.15(d,1H,J=3.7Hz),6.77(dd,1H,J=6.1,8.0Hz),5.28(d,1H,J=4.1Hz),4.98(t,1H,J=5.5Hz),4.38(m,1H),3.85(m,1H),3.56(m,2H),2.57(m,1H),2.49(m,1H).
【0114】
実施例4:アミダイト合成(dDss及びdss)
条件:
(a)DMTr−Cl、dDssについてピリジン、トリメチルシリルクロリド、フェノキシアセチルクロリド、ヒドロキシベンゾトアゾール、ピリジン、CH
3CN、次いでDMTr−Cl、ピリジン
(b)2−シアノエチル N,N−ジイソプロピルアミノクロロホスホロアミダイト、ジイソプロピルアミン、THF。
【0115】
(4−1)
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジンの合成。
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(dDss)(262mg、0.66mmol)をピリジンで3回共沸乾燥した後、ピリジン(7.0ml)に溶解させ4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(367mg、0.79mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、酢酸エチルと5%炭酸水素ナトリウム水溶液で分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル)イミダゾ [4,5−b]ピリジン(408mg、89%)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)で精製して得た。
【0116】
1H NMR(300MHz、DMSO−d
6)δ 8.66 (s, 1H), 8.30 (d, 1H, J = 5.2 Hz), 8.22 (d, 1H, J = 3.9 hz), 7.67 (d, 1H, J = 5.2 Hz), 7.60 (dd, 1H, J = 1.1, 5.1 Hz), 7.48-7.46 (m, 2H), 7.34-7.31 (m, 2H), 7.24-7.14 (m, 8H), 6.80
(d, 2H, J = 9.0 Hz), 6.75 (d, 2H, J = 9.0 Hz), 6.55 (t, 1H, J = 6.3 Hz), 5.39 (d, 1H, J = 4.6 Hz), 4.51 (m, 1H), 3.70 および3.67 (s, s, 6H), 3.19 (m, 2H), 2.96 (m, 1H), 2.41 (m, 1H).
HRMS(FAB、3−NBAマトリクス)C
40H
35N
3O
5S
2Naについて (M+Na)
+ 計算値:724.1916、実測値:724.1978
【0117】
(4−2)
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン 2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルアミノホスホロアミダイトの合成
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(203mg、0.29mmol)は、ピリジンで3回、THFで3回共沸乾燥した。このジイソプロピルエチルアミン(76μl、0.43mmol)とTHF(1.5ml)を加えて、最後に2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルアミノクロロホスホロアミダイト(78μl、0.35mmol)を加えて室温で1時間撹拌した。反応溶液にメタノール(50μl)を加え、EtOAc:TEA(20:1、v/v、20ml)で希釈した。5%炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、有機層を減圧下で濃縮した。7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン 2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルアミノホスホロアミダイト(260mg、99%)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(2%トリエチルアミンを含む塩化メチレンとヘキサン2:3の溶液で溶出)で精製して得た。
【0118】
1H NMR(300MHz、CDCl
3)δ 8.33−8.30(m,2H),8.11(d,1H,J=3.9Hz),7.47−7.41(m,3H),7.35−7.17(m,10H),7.07(dd,1H,J=3.6,5.1Hz),6.82−6.76(m,4H),6.62(m,1H),4.80(m,1H),4.34(m,1H),3.91−3.78(m,10H),3.49−3.32(m,2H),2.94(m,1H),2.73(m,1H),2.64(t,1H,J=6.5Hz),2.48(t,1H,J=6.4Hz),1.23−1.12(m,12H).
31P NMR(121MHz、CDCl
3)δ 149.47および149.29(ジアステレオ異性体).
HRMS(FAB、3−NBAマトリクス)C
49H
52N
5O
6S
2PNaについて(M+Na)
+ 計算値:924.2994、実測値:924.3328.
【0119】
(4−3)
2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)プリンの合成
2−アミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)プリン(ss)(208mg、0.5mmol)をピリジンで3回共沸した後、ピリジン(2.5ml)に溶解し、トリメチルシリルクロリド(476μl、3.8mmol)を加えて室温で30分撹拌した(溶液A)。1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(122mg、0.9mmol)をピリジンで3回共沸した後、ピリジン(0.25ml)とアセトニトリル(0.25ml)に溶解し、この溶液を0℃に冷却して、フェノキシアセチルクロリド(104μl,0.75mmol)を加えて5分間撹拌した(溶液B)。溶液Bに溶液Aを0℃で加え、室温で12時間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、14%アンモニア水溶液(0.5ml)を加えて10分撹拌した。反応溶液を酢酸エチルと水で分液し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後濃縮した。2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)プリン(246mg、89%)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5%メタノールの塩化メチレンで溶出)で精製して得た。
【0120】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ 10.77(s,1H),8.74(s,1H),8.55(d,1H,J=4.0Hz),7.65(dd,1H,J=1.1,5.1Hz),7.54(d,1H,J=3.9Hz),7.51(dd,1H,J=1.1,3.6Hz),7.34−7.29(m,2H),7.17(dd,1H,J=5.7,5.1Hz),7.01−6.94(m,3H),6.41(t,1H,J=6.8Hz),5.35(d,1H,J=4.1Hz),5.10(s,2H),4.93(t,1H,J=5.5Hz),4.46(m,1H),3.89(m,1H),3.59(m,2H),2.79(m,1H),2.35(m,1H).
【0121】
(4−4)
2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ5−O−ジメトキシトリチル−β−D−リボフラノシル)プリンの合成
2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)プリン(240mg、0.44mmol)をピリジンで共沸乾燥した後、ピリジン(4.4ml)に溶解させ4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(163mg、0.48mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、酢酸エチルと5%炭酸水素ナトリウム水溶液で分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−5−O−ジメトキシトリチル−β−D−リボフラノシル)プリン(314mg、84%)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)で精製して得た。
【0122】
1H NMR(300MHz、DMSO)δ 10.72(s,1H),8.64(s,1H),8.56(d,1H,J=4.0Hz),7.65(dd,1H,J=1.1,5.1Hz),7.55(d,1H,J=3.9Hz),7.52(dd,1H,J=1.1,3.6Hz),7.34−7.27(m,4H),7.19−7.12(m,8H),7.00−6.95(m,3H),6.75(d,2H,J=8.9Hz),6.69(d,2H,J=8.9Hz),6.45(t,1H,J=5.8Hz),5.33(d,1H,J=4.7Hz),5.05(m,2H),4.55(m,1H),4.01(m,1H),3.67,3.64(s,s,6H),3.30(m,1H,H
2Oシグナルピークと重なる),3.12(m,1H),2.95(m,1H),2.40(m,1H).
【0123】
(4−5)
2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−5−O−ジメトキシトリチル−β−D−リボフラノシル)プリン 2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルアミノホスホロアミダイトの合成
2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−5−O−ジメトキシトリチル−β−D−リボフラノシル)プリン(310mg、0.36mmol)は、ピリジンで3回、THFで3回共沸乾燥した。このジイソプロピルエチルアミン(95μl、0.55mmol)とTHF(1.8ml)を加えて、最後に2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルアミノクロロホスホロアミダイト(98μl、0.44mmol)を加えて室温で1時間撹拌した。反応溶液にメタノール(50μl)を加え、EtOAc:TEA(20:1、v/v、20ml)で希釈した。5%炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、有機層を減圧下で濃縮した。2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2−デオキシ−5−O−ジメトキシトリチル−β−D−リボフラノシル)プリン 2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルアミノホスホロアミダイト(370mg、97%)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(2%トリエチルアミンを含む塩化メチレンとヘキサン2:3の溶液で溶出)で精製して得た。
【0124】
1H NMR(300MHz、CDCl
3)δ 8.59,8.58(s,s,1H),8.22(d,1H,J=4.4Hz),7.39−7.17(m,14H),7.13−7.05(m,4H),6.82−6.75(m,4H),6.50(t,1H,J=6.6Hz),4.94(bs,2H),4.80(m,1H),4.34(m,1H),3.94−3.55(m,4H),3.77(s,6H),3.45−3.40(m,2H),2.93(m,1H),2.80−2.66(m,1H),2.65(t,1H,J=6.4Hz),2.48(t,1H,J=6.4Hz),1.22−1.11(m,12H).
31P NMR(121MHz、CDCl
3)δ 149.57.
【0125】
実施例5:デオキシリボヌクレオシド5’−三リン酸(dDssTP)の合成
条件:
(a)無水酢酸、ピリジン、次いでジクロロ酢酸、CH
2Cl
2
(b)クロロ−1,3,2−ベンゾジオキサホスホリン−4−オン、ジオキサン、ピリジン、トリ−n−ブチルアミン、ビス(トリブチルアンモニウム)ピロホスフェート、I
2、H
2O、28%NH
4OH
【0126】
(5−1)
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−3−O−アセチル−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジンの合成
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(195mg、0.28mmol)をピリジンで3回共沸乾燥したのち、ピリジン(2.8ml)に溶解し、無水酢酸(105μl、1.1mmol)を加えて室温で12時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルと5%炭酸水素ナトリウム水溶液で分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をトルエンで共沸乾燥した後、塩化メチレン(28ml)に溶解させ、ジクロロ酢酸(280μl)を0℃で加えて15分撹拌した。反応溶液に5%炭酸水素ナトリウムを加えて分液した後、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液ならびに飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−3−O−アセチル−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(115mg、93%)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1%メタノールの塩化メチレンで溶出)で精製して得た。
【0127】
1H NMR(300MHz、DMSO−d
6)δ 8.79(s,1H),8.37(d,1H,J=4.7Hz),8.24(d,1H,J=3.9Hz),7.71(d,1H,J=5.2Hz),7.60(dd,1H,J=1.1,5.1Hz),7.48(m,2H),7.16(dd,1H,J=3.7,5.1Hz),6.55(dd,1H,J=5.9,8.7Hz),5.41(d,1H,J=5.8Hz),5.31(t,1H,J=5.2Hz),4.13(m,1H),3.71−3.63(m,10H),3.71−3.63(m,2H),3.06(m 1H),2.53(m,1H),2.11(s,3H).
HRMS(FAB、3−NBAマトリクス)C
21H
20N
3O
4S
2について(M+H)
+ 計算値:442.0895、実測値:442.0869.
【0128】
(5−2)
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン 5’−三リン酸の合成
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−3−O−アセチル−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(44mg、0.1mmol)を、ピリジンで共沸乾燥した後、ピリジン(100μl)とジオキサン(100μl)に溶解させ、2−クロロ−1,3,2−ベンゾジオキサホスホリン−4−オンの1Mジオキサン溶液(110μl、0.11mmol)を加えて10分撹拌した。この溶液にトリブチルアミン(100μl)とビス(トリブチルアンモニウム)ピロフォスフェートの0.5M DMF溶液(300μl、0.15mmol)を加えて室温で10分撹拌した。1% ヨウ素のピリジン/水(98:2、v/v、2.0ml)を加えて15分撹拌した後、亜硫酸水素ナトリウムの5%水溶液(150μl)を加えた。水(5.0ml)を加えて、30分撹拌した後、28%アンモニア水(20ml)を加えて室温で4時間撹拌した。反応溶液を減圧下で濃縮した後、7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン 5’−三リン酸(33μmol、33%)は、DEAE Sephadex(A−25)カラムクロマトグラフィー(50mMから1.0M TEAB溶液で溶出)ならびにC18−HPLC (0%から50% アセトニトリルの100mM TEAAにより溶出)により精製して得た。
【0129】
1H NMR(300MHz、D
2O)δ 8.49(s,1H),8.08(d,1H,J=5.4Hz),7.58(d,1H,J=4.0Hz),7.33−7.30(m,2H),7.06(dd,1H,J=1.1,4.7Hz),6.99(dd,1H,J=3.7,5.1Hz),6.91(d,1H,J=3.9Hz),6.29(t,1H,J=6.9Hz),4.68(m,1H,D
2Oと重なる),4.18(m,1H),4.10−4.02(m,2H),3.05(q,22H,J=7.3Hz),2.68(m,1H),2.41(m,1H),1.14(t,34H,J=7.3Hz).
31P NMR(121MHz、D
2O)δ −9.71(d,1P,J=19.8Hz),−10.72(d,1P,J=19.8Hz),−22.54(t,1P,J=20.0Hz).
10mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)中のUV−visスペクトルデータ、λmax=264nm(ε9900)、368nm(ε31400).
ESI−MS(C
19H
20N
3O
12S
2P
3);計算値:637.96(M−H)
−、実測値:637.87(M−H)
−.
【0130】
実施例6:リボヌクレオシド5’−三リン酸(DssTP)の合成
条件:
(a)テトラ−O−アセチル−β−D−リボフラノース、クロロ酢酸
(b)(i)DMTrCl、ピリジン;(ii)無水酢酸、ピリジン、次いでジクロロ酢酸、CH
2Cl
2;
(c)2−クロロ−4H−1,3,2−ベンゾジオキサホスホリン−4−オン、ジオキサン、ピリジン、トリ−n−ブチルアミン、ビス(トリ−n−ブチルアンモニウム)ピロホスフェート、DMF、次いでI
2/ピリジン/H
2O
【0131】
(6−1)
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジンの合成
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(566mg、2.0mmol)とテトラ−O−アセチル−β−D−リボフラノース(700mg、2.2mmol)およびクロロ酢酸(12mg)を200℃で10分間溶融させた。冷却した後、塩化メチレンとメタノール(1:1、v/v、16ml)に溶解させ、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(2.0ml)を加えて室温で30分撹拌した。反応溶液を減圧下で濃縮した後、7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(190mg、23%)を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)ならびにC18−HPLCで精製して得た。
【0132】
1H NMR(300MHz、DMSO−d
6)δ 8.80(s,1H),8.36(d,1H,J=5.2Hz),8.24(d,1H,J=3.9Hz),7.70(d,1H,J=5.2Hz),6.60(dd,1H,J=1.0,5.1Hz),7.49−7.46(m,2H),7.16(dd,1H,J=3.7,5.1Hz),6.09(d,1H,J=5.7Hz),5.51(d,1H,J=6.0Hz),5.26(dd,1H,J=5.0,6.4Hz),5.21(d,1H,J=4.9Hz),4.68(m,1H),4.20(m,1H),3.75−3.55(m,2H).
13C NMR(75MHz,DMSO−d
6)δ 147.25,144.04,143.94,140.10,136.09,135.43,131.58,130.89,130.03,128.57,126.27,124.78,124.57,113.60,87.83,85.57,73.49,79.41,61.41.
HRMS(FAB、3−NBAマトリクス)C
19H
18N
3O
4S
2について(M+H)
+ 計算値:416.0739、実測値:416.0755. ESI−MS(C
19H
17N
3O
4S
2); 計算値:416.07(M+H)
+、実測値:415.86(M+H)
+.
【0133】
(6−2)
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2,3−ジ−O−アセチル−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジンの合成
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(166mg、0.4mmol)をピリジンで3回共沸乾燥した後、ピリジン(4.0ml)に溶解させ、4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(162mg、0.48mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、酢酸エチルと5%炭酸水素ナトリウムで分液し、有機層を水ならびに飽和食塩水で洗浄し、減圧下で濃縮した。ジメトキシトリチル体は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)で精製した後、ピリジンで3回共沸乾燥した。これに、ピリジン(4ml)を加え、無水酢酸(151μl、1.6mmol)を加えて室温で12時間撹拌した。反応溶液は、酢酸エチルと5%炭酸水素ナトリウムで分液し、有機層を水ならびに飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。トルエンで共沸乾燥した後、塩化メチレン(40ml)に溶解させ、ジクロロ酢酸(400μl)を0℃で加えて15分撹拌した。反応溶液に5%炭酸水素ナトリウムを加えて分液した後、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液ならびに飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(2,3−ジ−O−アセチル−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(178mg、89%)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.5%メタノールの塩化メチレンで溶出)で精製して得た。
【0134】
1H NMR(300MHz、DMSO−d
6)δ 8.83(s,1H),8.38(d,1H,J=5.3Hz),8.25(d,1H,J=4.0Hz),7.73(d,1H,J=5.3Hz),7.61(dd,1H,J=1.1,5.1Hz),7.50−7.47(m,2H),7.16(dd,1H,J=3.7,5.1Hz),6.39(d,1H,J=6.7Hz),6.04(dd,1H,J=5.7,6.6Hz),5.58−5.53(m,2H),4.28(m,1H),3.81−3.63(m,2H)2.15(s,3H),2.00(s,3H).
HRMS(FAB、3−NBAマトリクス)C
23H
22N
3O
6S
2について(M+H)
+ 計算値:500.0950、実測値:500.0929.
【0135】
(6−3)
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン 5’−三リン酸の合成
7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(3−O−アセチル−β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン(50mg、0.1mmol)を、ピリジンで共沸乾燥した後、ピリジン(100μl)とジオキサン(100μl)に溶解させ、2−クロロ−1,3,2−ベンゾジオキサホスホリン−4−オンの1Mジオキサン溶液(110μl、0.11mmol)を加えて10分撹拌した。この溶液にトリブチルアミン(100μl)とビス(トリブチルアンモニウム)ピロフォスフェートの0.5M DMF溶液(300μl、0.15mmol)を加えて室温で10分撹拌した。1%ヨウ素のピリジン/水(98:2、v/v、2.0ml)を加えて15分撹拌した後、亜硫酸水素ナトリウムの5%水溶液(150μl)を加えた。水(5.0ml)を加えて、30分撹拌した後、28%アンモニア水(20ml)を加えて室温で4時間撹拌した。反応溶液を減圧下で濃縮した後、7−(2,2’−ビチエン−5−イル)−3−(β−D−リボフラノシル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン 5’−三リン酸(26μmol、26%)は、DEAE Sephadex(A−25)カラムクロマトグラフィー(50mMから1.0M TEAB溶液ならびに10%アセトニトリルの1M TEAB溶液で溶出)ならびにC18−HPLC(0%から50%アセトニトリルの100mM TEAAにより溶出)により精製して得た。
【0136】
1H NMR(300MHz、D
2O)δ 8.64(s,1H),8.14(d,1H,J=5.4Hz),7.75(d,1H,J=4.0Hz),7.44(d,1H,J=5.4Hz),7.30(dd,1H,J=1.1,5.1Hz),7.15(dd,1H,J=1.1,3.6Hz),7.10(d,1H,J=3.9Hz),6.97(dd,1H,J=3.7,5.1Hz),6.12(d,1H,J=5.7Hz),4.74(m,1H,D
2Oと重なる),4.53(m,1H),4.33(m,1H),4.26−4.12(m,2H),3.08(q,26H,J=7.4Hz),1.16(t,38H,J=7.3Hz).
31P NMR(121MHz、D
2O)δ −9.56(d,1P,J=19.7Hz),−10.69(d,1P,J=20.0Hz),−22.44(t,1P,J=20.0Hz).
10mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)中でのUV−visスペクトルデータ、λmax=264nm(ε10100)、368nm(ε31800).
ESI−MS(C
19H
20N
3O
13S
2P
3);計算値:653.96(M−H)
−、実測値:653.99(M−H)
−【0137】
実施例7:リボヌクレオシド5’−三リン酸(ssTP)の合成
【化2】
条件:
(a)5−トリブチルスタンニル−2,2’−ビチオフェン、Pd(PPh
3)
4、LiCl、ジオキサン、次いでTBAF、THF
(b)トリメチルシリルクロリド、フェノキシアセチルクロリド、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ピリジン、CH
3CN、次いでDMTr−Cl、ピリジン
(c)無水酢酸、ピリジン
(d)ジクロロ酢酸、CH
2Cl
2
(e)クロロ−1,3,2−ベンゾジオキサホスホリン−4−オン、ジオキサン、ピリジン、トリ−n−ブチルアミン、ビス(トリブチルアンモニウム)ピロホスフェート、I
2、H
2O、28%NH
4OH
【0138】
(7−1)
2−アミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(β−D−リボフラノシル)プリン(ss)の合成
6−O−トシル−2’,3’,5’−トリ−O−ter−ブチルジメチルシリル−グアノシン(780mg、1.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(58mg、0.05mmol)、リチウムクロリド(84mg、2.0mmol)、および5−トリブチルスタンニル−2,2’−ビチオフェン(5.0mmol)のジオキサン溶液を120℃で5時間還流した。反応溶液を酢酸エチルと水で分液し、有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧下で濃縮した。2’,3’,5’−トリ−O−ter−ブチルジメチルシリル−2−アミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(β−D−リボフラノシル)プリンは、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレンで溶出)で精製した。2’,3’,5’−トリ−O−ter−ブチルジメチルシリル−2−アミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(β−D−リボフラノシル)プリンのTHF(5.5ml)溶液に、1MテトラブチルアンモニウムフルオリドのTHF溶液(4.5ml)を加えて、室温で30分撹拌した。反応溶液を濃縮後、2−アミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(β−D−リボフラノシル)プリン(391mg、90%、2段階収率)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよびRP−HPLC精製により得た。
【0139】
1H NMR(300MHz、DMSO−d
6)δ 8.46(d,1H,J=3.9Hz),8.41(s,1H),7.61(dd,1H,J=1.1,5.1Hz),7.49−7.46(m,2H),7.16(dd,1H,J=3.7,5.1Hz),6.58(bs,2H),5.87(d,1H,J=5.9Hz),5.47(d,1H,J=5.9Hz),5.47(d,1H,J=6.0Hz),5.17(d,1H,J=4.8Hz),5.08(t,1H,J=5.6Hz),4.53(m,1H),4.15(m,1H),3.93(m,1H),3.70−3.53(m,2H).
【0140】
(7−2)
2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2’,3’−ジ−O−アセチル−β−D−リボフラノシル)プリンの合成
2−アミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(β−D−リボフラノシル)プリン(216mg、0.5mmol)をピリジンで3回共沸した後、ピリジン(2.5ml)に溶解し、トリメチルシリルクロリド(635μl、5.0mmol)を加えて室温で30分撹拌した(溶液A)。1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(122mg、0.9mmol)をピリジンで3回共沸した後、ピリジン(0.25ml)とアセトニトリル(0.25ml)に溶解し、この溶液を0℃に冷却して、フェノキシアセチルクロリド(104μl、0.75mmol)を加えて5分間撹拌した(溶液B)。溶液Bに溶液Aを0℃で加え、室温で12時間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、14%アンモニア水溶液(0.5ml)を加えて10分撹拌した。反応溶液を酢酸エチルと水で分液し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後濃縮した。2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(β−D−リボフラノシル)プリン(230mg、81%)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5%メタノールの塩化メチレンで溶出)で精製して得た。2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(β−D−リボフラノシル)プリン(230mg、0.4mmol)をピリジンで共沸乾燥した後、ピリジン(4.0ml)に溶解させ4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(152mg、0.44mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、酢酸エチルと5%炭酸水素ナトリウム水溶液で分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(5−O−ジメトキシトリチル−β−D−リボフラノシル)プリン(228mg、65%)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)で精製して得た。2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(5−O−ジメトキシトリチル−β−D−リボフラノシル)プリン(228mg、0.26mmol)をピリジンで3回共沸乾燥した後、ピリジン(2.6ml)に溶解させ、無水酢酸(99μl、1.0mmol)を加えて室温で12時間撹拌した。反応溶液は、酢酸エチルと5%炭酸水素ナトリウムで分液し、有機層を水ならびに飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。トルエンで共沸乾燥した後、塩化メチレン(26ml)に溶解させ、ジクロロ酢酸(260μl)を0℃で加えて15分撹拌した。反応溶液に5%炭酸水素ナトリウムを加えて分液した後、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液ならびに飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(2’,3’−ジ−O−アセチル−β−D−リボフラノシル)プリン(134mg、79%、2段階収率)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.5%メタノールの塩化メチレンで溶出)で精製して得た。
【0141】
1H NMR(300MHz、DMSO−d
6)δ 10.83(s,1H),8.80(s,1H),8.55(d,1H,J=1H),7.66(d,1H,J=5.1Hz),7.56(d,1H,J=4.0Hz),7.52(d,1H,J=3.5Hz),7.32(m,2H),7.18(m,1H),7.02−6.95(m,3H),6.27(d,1H,J=6.5Hz),5.92(t,1H,J=6.2Hz),5.57(dd,1H,J=2.9,5.6Hz),5.33(t,1H,J=5.4Hz),5.10(s,2H),4.26(m,1H),3.73(m,2H),2.14(s,3H),1.99(s,3H).
【0142】
(7−3)
2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(β−D−リボフラノシル)プリン 5’−三リン酸の合成。
2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−1−(2’,3’−ジ−O−アセチル−β−D−リボフラノシル)プリン(65mg、0.1mmol) を、ピリジンで共沸乾燥した後、ピリジン(100μl)とジオキサン(300μl)に溶解させ、2−クロロ−1,3,2−ベンゾジオキサホスホリン−4−オンの1Mジオキサン溶液(110μl、0.11mmol)を加えて10分撹拌した。この溶液にトリブチルアミン(100μl)とビス(トリブチルアンモニウム)ピロフォスフェートの0.5M DMF溶液(300μl,0.15mmol)を加えて室温で10分撹拌した。1% ヨウ素のピリジン/水(98:2、v/v、2.0ml)を加えて15分撹拌した後、 亜硫酸水素ナトリウムの5%水溶液(150μl)を加えた。水(5.0ml)を加えて、30分撹拌した後、28%アンモニア水(20ml)を加えて55℃で3時間撹拌した。反応溶液を減圧下で濃縮した後、2−フェノキシアセチルアミノ−6−(2,2’−ビチエン−5−イル)−9−(β−D−リボフラノシル)プリン 5’−三リン酸(27.6μmol、27%)は、DEAE Sephadex(A−25)カラムクロマトグラフィー(50mMから1.0M TEAB溶液ならびに10%アセトニトリルの1M TEAB溶液で溶出)ならびにC18−HPLCにより精製して得た。
【0143】
1H NMR(300MHz、D
2O)δ 8.42(s,1H),8.10(d,1H,J=4.0Hz),7.36(d,1H,J=5.0Hz),7.24(d,2H,J=3.9Hz),7.01(dd,1H,J=3.8,5.0Hz),6.00(d,1H,J=5.9Hz),4.86(m,1H),4.64(m,1H),4.41(m,1H),4.29(m,2H),3.19(q,25H,J=7.4Hz),1.28(t,37H,J=7.3Hz).
31P NMR(121MHz、D
2O)δ −9.28(d,1P,J=19.4Hz),−10.70(d,1P,J=19.7Hz),−22.41(t,1P,J=20.0Hz).
10mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)中のUV−visスペクトルデータ、λmax=388nm(ε32500).
ESI−MS(C
18H
20N
5O
13S
2P
3);計算値:669.97(M−H)
−、実測値:669.39(M−H)
−.
【0144】
実施例8:蛍光性人工塩基のヌクレオシド誘導体の蛍光特性
人工塩基ss、sss、Dss、Dsss、Dsas、Dsav、またはDvasを有するヌクレオシドについて、蛍光特性を評価した。公知の人工塩基である2−アミノプリン、s(2−アミノ−6−(2−チエニル)プリン−9−イル基)、v(2−アミノ−6−(2−チアゾリル)プリン−9−イル基)、Ds(7−(2−チエニル)イミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イル基)を有するヌクレオシドの蛍光特性も併せて評価し、比較した。それぞれのデオキシリボヌクレオシド誘導体の構造を
図1に示し、またそれらの蛍光特性を表1に示す。
【表1】
【0145】
蛍光性のdsは、励起波長が350nmと低波長であり、その蛍光強度(ε×φ=2576)も小さい。dvは、363nmの励起で蛍光を発するが、塩基性条件化でのヌクレオシド誘導体の安定性が低い。dDsは310nm付近の励起で蛍光を発するが、350nm以上の励起では発光しない。また既存の2−アミノプリンは、300nm付近の励起で蛍光を発するが、350nm以上では蛍光強度が著しく減少する。
【0146】
これらに対して、dssは、388nmの励起で強い蛍光(ε×φ=9072)を示し、dDssも同様に371nmの励起でさらに強い蛍光(ε×φ=10400)を示した。
【0147】
また、
図2に人工塩基s、Dss又はssを有するリボヌクレオシド三リン酸誘導体(転写用の基質)の蛍光とそのスペクトルを示す。人工塩基Dss及びssを有するヌクレオチドは、人工塩基sを有するヌクレオチドよりも強い蛍光を示した。
【0148】
従って、プリン塩基、1−デアザプリン、1,7−デアザプリンの6位(プリン環の6位)に複素環分子を2つ以上縮重した本発明の人工塩基は、既存の人工塩基よりも優れた蛍光特性を有することが明らかになった。
【0149】
実施例9:複製による蛍光性人工塩基基質のDNAへの取り込み
複製による蛍光性人工塩基基質のDNAへの取り込みの例として、Klenowフラグメント(exo+)を用いた複製によるDNA中へのDssの取り込み実験を行った。
【0150】
2×反応緩衝液(20mM Tris−HCl pH7.5、14mM MgCl
2、0.2mM DTT)中に溶かした鋳型鎖DNA(配列番号1、35−mer、400nM)と5’末端が
32Pで標識されたプライマー(配列番号2、23−mer、400nM)を95℃で3分間加温後徐冷してアニーリングの操作を行い、二本鎖を形成させた。その二本鎖DNA溶液を5μlずつ分注した後、4×dNTP混合溶液(40μM dTTP、40μM dCTP、0−40μM dDssTP)を2.5μlと水で希釈したKlenowフラグメント(Takara)2.5μl(1ユニット)を加えて、37℃で酵素反応を開始した。37℃でインキュベーションした後、10μlの10M 尿素を含むTBE溶液を加えて75℃で3分加温して反応を終了させた。反応溶液の一部を15%ポリアクリルアミド−7M 尿素ゲルで電気泳動して、バイオイメージングアナライザー(FLA7000、富士フィルム)で解析した。
【0151】
人工塩基対Dss−Pa(ピロロ−2−カルバルデヒド)を利用することにより、Dssの相補塩基であるPaが組み込まれたDNAを鋳型とする大腸菌のクレノウ断片を用いた複製反応において、伸張したDNA鎖中の特定位置(鋳型DNA中のPaに相補する位置)にdDssTPを取り込ませることができた(
図3)。
【0152】
図3の電気泳動写真中、33−merと示されたバンドは完全に伸張したDNA断片である。蛍光性人工塩基の基質(dDssTP)の量を少なくすることにより(天然型塩基基質10μMに対して、dDssTPを0.5μM)効率よくDssヌクレオチドをDNA中に取り込ませられることが明らかになった。dDssTPを加えない場合(
図4の電気泳動写真のnoneで示したレーン)は、鋳型DNA中のPaの直前で複製が止まり、28−merのバンドが認められることから、dDssTPに依存してDNA鎖が伸長したことが分かる。すなわち、鋳型DNA中のPaに相補して、選択的にdDssTPが相補DNA鎖に取り込まれることが明らかとなった。
【0153】
実施例10:転写による蛍光性人工塩基基質のRNAへの取り込み
転写による蛍光性人工塩基基質のRNAへの取り込みの例として、T7 RNAポリメラーゼを用いた転写によるRNA中へのss及びDssの取り込み実験を行った。
【0154】
T7ポリメラーゼによる転写のための鋳型は、化学合成された2本DNA鎖(10μM 35−merのコード鎖(配列番号4)と21−merの非コード鎖(配列番号5))を、10mM NaClを含む10mM Tris−HCl(pH7.6)緩衝溶液中、95℃で加熱し、その後4℃まで徐冷してアニーリングすることにより調製した。T7ポリメラーゼによる転写は、24mM MgCl
2、2mM スペルミジン、5mM DTT、0.01% Triton X−100を含む40mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液(20μl)中、1mM 天然型NTPs、0.05−0.1mM ssTP又はDssTP(ss又はDssを有するリボヌクレオシド5’−三リン酸)の存在下、2μM 鋳型及び50ユニットのT7 RNAポリメラーゼ(Takara、Kyoto)を用いて転写を行った。37℃で3時間反応した後、10M 尿素および0.05%BPBを含む色素溶液(20μl)を加えて反応を止めた。その混合溶液を75℃で3分間加熱した後、20%ポリアクリルアミド−7M 尿素ゲルを用いてそれぞれ電気泳動を行った。転写産物の検出は、まず、蛍光指示薬を含むTLC上にゲルをのせ、上から254nmのUVを照射し、核酸がUVを吸収することで転写産物のバンドが影として検出されることを利用し、その像をポラロイドカメラにより撮影した。また、蛍光性人工塩基ssやDssを含む転写物は、落射紫外LEDを利用してバイオイメージングアナライザー、LAS4000(富士フィルム)により検出した。結果を
図4に示した。
【0155】
ssTP又はDssTPのどちらの人工塩基基質も鋳型DNA中のPaに相補して、RNA中に取り込まれた。
図4B中、上段の電気泳動がssTPの取り込みを示し、下段がDssTPの取り込みを示す。またそれぞれの左側の電気泳動は、UVシャドウイングにより検出し、右側はLAS4000を用いて主波長365nmのUV−LEDの落射光源で励起して、その蛍光を検出した図である。従って、左側の電気泳動では、全てのRNA転写物がバンドとして検出され、右側の電気泳動では、蛍光性人工塩基が取り込まれたRNA転写物がバンドとして検出される。
図4Bに示されるように、ssTPとDssTPのどちらも鋳型DNA中にPaが含まれるときだけ全長の転写産物(17−mer(配列番号6))が認められた。また、Paを含まない鋳型DNA(それぞれの電気泳動写真の左側のレーン)では蛍光性の転写物が検出されなかった。これらのことから、それぞれの蛍光性人工塩基基質がPaに依存してRNA中に選択的に取り込まれていることが明らかとなった。
【0156】
実施例11:ユニバーサル塩基としての性質を示す蛍光性人工塩基
12−mer DNAの中央にDssを有するヌクレオチドを導入し、その相補鎖の同じ位置に天然型塩基を組み込み、それぞれの二本鎖DNAの熱安定性を測定した。Dssを含むそれぞれの二本鎖DNAの熱安定性は、Shimadzu UV−2450分光光度計で測定し、IgorProソフトウエア(WaveMetrics)を用いて一次微分法によりTm値を算出した。5μMの二本鎖DNA(鎖長12塩基対)を、100mM塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム(pH7.0)、0.1mM EDTA中で、260nmの吸光度の温度変化を測定した。その結果を
図5(左側)に示す。
【0157】
蛍光性人工塩基Dssを組み込んだDNA断片は、その相補鎖DNAと二本鎖を形成し、Dssと天然型のどの塩基と塩基対を形成させても、二本鎖DNAの熱安定性はほぼ同じ(Tm=43.9−45.9℃)であった。それらの二本鎖DNAの熱安定性は、A−T塩基対の場合(Tm=48.6℃)と比較して3℃ほど低下するだけで、天然型の塩基の中で最も安定なミスマッチ塩基対であるT−G塩基対(Tm=42.4℃)よりも安定であった。
【0158】
公知のユニバーサル塩基として使用頻度の高い3−ニトロピロールは、天然型の塩基対よりも著しく二本鎖DNAの安定性を下げ、また、その熱安定性は相補する天然型塩基によりTm=17.8−23.2℃の開きがある(
図5右側)。
【0159】
従って、Dssは、二本鎖DNAの安定性を大きく下げず、また相補する天然塩基の違いによる熱安定性の変動が少ないことから、ユニバーサル塩基として従来の塩基類似体よりも優れている。
【0160】
実施例12:蛍光性人工塩基Dss、ssを部位特異的に含むshRNAの調製
本実施例では、人工塩基対Dss−Paあるいはss−Paを利用したT7 RNAポリメラーゼによる転写により、蛍光性人工塩基(Dss、あるいはss)を含む52−merのshRNA(shRNAF1)を調製した。shRNAF1(配列番号10)は、ホタルルシフェラーゼのmRNAをターゲットとしたRNA干渉実験用のshRNA(short hairpin RNA)である。
図6AにshRNAF1の二次構造を示した。蛍光性人工塩基の導入箇所は、転写産物のパッセンジャー鎖中の10番目、12番目、16番目、20番目、21番目、そしてガイド鎖中の34−41番目であり、それぞれDss、あるいはssのいずれかを導入した。目的とする人工塩基を含むshRNA産物は、電気泳動において、蛍光性人工塩基がとりこまれていない産物由来のバンドと比べて移動度が異なること、UV(波長365nm)照射により人工塩基由来の蛍光をそのバンドで観察できること、を利用して確認できた。
【0161】
(1)T7転写のための鋳型の調製
ホタルルシフェラーゼのmRNAをターゲットとしたRNA干渉実験用として、位置選択的に蛍光性人工塩基Dssあるいはssを部位特異的に導入したshRNA(shRNAF1、全長52−mer)を転写で得るための鋳型DNAを調製した。化学合成によりPaを含む2本のDNA鎖(667nMの69−merのコード鎖と非コード鎖)を、10mM NaCl−10mM Tris−HCl(pH7.6)緩衝液にて95℃で加熱し、その後4℃まで徐冷してアニーリングすることにより、鋳型DNAを調製した。
【0162】
(2)T7転写
T7転写はEpicentre Biotechnologies社のAmpliscribe T7−Flash Transcription Kitを用いて、200nM 鋳型DNA、2mM 天然型NTPs、0.1mM DssTPまたは0.1mM ssTPの存在下、37℃で2時間反応した。反応後の溶液をマイクロコンYM−3(ミリポア社)を用いてTE緩衝液に交換することで脱塩処理した後、15%ポリアクリルアミド−7M尿素ゲルを用いて電気泳動を行い、目的とする全長のshRNAを精製した。
【0163】
実施例13:培養細胞へのshRNA各種変異体の導入とレポーター遺伝子発現抑制効果の解析
本実施例では、T7転写とゲル精製により調製した種々のshRNAを、そのターゲットとなるレポーター遺伝子(ホタルルシフェラーゼ)ならびにコントロールとしてレニラルシフェラーゼの遺伝子を含むプラスミドと共にリポフェクション法によりHeLa細胞に導入し、ルシフェラーゼの発光から、その遺伝子発現が抑制されているかを調べた。その結果を
図6に示す。
【0164】
(1)細胞培養
HeLa細胞の培養は、二酸化炭素濃度5%、培養温度37℃の条件下で、10% 仔ウシ血清(FBS、JRH BIOSCIENCES)を含むMEM培地(Minimum Essential Medium Eagle、シグマ社)に抗生物質(ペニシリン最終濃度100U/mL、ストレプトマイシン 100μg/mL)を添加したものを用いて行った。
【0165】
(2)shRNAとプラスミドの細胞への導入
1穴あたり1.5×10
4個(培養液100μl)のHeLa細胞を96穴プレートに撒き、抗生物質を含まない10% 仔ウシ血清含有MEM培地で24時間培養した。トランスフェクションは、リポフェクタミン2000試薬(インビトロジェン、1穴あたり0.5μl)とホタルルシフェラーゼ遺伝子をコードするプラスミド(プロメガ社製pGL3−control、1穴あたり200ng)と、レニラルシフェラーゼ遺伝子をコードするプラスミド(プロメガ社製pGL4.74[hRluc/TK]、1穴あたり200ng)とPBS中でアニーリング処理した各種shRNA(1穴あたり75fmol)をOPTI−MEM培地(インビトロジェン)中で混合した溶液(50μl)を添加することで行った。shRNAの最終濃度は0.5nMである。22時間培養後に、2種類のルシフェラーゼタンパク質の発光量をそれぞれ調べた。
【0166】
(3)レポーター遺伝子発現抑制効果の解析
shRNAのターゲットとなるホタルルシフェラーゼのタンパク質発現の抑制効果は、プロメガ製品のデュアルルシフェラーゼレポーターアッセイ試薬を用いて、ホタルルシフェラーゼ、レニラルシフェラーゼの発光定量により解析した。具体的には、トランスフェクション後の細胞を1穴あたり100μlのPBSで2回洗浄したのち、20μlの細胞溶解用緩衝液を加えて25℃で30分間静かに攪拌しながら細胞を溶解した。この溶液に、100μlのLARII試薬を加えて混合後、LAS4000(富士フィルム)を用いてホタルルシフェラーゼの発光を検出(露光時間:120秒)後、Stop&Glo試薬を100μl加えて、レニラルシフェラーゼの発光を検出(露光時間:200秒)し、それぞれの発光の強さをScienceLab 2005 MultiGauge(富士フィルム)で定量した。それぞれの検出において、バックグラウンドはトランスフェクションを行わなかった場合の発光量であり、それぞれのルシフェラーゼの発光量からそのバックグラウンドを差し引いた後、ターゲットとするホタルルシフェラーゼの発光量を、共発現させたコントロールとなるレニラルシフェラーゼの発光量で割ることによって規格化した。shRNA非存在下での値を100%として、種々のshRNA存在下でのターゲットとするホタルルシフェラーゼの相対活性を算出した。
【0167】
shRNAF1(WT)の活性と比較して、shRNAのパッセンジャー鎖中の塩基10番目、12番目、16番目、20番目、21番目を蛍光性人工塩基に置換した場合では、天然型塩基置換の場合と同様、shRNA変異体の活性にはほとんど影響がみられなかった。また、ガイド鎖中の塩基34−41番目を蛍光性人工塩基に置換した場合では、35番目、36番目、37番目塩基の置換であれば、shRNA活性を損なわずに、蛍光性人工塩基を導入可能であることがわかった。なお、shRNAを最終濃度0.5nMでトランスフェクションした後の培地中へのIFN−αの分泌量はいずれも80pg/ml以下であり、shRNA導入による有意なIFN−αの誘導はみとめられなかった。
【0168】
以上の結果から、パッセンジャー鎖だけではなくガイド鎖中においても、人工塩基Dss、ssの変異を導入してもshRNAの活性には影響を及ぼさない箇所が存在することがわかった。
【0169】
実施例14:各種shRNAによるレポーター遺伝子発現抑制効果−IC50の算出
shRNAF1の36番目に人工塩基Dss、あるいはssを導入した場合での抑制効果とWTの抑制効果について、異なるshRNA濃度で遺伝子発現抑制を解析することにより、IC
50を算出した。IC
50値はカレイダグラフ(Albeck Software)を用いて、計算式 y=100×M1/(M0+M1)に当てはめて、最小二乗法によるデータフィッティングにより算出した。その結果を
図7に示した。図中に示した式のy(%)は、shRNA存在下でのターゲットとするルシフェラーゼの相対活性(実施例2参照)、M0(nM)はshRNA濃度、IC
50値はM1(nM)に相当する。shRNAF1のA36をDssあるいはssに置換した場合のIC
50値は、いずれも置換されていないshRNAF1と同程度の約0.02nMであった。
【0170】
実施例15:蛍光性人工塩基を含むshRNAの蛍光観察
shRNAに導入した人工塩基Dssやssは長波長側のUV励起によって青色の蛍光を発する特性をもっている。そこで人工塩基Dss、あるいはssの蛍光を利用したshRNAの検出を、従来の蛍光性人工塩基sと比較して行った。
【0171】
shRNAとしては、shRNAF1のU35をDssで置換したshRNAF1 U35Dss、shRNAF1のU35をssで置換したshRNAF1 U35ss、および、shRNAF1のU35をsで置換したshRNAF1 U35s、を使用した。
【0172】
所定量のshRNAをナイロンメンブレインに96穴タイプの吸引マニホールドを利用してドットブロットした後、バイオイメージャーLAS4000(富士フィルム)のDAPIモード(主波長365nmのUV−LED落射光源、検出フィルターL41)でその蛍光を検出した結果を
図8に示した。リン酸緩衝液中でsTP、ssTP、DssTPを365nmで励起した場合の蛍光極大波長は、それぞれ436nm、468nm、459nmであり、その波長での蛍光強度はDssTP>ssTP>sTPの順である。そして、shRNAの検出感度もU35Dss>U35ss>U35sの順となった。また、この蛍光はshRNA量に比例して検出可能なことも確認できた(
図8Bのグラフ)。さらには、この蛍光性人工塩基の基質およびshRNAは、ポリアクリルアミドゲル上でも定量的に検出できた(
図9)。したがって、Dssとssの蛍光強度が濃度に依存して直線関係にあり、それぞれの蛍光強度からshRNAの定量、ならびにshRNAの同定や分解の過程を調べることが可能である。また、従来の蛍光性人工塩基sと比較して、Dss、ss共に感度が向上し、特に本実施例の条件ではDssの感度が著しく向上していることが明らかとなった。
【0173】
実施例16:細胞における蛍光性人工塩基を含むshRNAの蛍光観察
shRNAF1のA36をDssで置換したshRNAF1 A36DssをHeLa細胞に5nMまたは25nMでトランスフェクションして20時間インキュベートした後、培地をPBSに交換して蛍光顕微鏡(ニコン ECLIPSE−Ti 蛍光倒立顕微鏡、落射蛍光用フィルタブロックUV−1A filter)で観察した。
図10に、その結果を示す蛍光顕微鏡写真を示す。UV励起によって観察された蛍光は、明視野で観察した細胞と重なっており、トランスフェクションにより細胞内に導入されたshRNAに含まれるDssの蛍光が観測できた。本実験により、数十nM量のshRNAを用いたトランスフェクションで細胞内での蛍光を観察可能であることが明らかになった。
【0174】
以上実施例12ないし16の結果から、本発明の蛍光性人工塩基の転写による機能性RNAへの導入、それによる機能性RNAの活性保持、機能性RNAの蛍光標識が可能であることが明らかとなった。