特許第5756997号(P5756997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5756997-シフトレバー装置 図000002
  • 特許5756997-シフトレバー装置 図000003
  • 特許5756997-シフトレバー装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756997
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】シフトレバー装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   B60K20/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-241624(P2010-241624)
(22)【出願日】2010年10月28日
(65)【公開番号】特開2012-91710(P2012-91710A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】田代 雅也
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−037761(JP,U)
【文献】 実開昭58−081627(JP,U)
【文献】 実開平05−016446(JP,U)
【文献】 特開平09−039595(JP,A)
【文献】 特開2000−085395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニュアルトランスミッションのシフト操作を行うためのシフトレバーと、
前記シフトレバーに連結された動作機構部と、
車両のフロア面上に設置される設置部とを有し、
前記設置部が、
前記フロア面に沿うように設置されるベース部と、
前記ベース部から上方側に突出したリテーナ部とを有し、
前記動作機構部を含むシフトレバー装置が、前記フロア面上に載置され、
前記フロア面にはシフトケーブル及び/又はセレクトケーブル、及びハブが挿通可能な大きさの開口が形成され、前記ハブは、リテーナ部に固定されて前記シフトケーブル及び/又はセレクトケーブルを保持するものであり、
前記リテーナ部に設けられた孔、及び前記開口を介して前記動作機構部とマニュアルトランスミッションとを繋ぐ前記シフトケーブル及び/又はセレクトケーブルを、前記ベース部の上方側から下方側に向けて取り出し可能であることを特徴とするシフトレバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニュアルトランスミッションを採用した車両に用いられるシフトレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マニュアルトランスミッションを採用した車両においては、下記特許文献1〜3に開示されているようなシフトレバー装置が採用されている。特許文献1及び特許文献2に開示されているシフトレバー装置は、シフトレバーに接続された機構部分が収容された箱状体を車両のフロア面に形成された開口内に嵌め込むことにより設置されている。また、特許文献3に開示されているシフトレバー装置は、シフトレバーに接続された機構部分が取り付けられた板体をフロア面上に固定することにより設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−169518号公報
【特許文献2】特開2008−260368号公報
【特許文献3】特許第3206045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1及び特許文献2のシフトレバー装置のように、フロア面に形成された開口に機構部分を収容した箱状体を嵌め込む構成とした場合は、箱状体を嵌め込むために大きな開口をフロア面に設ける必要がある。また、特許文献1及び特許文献2に開示されているような構造を採用した場合は、箱状体のフランジをフロア面に取り付けねばならないため、その分だけ更に設置領域を大きく取らねばならないという問題がある。
【0005】
また、特許文献3のようにフロア面よりも上方にシフトレバー装置を設置する場合は、シフトレバーに接続された機構部分に接続されたケーブルをフロア面上に這わせる必要があり、他の室内配置部品のレイアウトに制約が加わるという問題がある。また、特許文献3のような構造を採用した場合は、機構部分に接続されたケーブルを車両の室外に取り出すための孔にグロメットあるいはリテーナ等の保持部材装着せねばならず、部品点数の増加、及び製造コストの上昇等の問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、設置領域及びフロア面に形成する開口面積が最小限で済み、部品点数及び製造コストを抑制可能なシフトレバー装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決すべく提供される本発明のシフトレバー装置は、マニュアルトランスミッションのシフト操作を行うためのシフトレバーと、前記シフトレバーに連結された動作機構部と、車両のフロア面上に設置される設置部とを有し、前記設置部が、前記フロア面に沿うように設置されるベース部と、前記ベース部から上方側に突出したリテーナ部とを有し、前記動作機構部を含むシフトレバー装置が、前記フロア面上に載置され、前記フロア面にはシフトケーブル及び/又はセレクトケーブル、及びハブが挿通可能な大きさの開口が形成され、前記ハブは、リテーナ部に固定されて前記シフトケーブル及び/又はセレクトケーブルを保持するものであり、前記リテーナ部に設けられた孔、及び前記開口を介して前記動作機構部とマニュアルトランスミッションとを繋ぐ前記シフトケーブル及び/又はセレクトケーブルを、前記ベース部の上方側から下方側に向けて取り出し可能であることを特徴としている。
【0008】
本発明のシフトレバー装置では、シフトケーブル及び/又はセレクトケーブルを取り出すためのリテーナ部がベース部から上方側に突出するように設けられているため、フロア面への設置に際してリテーナ部の下方のフロア面に、ケーブル、及びリテーナ部に固定されてケーブルを保持するハブが挿通可能な小さな開口を設けるだけで良く、上述した従来技術のもののように大きな開口を設ける必要がない。また、フロア面に大きな開口を設ける必要がないため、ケーブルを室外に取り出すための開口を設けることによるフロア面の強度低下を最小限に抑制できる。
【0009】
本発明のシフトレバー装置は、ケーブルを室外に取り出すための開口を小さくすることができるため、室外から室内への音等の侵入を最小限に抑制できる。また、本発明のシフトレバー装置は、設置状態においてリテーナ部がフロア面よりも上方に存在するため、走行時に跳ねた石がリテーナ部に衝突すること、泥がリテーナ部に付着すること等を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、設置領域及びフロア面に形成する開口面積を抑制し、部品点数の削減及びコストダウンを図りうるシフトレバー装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るシフトレバー装置を示す斜視図である、
図2図1に示すシフトレバー装置の設置状態を示す断面図である。
図3】変形例に係るシフトレバー装置の設置状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係るシフトレバー装置10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、従来公知のものと同様の構成の部分については詳細の説明は省略することがある。
【0013】
シフトレバー装置10は、いわゆるFF式(Front engine Front drive)の駆動方式を採用し、マニュアルトランスミッション12を採用した車両に搭載されるものである。シフトレバー装置10は、シフトレバー20と、動作機構部30と、設置部40とを有し、シフトケーブル50及びセレクトケーブル52が接続された構造とされている。シフトレバー20は、車両の室外に設けられたマニュアルトランスミッション12のシフト操作を行うためのものであり、レバー軸22の先端にノブ24を設けた構造とされている。
【0014】
動作機構部30は、従来公知のものと同様に、シフトレバー20及び設置部40の間を連結し、シフトレバー20の操作に連動して作動するように形成された機構である。動作機構部30は、シフトレバー20をシフト方向(前後方向)及びセレクト方向(左右方向)に所定のストローク幅の範囲内で作動させることが可能なように構成されている。動作機構部30には、シフトケーブル接続部32及びセレクトケーブル接続部34が設けられている。シフトケーブル接続部32には、シフトケーブル50が接続されており、セレクトケーブル接続部34にはセレクトケーブル52が接続されている。
【0015】
設置部40は、シフトレバー装置10において最も特徴的な構成を有する部分である、。設置部40は、金属製の部材であり、ベース部42とリテーナ部44とに大別される。ベース部42は、車両への取り付け状態において室内の底面をなすフロア面Fに沿うように設置される部分である。ベース部42は、略平板状であって、略矩形状の外観形状を有する。ベース部42は、フロア面F上に配置され、ボルト等の固定具を用いて固定される。
【0016】
リテーナ部44は、ベース部42の長手方向一端側において、ベース部42と一体的に形成されている。リテーナ部44は、ベース部42から上方側に突出している。リテーナ部44は、断面形状が略三角形状に屈曲した形状とされており、シフトレバー20側に向くように傾斜した傾斜面46を有する。傾斜面46は、シフトレバー20に対してマニュアルトランスミッション12側に隣接する位置に設けられている。
【0017】
傾斜面46には、シフトケーブル50及びセレクトケーブル52を挿通するための挿通孔46a,46bが設けられている。挿通孔46a,46bにシフトケーブル50及びセレクトケーブル52を挿通すると、シフトケーブル50及びセレクトケーブル52が傾斜面46と交差する。本実施形態では、傾斜面46に対してシフトケーブル50及びセレクトケーブル52が略垂直に貫通するように傾斜面46の傾斜が設定されている。
【0018】
リテーナ部44の裏側(車両への取り付け状態において下方側)には、ハウジング部48が形成されている。ハウジング部48には、シフトケーブル50及びセレクトケーブル52の中間に設けられたハブ54が収容されている。ハブ54は、傾斜面46の裏面46c側に固定されている。これにより、シフトケーブル50及びセレクトケーブル52において、シフトレバー20側の端部からハブ54に至る部分の長さが一定に維持されている。
【0019】
図2に示すように、シフトレバー装置10は、フロア面Fに設けられた開口OPに対して上方からリテーナ部44が被さるように配置し、ボルト等の固定具によってベース部42をフロア面Fに固定することにより設置される。これにより、開口OPを介してシフトケーブル50及びセレクトケーブル52が室外に取り出され、マニュアルトランスミッション12が設けられている方向(本実施形態では車両の前方側)に延びるように配索された状態となる。
【0020】
本実施形態のシフトレバー装置10では、シフトケーブル50及びセレクトケーブル52を取り出すために設けられたリテーナ部44が、ベース部42から上方側に突出するように設けられており、フロア面Fへの設置に際してリテーナ部44の下方に小さな開口を設けるだけで良い。具体的には、開口OPの開口領域は、シフトレバー装置10をフロア面F上に設置した状態において、リテーナ部44をフロア面F側に投影して形成される領域で良い。従って、シフトレバー装置10は、設置領域を大きく取る必要がなく、他の部品類をフロア面F上にレイアウトする際の自由度を確保することができる。
【0021】
本実施形態のシフトレバー装置10は、設置に際して開口OPを大きく取る必要がないため、開口OPを形成することによるフロア面Fの強度低下を最小限に抑制できる。また、シフトレバー装置10は、開口OPの開口領域が小さくて済むため、室外から室内に音等が侵入するのを最小限に抑制できる。
【0022】
また、本実施形態のシフトレバー装置10は、リテーナ部44が上方に突出した形状とされているため、設置状態においてリテーナ部44及びハウジング部48がフロア面Fよりも上方に存在する。そのため、リテーナ部44及びハウジング部48に収容されているハブ54に対して走行時に跳ねた石が衝突すること、泥がリテーナ部44及びハブ54に付着すること等を防止することができる。
【0023】
本実施形態のシフトレバー装置10では、ハブ54がリテーナ部44の傾斜面46に対して固定される。そのため、シフトケーブル50及びセレクトケーブル52においてハブ54からシフトレバー20側の端部に至る部分の長さを、容易かつ確実に一定に維持することができる。
【0024】
また、シフトレバー装置10では、ハブ54を傾斜面46に対して固定することによりシフトケーブル50及びセレクトケーブル52が保持された状態になるため、グロメット及びリテーナ等のケーブル保持用の部品を必要としない。従って、シフトレバー装置10は、部品点数が少なくて済み、製造コストを抑制することができる。また、シフトレバー装置10は、グロメット及びリテーナ等の保持具を必要としないため、その分だけ軽量化を図ることが可能である。
【0025】
シフトレバー装置10は、シフトケーブル50及びセレクトケーブル52を開口OPを介して室外に取り出してマニュアルトランスミッション12に接続することができる。そのため、シフトレバー装置10によれば、室内にシフトケーブル50及びセレクトケーブル52を配策するためのスペースを設ける必要がなく、室内に配置される部品に係るレイアウト上の制約を最小限に抑制することができる。
【0026】
本実施形態では、設置部40を金属製とした例を例示したが、本発明はこれに限定される訳ではなく、樹脂等の素材によって構成されていてもよい。また、設置部40は、ベース部42とリテーナ部44とが一体的に形成されたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、それぞれを別の部材として形成し、一体化する等してもよい。
【0027】
上述した設置部40のリテーナ部44は、断面形状が略三角形となるように形成されたものであったが、リテーナ部44の断面形状は他の形状であってもよい。具体的には、リテーナ部44の断面形状を略n角形(n=自然数)とする他、傾斜面46のみ有する形状等とすることも可能である。かかる構成とした場合についても、上述した傾斜面46に相当するものを設けることにより、上述したものと同様の作用、効果が得られる。
【0028】
本実施形態のシフトレバー装置10は、いわゆるFF式の駆動方式を採用した車両に搭載されるものであったが、FR式(Front engine Rear drive)の駆動方式を採用した車両に搭載する場合は、図3に示すように設置部40等を前後逆転した形状とすることにより同様の作用、効果が得られる。
【符号の説明】
【0029】
10 シフトレバー装置
12 マニュアルトランスミッション
20 シフトレバー
30 動作機構部
40 設置部
42 ベース部
44 リテーナ部
50 シフトケーブル
52 セレクトケーブル
54 ハブ
F フロア面
OP 開口
図1
図2
図3