【実施例】
【0058】
本発明を以下の実施例によって説明する。別途記載しない限り、全ての量は、食品の全重量基準による質量パーセント(質量%)である。
【0059】
レーザ回折による粒径の決定
ココア殻/ココア粉末粒子の寸法を体積分布に基づいた相当直径として測定した。例えば、40μmのD
90値は、90体積%の粒子が、体積分布に基づいて40μm以下の相当直径を有することを意味する。
【0060】
ココア殻/ココア粉末試料の体積分布は、Mie光散乱に基づいて操作するMalvern装置においてレーザビームを介してサンプルの分散物を循環させることによって生じたレーザ回折パターンを解析することによって作成された。
【0061】
回折パターンは、Fraunhofer理論を用いて解析され、仮想球形粒子を基準にした相当直径(D
90値)から粒径分布を作成することで、測定された。
【0062】
分散試料は、ココア殻/ココア粉末試料を反転および撹拌によって容器中で激しく最初に混合することによって調製した。次いで、サンプル約2gを少量のAkomed R(商標)と混合して滑らかなペーストを形成した。ペーストの一定量(160mg±20mg)を秤量して、きれいな丸底チューブ内に入れ、これに20mlのAkomed R(商標)を添加した。超音波プローブを2分間最大移動量で用いてサンプルを分散させた。
【0063】
スティーブンス値の決定
食品のスティーブンス値は、特定の温度での食品の堅さを示す。
【0064】
10℃での食品のスティーブンス値(St10値)は、2mm/秒の貫入速度で10mmの深さまで食品の試料内に投与された円錐(45°)プローブのピークの貫入力(グラム)をスティーブンスLFRAテクスチャアナライザを用いて測定することによって測定した。試料を200gの量でタブに収容した。試験の前に、試料を混合することなく10℃の温度で2日間貯蔵してサンプルを平均化した。
【0065】
報告された食品のスティーブンス値は、3つの食品試料について記録されたスティーブンス値の平均であり、試料のスティーブンス値の標準偏差は10%以下である。
【0066】
評価
パネル試験
Kraft Foods GTQ Munichの乳製品および製菓部門からの10人の官能試験の専門家により、パネル試験によって食品を評価した。食品を目隠しして味わい、風味、組織および外観を格付けした。結果は、各試験者によって与えられた格付けの平均である。
【0067】
参考例
基準ココア飲料は、20gの以下の下記ココア飲料製剤(KABA(商標)、Kraft Foods社製)を200mlの冷蔵ミルク(6〜10℃;1.5%脂肪)と混合することにより調製された。
【0068】
KABA(商標)組成:
氷砂糖 58.11%
デキストロース一水和物 21.63%
アルカリ化、レシチン化ココア粉末 19.21%
水凝縮物 0.70%
塩化ナトリウム 0.30%
風味料 0.05%
総脂質: 3.0%
総繊維: 5.6%
上記組成のココア粉末は、大豆レシチンを添加した減脂(11質量%脂肪)アルカリ化ココア粉末である。ココア粉末は、健康な、十分に発酵した西アフリカ産ココア豆(主にコートジボワール地域から)のニブから調製される。ココア粉末は20.07μmのD
90値を有し、ココア粉末の含水量はココア粉末の質量基準で2.5質量%である。
【0069】
[実施例1]−ココア飲料製剤
コートジボワール地域からのココア豆を115℃で焙炒し、豆の殻およびニブを従来の風選によって分離した。次いで、ジェットミル粉砕装置を用いて、焙炒された全ココア殻を15〜21℃の温度および6.9バールの圧力で粉砕した。殻は、75kg/時間の速度で装置内に供給され、装置内の圧縮空気の流量は27〜35m
3/分であった。粉砕されたココア殻粒子は24.50μmのD
90値および5.05のpHを有した。
【0070】
焙炒され、粉砕されたココア殻の8kgをBarthアルカリ化装置内に供給し、そして20分間、90℃の温度に加熱した。2800mlの水中、295gの水酸化ナトリウムの水溶液(乾燥脱脂ココア殻としてのココア殻の質量基準で4.05質量%のNaOH、およびココア殻の質量基準で35質量%の水)を5分間にわたってクッカー内に注入し、そして反応混合物を2.3バールの圧力下で134℃に加熱した。60分後、混合物を115℃で60分間、真空下で乾燥した。
【0071】
アルカリ化ココア殻は、32.00μmのD
90値を有した。アルカリ化殻のpHは6.53であった。アルカリ化殻の質量基準で、殻の含水量は3.90質量%であり、殻の脂肪含量は7.00質量%であった。
【0072】
上記KABA(商標)製剤中のアルカリ化レシチン化ココア粉末の30質量%を上記アルカリ化ココア殻で置き換えたことを別にして、KABA(商標)製剤に相当するココア飲料製剤を製造した。殻は、従来の混和機を用いてココア飲料製剤と混和された。得られたココア飲料製剤は以下の組成を有した:
氷砂糖 58.11%
デキストロース一水和物 21.63%
アルカリ化レシチン化ココア粉末 13.45%
アルカリ化粉砕ココア殻 5.76%
水凝縮物 0.70%
塩化ナトリウム 0.30%
風味料 0.05%
全脂肪: 2.81%
全繊維: 6.0%
プラスチックカップ中で20gの上記ココア飲料製剤を200mlの冷蔵ミルク(6〜10℃;1.5%脂肪)と混合し、ココア飲料を調製した。ココア飲料の外観および風味を参考例で調製した基準ココア飲料に対して評価した。結果を以下の表1にまとめる。
【0073】
[実施例2および3]
ココア飲料製剤中のアルカリ化ココア殻の量およびココア粉末の量を以下の表1に示すような量に変更したことを除いて、実施例1の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0074】
[実施例4]
2800mlの水中295gのセスキ炭酸アンモニウムの水溶液(乾燥脱脂ココア殻としてのココア殻の質量基準で4.05質量%のNH
2CO
2NH
4・NH
4HCO
3、およびココア殻の質量基準で35質量%の水)を用いてココア殻をアルカリ化したことを除いて、実施例1の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0075】
アルカリ化ココア殻は31.50μmのD
90値を有した。アルカリ化殻のpHは5.65であり、殻の含水量はアルカリ化殻の質量基準で4.00質量%であった。
【0076】
[実施例5および6]
ココア飲料製剤中のアルカリ化ココア殻の量およびココア粉末の量を以下の表1に示すように変更したことを除いて、実施例4の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0077】
[実施例7]
2800mlの水中960gのセスキ炭酸アンモニウムの水溶液(乾燥脱脂ココア殻としてのココア殻の質量基準で13.19質量%のNH
2CO
2NH
4・NH
4HCO
3、およびココア殻の質量基準で35質量%の水)を用いてココア殻をアルカリ化したことを除いて、実施例1の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0078】
アルカリ化ココア殻は27.30μmのD
90値を有した。アルカリ化殻のpHは5.77であった。アルカリ化殻の質量基準で、殻の含水量は4.80質量%であり、殻の脂肪分は8.60質量%であった。
【0079】
[実施例8および9]
ココア飲料製剤中のアルカリ化ココア殻の量およびココア粉末の量を以下の表1に示すように変更したことを除いて、実施例7の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0080】
[実施例10]
2800mlの水中960gのセスキ炭酸アンモニウムおよび295gの水酸化ナトリウムの水溶液(乾燥脱脂ココア殻としてのココア殻の質量基準で13.19質量%のNH
2CO
2NH
4・NH
4HCO
3、および4.05質量%のNaOH、ならびにココア殻の質量基準で35質量%の水)を用いてココア殻をアルカリ化したことを除いて、実施例1の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0081】
アルカリ化ココア殻は34.10μmのD
90値を有した。アルカリ化殻のpHは7.87であった。アルカリ化殻の質量基準で、殻の含水量は5.60質量%であり、殻の脂肪分は7.65質量%であった。
【0082】
[実施例11]
ココア飲料製剤中のアルカリ化ココア殻の量およびココア粉末の量を以下の表1に示すように変更したことを除いて、実施例10の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0083】
[実施例12]
2800mlの水中510gの炭酸カリウムの水溶液(乾燥脱脂ココア殻としてのココア殻の質量基準で7.0質量%のK
2CO
3、およびココア殻の質量基準で35質量%の水)を用いてココア殻をアルカリ化したことを除いて、実施例1の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0084】
アルカリ化ココア殻は32.80μmのD
90値を有した。アルカリ化殻のpHは6.74であった。アルカリ化殻の質量基準で、殻の含水量は7.30質量%であり、殻の脂肪分は7.65質量%であった。
【0085】
[実施例13]
ココア飲料製剤中のアルカリ化ココア殻の量およびココア粉末の量を以下の表1に示すように変更したことを除いて、実施例12の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0086】
(比較例1)
焙炒され、粉砕されたココア殻をアルカリ化しないことを除いて、実施例1の飲料と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0087】
(比較例2〜4)
ココア飲料製剤中の非アルカリ化ココア殻の量およびココア粉末の量を以下の表1に示すように変更したことを除いて、比較例1の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
表1の結果により、製剤中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計質量基準で少なくとも30質量%の量でアルカリ化ココア殻を含む製剤から調製されたココア飲料は、許容されるチョコレート風味を有する一方で、非アルカリ化ココア殻に関連する穀物様の香りを回避することを示す。アルカリ化ココア殻は他の独特の風味も提供する。同時に、アルカリ化ココア殻はココア粉末と比較して栄養的利益(より高い繊維含量およびより低い脂肪含量)および経済的利益(加工費用の低減および殻の低減された廃棄)を提供する。
【0091】
[実施例14]−クリームチーズスプレッド
以下に示す組成を有する低脂肪クリームチーズスプレッドは、実施例12で調製されたアルカリ化ココア殻をクリームチーズスプレッドベースと他の列挙成分と混和することによって調製された。クリームチーズスプレッドベースはココア殻以外の成分と一緒にThermomix(商標)ミキサ(グレード2〜3、800rpm)中で混合し、7〜8分間、50℃の温度に加熱した。次いでココア殻を混合物に添加し、温度を60℃に上げた。混合は、初めに800rpmの混合速度で2分間、続いて82℃で3分間行われ、食品を低温殺菌した。混合された食品を65℃の温度でプラスチックカップ内に200g分割で充填し、そして4℃で貯蔵した。
クリームチーズスプレッドの組成:
Philadelphia Light FWPC(商標)クリームチーズスプレッド
(Kraft Foods社製)(12%脂肪) 50.7%
クリーム(30%脂肪) 17.9%
スクロース 15.3%
アルカリ化粉砕ココア殻
(7.65%脂肪;60%繊維) 12.6%
バター(82.5%脂肪) 3.5%
スプレッドは、オレオクッキーを思い出させる独特のチョコレートおよびアルカリ−ココア風味を有し、また、スプレッドは穀物の香りを生成しなかった。スプレッドは、黒色、滑らかなテクスチャ、光沢のある外観、および中身(filling)として特に適切にする良好な展延性も有した。4℃で44日間冷蔵した後のスプレッドのSt10値は60gであることが見出された。スプレッドは6.28のpHを有した。
【0092】
(比較例5)
ココア殻をアルカリ化しないことを除いて、以下に示す組成を有する低脂肪のクリームチーズスプレッドを実施例14の記載と同様の方法で調製した。非アルカリ化ココア殻は、24.50μmのD
90値を有した。
Philadelphia Light FWPC(商標)クリームチーズスプレッド
(Kraft Foods社製)(12%脂肪) 50.7%
クリーム(30%脂肪) 17.9%
スクロース 15.3%
非アルカリ化粉砕ココア殻
(6%脂肪;60%繊維) 12.6%
バター(82.5%脂肪) 3.5%
スプレッドは良好なチョコレート風味を有したが、穀物様の後味を示した。4℃で44日間冷蔵した後のスプレッドのSt10値は95gであることが見出された;すなわち、スプレッドの粘度は、実施例14で調製されたスプレッドの粘度よりも高かった。スプレッドは5.04のpHを有した。
【0093】
実施例14および比較例5から、アルカリ化ココア殻の使用が繊維による穀物味を回避し、そしてクリームチーズスプレッドに独特のチョコレート風味および組織を与えることが結論づけられる。比較例5のスプレッドと比較した実施例14のスプレッドのpHの増加は、スプレッドの粘度の増加があまり著しくないことに関与していると考えられる。
【0094】
[実施例15]−飲用ヨーグルト
9質量%のココア殻を含みココア粉末を含まないチョコレート風味付けされた飲用ヨーグルトは、Thermomix(商標)ミキサにおいて、実施例10で調製されたアルカリ化ココア殻50gを天然液体ヨーグルトドリンク(1%脂肪)500mlに混ぜ込むことによって調製した。混合は、最初に、3rpmの混合速度で、74.4℃の温度に混合物を加熱しながら、6分間にわたって実施された。さらなる混合を2rpmおよび70℃で5分間実施した。続いて混合物をカップ内に200g分割で加熱充填し、4℃で貯蔵した。
【0095】
ヨーグルトは、良好なダークチョコレート様の風味を有することが見出され、また、ヨーグルトの酸味はヨーグルトベースと比較して減少した(ヨーグルトのpHは5.81であったが、ヨーグルトベースのpHは4.09であった)。ヨーグルトの色は暗褐色(ダークチョコレート様)であった。
【0096】
ヨーグルトベースの粘度は、アルカリ化ココア殻の添加によって実質的に変化しなかった。したがって、ヨーグルトは、滑らかな組織を有しつつ、容易に飲用できる状態であった。このことは、
図3(100%ヨーグルト)を
図4(91%ヨーグルト、9%アルカリ化ココア殻)と比較することによって示される。
【0097】
(比較例6)
ココア殻をアルカリ化しなかったことを除いて、実施例15での記載と同様の方法でチョコレート風味付けされた飲用ヨーグルトを調製した。
【0098】
ヨーグルトは良好なチョコレート風味を有することが見出された。しかし、ヨーグルトは穀物の後味を有した。ヨーグルトの色は淡褐色(ミルクチョコレート様)であった。
【0099】
ヨーグルトの粘度は非アルカリ化ココア殻の添加によって明白に増加し、ヨーグルトが滑らかな組織を有するようになったが、容易にスプーンですくうことができ、ドリンクとしては適切でなかった。このことは、
図3(100%ヨーグルト)および
図4(91%ヨーグルト、9%アルカリ化ココア殻)を
図5(91%ヨーグルト、9%非アルカリ化ココア殻)と比較することによって示される。
【0100】
実施例15および比較例6から、ココア粉末が存在しない場合であっても、アルカリ化ココア殻が、非アルカリ化殻と比較して、ヨーグルトのpHを増加させ且つヨーグルトに独特の改善されたチョコレート風味を与えるのに有用であることが結論づけられる。アルカリ化殻は、ヨーグルトの粘度がアルカリ化殻の添加によって著しく増加しないため、非アルカリ化ココア殻と比較して、ヨーグルトがドリンクとして機能する能力を維持するためにも有利である。