【実施例】
【0025】
ヘイズ、指紋視認性(反射、透過)、画像視認性、擦傷性および鉛筆硬度は、下記に示す方法によって測定した。
【0026】
(1)ヘイズ
ヘイズメーター(「NDH2000」、日本電色工業株式会社製)によりヘイズを測定した。
(2)指紋視認性(反射)
ディスプレイ用フィルムをガラスに張り合わせ、ガラスの裏面には、黒いフィルムを張り合わせたものを評価用サンプルとする。ディスプレイ用フィルム上に指紋を付着させる。指紋の観察は、太陽光の入らない室内で行う。評価用サンプルに光を反射させた状態で(蛍光灯の光を映りこませない)、指紋の視認性を観察する。指紋の視認性について下記4段階にて目視による官能評価を行った。
◎:指紋が全く見えない、○:指紋がほとんど見えない、△:指紋が僅かに見える、×:指紋がはっきり見える。
(3)指紋視認性(透過)
ディスプレイ用フィルムをガラスに張り合わせたものを評価用サンプルとし、ディスプレイ用フィルム上に指紋を付着させる。指紋の観察は、太陽光の入らない室内で行う。評価用サンプルを蛍光灯の光に向け、蛍光灯の光から少しずらした状態で、指紋の視認性を観察する、その視認性について下記4段階にて目視による官能評価を行った。
◎:指紋が全く見えない、○:指紋がほとんど見えない、△:指紋が僅かに見える、×:指紋がはっきり見える。
(4)画像視認性
ディスプレイ用フィルムを高精細ディスプレイの表示画面上に装着し、ディスプレイ画像の視認性について下記の3段階にて目視による評価を行った。
○:鮮明で良好な視認性が得られる、△:やや視認性にかける、×:視認性に欠ける。
(5)耐擦傷性
#0000のスチールウールを使用し、250g荷重×10往復後の塗膜表面を目視で観察し、その耐擦傷性について下記5段階にて官能評価を行った。
A:傷無、A’:傷1〜10本、B:傷11〜20本、C:傷21〜30本、D:傷31本以上
(6)鉛筆硬度
安田精機製作所(株)製の鉛筆引っかき硬度試験機を使用し、JIS K 5600の規定に基づいて鉛筆硬度を測定した。
【0027】
(実施例1)
ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(R=C
4H
8、n=9) 30質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 70質量部
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 7.5質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK) 100質量部
【0028】
上記原料を混合してコーティング剤とした。このコーティング剤をロールコーターにて、厚さ100μm、140mm×200mmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)上に、乾燥膜厚が4μmとなるように塗布し、80℃で60秒乾燥した。その後、120W高圧水銀灯[日本電池(株)製]により窒素気流下紫外線を照射(積算光量500mJ/cm
3)することによって硬化させディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.1、耐擦傷性はA、鉛筆硬度は2Hであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は○、画像視認性は○であった。
【0029】
(実施例2)
ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(R=C
4H
8、n=3) 40質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 60質量部
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 7.5質量部
MIBK 100質量部
【0030】
上記原料を混合してコーティング剤とした。このコーティング剤を実施例1に従って硬化させ、ディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.1、耐擦傷性はA、鉛筆硬度は2Hであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は○、画像視認性は○であった。
【0031】
(実施例3)
ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(R=C
4H
8、n=9) 30質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 70質量部
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 7.5質量部
MIBK 100質量部
【0032】
上記原料を混合してコーティング剤とした。このコーティング剤をロールコーターにて、厚さ100μm、140mm×200mmのPETフィルム上に、乾燥膜厚が8μmとなるように塗布し、80℃で60秒乾燥した。その後、120W高圧水銀灯[日本電池(株)製]により窒素気流下紫外線を照射(積算光量500mJ/cm
3)することによって硬化させディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.1、耐擦傷性はA、鉛筆硬度は3Hであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は○、画像視認性は○であった。
【0033】
(実施例4)
ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(R=C
4H
8、n=3) 40質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 60質量部
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 7.5質量部
MIBK 100質量部
【0034】
上記原料を混合してコーティング剤とした。このコーティング剤を実施例3に従って硬化させディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.1、耐擦傷性はA、鉛筆硬度は3Hであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は○、画像視認性は○であった。
【0035】
(実施例5)
上記実施例1のポリテトラメチレングリコールジアクリレート(R=C
4H
8、n=9)をポリプロピレングリコールジアクリレート(R=C
3H
6、n=9)に変更した以外は、実施例1に従って、ディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.1、耐擦傷性はA、鉛筆硬度は2Hであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は○、画像視認性は○であった。
【0036】
(実施例6)
上記実施例2のポリテトラメチレングリコールジアクリレート(R=C
4H
8、n=3)をポリプロピレングリコールジアクリレート(R=C
3H
6、n=3)に変更した以外は、実施例1に従ってディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.2、耐擦傷性はA、鉛筆硬度は2Hであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は○、画像視認性は○であった。
【0037】
(実施例7)
上記実施例3のポリテトラメチレングリコールジアクリレート(R=C
4H
8、n=9)をポリプロピレングリコールジアクリレート(R=C
3H
6、n=9)に変更した以外は、実施例3に従ってディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.2、耐擦傷性はA、鉛筆硬度は3Hであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は○、画像視認性は○であった。
【0038】
(実施例8)
上記実施例4のポリテトラメチレングリコールジアクリレート(R=C
4H
8、n=3)をポリプロピレングリコールジアクリレート(R=C
3H
6、n=3)に変更した以外は、実施例4に従ってディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.1、耐擦傷性はA、鉛筆硬度は3Hであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は○、画像視認性は○であった。
【0039】
(実施例9)
上記実施例1のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを上記化学式(2)で示されるペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンイソシアネートの付加体に変更した以外は、実施例1に従って、ディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.3、耐擦傷性はB、鉛筆硬度は2Hであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は○、画像視認性は○であった。
【0040】
(比較例1-1)
ポリプロピレングリコールジアクリレート(R=C
3H
6、n=3) 100質量部
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 7.5質量部
MIBK 100質量部
【0041】
上記原料を混合してコーティング剤とした。このコーティング剤をロールコーターにて、厚さ100μm、140mm×200mmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)上に、乾燥膜厚が4μmとなるように塗布し、80℃で60秒乾燥した。その後、120W高圧水銀灯[日本電池(株)製]により窒素気流下紫外線を照射(積算光量500mJ/cm
3)することによって硬化させディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.1、耐擦傷性はC、鉛筆硬度はBであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は○、画像視認性は○であった。
【0042】
(比較例1-2)
上記比較例1-1のポリプロピレングリコールジアクリレート(R=C
3H
6、n=3)をポリプロピレングリコールジアクリレート(R=C
3H
6、n=9)に変更した以外は、比較例1-1に従ってディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.2、耐擦傷性はE、鉛筆硬度はBであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は○、画像視認性は○であった。
【0043】
(比較例1-3)
上記比較例1-1のポリプロピレングリコールジアクリレート(R=C
3H
6、n=3)をポリテトラメチレングリコールジアクリレート(R=C
4H
8、n=3)に変更した以外は、比較例1-1に従ってディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.1、耐擦傷性はC、鉛筆硬度はBであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は○、画像視認性は○であった。
【0044】
(比較例1-4)
上記比較例1-1のポリプロピレングリコールジアクリレート(R=C
3H
6、n=3)をポリテトラメチレングリコールジアクリレート(R=C
4H
8、n=9)に変更した以外は、比較例1-1に従ってディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.1、耐擦傷性はE、鉛筆硬度はBであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は○、画像視認性は○であった。
【0045】
(比較例1-5)
上記比較例1-1のポリプロピレングリコールジアクリレート(R=C
3H
6、n=3)をポリエチレングリコールジアクリレート(R=C
2H
2、n=3)に変更した以外は、比較例1-1に従ってディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.2、耐擦傷性はC、鉛筆硬度はBであった。指紋視認性(反射)は△、指紋視認性(透過)は×、画像視認性は○であった。
【0046】
(比較例1-6)
上記比較例1-1のポリプロピレングリコールジアクリレート(R=C
3H
6、n=3)を1,4-ブタンジオールジアクリレートに変更した以外は、比較例1-1に従ってディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.3、耐擦傷性はC、鉛筆硬度はBであった。指紋視認性(反射)は△、指紋視認性(透過)は×、画像視認性は○であった。
【0047】
(比較例1-7)
上記比較例1-1のポリプロピレングリコールジアクリレート(R=C
3H
6、n=3)をジメチロール-トリシクロデカンジアクリレートに変更した以外は、比較例1-1に従ってディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.3、耐擦傷性はC、鉛筆硬度はBであった。指紋視認性(反射)は△、指紋視認性(透過)は×、画像視認性は○であった。
【0048】
(比較例2)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 80質量部
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 2質量部
ポリシクロヘキシルメタアクリレート(PCHMA) 20質量部
架橋アクリルビーズ(綜研化学(株)製、MX-500、平均粒径5.0μ) 35質量部
MIBK 100質量部
【0049】
上記原料を混合してコーティング剤とした。このコーティング剤をロールコーターにて、厚さ100μm、140mm×200mmのPETフィルム上に、乾燥膜厚が4μmとなるように塗布し、80℃で60秒乾燥した。その後、120W高圧水銀灯[日本電池(株)製]により窒素気流下紫外線を照射(積算光量500mJ/cm
3)することによって硬化させディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは25、耐擦傷性はA、鉛筆硬度は2Hであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は△、画像視認性は×であった。
【0050】
(比較例3-1)
実施例1のポリテトラメチレングリコールジアクリレート(R=C
4H
8、n=9)を80質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを20質量部へ変更する以外は、実施例1に従ってディスプレイ用フィルムを作製した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.2、耐擦傷性はB、鉛筆硬度はHであった。指紋視認性(反射)は○、指紋視認性(透過)は○、画像視認性は○であった。
【0051】
(比較例3-2)
実施例1のポリテトラメチレングリコールジアクリレート(R=C
4H
8、n=9)を5質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを95質量部へ変更する以外は、実施例1に従ってディスプレイ用フィルムを形成した。該ディスプレイ用フィルムのヘイズは0.1、耐擦傷性はA、鉛筆硬度3Hであった。指紋視認性(反射)は×、指紋視認性(透過)は×、画像視認性は○であった。
【0052】
上記各実施例及び比較例の組成及び各評価結果を、表1〜表3にまとめて示す。
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
表1に記載の実施例1〜9では、被膜層に付着した指紋が見え難く、ディスプレイ上に設置した際の文字や線等の画像視認性が良好であった。その一方、表2に記載の比較例1−5〜1−7では指紋が視認された。これにより、平滑な被膜表面において付着した指紋を目立ち難くするジアクリレートは、上記化学式(1)で表されるポリアルキレングリコールジアクリレートのみであることがわかった。また、表2に記載の比較例1−1〜1−4では、実施例1〜9と同じポリアルキレングリコールジアクリレートを使用していることで指紋視認性は良好であったが、鉛筆硬度や耐擦傷性等の物理物性が悪かった。これにより、被膜層の物理物性を確保するには、3官能以上のアクリレート化合物を配合する必要があることがわかった。
【0056】
表3に記載の比較例2ではヘイズ値が大きく、ディスプレイ上に設置した際に、文字や線等の画像視認性が悪くなる結果を招いた。これにより、従来技術のように被膜層に透光性微粒子を含めると、画像視認性が悪くなることが確認された。
【0057】
また、比較例3−1では物理物性(擦傷性、鉛筆硬度)が劣り、比較例3−2では、被膜層に付着した指紋がはっきり見えるという結果を招いた。これにより、(A)ポリアルキレングリコールジアクリレートと、(B)3官能以上のアクリレート化合物との配合比は、(A)の質量部:(B)の質量部を少なくとも20:80〜50:50(但し、(A)の質量部+(B)の質量部=100)とすべきことを導き出せた。