【実施例1】
【0017】
[実施例1の電動ポンプの構造]
図1に本発明の実施例1における電動ポンプ10の軸方向断面図を、
図2に電動ポンプ10の
図1のA−A位置における断面図を示す。なお、
図1に示した断面は、
図2のB−Bで示した線に沿った軸方向断面を示している。
電動ポンプ10は、直径70mm、厚さが20mmの円盤形状とされている。そして、
図1、
図2に示すとおり、ハウジング60(第2ハウジングに相当)およびハウジング62(第1ハウジングに相当)と、コイル部22を有するステータ部20と、アウタロータ部30と、インナロータ40と、支持シャフト部50とを備えている。
図1のJAは支持シャフト部50の中心軸を示しており、JBは電動ポンプ10の中心軸を示している。
ステータ部20は、ティース部にコイルを巻いてコイル部22を形成した環状コア21をインモールド成形して形成されている。すなわち、ステータ部20の表面は樹脂23で被覆され、コイル部22の周囲には樹脂23が充填されている。
アウタロータ部30は、ハウジング60およびハウジング62の内部でコイル部22の磁界に基づいて回転駆動される構成とされている。そして、インナロータ40は、アウタロータ部30の中心軸JBに対して偏心した中心軸JAを有する支持シャフト部50によって回転可能に支持されており、アウタロータ部30の内周面とインナロータ40の外周面が係合する構成とされている。
【0018】
ハウジング60およびハウジング62は、中央に支持シャフト部50を圧入する孔が形成された略円板状のアルミ製の部材であり、一方の側は電動ポンプ10の外形面を構成する平坦面とされ、他方の側には、アウタロータ部30およびインナロータ40を挟むための凸部が形成されている。そして、ハウジング60には、アウタロータ部30とインナロータ40の境となる径方向位置に流体(例えばオイル)の排出口64が形成されており、ハウジング62には、アウタロータ部30とインナロータ40の境となる径方向位置に流体の吸入口66が形成されている。なお、
図1では同一断面上に排出口64と吸入口66を記載しているが、実際には排出口64と吸入口66の位相はずれている。
【0019】
アウタロータ部30は、内周面がインナロータ40と係合するアウタギア34と、コイル部22の磁界に基づいて回転駆動されるプラスチックマグネット32と、バックヨーク36から構成されている。プラスチックマグネット32は磁石粉末にプラスチックを混合して成形した略円筒状の永久磁石である。そして、プラスチックマグネット32のハウジング60側の端が内径側に延設されて、鍔35が形成されている。そして、プラスチックマグネット32の内径側にハウジング60側の端が径方向内方に延設されて鍔37が形成された略円筒状のバックヨーク36が貼付けられて、プラスチックマグネット32とバックヨーク36とが一体化されている。
そして、
図2に示すように、アウタギア34の外周に2箇所切り欠きが設けられており、プラスチックマグネット32の鍔35の内周面とバックヨーク36の鍔37の内周面の2箇所に軸方向の溝が設けられている。そして、この切り欠きと溝の間に回り止め用のボール52が埋められて、プラスチックマグネット32及びバックヨーク36の回転がアウタギア34に伝えられる構成とされている。
【0020】
そして、
図1にE1で示した部分では、ハウジング60およびハウジング62とステータ部20がインロー嵌合されており、
図1にE2で示した部分では、ハウジング62とアウタギア34がインロー嵌合されている。そして、
図1にFで示した部分では、ハウジング60およびハウジング62が支持シャフト部50に圧入嵌合されている。そして、アウタロータ部30はハウジング60およびハウジング62により軸方向両側から挟持された状態とされており、アウタロータ部30は回転可能な状態とされている。すなわち、アウタロータ部30の軸方向一端面は、それに対向するハウジング60の軸方向端面に案内され、アウタロータ部30の軸方向他端面は、それに対向するハウジング62の軸方向端面に案内される。
【0021】
ステータ部20はハウジング60およびハウジング62とで軸方向両側から挟持されて固定されている。また、インナロータ40はハウジング60およびハウジング62によって軸方向に挟持された状態とされており、インナロータ40はアウタロータ部30の回転に従動して回転可能な状態とされている。すなわち、インナロータ40の軸方向一端面は、それに対向するハウジング60の軸方向端面に案内され、インナロータ40の軸方向他端面は、それに対向するハウジング62の軸方向端面に案内される。
アウタロータ部30の軸方向一端面とそれに対向するハウジング60の軸方向端面との間、およびアウタロータ部30の軸方向他端面とそれに対向するハウジング62の軸方向端面との間には、流体(例えば、オイル)が介入可能な程度に微小な軸方向隙間を設けてある。また、インナロータ40の軸方向一端面とそれに対向するハウジング60の軸方向端面との間、およびインナロータ40の軸方向他端面とそれに対向するハウジング62の軸方向端面との間にも、流体が介入可能な程度に微小な軸方向隙間を設けている。
【0022】
[実施例1の電動ポンプの組立方法]
電動ポンプ10の組立は次の手順で行われる。まず、支持シャフト部50の所定の軸方向位置にインナロータ40を挿通する。次に、アウタロータ部30およびステータ部20を支持シャフト部50に挿通する。そして、支持シャフト部50の軸方向両端から、ハウジング60およびハウジング62で、インナロータ40、アウタロータ部30およびステータ部20を挟み込むようにして、ハウジング60およびハウジング62を支持シャフト部50に圧入する。この時、ハウジング60およびハウジング62の裏面の凸部により、インナロータ40の軸方向の位置決め、および、アウタロータ部30の軸方向および径方向の位置決めが行われる。そして、ステータ部20の軸方向および径方向の位置はハウジング60およびハウジング62とステータ部20のインロー嵌合により決定される。
そして、ハウジング60およびハウジング62の平坦面と支持シャフト部50の軸方向端面が面一になったところで、ハウジング60およびハウジング62の支持シャフト部50への圧入を終了する。このとき、ステータ部20の軸方向の表面もハウジング60およびハウジング62の平坦面と面一となる。
なお、ハウジング62を先に支持シャフト部50に圧入して、ハウジング62にステータ部20をインロー嵌合させてから、支持シャフト部50にアウタロータ部30を挿通し、ハウジング60を支持シャフト部50に圧入しても良い。
【0023】
[効果]
実施例1によれば、支持シャフト部50の軸方向両端から、ハウジング60およびハウジング62で、インナロータ40、アウタロータ部30およびステータ部20を挟み込むようにして、ハウジング60およびハウジング62を支持シャフト部50に圧入することにより、電動ポンプ10を組み立てることができる。そして、一対のハウジング60およびハウジング62とステータ部20をインロー嵌合により挟持固定するので、ハウジングの組み付けが高精度かつ簡便となる。
よって、ハウジング60およびハウジング62には組付けのためのフランジが不要であり、電動ポンプ10を径方向に小型化することができ、電動ポンプ10の取付面を省スペース化することができる。そして、組み付けのためのボルトが不要であるので、部品点数を削減することができる。また、ハウジング60およびハウジング62の支持シャフト部50への圧入のみで電動ポンプ10の組付けができるので、組付けが簡単である。
よって、組付けのためのフランジを不要とし、径方向の小型化及び取付面の省スペース化を図るとともに、組み付けのためのボルトを不要とし、部品点数の削減及び組付けの簡易化を図った電動ポンプを提供することができる。
そして、支持シャフト部50の貫通孔にボルトを通すことで、電動ポンプを相手部材に簡易に固定することができる。
そして、アウタギア34の外周に設けた切り欠きとプラスチックマグネット32の鍔35およびバックヨーク36の鍔37の内周面に設けた溝との間にボール52を埋め込むことにより、バックヨーク36からアウタギア34への動力伝達を可能とすることで、動力伝達部の加工を簡易にすることができる。
【実施例2】
【0024】
[実施例2の電動ポンプの構造]
図3に本発明の実施例2における電動ポンプ10aの軸方向断面図を、
図4に
図3のC−C位置における断面図を示す。なお、
図3に示した断面は、
図4のD−Dで示した線に沿った軸方向断面を示している。
実施例2の電動ポンプ10aと、実施例1の電動ポンプ10では、アウタロータ部の構成に違いがある。実施例2のアウタロータ部30aは、内周面がインナロータ40の外周面と係合するアウタギア34と、コイル部22の磁界に基づいて回転駆動される円筒状の永久磁石33との間にバックヨーク36aを設けた構成とされている。そして、永久磁石33の外径面には飛散防止カバー38が取付けられている。そして、アウタロータ部30aの軸方向一端面とそれに対向するハウジング60の軸方向端面との間、およびアウタロータ部30aの軸方向他端面とそれに対向するハウジング62の軸方向端面との間には、流体が介入可能で且つ流体に含まれる異物の侵入を抑制する大きさに設定された軸方向隙間が設けられている。電動ポンプ10aの他の構成は電動ポンプ10と同様であるので、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
そして、電動ポンプ10aは、実施例1の電動ポンプ10と同様の手順で組み立てることができる。
【0025】
[効果]
実施例2によれば、アウタロータ部30aとハウジング60およびハウジング62との軸方向の隙間が、アウタギア34側から永久磁石33側への異物の侵入を抑制することができる大きさに設計されている。よって、アウタギア34側から永久磁石33側への異物の侵入を効果的に抑制することができる。
【0026】
[変形例]
上述の各実施例では、支持シャフト部を中空としたが、支持シャフト部は中実でも良い。また、支持シャフト部をハウジングの表面まで貫通させず、支持シャフト部を一対のハウジングの内側に設けた凹部に圧入する構成として、支持シャフト部をハウジングの内側に収容しても良い。
そして、上述の各実施例では一対のハウジングとステータ部は別体としているが、ハウジングの一方をステータ部と一体とし、ステータ部と一体としたハウジングと単独のハウジングを支持シャフト部の両端から圧入して電動ポンプを組付ける構成としても良い。
また、ハウジングとステータ部のインロー嵌合部に回り止めを設けても良く、ステータ部に電動ポンプを取付ける相手側への取付けを目的としたフランジを設けても良い。
そして、アウタロータ部の永久磁石の形状は、実施例1のような内周に鍔を有する形状であっても、実施例2のような円筒形状であってもよい。また、アウタロータ部は永久磁石をアウタギアの外周に直接配置してバックヨークを設けない構成としても良い。
その他、本発明に係る電動ポンプはその発明の思想の範囲で、各種の形態で実施できるものである。
【実施例3】
【0027】
[実施例3の電動ポンプの構造(
図6、
図7)]
次に
図6、
図7を用いて、電動ポンプ10a(10)の効率を更に高める構造について説明する。なお、
図6及び
図7では、
図3及び
図4に示した実施例2の電動ポンプ10aの例にて説明するが、
図1及び
図2に示した実施例1の電動ポンプ10の場合も同様であるので実施例1に対する構造については説明を省略する。
図6及び
図7に示す構造の例では、インナロータ40の外周面のギア部に係合するギア部を内周面に有する略円筒状のアウタギア34(以降、アウタギア部と記載する)と、アウタギア部の外周側に同軸上に配置されてステータ部20の内周面に対向する永久磁石33(以降、ロータ部と記載する)と、をバックヨーク36a(以降、連結アーム部と記載する)にて径方向に連結している。
【0028】
なお、本実施の形態における「連結アーム部」とは、
図6及び
図7に示すバックヨーク36aの形状に限定されるものではなく、
図6(A)における符号α1の位置(または
図7(A)における符号α2の位置)において、少なくとも、ハウジング62の凸部の端面とハウジング60の凸部の端面とで挟まれている円筒状の空間(アーム用空間に相当)における、バックヨーク部36aの部分を指す。
そして
図6(A)の符号α1、及び
図7(A)の符号α2にて示す位置において、連結アーム部とハウジング62(以降、第1ハウジングと記載する)との隙間、及び連結アーム部とハウジング60(以降、第2ハウジングと記載する)との隙間において、モータの効率をより向上させるために、流体抵抗を低減する工夫を施している。
流体抵抗を低減させるためには、この隙間をより広く設定すれば良い。しかし、この連結アーム部を境界として、連結アーム部の内径側(アウタギア部の側)には、電動ポンプ10aにて圧送する流体が充填されており、前記隙間をより広く設定すると、圧送するべき流体が、この隙間から連結アーム部の外径側(ロータ部の側)へ漏れる量が増加して効率が低下する。漏れ量を低減するためにシール部材を使用すると、回転抵抗が増大して効率が低下する。
そこで、以下に説明する構造とすることで、前記隙間における流体抵抗を低減させるとともに、漏れ量をより少なくして、電動ポンプ10a(10)の効率を更に向上させる。
なお、
図6は、溝(M1a、M1b、M2a、M2b)を連結アーム部に形成した例を示しており、
図7は、溝(M1c、M1d、M2c、M2d)を第1ハウジング、第2ハウジングに形成した例を示している。
【0029】
図6(B)は、
図6(A)における符号α1の位置の拡大図である。また
図6(C)は
図6(B)におけるE方向から見た図である。同様に、
図7(B)は
図7(A)における符号α2の位置の拡大図であり、
図7(C)は
図7(B)におけるG方向から見た図である。
なお、
図6(B)及び
図7(B)において、連結アーム部(36a)と第1ハウジング(62)との隙間の距離である隙間幅ΔL1、及び連結アーム部(36a)と第2ハウジング(60)との隙間の距離である隙間幅ΔL2は、わかり易くするために実際よりも広く記載しているが、実際には数十μm程度の間隔である。
【0030】
図6(B)及び(C)に示す例では、連結アーム部(36a)と第2ハウジング(60)とが対向している面における連結アーム部の面である連結アーム第2対向面36bMの内周の側にはアーム部内周溝M2bが形成されており、連結アーム第2対向面36bMの外周の側にはアーム部外周溝M2aが形成されている。
また、連結アーム部(36a)と第1ハウジング(62)とが対向している面における連結アーム部の面である連結アーム第1対向面36aMの内周の側にはアーム部内周溝M1bが形成されており、連結アーム第1対向面36aMの外周の側にはアーム部外周溝M1aが形成されている。
【0031】
また
図7(B)及び(C)に示す例では、連結アーム部(36a)と第1ハウジング(62)とが対向している面における第1ハウジングの面である第1ハウジング対向面62Mの内周の側にはハウジング内周溝M1dが形成されており、第1ハウジング対向面62Mの外周の側にはハウジング外周溝M1cが形成されている。
また、連結アーム部(36a)と第2ハウジング(60)とが対向している面における第2ハウジングの面である第2ハウジング対向面60Mの内周の側にはハウジング内周溝M2dが形成されており、第2ハウジング対向面60Mの外周の側にはハウジング外周溝M2cが形成されている。
なお、連結アーム第1対向面36aM、連結アーム第2対向面36bM、第1ハウジング対向面62M、第2ハウジング対向面60M、の中の少なくとも1つの対向面に溝が形成されていれば良い。
【0032】
そして
図6(C)に示すように、アーム部内周溝M2bのそれぞれは、連結アーム第2対向面36bMにおける内径方向縁部36a1に達しない位置に形成されている。また、アーム部内周溝M2bのそれぞれは、アウタロータ部の回転方向に対して、徐々に内径方向に向かうように形成されており、直線状であっても良いし、湾曲していても良い。
これにより、アーム部内周溝M2bに入った潤滑油等の流体は、アウタロータ部の回転に伴ってアーム部内周溝M2bに沿って移動(この場合、回転方向と逆の方向に移動)するが、移動先の溝端部M2bEで行き止まり状態となって圧力(動圧)が増加し、内径の側から隙間(ΔL2の隙間)に浸入しようとする流体の浸入を抑制する。従って、流体の漏れ量をより少なくすることができる。また、アーム部内周溝M2bの個所では溝の深さの分、連結アーム部と第2ハウジングとの距離が大きくなって流体抵抗を低減させている。
また
図6(C)に示すように、アーム部外周溝M2aのそれぞれは、連結アーム第2対向面36bMにおける外径方向縁部36a2に達しない位置に形成されている。また、アーム部外周溝M2aのそれぞれは、アウタロータ部の回転方向に対して、徐々に外径方向に向かうように形成されており、直線状であっても良いし、湾曲していても良い。
これにより、アーム部外周溝M2aに入った潤滑油等の流体は、アウタロータ部の回転に伴ってアーム部外周溝M2aに沿って移動(この場合、回転方向と逆の方向に移動)するが、移動先の溝端部M2aEで行き止まり状態となって圧力(動圧)が増加し、外径の側から隙間(ΔL2の隙間)に浸入しようとする流体の浸入を抑制する。従って、流体の漏れ量をより少なくすることができる。また、アーム部外周溝M2aの個所では溝の深さの分、連結アーム部と第2ハウジングとの距離が大きくなって流体抵抗を低減させている。
なお、アーム部内周溝M1b、及びアーム部外周溝M1aのそれぞれについても同様であるので、これらの説明は省略する。
【0033】
また
図7(C)に示すように、ハウジング内周溝M1dのそれぞれは、第1ハウジング対向面62Mにおける内径方向縁部621に達しない位置に形成されている。また、ハウジング内周溝M1dのそれぞれは、アウタロータ部の回転方向に対して、徐々に外径方向に向かうように形成されており、直線状であっても良いし、湾曲していても良い。
これにより、ハウジング内周溝M1dに入った潤滑油等の流体は、アウタロータ部の回転に伴ってハウジング内周溝M1dに沿って移動(この場合、回転方向に移動)するが、移動先の溝端部M1dEで行き止まり状態となって圧力(動圧)が増加し、内径の側から隙間(ΔL1の隙間)に浸入しようとする流体の浸入を抑制する。従って、流体の漏れ量をより少なくすることができる。また、ハウジング内周溝M1dの個所では溝の深さの分、連結アーム部と第1ハウジングとの距離が大きくなって流体抵抗を低減させている。
また
図7(C)に示すように、ハウジング外周溝M1cのそれぞれは、第1ハウジング対向面62Mにおける外径方向縁部622に達しない位置に形成されている。また、ハウジング外周溝M1cのそれぞれは、アウタロータ部の回転方向に対して、徐々に内径方向に向かうように形成されており、直線状であっても良いし、湾曲していても良い。
これにより、ハウジング外周溝M1cに入った潤滑油等の流体は、アウタロータ部の回転に伴ってハウジング外周溝M1cに沿って移動(この場合、回転方向に移動)するが、移動先の溝端部M1cEで行き止まり状態となって圧力(動圧)が増加し、外径の側から隙間(ΔL1の隙間)に浸入しようとする流体の浸入を抑制する。従って、流体の漏れ量をより少なくすることができる。また、ハウジング外周溝M1cの個所では溝の深さの分、連結アーム部と第1ハウジングとの距離が大きくなって流体抵抗を低減させている。
【0034】
[変形例(
図8)]
次に
図8(A)〜(C)を用いて、
図6及び
図7に対する他の例を説明する。
図8(A)に示す例は、
図7(C)に対して、ハウジング内周溝M1dの溝端部M1dEが、第1ハウジング対向面62Mの内径方向縁部621に達しており、ハウジング外周溝M1cの溝端部M1cEが、第1ハウジング対向面62Mの外径方向縁部622に達している。この場合、溝端部から点線矢印方向に流体が吐出されるので、動圧を発生させることはできないが、内径方向に向かう流体の流れ、及び外径方向に向かう流体の流れ、を発生させることができるので、内径方向及び外径方向からの流体の浸入の抑制に効果がある。
なお、ハウジング内周溝M2dの溝端部を内径方向縁部621に達するように形成した場合、ハウジング外周溝M1c、M2cの溝端部を外径側縁部に達するように形成した場合、アーム部内周溝M1b、M2bの溝端部を内径側縁部に達するように形成した場合、アーム部外周溝M1a、M2aの溝端部を外径側縁部に達するように形成した場合、も同様であるので、これらの説明は省略する。なお、溝の深さによる流体抵抗の低減効果は
図6及び
図7と同様である。
【0035】
図8(B)に示す例では、
図7(C)に対して、溝M1、M2が内径の方向への傾斜、または外径の方向への傾斜が無く、径が一定の連続した円環状の溝、または径が一定の円弧状の複数の溝、にてアーム部内周溝、アーム部外周溝、ハウジング内周溝、ハウジング外周溝、が形成されている。
円弧状の複数の溝が形成されている場合は、各溝の端部で流体が行き止まって動圧が発生し、内径方向や外径方向からの流体の浸入を抑制することができる。なお、溝の深さによる流体抵抗の低減効果は
図6及び
図7と同様である。
なお、
図8(C)は
図8(B)をJ方向から見た図である。
図8(C)に示すように、内径方向から浸入した流体が外径方向から漏れる場合、点線矢印に示すような経路で移動すると推定される。この場合、溝を横切る際に、比較的広い隙間から狭い隙間になる部分で流体の移動を抑制する効果が期待できる。
また連続した円環状の溝が形成されている場合は、
図8(C)に示すように溝を横切る際に比較的広い隙間から狭い隙間になる部分で流体の移動を抑制する効果が期待できる。またアウタロータが回転している場合、溝の周囲の流体の流れに対して溝内の流体は相対的に回転方向と反対方向に流れるため、内径方向から浸入した流体が溝を横切って外径方向に達することを抑制する効果が期待できる。
【0036】
以上、本発明の電動ポンプ10、10aは、本実施の形態にて説明した外観、構造、構成、形状等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
また本発明の電動ポンプ10、10aは、より高い効率で運転することが可能であり、車両におけるエンジン停止時の油圧源や、AT車両の油圧クラッチの油圧源等、各種の油圧源として利用することができる。
また各実施例では、一対のハウジングと支持シャフト部とはそれぞれ圧入外嵌することにより固定した例を説明したが、圧入外嵌に限定されず、一対のハウジングをそれぞれ支持シャフト部に外嵌してネジ止めや接着剤による接合等、その他の固定手段で適宜固定しても良い。
あるいは、一方のハウジングを支持シャフト部と一体としても良い。すなわち、支持シャフト部の一端に一方のハウジングを一体形成し、インナロータ、アウタロータ、及びステータ部を組み付けたあと、それらを挟み込むようにして支持シャフト部の他端に他方のハウジングを外嵌する構成としても良い。