(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒状の軸受ハウジングの内壁に設けられ、1又は複数のフォイルと、前記フォイルと前記軸受ハウジングとの間に配してなるベースプレートとを一体に連結してなるフォイル組立品を具備し、
前記フォイルが、フォイル本体と、フォイル本体をベースプレートの軸方向の端縁に接続するための接続部とを備え、前記接続部で折り返すことによりベースプレートの上にフォイル本体を重ねるようにしている動圧気体軸受であって、
前記フォイル組立品が、前記ベースプレートと、このベースプレートと軸との間に配してなり弾性変形可能なフォイルであるアンダーフォイルと、このアンダーフォイルと軸との間に配してなり前記アンダーフォイルから弾性力を受けるフォイルであるアッパーフォイルとを一体に設けてなり、
前記アンダーフォイルが前記ベースプレートの一方の側、前記アッパーフォイルが前記ベースプレートの他方の側にそれぞれ配され、アンダーフォイルのフォイル本体及びアッパーフォイルのフォイル本体がそれぞれ反対側の端縁でベースプレートに接続されていることを特徴とする動圧気体軸受。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係る軸受は、
図1に概略正面図、
図2に要部の中央横断面図をそれぞれ示すようなジャーナル軸受であり、軸2を取り付ける対象である軸受ハウジング1と軸2との間に設けられる。すなわち、前記軸受ハウジング1の内壁1aに設けられる。また、この軸受は、
図3に示す展開図のように、ベースプレート4と、前記ベースプレート4に接続してなるアンダーフォイル5と、前記ベースプレート4に接続してなる複数のアッパーフォイル6とを有するフォイル組立品3を具備する。そして、前記アッパーフォイル6の後述するアッパーフォイル本体61と前記軸2との間に図示しない気体膜を形成し、この気体膜の気圧を利用して前記軸2を支持する。すなわち、本実施形態に係る軸受は、フォイル型のジャーナル気体軸受である。
【0017】
前記フォイル組立品3は、前記
図1及び
図3に示すように、1つの前記ベースプレート4と、前記ベースプレート4にそれぞれ一体に接続してなる複数のアンダーフォイル5及びアッパーフォイル6とを有する。ここで、
図3はこのフォイル組立品3の展開図である。なお、前記
図1及び
図2では、ベースプレート4、アンダーフォイル5及びアッパーフォイル6は形状の理解を容易にするため、一定の厚さで示されているが、実際には、例えば0.1〜0.2mmの板状であり、かつ軸2を巻回する環状に形成されている。
【0018】
さらに詳述すると、前記ベースプレート4は、前記アンダーフォイル5の後述するアンダーフォイル本体51と前記軸受ハウジング1との間に位置し、軸受ハウジング1を保護する機能を有する。また、このベースプレート4の前記アンダーフォイル本体51に対向する側の面には、耐摩耗性表面加工を施している。また、このベースプレート4の一端縁には、前記
図1に示すように前記内壁1aに設けた係合溝1xに係合可能な係止突起4aを設けている。
【0019】
前記アンダーフォイル5は、軸2に対して弾性突没可能な複数の突条5xを設けてなる板状のアンダーフォイル本体51と、このアンダーフォイル本体51の下流側の端縁をベースプレート4に接続するための接続部52とを備えている。そして、前記突条5xが、前記アッパーフォイル6を軸に向けて付勢するバネとして機能する。
【0020】
前記アッパーフォイル6は、軸2に対向した状態で該軸2との間に気体膜を形成する板状のアッパーフォイル本体61と、このアッパーフォイル本体61の上流側の端縁をベースプレート4に接続するための接続部62とを備えている。前記アッパーフォイル本体61は、前記アンダーフォイル本体51からの弾性力を受けて軸2側に付勢され、気体膜の形状が維持されるようにしている。
【0021】
ここで、
図3の展開図は前記フォイル組立品3の製造途中の形態であり、この状態から以下のように加工を行うことにより完成する。まず、前記ベースプレート4に対して図示左側のアンダーフォイル5を前記
接続部52で折り返し、前記ベースプレート4の上にアンダーフォイル本体51を重ねる。次に図示右側のアッパーフォイル6を同様に
接続部62で折り返す。これにより、先に折り返した前述アンダーフォイル本体51の上にアッパーフォイル本体61が重ね合わされる。また重ね合わせた状態で、ベースプレート4及びアッパーフォイル本体61の面がアンダーフォイル5側を内側に、アッパーフォイル本体61側を外側になるよう、軸2に巻回し環状に成形する。これら成形作業によりフォイル組立品3が完成する。
【0022】
前記
図1及び
図2において、軸2が回転すると、軸2とフォイル組立品3との隙間の空気等の気体が気体の粘性により引っ張られ、この隙間に形成してなる気体膜の圧力が上昇する。この圧力上昇によって、まず、アッパーフォイル本体61が軸受ハウジング1側に向かう作用を受ける。この際、前記アッパーフォイル本体61は、アンダーフォイル本体51に圧接し、アンダーフォイル本体51が軸受ハウジング1側に向かう作用を受ける。この際、アンダーフォイル本体51は接続部52を介してその下流側端縁をベースプレート4に接続しているので、アッパーフォイル本体61に圧接すると上流側に延伸しようとする。一方、アッパーフォイル本体61は接続部62を介してその上流側端縁をベースプレート4に接続しているので、アンダーフォイル本体51に圧接すると下流側、すなわちアンダーフォイル本体51が延伸しようとする方向と反対側に延伸しようとする。そして、気体膜の形状が、例えば、入口部分から下流側に進むにつれ幅が小さくなるなど、適切な形状に維持され、前記アッパーフォイル本体61の下流側端縁近傍すなわち自由端近傍で気体の圧力上昇が生じる。この圧力上昇により軸受は軸2を非接触で支えることになる。
【0023】
本実施形態に係る軸受の構成によれば、フォイル組立品3を軸受ハウジング1に組み付ける作業によりこのような軸受を形成できるので、取り付け作業の工数を削減できるとともに、フォイル組立品3の位置決めを行うための係合溝1x、及びこの係合溝1xに係合させるための突起4aはいずれも1箇所だけ設ければよく、軸受ハウジング1に係合溝1xを設ける手間の軽減を図ることもできる。さらに、複数のアンダーフォイル5及びアッパーフォイル6を全てベースプレート4を介して一体に連結してフォイル組立品3を形成しているので、部品点数の削減を図ることもできる。
【0024】
また、前記フォイル組立品3が、前記ベースプレート4と、このベースプレート4と軸2との間に配してなり弾性変形可能なアンダーフォイル本体51と、このアンダーフォイル本体51と軸2との間に配してなり前記アンダーフォイル本体51から弾性力を受ける前記アッパーフォイル本体61とを一体に設けてなり、さらに、前記ベースプレート4を1つのみ有するとともに、前記複数のアンダーフォイル5及びアッパーフォイル6を全て前記ベースプレートに一体に設けているので、取り付け作業の工数及び部品点数をさらに効果的に削減できる。
【0025】
さらに、前記ベースプレート4の前記アンダーフォイル本体51に対向する側の面に、耐摩耗性表面加工を施しているので、このようなフォイル組立品3の長寿命化を図ることができる。
【0026】
そして、前記ベースプレート4に前記軸受ハウジング1との間で位置決めを行うための突起4aを設け、この突起4aを前記軸受ハウジング1の係合溝1xに係合させて位置決めを行うようにしているので、簡単な構成でこのようなフォイル組立品3を軸受ハウジング1に位置決めすることができる。
【0027】
加えて、アンダーフォイル5及びアッパーフォイル6はそれぞれ反対側の端縁をベースプレート4に接続しているので、これらが互いに圧接すると反対側に延伸しようとし、従ってアンダーフォイル本体51とアッパーフォイル本体61とが互いに摺動する。すなわち、このような構成により、これらアンダーフォイル本体51とアッパーフォイル本体61との振動のエネルギーが摺動摩擦に伴う熱エネルギー等に変換されるダンピング効果を得ることができ、このダンピング効果により振動や騒音の発生を抑制することができる。
【0028】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られず、以下に述べるような変形例を採用してもよい。ここで、以下の変形例の説明において、以上に述べた実施形態に対応する各部位には、同一の名称及び符号を付している。
【0029】
例えば、展開図を
図4に示すように、ベースプレート4とアンダーフォイル5のみを備えるフォイル組立品3を用意し、このフォイル組立品3を軸受ハウジング1に組み付けた後、別体に構成したアッパーフォイル6を軸受ハウジング1に組み付ける構成を採用してもよい。
【0030】
このような態様において、第1のベースプレートとアンダーフォイルのみを備える第1のフォイル組立品の他に、第2のベースプレートとアッパーフォイルを備える第2のフォイル組立品を備えるようにしてもよい。この場合、第2のフォイル組立品の内部に第2のフォイル組立品を配する構成、すなわち、第1のベースプレートより軸受ハウジング側に第2のベースプレートを、また、アンダーフォイルよりも軸側にアッパーフォイルをそれぞれ配する構成を採用してもよく、また、軸受ハウジング側から順に第1のベースプレート、第2のベースプレート、アンダーフォイル及びアッパーフォイルをそれぞれ配する構成を採用してもよい。
【0031】
また、展開図を
図5に示すように、ベースプレート4と、このベースプレート4の軸方向両端縁にそれぞれ接続してなる複数のアンダーフォイル5と、前記ベースプレート4の長手方向端縁に一体に接続してなり略全周に亘る1枚のアッパーフォイル6とを具備するフォイル組立品3を採用してもよい。このような場合、このフォイル組立品3を軸受ハウジング1の係合溝1xと係合可能な係止突起は、上述した実施形態のようにベースプレート4に備えてもよく、前記
図5に示すようにアッパーフォイル6にこのような係止突起6aを備えてもよい。
【0032】
ここで、略全周に亘る1枚のアッパーフォイル5を採用する場合、アンダーフォイル4は複数枚重ね合わせる必要はなく、展開図を
図6に示すように、ベースプレート4の軸方向一端縁に複数のアンダーフォイル5を一体に接続するとともに軸方向他端縁にアッパーフォイル6を一体に接続する態様のフォイル組立品3を採用してもよい。また、展開図を
図7に示すように、ベースプレート4の軸方向一端縁に複数のアンダーフォイル5を一体に接続するとともにベースプレート4の長手方向一端縁に略全周に亘る1枚のアッパーフォイル6を重ね合わせる態様のフォイル組立品3を採用してもよい。
【0033】
一方、アンダーフォイル5がアッパーフォイル6を軸側に付勢するために、上述した各態様では、いずれもアンダーフォイル5の突条5xを弾性変形させることによる弾性付勢力を利用しているが、その他の方法でアッパーフォイル6を軸側に付勢するようにしてもよい。例えば、
図8に示すように、ベースプレート4にリーフ型のフォイル7を一体に接続するようにし、軸受ハウジング1に組み付けた状態でこのフォイル7の上流側半分を隣接する他のフォイル7の軸側に重ね合わせるようにする態様を採用してもよい。この場合、各フォイル7の下流側半分は軸との間で気体膜を形成するアッパーフォイルとして機能し、各フォイル7の上流側半分はこのアッパーフォイルを軸側に弾性付勢するアンダーフォイルとして機能する。
【0034】
また、展開図を
図9に示すように、アンダーフォイル5のうち1つに前記軸受ハウジングとの間で位置決めを行うための突起5aを設けるとともに、ベースプレート4にこの突起5aを通過させるための位置決め突起挿通孔4xを設ける態様のフォイル組立品3を採用しても、比較的簡単な構成によりこのようなフォイル組立品3の軸受ハウジングに対する位置決めを行うことができる。
【0035】
さらに、
図3、4、5、6、7、あるいは
図9に示す態様において、アンダーフォイルの突条をなくし、アッパーフォイルと同様に軸を巻回する環状の板状とし、但しアッパーフォイルの曲率と変えてもよい。これにより板ばねとして機能する。
【0036】
そして、以上に述べた各実施形態では、いずれも、軸受ハウジング1の内壁1aの略全周に亘って該内壁1aに対向するベースプレート4を備えたフォイル組立品3を利用する構成を採用しているが、例えば、軸受ハウジング1の内壁1aの略半周に対応する長手寸法を有するベースプレート4を備えたフォイル組立品3を2つ備える態様や、軸受ハウジング1の内壁1aの略3分の1周に対応する長手寸法を有するベースプレート4を備えたフォイル組立品3を3つ備える態様等を採用してももちろんよい。
【0037】
加えて、上述した実施形態では、ベースプレートのフォイルに対向する側の面に耐摩耗性表面加工を施しているが、例えば、フォイル組立品の全体を、耐摩耗性を有する材料により形成する等、他の手段によりフォイルの耐摩耗性を確保するようにしてもよい。
【0038】
あるいは、上述した実施形態では、フォイル組立品は1枚板から切断及び折り曲げて成形しているが、例えば各フォイル部品は個別に製作し、ベースプレートとの連結部で両部材をスポット溶接により一体化するようにしてもよい。
【0039】
また、ベースプレートの両側に備える各フォイルの接続部の位置は、成形形状や製造性などに応じて、図示位置と異なる形態を採用してももちろんよい。
【0040】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。