(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JIS Z2201の13B号の試験片(試料幅12.5mm)を作成し、JIS K7127に準拠して評点間距離50mm、引張速度20mm/分の条件で引張り試験を行った際の引張り強度が、前記バリア層のMD方向及びTD方向ともに10〜200N/mm2である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池用外装材。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<電池用外装材>
以下、本発明の電池用外装材の実施形態の一例を示して詳細に説明する。本発明の電池用外装材は、リチウムイオン電池等の電池の外装材として使用できる。
[第1実施形態]
本実施形態の電池用外装材1(以下、「外装材1」という。)は、
図1に示すように、外層11、成型向上層12、バリア層13、腐食防止処理層14、接着層(X)15、内層16が順次積層された積層体である。
【0014】
(外層11)
外層11は、リチウムイオン電池等を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。
外層11としては、絶縁性を有する樹脂層が好ましい。該樹脂層としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等の延伸又は無延伸フィルムが挙げられる。なかでも、成型性、耐熱性、耐ピンホール性、絶縁性が向上する点から、延伸ポリアミドフィルム、延伸ポリエステルフィルムが好ましい。
外層11には、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0015】
外層11は、単層フィルムであってもよく、2層以上のフィルムが積層された積層フィルムであってもよい。外層11は、液漏れ時の対策として、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の電解液に不溶な樹脂をラミネートしたものを使用してもよく、電解液に不溶な樹脂成分をコーティングしたものを使用してもよい。
外層11の厚さは、6〜40μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。
【0016】
(成型向上層12)
成型向上層12は、外層11とバリア層13の密着性を向上させ、外装材1の成型性を向上させる役割を果たす。成型向上層12としては、下記樹脂(A)及びカップリング剤(B)の少なくとも一方を含有する層が挙げられる。
樹脂(A):ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリル系樹脂及びアイオノマー樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂。
カップリング剤(B):シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤及びジルコネート系カップリング剤からなる群から選ばれる1種以上のカップリング剤。
成型向上層12は、樹脂(A)又はカップリング剤(B)の一方を含有する層であってもよく、樹脂(A)とカップリング剤(B)を両方含有する層であってもよい。
【0017】
成型向上層12に用いるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、αポリオレフィン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
ポリエーテル系樹脂としては、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
ポリウレタン系樹脂としては、ポリ−n−ブチルイソシアネート、ポリ−n−ヘキシルイソシアネート、2−6−ポリウレタン等が挙げられる。
ポリビニル系樹脂としては、エチレン・酢酸ビニル共重合、ポリ塩化ビニル、スチレンビニル、酢酸ビニル等が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン等が挙げられる。
ポリアクリル系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、ポリカルボン酸等が挙げられる。
フェノール系樹脂としては、ランダムノボラック型、ハイオルソノボラック型、アルカリレゾール型、アンモニアレゾール型、ベンジルエーテルレゾール型等の樹脂が挙げられる。
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等が挙げられる。
メラミン系樹脂としては、グアナミン、アニリン等が挙げられる。
エポキシ系樹脂としては、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、環状脂肪族型等の樹脂が挙げられる。
不飽和ポリエステル系樹脂としては、オルソフタル酸系、イソフタル酸系、テレフタル酸系、ジシクロ系、脂肪式飽和酸系、ビスフェノール系等の樹脂が挙げられる。
シリコーン系樹脂としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられる。
ポリスルフォン系樹脂としては、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリアリルスルフォン、アリルポリフェニルスルフォン等が挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂としては、ポリテトラメチレンカーボネート、ポリペンタメチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート等が挙げられる。
ポリアリル系樹脂としては、ポリアリルアミン、ポリアリルアミド、ポリアリルエーテル、ポリアリルエーテルケトン等が挙げられる。
アイオノマー樹脂としては、エチレン系、スチレン系、エラストマー系の樹脂やエチレンカルボン酸共重合体をNa、K、Li、Zn等のイオン源で重合したもの等が挙げられる。
【0018】
成型向上層12に用いるシラン系カップリング剤としては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
チタネート系カップリング剤としては、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート等が挙げられる。
アルミネート系カップリング剤としては、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等が挙げられる。
ジルコネート系カップリング剤としては、トリメトキシジルコネート、テトラメトキシジルコネート、テトラプロポキシジルコネート、クロロトリエトキシジルコネート、エチルトリメトキシジルコネート、フェニルトリメトキシジルコネート等が挙げられる。
【0019】
外装材1は、外層11とバリア層13の間に成型向上層12が設けられていることで、外層11とバリア層13の密着強度が増大するので、冷間成型の際に引張り及び圧縮応力が外装材1に付与された場合でも、外層11とバリア層13の密着性を充分に確保できる。これにより、優れた成型性が得られる。つまり、外層11とバリア層13の剥離を抑制することで、その部分からバリア層13が破断したり、ピンホールが生じたりすることを抑制できる。
また、成型向上層12は、外層11とバリア層13との間で緩衝層としても機能する。つまり、成型向上層12により、成型時に加わる応力を緩和し、成型時にバリア層13が破断することを抑制できるため、優れた成型性が得られる。特に、成型向上層12を樹脂(A)で形成した場合、成型時の緩衝層としての効果がより良好に発揮される。
【0020】
この例の成型向上層12は、が接着性を有する層であり、接着層を兼ねている。成型向上層12が接着層を兼ねるようにする形態としては、樹脂(A)のなかでもポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱接着性の樹脂を使用する形態、接着剤を含有させる形態が挙げられる。
成型向上層12に含有させる接着剤としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として2官能以上の芳香族系又は脂肪族系イソシアネートを作用させる2液硬化型のポリウレタン系接着剤が好ましい。
前記ポリウレタン系接着剤は、塗布後、例えば40℃で4日以上のエージングを行うことで、主剤の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の反応が進行して強固な接着が可能となる。主剤が有する水酸基に対する硬化剤が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、1〜10が好ましく、2〜5がより好ましい。
【0021】
成型向上層12の厚さは、20nm〜50μmが好ましい。
また、カップリング剤(B)及び比較的硬い樹脂(ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂等。)の場合、成型性の向上に影響を与えるのは成型向上層12による外層11とバリア層13の密着性の向上であると考えられる。この場合、成型向上層12の厚さは、20nm〜500nmがより好ましく、20〜100nmがさらに好ましい。成型向上層12の厚さが20nm以上であれば、皮膜ヌケ、ムラ等の発生を抑制しやすく、成型向上層12による効果を充分に発揮させやすくなる。成型向上層12の厚さが500nm以下であれば、成型向上層12が硬くなりすぎることを抑制しやすく、優れた成型性が得られやすい。
また、成型向上層12に弾性に富む成分(ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等。)を使用し、応力を緩和する機能を付与する場合、成型向上層12の厚さは、500nm〜50μmがより好ましい。成型向上層12の厚さが500nm以上であれば、成型向上層12による効果を充分に発揮させやすくなる。また、成型向上層12の厚さが50μmを超えても応力を緩和する効果はあまり変化しないので、コスト面で不利である。
成型向上層12は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。
【0022】
(バリア層13)
バリア層13としては、防湿性の点から、アルミニウム、ステンレス綱等の金属箔が好ましく、比重、比強度、延展性の点から、アルミニウム箔がより好ましい。比重が小さく、比強度が大きいことにより、より軽く、より強度の高い外装材1を作製できる。また、延展性が大きいことにより、成型時にピンホール等がより発生し難く利点もある。
【0023】
アルミニウムとしては、軟質アウミニウム箔が好ましい。例えば、焼鈍処理等において軟質(O材)に調質されたアルミニウム箔が挙げられる。また、耐ピンホール性に優れ、及び成型時の延展性を付与できる点から、鉄を含むアルミニウム箔がより好ましい。
この場合、アルミニウム箔(100質量%)中の鉄の含有量は、0.1〜9.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であれば耐ピンホール性、延展性が向上する。鉄の含有量が9.0質量%以下であれば、柔軟性が向上する。
【0024】
バリア層13の厚さは、10〜150μmが好ましい。バリア層13の厚さが10μm以上であれば、成型時にピンホール等が発生することを抑制しやすい。バリア層13の厚さが150μm以下であれば、成型時の応力をより小さくでき、成型機への負荷を小さくできるため、生産性が向上する。また、外装材1の質量を小さくできるので、電池全体の質量エネルギー密度が向上する。
バリア層13としては、軟質アルミニウム箔からなり、厚さが10〜150μmの層が特に好ましい。
【0025】
(腐食防止処理層14)
腐食防止処理層14は、バリア層13の内層16側に設けられ、バリア層13と接着層(X)15とを強固に密着させると共に、バリア層13を、電解液から発生するフッ酸から保護する役割を果たす。
腐食防止処理層14を形成する際は、密着性、耐フッ酸性の点から、バリア層13を形成する金属箔を前処理することが好ましい。前処理としては、大きく区分するとウェットタイプとドライタイプが挙げられる。
ウェットタイプの前処理としては、酸洗浄、アルカリ洗浄等が挙げられる。酸洗浄に使用する酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸等の無機酸が挙げられる。これら酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、バリア層13のエッチング効果を向上させる点から、必要に応じてFeイオンやCeイオン等の供給源となる各種金属塩を配合してもよい。アルカリ洗浄に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム等の強エッチングタイプが挙げられる。また、弱アルカリ系や界面活性剤を配合したものを用いてもよい。これらの脱脂は浸漬法やスプレー法で行われる。
【0026】
ドライタイプの前処理としては、例えば、アルミニウム箔を焼鈍処理する工程で、脱脂処理を行う方法が挙げられる。また、脱脂処理としては、前述したものの他にも、フレーム処理、コロナ処理等が挙げられる。さらには特定波長の紫外線を照射して発生する活性酸素により、汚染物質を酸化分解、除去するような脱脂処理も挙げられる。
【0027】
腐食防止処理層14の形成は、化成処理、陽極酸化等により行うことが好ましい。また、耐食性が向上する点から、耐食樹脂をコーティング等で積層する方法も好ましい。化成処理としては、良好なフッ酸耐性が得られる点から、例えば、Cr,Zr、Ti、Ce等の耐食元素に、フッ化物、リン酸化合物、樹脂等を添加した一般的な系が使用できる。化成処理による腐食防止処理層14の形成方法としては、ディップ法、塗工法等が挙げられ、塗液の調整、維持等が簡便な点から、塗布型の化成処理がより好ましい。
腐食防止処理層14は、前記化成処理、陽極酸化、耐食樹脂コーティングのうち、2種以上を組み合わせてもよい。
【0028】
(接着層(X)15)
接着層(X)15を構成する成分としては、ポリオレフィン系樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。酸変性ポリオレフィン系樹脂とは、酸をグラフト重合して変性したポリオレフィン系樹脂を意味する。酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂に無水マレイン酸をグラフト重合して変性した無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、又はランダムポリプロピレン;プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記ポリオレフィン系樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂は、有機溶媒に分散させてディスパージョンタイプとして使用してもよい。この場合、接着に有効な各種添加剤、イソシアネート化合物又はその誘導体、及びシラン系カップリング剤を配合してもよい。
【0029】
また、接着層(X)15の形成には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として2官能以上の芳香族系又は脂肪族系イソシアネートを作用させる2液硬化型のポリウレタン系接着剤を使用してもよい。
接着層(X)15の厚さは、1〜40μmが好ましい。
【0030】
(内層16)
内層16は、外装材1においてヒートシールによる封止性を付与するシーラント層である。内層16としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂に無水マレイン酸等をグラフト重合して変性させた酸変性ポリオレフィン樹脂からなるフィルムが挙げられる。なかでも、酸変性ポリオレフィン樹脂からなるフィルムが好ましく、無水マレイン酸をグラフト重合して変性した無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂からなるフィルムがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、又はランダムポリプロピレン;プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
内層16は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。例えば、防湿性を付与する点では、エチレン−環状オレフィン共重合体やポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムを使用してもよい。
また、内層16は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤を配合してもよい。
内層16の厚さは、10〜100μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。
【0032】
外装材1は、当該外装材1からJIS Z2201の13B号の試験片(試料幅12.5mm)を作成し、JIS K7127に準拠して評点間距離50mm、引張速度20mm/分の条件で引張り試験を行った際の引張り強度が、バリア層13のMD方向及びTD方向ともに10〜200N/mm
2であることが好ましい。外装材1におけるバリア層13のMD方向及びTD方向の両方の引張り強度が200N/mm
2以下であれば、外装材1の剛性が高くなりすぎることが抑制されやすくなり、優れた成型性が得られやすい。そのため、成型深さを大きくしてもピンホール等が発生することを抑制しやすい。また、成型時に成型機にかかる負荷が小さくなるので、連続的に成型品を生産する上で有利である。一方、外装材1におけるバリア層13のMD方向及びTD方向の両方の引張り強度が10N/mm
2以上であれば、剛性が充分に得られやすく、外装材1の成型後に所望の成型深さで形状を維持しやすい。
前記引張り強度は、バリア層13に使用するアルミニウム箔等の金属箔の硬度を調節すること等により調節できる。
【0033】
(製造方法)
以下、外装材1の製造方法について説明する。ただし、外装材1の製造方法は以下の方法には限定されない。
外装材1の製造方法としては、例えば、下記工程(I−1)〜(III−1)を有する方法が挙げられる。
(I−1)バリア層13上に、腐食防止処理層14を形成する工程。
(II−1)バリア層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、接着層を兼ねる成型向上層12を介して外層11を貼り合わせる工程。
(III−1)バリア層13の腐食防止処理層14側に、接着層(X)15を介して内層16を貼り合わせる工程。
【0034】
工程(I−1):
化成処理の場合を例に説明すると、バリア層13の一方の面に、化成処理液を塗工し、乾燥・硬化を行って腐食防止処理層14を形成する。
塗工方法としては、公知の方法を採用でき、例えば、グラビアコータ、グラビアリバースコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、ダイコータ、バーコータ、キスコータ、コンマコータ等が挙げられる。
なお、前述したように、バリア層13は、未処理の金属箔を用いてもよく、ウェットタイプ又はドライタイプの前処理を施した金属箔を用いてもよい。
【0035】
工程(II−1):
例えば、ポリウレタン系接着剤等の接着剤と、成型向上層12を形成する前記樹脂(A)及びカップリング剤(B)の少なくとも一方とを含有する混合物を使用して、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーション等の手法により、バリア層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に外層11を貼り合わせる。
工程(II−1)では、接着性の促進のため、室温〜100℃の範囲でエージング(養生)処理を行ってもよい。
【0036】
工程(III−1):
例えば、工程(II−2)で得られた積層体の腐食防止処理層14側に、押出しラミネート法、又はディスパージョンとして塗工する方法によって、接着層(X)15を介して、インフレーション法又はキャスト法により得られる内層16を積層する方法が挙げられる。
押出しラミネート法を採用する場合、サンドイッチラミネーションにより内層16を積層することが好ましい。
接着層(X)15を形成する樹脂成分をディスパージョンとして塗工する場合、塗工方法は、公知の塗工方法を採用できる。その後、樹脂成分(ポリオレフィン系樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂)の融点以上の温度で溶媒を飛ばし、樹脂を溶融軟化させて、焼き付けを行った後、内層16を熱ラミネーション等の熱処理により積層させる。
【0037】
また、内層16の積層は、インフレーション法又はキャスト法にて接着層(X)15と内層16が積層された多層フィルムを作成し、該多層フィルムを前記積層体の腐食防止処理層14側に熱ラミネーションにより積層する方法により行ってもよい。
また、接着層(X)15を形成する成分としてポリウレタン系接着剤等のドライラミネート用の接着剤を使用する場合、内層16の積層は、前述の工程(II−1)と同様の手法で行える。
【0038】
以上説明した工程(I−1)〜(III−1)により、外装材1が得られる。
また、バリア層の両面に腐食防止処理層を設けてもよい。
【0039】
[第2実施形態]
次に、本発明の電池用外装材の他の例である電池用外装材2(以下、「外装材2」という。)について説明する。外装材2において外装材1と同じ部分は同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態の外装材2は、
図2に示すように、外層11の一方の面に、接着層(Y)17、成型向上層12、バリア層13、腐食防止処理層14、接着層(X)15、内層16が順次積層された積層体である。つまり、外装材2は、成型向上層12の外層11側に接着層(Y)が設けられている以外は外装材1と同じである。
【0040】
(接着層(Y)17)
接着層(Y)17を構成する接着剤としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として2官能以上の芳香族系又は脂肪族系イソシアネートを作用させる2液硬化型のポリウレタン系接着剤が好ましい。
前記ポリウレタン系接着剤は、塗布後、例えば40℃で4日以上のエージングを行うことで、主剤の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の反応が進行して強固な接着が可能となる。主剤が有する水酸基に対する硬化剤が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、1〜10が好ましく、2〜5がより好ましい。
【0041】
接着層(Y)17の厚さは、接着強度や、追随性、加工性等の点から、1〜10μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。接着層(Y)17の厚さが1μm以上であれば、ムラや塗布ヌケを抑制しやすく、均一な接着性が得られやすい。また、接着層(Y)17の厚さが10μmを超えても、接着性の向上がほとんど得られず、総厚の増大やコスト高の要因となる。
【0042】
(製造方法)
以下、外装材2の製造方法について説明する。ただし、外装材2の製造方法は以下の方法には限定されない。
外装材2の製造方法としては、例えば、下記工程(I−2)〜(III−2)を有する方法が挙げられる。
(I−2)バリア層13上に、腐食防止処理層14を形成する工程。
(II−2)バリア層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、成型向上層12を形成し、接着層(Y)17を介して外層11を貼り合わせる工程。
(III−2)バリア層13の腐食防止処理層14側に、接着層(X)15を介して内層16を貼り合わせる工程。
【0043】
工程(I−2):
工程(I−2)は、前記外装材1の製造方法における工程(I−1)と同様に行える。
【0044】
工程(II−2):
例えば、樹脂(A)及びカップリング剤(B)を水、溶剤等の溶媒で適宜希釈し、その希釈液を塗工、ディッピング、スプレー法等の公知の方法によってバリア層13における腐食防止処理層14の反対側に塗布し、適宜乾燥することで成型向上層12を形成する。塗工方式としては、前記した公知の塗工方式を採用できる。
また、樹脂(A)を使用する場合、樹脂(A)の融点より高い温度にて溶融させ、押出し等の方法で成型向上層12を形成してもよい。
【0045】
さらに、接着層(Y)17を形成する接着剤を使用し、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーション等の手法によって、成型向上層12/バリア層13/腐食防止処理層14からなる積層体の成型向上層12上に、接着層(Y)17を介して外層11を貼り合わせる。その後、接着性の促進のため、室温〜100℃の範囲でエージング(養生)処理を行ってもよい。
【0046】
工程(III−2):
工程(III−2)は、前記外装材1の製造方法における工程(III−1)と同様に行える。
【0047】
以上説明した工程(I−2)〜(III−2)により、外装材2が得られる。
また、バリア層の両面に腐食防止処理層を設けてもよい。
【0048】
以上説明した本発明の電池用外装材は、成型向上層を有し、前記引張試験における引張り強度が、バリア層のMD方向及びTD方向ともに10〜200N/mm
2であることで、優れた成型性が得られるため、ピンホールや破断等を生じさせずにより深い深絞り成型を実施することが可能となる。これは、以下のことが要因であると考えられる。
本発明者らが電池用外装材の成型時にピンホールが発生する機構を詳細に検討した結果、驚くべきことにバリア層と外層との密着性が大きく影響していることを見出した。つまり、バリア層と外層が剥離することで、その部分からバリア層が破断して、ピンホールが発生していることを見い出した。本発明では、外層とバリア層との間に成型向上層を形成することで、外層側の密着性が向上するとともに、成型向上層が外層とバリア層の特性を補完する緩衝層にもなっていることで、優れた成型性が得られると考えられる。
【0049】
[他の実施形態]
本発明の電池用外装材は、前記外装材1、2には限定されない。例えば、
図3に例示した電池用外装材3(以下、「外装材3」という。)や、
図4に例示した電池用外装材4(以下、「外装材4」という。)であってもよい。外装材3、4において外装材1、2と同じ部分は同じ符号を付して説明を省略する。
外装材3は、
図3に示すように、外層11の一方の面に、成型向上層12、接着層(Y)17、バリア層13、腐食防止処理層14、接着層(X)15、内層16が順次積層された積層体である。つまり、外装材3は、成型向上層12のバリア層13側に接着層(Y)が設けられている以外は外装材2と同じである。
外装材4は、
図4に示すように、外層11の一方の面に、成型向上層12、接着層(Y)17、成型向上層12、バリア層13、腐食防止処理層14、接着層(X)15、内層16が順次積層された積層体である。つまり、外装材4は、接着層(Y)の両側に成型向上層12が設けられている以外は外装材2と同じである。
【0050】
また、外装材1〜4では、バリア層13における接着層(X)15側の面、すなわち電解液と水分との反応により発生するフッ酸と接する可能性のある側に腐食防止処理層14を設けられているが、必要に応じて、バリア層13の外層11側の面にも腐食防止処理層を設けてもよい。
【0051】
<二次電池>
本発明の二次電池は、本発明の電池用外装材を有する二次電池である。本発明の二次電池は、本発明の電池用外装材を使用する以外は公知の方法で製造できる。例えば、以下のようにして得られる。
本発明の電池用外装材の一部に、冷間成型により凹部を形成し、該凹部の内部に、正極、セパレータ、負極及びタブを入れ、もう1枚の本発明の電池用外装材を内層が向かい合うようにを重ね合わせ、その3辺をヒートシールする。その後、真空状態において、残った1辺から電解液を注入し、残りの1辺をヒートシールして密封することで二次電池が得られる。
【0052】
本発明の二次電池は、成型性に優れ、ピンホール等の不具合を生じさせずに、より深い深絞り成型が可能な本発明の電池用外装材を使用するため、電池内容物をより多くすることができるので、エネルギー密度を飛躍的に高くできる。
なお、本発明の二次電池は、前記方法で製造したものには限定されない。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
バリア層13として、300℃、4日間焼鈍処理した軟質アルミニウム箔(O材)8079材(厚さ40μm)を使用し、その一方の面に、マイクログラビア法のリバースコートにより腐食防止処理層14を形成した。3価クロム、リン酸、アクリル系樹脂を主体とした塗布型クロメート処理用の処理剤を使用し、塗布量はクロム換算で15mg/m
2とした。乾燥温度は150℃とした。
次に、水溶性アクリル樹脂(日本触媒製:アクリセットARL−453)を使用し、バリア層13における腐食防止処理層14と反対側の面に、マイクログラビア法のリバースコートにより、塗工後の乾燥膜厚が200nmとなるようにして成型向上層12を形成した。乾燥温度は120℃とした。
その後、ポリウレタン系接着剤(三井化学ポリウレタン社製:A525/A50)を使用し、ドライラミネート手法により、接着層(Y)17を介して二軸延伸ポリアミドフィルム(出光石油化学社製:G100)を貼り合わせ、外層11を積層した。その後、60℃で6日間のエージングを行った。
得られた積層体を押出ラミネート機の巻出し部に設置し、さらに未延伸ポリプロピレンフィルム(二村化学工業製:FCZK)をサンド基材部に設置し、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学社製:アドマー)を加工条件290℃、80m/分、20μmの厚さでサンドラミネートして、前記積層体の腐食防止処理層14上に接着層(X)15を介して内層16を積層した。その後、熱圧着(熱処理)を施し、外装材2を得た。
【0054】
[実施例2]
前記水溶性アクリル樹脂の代わりに変性ポリプロピレン系ディスパージョン(三井化学製:ユニストールR−300)を使用し、バリア層13の腐食防止処理層14と反対側の面に、ダイレクトグラビア法にて塗工・焼き付けを行って成型向上層12を形成した以外は、実施例1と同様にして外装材2を得た。成型向上層12の焼付け温度は150℃とし、焼付け後の膜厚を4μmとした。
【0055】
[実施例3]
前記水溶性アクリル樹脂の代わりにシラン系カップリング剤(信越シリコーン製:KBM−403)を使用し、バリア層13の腐食防止処理層14と反対側の面に、ダイレクトグラビア法のリバースコートにて塗工、乾燥を行って成型向上層12を形成した以外は、実施例1と同様にして外装材2を得た。成型向上層12の乾燥温度は80℃とし、乾燥膜厚を100nmとした。
【0056】
[実施例4]
前記水溶性アクリル樹脂の代わりにチタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ製:プレアクトKR41B)を使用し、バリア層13の腐食防止処理層14と反対側の面に、ダイレクトグラビア法のリバースコートにて塗工、乾燥を行って成型向上層12を形成した以外は、実施例1と同様にして外装材2を得た。成型向上層12の乾燥温度は80℃とし、乾燥膜厚を100nmとした。
【0057】
[実施例5]
ポリウレタン系接着剤(三井化学ポリウレタン社製:A525/A50)に、シラン系カップリング剤(信越シリコーン製:KBM−403)を2質量%添加した混合物を使用して、接着層(Y)17を形成せずに接着層を兼ねた成型向上層12形成した以外は、実施例1と同様にして外装材1を得た。成型向上層12の形成は、ドライラミネート手法により行い、その後に60℃で6日間のエージングを行った。
【0058】
[実施例6]
バリア層13の腐食防止処理層14側に、接着層(Y)、成型向上層12をこの順に設けて外層11を積層した以外は、実施例1と同様にして外装材3を得た。
【0059】
[実施例7]
実施例1と同様にして、バリア層13の腐食防止処理層14と反対側の面に、水溶性アクリル樹脂(日本触媒製:アクリセットARL−453)からなる成型向上層12を形成した。次に、二軸延伸ポリアミドフィルム(出光石油化学社製:G100)のバリア層13側となる面に、ダイレクトグラビア法のリバースコートにて塗工、乾燥を行って、シラン系カップリング剤(信越シリコーン製:KBM−403)からなる成型向上層12を形成した。その後、これらを2つの成型向上層12が向かい合うようにして、ポリウレタン系接着剤(三井化学ポリウレタン社製:A525/A50)を使用して、ドライラミネート手法により、接着層(Y)17を介してを貼り合わせて積層した。その後、60℃で6日間のエージングを行った。
その後、実施例1と同様にして、接着層(X)15を介して内層16を積層し、外装材4を得た。
【0060】
[実施例8]
二軸延伸ポリアミドフィルム(出光石油化学社製:G100)のバリア層13側となる面に、変性ポリプロピレン系ディスパージョン(三井化学製:ユニストールR−300)からなる成型向上層12を形成した以外は、実施例7と同様にして外装材4を得た。
【0061】
[実施例9]
バリア層13の腐食防止処理層14と反対側の面に、ダイレクトグラビア法のリバースコートにて塗工、乾燥を行って、シラン系カップリング剤(信越シリコーン製:KBM−403)からなる成型向上層12を形成し、かつ二軸延伸ポリアミドフィルム(出光石油化学社製:G100)のバリア層13側となる面に、チタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ製:プレアクトKR41B)からなる成型向上層12を形成した以外は、実施例7と同様にして外装材4を得た。
【0062】
[実施例10]
バリア層13として、300℃、4日間焼鈍処理した軟質アルミニウム箔(O材)8021材(厚さ40μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして外装材2を得た。
【0063】
[比較例1]
リン酸、クロム酸を含有するディップ型のリン酸クロメート(3価)に、軟質アルミニウム箔(O材)である8079材(厚さ40μm)を10秒浸積した後、20秒水洗し、乾燥させることでバリア層13の両面に腐食防止処理層(厚さ50nm)を形成した。
その後、成型向上層12を設けない以外は、実施例1と同様にして接着層(Y)を介して外層11を積層し、接着層(X)15を介して内層16を積層して外装材を得た。
【0064】
[比較例2]
成型向上層12を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして外装材を得た。
【0065】
[比較例3]
バリア層13として、硬度をH14(硬質と軟質の中間の調質具合)に調質したアルミニウム箔5052材(厚さ40μm)を使用し、成型向上層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして外装材を得た。
【0066】
[引張り試験]
各例で得られた外装材から、JIS Z2201の13B号の試験片(試料幅12.5mm)を作成し、JIS K7127に準拠して評点間距離50mm、引張速度20mm/分の条件で引張り試験を行い、引張り強度を測定した。測定は、MD方向とTD方向それぞれの方向について5サンプル測定し、その平均値を算出し、大きい方の値を表1に記載した。
【0067】
[成型性評価]
各例で得られた外装材の成型性は、150mm×190mmのブランク形状に切り取り、成型深さを変化させながら冷間成型し、成型性を評価した。パンチとしては、形状が100mm×150mm、パンチコーナーR(RCP)が1.5mm、パンチ肩R(RP)が0.75mm、ダイ肩R(RD)が0.75mmのものを使用した。評価は、以下の基準に従って行った。
「○」:破断、クラック、ピンホールが生じずに7mm以上の成型深さで深絞り成型が可能であった。
「△」:5mm以上7mm未満の成型深さでは、破断、クラック、ピンホールが生じずに成型が可能であった。
「×」:成型深さ5mm未満の深絞り成型で破断、クラック、ピンホールが生じた。
【0068】
各例の評価結果を表1に示す。なお、表1における略号は以下の意味を示す。
A8079−O:300℃、4日間焼鈍処理した軟質アルミニウム箔(O材)8079材(厚さ40μm)。
A8021−O:300℃、4日間焼鈍処理した軟質アルミニウム箔(O材)8021材(厚さ40μm)。
A5052−H14:硬度をH14に調質したアルミニウム箔5052材(厚さ40μm)。
A−1:水溶性アクリル樹脂(日本触媒製:アクリセットARL−453)。
A−2:変性ポリプロピレン系ディスパージョン(三井化学製:ユニストールR−300)。
A−3:シラン系カップリング剤(信越シリコーン製:KBM−403)。
A−4:チタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ製:プレアクトKR41B)。
構成1:外層/成型向上層/バリア層/腐食防止処理層/接着層(X)/内層(
図1)。
構成2:外層/接着層(Y)/成型向上層/バリア層/腐食防止処理層/接着層(X)/内層(
図2)。
構成3:外層/成型向上層/接着層(Y)/バリア層/腐食防止処理層/接着層(X)/内層(
図3)。
構成4:外層/成型向上層/接着層(Y)/成型向上層/バリア層/腐食防止処理層/接着層(X)/内層(
図4)。
構成5:外層/接着層(Y)/腐食防止処理層/バリア層/腐食防止処理層/接着層(X)/内層。
構成6:外層/接着層(Y)/バリア層/腐食防止処理層/接着層(X)/内層。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示すように、本発明の電池用外装材である実施例1〜10は、優れた成型性を有していた。
一方、成型向上層12を設けなかった比較例1、2の外装材は、実施例1〜10の外装材に比べて成型性が劣っていた。
さらに、成型向上層を設けず、引張り強度が本発明における規定範囲を超えている比較例3の外装材は、実施例1〜10の外装材に比べて大幅に成型性が劣っていた。