【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、容器内に、内部にガスを流動させることができる多孔質収着体を充填して構成されるガス収着回収装置であって、上記多孔質収着体の
少なくとも表面に、上記ガスが流動させられる連続気孔を有する多孔質発熱体が
設けられており、上記多孔質発熱体は、発熱性を有する外殻と、中空又は/及び導電性を有する芯部とを有する骨格を備え、上記骨格が一体的に連続する3次元網目構造を構成しているとともに、上記外殻が、Niを70〜95%と、Crを5〜30%とを含む合金から形成されており、上記多孔質発熱体を発熱させることにより、
上記多孔質収着体に流入する直前の脱着用キャリヤガスを加熱して、上記多孔質収着体に収着されたガスを脱着して回収できるように構成されている。
【0010】
本願発明に係るガス収着回収装置は、多孔質収着体の
少なくとも表面に、多孔質発熱体が設けられている。上記構成によって、上記多孔質収着体や脱着用に流動させられるキャリヤガスを容器内で直接加熱することができる。このため、収着されたガスを脱着させる際のエネルギ効率が高い。
【0011】
一方、上記多孔質発熱体は、収着対象となるガスを流動させることができる連続気孔を有する多孔質体から形成されている。このため、多孔質発熱体を多孔質収着体の表面や内部に設けても、上記多孔質発熱体が収着ガスの流動を妨げることがなく、大量のガスを容器内で流動させて収着処理及び脱着処理することが可能となる。
【0012】
また、上記多孔質発熱体へ作用させる電力量を制御することにより、多孔質収着体及び流動するキャリヤガスを所要の温度に加熱することができる。このため、収着体に収着されたガスを確実に脱着させることが可能となる。また、高沸点のガスを容易に脱着させることもできる。
【0013】
さらに、脱着用のキャリヤガスを別途加熱するための加熱装置を設ける必要がないため、装置を小型化することができる。また、多孔質収着剤を繰り返し使用できるため、ランニングコストを低く抑えることも可能となる。
【0014】
上記多孔質発熱体を設ける位置は、特に限定されることはない。
少なくとも多孔質収着体の表面に設けて、多孔質収着体に流入する直前の
キャリヤガスを加熱するように構成する
のが好ましい。また、多孔質収着体の内部に設けて、多孔質収着体自体を加熱するように構成することもできる。
【0015】
ガスが流動させられる複数の領域に上記多孔質収着体及び上記多孔質発熱体をそれぞれ設けるとともに、選択した領域にガスを流動させて多孔質収着体に収着させる
一方、選択した領域の多孔質発熱体を発熱させて、多孔質収着体に収着されたガスを脱着して回収できるように構成することができる。
【0016】
上記構成を採用することにより、大量のガスを連続して処理することが可能となる。たとえば、上記複数の領域に順次収着させるガスを流動させて多孔質収着体に収着させる一方、ガスが収着された領域の多孔質収着体を順次加熱してガスを脱着することにより、ガス収着回収装置を連続して運転することが可能となる。
【0017】
上記領域を設ける手法は特に限定されることはない。たとえば、一の容器内を複数の領域に区画して、各区画内に多孔質収着体と多孔質発熱体とをそれぞれ収容し、上記領域に順次収着ガスを流動させるとともに、順次脱着させるように構成することができる。
【0018】
また
、上記各領域を、独立した容器を備えて構成するとともに、上記各容器に収着ガスを順次流動させて収着させるとともに、ガスを収着した多孔質収着体を順次加熱してガスを脱着させて回収することもできる。
【0019】
ガス収着作用を発揮できるものであれば、上記多孔質収着体を構成する材料は限定されることはなく、また、収着するガスの種類に応じて選定することができる。たとえば、活性炭やゼオライト等を採用することができる。また、収着ガスを所要の流速で流動させることができれば、形態も限定されることはない。たとえば、一体的に成形されたブロック状の多孔質体から構成される収着体を採用することができる。また、粒状の収着剤を集合させて多孔質収着体を構成することもできる。
【0020】
上記多孔質発熱体が、ガスの流動方向に対して直交する面に沿って設けられた板状に形成されているとともに、上記多孔質収着体をガスの流動方向に配列される複数の層に分割するように設けられており、選択した発熱体を発熱させることにより、所定の層の多孔質収着体に収着されたガスを脱着できるように構成
することができる。
【0021】
上記多孔質収着体に収着されたガスを一度に脱着すると、次の工程において脱着されたガスを処理できない場合がある。たとえば、ガス分解装置等によってガスを処理する場合、ガス分解装置における処理能力に対応してガスの脱着量をコントロールするのが好ましい。
【0022】
多孔質収着体の複数の層に分割して設け、各層のガスを順次脱着することにより、脱着されるガスの量をコントロールすることが可能となる。この構成を採用することにより、ガス処理装置の能力等に応じてガスを脱着することが可能となる。
【0023】
また、上記多孔質収着体を、表面に収着剤層を設けた粒状収着剤の集合体から構成するのが好ましい。たとえば、粒状の活性アルミナの表面に、ゼオライトをコーティングして粒状収着剤を形成し、この粒状収着剤を所要の密度で集合させて多孔質収着体を構成することができる。
【0024】
この場合、収着ガスが流動する際の圧力損失が大きくならないように、たとえば、直径2mm以上のアルミナ球体を採用し、気孔率が26%〜32%となるように充填するのが好ましい。なお、異なる粒度を有する粒状収着剤を集合させて所要の気孔率を有する多孔質収着体を構成できる。また、2種以上の異なる収着剤を担持させた複数の粒状収着剤を配合して集合させた多孔質収着体を採用することもできる。
【0025】
球状等の粒状収着剤を集合させた多孔質収着体の形態は不定形である。このため、これを容器に充填して多孔質収着体を構成する場合、これら粒状収着剤を所定形状に保持するための保持手段を設けるのが好ましい。
粒状の収着剤を集合させて多孔質収着体を構成する場合、上記多孔質発熱体を、上記粒状収着剤を保持する保持手段として用い
ることができる。
【0026】
たとえば、板状あるいはシート状の多孔質発熱体を採用するとともに、粒状収着剤から構成される多孔質収着体の外周部に配置することにより、多孔質収着体を所定の形態に保持することができる。これにより、他の部材から形成された保持手段を設ける必要がなくなり、部品点数を削減できるとともに製造コストを低減させることもできる。
【0027】
上記多孔質発熱体
として、発熱性を有する外殻と、中空又は/及び導電性を有する芯部とを有する骨格を備え、上記骨格が一体的に連続する3次元網目構造を構成するものを採用することができる。
【0028】
上記多孔質発熱体の骨格を3次元網目構造に形成することにより、気孔率をきわめて大きく設定することができる。これにより、気孔内におけるガスの流動抵抗が小さくなり、大量のガスを流動させることが可能となる。
【0029】
また、上記骨格は、一体的に連続するように形成されている。このため、繊維状の発熱体を集合させて構成される多孔質発熱体のように、隣接する各繊維間の接触抵抗が生じることがなく、多孔質発熱体内各部における電気抵抗が大きく変化することはない。したがって、多孔質発熱体内の電流の流れに偏在が生じることが少なく、多孔質発熱体の全体を均一に加熱することが可能となる。
【0030】
上記骨格を形成する手法は特に限定されることはない。たとえば、上記骨格を、3次元網目状樹脂の表面にめっき層又は金属コーティング層を設けるとともに、上記樹脂を消失させることにより形成することができる。上記骨格の外殻を金属めっき層又は金属コーティング層から形成することにより、骨格の厚みを非常に薄くかつ均一に設定することが可能となる。これにより、大きな気孔率を備える多孔質発熱体を形成することが可能となる。
【0031】
上記芯部は、製造方法に応じて、中空又は/及び導電性材料から構成される。たとえば、上述したように、上記骨格を、3次元網目状樹脂の表面にめっき層を設けるとともに、上記樹脂を消失させることにより形成する場合、上記樹脂が消失した部分が中空状となる。また、上記メッキ層を設けるために上記3次元網目状樹脂の表面に導電性材料をコーティング等して導電化処理を施した場合には、上記導電性材料からなる表面導電化層が中空芯部の内周面に残存する場合がある。さらに、メッキ処理の後に熱処理等を施した場合は、外殻が収縮して、中空部分がなくなる場合もある。
【0032】
上記多孔質発熱体における上記3次元網目構造は、上記骨格を構成する複数の枝部が結節部に集合して一体的に連続しているとともに、一の結節部に集合する上記各枝部の外殻の厚みがほぼ一定となるように構成するのが好ましい。上記結節部では各骨格(枝部)からの電流が集中するため、一の結節部に集合する各枝部の電気抵抗が異なると、結節部周りの一部の枝部に過大な電流が流れて温度が上昇し、骨格が溶断したり劣化する恐れがある。一の結節部に集合する枝部の外殻の厚みをほぼ一定に設定することにより、一の結節部に集合する各骨格の電気抵抗をほぼ一定にすることが可能となり、一部の骨格に過大な電流が流れることもなくなる。これにより、骨格の溶断や劣化を防止することが可能となる。
【0033】
外殻をめっき層等から形成すると、一の結節部に集合する骨格の外殻の厚みをほぼ一定に形成することが可能となる。これにより、結節部周りの外殻の電気抵抗のばらつきが小さくなり、多孔質発熱体の全域に、均一に電流を流すことができる。
【0034】
上記外殻
は、Niを70〜95%と、Crを5〜30%とを含む合金から形成
することができる。上記範囲の配合量に設定することにより、上記多孔質発熱体を効率よく発熱させることができる。なお、上記NiとCrの配合比を保持した状態で他の成分が配合されてもよい。
【0035】
上記多孔質発熱体を、Niを主成分とする金属多孔質体に、Crを拡散させることにより合金化して構成することができる。Ni−Cr合金から、直接所要の気孔率を有する多孔質体を形成するのは困難な場合がある。たとえば、Ni−Cr合金のめっき層を直接形成するのは困難である。
【0036】
このため、まず、Niから多孔質体を形成し、この多孔質体を構成するNiの表面から、Crを拡散させて発熱体として機能するNi−Cr合金層を形成することができる。
【0037】
Niは、めっき処理しやすいため、上記骨格を容易に形成することができる。また、骨格の厚みや気孔率の異なる種々の金属多孔質体を容易に構成できる。そして、このNi多孔質体をCr合金化することによって、所要の電熱特性を備える種々の発熱体を構成できる。
【0038】
上記Ni多孔質体を、Cr合金化する手法は特に限定されることはない。たとえば、上記Ni多孔質体を、Cr源粉末の加熱により発生させた拡散浸透成分ガスと還元性希釈ガスとの混合ガス中で熱処理することにより、Ni多孔質体をNi−Cr合金とすることができる。
【0039】
また、Niによって形成された第1の外殻に、Crで形成された第2の外殻を積層形成し、所定の熱処理を行うことにより、上記第1の外殻と上記第2の外殻とを互いに拡散させて合金化し、上記多孔質発熱体とすることもできる。
【0040】
本願発明に係るガス収着回収方法は、容器内に、内部にガスを流動させることができる多孔質収着体を充填して構成されるガス収着回収装置を用いて行われる。 上記多孔質収着体の少なくとも表面には、上記ガスが流動させられる連続気孔を有する多孔質発熱体が設けられている。上記多孔質発熱体は、発熱性を有する外殻と、中空又は/及び導電性を有する芯部とを有する骨格を備える。また、上記多孔質発熱体は、発熱性を有する外殻と、中空又は/及び導電性を有する芯部とを有する骨格を備え、上記骨格が一体的に連続する3次元網目構造を構成しているとともに、上記外殻が、Niを70〜95%と、Crを5〜30%とを含む合金から形成されている。本願発明に係るガス収着回収方法は、上記多孔質収着体内にガスを流動させて収着させるガス収着工程と、上記多孔質発熱体を発熱させることにより、
上記多孔質収着体に流入する直前の脱着用キャリヤガスを加熱して、上記多孔質収着体内に収着されたガスを脱着
させるガス脱着工程とを含んで構成される
。
【0041】
また、上記多孔質収着体及び上記多孔質発熱体をそれぞれ設けた複数の領域を設定したガス収着回収装置
を用いてガス収着回収方法を行うこともできる。この場合、ガス収着回収方法は、選択した領域の多孔質収着体にガスを収着させる工程と、選択した領域の多孔質発熱体を発熱させることにより上記多孔質収着体に収着されたガスを脱着するガス脱着工程とを含んで構成され
る。