(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757223
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/12 20060101AFI20150709BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20150709BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20150709BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20150709BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20150709BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20150709BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20150709BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
H01L29/78 652T
H01L29/80 V
H01L29/78 652F
H01L29/78 658G
H01L29/78 652H
H01L29/78 656D
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-264332(P2011-264332)
(22)【出願日】2011年12月2日
(65)【公開番号】特開2013-118245(P2013-118245A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】増田 健良
【審査官】
棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−186925(JP,A)
【文献】
特開2008−172007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/12
H01L 21/336
H01L 21/337
H01L 21/338
H01L 27/088
H01L 29/78
H01L 29/808
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面および前記第1の面と反対の第2の面を有する炭化珪素基板を有する炭化珪素半導体装置であって、
第1の導電型を有し、前記炭化珪素基板に含まれ、前記第1の面をなす第1の領域と、
前記第1の導電型と異なる第2の導電型を有し、前記炭化珪素基板に含まれ、前記第1の領域上に設けられた第2の領域とを備え、前記第2の領域は、前記第2の面をなす第1の部分と前記第2の面から離れている第2の部分とを含み、前記第2の領域には前記第1の領域を露出する複数の貫通孔が設けられており、さらに
前記第1の導電型を有し、前記炭化珪素基板に含まれ、前記第2の面において前記第2の領域の前記第1の部分と接する接触部と、前記第2の面をなし前記接触部から前記第2の領域の前記複数の貫通孔の各々へと延びる接続部と、前記第2の領域の前記複数の貫通孔の各々を充填する充填部とを含む第3の領域と、
前記第1の導電型を有し、前記炭化珪素基板に含まれ、前記第2の領域の前記第1の部分上に設けられ、前記第2の領域の前記第1の部分によって前記第1の領域および前記第3の領域の各々から隔てられ、前記第2の面をなす第4の領域と、
前記第2の領域の前記第1の部分のうち前記第3の領域の前記接触部と前記第4の領域との間の部分の上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極と電気的に絶縁され、かつ前記第2の領域の前記第1の部分および前記第4の領域の各々に接する第1の電極と、
前記第1の領域がなす前記第1の面に接する第2の電極とを備える、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第1の領域は、前記第3の領域の不純物濃度に比して小さい不純物濃度を有するドリフト層を含む、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第1の領域は、前記第2の電極と接しかつ前記第3の領域の不純物濃度に比して大きい不純物濃度を有するベース層を含む、請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第2の面は、前記第2の領域の前記前記第1の部分がなす側壁面を含む逆メサ形状を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第1の部分がなす前記第2の面は、六方晶系の結晶構造における{0−33−8}面および{0−11−4}面のいずれか一方を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記第3の領域の前記接続部は、前記第3の領域の前記充填部の不純物濃度に比して大きい不純物濃度を有する低抵抗層を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
第1の導電型を有し、第1の面と前記第1の面と反対の面とを有する第1の領域を準備する工程と、
前記第1の領域の前記第1の面と反対の面上に、前記第1の導電型と異なる第2の導電型を有する第2の領域を形成する工程を備え、前記第2の領域は、第1の部分および第2の部分を含み、前記第2の領域には前記第1の領域を露出する複数の貫通孔が設けられており、さらに
前記第1の導電型を有し、前記複数の貫通孔の各々を充填するように前記第2の領域を覆う第3の領域を形成する工程と、
前記第2の領域の前記第2の部分が前記第3の領域によって覆われた状態が保たれつつ前記第2の領域の前記第1の部分が露出されるように、かつ前記第2の領域および前記第3の領域がなす表面が、前記第2の領域の前記第1の部分がなす側壁面を含む逆メサ形状をなすように、前記第2の領域および前記第3の領域を部分的にエッチングする工程と、
前記エッチングする工程の後に、前記第2の領域の前記第1の部分上に、前記第1の導電型を有し、前記第2の領域の前記第1の部分によって前記第1の領域および前記第3の領域の各々から隔てられた第4の領域を形成する工程と、
前記逆メサ形状の前記側壁面をなす前記第2の領域の前記第1の部分の上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極と電気的に絶縁され、かつ前記第2の領域の前記第1の部分および前記第4の領域の各々に接する第1の電極を形成する工程と、
前記第1の領域の前記第1の面上に第2の電極を形成する工程とを備える、炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記エッチングする工程は熱エッチングによって行われる、請求項7に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は炭化珪素半導体装置およびその製造方法に関し、特にゲート電極を有する炭化珪素半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Y. Tanaka et al., ”700−V 1.0−mΩ・cm
2 Buried Gate SiC−SIT (SiC−BGSIT)”, IEEE Electron Device Letters, Vol. 27, No. 11 (2006), pp. 908−910(非特許文献1)によれば、静電誘導トランジスタ(Static Induction Transistor:SIT)、すなわち接合型電界効果トランジスタ(Junction Field Effect Transistor:JFET)が開示されている。このJFETはSiC(炭化珪素)を用いておりかつ縦型であり、本文献によれば、非常に低いオン抵抗が得られるとされている。またこの文献によれば設計の最適化によってノーマリオフ型SITを実現できる可能性があると言及されているものの、開示されているのはノーマリオン型のものである。電力用半導体においては一般に、たとえば安全性の観点により、ノーマリオフ型の動作が望まれる場合がある。
【0003】
F. Bjoerk et al., ”1200V SiC JFET in Cascode Light Configuration: Comparison versus Si and SiC Based Switches”, Materials Science Forum, Vols. 679−680 (2011), pp. 587−590(非特許文献2)によれば、SiMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いてSiCJFETをノーマリオフ型のように動作させることについて開示されている。具体的には、SiCJFETとSiMOSFETとがカスコード接続された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Y. Tanaka et al., ”700−V 1.0−mΩ・cm2 Buried Gate SiC−SIT (SiC−BGSIT)”, IEEE Electron Device Letters, Vol. 27, No. 11 (2006), pp. 908−910
【非特許文献2】F. Bjoerk et al., ”1200V SiC JFET in Cascode Light Configuration: Comparison versus Si and SiC Based Switches”, Materials Science Forum, Vols. 679−680 (2011), pp. 587−590
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1の技術においては、ノーマリオフ型の動作が実現されていなかった。非特許文献2の技術は、JFETチップとMOSFETチップとを個別に形成した後に、これら複数の部品を互いに接続する作業を必要とした。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、ワンチップとして構成され、かつ低いオン抵抗特性とノーマリオフ特性とを共に有する炭化珪素半導体装置、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の炭化珪素半導体装置は、第1の面および第1の面と反対の第2の面を有する炭化珪素基板を有する炭化珪素半導体装置であって、炭化珪素基板に含まれる第1〜第4の領域と、ゲート絶縁膜と、ゲート電極と、第1および第2の電極とを含む。第1の領域は、第1の導電型を有し、第1の面をなしている。第2の領域は、第1の導電型と異なる第2の導電型を有し、第1の領域上に設けられている。第2の領域は、第2の面をなす第1の部分と第2の面から離れている第2の部分とを含む。第2の領域には、第1の領域を露出する複数の貫通孔が設けられている。第3の領域は、第1の導電型を有し、接触部と接続部と充填部とを含む。接触部は、第2の面において第2の領域の第1の部分と接している。接続部は、第2の面をなしており、接触部から第2の領域の複数の貫通孔の各々へと延びている。充填部は第2の領域の複数の貫通孔の各々を充填している。第4の領域は、第1の導電型を有し、第2の領域の第1の部分上に設けられており、第2の領域の第1の部分によって第1の領域および第3の領域の各々から隔てられており、第2の面をなしている。ゲート絶縁膜は、第2の領域の第1の部分のうち第3の領域の接触部と第4の領域との間の部分の上に設けられている。ゲート電極はゲート絶縁膜上に設けられている。第1の電極は、ゲート電極と電気的に絶縁されており、かつ第2の領域の第1の部分および第4の領域の各々に接している。第2の電極は、第1の領域がなす第1の面に接している。
【0008】
上記装置によれば、半導体装置を、一の炭化珪素基板を用いることでワンチップとして構成することができる。また、低いオン抵抗特性とノーマリオフ特性とが共に得られる。
【0009】
上記装置において好ましくは、第1の領域は、第3の領域の不純物濃度に比して小さい不純物濃度を有するドリフト層を含んでもよい。これにより耐圧を高めることができる。
【0010】
上記装置において好ましくは、第1の領域は、第2の電極と接しかつ第3の領域の不純物濃度に比して大きい不純物濃度を有するベース層を含んでもよい。これにより第1の領域と第1の電極とのコンタクト抵抗を小さくすることができる。
【0011】
上記装置において好ましくは、第2の面は、第2の領域の第1の部分がなす側壁面を含む逆メサ形状を有してもよい。これにより、側壁面の傾斜を選択することで、第2の領域の第1の部分がなす第2の面の方位を調整することができる。
【0012】
上記装置において好ましくは、第1の部分がなす第2の面は、六方晶系の結晶構造における{0−33−8}面および{0−11−4}面のいずれか一方を含んでもよい。これにより、第1の部分がなす第2の面に沿ったキャリア移動度が高められる。よって半導体装置のオン抵抗を小さくすることができる。
【0013】
上記装置において好ましくは、第3の領域の接続部は、第3の領域の充填部の不純物濃度に比して大きい不純物濃度を有する低抵抗層を含んでもよい。これにより接続部の電気抵抗が小さくなる。よって半導体装置のオン抵抗をより小さくすることができる。
【0014】
本発明の炭化珪素半導体装置の製造方法は次の工程を有する。第1の導電型を有し、第1の面と第1の面と反対の面とを有する第1の領域が準備される。第1の領域の第1の面と反対の面上に、第1の導電型と異なる第2の導電型を有する第2の領域が形成される。第2の領域は、第1の部分および第2の部分を含み、第2の領域には第1の領域を露出する複数の貫通孔が設けられている。第1の導電型を有し、複数の貫通孔の各々を充填するように第2の領域を覆う第3の領域が形成される。第2の領域の第2の部分が第3の領域によって覆われた状態が保たれつつ第2の領域の第1の部分が露出されるように、かつ第2の領域および第3の領域がなす表面が、第2の領域の第1の部分がなす側壁面を含む逆メサ形状をなすように、第2の領域および第3の領域が部分的にエッチングされる。エッチングする工程の後に、第2の領域の第1の部分上に、第1の導電型を有し、第2の領域の第1の部分によって第1の領域および第3の領域の各々から隔てられた第4の領域が形成される。逆メサ形状の側壁面をなす第2の領域の第1の部分の上にゲート絶縁膜が形成される。ゲート絶縁膜上にゲート電極が形成される。ゲート電極と電気的に絶縁され、かつ第2の領域の第1の部分および第4の領域の各々に接する第1の電極が形成される。第1の領域の第1の面上に第2の電極が形成される。
【0015】
上記製造方法によれば、半導体装置を、一の炭化珪素基板を用いることでワンチップとして構成することができる。また、低いオン抵抗特性とノーマリオフ特性とが共に得られる。
【0016】
上記製造方法において好ましくは、エッチングする工程は熱エッチングによって行われてもよい。これにより、第2の領域の第1の部分からなる平滑な面を露出させることができる。よってこの面上に形成されるゲート絶縁膜の信頼性が高められる。よって、炭化珪素半導体装置のうち絶縁ゲートによってスイッチングされる部分の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
上述したように本発明によれば、半導体装置を、一の炭化珪素基板を用いることでワンチップとして構成することができる。また、低いオン抵抗特性とノーマリオフ特性とが共に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図1の炭化珪素半導体装置が有する炭化珪素基板の構成を概略的に示す平面図である。
【
図3】
図1の線III−IIIに沿う概略断面図である。
【
図5】
図1の炭化珪素半導体装置のオン状態における電流経路を示す図である。
【
図6】
図1の炭化珪素半導体装置の等価回路を概略的に示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第1工程を概略的に示す断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第2工程を概略的に示す断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第3工程を概略的に示す断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第4工程を概略的に示す断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第5工程を概略的に示す断面図である。
【
図12】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第6工程を概略的に示す断面図である。
【
図13】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第7工程を概略的に示す断面図である。
【
図14】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第8工程を概略的に示す断面図である。
【
図15】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第9工程を概略的に示す断面図である。
【
図16】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第10工程を概略的に示す断面図である。
【
図17】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第11工程を概略的に示す断面図である。
【
図18】本発明の実施の形態2にける炭化珪素半導体装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図19】本発明の実施の形態2における炭化珪素半導体装置の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。また、本明細書中の結晶学的記載においては、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また、面の指数が負であることを示す際に、数字の上に”−”(バー)を付す代わりに、数字の前に負の符号を付けている。また角度の記載には、全方位角を360度とする系を用いている。
【0020】
(実施の形態1)
図1に示すように、本実施の形態のスイッチング装置101(炭化珪素半導体装置)は、エピタキシャル基板SC(炭化珪素基板)と、ゲート絶縁膜20と、ゲート電極21と、層間絶縁膜30と、ソース電極31(第1の電極)と、ソース配線32と、ドレイン電極41(第2の電極)とを含む。
【0021】
エピタキシャル基板SCは炭化珪素からなる。エピタキシャル基板SCの結晶構造は、本実施の形態においては六方晶系であり、好ましくはポリタイプ4Hを有する。またエピタキシャル基板SCは、第1の領域10、第2の領域13、第3の領域14および第4の領域15を含む。またエピタキシャル基板SCは、裏面P1(第1の面)および上面P2(第1の面と反対の第2の面)を有する。裏面P1は平坦な形状を有する。上面P2は、窪み面BSと側壁面SLと頂面PLとを有する逆メサ形状(
図2)をなしている。窪み面BSおよび頂面PLは裏面P1に平行であり、側壁面SLは裏面P1に対して傾いている。
【0022】
図2に示すように、本実施の形態の逆メサ構造の窪み面BSは、六角形状の外縁を有し、たとえば正六角形状の外縁を有する。またこの六角形状の外縁が有する6つの辺のそれぞれにつながるように、6つの側壁面SLが設けられている。このような逆メサ構造が用いられることにより、6回対称性を有する六方晶系の結晶構造を有する炭化珪素が用いられた場合において、窪み面BSを取り囲む側壁面SL全体の面方位を結晶学的に互いに等価なものとすることができる。
【0023】
第1の領域10はn型(第1の導電型)を有する。また第1の領域10はエピタキシャル基板SCの裏面P1をなしている。また第1の領域は、裏面P1をなしている単結晶基板11(ベース層)と、その上に設けられたドリフト層12とを有する。単結晶基板11は、第3の領域14の不純物濃度に比して大きい不純物濃度を有する。単結晶基板11の、裏面P1と反対の面PSは、面方位{000−1}を有することが好ましく、面方位(000−1)を有することがより好ましい。ドリフト層12は、第3の領域14の不純物濃度に比して小さい不純物濃度を有する。単結晶基板11の不純物濃度は、たとえば5×10
18/cm
3である。ドリフト層12の不純物濃度は、たとえば1×10
16/cm
3である。
【0024】
第2の領域13はp型(第1の導電型と異なる第2の導電型)を有する。また第2の領域13は第1の領域10上に設けられている。また第2の領域13には第1の領域10を露出する複数の貫通孔が設けられており、第2の領域13は、露出部13a(第1の部分)と埋込ゲート部13b(第2の部分)と連結部13Wとを含む(
図3および
図4参照)。露出部13aは、エピタキシャル基板SCの上面P2の窪み面BSおよび側壁面SLの各々を部分的になしている。埋込ゲート部13bは、上面P2から離れており、言い換えれば、上面P2に対してエピタキシャル基板SCの内部に埋め込まれている。連結部13Wは露出部13aおよび埋込ゲート部13bの間をつないでいる。第2の領域13の不純物濃度は、たとえば5×10
17/cm
3である。
【0025】
露出部13aがなす上面P2は、六方晶系の結晶構造における{0−33−8}面および{0−11−4}面のいずれか一方を含むことが好ましく、(0−33−8)面および(0−11−4)面のいずれか一方を含むことがより好ましい。ここで、露出部13aがなす上面P2が{0−33−8}面を含む、という場合、露出部13aがなす上面P2が、微細な{0−33−8}面と微細な他の面とによる複合面であってもよい。この複合面は巨視的に見た場合、{0−11−2}面であることが好ましく、(0−11−2)面であることがより好ましい。
【0026】
好ましくは、平面視において、
図4に示すように、露出部13aは、六角形状の外縁を有し、たとえば正六角形状の外縁を有する。また露出部13aを、六角形状に延びる埋込ゲート部13bが多重に取り囲んでいる。また露出部13aから放射状に延びる連結部13Wが、これらの構造を互いに連結している。
【0027】
第3の領域14はn型を有する。また第3の領域14は接触部14Mと接続部14Wと充填部14Ja、14Jbとを含む。接触部14Mは、エピタキシャル基板SCの上面P2の側壁面SLを部分的になしており、上面P2の側壁面SLにおいて第2の領域13の露出部13aと接している。接続部14Wは、上面P2を部分的になしており、また上面P2の頂面PLをなしている。また接続部14Wは接触部14Mから第2の領域13の複数の貫通孔の各々へと延びている。充填部14Jaおよび14Jbは、第2の領域13の複数の貫通孔の各々を充填している。充填部14Jaは露出部13aと埋込ゲート部13bとの間に設けられた貫通孔を充填しており、充填部14Jbは、埋込ゲート部13b間に設けられた貫通孔を充填している。第3の領域14の不純物濃度は、たとえば1×10
17/cm
3である。
【0028】
第4の領域15はn型を有する。また第4の領域15は、第2の領域13の露出部13a上に設けられており、第2の領域13の露出部13aによって第1の領域10および第3の領域14の各々から隔てられている。また第4の領域15は、上面P2を部分的になしており、より具体的には上面P2の窪み面BSを部分的になしている。
【0029】
ゲート絶縁膜20は、第2の領域13の露出部13aのうち第3の領域14の接触部14Mと第4の領域15との間の部分の上に設けられている。ゲート絶縁膜20は、たとえば酸化珪素からなる。ゲート電極21はゲート絶縁膜20上に設けられている。層間絶縁膜30はゲート電極21を覆っており、またエピタキシャル基板SCの上面P2の窪み面BS上にコンタクトホールCHを有する。コンタクトホールCHは、第2の領域13の露出部13aと第4の領域15との各々を露出している。ソース電極31は、コンタクトホールCHにおいて第2の領域13の露出部13aおよび第4の領域15の各々に接しているオーミック電極である。ソース電極31はゲート電極21と電気的に絶縁されている。ソース配線32は、ソース電極31に接しており、またゲート電極21とは層間絶縁膜30によって絶縁されている。ドレイン電極41は、第1の領域10の単結晶基板11がなしている裏面P1に接しているオーミック電極である。
【0030】
次にスイッチング装置101の動作について説明する。
図5に示すように、スイッチング装置101はMOS部MSとJFET部JTとを有する。MOS部MSは、露出部13aがなす側壁面SLをチャネル面とするキャリアの流れをゲート電極21の電位によって制御可能なMOS構造である。JFET部JTは、充填部14Jbをチャネルとするキャリアの流れを埋込ゲート部13bの電位によって制御可能なJFET構造である。本実施の形態においては露出部13aと埋込ゲート部13bとの間の充填部14JaもJFET部JTのチャネルとして機能し得る。これらMOS部MSおよびJFET部JTは、
図6に示すカスコード回路と等価な構造をなしている。これによりスイッチング装置101は、
図5中の矢印に示すような電流の流れをゲート電極21の電位によって高速スイッチング可能であり、かつ低いオン抵抗を有する。
【0031】
次にスイッチング装置101の製造方法について説明する。
図7を参照して、n型の炭化珪素のエピタキシャル成長によって、n型の単結晶基板11の面PS上にドリフト層12が形成される。これにより、n型を有し、裏面P1と裏面P1と反対の面とを有する第1の領域10が準備される。次に第1の領域10の裏面P1と反対の面上に、p型の炭化珪素のエピタキシャル成長によって第2の領域13が形成される。炭化珪素のエピタキシャル成長は、たとえば化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)によって行い得る。
【0032】
図8を参照して、第2の領域13がパターニングされることによって、露出部13a、埋込ゲート部13b、および連結部13W(
図8において図示せず。
図4参照。)を含み、第1の領域10を露出する複数の貫通孔が設けられた第2の領域13が形成される。このパターニングは、たとえばフォトリソグラフィおよび反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)により行い得る。
【0033】
図9を参照して、n型の炭化珪素のエピタキシャル成長によって、上記貫通孔の各々を充填するように、第2の領域13を覆う第3の領域14が形成される。これにより上面P2を有するエピタキシャル基板SCが形成される。
【0034】
図10を参照して、上面P2のうち頂面PL(
図1)となる部分を覆うように、第3の領域14上にマスク層90が形成される。マスク層90は、たとえば酸化珪素からなる。酸化珪素が用いられると、エピタキシャル基板SCに対するエッチング選択比を極めて大きくすることができる。
【0035】
図11を参照して、第2の領域13および第3の領域14が部分的にエッチングされる。このエッチングは、第2の領域13の埋込ゲート部13bが第3の領域14によって覆われた状態が保たれつつ第2の領域13の露出部13aが露出されるように行われる。またこのエッチングは、第2の領域13および第3の領域14がなす表面が、露出部13aがなす側壁面SLを含む逆メサ形状をなすように行われる。このエッチングにより、窪み面BSと側壁面SLと頂面PLとを有する上面P2が形成される。
【0036】
このエッチングは本実施の形態においては熱エッチングによって行われる。ここで熱エッチングとは、エッチングされる対象を高温下でエッチングガスにさらすことによって行われるものであり、物理的エッチング作用を実質的に有しないものである。熱エッチングを用いることによって、{0−33−8}面または{0−11−4}面を含む側壁面SLを自己形成することができる。
【0037】
本実施の形態における熱エッチングのプロセスガスはハロゲン原子を含む。より好ましくはハロゲン原子は塩素原子であり、この場合、プロセスガスは、たとえばCl
2ガスを含む。塩素原子に代わってまたは塩素原子とともに、プロセスガスはフッ素原子を含んでもよく、この場合プロセスガスは、たとえば四フッ化炭素または六フッ化硫黄を含む。好ましくは、プロセスガスは、ハロゲン元素を含有するガスに加えてさらに、酸素原子を含有するガスを含む。酸素原子を含有するガスは、たとえばO
2ガスである。なお、プロセスガスはキャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、たとえば窒素(N
2)ガス、アルゴンガス、またはヘリウムガスを用いることができる。
【0038】
熱エッチングの熱処理温度は、好ましくは700℃以上1200℃以下である。この温度の下限は、より好ましくは800℃、さらに好ましくは900℃である。またこの温度の上限は、より好ましくは1100℃、さらに好ましくは1000℃である。この場合、エッチング速度を十分実用的な値とすることができる。熱処理温度を700℃以上1000℃以下とした場合、SiCのエッチング速度はたとえば70μm/hr程度になる。
【0039】
さらに
図12を参照して、上記のマスク層90が除去される。また第2の領域13の露出部13a上に、n型を有し、第2の領域13の露出部13aによって第1の領域10および第3の領域14の各々から隔てられた第4の領域15が形成される。第4の領域15の形成は、たとえばイオン注入法によって行い得る。
【0040】
図13を参照して、上面P2上にゲート絶縁膜20が形成される。この形成は、たとえば上面P2の熱酸化による熱酸化膜の形成によって行い得る。この結果、側壁面SLをなす露出部13aの上にゲート絶縁膜20が形成される。次にゲート絶縁膜20上にゲート電極21が形成される。
【0041】
図14を参照して、ゲート電極21がパターニングされる。これによりゲート絶縁膜20の一部が露出される。
【0042】
図15を参照して、露出されたゲート絶縁膜およびゲート電極21の上に層間絶縁膜30が形成される。
【0043】
図16を参照して、窪み面BSをなす露出部13aおよび第4の領域15の各々が露出されるように、層間絶縁膜30およびゲート絶縁膜20を貫通するコンタクトホールCHが形成される。
【0044】
図17を参照して、コンタクトホールCHによって露出された上面P2の窪み面BS上にソース電極が形成される。これにより、ゲート電極21と電気的に絶縁され、かつ露出部13aおよび第4の領域15の各々に接するソース電極31が形成される。またソース配線32が形成される。
【0045】
再び
図1を参照して、第1の領域10の裏面P1上にドレイン電極41が形成されることで、スイッチング装置101が得られる。
【0046】
本実施の形態によれば、スイッチング装置101を、一のエピタキシャル基板SCを用いることでワンチップとして構成することができる。また、低いオン抵抗特性とノーマリオフ特性とが共に得られる。
【0047】
また第1の領域10は、第3の領域14の不純物濃度に比して小さい不純物濃度を有するドリフト層12を含む。これによりスイッチング装置101の耐圧を高めることができる。
【0048】
また第1の領域10は、ドレイン電極41と接しかつ第3の領域14の不純物濃度に比して大きい不純物濃度を有する単結晶基板11を含む。これにより第1の領域10とソース電極31とのコンタクト抵抗を小さくすることができる。
【0049】
また上面P2は、第2の領域13の露出部13aがなす側壁面SLを含む逆メサ形状を有する。これにより、側壁面SLの傾斜を選択することで、第2の領域13の露出部13aがなす上面P2の方位を調整することができる。
【0050】
また露出部13aがなす上面P2は、六方晶系の結晶構造における{0−33−8}面および{0−11−4}面のいずれか一方を含むことが好ましい。これにより、露出部13aがなす上面P2に沿ったキャリア移動度が高められる。よってスイッチング装置101のオン抵抗を小さくすることができる。
【0051】
また側壁面SLを形成するためのエッチングする工程は熱エッチングによって行われる。これにより、第2の領域13の露出部13aからなる平滑な面を露出させることができる。よってこの面上に形成されるゲート絶縁膜20の信頼性が高められる。よって、スイッチング装置101のうち絶縁ゲートによってスイッチングされる部分の信頼性を高めることができる。
【0052】
また本実施の形態のように第1の導電型としてn型が用いられる場合、キャリアとして電子が用いられるので、キャリア移動度を高くすることができる。ただし第1の導電型としてp型が用いられてもよい。言い換えれば、上述した構成における「n型」と「p型」とが入れ替えられたものが用いられてもよい。
【0053】
なお本実施の形態において熱エッチング法が用いられるが、これ以外のドライエッチング法またはウエットエッチング法が用いられてもよい。
【0054】
(実施の形態2)
図18を参照して、本実施の形態のスイッチング装置102(炭化珪素半導体装置)はエピタキシャル基板SCv(炭化珪素基板)を有する。エピタキシャル基板SCvにおいて、第3の領域14の接続部14Wは、充填部14Ja、14Jbの不純物濃度に比して大きい不純物濃度を有する低抵抗層16を含む。
【0055】
次にスイッチング装置102の製造方法について説明する。まず実施の形態1で説明した製造方法における
図7〜
図9に示す工程までと同様の工程が行われる。次に、
図19に示すように低抵抗層16が形成される。これによりエピタキシャル基板SCvが形成される。この後、実施の形態1の
図10の工程およびそれ以降の工程と同様の工程が行われることにより、スイッチング装置(
図18)が得られる。
【0056】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0057】
本実施の形態によれば、接続部14Wの電気抵抗が小さくなる。よってスイッチング装置102のオン抵抗をより小さくすることができる。
【0058】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
10 第1の領域、11 単結晶基板(ベース層)、12 ドリフト層、13 第2の領域、13a 露出部、13b 埋込ゲート部、13W 連結部、14 第3の領域、14Ja,14Jb 充填部、14M 接触部、14W 接続部、15 第4の領域、16 低抵抗層、20 ゲート絶縁膜、21 ゲート電極、30 層間絶縁膜、31 ソース電極、32 ソース配線、41 ドレイン電極、90 マスク層、101,102 スイッチング装置(炭化珪素半導体装置)、BS 窪み面、CH コンタクトホール、JT JFET部、MS MOS部、P1 裏面(第1の面)、P2 上面(第2の面)、PL 頂面、SC,SCv エピタキシャル基板(炭化珪素基板)、SL 側壁面。