特許第5757226号(P5757226)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757226
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】端子及び端子付き電線
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20150709BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
   H01R4/62
【請求項の数】27
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-271381(P2011-271381)
(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公開番号】特開2013-122881(P2013-122881A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2013年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 武史
(72)【発明者】
【氏名】森川 悟史
(72)【発明者】
【氏名】内山 義裕
(72)【発明者】
【氏名】武田 和亜希
(72)【発明者】
【氏名】外崎 貴志
【審査官】 出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−245696(JP,A)
【文献】 米国特許第03032602(US,A)
【文献】 特開2009−245701(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/134383(WO,A1)
【文献】 実開平03−119959(JP,U)
【文献】 実開昭57−009172(JP,U)
【文献】 特開2010−055903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線を備えた電線と、
前記芯線に圧着されたオープンバレルタイプのワイヤーバレルを有する端子と、を備え、
前記芯線には、前記ワイヤーバレルによって比較的に弱く圧着された低圧縮領域と、前記低圧縮領域よりも強く圧着された高圧縮領域と、が前記芯線の軸線方向と直交する方向について並んで形成されており、
前記低圧縮領域に圧着された前記ワイヤーバレルのクリンプハイトは、前記高圧縮領域に圧着された前記ワイヤーバレルのクリンプハイトよりも高く設定されている端子付き電線。
【請求項2】
前記芯線のうち、前記低圧縮領域の断面積が前記高圧縮領域の断面積よりも大きく設定されている請求項1に記載の端子付き電線。
【請求項3】
前記ワイヤーバレルの端部は、前記芯線の軸線と異なる位置に向かって変形されて、前記芯線の内部に押し込まれている請求項1または請求項2に記載の端子付き電線。
【請求項4】
前記ワイヤーバレルは、前記低圧縮領域に圧着された低圧縮ワイヤーバレルと、前記高圧縮領域に圧着された高圧縮ワイヤーバレルと、を備え、前記低圧縮ワイヤーバレルの長さ寸法は前記高圧縮ワイヤーバレルの長さ寸法よりも長く設定されている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の端子付き電線。
【請求項5】
前記低圧縮ワイヤーバレルの端部と、前記高圧縮ワイヤーバレルの端部とは、前記芯線の軸線の中心位置からずれた位置において当接している請求項4に記載の端子付き電線。
【請求項6】
前記高圧縮ワイヤーバレルの先端が折り返されて折り返し部が形成されている請求項4または請求項5に記載の端子付き電線。
【請求項7】
前記ワイヤーバレルには、前記芯線と対向する面と反対側の面に、アンビルとの位置ずれを防止するための位置ずれ防止手段が形成されている請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の端子付き電線。
【請求項8】
前記位置ずれ防止手段は、前記ワイヤーバレルに形成された凹部である請求項7に記載の端子付き電線。
【請求項9】
前記芯線はアルミニウム又はアルミニウム合金からなる請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の端子付き電線。
【請求項10】
前記芯線は複数の素線が撚り合されてなる請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の端子付き電線。
【請求項11】
前記電線は、前記芯線の外周を被覆する絶縁被覆を備えた請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の端子付き電線。
【請求項12】
前記端子は、前記ワイヤーバレルから延びると共に前記絶縁被覆の外周に圧着されるインシュレーションバレルを備えた請求項11に記載の端子付き電線。
【請求項13】
前記端子は銅又は銅合金からなる請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の端子付き電線。
【請求項14】
前記端子の表面にはメッキ層が形成されている請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載の端子付き電線。
【請求項15】
前記メッキ層はスズメッキ層である請求項14に記載の端子付き電線。
【請求項16】
前記端子は、前記ワイヤーバレルから延びると共に相手側端子と接続する接続部を備えた請求項1ないし請求項15のいずれか一項に記載の端子付き電線。
【請求項17】
芯線を備えた電線の前記芯線に圧着されるオープンバレルタイプのワイヤーバレルを有する端子であって、
前記芯線に前記ワイヤーバレルが圧着された状態において、前記芯線には、前記ワイヤーバレルによって比較的に弱く圧着された低圧縮領域と、前記低圧縮領域よりも強く圧着された高圧縮領域と、が前記芯線の軸線方向と直交する方向について並んで形成されており、
前記ワイヤーバレルは、前記低圧縮領域に圧着される低圧縮ワイヤーバレルと、前記高圧縮領域に圧着される高圧縮ワイヤーバレルと、を備え
前記芯線に前記ワイヤーバレルが圧着された状態において、前記低圧縮領域に圧着された前記低圧縮ワイヤーバレルのクリンプハイトは、前記高圧縮領域に圧着された前記高圧縮ワイヤーバレルのクリンプハイトよりも高く設定されている端子。
【請求項18】
前記低圧縮ワイヤーバレルの長さ寸法は前記高圧縮ワイヤーバレルの長さ寸法よりも長く設定されている請求項17に記載の端子。
【請求項19】
前記ワイヤーバレルが前記芯線に圧着された状態において、前記低圧縮ワイヤーバレルの端部と、前記高圧縮ワイヤーバレルの端部とは、前記芯線の軸線の中心位置からずれた位置において当接している請求項17または請求項18に記載の端子。
【請求項20】
前記高圧縮ワイヤーバレルの先端が折り返されて折り返し部が形成されている請求項18または請求項19に記載の端子。
【請求項21】
前記ワイヤーバレルには、前記芯線と対向する面と反対側の面に、アンビルとの位置ずれを防止するための位置ずれ防止手段が形成されている請求項17ないし請求項20のいずれか一項に記載の端子。
【請求項22】
前記位置ずれ防止手段は、前記ワイヤーバレルに形成された凹部である請求項21に記載の端子。
【請求項23】
前記芯線はアルミニウム又はアルミニウム合金からなる請求項17ないし請求項22のいずれか一項に記載の端子。
【請求項24】
前記端子は銅又は銅合金からなる請求項17ないし請求項23のいずれか一項に記載の端子。
【請求項25】
前記端子の表面にはメッキ層が形成されている請求項17ないし請求項24のいずれか一項に記載の端子。
【請求項26】
前記メッキ層はスズメッキ層である請求項25に記載の端子。
【請求項27】
前記端子は、前記ワイヤーバレルから延びると共に相手側端子と接続する接続部を備えた請求項17ないし請求項26のいずれか一項に記載の端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子及び端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線から露出する芯線に、端子に形成されたワイヤーバレルを外側から巻き付けるように圧着することにより電気的導通を図った端子付き電線が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−125362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の芯線の表面に酸化被膜が形成されると、芯線と端子、あるいは芯線同士の電気抵抗が大きくなることが懸念される。電気抵抗を小さくするためには、芯線に対して高い圧力でワイヤーバレルを圧着することにより、芯線の表面の酸化被膜を破壊することが考えられる。この結果、芯線の表面に形成された酸化被膜が破れて芯線の新生面が露出し、この新生面同士、あるいは新生面と端子とが接触することにより、電気抵抗が小さくなることが期待された。
【0005】
しかしながら上記の手法によると、芯線の断面積が大きく減少するため、機械的強度、特に衝撃的な荷重に対する引張強度が低下する。より具体的には端子が電線を保持する強度が低下する。特に、芯線がアルミ製の場合には、素線表面の酸化被膜を破壊するために銅製の芯線と比較してより高圧縮で圧着しなければならないことが知られているが、背反として、素線切れの問題があり、素線切れを防止するためにはできる限り低圧縮で圧着することが望ましい。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、より良好な電気的性能と電線(芯線)の保持力とを両立できる端子及び端子付き電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、端子付き電線であって、芯線を備えた電線と、前記芯線に圧着されたオープンバレルタイプのワイヤーバレルを有する端子と、を備え、前記芯線には、前記ワイヤーバレルによって比較的に弱く圧着された低圧縮領域と、前記低圧縮領域よりも強く圧着された高圧縮領域と、が前記芯線の軸線方向と直交する方向について並んで形成されている。
【0008】
また、本発明は、芯線を備えた電線の前記芯線に圧着されるオープンバレルタイプのワイヤーバレルを有する端子であって、前記芯線に前記ワイヤーバレルが圧着された状態において、前記芯線には、前記ワイヤーバレルによって比較的に弱く圧着された低圧縮領域と、前記低圧縮領域よりも強く圧着された高圧縮領域と、が前記芯線の軸線方向と直交する方向について並んで形成されており、前記ワイヤーバレルは、前記低圧縮領域を圧縮する低圧縮ワイヤーバレルと、前記高圧縮ワイヤーバレルと、を備える。
【0009】
本発明によれば、まず、低圧縮領域においては、芯線が比較的に弱く圧着されることにより、芯線の保持力が向上する。これにより、電線に対して引張力が加えられた場合でも、電線から端子が離間することを抑制することができる。
【0010】
また、高圧縮領域においては、芯線が低圧縮領域よりも強く圧着されることにより、芯線の表面に形成された酸化被膜が破壊される。すると、芯線の金属表面が、破壊された酸化被膜の間から露出する。この芯線の金属表面と、ワイヤーバレルとが比較的に高い圧力で圧着されることにより、芯線とワイヤーバレルとの間が電気的に接続される。この結果、芯線と端子とが確実に電気的に接続される。
【0011】
このように本発明においては、芯線は、芯線の低圧縮領域に圧着されたワイヤーバレルによって確実に保持される。また、芯線と端子との電気的性能は、芯線の高圧縮領域に圧着されたワイヤーバレルによって向上される。この結果、より良好な電気的性能と電線(芯線)の保持力とを両立させることができる。
【0012】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記芯線のうち、前記低圧縮領域の断面積が前記高圧縮領域の断面積よりも大きく設定されていることが好ましい。
【0013】
前記低圧縮領域に圧着された前記ワイヤーバレルのクリンプハイトは、前記高圧縮領域に圧着された前記ワイヤーバレルのクリンプハイトよりも高く設定されていることが好ましい。
【0014】
前記ワイヤーバレルの端部は、前記芯線の軸線と異なる位置に向かって変形されて、前記芯線の内部に押し込まれていることが好ましい。
【0015】
前記ワイヤーバレルは、前記低圧縮領域に圧着された低圧縮ワイヤーバレルと、前記高圧縮領域に圧着された高圧縮ワイヤーバレルと、を備え、前記低圧縮ワイヤーバレルの長さ寸法は前記高圧縮ワイヤーバレルの長さ寸法よりも長く設定されていることが好ましい。
【0016】
前記ワイヤーバレルが前記芯線に圧着された状態において、前記低圧縮ワイヤーバレルの端部と、前記高圧縮ワイヤーバレルの端部とは、前記芯線の軸線の中心位置からずれた位置において当接していることが好ましい。
【0017】
前記高圧縮ワイヤーバレルの先端が折り返されて折り返し部が形成されているころが好ましい。
【0018】
前記ワイヤーバレルには、前記芯線と対向する面と反対側の面に、アンビルとの位置ずれを防止するための位置ずれ防止手段が形成されていることが好ましい。
【0019】
前記位置ずれ防止手段は、前記ワイヤーバレルに形成された凹部であることが好ましい。
【0020】
前記芯線はアルミニウム又はアルミニウム合金からなる構成とすることができる。
【0021】
前記芯線は複数の素線が撚り合されてなることが好ましい。
【0022】
前記電線は、前記芯線の外周を被覆する絶縁被覆を備えることが好ましい。
【0023】
前記端子は、前記ワイヤーバレルから延びると共に前記絶縁被覆の外周に圧着されるインシュレーションバレルを備えることが好ましい。
【0024】
前記端子は銅又は銅合金からなることが好ましい。
【0025】
前記端子の表面にはメッキ層が形成されていることが好ましい。
【0026】
前記メッキ層はスズメッキ層であることが好ましい。
【0027】
前記端子は、前記ワイヤーバレルから延びると共に相手側端子と接続する接続部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、より良好な電気的性能と電線(芯線)の保持力とを両立できる端子及び端子付き電線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は本発明の実施形態1に係る端子付き電線を示す側面図である。
図2図2図1におけるII−II線断面図である。
図3図3はアンビルの凸部と、ワイヤーバレルの凹部との係合構造を示す断面図である。
図4図4は本発明の実施形態2に係る端子付き電線を示す断面図である。
図5図5はワイヤーバレルの折り返し部を示す断面図である。
図6図6は本発明の実施形態3に係る端子付き電線を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、図1ないし図3を参照しつつ説明する。本実施形態は、芯線10を備えた電線11と、芯線10の接続された端子12と、を備えた端子付き電線13である。端子付き電線13は、例えば、自動車、電気自動車、ハイブリッド車等の図示しない車両の内部に配索して使用される。以下の説明おいては、図1における左方を前方とし、右方を後方とする。また、図1における上方を上方とし、下方を下方とする。また、図2における左方を左方とし、右方と右方とする。
【0031】
(電線11)
電線11は、金属製の芯線10と、この芯線10の外周を絶縁性の合成樹脂で被覆してなる絶縁被覆14と、を備える。芯線10の横断面は円形状をなしている。芯線10の軸線は前後方向に延びている。
【0032】
芯線10は、複数の素線15を撚り合せてなる。芯線10を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等、必要に応じて任意の金属から適宜に選択できる。本実施形態においては、アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。
【0033】
(端子12)
端子12は、金属板材を所定の形状にプレス加工して形成される。端子12を形成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等、必要に応じて任意の金属から適宜に選択できる。本実施形態においては、高い導電性を有することから銅又は銅合金が用いられる。
【0034】
端子12の表面には、メッキ層が形成されている。メッキ層を形成する金属として、スズ、はんだ、ニッケル、クロム、亜鉛、金、銀等、必要に応じて任意の金属から適宜に選択できる。本実施形態においては、接触抵抗を低減させるためにスズが用いられる。
【0035】
端子12には、芯線10に圧着されるワイヤーバレル16が形成されている。このワイヤーバレル16はオープンバレルタイプであって、芯線10の外周に抱き付くようにして圧着されている。これにより、芯線10とワイヤーバレル16とが電気的に、且つ物理的に接続されるようになっている。ワイヤーバレル16には、芯線10と接触する面に、凹部25及び凸部26の双方又は一方が形成されていてもよい。
【0036】
ワイヤーバレル16の後方には、インシュレーションバレル17が延びて形成されている。インシュレーションバレル17は、絶縁被覆14の外周に巻き付くようにして圧着されている。これにより、インシュレーションバレル17によって絶縁被覆14が保持されるようになっている。なお、インシュレーションバレル17は省略してもよい。
【0037】
また、ワイヤーバレル16の前方には、図示しない相手側端子と接続される接続部18が形成されている。本実施形態においては、接続部18は角筒状をなすと共に、内部に相手側端子と弾性的に接触する弾性片19が形成されている。相手側端子と弾性片19とが弾性的に接触することにより、相手側端子と端子12とが電気的に接続される。
【0038】
なお、この接続部18は、細長く延びた雄タブとしてもよく、また、平板状に形成してもよく、また、平板を貫通する貫通孔が形成されたいわゆるLA端子12としてもよく、必要に応じて任意の形状としうる。
【0039】
(芯線10とワイヤーバレル16との接続構造)
図2に示すように、芯線10にワイヤーバレル16が圧着された後におけるワイヤーバレル16の高さ寸法であるクリンプハイトは、芯線10に軸線に対して左側と右側とで異なっている。芯線10の軸線に対して右側のクリンプハイトH1は、左側のクリンプハイトH2に比べて高くなっている。これにより、芯線10のうちワイヤーバレル16に圧着された領域において、芯線10の軸線に対して右側の領域は比較的に弱く圧着された低圧縮領域20とされ、芯線10の軸線に対して左側の領域は低圧縮領域20よりも強く圧着された高圧縮領域21とされる。
【0040】
低圧縮領域20と、高圧縮領域21とは、芯線10の軸線方向と交差する方向について並んで位置している。本実施形態においては、左右方向について並んで配されている。詳細に説明すると、ワイヤーバレル16の端部が当接する部分において上下方向に延びると共に前後方向に延びる仮想的な平面Pの右側の領域が低圧縮領域20とされ、左側の領域が高圧縮領域21とされている。低圧縮領域20の断面積は高圧縮領域21の断面積よりも大きく設定されている。
【0041】
ワイヤーバレル16のうち、芯線10の低圧縮領域20に圧着されている部分は低圧縮ワイヤーバレル22とされ、芯線10の高圧縮領域21に圧着されている部分は高圧縮ワイヤーバレル23とされる。
【0042】
ワイヤーバレル16の端部は、芯線10の軸線の中心位置から左側にずれた位置に向かって変形されて、芯線10の内部に押し込まれている。換言すると、低圧縮ワイヤーバレル22の端部と、高圧縮ワイヤーバレル23の端部とは、芯線10の軸線の中心位置から左側にずれた位置において当接している。
【0043】
図3に示すように、ワイヤーバレル16の下面(芯線10と対向する面と反対側の面)には、ワイヤーバレル16を芯線10に圧着する際に、ワイヤーバレル16が載置されるアンビル24との位置ずれを防止するための位置ずれ防止手段が形成されている。本実施形態においては、位置ずれ防止手段は、ワイヤーバレル16の下面に、上方に窪んで形成された凹部25とされる。この凹部25は、ワイヤーバレル16の下面を上方に叩き出すことにより形成される。この凹部25に、アンビル24の上面に上方に突出して形成された凸部26が入り込むことにより、ワイヤーバレル16の位置ずれが抑制されるようになっている。
【0044】
(本実施形態の作用、効果)
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。本実施形態によれば、芯線10には、低圧縮領域20と、高圧縮領域21とが、芯線10の軸線方向と直交する方向(左右方向)について並んで形成されている。これにより、まず、低圧縮領域20においては、芯線10が低圧縮ワイヤーバレル22によって圧着されることにより、芯線10の保持力が向上する。これにより、電線11に対して引張力が加えられた場合でも、電線11から端子12が離間することを抑制することができる。
【0045】
また、高圧縮領域21においては、芯線10が高圧縮ワイヤーバレル23によって圧着されることにより、素線15の表面に形成された酸化被膜が破壊される。すると、素線15の金属表面が、破壊された酸化被膜の間から露出する。この素線15の金属表面と、ワイヤーバレル16とが比較的に高い圧力で圧着されることにより、素線15とワイヤーバレル16との間が電気的に接続される。この結果、芯線10と端子12とが確実に電気的に接続される。
【0046】
本実施形態においては、芯線10は、芯線10の低圧縮領域20に圧着された低圧縮ワイヤーバレル22によって確実に保持される。また、芯線10と端子12との電気的性能は、芯線10の高圧縮領域21に圧着された高圧縮ワイヤーバレル23によって向上される。この結果、より良好な電気的性能と電線11(芯線10)の保持力とを両立させることができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、低圧縮領域20の断面積は高圧縮領域21の断面積よりも大きく設定されている。これにより、低圧縮領域20と、高圧縮領域21とを容易に形成することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、低圧縮領域20に圧着されたワイヤーバレル16のクリンプハイトH1は、高圧縮領域21に圧着されたワイヤーバレル16のクリンプハイトH2よりも高く設定されている。これにより、低圧縮領域20と、高圧縮領域21とを、クリンプハイトH1,H2の高さを調節するという簡易な手法により形成することができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、ワイヤーバレル16の端部は、芯線10の軸線と異なる位置に向かって変形されて、芯線10の内部に押し込まれている。換言すると、低圧縮ワイヤーバレル22の端部と、高圧縮ワイヤーバレル23の端部とは、芯線10の軸線の中心位置からずれた位置において当接している。このように、低圧縮ワイヤーバレル22の端部と、高圧縮ワイヤーバレル23の端部とが当接する位置を調節するという簡易な手法によって、低圧縮領域20と高圧縮領域21とを形成することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、低圧縮ワイヤーバレル22の長さ寸法は高圧縮ワイヤーバレル23の長さ寸法よりも長く設定されている。これにより、芯線10に対して低圧縮ワイヤーバレル22と高圧縮ワイヤーバレル23とを同一の工程において圧着することにより、芯線10に、低圧縮領域20と高圧縮領域21とを同一の工程において形成することができる。なお、低圧縮領域20と高圧縮領域21とを同一の工程において形成するとは、低圧縮領域20と高圧縮領域21とを同時に形成する場合を含むと共に、同一の工程において異なった時に形成される場合を含む。
【0051】
また、本実施形態においては、ワイヤーバレル16には、芯線10と対向する面と反対側の面に、アンビル24との位置ずれを防止するための位置ずれ防止手段が形成されている。この位置ずれ防止手段は、前記ワイヤーバレル16に形成された凹部25である。この凹部25がアンビル24に形成された凸部26と係合することにより、アンビル24と端子12とが位置ずれすることを抑制できる。低圧縮ワイヤーバレル22の長さ寸法と高圧縮ワイヤーバレル23の長さ寸法とが異なる場合には、アンビル24に端子12を載置した状態で端子12のバランスが崩れることが懸念されるので、特に有効である。
【0052】
また、本実施形態においては、芯線10はアルミニウム又はアルミニウム合金からなる。アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯線10の表面には比較的に硬い酸化被膜が形成される。芯線10と端子12との電気的接続を図るためには、この酸化被膜を破壊して、新鮮な金属表面を露出させることが必要となる。そのためには、比較的に高い圧力で芯線10を圧着する必要がある。このため、本実施形態のように、高圧縮ワイヤーバレル23を比較的に高い圧力で芯線10に圧着することにより、高圧縮領域21において芯線10の表面に形成された酸化被膜を破壊し、芯線10の金属表面を露出させることができる。この金属表面と高圧縮ワイヤーバレル23とが接触することにより、芯線10と端子12との電気的な接続を確実にすることができる。
【0053】
本実施形態においては、芯線10は複数の素線15が撚り合されてなる。上記の場合、複数の素線15の一つ一つの表面に酸化被膜が形成されることが懸念される。このような場合であっても、高圧縮ワイヤーバレル23を比較的に高い圧力で素線15に圧着することにより、素線15の表面に形成された酸化被膜を確実に破壊して、素線15の金属表面を露出させることができる。この結果、素線15と高圧縮ワイヤーバレル23との電気的な接続を確実にすることができる。
【0054】
また、本実施形態においては、電線11は、芯線10の外周を被覆する絶縁被覆14を備える。これにより、いわゆる裸電線11を用いる場合に比べて、電線11と車両とが短絡することを抑制するための構成が不要となるので、車両への配索構造を簡素化することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、端子12は、ワイヤーバレル16から延びると共に絶縁被覆14の外周に圧着されるインシュレーションバレル17を備える。これにより、端子12と電線11との間の保持力を一層強くすることができる。
【0056】
また、本実施形態においては、端子12は銅又は銅合金からなるので、端子12の電気的抵抗を一層下げることができる。
【0057】
また、本実施形態には端子12の表面にメッキ層が形成されているおり、このメッキ層はスズメッキ層である。これにより、端子12と芯線10との接触抵抗をさげることができる。これは、ワイヤーバレル16を芯線10に圧着させるときに、スズと、アルミニウムとの合金が形成されることにより、芯線10と端子12との電気的な抵抗を下げることができることによる。
【0058】
また、本実施形態によれば、相手側端子と接続する接続部18が形成されているので、電線11と、相手側端子とを電気的に接続することができる。
【0059】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図4及び図5を参照しつつ説明する。本実施形態によれば、高圧縮ワイヤーバレル23の端部には、折り返し部30が形成されている。折り返し部30は、芯線10と接触する面に折り返されるようになっている。なお、折り返し部30は、芯線10と接触する面と反対側の面に折り返される構成としてもよい。上記の構成により、低圧縮ワイヤーバレル22の長さ寸法は、高圧縮ワイヤーバレル23の長さ寸法よりも長くなっている。
【0060】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0061】
上記の構成により、高圧縮ワイヤーバレル23の端部を折り返すという簡易な手法により、低圧縮ワイヤーバレル22の長さ寸法は、高圧縮ワイヤーバレル23の長さ寸法よりも長くすることができる。
【0062】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を、図6を参照しつつ説明する。本実施形態においては、ワイヤーバレル16の端部は、芯線10の軸線に向かって曲げられて、芯線10の内部に入り込むようになっている。
【0063】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0064】
本実施形態のように、ワイヤーバレル16の端部が、芯線10の軸線に向かって曲げられて、芯線10の内部に入り込むようになっている形態についても、芯線10に、低圧縮領域20と高圧縮領域21とを形成することができる。
【0065】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)芯線10は単芯線でもよい。
【0066】
(2)電線11は、絶縁被覆14を有しない裸電線でもよい。
【0067】
(3)各素線15の表面には被膜が形成されていてもよい。被膜は、メッキ層でもよく、また酸化被膜でもよい。素線15に形成されるメッキ層としては、スズ、はんだ、金、銀等、必要に応じて任意の金属から適宜に選択できる。素線15に形成される酸化被膜としては、アルミ製の素線15の表面に形成されたアルマイト層、ベーマイト層等、必要に応じて任意の酸化被膜を適宜に形成できる。
【0068】
(4)本実施形態においては、低圧縮領域20と高圧縮領域21とは左右方向に並んで形成されていたが、これに限られず、低圧縮領域20と高圧縮領域21とは、低圧縮領域20が左側に位置すると共に高圧縮領域21が右側に位置していてもよく、また、上下方向に並んで形成されていてもよい。低圧縮領域20と高圧縮領域21とは、芯線10の軸線と交差する方向について並んで配されていれば、任意の方向について並ぶ位置に形成することができる。
【0069】
(5)端子12の表面にメッキ層を形成しない構成としてもよい。
【0070】
(6)接続部18は、細長く延びた雄タブとしてもよく、また、平板状に形成してもよく、また、平板を貫通する貫通孔が形成されたいわゆるLA端子としてもよく、必要に応じて任意の形状としうる。
(7)インシュレーションバレル17は省略してもよい。
【0071】
(8)芯線10の軸線に向かってワイヤーバレル16の端部を変形させて、ワイヤーバレル16の端部を芯線10に押し込むようにしてワイヤーバレル16を芯線10に圧着した後に、ワイヤーバレル16の一方をペンチ等の工具や、プレス機等で挟んで圧力を加えることにより、高圧縮領域21を形成してもよい。
【0072】
(9)参考例として、ワイヤーバレル16の端部が芯線10の軸線と異なる位置に向かって変形されて、芯線10の内部に押し込まれており、低圧縮領域20に圧着されたワイヤーバレル16のクリンプハイトH1と、高圧縮領域21に圧着されたワイヤーバレル16のクリンプハイトH2とが、同じ高さに設定されていてもよい。
【0073】
(10)本実施形態においては、1つの電線11の端部に1つの端子12が接続される構成としたが、これに限られず、複数の電線11において、電線11の端部と異なる部分において絶縁被覆14を剥がして芯線10を露出させ、この露出された複数の芯線10にワイヤーバレル16を圧着することにより、複数の電線11を電気的に接続する構成としてもよい。
【0074】
(11)本実施形態においては、1つの電線11の端部に1つの端子12が接続される構成としたが、これに限られず、複数の電線11において、電線11の端部の絶縁被覆14を剥がして芯線10を露出させ、この露出された複数の芯線10にワイヤーバレル16を圧着することにより、複数の電線11を電気的に接続する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…芯線
11…電線
12…端子
13…端子付き電線
14…絶縁被覆
15…素線
16…ワイヤーバレル
17…インシュレーションバレル
18…接続部
20…低圧縮領域
21…高圧縮領域
22…低圧縮ワイヤーバレル
23…高圧縮ワイヤーバレル
25…凹部(位置ずれ防止手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6