(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成膜性樹脂、液状エポキシ化合物、エポキシ用硬化剤及びシランカップリング剤を含有する絶縁性接着剤中に、絶縁被覆磁性導電粒子が分散されてなる異方性導電接着剤であって、絶縁被覆磁性導電粒子が脱磁処理されたものであり、更に、脱磁処理後に着磁処理された磁性導電微粒子を、成膜性樹脂、液状エポキシ化合物、エポキシ用硬化剤及びシランカップリング剤の合計100質量部に対し5〜70質量部含有しており、該磁性導電微粒子は、0.05〜0.5μmの平均粒子径を有し且つその平均粒子径は、該絶縁被覆磁性導電粒子の平均粒子径の1〜10%であることを特徴とする異方性導電接着剤。
成膜性樹脂、液状エポキシ化合物、エポキシ用硬化剤及びシランカップリング剤の合計100質量部に対し、絶縁被覆磁性導電粒子を10〜80質量部含有する請求項1〜4のいずれかに記載の異方性導電接着剤。
絶縁被覆磁性導電粒子と磁性導電微粒子の質量配合比が、20:1〜7:8(=[絶縁被覆磁性導電粒子: 磁性導電微粒子])である請求項1〜6のいずれかに記載の異方性導電接着剤。
磁性導電微粒子が磁性金属又は合金の微粒子である場合に、その脱磁処理が、磁性金属又は合金微粒子をキュリー温度以上に加熱処理することである請求項8又は9記載の製造方法。
第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが接続されてなる接続構造体の製造方法であって、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子との間に、請求項1〜7のいずれかに記載の異方性導電剤を配し、異方性導電剤を加熱しながら第1の電子部品を第2の電子部品に押圧することにより、端子同士を異方性導電接続することを特徴とする接続構造体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の異方性導電接着剤をフィルム状に成形した異方性導電フィルムを例に取り詳細に説明する。なお、本発明の異方性導電接着剤は異方性導電フィルムに限定されることなく、異方性導電ペーストも含むものである。
【0018】
図1に示すように、本発明のフィルム状の異方性導電接着剤10は、成膜性樹脂、液状エポキシ化合物、エポキシ用硬化剤及びシランカップリング剤を含有する絶縁性接着剤1中に絶縁被覆磁性導電粒子2が分散したものであり、更に、絶縁被覆磁性導電粒子の平均粒子径に対して1〜10%の平均粒子径を有し且つ脱磁処理後に着磁処理された磁性導電微粒子3を、成膜性樹脂、液状エポキシ化合物、エポキシ用硬化剤及びシランカップリング剤の合計100質量部に対し5〜70質量部含有するものである。
【0019】
脱磁処理後に着磁処理された磁性導電微粒子3は、異方性導電接着剤10をフィルム状に形成する際に使用する液状の異方性導電フィルム形成用組成物中で、もしくは異方性導電接続の熱圧着の際に流動した絶縁性接着剤中で、絶縁被覆磁性導電粒子2の表面に磁力により付着し、導電性の突起物となる。この結果、異方性導電接着剤10の異方性導電接続の際の熱圧着により、異方性導電接続すべき電極の表面に十分に食い込み、絶縁被覆磁性導電粒子2の絶縁被覆と異方性導電接続すべき電極の表面の不動体化膜を突き破ることができる。よって、異方性導電接続の接続抵抗を下げることができる。
【0020】
他方、異方性導電接続方向に直交する方向(即ち、異方性導電フィルム平面方向)の絶縁抵抗は、磁性導電微粒子3の大きさと配合量とを調整し、しかも絶縁被覆磁性導電粒子2の表面に局在化することになるので、異方性導電接続方向に直交する方向(即ち、異方性導電フィルム平面方向)の絶縁抵抗値の低下を防止することができる。
【0021】
<異方性導電接着剤を構成する磁性導電微粒子3>
磁性導電微粒子3の磁性材料としては、フェロ磁性体(キュリー温度)としては、Co(1115℃)、Fe(770℃)、Ni(350℃)、MnBi(357℃)、MnSb(314℃)等が挙げられる。フェリ磁性体としては、CrO
2(130℃)、FeOFe
2O
3(585℃)、NiOFe
2O
3(585℃)、CuOFe
2O
3(455℃)、MgOFe
2O
3(440℃)、MnOFe
2O
3(300℃)等が挙げられる。また、永久磁石として称されているMK磁石、アルニコ磁石、希土類磁石等も使用することができる。その他、常磁性体であるTiやセラミック、Zn、W等も使用することができる。
【0022】
これらの磁性導電微粒子3は、異方性導電接続条件下で、導通性を示す限り、微粒子表面に絶縁膜を形成してもよい。その場合、絶縁性の樹脂や金属酸化物の皮膜を絶縁膜とすることができる。これらの絶縁膜の形成は、公知の手法により形成することができる。中でも、磁性導電微粒子が磁性金属又は合金系微粒子である場合、その金属又は合金の酸化被膜を微粒子表面に形成してもよい。この場合、磁性導電微粒子を酸素含有環境下で加熱することで、酸化皮膜の形成を促進させることができる。
【0023】
このような磁性導電微粒子3の特に好ましい例としては、強磁性を示し、元素安定性に優れ、しかも脱磁の容易さの点からニッケル微粒子を挙げることができる。この場合、強磁性導電微粒子3に絶縁膜として酸化ニッケル膜を形成してもよく、そのような酸化ニッケル膜厚は、過度に厚いと、異方性導電接続の際に導電性を確保できなくなるので、好ましくは3nm以下である。
【0024】
また、磁性導電微粒子3の平均粒子径は、絶縁被覆磁性導電粒子2との相対的な大小関係に大きく依存しており、小さすぎると異方性導電接続させるべき電極の表面への食い込みが小さくなり、接続抵抗値が上昇することが懸念され、他方、大きすぎると、異方性導電接続方向に直交する方向(異方性導電フィルムの平面方向)の絶縁抵抗値が低下する傾向があるので、絶縁被覆磁性導電粒子2の平均粒子径の1〜10%、好ましくは2〜6%である。具体的な平均粒子径の範囲は、好ましくは0.05〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.3μmである。
【0025】
磁性導電微粒子3の異方性導電接着剤における含有量は、少なすぎると絶縁被覆磁性導電粒子2の導電性突起が少なくなって、異方性導電接続の際の接続抵抗値が増大する傾向があり、他方、多すぎても絶縁被覆磁性導電粒子2の表面全体が磁性導電微粒子3で覆われるようになって、結果的に導電性突起が少なくなるので、異方性導電接続の際の接続抵抗値が増大する傾向があり、しかも異方性導電接続方向に直交する方向(異方性導電フィルムの平面方向)の絶縁抵抗値が低下する傾向があるので、後述するような成膜性樹脂、液状エポキシ化合物、エポキシ用硬化剤及びシランカップリング剤の合計100質量部に対し、好ましくは5〜70質量部、より好ましくは20〜50質量部である。
【0026】
本発明において、磁性導電微粒子3は、異方性導電接着剤を調整する前に予め脱磁処理した後に着磁処理したものである。まず、最初に脱磁処理を施す理由は、予め脱磁しておくと、磁性導電微粒子3を着磁した際に、磁性導電微粒子3内の磁区の磁気モーメントを一定方向に容易に揃えることができるので効率よく磁化させることができるからである。また、着磁処理しておく理由は、絶縁被覆磁性導電粒子2の表面に磁性により付着させるためである。
【0027】
なお、磁性導電微粒子3の脱磁処理の手法としては、特に制限はなく、公知の手法を使用することができる。例えば、磁性導電微粒子3を、そのキュリー温度以上に加熱することにより脱磁してもよい。
【0028】
なお、キュリー温度未満で脱磁処理する場合には、磁性導電微粒子3同士の相対的位置関係が変動しないように脱磁処理することが好ましい。具体的には、
図2に示すように、磁性導電微粒子21を、開口部22aを有する容器22に投入し、次いで、容器22の開口部22aから容器22内に挿入された押圧手段23で押圧して容器22内に仮固定し、その容器22を、脱磁コイル24により形成された脱磁用磁場の中を、磁界強度を減衰させながら矢印の方向に、少なくとも1回脱磁コイルから遠ざけるように移動させることにより脱磁処理することができる。また、脱磁処理の効率を高めるために、容器22を往復運動(複数回の移動)させてもよい。なお、容器22は開口部を有する容器に限定されるものではなく、例えば、容器に磁性導電微粒子を充填後、真空封止を行って開口部を封止した場合も、好適に使用することができる。
【0029】
脱磁方法で使用する容器22としては、非磁性材料、透磁率の低い材料等から形成されたものであり、例えば、ガラス容器、アルミナ容器、磁器容器等を挙げることができる。容器の形状としては、筒型形、特に円筒形が好ましいが、多角筒形でもよい。底部はラウンド型になっていることが好ましい。また、底部が開閉可能となっていてもよい。
【0030】
押圧手段23としては、特に制限はなく、例えば、硬質あるいは弾性を示す平板23aをプッシャ23bで押しつける構成でもよい。押圧のレベルは、脱磁すべき磁性粉体にダメージを与えないように且つ脱磁処理の際に磁性粉体の動きを抑制できるレベルであり、磁性粉体の種類、大きさ、形状、脱磁条件などに応じて決めることができる。
【0031】
また、キュリー温度未満で脱磁処理する場合、
図3に示すように、磁性導電微粒子31を、容器32中の液体33に投入し、次いで、その液体33を凝固させ、凝固物中に仮固定し、その容器32を、脱磁コイル34により形成された脱磁用磁場の中を、磁界強度を減衰させながら矢印の方向に少なくとも1回脱磁コイルから遠ざけるように移動させることにより脱磁処理することもできる。また、脱磁処理の効率を高めるために、容器32を往復運動(複数回の移動)させてもよい。この場合、通常、容器32中で液体33を凝固させるが、凝固させた後の脱磁処理の際には、容器を取り除くことができる。また、磁性導電微粒子を液体に投入した後、脱泡処理した後に液体を凝固させることが好ましい。これは、脱泡していないと、液体を凝固させたときに泡も凝固物の中に取り込まれ、泡近傍の磁性導電微粒子31が動きやすくなるからである。
【0032】
液体を凝固させる具体的な手法としては、液体を、その凝固点以下に冷却することにより凝固させる方法がある。液体としては、水、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカン類、トルエン、ナフタレン等のアリール類などを使用することができる。凝固の具体例としては、液体として水を使用した場合には、0℃以下に冷却することにより凝固させることができる。シクロヘキサン(融点7℃)を使用した場合には、7℃以下、好ましくは−10℃に冷却することが挙げられる。この場合、脱磁処理後に、凝固物を液体の凝固点以上になるまで放置又は加熱し、脱磁処理した磁性導電微粒子31を常法により液体から分離すればよい。
【0033】
また、液体を凝固させる他の手法としては、液体に、その液体を凝固させ得る凝固剤を更に配合し、磁性粉体が投入されたあとで、その凝固剤で液体を凝固処理する方法がある。例えば、凝固剤として液体のゲル化剤を使用する方法である。具体的には、液体が水である場合に、凝固剤としてゼラチンを使用し、ゼラチンを水に加熱溶解し、それに磁性粉体を投入し、必要に応じて脱泡処理し、次いで冷却してゲル化させることが挙げられる。この場合、ゼラチン由来のゲルは加熱により消失する可逆的なものであるので、脱磁処理後に、凝固物をゲルが消失する温度にまで加熱し、脱磁処理した磁性導電微粒子31を常法により液体から分離すればよい。
【0034】
また、本発明において、磁性導電微粒子3(21、31)を着磁処理する場合、その手法には特に制限はなく、従来公知の着磁方法を適用して行うことができる。また、脱磁コイルを着磁コイルとして機能させることにより、
図2又は
図3の脱磁装置を着磁装置として使用することもできる。
【0035】
<異方性導電フィルムを構成する絶縁被覆磁性導電粒子2>
本発明において使用する絶縁被覆磁性導電粒子2は、その少なくとも一部が磁性材料(例えば、強磁性材料、常磁性材料)から構成されている磁化し得る導電粒子である。従って、絶縁被覆磁性導電粒子2には、着磁されている場合も脱磁されている場合も含まれる。このような絶縁被覆磁性導電粒子2としては、導電粒子全体が単一の磁性材料から形成されている場合のみならず、導電粒子又は絶縁粒子の表面に磁性材料の薄膜が形成されている粒子、そのような磁性薄膜上に更に非磁性金属膜が形成されている粒子、これらの磁性粉体の最表面に更に非磁性の絶縁性樹脂の薄膜が形成されている粒子などを挙げることができる。
【0036】
絶縁被覆磁性導電粒子2として使用できる磁性粉体の具体例としては、ニッケル、鉄、酸化鉄、酸化クロム、フェライト、コバルト、センダストなどの磁性金属あるいは磁性合金の粉体、ハンダ、銅等の非磁性導電粒子や絶縁樹脂コア粒子の表面に磁性材料の薄膜が形成された金属被覆樹脂粒子などの粉体、それらの表面に更に金メッキ薄膜が形成された粉体、あるいは絶縁性樹脂層で被覆された粉体などを挙げることができる。
【0037】
これらの中でも、絶縁被覆磁性導電粒子2としては、製造コスト、接続時の加熱加圧での変形等を考慮すると、コアとなる樹脂粒子の表面にニッケルメッキ層が形成され、更に絶縁性樹脂で被覆された樹脂コアニッケルメッキ粒子を好ましく挙げることができる。
【0038】
コアになる樹脂粒子としては、特に制限はないが、耐熱性、耐薬品性を備えた有機材料、例えば、ポリアミド、ポリグアナミン、ポリスチレン、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を好ましく使用することができる。
【0039】
また、絶縁被覆用の絶縁性樹脂としては、この種の絶縁被覆導電粒子に使用されている公知の絶縁性熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を適用することができる。このような絶縁被覆樹脂層の厚みは、薄すぎると絶縁性が低下する傾向があり、厚すぎると導通性が低下する傾向があるので、好ましくは0.05〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.4μmである。
【0040】
樹脂コアニッケルメッキ粒子のニッケルメッキ層の厚さは、薄すぎると異方性導電接続の際の熱圧着時に破損し、異方性導電フィルムの接続信頼性が低下する傾向があり、厚すぎると異方性導電フィルム作成の際に絶縁被覆磁性導電粒子2の凝集が生じる傾向があるので、好ましくは10〜300nm、より好ましくは50〜200nmである。
【0041】
本発明で使用する絶縁被覆磁性導電粒子2の平均粒子径は、小さすぎると磁性導電粒子全体における磁性金属の割合が高くなるため磁気の影響を受け易くなり、そのため絶縁被覆磁性導電粒子の凝集塊が生じてショートが発生したり、また、導電粒子の異方性導電機能が低下し、電子部品の端子の高さのバラツキに追随できなくなり接続信頼性に不具合が生じたりする傾向があり、他方、大きすぎると導電粒子により配線間の絶縁性が低下し、ファインピッチ接続自体に対応できなくなる傾向があるために、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは2〜5μmである。
【0042】
なお、絶縁被覆磁性導電粒子2は、異方性導電接着剤あるいは異方性導電フィルム形成用組成物中での凝集を防止するために、磁性導電微粒子3と同様な手法により脱磁処理しておくことが好ましい。
【0043】
絶縁被覆磁性導電粒子2の異方性導電接着剤における含有量は、少なすぎると異方性導電接着剤の接続信頼性が低下する傾向があり、多すぎると増粘や凝集により異方性導電接続の際にハンドリング性が低下し、異方性導電フィルムの製造に支障が生じる傾向があるので、後述するような成膜性樹脂、液状エポキシ化合物、エポキシ用硬化剤及びシランカップリング剤の合計100質量部に対し、好ましくは10〜80質量部、より好ましくは20〜50質量部である。
【0044】
また、絶縁被覆磁性導電粒子2と磁性導電微粒子3との質量配合比は、磁性導電微粒子3に対する絶縁被覆磁性導電粒子2の量が多すぎると絶縁被覆磁性導電粒子の周りに磁性導電微粒子が付着し難くなり、導通性が低下する傾向があり、少なすぎると絶縁被覆磁性導電粒子の周りに磁性導電微粒子が多く付着しすぎるため、絶縁性が低下する傾向があるので、好ましくは、20:1〜7:8(=[絶縁被覆磁性導電粒子:磁性導電微粒子])、より好ましくは18:1〜7:5(=[絶縁被覆磁性導電粒子:磁性導電微粒子])である。
【0045】
<異方性導電接着剤を構成する絶縁性接着剤1>
本発明の異方性導電接着剤を構成する絶縁性接着剤1は、成膜性樹脂、液状エポキシ化合物、エポキシ用硬化剤及びシランカップリング剤を含有する。
【0046】
成膜性樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。これらの中でも、製膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好ましく使用することができる。
【0047】
液状エポキシ化合物としては、エポキシ当量(g/eq)が通常100〜4000程度であって、分子中に2以上のエポキシ基を有するものが好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、エステル型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物等を好ましく使用することができる。また、これらの化合物にはモノマーやオリゴマーが含まれる。これらの2種以上を併用することができる。
【0048】
液状エポキシ化合物の絶縁性接着剤中の含有量は、少なすぎると異方性導電接続の際に異方性導電接着剤の硬化が不十分になる傾向があり、多すぎてもフィルム形成能が低下する傾向があるので、好ましくは成膜性樹脂100質量部に対し、好ましくは20〜60質量部、より好ましくは40〜60質量部である。
【0049】
エポキシ用硬化剤としては、ポリアミン、イミダゾール等のアニオン系硬化剤やスルホニウム塩などのカチオン系硬化剤、フェノール系硬化剤等の潜在性硬化剤を挙げることができる。
【0050】
エポキシ用硬化剤の絶縁性接着剤中の含有量は、少なすぎると異方性導電接続の際に異方性導電接着剤の硬化が不十分になる傾向があり、多すぎてもフィルム形成能が低下する傾向があるので、好ましくは液状エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは20〜60質量部、より好ましくは30〜50質量部である。
【0051】
シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、主としてアルコキシシラン誘導体である。
【0052】
シランカップリング剤の絶縁性接着剤中の含有量は、少なすぎると異方性導電接続の際の異方性導電接着剤の接着性が低下する傾向があり、多すぎてもフィルム形成能が低下する傾向があるので、好ましくは成膜用樹脂と液状エポキシ化合物の合計100質量部に対し、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは0.5〜2質量部である。
【0053】
絶縁性接着剤には、必要に応じてシリカ、マイカなどの充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、帯電防止剤、防腐剤、架橋剤、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを配合することができる。
【0054】
<異方性導電接着剤の製造>
成膜性樹脂、液状エポキシ化合物、エポキシ用硬化剤及びシランカップリング剤を含有する絶縁性接着剤中に、絶縁被覆磁性導電粒子が分散されてなる異方性導電接着剤であって、絶縁被覆磁性導電粒子が脱磁処理されたものであり、更に、脱磁処理後に着磁処理された磁性導電微粒子を、成膜性樹脂、液状エポキシ化合物、エポキシ用硬化剤及びシランカップリング剤の合計100質量部に対し5〜70質量部含有しており、該磁性導電微粒子は、0.05〜0.5μmの平均粒子径を有し且つその平均粒子径は、該絶縁被覆磁性導電粒子の平均粒子径の1〜10%であることを特徴とする本発明の異方性導電接着剤は、以下の工程(A)及び(B)を有する製造方法により製造することができる。以下に工程毎に説明する。
【0055】
工程(A)
まず、絶縁被覆磁性導電粒子を脱磁処理し、他方、磁性導電微粒子を脱磁処理した後に着磁処理する。脱磁処理や着磁処理の手法としては、公知の手法を適用することができる。また、磁性導電微粒子が磁性金属又は合金微粒子である場合に、キュリー温度以上への加熱で脱磁してもよく、また
図2又は
図3に提示したような脱磁・着磁装置を用いて脱磁や着磁を行うこともできる。なお、絶縁被覆磁性導電粒子が、樹脂コアニッケルメッキ粒子である場合には、キュリー温度以上への加熱ではなく、他の手法により脱磁処理すべきである。
【0056】
工程(B)
次に、成膜性樹脂、液状エポキシ化合物、エポキシ用硬化剤及びシランカップリング剤を含有する絶縁性接着剤に、脱磁処理された絶縁被覆磁性導電粒子及び脱磁処理後に着磁処理された磁性導電微粒子、並びに必要に応じて有機溶媒を公知の手法により混合分散する。これにより異方性導電接着剤を得ることができる。ここで、多くの場合、この混合分散過程で、磁性導電微粒子が絶縁被覆磁性導電粒子の表面に付着する。また、脱磁処理された絶縁被覆磁性導電粒子表面に、脱磁処理後に着磁処理された磁性導電微粒子を付着させておき、それを絶縁性接着剤に混合してもよい。
【0057】
なお、磁性導電微粒子が絶縁被覆磁性導電粒子の表面に付着している様子は、電子顕微鏡により観察することができる。
【0058】
絶縁性接着剤は、成膜性樹脂、液状エポキシ化合物、エポキシ用硬化剤及びシランカップリング剤を予め混合して調製しておいてもよく、これらの成分と絶縁被覆磁性導電粒子及び磁性導電微粒子、更に必要に応じて有機溶剤とを同時に混合して調製してもよい。混合の手法としては、公知の混合手法を利用することができる。
【0059】
有機溶剤としては、公知の異方性導電接着剤、異方性導電フィルム形成用組成物に用いられているトルエンなどの溶剤を使用することができる。その使用量は、必要とする粘度等に応じて適宜決定される。
【0060】
なお、異方性導電接着剤がフィルムである場合に、工程(B)に続き以下の工程(C)を実施することが好ましい。
【0061】
工程(C)
フィルム形成用に有機溶媒を配合して粘度調整した異方性導電接着剤を、剥離基材の片面に、やはり公知の成膜方法に従って塗布し、乾燥する。これにより異方性導電フィルムを形成することができる。
【0062】
剥離基材としては、シリコーン剥離処理してポリテレフタレートフィルムを好ましく使用することができる。塗布・乾燥の操作並びに条件については、従来の異方性導電フィルムの作製の際の塗布・乾燥の操作並びに条件を採用することができる。
【0063】
<接続構造体>
以上説明した本発明の異方性導電接着剤、好ましくは異方性導電フィルムは、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とを異方性導電接続する際に、好ましく適用することができる。この異方性導電接続により第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが異方性導電接続されてなる接続構造体が得られる。このような接続構造体も本発明の一態様である。
【0064】
第1の電子部品及び第2の電子部品としては、発光素子、半導体チップ、半導体モジュールなどの公知の電気素子、フレキシブルプリント配線基板、ガラス配線基板、ガラスエポキシ基板等を適用することができる。また、端子は、銅、金、アルミ、ITOなどの公知の材料から形成された配線や電極パッドあるいはバンプであってもよく、そのサイズにも特に制限はない。
【0065】
なお、本発明の接続構造体の具体例として、COG(chip on glass)、COF(chip on film)、FOG(film on glass)、FOB(Film on Board)等と称されるものを好ましく挙げることができる。
【0066】
<接続構造体の製造方法>
以上説明した接続構造体は、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子との間に、上述の異方性導電接着剤、好ましくは異方性導電フィルムを配し、異方性導電フィルムを加熱しながら第1の電子部品を第2の電子部品に押圧することにより、それらの端子同士を異方性導電接続することにより製造することができる。この場合、押圧は、金属製加圧ボンダーや弾性ボンダーなどを使用して行うことができる。加熱については、第1の電子部品又は第2の電子部品が載置されるステージに加熱手段を設けて加熱してもよく、ボンダーに加熱手段を設けて加熱してもよい。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0068】
参照例、実施例1〜9、比較例1〜10
<異方性導電フィルムの作製>
樹脂コアに100nm厚の無電解ニッケルメッキ層が形成された磁性導電粒子(平均粒子径4μm(ブライト20GNR、日本化学工業(株)))と、成膜成分としてビスフェノールA型フェノキシ樹脂(YP50、新日鐵化学(株))と、液状エポキシ化合物成分としてビスフェノールAエポキシ化合物(EP828、三菱化学(株))と、イミダゾール系硬化剤(ノバキュア3941HP、旭化成ケミカル(株))と、シランカップリング剤(A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社)と、磁性導電微粒子(ニッケル微粒子)とを、表1及び表2に示す配合割合で、トルエンで固形分が50質量%となるように混合することにより異方性導電フィルム形成用組成物を調製した。この組成物を、剥離処理した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに乾燥厚25μmとなるようにバーコータで塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥することにより、異方性導電フィルムを作成した。
【0069】
なお、参照例は、磁性導電微粒子を使用しないこと以外は、実施例1と同様に異方性導電フィルム、接続構造体を作製した例である。
【0070】
<磁性導電粒子の前処理>
なお、母粒子である磁性導電粒子(ブライト20GNR)について、以下に説明するように絶縁被覆をしたものと、絶縁被覆していないものとを用意し、表1、表2に示すように、実施例・比較例に応じて使い分けた。
【0071】
(磁性導電粒子に対する絶縁被覆の形成)
粒子用樹脂コーティング装置(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製)を用い、磁性導電粒子の表面を、アクリル酸・スチレン共重合体(PP−2000S、大日本インキ化学工業株式会社)で被覆した。熱硬化後の絶縁被覆厚は0.2μmであった。
【0072】
また、絶縁被覆磁性導電粒子については、脱磁処理を施したものと、施していないものとを用意し、表1、表2に示すように、実施例・比較例に応じて使い分けた。
【0073】
(絶縁被覆磁性導電粒子の脱磁処理)
図1に示す着磁・脱磁装置(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製)を用い、脱磁速度1mm/秒、磁界強度400Gにて脱磁処理を行った。
【0074】
<磁性導電微粒子の前処理>
子粒子である磁性導電微粒子(Ni微粒子)について、以下に説明するように絶縁被覆をしたものと、絶縁被覆していないものとを用意し、表1、表2に示すように、実施例・比較例に応じて使い分けた。
【0075】
(磁性導電微粒子に対する絶縁被覆の形成)
粒子用樹脂コーティング装置(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製)を用い、磁性導電微粒子の表面を、アクリル酸・スチレン共重合体(PP−2000S、大日本インキ化学工業株式会社)で被覆した。絶縁被覆厚は5nmであった。
【0076】
また、絶縁被覆された又はされていない磁性導電微粒子については、以下に説明するように、脱磁処理を施した後、着磁処理したものと、脱磁処理を施すことなく、着磁処理をしたものとを用意し、表1、表2に示すように、実施例・比較例に応じて使い分けた。
【0077】
(磁性導電微粒子の脱磁処理・着磁処理)
図1に示す着磁・脱磁装置(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製)を用い、脱磁速度1mm/秒、磁界強度400Gにて脱磁処理を行った。その後、同着磁・脱磁装置を用い、磁界強度400Gにて粒子を移動させず10秒間放置後、脱磁装置の電源を切断することで、着磁処理を行った。
【0078】
(磁性導電微粒子の着磁処理)
図1に示す着磁・脱磁装置(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製)を用い、脱磁処理を行うことなく、磁界強度400Gにて粒子を移動させず10秒間放置後、脱磁装置の電源を切断することで、着磁処理を行った。
【0079】
<接続構造体の作成>
更に、得られた異方性導電フィルムを、以下の電極を有するガラス配線基板の電極と、金バンプ(長さ85μm×幅30μm×高さ15μm、バンプピッチ:35μm、バンプ間スペース10μm)が形成されたICチップ(1.8mm×20mm、0.5mm厚)のバンプとの間に配置し、フリップチップボンダーで190℃、60MPaで10秒間加熱加圧することにより接続構造体を得た。
【0080】
(ガラス配線基板の電極材料)
ITO: ポリ(インジウムスズ酸化物)、表面粗さRa=約10.0nm、表面抵抗=10Ω/□
α−ITO:アモルファス(インジウムスズ酸化物)、表面粗さRa=約1.0nm、表面抵抗=10Ω/□
IZO:インジウム亜鉛酸化物、表面粗さRa=約2.0nm、表面抵抗=10Ω/□
Ti:ニオブ添加二酸化チタン、表面粗さRa=約10.0nm、表面抵抗=5Ω/□
【0081】
<評価>
得られた接続構造体について、「接続抵抗」及び「絶縁抵抗」を以下に説明するように測定し評価した。また、絶縁被覆磁性導電粒子のガラス基板の電極への食い込み量を以下のように求めた。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0082】
(接続抵抗評価)
得られた接続構造体の導通抵抗値を、4端子法(インプット電流1mA)により測定し、以下の評価基準に従って評価した。実用上、評価ランクがA又はBであることが望まれる。
【0083】
ランク 内容
A: 接続抵抗値が10Ω未満
B: 接続抵抗値が10Ω以上50Ω未満
C: 接続抵抗値が50Ω以上100Ω未満
D: 接続抵抗値が100Ω以上
【0084】
(絶縁抵抗評価)
得られた接続構造体の隣接ライン間の抵抗値を絶縁抵抗値を測定(印加電圧30V)し、以下の評価基準に従って評価した。実用上、評価ランクがA又はBであることが望まれる。
【0085】
ランク 内容
A: 絶縁抵抗値が1×10
9Ω以上
B: 絶縁抵抗値が1×10
8Ω以上1×10
9Ω未満
C: 絶縁抵抗値が1×10
7Ω以上1×10
8Ω未満
D: 絶縁抵抗値が1×10
7Ω未満
【0086】
(食い込み量測定)
異方性導電接着後、絶縁被覆磁性導電粒子の表面に付着した磁性導電微粒子の、ガラス基板側の電極への食い込み量(nm)を、走査型電子顕微鏡(S−4700、(株)日立製作所)を用いて観察し、観察画像から読み取った。なお、観察サンプルは実装品サンプルを断面カット処理することにより調製した。実用上、食い込み量は、材料により異なるが、30nm以上であることが望まれる。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
表1からわかるように、磁性導電微粒子を配合していない参照例の異方性導電フィルムを使用した接続構造体の絶縁抵抗評価はA評価であったが、ガラス基板の電極への食い込み量(5又は10nm)が小さく、接続抵抗評価がC又はD評価であった。
【0090】
それに対し、本願発明の実施例1〜9の異方性導電フィルムを使用した接続構造体の場合、接続抵抗評価及び絶縁抵抗評価はいずれもA又はB評価であった。また、いずれも食い込み量が35nm以上あった。
【0091】
一方、磁性導電微粒子の配合量が、絶縁性接着剤成分100質量部に対し、80質量部以上と比較的多くなっている比較例1及び2の異方性導電フィルムを使用した接続構造体の場合、接続抵抗評価がA又はB評価であったが、絶縁抵抗評価がC又はD評価であった。
【0092】
磁性導電微粒子の平均粒径が、0.7μm以上と比較的大きくなっている比較例3及び4の異方性導電フィルムを使用した接続構造体の場合、接続抵抗評価にA評価はなく、絶縁抵抗評価がC又はD評価であった。また、食い込み量も実施例に比べると減少していた。
【0093】
磁性導電粒子が絶縁被覆されていない異方性導電フィルムを使用した比較例5及び6の異方性導電フィルムを使用した接続構造体の場合、絶縁抵抗評価はいずれもD評価であった。
【0094】
脱磁処理を施さずに着磁処理を施した磁性導電微粒子を使用した比較例7及び8の異方性導電フィルムを使用した接続構造体の場合、絶縁抵抗評価はいずれもC評価であった。
【0095】
脱磁処理を施していない絶縁被覆磁性導電粒子を使用した比較例8〜10の異方性導電フィルムを使用した接続構造体の絶縁抵抗評価は、いずれもC評価であった。