特許第5757444号(P5757444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757444
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】工業用刃物の取替えユニット
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/36 20060101AFI20150709BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   B26D1/36 D
   B26D7/26
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-18995(P2011-18995)
(22)【出願日】2011年1月13日
(65)【公開番号】特開2012-143858(P2012-143858A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105280
【氏名又は名称】ケイディケイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 義和
(72)【発明者】
【氏名】土屋 雅人
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0212176(US,A1)
【文献】 米国特許第04658875(US,A)
【文献】 米国特許第03989077(US,A)
【文献】 特開2009−226514(JP,A)
【文献】 特開平11−123694(JP,A)
【文献】 特開平06−304895(JP,A)
【文献】 特開平08−112798(JP,A)
【文献】 特開昭48−051389(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2006−0062742(KR,A)
【文献】 特開2008−307611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/00−11/00
B26D 1/00− 1/24
B26D 1/25− 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン胴と当該ミシン胴に設けられた工業用刃物取付用の溝に工業用刃物を取り付けるための固定板からなる工業用刃物の取替えユニットにおいて、前記固定板が工業用刃物を固着させるための磁石と前ミシン胴に設けられた溝に固着するための磁石を有すると共に当該固定板に固着された工業用刃物をミシン胴の溝の側壁に押し付けて固定するためのボルトとからなる工業用刃物の取替えユニットであり、前記固定板の工業用刃物を固着する側の面に工業用刃物の出しろを調整するための基準線が明示されていることを特徴とした工業用刃物の取替えユニット。
【請求項2】
ミシン胴に形成されている工業刃物の取付け用の溝がミシン胴の両側端の内方において固定板の形状と合致する台形または直線と曲線の組み合わせによる形状に形成されたことを特徴とした請求項1に記載の工業用刃物の取替えユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば長尺シートにミシン加工を施す、ミシン胴に取り付けるミシン刃等の工業用刃物を、容易に交換することが出来る工業用刃物の取替えユニットに関する。詳しくは長尺状の用紙やフィルムシート等を切断したり、或いはミシン目を入れたりするための工業用刃物が磨耗した際に、素人でも短時間で容易に新品の工業用刃物と交換することが可能な、工業用刃物の取替えユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシン胴にミシン刃等の工業用刃物を取り付ける方法は、図1に示すようにミシン胴1に掘られた溝2にミシン刃3をライナーと呼ばれる固定板4と共に挿入し、図2に示すように溝2内の側壁にミシン刃3を固定板4と共に固定板4に設けられたボルト5で押し付けて動かないように固定して使用していた。この方法では、ミシン胴1から突出するミシン刃3の高さを微妙に調整する必要がある。例えば、当初ミシン刃3を長手方向に渡り、平均して1mm前後ミシン胴1から突出させ、その状態で固定板4の側面に複数設けられているボルト5により固定板4と共に溝の側壁に軽く押し当てることによりミシン刃3を仮固定する。その後ミシン胴1を空回転させ、突出したミシン刃3をバックアップローラ7(図7参照)に押し当てる。そうすると、前記突出しすぎたミシン刃3はバックアップローラ7の表面に接触する距離まで押し込まれるため、通過する長尺状用紙等を切断するのに必要な出しろを確保することができるのである。その後改めてボルト5の本締めを行い、ミシン刃3を設定した位置から動かないように強く固定するのである。
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0212176号明細書
【特許文献2】特開昭61−81365号公報
【特許文献3】特表平6−507121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記取り付方法では、手作業によりミシン刃を長手方向に渡り、平均して1mm前後ミシン胴に対して平行に突出させて仮固定するのであるが、その手作業はあまりにも微妙過ぎて熟練したオペレータにとっても至難の業である。また仮固定させるためのボルトへの力の入れ具合も微妙で熟練を要する。即ち、ボルトを閉め込みすぎると、ミシン刃が完全に固定されてしまいバックアップローラに強く当たって動かなくなってしまう。また閉め込みが弱いと、回転途中でミシン刃が抜け落ちてしまう等の障害が発生する。
【0004】
また工業用刃物の取り付けが不十分な場合、長尺状用紙やフィルムシートが不十分に切断されて不良品を発生させたりする。さらに工業用刃物の出しろが多すぎると当該刃物が短時間で磨耗してしまうため極めて不経済である。
【0005】
このような状況下において、前記ミシン胴を扱うオペレータ達は、長尺状の用紙やフィルムシートが確実に切断或いはミシン目が入るように何回も、場合によっては何十回も工業用刃物のセットのやり直しを余儀なくされ、長々と無駄な時間を費やすことになる。ミシン刃を取り替えるオペレータとしては簡単に短時間で取替え可能なミシン刃の取り付けユニットがあれば、作業効率が格段に向上するところである。
本発明は、前記問題に鑑み、ミシン刃等の工業用刃物が磨耗した際にきわめて容易に取替えることが可能な工業用刃物の取替えユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の工業用刃物の取替えユニットは、ミシン胴と当該ミシン胴に設けられた工業用刃物取付用の溝に工業用刃物を取り付けるための固定板からなる工業用刃物の取替えユニットにおいて、前記固定板が工業用刃物を固着させるための磁石と前ミシン胴に設けられた溝に固着するための磁石を有すると共に当該固定板に固着された工業用刃物をミシン胴の溝の側壁に押し付けて固定するためのボルトとからなる工業用刃物の取替えユニットであり、前記固定板の工業用刃物を固着する側の面に工業用刃物の出しろを調整するための基準線が明示されていることを特徴としている。
【0007】
また、上記問題を解決するために、本発明の異なる工業用刃物の取替えユニットは、ミシン胴に形成されている工業用刃物の取付け用の溝がミシン胴の両側端に至ることがなく、前記ミシン胴の両側端の内方において固定板の形状と合致する台形または直線と曲線の組み合わせによる形状に形成された溝であることを特徴としている。
【0008】
前記固定板の材質に格別な制限はない。公知の金属、合成プラスチック樹脂、木、セラミック、ゴム、紙、それらの混合物等を使用することができる。
【0009】
また固定板に埋設される磁石やボルトの材質、数量、形状、磁石においては磁力等にも格別な制限はない。
【0010】
さらにミシン胴や、ミシン胴と対となって共に設けられるバックアップローラ等の、材質や径及び幅等にも格別な制限はない。通常は剛性や表面の強固さを必要とするため、金属表面に表面を硬化させる処理を施したものが用いられるがそれに限られることはない。
【0011】
さらにまた本発明で使用する工業用刃物は、例えば厚み0.7mm、硬度HS70°の片刃タイプや厚み0.3mm、硬度HS85°の両刃タイプのものを好適に使用することが可能であるがこれに限られるものではない。
【0012】
なお、固定板の形状とミシン胴に設けられる溝の形状は、固定板の向きが一定の向きの場合に合致して挿入が可能になるようにしておけば、工業用刃物が正しい位置に確実に設置されるため作業中の事故が防止されて効率が高まる。
【0013】
また、固定板に工業用刃物を磁石により固着させる際に、工業用刃物がバックアップローラに当たり押し込められるために必要とする突出量が容易に確認できるよう基準線を罫書いておけば至便である。前記罫書線は、例えばミシン胴に当たり始める突出位置と、それ以上突出させると調整に支障が出始める位置において施しておけば、作業者は前記2本の罫書線の中間に無造作に工業用刃物を固着させればよいので極めて至便である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の工業用刃物の取替えユニットによれば、固定板に埋設された磁石の磁力を利用するので工業用刃物を固定板に押し当てればそのまま貼り付いてしまう。そして工業用刃物をセットした固定板を溝に入れれば、固定板の要所に埋設された磁石の磁力により、固定板の下面と溝の底部及び工業用刃物と溝の側壁に完全に密着する。このようにして設置した工業用刃物は仮固定の状態で強固に固定されていない。従って、工業用刃物を固定板に無造作に取り付けた後にミシン胴を回転させて、工業用刃物をバックアップローラに当てれば、自動的にミシン胴の溝内に突出し過ぎた分だけ押し戻されて出しろが調整される。
【0015】
また固定板及びミシン胴の溝が、一定方向でないとお互いが合致することがない形状の場合、取付方向を誤って取り付けたまま稼動させて刃物やユニットを破損させてしまうような事故も起こり得ない。即ち、初心者でも磨耗した工業用刃物の取替えに際して煩わしい調整がなくなり、極めて短時間で正確に取り替え作業を完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来の工業用刃物の取付け方法を示す斜視図である。
図2】従来の工業用刃物の取付け状態を示すミシン胴における断面図である。
図3】(A)、(B)及び(C)は本発明を構成する取り付け板の平面図、X−X線断面図及びY−Y線断面図である。
図4】本発明の工業用刃物の取替えユニットを示す斜視図である。
図5】本発明の工業用刃物の取替えユニットにおける工業用刃物の取り付け状態を示す断面図である。
図6】工業用刃物を固定板に取り付ける際に目安となる2種類の基準線の状態を示す斜視図である。
図7】ミシン胴の動きを示す要部概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図3(A)に示すように、本発明に係る固定板4は例えば平面図において、或いは同図(B)及び(C)に示すように断面が台形の角柱である。そして同図(B)に示すように磁石6が側面と底面にほぼ等間隔に埋め込まれている。また同図(A)及び(C)に示すように、ほぼ等間隔で配置されている磁石6の間にボルト5が突出自在に設けられている。
【0018】
なお、前記固定板4側面並びに底面の磁石6の配置に関しては格別な制限はない。ほぼ均等な固定力で仮固定できるように適宜配置すればよい。同様にボルト5の配置に関しても格別な制限はなく、ほぼ均等な固定力で強固に固定板と工業用刃物をミシン胴1の溝2側壁に押し付けることができればよい。またボルトの取付穴は固定板4を貫通する必要はなく、固定板4の途中まで掘り下げた袋状でも構わない。
【0019】
本発明の工業用刃物の取替えユニットによる刃物の交換手順は、図4に示すように、ミシン胴1から予め取り外された固定板4の磁石6側の側面に工業用刃物3を貼り付ける。磁力により近づけるだけで自動的に固着されるが、その状態で工業用刃物3を自在にスライドすることが可能なため、オペレータサイドで必要と思われる出しろ分を目検討で突出させておけばよい。
【0020】
なお、図6に示すように、本実施例では工業用刃物3を固定板4に固着させる位置の目安予め罫書かれている。例えば、図6中直線で示す罫線aは、その線よりも下に工業用刃物3の下側の辺cを固着させると出しろが少ないために、ミシン胴1を回転させた際にバックアップローラ11に接触しない位置であり、また破線で示す罫線bは、その線よりも上に工業用刃物3の下側の辺cを固着させると出しろが多すぎてバックアップローラ11に工業用刃物3が当たりすぎて刃物が欠ける等の事故が発生することが予測される位置である。このように工業用刃物3の固着位置を明示しておけば、現場のオペレータは無造作に固定板4に固着した工業用刃物3をスライドさせて、工業用刃物3の下側の辺cを前記罫線a及びbの間のスペースに固定するだけでよいのである。
【0021】
そしてその後ミシン胴1に掘られた溝2の形状と合致させて、前記工業用刃物3が固着された固定板4を落とし込めばよい。そうすれば固定板4に設けられている側面と底面の磁石6により自動的に図5に示す配置に固着する。
【0022】
その後図7に示すように、ミシン胴1を回転させると、同調して回転するバックアップローラ7表面に工業用刃物が当たる。しかし既述の通り工業用刃物3は固定板4と共に仮固着の状態のため、バックアップローラ7の表面に接触する位置まで溝2の内方へ押し込められて安定する。その状態でボルト5を本締めして固定板4を強固に固定して準備は完了する。
【0023】
既述のように準備を完了した工業用刃物の取替えユニットを稼動させると、図7に示すように、一点鎖線で示すパスラインPを通過する長尺状の用紙やフィルムシートは、工業用刃物3がバックアップローラ7の外周面と接触する毎に切断されるのである。
【0024】
なお、ミシン胴1の溝2及び固定板4の形状がほぼ同一形状に設定されているが、このようにすれば仮に固定板4を逆向きに入れようとしても、形状が合わないために入れることはできない。従って取付け向きの間違いを防止する役目を果たしている。
【0025】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。例えば、固定板4の形状は外形において或いは断面においても、作業に支障が出ない範囲に限られるが必ずしも台形である必要はない。
【符号の説明】
【0026】
1 ミシン胴
2 溝
3 工業用刃物
4 固定板
5 ボルト
磁石
7 バックアップローラ
a、b 罫線
c 工業用刃物3の下側の辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7