【実施例1】
【0030】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態の構成を説明する。
図1は、本発明の実施例1のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。このスイッチング電源装置は、
図1に示すように、トランスT1の二次巻線Ns側が半波整流回路となっている電流共振型のスイッチング電源装置である。
図13に示す従来の装置と異なる点は、抵抗R3,R4,R5、基準電圧Vref1、及びスイッチQ1,Q2が追加されている点である。なお、
図1において、
図13における従来装置の構成要素と同一ないし均等のものは、前記と同一符号を以て示す。
【0031】
ハイサイドのスイッチング素子Qhは、本発明の第1スイッチ素子に対応する。また、ローサイドのスイッチング素子Qlは、本発明の第2スイッチ素子に対応する。これらのスイッチング素子Qh,Qlは、例えばMOSFETである。スイッチング素子Qhとスイッチング素子Qlとが直列に接続された直列回路は、本発明の第1直列回路に対応し、直流電源Viの両端に接続されている。この直流電源Viは、例えば、商用交流電源を全波整流し、平滑コンデンサで平滑することで得られた直流電圧を出力する電源回路により構成される。
【0032】
また、共振コンデンサCriと共振リアクトルLrとトランスT1の1次巻線Npとが直列に接続された直列回路は、本発明の第2直列回路に対応し、スイッチング素子Qlに並列に接続されている。また、スイッチング素子Qlには電圧共振コンデンサCrvが並列に接続されている。
【0033】
ダイオードRCと平滑コンデンサCoとによる直列回路は、本発明の整流平滑回路に対応し、トランスT1の二次巻線Nsに並列接続され、トランスT1の二次巻線Nsの電圧を整流平滑するものであり、図からわかるように半波整流平滑回路として動作する。この整流平滑回路で得られた平滑コンデンサCoの直流電圧は、
図1に示すスイッチング電源装置の出力電圧となり、平滑コンデンサCoに並列接続された負荷Roに直流電力を供給する。
【0034】
また、
図1には詳細が図示されていないが、
図1に記載のスイッチング電源装置は、制御回路を有している。この制御回路は、上述した整流平滑回路の出力電圧(負荷Roの両端に印加される電圧)に基づいて、出力電圧が所定の値に保持されるようにスイッチング素子Qhとスイッチング素子Qlとを交互にオン/オフさせる。
【0035】
コンデンサC1、及び抵抗R1,R3は、本発明の電流検出部に対応し、スイッチング素子Qhがオン時の共振コンデンサCriに流れる電流を検出する。すなわち、スイッチング素子Qhがオン時において回路を流れる電流は、共振コンデンサCriとコンデンサC1とにより分流される。その際にコンデンサC1に流れる電流は、共振コンデンサCriに流れる電流に比例しており、抵抗R1と抵抗R3とに流れる。
【0036】
抵抗R1,R2,R3,R5、基準電圧Vref1、スイッチQ1,Q2、ダイオードD1、コンデンサC2、及び抵抗R4は、本発明の積分回路に対応し、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換するとともに、当該電圧信号の電圧値が第1基準電圧値以上である期間に当該電圧信号を積分する。第1基準電圧値は、抵抗R1,R3の大きさの比率を調節することにより予め設定することができる値であり、スイッチQ1がオフからオンに切り替わる際における、抵抗R1,R3による直列回路の両端電圧である。
【0037】
すなわち、コンデンサC1を流れる電流は、抵抗R1,R3により電圧信号に変換される。この電圧信号による電圧値(抵抗R1,R3による直列回路の両端電圧)が第1基準電圧値未満である場合には、スイッチQ1がオフしており、基準電圧Vref1がベースに印加されたスイッチQ2はオンしている。したがって、コンデンサC1を電流が流れ始めたときにおいて、電圧信号による電圧は、積分回路の抵抗R2を介してコンデンサC2を充電しようとするが、スイッチQ2がオンしていることによりGndレベルにクランプされているため、C2を充電できない。
【0038】
一方、回路の電流値が上昇し、電圧信号による電圧値が第1基準電圧値以上になると、抵抗R3の両端電圧は、スイッチQ1をオンさせる。これによりスイッチQ2がオフするため、電圧信号による電圧は、積分回路の抵抗R2を介してコンデンサC2の充電を開始する。回路の電流が下降すると、スイッチQ1がオフするため、再びスイッチQ2がオンし、コンデンサC2の充電は停止する。
【0039】
図2は、本実施例のスイッチング電源装置において、入力電圧Vin(直流電源Viの電圧)を変化させた場合の動作波形を比較する波形図である。また、
図2中の電圧V1は、第1基準電圧値を示す。
【0040】
図13に示すような従来回路における積分回路は、ピーク充電となるため、
図2中の丸で示した共振電流のピーク付近の期間でコンデンサが充電される。この期間で充電されると、入力電圧に対する差が少ないため、補正は不可能である。
【0041】
これに対し、本実施例のスイッチング電源装置は、
図2中の矢印で示した期間が入力電圧の大小に応じて差が大きいことを利用して入力電圧に対する補正を可能とするものであり、検出電圧(抵抗R1,R3による直列回路の両端電圧)が第1基準電圧値V1以上の期間にのみ、積分回路のコンデンサC2に充電する。
【0042】
すなわち、本実施例のスイッチング電源装置における積分回路は、抵抗R1,R3による直列回路の両端電圧が
図2に示すV1以上の電圧のみコンデンサC2に充電する。
【0043】
図2中の点線で示した波形は、入力電圧が低電圧の場合における波形である。また、実線で示した波形は、入力電圧が高電圧の場合における波形である。特定の電圧以上を充電した場合、入力電圧が低電圧の場合は充電時間が長く、入力電圧が高電圧の場合は充電時間が短い。このため、充電時間が長い場合にはコンデンサC2に蓄えるエネルギが大きく、短い場合にはコンデンサC2に蓄えられるエネルギが小さくなる。第1基準電圧値V1が低い場合にはこの差は大きくなり、第1基準電圧値V1が高い場合にはこの差は小さくなる。
【0044】
すなわち、本実施例のスイッチング電源装置は、入力電圧の大小に応じて共振電流(それに伴う検出電圧)のピーク値が変動したとしても、第1基準電圧値V1を調整することにより、コンデンサC2に蓄えられるエネルギを調節し、入力電圧に対する補正を行うことができる。例えば、本実施例のスイッチング電源装置は、第1基準電圧値V1を調整することにより、入力電圧が高い場合でも低い場合でも、同じ大きさのエネルギがコンデンサC2に蓄えられるように構成することができ、入力電圧が変動した場合においても適切な過電流検出を行うことが可能となる。
【0045】
また、
図1には詳細が図示されていないが、
図1に記載のスイッチング電源装置は、過電流保護部を有している。この過電流保護部は、積分回路による出力電圧Vocと第2基準電圧値とを比較し、積分回路による出力電圧Vocが第2基準電圧値以上である場合に、スイッチング素子Qhをオフさせる。第2基準電圧値は、予め過電流保護部に設定された値であり、過電流と認められる電流が共振電流として流れた場合に、抵抗R4の両端電圧Vocが当該第2基準電圧値を超えるように設定する。
【0046】
その他の構成は、
図11,13で説明した従来の装置と同様であり、重複した説明を省略する。
【0047】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。過電流が流れていない通常の動作は、
図11,13で説明した従来の装置と同様である。負荷短絡等の回路異常時に過電流が流れた場合には、電圧信号による電圧値(抵抗R1,R3による直列回路の両端電圧)が第1基準電圧値V1以上となり、コンデンサC2に充電される電圧が上昇する。このため、
図1に示すような簡単な構成で過電流検出、及び過電流検出値の入力電圧に対する補正を同時に一つの回路で行うことができる。
【0048】
図3は、本実施例のスイッチング電源装置において、抵抗R1を調整した場合における積分回路の出力電圧Vocを比較する図であり、シミュレーションにより得られた結果を示している。ただし、各定数は、抵抗R2:330Ω、抵抗R3:100Ω、コンデンサC2:0.1μF、抵抗R4:10kΩである。
【0049】
図3に示す例においては、抵抗R1を140Ωとした場合において、入力電圧が高い場合と低い場合とにおける積分回路の出力電圧Vocが一致しており、誤差0%となっている。すなわち、このシミュレーション結果によれば、抵抗R1を140Ωとした場合に入力電圧の高低にかかわらず積分回路の出力電圧Vocが一致するため、本実施例のスイッチング電源装置における過電流保護部は、出力電圧Vocに基づいて適切な過電流検出を行うことができる。
【0050】
図4は、本実施例のスイッチング電源装置において誤差0%時(抵抗R1を140Ωとした場合)の各部の動作波形を示す波形図である。ここで、
図4(a)は、入力電圧Vinが低い場合の動作波形を示す。
図4(b)は、入力電圧Vinが高い場合の動作波形を示す。また、太い実線は、共振電流の波形を示す。細い実線は、積分回路の出力電圧Vocを示す。さらに、細い破線は、ダイオードD1に流れる電流を示す。
【0051】
図4に示すように、積分回路の出力電圧Vocは、入力電圧Vinが低い場合と高い場合とで等しい値となっており、入力電圧に対する補正が有効に働いていることがわかる。また、ここでは共振電流のゼロからピーク値を100%とした場合の約80%以上を積分することでVocが一致している。
【0052】
第1基準電圧値V1を電圧信号(抵抗R1,R3による直列回路の両端電圧)の最大電圧値に対するパーセンテージで表す場合に、入力電圧Vinの高低にかかわらず積分回路の出力電圧Vocを一致させる第1基準電圧値V1は、抵抗値に応じて上下するものの、上限及び下限が存在する。
【0053】
図5は、本実施例のスイッチング電源装置において第1基準電圧値V1を上限付近に設定した場合の動作波形の1例を示す波形図であり、入力電圧Vinが高い場合と低い場合の共振電流及び従来装置と本発明における積分回路の出力電圧Vocを線種分けして描いている。また、
図5の場合においては、第1基準電圧値V1は、電圧信号(抵抗R1,R3による直列回路の両端電圧)の最大電圧値に対して75%である。
【0054】
図5に示すように、従来装置の場合においては、入力電圧Vinが高い場合と低い場合とで積分回路の出力電圧Vocに差があるところ、本実施例のスイッチング電源装置は、入力電圧Vinの高低にかかわらず積分回路の出力電圧Vocに差が無い。
【0055】
また、
図6は、本実施例のスイッチング電源装置において第1基準電圧値V1を下限付近に設定した場合の動作波形の1例を示す波形図である。
図6の場合においては、第1基準電圧値V1は、電圧信号(抵抗R1,R2による直列回路の両端電圧)の最大電圧値に対して15%である。
【0056】
図6に示すように、従来装置の場合においては、入力電圧Vinが高い場合と低い場合とで積分回路の出力電圧Vocに差があるところ、本実施例のスイッチング電源装置は、入力電圧Vinの高低にかかわらず積分回路の出力電圧Vocに差が無い。
【0057】
上述したように、電流検出に使用する抵抗値に応じて、入力電圧Vinの高低にかかわらず積分回路の出力電圧Vocを一致させる第1基準電圧値V1を任意に設定することはできるが、その値には上限及び下限が存在する。上限あるいは下限を越える値を第1基準電圧値V1として設定すると、入力電圧Vinに応じた補正が困難となる。
【0058】
第1基準電圧値V1によって、積分回路の時定数、特に抵抗R4の抵抗値が大きく関与するため、積分回路の出力電圧Vocの出力される電圧値が左右される。下限を超えていくと出力される電圧が低下し、また、上限値を超えた設定を行った場合、従来のピーク値を検出する方法に近づくこととなる。
【0059】
これらの上限あるいは下限を越えた場合に、常に入力補正が不可能となるわけではないが、本発明によるスイッチング電源装置の過電流検出に適切な抵抗を使用した場合に、入力電圧Vinの高低にかかわらず積分回路の出力電圧Vocを一致させる第1基準電圧値は、電圧信号の最大電圧値に対して15%以上、あるいは80%以下に入ると考えられる。
【0060】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係るスイッチング電源装置によれば、入力電圧Vinが変動した場合においても補正による適切な過電流検出を行うことができる。
【0061】
すなわち、本実施例のスイッチング電源装置は、電圧信号の電圧値が第1基準電圧値以上である期間に電圧信号を積分する積分回路を備えているので、充電タイミングを調整することができ、第1基準電圧値を予め適切な値に調整することにより適切に過電流検出を行うことができ、入力電圧の変動に応じたピーク値変動の影響を回避することができる。特に、本発明は、共振コンデンサに流れる電流が交流波形となる半波電流共振回路に適用することにより、上述した効果を発揮することができる。
【0062】
なお、
図7は、本実施例のスイッチング電源装置の別の構成例を示す回路図である。
図1に示すスイッチング電源装置と異なる点は、積分回路が抵抗R1,R2,R4、基準電圧Vref2、オペアンプOP1、ダイオードD1、及びコンデンサC2で構成されている点である。この積分回路は、実施例1と同様に、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換するとともに、当該電圧信号の電圧値が第1基準電圧値以上である期間に当該電圧信号を積分する。オペアンプOP1は、入力の差分をゲイン倍して出力する。また、第1基準電圧値は、基準電圧Vref2の大きさを調節することにより予め設定することができる値である。
【0063】
すなわち、コンデンサC1を流れる電流は、抵抗R1により電圧信号に変換される。この電圧信号による電圧値(抵抗R1の両端電圧)が第1基準電圧値(基準電圧Vref2)未満である場合には、オペアンプ1は電圧を出力しないので、コンデンサC2は充電されない。
【0064】
一方、回路の電流値が上昇し、電圧信号による電圧値(抵抗R1の両端電圧)が第1基準電圧値(基準電圧Vref2)以上になると、オペアンプOP1は、抵抗R1に発生した電圧と基準電圧Vref2との差分をゲイン倍した電圧を出力する。この電圧は、積分回路の抵抗R2を介してコンデンサC2の充電を開始する。回路の電流が下降すると、コンデンサC2の充電は再び停止する。
【0065】
図8は、
図7に示すスイッチング電源装置において誤差0%時(入力電圧にかかわらず積分回路の出力電圧Vocが一致する場合)の各部の動作波形を示す波形図である。ここで、
図8(a)は、入力電圧Vinが低い場合の動作波形を示す。
図8(b)は、入力電圧Vinが高い場合の動作波形を示す。また、太い実線は、共振電流の波形を示す。細い実線は、積分回路の出力電圧Vocを示す。さらに、細い破線は、抵抗R2に流れる電流を示す。
【0066】
図8に示すように、積分回路の出力電圧Vocは、入力電圧Vinが低い場合と高い場合とで等しい値となっており、入力電圧に対する補正が有効に働いていることがわかる。
【0067】
さらに、
図9は、本実施例のスイッチング電源装置の別の構成例を示す回路図である。
図1に示すスイッチング電源装置と異なる点は、積分回路が抵抗R1,R2,R4,R5、基準電圧Vref3、スイッチQ1、及びコンデンサC2で構成されている点である。この積分回路は、実施例1と同様に、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換するとともに、当該電圧信号の電圧値が第1基準電圧値以上である期間に当該電圧信号を積分する。第1基準電圧値は、基準電圧Vref3の大きさを調節することにより予め設定することができる値である。
【0068】
すなわち、コンデンサC1を流れる電流は、抵抗R1により電圧信号に変換される。この電圧信号による電圧値(抵抗R1の両端電圧)が第1基準電圧値(基準電圧Vref3)未満である場合には、スイッチQ1が導通しないので、コンデンサC2は充電されない。
【0069】
一方、回路の電流値が上昇し、電圧信号による電圧値(抵抗R1の両端電圧)が第1基準電圧値(基準電圧Vref3)以上になると、スイッチQ1が導通し、コンデンサC2の充電が開始される。回路の電流が下降すると、コンデンサC2の充電は再び停止する。
【0070】
図10は、
図9に示すスイッチング電源装置において誤差0%時(入力電圧にかかわらず積分回路の出力電圧Vocが一致する場合)の各部の動作波形を示す波形図である。ここで、
図10(a)は、入力電圧Vinが低い場合の動作波形を示す。
図10(b)は、入力電圧Vinが高い場合の動作波形を示す。また、太い実線は、共振電流の波形を示す。細い実線は、積分回路の出力電圧Vocを示す。さらに、細い破線は、抵抗R3に流れる電流を示す。
【0071】
図10に示すように、積分回路の出力電圧Vocは、入力電圧Vinが低い場合と高い場合とで等しい値となっており、入力電圧に対する補正が有効に働いていることがわかる。