特許第5757557号(P5757557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5757557バイアス点調整が可能な複数のマッハツェンダー構造を有する光変調器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757557
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】バイアス点調整が可能な複数のマッハツェンダー構造を有する光変調器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   G02F1/01 B
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2010-245735(P2010-245735)
(22)【出願日】2010年11月1日
(65)【公開番号】特開2011-197638(P2011-197638A)
(43)【公開日】2011年10月6日
【審査請求日】2013年9月27日
(31)【優先権主張番号】特願2010-42975(P2010-42975)
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(72)【発明者】
【氏名】千葉 明人
(72)【発明者】
【氏名】坂本 高秀
(72)【発明者】
【氏名】土屋 佑太
(72)【発明者】
【氏名】川西 哲也
【審査官】 林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−194784(JP,A)
【文献】 特開2010−028741(JP,A)
【文献】 特開2009−094988(JP,A)
【文献】 特開平10−115813(JP,A)
【文献】 特開平03−200925(JP,A)
【文献】 特開2005−309468(JP,A)
【文献】 特開2007−043638(JP,A)
【文献】 特開2004−020839(JP,A)
【文献】 特開2000−162563(JP,A)
【文献】 特開2008−242282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125
G02B 6/12−6/14
H04B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の分岐部(1)と,
前記第1の分岐部(1)から分岐した第1の導波路(2)と,
前記第1の導波路(2)に設けられたマッハツェンダー干渉計を有する第1の変調器(3)と,
前記第1の分岐部(1)から分岐した,前記第1の導波路(2)とは別の導波路であって,前記第1の導波路(2)と合波点(4)で合わさる第2の導波路(5)と,
前記第2の導波路(5)に設けられたマッハツェンダー干渉計を有する第2の変調器(6)とを有する光変調システムであって,

前記第1の変調器(3)は,
第1のメインマッハツェンダー導波路(7a)と,
前記第1のメインマッハツェンダー導波路(7a)の一方のアームに設けられた第1のサブマッハツェンダー導波路(8a)と,
前記第1のメインマッハツェンダー導波路(7a)の残りのアームに設けられた第2のサブマッハツェンダー導波路(9a)と,
前記第1のサブマッハツェンダー導波路(8a)の合波部を経た光に位相変調を施すための第1の位相変調器(10a)と,
前記第2のサブマッハツェンダー導波路(9a)の合波部を経た光に位相変調を施すための第2の位相変調器(11a)と,
を具備し,

前記第2の変調器(6)は,
第2のメインマッハツェンダー導波路(7b)と,
前記第2のメインマッハツェンダー導波路(7b)の一方のアームに設けられた第3のサブマッハツェンダー導波路(8b)と,
前記第2のメインマッハツェンダー導波路(7b)の残りのアームに設けられた第4のサブマッハツェンダー導波路(9b)と,
前記第3のサブマッハツェンダー導波路(8b)の合波部を経た光に位相変調を施すための第3の位相変調器(10b)と,
前記第4のサブマッハツェンダー導波路(9b)の合波部を経た光に位相変調を施すための第4の位相変調器(11b)と,
を具備し,

前記光変調システムは,
前記第1のサブマッハツェンダー導波路(8a),前記第2のサブマッハツェンダー導波路(9a),前記第3のサブマッハツェンダー導波路(8b),前記第4のサブマッハツェンダー導波路(9b),前記第1の位相変調器(10a),前記第2の位相変調器(11a),前記第3の位相変調器(10b),及び前記第4の位相変調器(11b)に印加する電圧を供給する電源系と,
前記電源系に制御信号を与えることで,前記電源系が出力する電圧を変化させる,コンピュータを有する制御部と,
前記合波点(4)からの出力を検出する検出部と,
を有し,

前記制御部は,
前記第1の位相変調器(10a),前記第2の位相変調器(11a),前記第3の位相変調器(10b)及び前記第4の位相変調器(11b)の少なくとも1つにディザリング信号を印加するように電源系に指令を出す,ディザリング信号指示手段と,
前記ディザリング信号を印加される位相変調器の前段に存在するサブマッハツェンダー導波路に印加するバイアス電圧を掃引するように電源系に指令を出す,バイアス掃引指令手段と,
前記検出部が検出した検出情報から,前記ディザリング信号に由来する成分を抽出する,ディザリング信号抽出部と,
前記ディザリング信号抽出部が抽出した,前記ディザリング信号に由来する成分の変動が所定の範囲内となるバイアス電圧値を求める,最適バイアス電圧値取得手段と,
を有し,
前記ディザリング信号を印加される位相変調器の前段に存在するサブマッハツェンダー導波路のバイアス電圧を掃引しつつ,前記ディザリング信号に由来する成分の振幅強度をバイアス電圧の値とともに記憶部に記憶し,前記掃引が終わった後に,前記記憶部に記憶した振幅強度を読み出して,前記振幅強度が最も低い場合のバイアス電圧の値を読み出し,

これにより,前記第1のサブマッハツェンダー導波路(8a),前記第2のサブマッハツェンダー導波路(9a),前記第3のサブマッハツェンダー導波路(8b),及び前記第4のサブマッハツェンダー導波路(9b)のいずれかに印加されるバイアス電圧の最適値を求めることができる,

光変調システム。
【請求項2】
前記第1の変調器(3)は,4相位相シフトキーイング(QPSK)信号を出力する第1のQPSK変調器であり,
前記第2の変調器(6)は,前記第1のQPSK変調器からの出力信号よりも振幅が小さなQPSK信号を出力する第2のQPSK変調器(6)である,
請求項1に記載の光変調システム。
【請求項3】
前記光変調システムは,
前記第1の分岐部(1)から分岐した複数の導波路であって,前記第1の導波路(2)及び前記第2の導波路(5)以外のものであり,前記第1の導波路(2)及び前記第2の導波路(5)と前記合波点(4)で合わさる導波路と,

前記複数の導波路に設けられたメインマッハツェンダー導波路と,前記メインマッハツェンダー導波路の一方のアームに設けられたサブマッハツェンダー導波路と,前記メインマッハツェンダー導波路の残りのアームに設けられたサブマッハツェンダー導波路と,前記一方のサブマッハツェンダー導波路の合波部を経た光に位相変調を施すための第5の位相変調器と,前記残りのサブマッハツェンダー導波路の合波部を経た光に位相変調を施すための第6の位相変調器と,
を有し,
前記電源系は,前記サブマッハツェンダー導波路のすべてに印加する電圧を供給するとともに,前記位相変調器のすべてに電圧を供給するものであり,

前記制御部のディザリング信号指示手段は,
前記第5の位相変調器及び第6の位相変調器の少なくとも1つにディザリング信号を印加するように電源系に指令を出す手段である
請求項1に記載の光変調システム。
【請求項4】
前記第1のメインマッハツェンダー導波路(7a)の一方のアームは,さらに(M−1)個のサブマッハツェンダー導波路を有し,
前記第1のメインマッハツェンダー導波路(7a)の残りのアームは,さらに(M-1)個のサブマッハツェンダー導波路を有し,
前記第2のメインマッハツェンダー導波路(7b)の一方のアームは,さらに(M−1)個のサブマッハツェンダー導波路を有し,
前記第2のメインマッハツェンダー導波路(7b)は,さらに(M−1)個のサブマッハツェンダー導波路を有し,
前記光変調システムは,前記第1の分岐部(1)と前記合波点(4)とに接続された,それぞれM個のサブマッハツェンダー導波路を有するN個の導波路を有する,
請求項1に記載の光変調システム。
【請求項5】
前記第1のメインマッハツェンダー導波路(7a)の一方のアームは,さらに(M−1)個のサブマッハツェンダー導波路を有し,
前記第1のメインマッハツェンダー導波路(7a)の残りのアームは,さらに(M-1)個のサブマッハツェンダー導波路を有し,
前記第2のメインマッハツェンダー導波路(7b)の一方のアームは,さらに(M−1)個のサブマッハツェンダー導波路を有し,
前記第2のメインマッハツェンダー導波路(7b)は,さらに(M−1)個のサブマッハツェンダー導波路を有し,
前記光変調システムは,前記第1の分岐部(1)と前記合波点(4)とに接続された,それぞれM個のサブマッハツェンダー導波路を有するN個の導波路を有し,

前記ディザリング信号指示手段は,
前記光変調システムに含まれる位相変調器の少なくとも1つにディザリング信号を印加するように前記電源系に指令を出すとともに,
2つ以上の位相変調器にディザリング信号を印加する場合は,異なる周波数のディザリング信号を印加するように前記電源系へ指令を出すものである,
請求項1に記載の光変調システム。
【請求項6】
第1の分岐部(1)と,
前記第1の分岐部(1)から分岐した第1の導波路(2)と,
前記第1の導波路(2)に設けられたマッハツェンダー干渉計を有する第1の変調器(3)と,
前記第1の分岐部(1)から分岐した,前記第1の導波路(2)とは別の導波路であって,前記第1の導波路(2)と合波点(4)で合わさる第2の導波路(5)と,
前記第2の導波路(5)に設けられたマッハツェンダー干渉計を有する第2の変調器(6)とを有する光変調システムのバイアス調整方法であって,

前記第1の変調器(3)は,
第1のメインマッハツェンダー導波路(7a)と,
前記第1のメインマッハツェンダー導波路(7a)の一方のアームに設けられた第1のサブマッハツェンダー導波路(8a)と,
前記第1のメインマッハツェンダー導波路(7a)の残りのアームに設けられた第2のサブマッハツェンダー導波路(9a)と,
前記第1のサブマッハツェンダー導波路(8a)の合波部を経た光に位相変調を施すための第1の位相変調器(10a)と,
前記第2のサブマッハツェンダー導波路(9a)の合波部を経た光に位相変調を施すための第2の位相変調器(11a)と,
を具備し,

前記第2の変調器(6)は,
第2のメインマッハツェンダー導波路(7b)と,
前記第2のメインマッハツェンダー導波路(7b)の一方のアームに設けられた第3のサブマッハツェンダー導波路(8b)と,
前記第2のメインマッハツェンダー導波路(7b)の残りのアームに設けられた第4のサブマッハツェンダー導波路(9b)と,
前記第3のサブマッハツェンダー導波路(8b)の合波部を経た光に位相変調を施すための第3の位相変調器(10b)と,
前記第4のサブマッハツェンダー導波路(9b)の合波部を経た光に位相変調を施すための第4の位相変調器(11b)と,
を具備し,

前記光変調システムは,
前記第1のサブマッハツェンダー導波路(8a),前記第2のサブマッハツェンダー導波路(9a),前記第3のサブマッハツェンダー導波路(8b),前記第4のサブマッハツェンダー導波路(9b),前記第1の位相変調器(10a),前記第2の位相変調器(11a),前記第3の位相変調器(10b),及び前記第4の位相変調器(11b)に印加する電圧を供給する電源系と,
前記電源系に制御信号を与えることで,前記電源系が出力する電圧を変化させる,コンピュータを有する制御部と,
前記合波点(4)からの出力を検出する検出部と,
をさらに有し,

前記制御部は,
前記第1の位相変調器(10a),前記第2の位相変調器(11a),前記第3の位相変調器(10b)及び前記第4の位相変調器(11b)の少なくとも1つにディザリング信号を印加するように電源系に指令を出す,ディザリング信号指示手段と,
前記ディザリング信号を印加される位相変調器へ光信号を出力するサブマッハツェンダー導波路に印加するバイアス電圧を掃引するように電源系に指令を出す,バイアス掃引指令手段と,
前記検出部が検出した検出情報から,前記ディザリング信号に由来する成分を抽出する,ディザリング信号抽出部と,
前記ディザリング信号抽出部が抽出した,前記ディザリング信号に由来する成分の変動が所定の範囲内となるバイアス電圧値を求める,最適バイアス電圧値取得手段と,
を有し,

前記第1の位相変調器(10a),前記第2の位相変調器(11a),前記第3の位相変調器(10b)及び前記第4の位相変調器(11b)の少なくとも1つにディザリング信号を印加する工程と,

前記ディザリング信号を印加される位相変調器へ光信号を出力するサブマッハツェンダー導波路に印加するバイアス電圧を掃引しつつ,前記合波部(4)からの出力を前記検出部が検出する工程と,

前記検出部が検出した検出情報が前記制御部へ入力される工程と,

前記制御部のディザリング信号抽出部が,入力された前記検出情報に基づいて,前記ディザリング信号に由来する成分を抽出して,振幅強度をバイアス電圧の値とともに記憶部に記憶する工程と,

前記制御部の最適バイアス電圧値取得手段が,前記掃引が終わった後に,前記記憶部に記憶した振幅強度を読み出して,前記振幅強度が最も低い場合のバイアス電圧の値を読み出す工程と,

を含み,

これにより,前記第1のサブマッハツェンダー導波路(8a),前記第2のサブマッハツェンダー導波路(9a),前記第3のサブマッハツェンダー導波路(8b),及び前記第4のサブマッハツェンダー導波路(9b)のいずれかに印加されるバイアス電圧の最適値を求めることができる,

光変調システムのバイアス調整方法。
【請求項7】
第1の分岐部(1)と,
前記第1の分岐部(1)から分岐した第1の導波路(2)と,
前記第1の導波路(2)に設けられたマッハツェンダー干渉計を有する第1の変調器(3)と,
前記第1の分岐部(1)から分岐した,前記第1の導波路(2)とは別の導波路であって,前記第1の導波路(2)と合波点(4)で合わさる第2の導波路(5)と,
前記第2の導波路(5)に設けられたマッハツェンダー干渉計を有する第2の変調器(6)とを有する光変調システムであって,

前記第1の変調器(3)は,
第1のメインマッハツェンダー導波路(7a)と,
前記第1のメインマッハツェンダー導波路(7a)の一方のアームに設けられた第1のサブマッハツェンダー導波路(8a)と,
前記第1のメインマッハツェンダー導波路(7a)の残りのアームに設けられた第2のサブマッハツェンダー導波路(9a)と,
前記第1のサブマッハツェンダー導波路(8a)へ入力される光に位相変調を施すための第7の位相変調器と,
前記第2のサブマッハツェンダー導波路(9a)へ入力される光に位相変調を施すための第8の位相変調器と,
を具備し,

前記第2の変調器(6)は,
第2のメインマッハツェンダー導波路(7b)と,
前記第2のメインマッハツェンダー導波路(7b)の一方のアームに設けられた第3のサブマッハツェンダー導波路(8b)と,
前記第2のメインマッハツェンダー導波路(7b)の残りのアームに設けられた第4のサブマッハツェンダー導波路(9b)と,
前記第3のサブマッハツェンダー導波路(8b)へ入力される光に位相変調を施すための第9の位相変調器と,
前記第4のサブマッハツェンダー導波路(9b)へ入力される光に位相変調を施すための第10の位相変調器と,
を具備し,

前記光変調システムは,
前記第1のサブマッハツェンダー導波路(8a),前記第2のサブマッハツェンダー導波路(9a),前記第3のサブマッハツェンダー導波路(8b),前記第4のサブマッハツェンダー導波路(9b),前記第7の位相変調器,前記第8の位相変調器,前記第9の位相変調器,及び前記第10の位相変調器に印加する電圧を供給する電源系と,
前記電源系に制御信号を与えることで,前記電源系が出力する電圧を変化させる,コンピュータを有する制御部と,
前記合波点(4)からの出力を検出する検出部と,
を有し,

前記制御部は,
前記第7の位相変調器,前記第8の位相変調器,前記第9の位相変調器,及び前記第10の位相変調器の少なくとも1つにディザリング信号を印加するように電源系に指令を出す,ディザリング信号指示手段と,
前記ディザリング信号を印加される位相変調器の前段に存在するサブマッハツェンダー導波路に印加するバイアス電圧を掃引するように電源系に指令を出す,バイアス掃引指令手段と,
前記検出部が検出した検出情報から,前記ディザリング信号に由来する成分を抽出する,ディザリング信号抽出部と,
前記ディザリング信号抽出部が抽出した,前記ディザリング信号に由来する成分の変動が所定の範囲内となるバイアス電圧値を求める,最適バイアス電圧値取得手段と,
を有し,
前記ディザリング信号を印加される位相変調器の前段に存在するサブマッハツェンダー導波路のバイアス電圧を掃引しつつ,前記ディザリング信号に由来する成分の振幅強度をバイアス電圧の値とともに記憶部に記憶し,前記掃引が終わった後に,前記記憶部に記憶した振幅強度を読み出して,前記振幅強度が最も低い場合のバイアス電圧の値を読み出し,

これにより,前記第1のサブマッハツェンダー導波路(8a),前記第2のサブマッハツェンダー導波路(9a),前記第3のサブマッハツェンダー導波路(8b),及び前記第4のサブマッハツェンダー導波路(9b)のいずれかに印加されるバイアス電圧の最適値を求めることができる,

光変調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイアス点調整が可能な複数のマッハツェンダー構造を有する光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
マッハツェンダー(MZ)構造の光変調器は,光通信の分野で広く使用されている。たとえば,特許第3867148号公報には,MZ導波路を有する光変調器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3867148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年,複数のMZ構造を集積化させることにより,複雑な光信号を生成できるようになりつつある。一方,集積化されたMZ構造の各々のバイアス点を所望の状態にする方法は確立されていない。
【0005】
そこで,本発明は,複数のMZ構造を有する光変調器に対しても,MZ構造の各々のバイアス点を所望の状態にする方法を提供するものである。本発明は,またQPSK信号,FSK信号,QAM信号,SSB信号などの変調信号を安定に出力できる光変調器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面は,あるサブMZの合波部以降に位相変調器を設置し,その位相変調器にディザリング信号を入力した状態で,そのサブMZに印加するバイアス電圧を調整することで,最適なバイアス状況を把握できるという知見に基づく。
【0007】
第1の側面に係る光変調システムは,第1の分岐部1と,第1の分岐部1から分岐した第1の導波路2と,第1の導波路2に設けられたマッハツェンダー干渉計を有する第1の変調器3と,第1の分岐部1から分岐した,第1の導波路2とは別の導波路であって,第1の導波路2と合波点4で合わさる第2の導波路5と,第2の導波路5に設けられたマッハツェンダー干渉計を有する第2の変調器6とを有する光変調システムである。
【0008】
そして,第1の変調器3は,第1のメインマッハツェンダー導波路7aと,第1のメインマッハツェンダー導波路7aの一方のアームに設けられた第1のサブマッハツェンダー導波路8aと,第1のメインマッハツェンダー導波路7aの残りのアームに設けられた第2のサブマッハツェンダー導波路9aと,第1のサブマッハツェンダー導波路8aの合波部を経た光に位相変調を施すための第1の位相変調器10aと,第2のサブマッハツェンダー導波路9aの合波部を経た光に位相変調を施すための第2の位相変調器11aとを具備する。
【0009】
一方,第2の変調器6は,第2のメインマッハツェンダー導波路7bと,第2のメインマッハツェンダー導波路7bの一方のアームに設けられた第3のサブマッハツェンダー導波路8bと,第2のメインマッハツェンダー導波路7bの残りのアームに設けられた第4のサブマッハツェンダー導波路9bと,第3のサブマッハツェンダー導波路8bの合波部を経た光に位相変調を施すための第3の位相変調器10bと,第4のサブマッハツェンダー導波路9bの合波部を経た光に位相変調を施すための第4の位相変調器11bと,を具備する。
【0010】
光変調システムは,第1のサブマッハツェンダー導波路8a,第2のサブマッハツェンダー導波路9a,第3のサブマッハツェンダー導波路8b,第4のサブマッハツェンダー導波路9b,第1の位相変調器10a,第2の位相変調器11a,第3の位相変調器10b,及び第4の位相変調器11bに印加する電圧を供給する電源系と,電源系に制御信号を与えることで,電源系が出力する電圧を変化させる,コンピュータを有する制御部と,合波点4からの出力を検出する検出部とを有する。
【0011】
そして,制御部は,第1の位相変調器10a,第2の位相変調器11a,第3の位相変調器10b及び第4の位相変調器11bの少なくとも1つにディザリング信号を印加するように電源系に指令を出す,ディザリング信号指示手段と,ディザリング信号を印加される位相変調器の前段に存在するサブマッハツェンダー導波路に印加するバイアス電圧を掃引するように電源系に指令を出す,バイアス掃引指令手段と,検出部が検出した検出情報から,ディザリング信号に由来する成分を抽出する,ディザリング信号抽出部と,ディザリング信号抽出部が抽出した,ディザリング信号に由来する成分の変動が所定の範囲内となるバイアス電圧値を求める,最適バイアス電圧値取得手段とを有する。
【0012】
これにより,本発明の第1の側面に係る光変調システムは,第1のサブマッハツェンダー導波路8a,第2のサブマッハツェンダー導波路9a,第3のサブマッハツェンダー導波路8b,及び第4のサブマッハツェンダー導波路9bのいずれかに印加されるバイアス電圧の最適値を求めることができる。
【0013】
第1の側面の好ましい態様は,第1の変調器3が,4相位相シフトキーイングQPSK信号を出力する第1のQPSK変調器であり,第2の変調器6は,第1のQPSK変調器からの出力信号よりも振幅が小さなQPSK信号を出力する第2のQPSK変調器6である。
【0014】
第1の側面の好ましい態様は,光変調システムが,第1の分岐部1から分岐した複数の導波路であって,第1の導波路2及び第2の導波路5以外のものであり,第1の導波路2及び第2の導波路5と合波点4で合わさる導波路と,複数の導波路に設けられたメインマッハツェンダー導波路と,メインマッハツェンダー導波路の一方のアームに設けられたサブマッハツェンダー導波路と,メインマッハツェンダー導波路の残りのアームに設けられたサブマッハツェンダー導波路と,一方のサブマッハツェンダー導波路の合波部を経た光に位相変調を施すための位相変調器と,残りのサブマッハツェンダー導波路の合波部を経た光に位相変調を施すための位相変調器と,を有するものである。そして,この態様の光変調システムの電源系は,サブマッハツェンダー導波路のすべてに印加する電圧を供給するとともに,位相変調器のすべてに電圧を供給するものである。そして,制御部のディザリング信号指示手段は,位相変調器の少なくとも1つにディザリング信号を印加するように電源系に指令を出す手段である。
【0015】
第1の側面の好ましい態様は,上記の光変調システムを用いたバイアス調整方法に関する。そして,この方法は,第1の位相変調器10a,第2の位相変調器11a,第3の位相変調器10b及び第4の位相変調器11bの少なくとも1つにディザリング信号を印加する。
【0016】
その後,ディザリング信号を印加される位相変調器へ光信号を出力するサブマッハツェンダー導波路に印加するバイアス電圧を掃引しつつ,合波部4からの出力を検出部が検出する。すると,検出部が検出した検出情報が制御部へ入力される。
【0017】
そして,制御部のディザリング信号抽出部が,入力された検出情報に基づいて,ディザリング信号に由来する成分を抽出する。そして,制御部の最適バイアス電圧値取得手段が,ディザリング信号に由来する成分の変動が所定の範囲内となるバイアス電圧値を求める。このようにして,このバイアス調整方法は,第1のサブマッハツェンダー導波路8a,第2のサブマッハツェンダー導波路9a,第3のサブマッハツェンダー導波路8b,及び第4のサブマッハツェンダー導波路9bのいずれかに印加されるバイアス電圧の最適値を求めることができる。
【0018】
本発明の第2の側面は,あるサブMZ導波路にディザリング信号を印加し,ディザリング信号の2倍の周波数成分をロックイン検波することで,最適なバイアス状況を把握できるという知見に基づく。第2の側面に係る光変調システムは,第1の側面と異なり各サブMZ導波路の後段に位相変調器は必要ない。
【0019】
本発明の第3の側面は,あるMZ干渉計にディザリング信号を入力した状態で,そのMZ干渉計を除くすべてのMZ干渉計に正弦波電気信号を入力する。この正弦波電気信号は,ディザリング信号と周波数が異なるものとする。これは,出力光からディザリング信号由来の成分を抽出するためである。本発明の第3の側面の光変調システムは,本発明の第1の側面及び本発明の第2の側面にかかる光変調システムを適宜調整したものであるから,同様の構成を採用し,同様に動作させることができる。
【0020】
前記したすべての側面について,M×N個のサブマッハツェンダー導波路を有する光変調システムに応用することができる。すなわち,この場合,第1のメインマッハツェンダー導波路7aの一方のアームは,さらにM−1個のサブマッハツェンダー導波路を有する。そして,第1のメインマッハツェンダー導波路7aの残りのアームは,さらにM-1個のサブマッハツェンダー導波路を有する。第2のメインマッハツェンダー導波路7bの一方のアームは,さらにM−1個のサブマッハツェンダー導波路を有する。第2のメインマッハツェンダー導波路7bは,さらにM−1個のサブマッハツェンダー導波路を有する。そして,光変調システムは,第1の分岐部1と合波点4とに接続された,それぞれM個のサブマッハツェンダー導波路を有する(N−4)個の導波路を有する。この具体的な例は,図5又は図6に示される光変調システムである。なお,図6に示されるシステムでは,列の数Nを2Nである。図6に示す例では,M個のサブマッハツェンダー導波路を有するN個列の導波路を有する。図5及び図6に示される例では,いずれかの列を第1のメインマッハツェンダー導波路7aの一方のアームなどとして読み替えることで,すべてのサブマッハツェンダー導波路に印加されるバイアス電圧を調整することができる。なお,Mは1以上の整数であり,Nは4以上の整数である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば,複数のMZ構造を有する光変調器に対しても,MZ構造の各々のバイアス点を所望の状態にする方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は,第1の側面にかかる光変調システムの構成例を示す図である。
図2図2は,複数のMZ構造を有する光変調システムの概略図である。
図3図3は,ディザリング信号を位相変調器に印加した際の光出力の変化を示す図である。
図4図4は,マッハツェンダー導波路に印加する電圧を説明するための図である。
図5図5は,光変調システムの構成例を示す図である。
図6図6は,光変調システムの構成例を示す図である。
図7図7は,マッハツェンダー導波路の前段に位相変調器が設けられているシステムの例を示す概念図である。
図8図8は,サブマッハツェンダー導波路の両アームに電極が設けられているシステムの例を示す概念図である。
図9図9は,サブマッハツェンダー導波路の後段に位相変調器が設けられているシステムの例を示す概念図である。
図10図10は,2電極型マッハツェンダー変調器に正弦波電圧を入力したときの光出力を説明するための図である。
図11図11は,本発明のあるシステムにおける2つの調整対象サブマッハツェンダー変調器の出力の時間変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
バイアス調整法の原理説明
本発明の第1の側面は,あるサブMZの合波部以降(後段)に位相変調器を設置し,その位相変調器にディザリング信号を入力した状態で,そのサブMZに印加するバイアス電圧を調整することで,最適なバイアス状況を把握できるという知見に基づく。
【0024】
本明細書において,「ディザリング信号」の例は,周波数がビットレートに比べて十分低い正弦波信号である。ディザリング信号の振幅の例は,変調器の半波長電圧Vπの1/50以上1/3以下,又はVπの1/20以上1/5以下があげられる。
【0025】
図1は,第1の側面にかかる光変調システムの構成例を示す図である。図1に示されるように,本発明の第1の側面に係る光変調システムは,第1の分岐部1と,第1の分岐部1から分岐した第1の導波路2と,第1の導波路2に設けられたマッハツェンダー干渉計を有する第1の変調器3と,第1の分岐部1から分岐した,第1の導波路2とは別の導波路であって,第1の導波路2と合波点4で合わさる第2の導波路5と,第2の導波路5に設けられたマッハツェンダー干渉計を有する第2の変調器6とを有する。
【0026】
図1に示す例では,2つのメインマッハツェンダー干渉計を有するシステムを描画している。しかしながら,本発明の光変調システムは,さらに複数のメインマッハツェンダー干渉計を含んでも良い。なお,マッハツェンダー干渉計の製造方法やその機能は既に知られている。このため,本発明においては,既に知られた構成や製造方法を適宜採用することができる。
【0027】
そして,第1の変調器3は,いわゆる入れ子型のマッハツェンダー干渉計を形成する。このような干渉計を有する光変調器は,特許文献1などにおいて既に知られている。すなわち,第1の変調器3は,第1のメインマッハツェンダー導波路7aと,第1のメインマッハツェンダー導波路7aの一方のアームに設けられた第1のサブマッハツェンダー導波路8aと,第1のメインマッハツェンダー導波路7aの残りのアームに設けられた第2のサブマッハツェンダー導波路9aとを有する。
【0028】
一方,この側面に係る光変調器は,第1のサブマッハツェンダー導波路8aの合波部を経た光に位相変調を施すための第1の位相変調器10aと,第2のサブマッハツェンダー導波路9aの合波部を経た光に位相変調を施すための第2の位相変調器11aとを具備する。これらの位相変調器は,各サブマッハツェンダー導波路の合波部と,第1のメインマッハツェンダー導波部の合波部12aとの間(サブマッハツェンダー導波路の後段)に設けられる。
【0029】
一方,第2の変調器6は,第2のメインマッハツェンダー導波路7bと,第2のメインマッハツェンダー導波路7bの一方のアームに設けられた第3のサブマッハツェンダー導波路8bと,第2のメインマッハツェンダー導波路7bの残りのアームに設けられた第4のサブマッハツェンダー導波路9bとを有する。そして,第2の変調器6は,第3のサブマッハツェンダー導波路8bの合波部を経た光に位相変調を施すための第3の位相変調器10bと,第4のサブマッハツェンダー導波路9bの合波部を経た光に位相変調を施すための第4の位相変調器11bと,を具備する。
【0030】
この光変調システムは,第1のサブマッハツェンダー導波路8a,第2のサブマッハツェンダー導波路9a,第3のサブマッハツェンダー導波路8b,第4のサブマッハツェンダー導波路9b,第1の位相変調器10a,第2の位相変調器11a,第3の位相変調器10b,及び第4の位相変調器11bに印加する電圧を供給する電源系と,電源系に制御信号を与えることで,電源系が出力する電圧を変化させる,コンピュータを有する制御部と,合波点4からの出力を検出する検出部とを有する。
【0031】
そして,制御部は,ディザリング信号指示手段と,ディザリング信号抽出部と,最適バイアス電圧値取得手段とを有する。制御部は,コンピュータを含む。そして,コンピュータは,入出力部,制御装置,演算装置,及び記憶装置を有する。そして,それらの要素はバスなどで情報の授受を行うことができるように接続されている。記憶装置には,各種情報が記憶されているほか,制御プログラムが記憶されていても良い。たとえば,入出力部から所定の情報(たとえば,ポインティングデバイスからの操作情報)が入力される。すると,制御装置は,記憶装置に記憶される制御プログラムを読み出す。そして,制御プログラムからの制御指令にしたがって,適宜記憶装置に記憶された情報を読み出し,演算装置にて所定の演算を行う。このようにして,所定の処理を達成できる。
【0032】
ディザリング信号指示手段は,第1の位相変調器10a,第2の位相変調器11a,第3の位相変調器10b及び第4の位相変調器11bの少なくとも1つにディザリング信号を印加するように電源系に指令を出すための装置である。たとえば,制御部の入出力部から所定の情報が,制御部へ入力される。すると,制御部は,記憶装置に記憶された演算プログラムを読み出す。そして,適宜演算処理を行って,電源系に所定の電圧を発生するように指示を出力する。
【0033】
バイアス掃引指令手段は,位相変調器の前段に存在するサブマッハツェンダー導波路に印加するバイアス電圧を掃引するように電源系に指令を出す。位相変調器の前段に存在するサブマッハツェンダー導波路は,たとえば,第1の位相変調器10aに対する第1のサブマッハツェンダー導波路8aがあげられる。制御部は,ディザリング信号を印加した位相変調器に関する情報を記憶している。そして,制御部は,記憶したディザリング信号を印加した位相変調器に関する情報を読み出して,それに対応するサブマッハツェンダー導波路に印加するバイアス電圧を掃引するように電源系に指令を出す。
【0034】
一方,光変調システムからの出力光を検出部が検出する。検出部が検出した情報は,制御部へと印加される。そして,ディザリング信号抽出部は,検出部が検出した検出情報から,ディザリング信号に由来する成分を抽出する。
【0035】
ディザリング信号に由来する成分は,ディザリング信号の周波数に由来する変異を有する。このため,検出信号から,ディザリング信号の周波数に由来する変異を抽出することで,ディザリング信号に由来する成分を抽出することができる。
【0036】
最適バイアス電圧値取得手段は,ディザリング信号抽出部が抽出した,ディザリング信号に由来する成分の変動が所定の範囲内となるバイアス電圧値を求めるための装置である。記憶部は,所定の閾値を記憶している。一方,制御部は,抽出したディザリング信号に由来する成分に関する情報を用い,演算部でその変動を算出する。そして,制御部は,記憶部から所定の閾値を読み出して,塩残部で求めたディザリング信号に由来する成分の変動と閾値とを比較する。このようにして,本発明の第1の側面に係る光変調システムを用いることで,最適バイアス電圧値を取得することができる。「所定の範囲内」は,系によって,具体的な数値が異なる。そのため,たとえば,いったん実測をしてその値の範囲のおよその値を決定し,その値を記憶部に記憶しておけばよい。この処理は以下同様である。
【0037】
なお,抽出したディザリング信号に由来する成分の変化が最小となるバイアス電圧値を求めることで,最適バイアス電圧値を求めても良い。
【0038】
これにより,本発明の第1の側面に係る光変調システムは,第1のサブマッハツェンダー導波路8a,第2のサブマッハツェンダー導波路9a,第3のサブマッハツェンダー導波路8b,及び第4のサブマッハツェンダー導波路9bのいずれかに印加されるバイアス電圧の最適値を求めることができる。
【0039】
第1の側面の好ましい態様は,第1の変調器3が,4相位相シフトキーイングQPSK信号を出力する第1のQPSK変調器であり,第2の変調器6は,第1のQPSK変調器からの出力信号よりも振幅が小さなQPSK信号を出力する第2のQPSK変調器6である。このような構成を採用するため,国際公開WO2009−37794号パンフレットに開示されるように直交振幅変調信号を発生させることができる。
【0040】
第1の側面の好ましい態様は,光変調システムが,第1の分岐部1から分岐した複数の導波路であって,第1の導波路2及び第2の導波路5以外のものであり,第1の導波路2及び第2の導波路5と合波点4で合わさる導波路と,複数の導波路に設けられたメインマッハツェンダー導波路と,メインマッハツェンダー導波路の一方のアームに設けられたサブマッハツェンダー導波路と,メインマッハツェンダー導波路の残りのアームに設けられたサブマッハツェンダー導波路と,一方のサブマッハツェンダー導波路の合波部を経た光に位相変調を施すための位相変調器と,残りのサブマッハツェンダー導波路の合波部を経た光に位相変調を施すための位相変調器と,を有するものである。そして,この態様の光変調システムの電源系は,サブマッハツェンダー導波路のすべてに印加する電圧を供給するとともに,位相変調器のすべてに電圧を供給するものである。そして,制御部のディザリング信号指示手段は,位相変調器の少なくとも1つにディザリング信号を印加するように電源系に指令を出す手段である。
【0041】
第1の側面の好ましい態様は,上記の光変調システムを用いたバイアス調整方法に関する。そして,この方法は,第1の位相変調器10a,第2の位相変調器11a,第3の位相変調器10b及び第4の位相変調器11bの少なくとも1つにディザリング信号を印加する。
【0042】
その後,ディザリング信号を印加される位相変調器へ光信号を出力するサブマッハツェンダー導波路に印加するバイアス電圧を掃引しつつ,合波部4からの出力を検出部が検出する。すると,検出部が検出した検出情報が制御部へ入力される。
【0043】
そして,制御部のディザリング信号抽出部が,入力された検出情報に基づいて,ディザリング信号に由来する成分を抽出する。そして,制御部の最適バイアス電圧値取得手段が,ディザリング信号に由来する成分の変動が所定の範囲内となるバイアス電圧値を求める。このようにして,このバイアス調整方法は,第1のサブマッハツェンダー導波路8a,第2のサブマッハツェンダー導波路9a,第3のサブマッハツェンダー導波路8b,及び第4のサブマッハツェンダー導波路9bのいずれかに印加されるバイアス電圧の最適値を求めることができる。
【0044】
図2は,複数のMZ構造を有する光変調システムの概略図である。図2に示される光変調システムは,N個の入れ子型マッハツェンダー導波路が並列に並んでいる。そして,それぞれの入れ子型マッハツェンダー導波路は,2つのサブマッハツェンダー導波路を有している。そして,各サブMZ導波路の後段に位相変調器を有する。そして,その位相変調器にディザリング信号を入力した状態で,そのサブMZに印加するバイアス電圧を調整する。
【0045】
図3は,ディザリング信号を位相変調器に印加した際の光出力の変化を示す図である。図3に示されるように,第1のサブMZ導波路のバイアス状態がボトム(安定状態)以外の場合は,第1のサブMZ導波路からの出力が強くなる。そして,光変調器の出力信号に含まれる変動のうち,ディザリング信号によるものの変動が大きくなる。一方,第1のサブMZ導波路のバイアス状態がボトム(安定状態)の場合は,第1のサブMZ導波路からの出力が小さくなる。そして,光変調器の出力信号に含まれる変動のうち,ディザリング信号によるものの変動が小さくなる。よって,ディザリング信号に由来する成分の変動が所定の範囲となるように制御することで,安定したバイアス状態を得ることができる。
図3に示す例では,バイアス点をボトムにセットする。もっとも,バイアス点をボトム以外にセットする場合でも安定状態を得ることができる。ディザリング信号による光出力の変動成分を観測し,変動成分が大きくなるようにバイアス電圧を調整することで,バイアス点をトップに設定できる。そじれ,それらの中間となるようにバイアス電圧を調整することで,バイアス点をクアドラチャに設定できる。
【0046】
本発明の第2の側面は,あるサブMZ導波路にディザリング信号を印加し,ディザリング信号のn倍(nは,2以上の整数)の周波数成分(たとえば,2倍の周波数成分)をロックイン検波することで,最適なバイアス状況を把握できるという知見に基づく。第2の側面に係る光変調システムは,第1の側面と異なり各サブMZ導波路の後段に位相変調器は必要ない。
【0047】
図4は,マッハツェンダー導波路に印加する電圧を説明するための図である。電圧を印加したことによる位相変化をθとする。入力光の振幅をEとし,出力光の振幅をEとする。ディザリング信号の角周波数をωとする。MZ干渉計に印加される交流電圧の振幅をVmとし,直流電圧の電圧をVとする。変調器の半波長電圧をVπとする。すると,出力光E及び電圧印加による位相変化θは,以下のように表すことができる。
【0048】
【数1】
【0049】
よって,E/Eは,以下のようにあらわすことができる。
【0050】
【数2】
【0051】
出力光の振幅Eは,直接検波することで観測できる。上記の式より,オフセット成分,ω成分及び2ω成分は,それぞれ以下のようにあらわすことができる。
【0052】
【数3】
【0053】
上記式から,Vm/Vπが概ね1より下回る場合、出力信号Eは,キャリア信号及び1次成分及び−1次成分が支配的であることがわかる。また,直接検波により得られる信号の2ω成分に主に寄与するのは,1次及び−1次間のビート信号であることがわかる。すなわち,出力信号の2ω成分が所定の範囲内となるようにθDC(直流電圧V)を調整することで,安定なバイアス状態を得ることができる。
【0054】
本発明の第2の側面は,第1の分岐部1と,第1の分岐部1から分岐した第1の導波路2と,第1の導波路2に設けられたマッハツェンダー干渉計を有する第1の変調器3と,第1の分岐部1から分岐した,第1の導波路2とは別の導波路であって,第1の導波路2と合波点4で合わさる第2の導波路5と,第2の導波路5に設けられたマッハツェンダー干渉計を有する第2の変調器6とを有する光変調システムに関する。
【0055】
そして,第1の変調器3は,第1のメインマッハツェンダー導波路7aと,第1のメインマッハツェンダー導波路7aの一方のアームに設けられた第1のサブマッハツェンダー導波路8aと,第1のメインマッハツェンダー導波路7aの残りのアームに設けられた第2のサブマッハツェンダー導波路9aとを有する。
【0056】
第2の変調器6は,第2のメインマッハツェンダー導波路7bと,第2のメインマッハツェンダー導波路7bの一方のアームに設けられた第3のサブマッハツェンダー導波路8bと,第2のメインマッハツェンダー導波路7bの残りのアームに設けられた第4のサブマッハツェンダー導波路9bとを有する。
【0057】
この第2の側面に関する光変調システムは,第1のサブマッハツェンダー導波路8a,第2のサブマッハツェンダー導波路9a,第3のサブマッハツェンダー導波路8b,及び第4のサブマッハツェンダー導波路9bに印加する電圧を供給する電源系と,電源系に制御信号を与えることで,電源系が出力する電圧を変化させる,コンピュータを有する制御部と,合波点4からの出力を検出する検出部と,をさらに有する。
【0058】
先に説明したとおり,第2の側面に関する光変調システムの基本構成は,サブマッハツェンダー導波路の後段に位相変調器が存在しない以外は,第1の側面に関する光変調システムの基本構成と同様である。
【0059】
そして,制御部は,ディザリング信号指示手段と,バイアス掃引指令手段と,ディザリング関連信号抽出部と,最適バイアス電圧値取得手段とを有する。
【0060】
第1の側面に係る光変調システムは,ディザリング信号を位相変調器に印加した。一方,第2の側面に係る光変調システムは,ディザリング信号をサブマッハツェンダー導波路にディザリング信号を印加する。具体的に説明すると,サブマッハツェンダー導波路のバイアス電極にディザリング信号を印加する。
【0061】
すなわち,ディザリング信号指示手段は,第1のサブマッハツェンダー導波路8a,第2のサブマッハツェンダー導波路9a,第3のサブマッハツェンダー導波路8b,及び第4のサブマッハツェンダー導波路9bの少なくとも1つにディザリング信号を印加するように電源系に指令を出す。
【0062】
バイアス掃引指令手段は,ディザリング信号が印加されるサブマッハツェンダー導波路に印加するバイアス電圧を掃引するように電源系に指令を出す。制御部は,ディザリング信号を印加したサブマッハツェンダー導波路又はディザリング信号を印加するサブマッハツェンダー導波路に関する情報を記憶部に記憶する。そして,記憶部からそのサブマッハツェンダー導波路に関する情報を読み出して,そのサブマッハツェンダー導波路に関する情報に印加するバイアス電圧を掃引するように電源系に指令を出す。
【0063】
ディザリング関連信号抽出部は,検出部が検出した検出情報から,ディザリング信号の2倍の周波数成分を抽出する。すなわち,制御部は,検出部と接続されている。検出部は,光変調システムの出力を検出できる。たとえば,制御部は,検出部を操作して,あらかじめディザリング信号の2倍の周波数成分を抽出するようにロックイン検波できるように設定されている。このため,制御部は,ディザリング信号の2倍の周波数成分を抽出できる。
【0064】
最適バイアス電圧値取得手段は,ディザリング関連信号抽出部が抽出した,ディザリング信号の2倍の周波数成分が所定の範囲内となるバイアス電圧値を求める。すなわち,制御部の記憶装置は,閾値(上限及び下限)を記憶している。そして,制御部は,記憶装置に記憶した閾値を読み出す。その上で,制御部は,演算部に閾値と測定したディザリング信号の2倍の周波数成分とを比較させる。このようにして,制御部は,ディザリング信号の2倍の周波数成分が閾値との大小関係を判断する。
【0065】
これにより,第2の側面に関する光変調システムは,第1のサブマッハツェンダー導波路8a,第2のサブマッハツェンダー導波路9a,第3のサブマッハツェンダー導波路8b,及び第4のサブマッハツェンダー導波路9bのいずれかに印加されるバイアス電圧の最適値を求めることができる。
【0066】
このバイアス電圧の最適化動作は,光変調システムの動作中に連続して行われ,バイアス電圧の最適化が自動的に行われても良い。
【0067】
第2の側面に関する光変調システムの好ましい態様は,第1の変調器3が,4相位相シフトキーイングQPSK信号を出力する第1のQPSK変調器であり,第2の変調器6は,第1のQPSK変調器からの出力信号よりも振幅が小さなQPSK信号を出力する第2のQPSK変調器6である。
【0068】
第2の側面に関する光変調システムの好ましい態様は,第1の分岐部1から分岐した複数の導波路であって,第1の導波路2及び第2の導波路5以外のものであり,第1の導波路2及び第2の導波路5と合波点4で合わさる導波路と,複数の導波路に設けられたメインマッハツェンダー導波路と,メインマッハツェンダー導波路の一方のアームに設けられたサブマッハツェンダー導波路と,メインマッハツェンダー導波路の残りのアームに設けられたサブマッハツェンダー導波路と,を有する。そして,この光変調システムの電源系は,サブマッハツェンダー導波路のすべてに印加する電圧を供給する。そして,制御部のディザリング信号指示手段は,サブマッハツェンダー導波路の少なくとも1つにディザリング信号を印加するように電源系に指令を出す手段である。
【0069】
本発明の第3の側面は,あるMZ干渉計にディザリング信号を入力した状態で,そのMZ干渉計を除くすべてのMZ干渉計に正弦波電気信号を入力する。なお,たとえば,振幅条件を2.405((πVm)/(2Vπ)=2.405)とする。この値は,次数0の第一次ベッセル関数の零点である。この正弦波電気信号は,ディザリング信号と周波数が異なるものとする。これは,出力光からディザリング信号由来の成分を抽出するためである。本発明の第3の側面の光変調システムは,本発明の第1の側面及び本発明の第2の側面にかかる光変調システムを適宜調整したものであるから,同様の構成を採用し,同様に動作させることができる。
【0070】
この条件の下では,キャリア成分の2乗値が,1次成分の2乗値又は−1次成分の2乗値よりずっと大きい。すると,オフセット成分は第1項(n=0)が支配的な成分といえる。
【0071】
よって,バイアス電圧を調整し,オフセット成分が所定の範囲内となるようにθDC(直流電圧V)を調整することで,安定なバイアス状態を得ることができる。
【0072】
本発明の第3の側面は,第1の分岐部1と,第1の分岐部1から分岐した第1の導波路2と,第1の導波路2に設けられたマッハツェンダー干渉計を有する第1の変調器3と,第1の分岐部1から分岐した,第1の導波路2とは別の導波路であって,第1の導波路2と合波点4で合わさる第2の導波路5と,第2の導波路5に設けられたマッハツェンダー干渉計を有する第2の変調器6とを有する光変調システムに関する。
【0073】
第1の変調器3は,第1のメインマッハツェンダー導波路7aと,第1のメインマッハツェンダー導波路7aの一方のアームに設けられた第1のサブマッハツェンダー導波路8aと,第1のメインマッハツェンダー導波路7aの残りのアームに設けられた第2のサブマッハツェンダー導波路9aとを有する。
【0074】
第2の変調器6は,第2のメインマッハツェンダー導波路7bと,第2のメインマッハツェンダー導波路7bの一方のアームに設けられた第3のサブマッハツェンダー導波路8bと,第2のメインマッハツェンダー導波路7bの残りのアームに設けられた第4のサブマッハツェンダー導波路9bとを有する。
【0075】
この光変調システムは,第1のサブマッハツェンダー導波路8a,第2のサブマッハツェンダー導波路9a,第3のサブマッハツェンダー導波路8b,及び第4のサブマッハツェンダー導波路9bに印加する電圧を供給する電源系と,電源系に制御信号を与えることで,電源系が出力する電圧を変化させる,コンピュータを有する制御部と,合波点4からの出力を検出する検出部と,をさらに有する。
【0076】
そして,制御部は,ディザリング信号指示手段と,正弦波電気信号指示手段と,バイアス掃引指令手段と,オフセット成分抽出部と,最適バイアス電圧値取得手段とを有する。
【0077】
ディザリング信号指示手段は,第1のサブマッハツェンダー導波路8a,第2のサブマッハツェンダー導波路9a,第3のサブマッハツェンダー導波路8b,及び第4のサブマッハツェンダー導波路9bの少なくとも1つにディザリング信号を印加するように電源系に指令を出す。
【0078】
正弦波電気信号指示手段は,ディザリング信号指示手段と,ディザリング信号指示手段がディザリング信号を印加するように指示したサブマッハツェンダー導波路以外のすべてのサブマッハツェンダー導波路に正弦波電気信号を入力するように電源系に指令を出す。
【0079】
この際,検出器が検出する光出力のキャリア成分(J0成分)が,ディザリング信号を印加したサブマッハツェンダー導波路に由来するもののみとなるように調整する。この調整は,検出器から測定結果を受け取った制御部が,各サブマッハツェンダー導波路に印加する正弦波電気信号を制御することで達成できる。
【0080】
バイアス掃引指令手段は,ディザリング信号が印加されるサブマッハツェンダー導波路に印加するバイアス電圧を掃引するように電源系に指令を出す。
【0081】
オフセット成分抽出部は,検出部が検出した検出情報からオフセット成分を抽出する。この条件において,オフセット成分は,ディザリング信号の強度が変化しても強度が変化しない成分である。ディザリング信号に由来する成分は,一定の周期をもって強度が変化する。このため,ディザリング信号の強度変化と異なる周波数で強度が変化する成分や強度が変化しない成分を抽出することで,オフセット成分を抽出することができる。
【0082】
最適バイアス電圧値取得手段は,オフセット成分が所定の範囲内となるバイアス電圧値を求める。制御部は記憶装置を有しており,この記憶装置には閾値(上限および下限値)が記憶されている。制御部は,閾値を読み出して,演算部にオフセット成分と比較させる。
【0083】
これにより,この光変調システムは,第1のサブマッハツェンダー導波路8a,第2のサブマッハツェンダー導波路9a,第3のサブマッハツェンダー導波路8b,及び第4のサブマッハツェンダー導波路9bのいずれかに印加されるバイアス電圧の最適値を求めることができる。
【0084】
第3の側面に関する光変調システムの好ましい態様は,第1の変調器3が,4相位相シフトキーイングQPSK信号を出力する第1のQPSK変調器であり,第2の変調器6は,第1のQPSK変調器からの出力信号よりも振幅が小さなQPSK信号を出力する第2のQPSK変調器6である。
【0085】
第3の側面に関する光変調システムの好ましい態様は,第1の分岐部1から分岐した複数の導波路であって,第1の導波路2及び第2の導波路5以外のものであり,第1の導波路2及び第2の導波路5と合波点4で合わさる導波路と,複数の導波路に設けられたメインマッハツェンダー導波路と,メインマッハツェンダー導波路の一方のアームに設けられたサブマッハツェンダー導波路と,メインマッハツェンダー導波路の残りのアームに設けられたサブマッハツェンダー導波路と,一方のサブマッハツェンダー導波路の合波部を経た光に位相変調を施すための位相変調器と,残りのサブマッハツェンダー導波路の合波部を経た光に位相変調を施すための位相変調器と,を有する。
【0086】
そして電源系は,サブマッハツェンダー導波路のすべてに印加する電圧を供給するとともに,位相変調器のすべての印加する電圧を供給するものである。
【0087】
制御部のディザリング信号指示手段は,位相変調器の少なくとも1つにディザリング信号を印加するように電源系に指令を出す手段である。
【0088】
本発明の応用例
これまで,メインマッハツェンダー導波路の2つのアームにひとつのサブマッハツェンダー導波路が存在する光変調システムについて説明した。本発明は,メインマッハツェンダー導波路が複数のアームを有する光変調システムや,各アームに複数のサブマッハツェンダー導波路が設けられている光変調システムについても用いることができる。
【0089】
図5は,第1の分岐部1から複数(N個)のアームに分岐しており,かつそれぞれのアームに複数(M個)のサブマッハツェンダー導波路が設けられている例である。この例では,MxN個のサブマッハツェンダー導波路が存在する。
【0090】
図6は,第1の分岐部1から複数(N個)のアームに分岐している。そして,各分岐したアームには,さらにN個のメインマッハツェンダー導波路と接続されている。そして,それぞれのメインマッハツェンダー導波路は,2つのアームを有している。そして,メインマッハツェンダー導波路の各アームは,M個のサブマッハツェンダー導波路が設けられている。
【0091】
第1の側面に係る光変調システムは,図5においてN個のアームのそれぞれに位相変調器が設けられている。また,図6においては,2N個のアームのぞれぞれに位相変調器が設けられている。
【0092】
並列変調器構造の1列(MZ1,1〜MZ1,M)を抽出して,第1の側面に基づくバイアス調整方法について説明する。さらに,以下の説明では,i番目(iは,1〜M)のマッハツェンダー導波路のバイアス電圧を調整する場合を例にして説明する。
【0093】
この場合,1列目に存在する位相変調器PMにディザリング信号を印加する。そして,ディザリング信号による光出力の変動成分を観測する。光出力のディザリング信号由来の成分の変動が最大になるように,MZ1,i(i:1〜M)全てのバイアス電圧を調整する。これは,i番目のMZ導波路を除いた、1〜n番目のマッハツェンダー導波路のバイアス点が全て,ヌル点以外にあるようにするためである。一方,i番目のMZ導波路1〜k(k≦M)番目のMZMのいずれかがヌル点にある場合,MZ1,iのバイアス点がどの場合でも光出力の変動は小さくなる。
【0094】
そして,ディザリング信号による光出力の変動成分を観測し,変動成分が最大,最小,又はそれらの中間値になるように,MZ1,iのバイアス電圧を調整する。すると,MZ1,iのバイアス点を,それぞれトップ,ボトム,クアドラチャに設定できる。
【0095】
なお,図5及び図6に示す例では,最も合波部4よりのマッハツェンダー導波路(列の最後のMZM)の後段に位相変調器が設置される。この場合,この列に含まれるすべてのMZMのバイアス電圧を調整できる。一方,ディザリング信号を印加する位相変調器は,列の中間位置(たとえば,k番目とk+1番目のMZMの間)に存在しても良い。
【0096】
次に,図5又は図6に示したシステムを第2の側面に用いる例を説明する。先に説明したとおり,本発明の第2の側面では,図5及び図6に描画されている位相変調器は不要である。
【0097】
光出力のディザリング信号由来の成分の変動が最大になるように,MZ1,i(i:1〜M)全てのバイアス電圧を調整する。これは,i番目のMZ導波路を除いた、1〜n番目のマッハツェンダー導波路のバイアス点が全て,ヌル点以外にあるようにするためである。
【0098】
その後,バイアス電圧を調整したいMZM(MZ1,i)にディザリング信号を印加する。そして,ディザリング信号の2倍の周波数成分を検波する。これにより,バイアス電圧を調整したいMZMのバイアス電圧を調整することができる。
【0099】
次に,図5又は図6に示したシステムを第3の側面に用いる例を説明する。先に説明したとおり,本発明の第3の側面では,図5及び図6に描画されている位相変調器は不要である。
【0100】
光出力のディザリング信号由来の成分の変動が最大になるように,MZ1,i(i:1〜M)全てのバイアス電圧を調整する。これは,i番目のMZ導波路を除いた、1〜n番目のマッハツェンダー導波路のバイアス点が全て,ヌル点以外にあるようにするためである。
【0101】
そして,バイアス電圧を調整したいMZMにディザリング信号を印加する。一方,ディザリング信号を印加していない同じ列に含まれるMZMのそれぞれについて,各従属接続群から1つずつMZMを選びそれらを大振幅電気信号で駆動する。たとえば,MZ2n,MZ3n,MZ4n,...を順に大振幅電気信号で駆動する。そして,ディザリング信号によらず一定となる光出力成分(オフセット)をモニタしながらバイアス電圧を調整する。このようにして,対象となるMZMのバイアス電圧を調整することができる。
【0102】
(スライド4及び5頁)
次に,本発明の第4の側面に係るシステムの例を説明する。この例は,MZMの前段に位相変調器が設けられているものである。図7は,マッハツェンダー導波路の前段に位相変調器が設けられているシステムの例を示す概念図である。このシステムの基本構成は先に説明したシステムと同様であるので記載を引用することとして,繰り返しを省略する。
【0103】
このシステムは,各サブマッハツェンダー導波路の前段に位相変調器が設けられている。そして,各サブマッハツェンダー導波路にバイアス電圧を印加するための電極が設けられており,電源系が,任意のサブマッハツェンダー導波路のみにバイアス電圧を印加できるようにされている。
【0104】
このシステムは,たとえば,第1のサブマッハツェンダー導波路のバイアス電圧を調整する場合,第1のサブマッハツェンダー導波路の前段に位置する第1の位相変調器にディザリング信号を印加した状態で,第1のサブマッハツェンダー導波路のバイアス電圧を掃引することで,第1のサブマッハツェンダー導波路のバイアス電圧を調整できる。
【0105】
たとえば,このシステムは,まずバイアス電圧を調整する対象以外のいずれかのサブマッハツェンダー導波路をボトム以外の状態となるように調整することが好ましい。なお,通常は,少なくともいずれかのサブマッハツェンダー導波路のバイアス電圧はボトム以外であるから,特に特別な動作を要することなく上記の状態を得ることができる。
【0106】
その状態で,第1のサブマッハツェンダー導波路の前段に位置する第1の位相変調器にディザリング信号を印加しつつ,第1のサブマッハツェンダー導波路のバイアス電圧を印加すると,図3に示されるような出力が得られる。
【0107】
すなわち,出力信号から,ディザリング信号に由来する成分を抽出する。ディザリング信号に由来する成分は,ディザリング信号に起因する変動を伴っている。このため,出力信号から,そのような変動を伴う成分を分離,抽出することで,ディザリング信号に由来する成分をコンピュータ上で自動的に抽出できる。
【0108】
1のサブマッハツェンダー導波路のバイアス電圧を掃引しつつ,出力のうちディザリング信号に由来する成分の振幅強度を,バイアス電圧の値とともに記憶部に記憶する。そして,掃引作業が終わった後,記憶部に記憶した振幅強度を読みだして,振幅強度が最も低い場合のバイアス電圧の値を読みだす。このようにすれば,ある状態におけるバイアス電圧の最適値を得ることができる。すなわち,出力のうちディザリング信号に由来する成分の変動が最小となるようにバイアス電圧を設定することで,第1のサブマッハツェンダー導波路のバイアス電圧をボトム状態にすることができる。
【0109】
この考え方は,N個の並列したメインマッハツェンダー導波路を有するシステムであって,各メインマッハツェンダー導波路がM個のサブマッハツェンダー導波路を有する系に応用できる。すなわち,本発明は,少なくとも3つ以上のサブマッハツェンダー導波路を有するシステムにおいて好ましくバイアス調整を行うことができる。
【0110】
(スライド6頁)
次に,本発明の第5の側面に係るシステムの例を説明する。この例は,サブマッハツェンダー導波路の両アームに電極が設けられているものである。これらの電極には変調信号を印加できる。図8は,サブマッハツェンダー導波路の両アームに電極が設けられているシステムの例を示す概念図である。このシステムの基本構成は先に説明したシステムと同様であるので記載を引用することとして,繰り返しを省略する。
【0111】
このシステムにおいては,たとえば,第1のサブマッハツェンダー導波路のバイアス電圧を調整する場合,第1のサブマッハツェンダー導波路の両アームに位置する第1の電極及び第2の電極に同相のディザリング信号を印加する。このシステムは先に説明したと同様の調整方法を用いることで,第1のサブマッハツェンダー導波路のバイアス電圧をボトム状態にすることができる。
【0112】
(スライド7頁)
次に,本発明の第6の側面に係るシステムの例を説明する。この例は,サブマッハツェンダー導波路の両アームに変調信号を印加するための電極を有するものである。この例は,サブマッハツェンダー導波路の後段に位相変調器が設けられているものが好ましい。なお,このシステムでは,位相変調器が各サブマッハツェンダー導波路の前段に設けられているものでも同様に処理することができる。図9は,サブマッハツェンダー導波路の後段に位相変調器が設けられているシステムの例を示す概念図である。このシステムの基本構成は先に説明したシステムと同様であるので記載を引用することとして,繰り返しを省略する。
【0113】
このシステムは,サブマッハツェンダー導波路の両アームに変調信号を印加するための電極が設けられており,任意の電極に電圧を印加できるようにされている。また,このシステムは,任意の位相変調器に電圧を印加できるようにされている。図10に示される通り,この例では各サブマッハツェンダー導波路の両アームに設けられた電極に直流電圧(V)と,変調電圧(Vm)とを合わせた信号を印加できる。
【0114】
このシステムでは,バイアス調整に先立ち,それぞれのマッハツェンダー導波路におけるVπの値を求めておくことが好ましい。マッハツェンダー導波路におけるVπの値を求める方法はすでに知られている。このため,公知の方法に従って,マッハツェンダー導波路におけるVπの値を求め記憶部に記憶し,適宜記憶部に記憶された値を読みだして演算処理に用いればよい。
【0115】
このシステムのバイアス電圧調整原理は,図10に示すとおりである。このシステムは,たとえば,第1のサブマッハツェンダー導波路のバイアス電圧を調整する場合,第1のサブマッハツェンダー導波路の両アームの電極にそれぞれディザリング信号を印加する。この際,両アームに印加するディザリング信号をVπの1/20以上1/5以下(たとえば1/10)となるように調整する。そして,両アームに印加されるディザリング信号の位相差を180°とする。出力を直接検波又は2乗検波する。この際,オフセット成分,ディザリング信号の角周波数に依存する成分,及びディザリング信号の2倍の角周波数に依存する成分は図10に示される通りである。
【0116】
出力信号は,搬送波(キャリア信号),±1次成分が支配的となる。一方,直接検波により得られるディザリング信号の2倍の角周波数に依存する成分は,1次信号及び−1次信号間のビートが主な寄与成分である。すなわち,ディザリング信号の2倍の角周波数に依存する成分が最も大きくなるように,電極に印加する直流電圧を制御すればよい。
【0117】
(スライド10頁)
次に,本発明の第7の側面に係るシステムの例を説明する。この例は,サブマッハツェンダー導波路の両アームに変調信号を印加するための電極を有するものである。この例は,サブマッハツェンダー導波路の後段に位相変調器が設けられているものが好ましい。なお,このシステムでは,位相変調器が各サブマッハツェンダー導波路の前段に設けられているものでも同様に処理することができる。図9は,サブマッハツェンダー導波路の後段に位相変調器が設けられているシステムの例を示す概念図である。このシステムの基本構成は先に説明したシステムと同様であるので記載を引用することとして,繰り返しを省略する。
【0118】
このシステムは,サブマッハツェンダー導波路の両アームに変調信号を印加するための電極が設けられており,任意の電極に電圧を印加できるようにされている。また,このシステムは,任意の位相変調器に電圧を印加できるようにされている。それぞれのサブマッハツェンダー導波路の合波部の後段に設けられる位相変調器は,独立して駆動できるものでもよいし,プッシュプル動作するものであってもよい。
【0119】
このシステムでは,バイアス調整に先立ち,それぞれのマッハツェンダー導波路におけるVπの値を求めておくことが好ましい。マッハツェンダー導波路におけるVπの値を求める方法はすでに知られている。このため,公知の方法に従って,マッハツェンダー導波路におけるVπの値を求め記憶部に記憶し,適宜記憶部に記憶された値を読みだして演算処理に用いればよい。
【0120】
このシステムにおいては,たとえば,第1のサブマッハツェンダー導波路のバイアス電圧を調整する場合,第1のサブマッハツェンダー導波路の両アームに位置する第1の電極及び第2の電極に同相のディザリング信号を印加する。この際,両アームに印加するディザリング信号をVπの1/20以上1/5以下(たとえば1/10)となるように調整する。そして,第1のサブマッハツェンダー導波路以外の全てのマッハツェンダー導波路に正弦波電気信号を入力する。正弦波電気信号の周波数は,ディザリング信号の周波数と異なるものとする。この場合正弦波電気信号の周波数は,ディザリング信号の周波数の整数倍又は整数分の一とならないものが好ましい。また,正弦波電気信号の周波数と,ディザリング信号の周波数とはわずかだけ異なるものではないものが好ましい。そして,正弦波電気信号の振幅が,2.405(=πV/2Vπ)程度となるように調整する。すると,システム全体からの出力のうちキャリア成分(J成分)が,第1のサブマッハツェンダー導波路由来のもののみとなる。
【0121】
このため,光出力を直接検波し,ディザリング信号に対して不変な成分(オフセット成分)を評価する。オフセット成分が最も小さくなるように,直流電圧値(V0)を調整する。これにより,バイアス電圧を調整できる。
【0122】
光出力を直接検波するためには,たとえば大振幅正弦波の周波数を帯域として含まない光検出器(PD)を用いるか,光検出器の出力にフィルタを通して,大振幅正弦波成分を除いて検波をすればよい。
このシステムは先に説明したと同様の調整方法を用いることで,第1のサブマッハツェンダー導波路のバイアス電圧をボトム状態にすることができる。
【0123】
(スライド12頁)
次に,本発明の第8の側面に係るシステムの例を説明する。この例は,サブマッハツェンダー導波路の両アームに変調信号を印加するための電極を有するものである。この例は,サブマッハツェンダー導波路の後段に位相変調器が設けられているものが好ましい。なお,このシステムでは,位相変調器が各サブマッハツェンダー導波路の前段に設けられているものでも同様に処理することができる。図9は,サブマッハツェンダー導波路の後段に位相変調器が設けられているシステムの例を示す概念図である。このシステムの基本構成は先に説明したシステムと同様であるので記載を引用することとして,繰り返しを省略する。
【0124】
このシステムは,PMn−1とPMをとおる光の位相差(これらの位相変調器のバイアス電圧)を調整する。この調整方法は,このシステムは,たとえば,先に説明した方法に従って,各サブマッハツェンダー導波路のバイアスをヌルに設定した後に行うことが好ましい。なお,PMn−1とPMとは1つのメインマッハツェンダー導波路に含まれる位相変調器であることが好ましい。
【0125】
このシステムは,サブマッハツェンダー導波路の両アームに変調信号を印加するための電極が設けられており,任意の電極に電圧を印加できるようにされている。また,このシステムは,任意の位相変調器に電圧を印加できるようにされている。それぞれのサブマッハツェンダー導波路の合波部の後段に設けられる位相変調器は,独立して駆動できるものでもよいし,プッシュプル動作するものであってもよい。
【0126】
このシステムは,たとえば,各サブマッハツェンダー導波路のバイアスをヌルに設定する。その後,調整対象となる位相変調器をPMn−1とPMとし,それぞれの位相変調器の前段に存在するサブマッハツェンダー導波路をMZn−1とMZとする。この場合,MZn−1とMZとに同じ周波数のディザリング信号を印加し,光強度を変調する。この際印加電圧の電気振幅を各MZのVπ以下となるように設定する。なお,MZn−1とMZとが両アームに電極を有する2電極型のマッハツェンダー導波路の場合には,各マッハツェンダー導波路の2つの電極に印加される2つディザリング信号を逆相とする。そのうえで,PMn−1とPMに印加する電圧を変化(又は掃引)して,光出力の変化を観測する。
【0127】
MZn−1とMZからの出力を合波したもののピークトゥーピーク値はPMn−1とPMをとおる光の位相差に依存する。
【0128】
このシステムは,図5に示されるシステムにも応用できる。さらに,各行に含まれるMZの数が同じ数(M個)でなくても,用いることができる。いずれの場合も,バイアス調整対象の列以外の列のバイアス電圧をボトムとし,バイアス調整対象の列のバイアス電圧をボトム以外とする。そのうえで,先に説明した調整方法を行うことで,たとえば,調整対象となる列間のバイアスをボトムになるように調整できる。
【0129】
このシステムは,図6に示されるシステムや複数段の入れ子型マッハツェンダー導波路の場合も同様に用いることができる。
【0130】
(スライド17頁)
次に,本発明の第9の側面に係るシステムの例を説明する。この例は,サブマッハツェンダー導波路の両アームに変調信号を印加するための電極を有するものである。この例は,サブマッハツェンダー導波路の後段に位相変調器が設けられているものが好ましい。なお,このシステムでは,位相変調器が各サブマッハツェンダー導波路の前段に設けられているものでも同様に処理することができる。図9は,サブマッハツェンダー導波路の後段に位相変調器が設けられているシステムの例を示す概念図である。このシステムの基本構成は先に説明したシステムと同様であるので記載を引用することとして,繰り返しを省略する。
【0131】
このシステムは,PMn−1とPMをとおる光の位相差(これらの位相変調器のバイアス電圧)を調整する。調整対象となる位相変調器をPMn−1とPMとし,それぞれの位相変調器の前段に存在するサブマッハツェンダー導波路をMZn−1とMZとする。PMn−1とPMとは1つのメインマッハツェンダー導波路に含まれる位相変調器であることが好ましい。
【0132】
このシステムは,サブマッハツェンダー導波路の両アームに変調信号を印加するための電極が設けられており,任意の電極に電圧を印加できるようにされている。また,このシステムは,任意の位相変調器に電圧を印加できるようにされている。それぞれのサブマッハツェンダー導波路の合波部の後段に設けられる位相変調器は,独立して駆動できるものでもよいし,プッシュプル動作するものであってもよい。
【0133】
このシステムでは,バイアス調整に先立ち,それぞれのマッハツェンダー導波路におけるVπの値を求めておくことが好ましい。マッハツェンダー導波路におけるVπの値を求める方法はすでに知られている。このため,公知の方法に従って,マッハツェンダー導波路におけるVπの値を求め記憶部に記憶し,適宜記憶部に記憶された値を読みだして演算処理に用いればよい。
【0134】
このシステムでは,MZn−1とMZのバイアスがヌル点(ボトム)ではないように調整する。また,MZn−1とMZ以外のサブマッハツェンダー導波路のバイアス状態は任意である。
【0135】
このシステムでは,MZn−1とMZ以外のサブマッハツェンダー導波路に正弦波電気信号を印加する。この正弦波電気信号は,大振幅正弦波振動であることが好ましい。すなわち,正弦波電気信号の振幅が,2.405(=πV/2Vπ)程度となるように調整する。PMn−1とPMとのバイアス電圧を正弦波,三角波,のこぎり波,又はディザリング信号で掃引するか,又は直流電圧を用いて印加電圧を変化させる。システムからの出力を測定し,バイアス電圧に由来する成分のみを抽出する。このバイアス電圧に由来する成分は,印加した信号の周波数と連動して変化している成分なので,出力信号を周波数解析することで抽出することができる。
【0136】
このシステムのフェーザ表示及び光強度の関係は図11に示される通りである。Aは,MZの光出力の振幅の絶対値である。このバイアス電圧に由来する成分が最大値となる地点が,バイアス電圧が同相であり,最小値となる地点が,バイアス電圧が逆相である。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は光情報通信の分野で利用されうる。
【符号の説明】
【0138】
1 第1の分岐部
2 第1の導波路
3 第1の変調器
4 合波点
5 第2の導波路
6 第2の変調器
7a 第1のメインマッハツェンダー導波路
7b 第2のメインマッハツェンダー導波路
8a 第1のサブマッハツェンダー導波路
8b 第3のサブマッハツェンダー導波路
9a 第2のサブマッハツェンダー導波路
9b 第4のサブマッハツェンダー導波路
10a 第1の位相変調器
10b 第3の位相変調器
11a 第2の位相変調器
11b 第4の位相変調器
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9
図10
図11