特許第5757585号(P5757585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757585
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/67 20060101AFI20150709BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20150709BHJP
   B29C 45/47 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   B29C45/67
   B29C45/76
   B29C45/47
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-5133(P2013-5133)
(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公開番号】特開2014-136342(P2014-136342A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2014年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155159
【氏名又は名称】株式会社名機製作所
(72)【発明者】
【氏名】神野 鎮緒
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−297912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/67
B29C 45/47
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出装置のスクリュの作動を電動モータにより行い型締装置の型締シリンダの作動を油圧により行う射出成形機において、
射出用のサーボモータと、
計量用のサーボモータと、
駆動源の電動モータが常時回転される第1のポンプと、
型締シリンダ以外のいずれかのアクチュエータの作動時に駆動源の電動モータが停止または最低回転数で回転される第2のポンプとが備えられ、
第1のポンプからの作動油と第2のポンプからの作動油とを合流させて型締シリンダを作動させることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
型締装置の型開閉機構の作動は型開閉機構のサーボモータにより行い、前記型開閉機構の作動時間の少なくとも過半の時間は前記第2のポンプの回転が停止または最低回転数で回転されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記第1のポンプはインバータによりポンプの回転数が制御され、前記第2のポンプはサーボモータによりポンプの回転数が制御されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
型締シリンダはパイロット圧によって作動される弁により作動され、パイロット圧は前記第1のポンプの作動により確保されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出装置のスクリュの作動を電動モータにより行い型締装置の型締シリンダの作動を油圧により行う射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機においては、精密な作動、省エネルギー化、成形機のコンパクト化、低コスト化のそれぞれの要素を兼ね備えたものが求められている。特に精密な作動が求められる射出装置についてはスクリュをサーボモータにより作動させることが望ましい。また横型の型締装置についてはトグル機構を用いたものよりも型締シリンダを用いたもののほうが成形機の全長をコンパクトにできる。更にまた大型の射出成形機の型締装置については、駆動に必要な電動モータが汎用品では間に合わずコストが非常に高価なものとなったり、対応可能な電動モータが無いなどの問題があり、油圧によって作動される型締シリンダを用いる場合が多い。
【0003】
上記のような要求に応えるものとして、射出装置のスクリュの作動を電動モータにより行い型締装置の型締シリンダの作動を油圧により行う射出成形機が挙げられるが、このような射出成形機については特許文献1の図8に記載のものが知られている。特許文献1では精密な作動が必要な射出装置のスクリュをサーボモータにより作動させ、型締装置を油圧によって作動される型締シリンダを用いている。また型締装置における可動ダイプレート移動手段に電動モータを用い、型締機構には油圧による型締シリンダを用いたものとしては、特許文献2に記載のものが知られている。特許文献2は、ポンプの作動をインバータまたはサーボモータにより回転数を制御することにより、省エネルギー化を図っている。更には特許文献3においては、射出成形機全体を油圧により作動させるものにおいて、複数のサーボモータにより作動させるポンプを使用し、必要に応じて一方のポンプを停止させることなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−20415号公報(0042、図8
【特許文献2】特開2003−181895号公報(請求項1、図1
【特許文献3】特開2007−69501号公報(請求項1図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに特許文献1のように射出装置のスクリュの作動を電動モータで行うことは射出時の制御を高精度に行うことができ、同時に射出装置の省エネルギー化を実現できる。しかし従来では型締装置の作動は常時ポンプが回転される大型のポンプで行っていたので、射出成形機全体の省エネルギー化は十分に実現できなかった。また特許文献2は、可動ダイプレート移動手段に電動モータを使用しているので、前記移動手段の部分の省エネルギー化と高速で高精度な移動を実現することはできる。しかし射出装置はどのような駆動方式か明示がなく、型締装置の他の部分の作動を常時ポンプが回転される大型のポンプで行っているので、射出成形機全体では省エネルギー化は十分に実現できなかった。更に特許文献3は、サーボモータにより作動させるポンプを複数使用し、必要に応じて一方のポンプを停止させるので、油圧機構としては省エネルギー化を図ることができる。しかし射出成形機の全ての機構を油圧により制御するので、サーボモータ等の電動モータにより射出装置などを直接作動させるものと比較して、省エネルギー化が十分でなく、射出装置などが高精度に制御できないという問題があった。
【0006】
そこで本発明は型締装置の型締機構には油圧を使用した射出成形機において、射出装置には電動モータを使用し高精度化かつ省エネルギー化を計りつつ、長時間にわたって圧締が必要な型締め装置についても省エネルギー化を図ることができる射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の射出成形機は、射出装置のスクリュの作動を電動モータにより行い型締装置の型締シリンダの作動を油圧により行う射出成形機において、射出用のサーボモータと、計量用のサーボモータと、駆動源の電動モータが常時回転される第1のポンプと、型締シリンダ以外のいずれかのアクチュエータの作動時に駆動源の電動モータが停止または最低回転数で回転される第2のポンプとが備えられ、第1のポンプからの作動油と第2のポンプからの作動油とを合流させて型締シリンダを作動させることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に記載の射出成形機は、請求項1において、型締装置の型開閉機構の作動は型開閉機構のサーボモータにより行い、前記型開閉機構の作動時間の少なくとも過半の時間は前記第2のポンプの回転が停止または最低回転数で回転されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に記載の射出成形機は、請求項1または請求項2において、前記第1のポンプはインバータによりポンプの回転数が制御され、前記第2のポンプはサーボモータによりポンプの回転数が制御されることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に記載の射出成形機は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、型締シリンダはパイロット圧によって作動される弁により作動され、パイロット圧は前記第1のポンプの作動により確保されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の射出成形機は、射出装置のスクリュの作動を電動モータにより行い型締装置の型締シリンダの作動を油圧により行う射出成形機において、射出用のサーボモータと、計量用のサーボモータと、駆動源の電動モータが常時回転される第1のポンプと、型締シリンダ以外のいずれかのアクチュエータの作動時に駆動源の電動モータが停止または最低回転数で回転される第2のポンプとが備えられ、第1のポンプからの作動油と第2のポンプからの作動油とを合流させて型締シリンダを作動させるので、射出装置の高精度化と省エネルギー化を図るともに型締装置の省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の射出成形機の油圧回路と制御装置の説明図である。
図2】本実施形態の射出成形機の各工程を示すタイムチャート図である。
図3】本実施形態の射出成形機のカットオフ制御時のポンプの作動を示す図である。
図4】本実施形態の射出成形機の型閉工程等のポンプの作動制御を示す図である。
図5】本実施形態の射出成形機の型締工程のポンプの作動制御を示す図である。
図6】本実施形態の射出成形機の強力型開工程のポンプの作動制御を示す図である。
図7】本実施形態の射出成形機の取出工程の第2のポンプの作動制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の射出成形機11について、図1を参照して説明する。射出成形機11は、ベッド12上に設けられた射出装置13のスクリュ14の作動を電動モータ15,16により行い、同じくベッド12上に設けられた型締装置17の型締シリンダ18の作動を油圧により行う射出成形機11である。まず射出装置13について説明すると、加熱筒19の内部の内孔には、スクリュ14が回転可能かつ前後進可能に設けられている。そして加熱筒19の前方にはノズル20が設けられている。また加熱筒19が固定されるフロントプレート21には材料の供給孔22が加熱筒19の内孔に向けて設けられている。またフロントプレート21の前部には、射出装置13全体を前後進させ、ノズル20を固定金型23に当接されるノズルタッチ機構のノズルタッチ用の油圧シリンダ24のシリンダ部が取付けられている。なおノズルタッチ機構のアクチュエータは電動モータとボールネジ等を用いた機構でもよい。
【0014】
またフロントプレート21の後方(図1においては右側)にはバックプレート25が設けられ、フロントプレート21とバックプレート25の間にはプッシャプレート26(中間プレート)がベッド12に設けられた直動ガイド上を前後進可能に設けられている。そしてバックプレート25にはスクリュ14を前後進させる射出用のサーボモータ15(電動モータ)が固定され、サーボモータ15の駆動軸とボールネジとが連結されている。またプッシャプレート26にはボールネジナットが固定されており、前記ボールネジナットにボールネジが挿通され、ボールネジが回転されることによりプッシャプレート26が前後進移動されるようになっている。またプッシャプレート26にはスクリュ14を回転させる計量用のサーボモータ16(電動モータ)が固定され、サーボモータ16の駆動軸がベルトを介して、スクリュ14の後方に接続されるとともにプッシャプレート26に軸支される回転軸に固定されたプーリと連結されている。また射出装置13は、フロントプレート21に射出用のサーボモータ(電動モータ)が固定され、バックプレートに計量用のサーボモータ(電動モータ)が固定された2枚のプレートから構成されるものでもよい。前記したようなスクリュ14を駆動するアクチュエータを電動モータとした射出装置13は、射出時や計量時に高精度な制御が可能であり、かつ省エネルギー化の点でも優れている。
【0015】
次に型締装置17について説明すると、ベッド12に対して固定的に設けられる固定盤27の四隅近傍には型締シリンダ18が設けられている。そして型締シリンダ18のロッドがタイバ28を構成しており、タイバ28は可動盤29の四隅近傍のブッシュ(ガイド孔)に挿通されている。また固定盤27の中央には射出装置13のノズル20が挿通される円錐状の孔が形成されている。更に固定盤27の前記孔の両側には前記ノズルタッチ用の油圧シリンダ24のロッドが取付けられている。また固定盤27において、反射出装置の盤面には固定金型23が取付けられ、前記孔を介してノズル20が固定金型23に当接されるようになっている。また固定盤27の両側面には型開閉機構のアクチュエータであるサーボモータ31(電動モータ)がそれぞれ固定され、サーボモータ31の駆動軸にはボールネジ32が連結されている。また可動盤29の両側面にはボールネジナット33が固定され、前記ボールネジ32はボールネジナット33に挿通されている。このような機構により本実施形態では可動盤29の移動(型開閉)は、電動モータによって行われる。なお型開閉機構のサーボモータ31はベッド12に固定されたものでもよく、型開閉機構は油圧シリンダにより作動されるものでもよい。
【0016】
またタイバ28の外周には複数の溝が形成された係止部34が設けられ、可動盤29の外側壁面のタイバ28が挿通されるブッシュの部分の近傍には油圧シリンダ35によってハーフナット36が作動されるハーフナット機構が設けられている。ベッド12上には型開閉方向に直動ガイド等のガイドレール(図示せず)が設けられ、可動盤29は前記ガイドレールにガイドされている。そして可動盤29は型開閉機構により前記ガイドレールとタイバ28にガイドされて型開閉方向に向けて移動可能となっている。固定盤27に対向する可動盤29の盤面には可動金型38が取付けられる。また可動盤29の背面(可動金型38の取付面の反対側)には油圧シリンダ39を備えたエジェクタ機構40が取付けられている。なおハーフナット機構やエジェクタ機構40のアクチュエータは電動モータにより作動されるものでもよい。
【0017】
次に図1を参照して射出成形機11の制御装置41と油圧回路について説明する。まず第1のポンプ42について説明すると、タンク43にはインバータ44により時間当たりのポンプの回転数を制御して回転駆動可能な第1のポンプ42が接続されている。そしてインバータ44は接続される制御装置41によって制御され、インバータ44により周波数を制御することにより電動モータ45(三相誘導モータ)の回転数が制御される。本実施形態では第1のポンプ42は、可変容量型のアキシャル型ピストンが使用されている。そして第1のポンプ42の吐出容量を変更する斜板の角度は、吐出容量変更シリンダ46(コンペンセータ)により切換えられる。吐出容量変更シリンダ46への作動油の供給は吐出容量切換弁47を介して供給され、吐出容量変更シリンダ46への作動油の供給量(供給圧)が少ないか無い場合は、バネにより吐出容量変更シリンダ46のロッドは戻されて斜板の角度はゼロまたは極小状態となる。
【0018】
また第1のポンプ42のパイロット管49から分岐して設定圧の異なる第1のリリーフ弁50と第2のリリーフ弁51が並列に設けられている。そして前記第1のリリーフ弁50または第2のリリーフ弁51のどちらが吐出容量変更シリンダ46に連通されるかを切換える目的で電磁作動される切換弁52が設けられている。第1のリリーフ弁50および第2のリリーフ弁51の設定圧は、設定入力することにより制御装置41を介して変更可能である。また前記切換弁52も制御装置41からの信号により切換えられる。このように本実施形態の第1のポンプ42は2つの設定圧に制御可能であり、吐出流量もインバータによりクローズドループ制御可能なポンプであるので省エネルギー化に貢献する。また第1のポンプ42の回転数を低下させた際には騒音防止にも貢献する。なお第1のポンプ42の設定圧は1段でも3段以上でもよい。
【0019】
また第1のポンプ42については、アキシャル型のピストンポンプに限定されず、ギアポンプやベーンポンプなどでもよい。また第1のポンプ42の駆動源は、サーボモータを使用して回転数をクローズドループ制御するものでもよく、クローズドループ制御されない電動モータにより常時一定回転で回転されるものでもよい。
【0020】
第1のポンプ42からの管路48には逆止弁53が設けられ、その先(ポンプから遠い側)には、クローズドループ制御されるレデューシング弁54(電磁圧力制御弁)が設けられている。したがって第1のポンプ42において供給圧力が2圧のいずれかに制御されたものであっても、レデューシング弁54により更に所望の圧力に圧力制御して型締シリンダ18等に作動油を供給できる。レデューシング弁54の先は、管路48が分岐しており、本実施形態では、型締機構の型締シリンダ18、ハーフナット機構の油圧シリンダ35、ノズルタッチ機構のノズルタッチ用の油圧シリンダ24に接続されている。ここではエジェクタ機構40の油圧シリンダ39は後述するサーボモータ55によって制御される第2のポンプ56により作動油が供給されるが、第1のポンプ42から作動油を供給するようにしてもよい。
【0021】
アクチュエータであるそれぞれの油圧シリンダ18,24,35,39の油圧回路について説明すると、型締シリンダ18の型締用油室18aにはカートリッジ弁57を介して作動油が供給されるように型締側油室18a側の管路が接続され、カートリッジ弁57の先の型締用油室18a側の管路には油圧センサ58が設けられている。また型締用油室18a側の管路から分岐した管路には圧抜き用の開閉弁59が設けられている。また前記カートリッジ弁57についてはパイロット管60を介してパイロット圧により制御されるので、パイロット管60のパイロット圧を供給および遮断するために電磁作動される切換弁61が設けられている。また型締シリンダ18の型開用油室18bも同様にカートリッジ弁62を介して接続され、カートリッジ弁62の先の型開用油室18b側の管路が型開用油室18bに接続されている。また型開用油室18b側の管路から分岐した管路には圧抜き用の開閉弁63が設けられている。また前記カートリッジ弁62についてはパイロット管64を介してパイロット圧により制御されるので、パイロット管64にはパイロット圧を供給および遮断するために電磁作動される切換弁65が設けられている。
【0022】
ハーフナット機構の油圧シリンダ35およびノズルタッチ機構のノズルタッチ用の油圧シリンダ24については、減圧弁66,67を介してその先(シリンダ側)に電磁作動される四方切換弁75,76が設けられ、シリンダの作動油の供給する側の室が切換えられるようになっている。また図示はしないが固定金型23または可動金型38にもゲートバルブ、コア移動機構、金型取付機構などで油圧シリンダが使用されることもある。
【0023】
次に第2のポンプ56について説明すると、タンク43にはサーボモータ55によりポンプの回転数が制御される第2のポンプ56が接続されている。第2のポンプ56は1回転当たりの吐出量が固定のギアポンプである。そして第2のポンプ56のサーボモータ55はサーボアンプ68により電流値が制御され電動モータの時間当たりの回転数がクローズドループ制御される。また第2のポンプ56は停止および回転開始の応答性にも優れている。サーボアンプ68は制御装置41からの信号により制御される。本実施形態の第2のポンプ56は2連ポンプであり、一方のポンプ56aがエジェクタ機構40の油圧シリンダ39に対して管路69と管路69に設けられた電磁作動される四方切換弁70を介して接続されている。なおエジェクタ機構40の油圧シリンダ39は、オープン制御の四方切換弁70に変えて、サーボ弁や、その他のクローズドループ制御される方向切換機能付の流量制御弁を使用することにより更に高精度に制御可能である。またもう一方のポンプ56bは管路71と前記管路71に設けられた逆止弁72を介して第1のポンプ42から作動油が送られる管路48と接続されている。そして両方のポンプ56a,56bから作動油が供給される管路69,71は、管路73と電磁作動される開閉弁74により接続および遮断可能に設けられている。またそれぞれの管路69,71は、サーボモータ55が制御不能になった際の回路保護のためや一方の作動油をアンロードさせる際などのためにリリーフ弁77,78がそれぞれ設けられている。なお本実施形態ではエジェクタ機構40の油圧シリンダ39を第2のポンプ56により作動させているが、他の油圧シリンダ35等も第2のポンプ56により作動させるものでもよい。
【0024】
なおこの型締シリンダ18以外のいずれかのアクチュエータの作動時に電動モータであるサーボモータ55が停止または最低回転数で回転される第2のポンプ56については、ギアポンプに限定されず、アキシャル型のピストンポンプやベーンポンプなどでもよい。また第2のポンプ56の駆動源は、インバータを使用して回転数を制御する電動機でもよい。また本実施形態では、第2のポンプ56は多連ポンプが使用されているが、単独のポンプでもよい。更に本実施形態では、作動油を供給するポンプは第1のポンプ42と第2のポンプ56の2個のポンプ42,56から構成されるが、更には第3のポンプ、第4のポンプ、第5のポンプ・・・など複数のポンプが設けられたものでもよい。なお前記において第3のポンプ、第4のポンプ、第5のポンプ等は、常時回転されるポンプであっても、回転が停止されるポンプであってもよい。そして従来はポンプを常時作動させたままタンクに大量の作動油がアンロードされていたが、本発明ではそのような大量の作動油のアンロードは行われないので、省エネルギー化に繋がる。
【0025】
また前記した射出用のサーボモータ15、計量用のサーボモータ16、可動盤29の型開閉機構のサーボモータ31についても、図示しないサーボアンプを介して制御装置41に接続され、制御装置41によりクローズドループ制御がなされる。
【0026】
次に図2ないし図7を参照して射出成形機11の制御方法について説明する。本実施形態の形態では、一例として図3に示されるように、第1のポンプ42の供給圧力を切換える第1のリリーフ弁50の設定圧は一例として8Maであり第2のリリーフ弁51の設定圧は一例として18MPaとなっている。図2に示されるように型閉工程の可動盤29の移動させるアクチュエータは、サーボモータ31により行われる。この際、第1のポンプ42は、切換弁52により第1のリリーフ弁50と吐出容量変更シリンダ46(コンペンセータ)が接続されるようにされている。従って第1のポンプ42から管路48へ送られる作動油の設定圧力は、図4に示されるようにパイロット管60,64等のパイロット圧を維持するのに必要な8MPaとなっている。そして第1のポンプ42の回転数もインバータ44を制御して低速で回転される。この際に管路48および第1のポンプ42のパイロット管49の作動油の圧力が8MPaに近づくと第1のリリーフ弁50のオフセットが働き、第1のリリーフ弁50から吐出容量切換弁47を介して吐出容量変更シリンダ46へ供給される作動油が増加され、第1のポンプ42の斜板の傾転角は大傾転角から小傾転角に切換えられ、カットオフ制御がなされる。従って管路48等の作動油の圧力が設定圧または設定圧近くになると第1のポンプ42の1回転当たりの吐出量が自動的に減少され、第1のポンプ42を駆動する電動モータ45の負荷が減少し省エネルギー化に繋がる。またこの際に第2のポンプ56のサーボモータ55は、回転駆動を停止している。なおこの際にサーボモータ55を第2のポンプ56を僅かに回転させることができる最低回転数で回転させるようにしてもよい。
【0027】
次に可動盤29が型閉され、固定金型23と可動金型38の間にキャビティが形成されて型閉工程が完了すると、四方切換弁66を作動させてハーフナット機構の油圧シリンダ35を作動させ、ハーフナット36をタイバ28の係止部34に係合させる。そして次に増圧工程に移行する。増圧工程では、まず型締シリンダ18を作動させてピストンおよびタイバ28を移動させハーフナット36と係止部34の間隙を解消する。そしてその後に型締側油室18aの作動油の圧力を昇圧して型締を行う。その際に型締シリンダ18は受圧面積が大きいのでピストンおよびタイバ28を移動させるためには大量の作動油を供給する必要がある。増圧工程における油圧回路の作動としては、まず切換弁61を作動させてパイロット圧によりカートリッジ弁57を操作し、管路48側と型締側油室18aを連通させる。
【0028】
第1のポンプ42は、制御装置41からの指令によりインバータ44が周波数を制御して電動モータの回転数を増速させ、ポンプを高速回転させる。また切換弁52を切換えて第2のリリーフ弁51と吐出容量変更シリンダ46(コンペンセータ)が接続されるようにする。このことにより第1のポンプ42から供給される作動油の設定圧は18MPaに変更される。なお前記の回転数および設定圧の変更は、ハーフナット36の係合の方法にもよるが、型閉の完了する直前または直後であってもよい。また第2のポンプ56については、本実施形態では型閉の完了する直前から回転を開始させ、型閉の完了と同時に回転数を最大にして吐出を行う。この際、開閉弁74は開放されるともにエジェクタ機構40の油圧シリンダ39への四方切換弁70は閉鎖されており、2連ポンプ56a,56bの双方から型締シリンダ18へ作動油が供給される。なおこの供給開始も、型閉の完了と同時、または僅かに遅れて第2のポンプ56の回転を開始するものでもよい。
【0029】
従って本発明では、最も作動油が必要な型締シリンダ18の作動(ここでは増圧作動)を行う際に、図5に示されるように第2のポンプ56を作動させて第1のポンプ42からの作動油と加算、合流させて型締シリンダ18を作動させる。このため型締シリンダ18が受圧面積の大きいものであっても比較的高速に作動させ比較的高速に昇圧することができる。
【0030】
そして増圧工程において油圧センサ58により検出される作動油の圧力が設定圧(例えば18MPa)に到達すると第2のポンプ56は回転を停止する。(または最低回転数まで回転を低下させる。)しかし逆止弁72が設けられているので、第2のポンプ56を停止しても第1のポンプ42から供給される作動油は、第2のポンプ56の側へは逆流しない。この際にほぼ同時か僅かに前後して管路48の圧力は18MPaに到達するので、その少し前から第2のリリーフ弁51のオフセットが働き、第2のリリーフ弁51からは作動油がリークして吐出容量切換弁47を介して吐出容量変更シリンダ46へ供給される作動油が増加される。そして図3に示されるように第1のポンプ42の斜板の傾転角は大傾転角から小傾転角に切換えられるカットオフ制御がなされる。なお第2のポンプ56の停止は、第1のポンプ42の傾転角の角度、予め設定されたタイミング(シーケンス的に制御)、センサにより検出された型締力、型締シリンダ18の位置などにより停止されるものでもよい。なお上記では型締シリンダ18の設定圧力が第1のポンプ42の供給側の設定圧力と同じ18MPaの例で記載した。しかしレデューシング弁54により型締シリンダ18の設定圧力は任意に制御可能であり、例えば型締シリンダ18を16MPaで制御する場合は、型締シリンダ18の設定圧力を第1のポンプ42の供給側の設定圧力と異なるように制御される。そして油圧センサ58が、型締シリンダ18側の設定圧力16MPa(レデューシング弁54の設定圧力)を検出した際に第2のポンプ56の作動を停止させる。
【0031】
そして次の保持工程では、型締シリンダ18の型締側油室18aや管路48等は既に設定圧まで昇圧されているから、第1のポンプ42の斜板の角度は自動的に小傾転角を維持した状態が継続される。また第1のポンプ42の回転数は、インバータ44により回転数が制御されるが高速回転のまま維持される。なお保持工程において第1のポンプ42の回転数を低下させるものでもよい。保持工程では型締シリンダ18の型締側油室18aの作動油の圧力が低下しないように型締シリンダ18および油圧回路からリークした分等を補充するのみなので、実際には第1のポンプ42から前記型締側油室18aに供給される作動油はごく僅かである。そして所定の遅延時間が経過すると射出装置13の射出用のサーボモータ15を駆動させてスクリュ14を前進させ、事前に計量された溶融樹脂をキャビティ内へ射出充填する。この際までにノズルタッチ用の油圧シリンダ24に作動油を供給して射出装置13を前進させてノズル20を固定金型23に当接させておく。または成形方法によってはノズル20を固定金型23に当接したまま保持しておくが、その場合はノズルタッチ用の油圧シリンダ24には、圧力を封じ込めしておく。本実施形態では射出装置13の射出機構のアクチュエータは、サーボモータ15(電動モータ)によって駆動されるので、高精度な制御が可能である。
【0032】
射出充填および保圧後の保持工程では、キャビティ内の溶融樹脂は冷却固化が進行する。そして溶融樹脂の冷却固化と並行して、射出装置13ではノズルタッチした状態のままか或いはノズル20を後退させてノズル20を閉鎖した状態で、計量用のサーボモータ16を駆動させてスクリュ14を回転させ、次に射出を行うための溶融樹脂の計量が行われる。
【0033】
次に圧抜工程では、切換弁61を切換えてカートリッジ弁57も閉鎖し、第1のポンプ42側から作動油が型締側油室18aへ供給されないようする。そして開閉弁59を開放して型締側油室18aの作動油をタンク43へ戻し、型締側油室18aの圧力を0にする。またそれと同時か僅かに前後して、切換弁52を切換えることにより第1のポンプ42の設定圧を低圧にする。この際並行して第1のポンプ42の回転数はインバータ44を制御することにより低速回転に変更する。なお圧抜工程の第1のポンプ42の回転数は高速回転のままでもよい。射出装置13により計量を並行して行っている保持工程の間、および圧抜工程の間、第2のポンプ56は停止したままである。
【0034】
次に型締シリンダ18を用いて固定金型23から可動金型38を開く強力型開工程を開始する。強力型開工程では、切換弁65を切換えてカートリッジ弁62を作動させ、ポンプ側の管路48と型開側油室18bに接続される管路を接続する。同時か僅かに前後して第1のポンプ42の設定圧を高圧にするとともにインバータ44を制御することによりポンプの回転数を高速回転とする。また停止していたサーボモータ55を回転駆動させることにより第2のポンプ56から作動油を供給する。この際圧抜工程の後半から低速でサーボモータ55を回転駆動させるものでもよい。
【0035】
強力型開工程では所定のストローク(例えば数十mm程度)型締シリンダ18のピストンおよびロッド(タイバ28)を型開方向に移動させるが、この際には速度制御を行う。速度制御については図6に示されるように、第1のポンプ42は能力一杯に作動油を供給させ、第2のポンプ56のサーボモータ55の回転数をクローズドループ制御することにより、型締シリンダ18による可動盤29および可動金型38の移動速度の制御が行われる。強力型開工程では上記のように速度制御がなされるが、圧力との関係では第1のポンプ42は、設定圧の直前となるとカットオフ制御がなされる。また第2のポンプ56は、回転数をコントロールして速度制御が行われるが圧力が設定値となった場合は、リリーフ弁77,78から作動油をリークさせる(安全弁)。なお強力型開工程における第1のポンプ42の設定圧力はレデューシング弁54により制御されるが、第1のポンプ42側の設定圧と同じでもよい。
【0036】
次の型開工程は、型締シリンダ18の作動を停止させ、ハーフナット36とタイバ28の係止部34の係合を解除した後、型開閉機構のサーボモータ31を駆動させ可動盤29および可動金型38を型開完了位置まで移動させる。この際は第1のポンプ42は低速、低回転数とし、第2のポンプ56は停止させる。
【0037】
可動盤29および可動金型38が型開完了位置で停止して型開工程が終了すると、次にエジェクタ機構40により成形品を突出し図示しない取出装置で移載する取出工程となる。取出工程ではエジェクタ機構40を作動させるために第2のポンプ56のサーボモータ55を回転駆動させる。この際にリリーフ弁78は開放されてポンプ56bの作動油はタンクへアンロードされ、ポンプ56aの作動油のみが四方切換弁70を介してエジェクタ機構40の油圧シリンダ39へ供給される。この際に開閉弁74は閉鎖されており、逆止弁72が設けられていることから第1のポンプ側42からの作動油の流入はない。従って図7に示されるように、エジェクタタ機構40は、第2のポンプ56のサーボモータ55の回転数を制御することによって速度制御される。なおこの際、四方切換弁70に代えて、サーボ弁やその他のクローズドループ制御される方向切換機能付の流量制御弁を使用することにより、更に高精度にエジェクタ機構40が制御可能となる。なおエジェクタ機構40が電動モータにより作動される場合は、当然ながら第2のポンプ56は作動されない。またエジェクタ機構40は、第1のポンプ42から供給される作動油により作動されるものでもよい。
【0038】
上記したように本発明では、第1のポンプ42は、各油圧シリンダ17,24,35の作動とパイロット管60,64等のパイロット圧の保持のために電動モータ45が常時回転されている。また第2のポンプ56は、型締シリンダ18以外のいずれかのアクチュエータ(例えば射出用のサーボモータ15、計量用のサーボモータ16、型開閉用のサーボモータ31の作動時やハーフナット用の油圧シリンダ35等の作動時)に電動モータ(サーボモータ55)が停止または最低回転数で回転され、第1のポンプ42からのみでは作動油の供給が不足する場合に少なくとも最低回転数より高回転で回転駆動され、作動油を供給する。
【0039】
従って例えば型締装置17の型締機構の型締シリンダ18に加えて型開閉機構を油圧シリンダにより作動させる場合は、型開閉用の油圧シリンダは多量の作動油を供給する必要があるので、型閉工程および型開工程も第2のポンプ56を回転駆動して作動油を供給する。本発明では、射出装置13を電動モータで作動させる場合において、型締装置17側の作動油の供給量が大きい油圧シリンダをサーボモータ55を用いた第2のモータ56を併用して作動油の供給を行い、その他の作動油の供給量が小さい油圧シリンダ(本実施形態ではエジェクタ機構40の油圧シリンダ39を除く)やパイロット管への作動油の供給は、インバータ制御による電動モータ45を用いた第1のポンプ42により作動油の供給を行うことにより省エネルギー化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。本発明の対象とする射出成形機は大きさや構造は限定はされないが、一例として型締力が800t以上というような大型の射出成形機であって、トグル機構を用いずに型締シリンダにより型締を行うものに好適に用いられる。また射出成形機は、可動盤が垂直方向に昇降移動する竪型射出成形機であってもよい。また射出成形機は、可動盤にロータリテーブルが取付けられたものでもよい。更には射出装置の数は1基に限定されず、複数の射出装置を用いて多色成形品を成形するものでもよい。更には射出成形機は、多色成形品を成形するものにおいては、固定盤、可動盤の他に、固定盤と可動盤の間に、回転する中間盤が設けられ固定盤に取付けられた固定金型と中間盤に取付けられた中間金型、中間盤に取付けられた中間金型と可動盤に取付けられた可動金型の間でそれぞれ別の樹脂により成形を行い、次に中間盤と中間金型を回転させて同様に成形を行うことにより、多色成形品の成形を行うものでもよい。
【0041】
また射出成形機は、上記において、射出圧縮成形や発泡成形を行うものでもよい。射出圧縮成形を行う場合などでは、油圧回路にアキュームレータを設け、型締時の高速での昇圧を図るものでもよい。また前記射出圧縮成形や発泡成形などでは圧力センサの値を検出してサーボモータの回転数をコントロールする圧力制御やレデューシング弁を制御する圧力制御などを行ってもよい。また4個の型締シリンダを用いたものでは圧縮成形時にそれぞれの型締シリンダをサーボ弁等のクローズドループ制御可能な弁により個別に制御することにより平行制御を行うようにしてもよい。また射出成形機は、樹脂成形品の他、金属成形品、無機成形品、樹脂以外の有機成形品等、各種成形品に用いられるものでもよい。
【符号の説明】
【0042】
11 射出成形機
13 射出装置
14 スクリュ
15,16,31,55 サーボモータ
17 型締装置
18 型締シリンダ
42 第1のポンプ
44 インバータ
45 電動モータ
54 レデューシング弁
56 第2のポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7