特許第5757598号(P5757598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757598
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】過熱水蒸気発生器
(51)【国際特許分類】
   F22G 3/00 20060101AFI20150709BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20150709BHJP
   F28D 7/06 20060101ALI20150709BHJP
   F28D 7/08 20060101ALI20150709BHJP
   C01C 1/04 20060101ALN20150709BHJP
【FI】
   F22G3/00 Z
   F22B1/18 K
   F28D7/06
   F28D7/08
   !C01C1/04 H
   !C01C1/04 J
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-119292(P2014-119292)
(22)【出願日】2014年6月10日
(62)【分割の表示】特願2011-515165(P2011-515165)の分割
【原出願日】2009年6月17日
(65)【公開番号】特開2014-206370(P2014-206370A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2014年6月11日
(31)【優先権主張番号】PA200800881
(32)【優先日】2008年6月26日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】スタール・ヘンリク・オット
(72)【発明者】
【氏名】ハン・パト・アー
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−010309(JP,A)
【文献】 特開昭49−038002(JP,A)
【文献】 特開平10−300370(JP,A)
【文献】 米国特許第4248181(US,A)
【文献】 特開2006−22995(JP,A)
【文献】 米国特許第5845703(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22G 3/00
F22B 1/18
F28D 7/00− 7/16
C01C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱水蒸気発生器(30)であって、
シェル(305)、管板(303)、後端部(307)、管束(309)、バッフルプレート(317)、およびシェル(305)に適合した水蒸気入口(315)を備える第1区画(301)、ならびにシェル(306)、管板(304)、後端部(308)、管束(310)、バッフルプレート(317)、およびシェル(306)に適合した水蒸気出口(316)を備える第2区画(302)と;
第1区画と第2区画とを分離し、管板(303、304)間の空間によって画定されている移行区画(311)と;
管板(303、304)、ひいては移行室(311)を通り、第1区画(301)から第2区画(302)まで過熱水蒸気発生器(30)の長軸(320)に沿って延在するチャネリングパイプ(312)と;
入口室(318)と出口室(319)との間に位置付けられている分離壁(321)と
を含み、
前記移行区画(311)は、移行区画の入口室(318)内に延在するプロセスガス入口(313)を備え、入口室(318)が、チャネリングパイプ(312)の壁と、片側にあって第1区画(301)の管束(309)が延在する管板(303)の壁と、反対側にあって第2区画(302)の管束(310)が延在する管板(304)の壁との間の範囲内にあり;
前記移行区画(311)は、移行区画の出口室(319)から延在するプロセスガス出口(314)を備え、出口室(319)が、チャネリングパイプ(312)の壁と、片側にあって第1区画(301)の管束(309)が延在する管板(303)の壁と、反対側にあって第2区画(302)の管束(310)が延在する管板(304)の壁との間の範囲内にあり;
ここで、第1および第2区画301、302が、水蒸気流に関して直列に、かつプロセスガス流に関して並列に接続されている、過熱水蒸気発生器(30)。
【請求項2】
出口室(319)が、内部に配置されているバルブ(322、323)をさらに含み、これらが第1および第2区画(301、302)の管束(309、310)と直接流体連通している、請求項に記載の過熱水蒸気発生器。
【請求項3】
第1区画における管束が、低合金鋼製であり、第2区画における管束が、ステンレス鋼製である、請求項またはに記載の過熱水蒸気発生器。
【請求項4】
配向が垂直であり、第1または第2区画が、その後端部に、滞留した水を除去するための水出口をさらに含む、請求項のいずれか一つに記載の過熱水蒸気発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱統合が改善された、炭化水素原料からアンモニアを製造するプロセスであって、まず、炭化水素原料を水蒸気改質によって合成ガスに転化し、続いて、合成ガスをアンモニアに転化するプロセスに関する。本発明はまた、上記プロセスでの使用、より詳細には、少なくとも2000MTPDの生産能力を有する大型アンモニアプラントでの使用に特に好適な新規な過熱水蒸気発生器にも関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアを製造する従来のプラントは、2個の主なセクションに通常は分割されており、改質セクションでは、天然ガスなどの炭化水素原料が、30〜80バール、多くの場合には30〜40バールの範囲の圧力で転化されて水素および窒素の混合物を含有する合成ガスとなり、アンモニア合成セクションでは、水素と窒素との比率が適切であって、かつ120〜200バールに圧縮された後の合成ガス(アンモニア合成ガス)がアンモニアに触媒転換され、後に冷却により凝縮される。
【0003】
改質セクションでは、一次、自己熱または二次改質器を有する従来のプロセスレイアウトを利用するとき、水素含有合成ガスが、例えば約1000℃以上の高温で生成される。上記改質器で生成された合成ガスは冷却されなければならず、これは、ガスを多数の廃熱ボイラーおよび過熱水蒸気発生器に通すことによって通常は達成される。これらの装置は、高価で、高度に複雑化された熱交換器であり、メタルダスティング、水素浸食および応力腐食に関係する機械および材料関連の不具合の危険性を最小にするために注意深く設計される必要がある。特に、改質セクションにおける過熱水蒸気発生器は、高価な装置であるが、これらのユニットは注意深い構成であるにもかかわらずメタルダスティングの防止が困難である。メタルダスティングの危険性は、実際には、改質セクションにおいて過熱器を用いるときに特有のものである。
【0004】
アンモニア合成セクションでは、合成ガスに含有される水素と窒素との混合物からアンモニアが触媒的に生成される。発熱の下にアンモニアへの転化が起こり、この熱は、廃熱ボイラーにおいて、場合によりおよび過熱水蒸気発生器において利用されて高圧水蒸気を生成し、アンモニア合成セクションにおいて圧縮器を駆動するのにさらに用いられる。アンモニア合成セクションにおける廃熱ボイラーおよび過熱水蒸気発生器もまた、高価で、高度に複雑化された熱交換器であり、水素浸食、窒化および応力腐食が伴う機械および材料関連の不具合の危険性を最小にするように特に設計されている。廃熱ボイラーは、アンモニア転化器の下流に通常は配置されているため、窒化および応力腐食に特に曝される。
【0005】
メタルダスティング、応力腐食および窒化は、適切な設計および材料の選択によって回避されなければならない、破壊的な、または少なくとも重大な腐食形態である。メタルダスティングは、金属と接触するガス中の一酸化炭素の存在下において、かつ金属温度がガスとの相互作用により金属が微粒子に分解される程に低いとき、通常は400℃〜800℃、より具体的には500℃〜750℃であるときに通常は起こる。
【0006】
金属の窒化は、金属と接触するガスからの窒素が金属材料内に拡散して窒化物を生成するときに起こる。これにより、容易に割れ最悪の場合には割れ目が金属全体に広がる硬い表面層が形成される。したがって、窒化に付された材料は、より脆弱になりやすい。窒化層の厚さは、温度、時間および金属合金に依存する。低合金炭素鋼の薄い金属板では約380℃超、厚い金属板では約400℃超の金属温度で、金属の窒化傾向が大幅に増大することが一般に認識されている。さらに高温では、ステンレス鋼またはインコネルなどの材料が必要とされる。
【0007】
応力腐食は、ステンレス鋼などのオーステナイト材料が水と接触するとき、特に水が塩素などの不純物を含有するときに危険性を示す。応力腐食の危険性は、低合金炭素鋼を利用するとき、かなり低くなる。
【0008】
アンモニアプラントの生産能力は、プラントが2000、3000、5000MTPDまたはそれを超えるアンモニアを生産するように設計されるに従い着実に上昇するため、過熱水蒸気発生器がますます大きくなる設計が厄介な課題となっている。このような大型アンモニアプラントにおいては、過熱水蒸気発生器のサイズが問題となる。なぜなら、標準設計では上記過熱器の管板の直径および厚さが簡単に大きくなって、アンモニアの生産が技術的にも経済的にも実現できなくなるからである。
【0009】
より大きなプラントを選択するこの傾向はまた、プラントにおいて圧縮器を駆動させるために水蒸気を供給する必要性も誘発した。これは、より高い水蒸気圧を必要とし、したがって、より高い水蒸気温度が必要となる。結果として、より高い水蒸気温度に対処可能な過熱水蒸気発生器用にステンレス鋼またはインコネルなどの高価な材料を用いなければならない。
【0010】
米国特許第4,213,954号(特許文献1)には、改質セクションおよびアンモニア合成セクションを含む、アンモニアを製造するプロセスが記載されている。これらのセクションは、プラントの改質セクションおよびアンモニア合成セクションにおいて廃熱ボイラー用の水蒸気分離ユニットとして機能する共通の水蒸気ドラムを共有する。これにより、改質セクションにおいて生成される水蒸気がアンモニア合成セクションにおいて用いられる一方で、二次改質器からのプロセスガスが、廃熱ボイラーだけでなく過熱器も有するシステムを通過することで冷却される。水蒸気はまた、膨張エンジンにおいても用いられて、電力を回収する。
【0011】
米国特許第4,545,976号(特許文献2)には、水蒸気エクスポート(stean export)が低減された炭化水素の水蒸気改質によりアンモニア合成ガスを製造するプロセスであって、二次改質器からのプロセスガスが、一連の過熱水蒸気発生器を用いて冷却されるプロセスが記載されている。
【0012】
本発明者らによるEP−A−1,610,081号(特許文献3)には、水蒸気改質段階のすぐ下流で使用するための熱交換器が開示されている。熱交換器は、低合金鋼の管束を含有する第1のより冷たい加熱領域と、オーステナイトニッケル/クロム/鉄合金などの耐温度性/耐食性合金製の管束を含有する第2のより熱い加熱領域とを含む。水蒸気は、熱交換器の管側を通過して、シェル側でガス(合成ガス)を改質する。より冷たい加熱領域およびより熱い加熱領域は、水蒸気流および改質ガス流のいずれに対しても直列に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,213,954号
【特許文献2】米国特許第4,545,976号
【特許文献3】EP−A−1,610,081号
【特許文献4】EP−A−0535505号
【特許文献5】米国特許第6,726,851号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的の一つは、熱統合が改善され、プラントの廃熱ボイラーにおける、特に過熱水蒸気発生器におけるメタルダスティング、窒化および応力腐食傾向が低減されたアンモニア製造プロセスを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、熱統合が改善され、水蒸気エクスポートが低減された、従来技術のプロセスよりも費用効率がかなり高いアンモニア製造プロセスを提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、アンモニアセクションにおけるプラントトリップに対して強くかつ感受性が低いプロセスを提供することである。
【0017】
本発明のなお別の目的は、大型アンモニアプラントでの使用に好適であると同時に、腐食、特に窒化および応力腐食に耐える過熱水蒸気発生器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらおよび他の目的は、本発明によって解決される。
【0019】
第1態様において、本発明者らは、炭化水素原料からアンモニアを製造するプロセスであって、
(a)炭化水素原料を改質セクションに通し、上記改質セクションから合成ガスを引き出すステップと;
(b)上記合成ガスを、過熱水蒸気発生器を用いずに、1個または複数の廃熱ボイラーに通し、ここで、合成ガスは、水−水蒸気混合物によって間接熱交換され、上記廃熱ボイラーから水蒸気を引き出し、上記水蒸気を1個または複数の水蒸気ドラム内に導くステップと;
(c)これにより冷却された、ステップ(b)の合成ガスを、合成ガス内の一酸化炭素を水素に転化するシフト転化段階、続いて、合成ガス内に残存する二酸化炭素、一酸化炭素およびメタンを除去する洗浄プロセスに通し、窒素と水素とを含有する合成ガスを引き出すステップと;
(d)ステップ(c)において生成された合成ガスを、アンモニア転化器内の1個または複数の触媒床を通過させることで合成ガスをアンモニアに触媒転化することを含むアンモニア合成セクションに通し、1個または複数の触媒床からアンモニア含有プロセスガスを引き出すステップと;
(e)上記アンモニア含有プロセスガスを、ステップ(b)の1個または複数の水蒸気ドラムからの水蒸気が過熱される1個または複数の過熱水蒸気発生器に通し、過熱された水蒸気のストリームを上記1個または複数の過熱水蒸気発生器から引き出すステップと;
(f)これにより冷却された、ステップ(e)のプロセスガスを、プロセスガスが水−水蒸気混合物によって間接熱交換される1個または複数の廃熱ボイラーに通し、上記1個または複数の廃熱ボイラーから水蒸気を引き出し、上記水蒸気をステップ(b)の1個または複数の水蒸気ドラム内に導くステップと
を含むプロセスを提供する。
【0020】
したがって、ステップ(b)およびステップ(f)の廃熱ボイラーにおいて生成される水蒸気の全てが、ステップ(e)の1個または複数の過熱器において過熱される。こうして、アンモニア合成セクションにおいて、可能な限りの冷却が実施される。
【0021】
本発明者らは、アンモニア含有プロセスガスを冷却し、かつ改質セクションの廃熱ボイラーにおいて生成される全ての水蒸気を過熱する働きをする1個または複数の過熱器をアンモニア転化器の下流に組み入れることによって、改質セクションにおける他の場合には必要とされる廃熱ボイラー、さらにはプラントのアンモニア合成セクションにおける廃熱ボイラー、特に過熱器(複数可)のより簡単でより安価な構成を提供できることを見出した。したがって、本発明は、生成される合成ガスを冷却するための、合成ガス加熱による過熱水蒸気発生器(プロセスガス加熱による過熱器)、または簡単には過熱水蒸気発生器を、プラントの改質セクションにおいて必要としないという有意な利点を提示する。こうして、過熱器(複数可)の冷却能力がプラントの改質セクションからアンモニア合成セクションにそのまま移動する。これにより、改質セクションにおいて過熱水蒸気発生器を用いるときに実際には特有のものであるメタルダスティングの危険性が、完全に排除される。
【0022】
さらに、可能な限りの冷却がアンモニア合成セクションにおいて実施されるため、該プロセスは、アンモニア転化器からのプロセスガスを好ましくはU管熱交換器の形態の過熱水蒸気発生器において約380℃未満の温度に冷却することを可能にし、これにより、下流に配置されている廃熱ボイラー(複数可)の窒化が回避される。先に言及したように、約380℃超の金属温度は、窒化作用の傾向を大幅に増大させる。アンモニア合成セクションにおける廃熱ボイラー(複数可)は、380℃未満の温度のプロセスガスをここでは冷却して、例えば炭素鋼合金によるU管熱交換器(複数可)としてひいては好都合に構成され得るため、他の場合には必要とされるオーステナイト材料の応力腐食に伴う問題も排除する。したがって、さもなければかなり高価である廃熱ボイラーおよび過熱水蒸気発生器を含む構成において、より安い材料を用いることができる。
【0023】
本発明の有意な利点は、改質およびアンモニアセクションを含むプラントが、改質セクションが運転を継続しながら、例えばアンモニア合成セクションでのアンモニア製造が停止するプラントトリップに対してより強くなるということである。従来のプロセスレイアウトでは、アンモニアセクションにおいてそのようなプラントトリップが起こると、改質セクションでの水蒸気の発生が直ちに影響を受ける。この作用を相殺するために、二次改質器の下流で合成ガスを冷却する、改質セクションにおける廃熱ボイラーが、通常はかなり特大サイズとなる。本発明のプロセスにより、改質セクションでの水蒸気の発生に及ぼすこのような影響を低減することができる。アンモニアセクションにおいてプラントトリップが存在するとき、改質セクションにおける水蒸気の発生をここでは平衡化することができ、結果として、このセクションにおける二次改質器の下流の廃熱ボイラー(複数可)をかなりの特大サイズにする必要がなくなる。より小さな、したがってより安価な廃熱ボイラーを用いることができる。
【0024】
改質セクションは、当該技術分野において常套的であるように、1つまたは複数のステップにおいて、炭化水素原料の改質を含んでいてよい。したがって、炭化水素供給物は、例えば、予備改質ステップの後、一次および二次改質に付されてもよく、あるいは、炭化水素供給物、例えば天然ガスが、熱合成ガスを生成するために自己熱改質ステップに直接通されてもよい。合成ガスは、1個または複数の廃熱ボイラーにおいて高圧水蒸気の生成下で冷却される前に、1000℃超の温度で自己熱または二次改質ステップから引き出される。
【0025】
窒素と水素とを含有する合成ガスという用語は、本明細書で用いられるとき、アンモニア合成ガス、すなわち、アンモニア転化器への供給物として用いられる、水素と窒素との比率が適切である合成ガスを意味する。
【0026】
二次改質および自己熱改質という用語は、本明細書で用いられるとき、二次改質は通常自己熱改質器(ATR)において実施されるために互換的に用いられる。しかし、厳密に言えば、自己熱改質という用語は、一次改質が存在しないときのみ、厳密な意味をなす。
【0027】
一次改質という用語は、本明細書で用いるとき、従来の加熱型(fired)管状改質器(放射炉)での炭化水素原料の改質を意味する。
【0028】
本発明により、触媒アンモニア転化器を離れたプロセスガスが、初めに過熱水蒸気発生器(複数可)、続いて廃熱ボイラー(複数可)を通過することも理解されよう。改質セクションの廃熱ボイラー(複数可)において生成される全ての水蒸気、ならびにアンモニア合成セクションの廃熱ボイラー(複数可)において生成される水蒸気もまた、触媒アンモニア転化器の下流に配置されている第1過熱水蒸気発生器に導かれる。上記過熱水蒸気発生器からの水蒸気の少なくとも一部を、プラントの改質セクションにおけるプロセス水蒸気として、好ましくは一次改質段階の廃熱セクションにおけるプロセス水蒸気として用いることもできる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、炭化水素原料を改質セクションに通し、上記改質セクションから合成ガスを引き出すことを含むステップ(a)は、炭化水素原料を一次改質ステップに通して部分改質ガスを生成するステップと、上記部分改質ガスを熱交換改質ステップおよび二次改質ステップに通すステップと、上記熱交換改質段階から得られた合成ガスストリームを引き出すステップとを含み、熱交換改質段階を通過する部分改質ガスが、上記二次改質ステップから引き出された合成ガスによる間接熱交換によって改質される。
【0030】
熱交換改質は、一次および二次改質ステップからの熱を単に水蒸気生成に使用するだけでなく、このガスをさらに改質するために使用することを可能にする。したがって、水蒸気生成を、アンモニア合成セクションの要求をほぼ正確に満たす量まで大幅にかつ実際に低減することもできる。結果として、不適当な水蒸気エクスポートが回避される。
【0031】
先に言及したように、金属温度が400℃〜800℃、より具体的には500℃〜750℃の範囲にあるときにメタルダスティングの危険性が最も高いことが一般に認められている。したがって、好ましくは、改質セクションから引き出された合成ガスのストリーム、特に、上記熱交換改質段階から引き出された合成ガスのストリームは、約800℃以上の温度を有し、該温度は、熱交換器自体でのメタルダスティングの危険性を低減し、さらには、下流に位置する廃熱ボイラーでのメタルダスティングを回避するのに十分に高い。
【0032】
好ましくは、熱交換改質は、二重管を含む1個または複数の熱交換型反応器において実施される。二重管は、基本的には、実質的に同心の2個の管を有する配置である。管壁間の空間は、熱交換媒体(上記二次改質ステップから引き出された合成ガス)が流動可能な環状空洞を画定する。床の固体触媒は、二重管の外側および/または内側に設置されていてよい。
【0033】
したがって、別の実施形態において、本発明はまた、複数の二重管を有し、前記熱交換改質ステップを実施するのに用いられる1個または複数の熱交換型反応器内で混合ガスを形成し、その形成を好ましくは1個または複数の熱交換型反応器の底部で、前記二次改質ステップから引き出された合成ガスと1個または複数の熱交換型反応器の二重管の少なくとも外側に設置されている触媒床を離れる改質ガスとを混合することによってなし、次いで、前記混合ガスを前記二重管の環状空間に通して前記触媒床を間接加熱することとを含む。次いで、得られた合成ガスストリームは、引き出されて、改質セクションの下流に配置されている1個または複数の廃熱ボイラーを通過する。
【0034】
好ましくは、1個または複数の熱交換型反応器の触媒床の固体触媒粒子は、二重管の外側だけでなく内側にも、すなわち二重管の内管内にも設置されている。
【0035】
さらに別の実施形態では、熱交換改質ステップは、バヨネット型反応器において実施される。バヨネット管型反応器の特定の実施形態では、この改質器における少なくとも1個の改質器管は、外管および内管を備えており、外管は、改質すべきプロセスガスを導入するための入口端部、および閉鎖された出口端部を備え、内管は、両方の端部で開口していて、外管内で、外管と相隔てられて、同軸上に配置されており、外管と内管との間の環状空間は、改質触媒で満たされており、内管は、改質ガスの流出するストリームを引き出すように適合されており、外管は、外管と相隔てられたスリーブによって場合により同心円状に包囲されており、かつ、スリーブと外管との間の空間に二次改質器からの合成ガスストリームを導くことによって、外管において改質すべきプロセスガス(反応原料)と熱伝達関係にある二次改質器からの熱合成ガスストリームを通すように適合されている。このようなバヨネット型反応器の特定の実施形態は、例えば、本発明者らによるEP−A−0535505号(特許文献4)に開示されている。
【0036】
本発明のさらなる実施形態において、ステップ(a)において改質すべき炭化水素原料は、本発明者らの米国特許第6,726,851号(特許文献5)に記載のように、1つまたは複数の熱交換改質ステップおよび自己熱または二次改質ステップに並行して通され、上記自己熱または二次改質段階から引き出された熱合成ガスは、上記1つまたは複数の熱交換改質ステップにおいて熱交換媒体として用いられる。
【0037】
本発明の第2態様において、本発明者らは、該プロセスでの使用のための過熱水蒸気発生器、より詳細には、プロセスステップ(e)、すなわち、触媒アンモニア転化器の下流での使用のための過熱水蒸気発生器を提供する。
【0038】
したがって、本発明はまた、過熱水蒸気発生器30であって、
シェル305、管板303、後端部307、管束309、バッフルプレート317、およびシェル305に適合した水蒸気入口315を備える第1区画301、ならびにシェル306、管板304、後端部308、管束310、バッフルプレート317、およびシェル306に適合した水蒸気出口316を備える第2区画302と;
第1区画と第2区画とを分離し、管板303、304間の空間によって画定されている移行区画311と;
管板303、304、ひいては移行室311を通り、第1区画301から第2区画302まで過熱水蒸気発生器30の長軸320に沿って延在するチャネリングパイプ312と;
入口室318と出口室319との間に位置付けられている分離壁321と
を含み、
上記移行区画311は、移行区画の入口室318内に延在するプロセスガス入口313を備え、入口室318が、チャネリングパイプ312の壁と、片側にあって第1区画301の管束309が延在する管板303の壁と、反対側にあって第2区画302の管束310が延在する管板304の壁との間の範囲内にあり;
上記移行区画311は、移行区画の出口室319から延在するプロセスガス出口314を備え、出口室319が、チャネリングパイプ312の壁と、片側にあって第1区画301の管束309が延在する管板303の壁と、反対側にあって第2区画302の管束310が延在する管板304の壁との間の範囲内にあり;
ここで、第1および第2区画301、302が、水蒸気流に関して直列に、かつプロセスガス流に関して並列に接続されている、過熱水蒸気発生器30も包含する。
【0039】
水蒸気が過熱器のシェル側を通過する一方で、アンモニア転化器からのプロセスガスは、管側を通過する。
【0040】
好ましくは、移行区画313のプロセスガス入口313およびプロセスガス出口314は、過熱水蒸気発生器のシェル305、306において互いに全く反対に位置付けられており、より好ましくは、上記プロセスガス入口および出口313、314は、過熱水蒸気発生器の長軸320に沿って、互いに全く反対に、かつ同じ位置に位置付けられている。
【0041】
入口室318と出口室319との間に位置付けられている分離壁321は、チャネリングパイプ312の長さ方向に沿って、その全体にわたって好ましくは延在する。この壁は、入口室318のプロセスガスが出口室319内に直接入ることを防止する働きをする。好ましくは、過熱器のどちらの区画の管束もU管束である。
【0042】
管束は、どちらの管板内にも延在し、したがってその中に支持される。管が管板を貫通することが理解されよう。したがって、管は、アンモニア転化器から流入する熱プロセスガスを受け入れる移行区画の入口室、または冷却されたプロセスガスが引き出される移行区画の出口室と流体連通する。
【0043】
特定の実施形態において、出口室319は、内部に配置されているバルブ322、323をさらに含み、これらは、第1および第2区画301、302の管束309、310と直接流体連通している。バルブは、好ましくはスロットルバルブである。出口室にバルブを提供することで、アンモニア転化器からの適切な比率のプロセスガスを過熱水蒸気発生器の第1(冷)および第2(熱)区画に供給することを可能にし、これにより、過熱器を離れる水蒸気の温度を水蒸気出口316において簡単な手段によって調節することを可能にする。好ましくは、40重量%のプロセスガスが第1区画を通過し、60重量%が第2区画に入る。過熱器における水蒸気の出口温度(これは約375℃であり得る)を調節することによって、一次改質器の廃熱セクションを通過した後のこの水蒸気の最終過熱温度を調節することもでき、水蒸気は、例えば515℃の最終過熱温度にさらに加熱される。この最終水蒸気温度は、実際には調節する必要がある温度であり、このような調節は、過熱器を離れる水蒸気温度を水蒸気出口316において簡単に調節することによって実現可能となる。ボイラー用水(BFW)を添加することで一次改質器の廃熱セクションを通過させる際に水蒸気をクエンチするなどの、該最終過熱温度を調節するのに不適当な代替案は、回避される。
【0044】
本発明のプロセスは、飽和水蒸気を過熱器の第1区画内に比較的低温(323℃)で導入することを可能にする。この水蒸気は、水蒸気ドラムからの、水滴の形態のいくらかの持ち越し(carry−over)を含有することとなる。これは、過熱器の内部金属部分がオーステナイト材料製、例えばステンレス鋼製であるときには、結果として該部分を応力腐食する可能性がある。しかし、本発明の過熱水蒸気発生器では、内部金属部分、主として第1区画における管束は、好ましくは低合金鋼製である。第1(冷)区画は、流入する冷水蒸気(323℃)に起因して380℃未満に維持することができるため、窒化作用の危険を伴うことなく低合金炭素鋼などの低合金鋼を用いることができる。第2(熱)区画における内部金属部分、主として管束は、この区画の全体にわたって温度を380℃未満に維持することができないため、窒化の危険性からステンレス鋼製である。応力腐食の危険性は、この区画にはもはや無関係である、なぜなら、流入する水蒸気によって持ち越される水滴が、それが第1区画を通過することによって加熱されており、そのため水蒸気が乾燥しているからである。
【0045】
したがって、本発明のさらなる実施形態によると、第1区画における管束は、フェライト鉄、クロム、モリブデンおよび炭素鋼などの低合金鋼製であり、第2区画における管束は、ステンレス鋼製である。好ましくは、低合金鋼は、低合金炭素鋼である。
【0046】
腐食の問題を解決することとは別に、本発明の過熱器は、標準設計では過熱器のサイズがかなり大きくなるため過熱器が簡に製造不可能となる大型アンモニアプラントに特に有利である。本発明の過熱器により、アンモニア転化器からのプロセスガスストリームが第1区画と第2区画とに分割される。換言すると、プロセスガスストリームは、一部のみがそれぞれの管板を通り、同時に、管板は、過熱器の長軸に沿って一方の区画から他方の区画に延在するチャネルパイプによって支持されている。これにより、従来の単一の管板を含む状況と比較して、管板の厚さがかなり低減する。したがって、本発明はまた、より簡単で、より安価な構成も可能にする。該過熱器は、任意の特殊な工場で実際に製造することができる。
【0047】
用語「大型アンモニアプラント」は、本明細書で用いるとき、2000MTPD以上、例えば3000、5000MTPD以上の生産能力を有するアンモニアプラントを意味する。
【0048】
便宜上、過熱器の配向は、重い管板およびヘッドセクションが過熱器の後端部付近に通常は配置されているため、通常は水平である。しかし、このような水平配向は、特に、過熱器の中間セクションに配置されている金属部分における腐食の問題を運ぶ場合がある。特に、過熱水蒸気発生器の金属部分の加温が可能でないときの起動に際して、塩素などの不純物を含有する水滴が、その中に滞留して濃縮する場合がある。このような金属部分は、耐腐食性材料でできていない場合が多いため、重大な腐食の問題がこうして生じ得る。
【0049】
本発明により、過熱器を垂直配向に単に配置することによって、このような腐食の問題をさらに防止することができる。この配向は、本発明の過熱器において達成することがかなり容易になる、なぜなら、管板を主として含む重金属部分が、ユニットの中間に向かって配置されているからである。不純物を含有する潜在的な水滴は、第1または第2区画における過熱器の底に滞留して集合する。次いで、滞留した水は、内部に配置されている出口導管を通して簡単に引き出される。
【0050】
したがって、本発明のさらに別の実施形態において、過熱水蒸気発生器の配向は、垂直であり、第1または第2区画は、その後端部に、滞留した水を除去するための水出口をさらに含む。好ましくは、この垂直配向における過熱水蒸気発生器の底部は、第2(熱)区画である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】アンモニア合成用プラントにおける該プロセスの特定の実施形態のブロック図を示し、熱交換改質器および二次改質器を組み入れた改質セクションI、ならびにアンモニア合成セクションIIを示す。
図2】プラントのアンモニア合成セクションで使用するための、本発明による過熱器の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1において、天然ガスなどの炭化水素原料1は、一次改質器20において水蒸気を添加することを含む一次改質ステップを通過する。部分改質ガス2は、一次改質器20から引き出されて、部分ストリーム3および4に分割される。ストリーム3は、内部に設置されている二重管を有し、かつ二重管の外側および内側に触媒粒子が配置されている熱交換改質器21の頂部に導かれ、一方で、部分ストリーム4は、二次改質器22を通過する。熱交換改質器21の底では、二次改質器から流出する熱ガスが、触媒床を離れる、熱交換改質器において転化されたプロセスガスと、改質器の底で組み合わされる。混合ガスを改質器において上方に通させることで、上記混合ガスを内部に配置されている触媒床の間接加熱に用いる。混合ガスは、熱交換改質器を通過して合成ガスストリーム5として離れるとき、冷却される。次いで、ストリーム5は、給水6が供給されていて、合成ガスが水蒸気によって間接熱交換される廃熱ボイラー23において冷却される。このセクションでは、過熱水蒸気発生器は用いられない。廃熱ボイラー23からの水蒸気−水混合物は、水蒸気ドラム24に導かれる。冷却された合成ガスストリームは、水性ガスシフトセクション25において水素リッチであり、続いて、合成ガスにおいて残存する一酸化炭素、二酸化炭素およびメタンを除去するための洗浄セクション26を通過する。水素と窒素とを適切な比率で含有するアンモニア合成ガスストリーム8は、これにより生成され、複数のアンモニア触媒床28を含む、プラントのアンモニア合成セクションの触媒アンモニア転化器27に導かれる。アンモニア9を含有するプロセスガスが460℃で触媒転化器から引き出され、過熱水蒸気発生器30および廃熱ボイラー29の系を通過することで冷却される。過熱水蒸気発生器30の後に、プロセスガスが約380℃に冷却される。生成された過熱された水蒸気10は、約375℃で離れて、プラントにおいて圧縮器を駆動するために用いられ得るが、廃熱ボイラー29からの水蒸気11は、水蒸気ドラム24に導かれる。ボイラー用水(BFW)は、ストリーム12として添加されるが、水蒸気ドラム24からのストリーム13は、廃熱ボイラー29において水蒸気の生成に用いられる。改質セクションの廃熱ボイラー23およびアンモニア合成セクションの廃熱ボイラー29において生成される全ての水蒸気は、アンモニア合成セクションの過熱水蒸気発生器30において323℃の沸点の高圧水蒸気の形態の水蒸気ストリーム14を介して過熱される。冷却されたアンモニア含有プロセスガスは、ストリーム15として引き出される。
【0053】
ここで図2では、図1における過熱器30の概略図を示す。過熱器は、第1(冷)区画301および第2(熱)区画302、2個の管板303、304、それぞれ後端部307、308を含む2個のシェル305、306、2個のU管束309、310、ならびに移行区画311およびチャネリングパイプ312を含む。このチャネリングパイプは、過熱水蒸気発生器の中央で、過熱器の長軸320に沿って第1区画301から第2区画302まで延在する。過熱器はまた、移行区画311の一部として配置されているプロセスガス入口313およびプロセスガス出口314、ならびに第1区画301のシェル305に配置されている水蒸気入口315および第2区画302のシェル306に配置されている水蒸気出口316も含む。バッフルプレート317は、第1および第2区画に設置されて、水蒸気流を偏向させ、これにより熱伝達を増大させる。バッフルはまた、管束用の支持体ともなる。移行区画311は、プロセスガス入口313まで直接延在し、管板303、304内に延在する管束309、310と流体連通する入口室318を含む。移行区画311はまた、プロセスガス出口314内に直接延在する出口室319も含み;出口室319はまた、管板303、304内に延在する管束309、310とも流体連通する。チャネリングパイプセクション312に沿って延在する分離壁321は、入口室および出口室318、319を分割する。これにより、第1区画および第2区画が、水蒸気流に関して直列に、かつプロセスガス流に関して並列に接続される。出口室319に位置するスロットルバルブ322および323は、第1(冷)および第2(熱)区画を通過するプロセスガスの量を制御し、これにより水蒸気出口316における水蒸気出口温度も制御する働きをする。
【0054】
本発明のプロセスは、すなわち、飽和水蒸気を比較的低温(323℃)で過熱器に供給することを可能にする。水蒸気は、この温度で、第1(冷)区画の後端部付近で水蒸気入口315を通して入り、次いで、そのシェル側を通って流れる。ここで、水蒸気は345℃に過熱され、この温度で、チャネリングパイプ312を介して過熱器の第2(熱)区画に通る。水蒸気はさらに過熱され、過熱された水蒸気として375℃にて水蒸気出口316を通って離れる。アンモニア転化器からのプロセスガスは、460℃で過熱器に入り、プロセスガス入口313を通って移行区画311の入口室318に入る。プロセスガスは分割され、第1および第2区画に移動し、管板303、304を介してU管束309、310内に入る。U管を通過した後、プロセスガスは、管板303、304を介して入り、スロットルバルブ322、323を介して出口室319内に入る。第1区画からのプロセスガスは、373℃で出口室319内に入る一方で、第2区画からのプロセスガスは、403℃で入る。この室内において混合ガスは、380℃の温度に達し、プロセスガス出口314を通って離れて、下流の廃熱ボイラー(複数可)においてさらに冷却される。
図1
図2