(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757611
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20150709BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20150709BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02M7/48 N
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-23847(P2011-23847)
(22)【出願日】2011年2月7日
(65)【公開番号】特開2012-165558(P2012-165558A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2014年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110778
【氏名又は名称】ニシム電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084870
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 香樹
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 俊郎
【審査官】
大手 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−298519(JP,A)
【文献】
特開2008−237018(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0211308(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタにより互いに接離可能な保守バイパスユニットとインバータユニットを備え、
前記保守バイパスユニットは、商用電源が接続される入力端子と、前記入力端子からの商用電源の電力を前記インバータユニット側に送出する出力側端子および前記インバータユニット側から電力を受ける入力側端子を有するコネクタと、前記コネクタの入力側端子が受けた電力を負荷機器に送出する出力端子と、前記入力端子と前記出力端子間に配設された、機械式スイッチからなるバイパスブレーカを備え、
前記インバータユニットは、前記保守バイパスユニットのコネクタの出力側端子および入力側端子にそれぞれ結合する入力側端子および出力側端子を有するコネクタと、前記入力側端子と出力側端子間に配設された商用電源の正常・異常に応じて開閉される、電子的スイッチからなるラインスイッチと、蓄電池と、前記ラインスイッチの出力側の分岐ライン上に配設され、商用電源の正常時に商用電源の電力をAC/DC変換して前記蓄電池を充電するとともに商用電源の異常時に前記蓄電池の電力をDC/AC変換して前記出力側端子に送出する双方向インバータを備え、
前記インバータユニットの保守に際し、前記双方向インバータの動作が停止されてから前記バイパスブレーカがオンされたとき、前記ラインスイッチより前記バイパスブレーカの導通抵抗が小さいことにより、前記負荷機器への電流は、前記ラインスイッチ側を通らずに前記バイパスブレーカ側を通り、前記負荷機器への給電状態が継続されることを特徴とする無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電電源装置に関し、特に、負荷機器への給電を停止させることなく、故障や劣化などした部品を交換することができる無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商用電源の正常時には商用電源から負荷装置へ給電し、商用電源の異常時には蓄電池から負荷装置へ給電する無停電電源装置は周知である。特許文献1には、このような無停電電源装置において、負荷装置への給電を停止させることなく蓄電池などの部品を交換可能にした無停電電源装置が提案されている。
【0003】
特許文献1記載の無停電電源装置では、配電ユニットとバックアップユニットをコネクタにより接離可能に構成し、配電ユニットに負荷装置と商用電源を接続し、商用電源に異常が発生した場合にバックアップユニットから負荷機器に電力を供給する。特許文献1では、負荷装置への給電を停止させることなく蓄電池などの部品を交換可能にするため、第1および第2の実施形態が提案されている。
【0004】
第1の実施形態では、商用電源の正常時、商用電源から配電ユニットだけを通して負荷装置に電力を供給する。ここで、バックアップユニットの修理などのために、バックアップユニットが配電ユニットから分離されても、商用電源から負荷装置へは給電され続ける。第2の実施形態では、商用電源の正常時、商用電源から配電ユニットとバックアップユニットを通して負荷装置に電力を供給する。ここで、バックアップユニットの修理などのために、バックアップユニットが配電ユニットから分離された場合、商用電源から配電ユニットだけを通して負荷装置への給電が行われるようになり、商用電源から負荷装置へ給電され続ける。特許文献1記載の無停電電源装置では、いずれの実施形態においても商用電源の異常や配電ユニットとバックアップユニットの分離を検出し、配電ユニット内のスイッチ(半導体スイッチあるいはリレースイッチ等)を切替制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−278666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の無停電電源装置は、負荷装置への給電を停止させることなくバックアップユニット内の蓄電池などの部品を交換可能にすることを意図するものである。しかし、バックアップユニット内の部品交換時の給電を担う配電ユニットに電子部品が含まれており、それらの電子部品が故障や劣化しないという保証はない。配電ユニット内に含まれている電子部品に故障や劣化が生じた場合には、それを交換するために負荷装置への給電を停止させなければならない。したがって、特許文献1記載の無停電電源装置は、装置全体からみると、負荷装置への給電を停止させなければならない場合が生じるという課題がある。
【0007】
また、特許文献1記載の無停電電源装置では、配電ユニットとバックアップユニットを接離可能に接続するコネクタは、電力を伝送するだけでなく、商用電源の入力電圧を検出する検出コイルの出力やスイッチ切替用の制御信号を伝送する必要がある。このため、電力用だけでなく信号用のコネクタが必要になるという課題もある。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解決し、コネクタにより接離可能な配電ユニットとバックアップユニットとで構成される無停電電源装置において、負荷装置への給電が停止される機会をできる限り減らすことができ、また、コネクタ周りを簡素化できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、コネクタにより互いに接離可能な保守バイパスユニットとインバータユニットを備え、前記保守バイパスユニットは、商用電源が接続される入力端子と、前記入力端子からの商用電源の電力を前記インバータユニット側に送出する出力側端子および前記インバータ
ユニット側から電力を受ける入力側端子を有するコネクタと、前記コネクタの入力側端子が受けた電力を負荷機器に送出する出力端子と、前記入力端子と前記出力端子間に配設された、機械式スイッチからなるバイパスブレーカを備え、前記インバータユニットは、前記保守バイパスユニットのコネクタの出力側端子および入力側端子にそれぞれ結合する入力側端子および出力側端子を有するコネクタと、前記入力側端子と出力側端子間に配設されて商用電源の正常・異常に応じて開閉される、電子的スイッチからなるラインスイッチと、蓄電池と、前記ラインスイッチの出力側の分岐ライン上に配設され、商用電源の正常時に商用電源の電力をAC/DC変換して前記蓄電池を充電するとともに商用電源の異常時に前記蓄電池の電力をDC/AC変換して前記出力側端子に送出する双方向インバータを備え、前記インバータユニットの保守に際し、前記双方向インバータの動作が停止されてから前記バイパスブレーカがオンされたとき、前記ラインスイッチより前記バイパスブレーカの導通抵抗が小さいことにより、前記負荷機器への電流は、前記ラインスイッチ側を通らずに前記バイパスブレーカ側を通り、前記負荷機器への給電状態が継続されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、保守バイパスユニットが電子部品を含まないように構成されているので、負荷装置への給電が停止される機会をできる限り減らすことができる。また、コネクタが電力を伝送するだけで済むようにしているので、コネクタ周りを簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る無停電電源装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る無停電電源装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。本実施形態の無停電電源装置は、コネクタにより接離可能な保守バイパスユニット10とインバータユニット20から構成される。
【0014】
保守バイパスユニット10は、入力端子11と、コネクタ12と、出力端子13と、機械的スイッチで構成されるバイパスブレーカ14を備える。入力端子11には商用電源30が接続され、出力端子13には負荷機器40が接続される。また、コネクタ12には後述するインバータユニット20のコネクタ21が接離可能に接続される。コネクタ12は、商用電源30の電力をインバータユニット20側へ送出する出力側端子12-1と、インバータユニット20側から電力を受ける入力側端子12-2を有する。
【0015】
保守バイパスユニット10内では、入力端子11がコネクタ12の出力側端子12-1に直接接続される。これにより商用電源30の電力がコネクタ12の出力側端子12-1を通してインバータユニット側へ伝送される。コネクタ12の入力端子12-2は、出力端子13に直接接続される。これによりインバータユニット20側から供給される電力がコネクタ12の入力端子12-2および出力端子13を通して負荷機器40に供給されるようになっている。
【0016】
また、入力端子11は、バイパスブレーカ14を介して出力端子13に接続される。これによりバイパスブレーカ14がオンの場合、商用電源30の電力が直接出力端子13を通して負荷機器40に供給されるようになっている。
【0017】
インバータユニット20は、コネクタ21と、メインブレーカ22と、半導体スイッチで構成されるラインスイッチ23と、双方向インバータ24と、蓄電池25を備える。コネクタ21は、入力側端子21-1と、出力側端子21-2を備える。コネクタ21は、保守バイパスユニット10のコネクタ12に接離可能であり、コネクタ12,21が 互いに接続されると、出力側端子12-1と入力側端子21-1、入力側端子12-2と出力側端子21-2が互いに接続される。
【0018】
インバータユニット20内では、コネクタ21の入力側端子21-1と出力側端子21-2がメインブレーカ22およびラインスイッチ23を介して接続される。また、ラインスイッチ23の出力側に双方向インバータ24の一端が接続され、双方向インバータ24の他端には蓄電池25が接続される。通常、双方向インバータ24は、インバータ起動スイッチ(図示せず)により動作状態にされる。
【0019】
メインブレーカ22は、商用電源30より負荷機器40へ給電するか否かにより操作される主電源スイッチとして機能する。また、ラインスイッチ23は、商用電源30に瞬時電圧低下や停電が生じた場合に、商用電源30からの給電の経路を遮断し、蓄電池25から双方向インバータ24を通して負荷機器40へ給電されるように切り替えるものであり、商用電源30の瞬時電圧低下や停電の監視結果に従って制御される。ラインスイッチ23は、商用電源の正常時にはオンにされ、異常時にはオフにされる。ラインスイッチ23の制御は、例えば、双方向インバータ24に商用電源監視回路を設け、この商用電源監視回路が商用電源30の瞬時電圧低下や停電を検出した場合に、それまでオンであったラインスイッチ23をオフにすることで実現できる。
【0020】
メインブレーカ22およびラインスイッチ23がオンの場合、保守バイパスユニット10から伝送されてきた商用電源30の電力は、メインブレーカ22およびラインスイッチ23を通り、折り返されて保守バイパスユニット10の出力端子13に伝送される。
【0021】
次に、
図1の無停電電源装置の動作を説明する。通常、インバータ起動スイッチにより双方向インバータを動作させておく。
【0022】
商用電源30の正常時、インバータユニット20内のメインブレーカ22をオンにすることにより負荷機器40への給電が開始される。すなわち、メインブレーカ22をオンにすると、商用電源30の電力は、保守バイパスユニット10側の入力端子11からコネクタ12の出力側端子12-1、コネクタ21の入力側端子21-1を通してインバータユニット20側へ伝送される。インバータユニット20内へ伝送された電力は、メインブレーカ22およびラインスイッチ23を通して折り返され、コネクタ21の出力側端子21-2、コネクタ12の入力側端子12-2および出力端子13を通して負荷機器40へ供給される。このとき、双方向インバータ24は動作しているので、AC/DC変換器として動作して商用電源30の電力をAC/DC変換する。蓄電池25は、双方向インバータ24により生成されたDC電力で充電される。
【0023】
ここで商用電源30に異常が生じて商用電源30から電力が低下あるいは供給されなくなると、ラインスイッチ23がオフする。双方向インバータ24は、AC側の電力がなくなることにより、蓄電池25のDC電力をDC/AC変換するDC/AC変換器として動作するようになる。これにより蓄電池25のDC電力がDC/AC変換され、コネクタ21の出力側端子21-2、コネクタ12の入力側端子12-2および出力端子13を通して負荷機器40に供給される。
【0024】
次に、インバータユニット20内の部品交換を行う時の手順について説明する。本発明の保守バイパスユニット10は、交換対象となる電子部品を含まず、機械的スイッチで構成されるバイパスブレーカ14を含むだけである。機械的スイッチは、不具合が生じることは殆どないので、保守バイパスユニット10については部品交換を考える必要はない。
【0025】
商用電源30から負荷機器40へ給電されている状態において、インバータユニット20内の部品交換を行う必要が生じたとき、まず、インバータ起動スイッチをオフにして双方向インバータ24の動作を停止させる。このとき、入力端子11と出力端子13間は、インバータユニット20内で折り返される経路で接続されているので、負荷機器40に対する給電状態は維持される。
【0026】
次に、バイパスブレーカ14をオンにする。半導体スイッチで構成されるラインスイッチ23は、機械式スイッチであるバイパスブレーカ14よりその導通抵抗が大きいので、負荷電流は、バイパスブレーカ14側を通り、ラインスイッチ23側を通らないと考えて差し支えない。したがって、この状態では、入力端子11と出力端子13間は、保守バイパスユニット10内のバイパスブレーカ14で接続されているとみることができ、以後の負荷機器40への給電は、バイパスブレーカ14を通して継続される。
【0027】
次に、メインブレーカ22をオフにする。これにより無停電電源装置の主電源がオフとなるが、入力端子11と出力端子13の間は、保守バイパスユニット10内のバイパスブレーカ14で接続されているので、負荷機器40に対する給電状態は維持される。
【0028】
その後、保守バイパスユニット10からインバータユニット20を引き抜き、コネクタ12,21の嵌合を解く。これによりインバータユニット20は保守バイパスユニット10から電気的および機械的に分離され、インバータユニット20内の部品交換が可能になる。このときでも入力端子11と出力端子13の間は、保守バイパスユニット10内のバイパスブレーカ14で接続されているので、負荷機器40に対する給電状態は維持される。
【0029】
インバータユニット20内の部品交換が済んだら、上記手順と逆の手順で保守バイパスユニット1Oにインバータユニット20を嵌合させる。これにより、インバータユニット20を併用した商用電源30からの給電に戻すことができる。すなわち、保守バイパスユニット10のコネクタ12にインバータユニット20のコネクタ21を嵌合させた後、メインブレーカ22をオンにし、バイパスブレーカ14をオフにし、その後、インバータ起動スイッチをオンにすると、商用電源30が正常ならば、商用電源30から負荷機器40へ給電され、商用電源30が異常ならば、蓄電池25から双方向インバータ24を通して負荷機器40へ給電される。
【0030】
以上、実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変形されたものも含む。
【符号の説明】
【0031】
10・・・保守バイパスユニット、11・・・入力端子、12・・・コネクタ、12-1・・・出力側端子、12-2・・・入力側端子、13・・・出力端子、14・・・バイパスブレーカ、20・・・インバータユニット、21・・・コネクタ、21-1・・・入力側端子、21-2・・・出力側端子、22・・・メインブレーカ、23・・・ラインスイッチ、24・・・双方向インバータ、25・・・蓄電池