(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
〔1.フィルタ、デュープレクサの構成〕
図1Aは、ラダー型フィルタにおける直列共振器の回路図である。
図1Bは、ラダー型フィルタにおける並列共振器の回路図である。
図1Cは、直列共振器及び並列共振器の周波数特性を示す。
図1Cにおける実線は、
図1Aに示す直列共振器Sの周波数特性である。破線は、
図1Bに示す並列共振器Pの周波数特性である。
【0012】
図1Cに示すように、直列共振器Sは、共振周波数f
rsと反共振周波数f
asとを有する。並列共振器Pは、共振周波数f
rpと反共振周波数f
apとを有する。ここで、並列共振器Pの反共振周波数f
apと直列共振器Sの共振周波数f
rsとがほぼ同じ値を有するとき、
図2Aに示すように直列共振器Sを直列腕(入力端子T
inと出力端子T
outとの間に接続されている信号線)に配し、並列共振器Pを並列腕(直列腕とグランドとの間に接続されている信号線)に配することで、
図2Bに示すようなフィルタ特性を有するフィルタを実現することができる。
【0013】
図3Aに示すように、ラダー型フィルタは、
図2Aに示す一対(一つの直列共振器と一つの並列共振器との組み合わせ)の梯子型回路が、多段(G1〜G4)に接続されている。
図3Aに示すラダー型フィルタは、直列腕に容量Csを有する直列共振器S1〜S4が接続され、並列腕に容量Cpを有する並列共振器P1〜P4が接続されている。このとき、梯子型回路は、各段間における反射を防ぐため、
図3Aに示すようにミラー反転させた形で接続される。例えば、第1段G1の梯子型回路の直列腕における並列腕とのノードの次段には、第2段G2の梯子型回路の並列腕とのノードが配されている。また、第2段G2の直列共振器S2の次段には、第3段G3の直列共振器S3が接続されている。第3段G3及び第4段G4も同様の接続関係を有するように接続されている。
【0014】
図3Aに示すように梯子型回路を多段接続すると、直列腕において同種の共振器が直列接続されている箇所と並列腕において同種の共振器が並列接続されている箇所とが存在する。実際のラダー型フィルタは、フィルタ回路を小型化するために、これらの共振器は一つの共振器として容量的に合成される。
図3Bは、隣り合う共振器が容量的に合成されているラダー型フィルタの回路図である。
図3Aにおける直列共振器S2及びS3は、
図3Bに示すように、各容量Csが合成された容量Cs/2を有する直列共振器S5に置換可能である。また、
図3Aにおける並列共振器P1及びP2は、
図3Bに示すように、各容量Cpが合成された容量2Cpを有する並列共振器P5に置換可能である。また、
図3Aにおける並列共振器P3及びP4は、
図3Bに示すように、各容量Cpが合成された容量2Cpを有する並列共振器P6に置換可能である。
【0015】
図4Aは、直列共振器(周波数特性V
S1)と並列共振器(周波数特性V
P1)の周波数差を拡張する前の周波数特性である。
図4Bは、
図4Aに示す周波数特性を有する共振器を含むフィルタの減衰特性である。
図4Cは、
図4Aに示す周波数特性を有する共振器を含むフィルタの反射特性である。
図4Dは、
図4Aに示す周波数特性に比べて、直列共振器の共振周波数及び反共振周波数と並列共振器の共振周波数と反共振周波数との周波数差を拡張したときの周波数特性を示す。
図4Eは、
図4Dに示す周波数特性を有する共振器を含むフィルタの減衰特性である。
図4Fは、
図4Dに示す周波数特性を有する共振器を含むフィルタの反射特性である。
図4Gは、
図4Dに示す周波数特性に比べて、直列共振器及び並列共振器の共振周波数を低周波側へシフトさせたときの周波数特性を示す。
図4Hは、
図4Gに示す周波数特性を有する共振器を含むフィルタの減衰特性である。
図4Iは、
図4Gに示す周波数特性を有する共振器を含むフィルタの反射特性である。
【0016】
ラダー型フィルタにおいて、通過帯域を広帯域化するためには、直列共振器と並列共振器の周波数差を拡張すればよい。例えば、
図4A〜
図4Cに示す特性を有するフィルタにおいて、
図4Aの特性V
S1を有する直列共振器を
図4Dの特性V
S2を有する直列共振器に置き換え、
図4Aの特性V
P1を有する並列共振器を
図4Dの特性V
P2を有する並列共振器に置き換える。しかし、この手法では、インピーダンス整合が確保できなくなり、
図4E及び
図4Fに示すように通過帯域の略中央の帯域において入力損失が大きく劣化してしまう。
【0017】
共振器の共振周波数と反共振周波数の差は、共振器自身の結合係数によって決定される。したがって、直列共振器と並列共振器の周波数差を単純に拡張するだけでは、フィルタ特性を低損失化するのは困難である。
【0018】
そこで、共振器にインダクタンスを接続することで、共振周波数を低周波側にシフトさせることが原理的に可能である。これによって、共振周波数と反共振周波数の差を見かけ上、拡張できる。例えば、直列共振器および並列共振器それぞれにインダクタンスを直列接続し、共振周波数と反共振周波数の差を拡張すれば、共振器の周波数特性は
図4Gに示すようになる。このような共振器でフィルタを作成すれば、
図4H及び
図4Iに示すように周波数帯域の略中央の帯域に劣化を生じせしめずに、広帯域な特性を得ることが可能である。
【0019】
しかしながら、共振器にインダクタンスを接続して広帯域化を図る手法では、各共振器にインダクタンスを接続する構成であるため、フィルタの多段化に伴って多くのインダクタンスを備える必要があり、フィルタチップの小型化の妨げとなる。並列共振器にのみインダクタンスを接続することで、チップの小型化と両立することは可能であるが、この場合、広帯域化は直列共振器の共振周波数と反共振周波数の差で制限されてしまい、十分な広帯域化を図ることが困難となる。
【0020】
(実施例1)
図5Aは、実施例1にかかるデュープレクサの回路図を示す。
図5Aに示すデュープレクサは、送信フィルタ1と受信フィルタ2とを備えている。送信フィルタ1及び受信フィルタ2は、ラダー型フィルタを含む。受信フィルタ2は、直列共振器S1〜S4、並列共振器P1〜P4、インダクタンスL1〜L3を含む。送信フィルタ1の出力側及び受信フィルタ2の入力側は、アンテナAntに接続されている。送信フィルタ1は、入力側が送信端子Txに接続されている。受信フィルタ2は、出力側が受信端子Rxに接続されている。ここでは、直列共振器S1〜S4及び並列共振器P1〜P4は、例えば、窒化アルミニウムを圧電膜として使用している圧電薄膜共振器で実現することができる。
【0021】
図5Aに示す受信フィルタ2は、並列共振器P11及びインダクタンスL11をさらに備える。並列共振器P11は、並列腕に接続される。並列共振器P11の反共振周波数は、直列共振器S1〜S4の反共振周波数と一致する。インダクタンスL11は、並列共振器P11に直列接続されている。並列共振器P11の共振周波数は、インダクタンスL11を直列接続することによって、並列共振器P1〜P4の共振周波数より低い値となるように調整される。なお、
図5Bに示す受信フィルタ102は、比較例であり、
図5Aの構成から並列共振器P11及びインダクタンスL11を除去した構成である。
【0022】
図6Aは、
図5Aにおける直列共振器S1〜S4および並列共振器P1〜P4の周波数特性と、インダクタンスL11が接続された並列共振器P11の周波数特性とを示す。
図6Bは、
図6Aに示す特性を有する共振器を備えたフィルタの減衰特性を示す。
図6Aにおいて、特性V
S11は、直列共振器S1〜S4の周波数特性である。特性V
P11は、並列共振器P1〜P4の周波数特性である。特性V
P12は、並列共振器P11の周波数特性である。
図6Aに示すように、フィルタの通過帯域は、インダクタンスL11が直列接続されている並列共振器P11の共振周波数f
rp1と反共振周波数f
ap1との間に包括されている。共振周波数f
rp1と反共振周波数f
ap1とに挟まれている周波数帯は、共振器において反射係数の位相が0度から180度まで変化する領域である。したがって、並列共振器P11とインダクタンスL11とを接続した二端子素子は、共振周波数f
rp1と反共振周波数f
ap1とに挟まれている周波数帯において、インピーダンス整合器として動作する。これにより、
図6Aにおける通過帯域の略中央の帯域においてインピーダンスを整合することができるようになるため、
図6Bに示すように通過帯域の略中央の周波数帯域の劣化を抑えることができる。
【0023】
図7は、受信フィルタの通過特性を示す。
図7において、実線は
図5Aに示す受信フィルタ2(実施例)の受信特性を示す。破線は
図5Bに示す受信フィルタ(比較例)の受信特性を示す。すなわち、実線は、並列共振器P11およびインダクタンスL11がインピーダンス整合器として追加されている受信フィルタの特性である。
図7における横軸は、受信フィルタの中心周波数で正規化している。ここで、一例として、フィルタの比帯域は6%である。受信フィルタ2にインピーダンス整合器を追加することで、
図7に示すように、通過帯域の略中央でのインピーダンスの不整合が改善され、比帯域6%の帯域幅においても、十分に平滑なフィルタ特性を実現することができる。
ここで、例えば、並列共振器P11の静電容量を2.3pF、インダクタンスL11を3nHと設定し、P11とL11とを直列接続した並列腕の共振点を正規化周波数にて0.511、反共振点を1.033と設定することができる。反共振点はフィルタを構成する直列共振子の反共振点と一致させ、共振点は通過帯域に対して十分に低い周波数に配することができる。このため、フィルタの通過帯域において、並列共振器P11は、単なるリアクタンス素子として機能し、インピーダンス整合素子としてのみ機能する。
【0024】
なお、本実施例では、並列共振器P11の反共振周波数は、他の直列共振器S1〜S4の反共振周波数と一致する構成としているが、並列共振器P11の反共振周波数は他の直列共振器S1〜S4の反共振周波数より高くてもよい。この場合でも、並列共振器P11の共振周波数と反共振周波数との間にフィルタの通過帯域を包括することができる。なお、構成層の厚みによって共振周波数が制御される圧電薄膜共振器では、フィルタに含まれる共振器を別個に周波数調整することが難しい。そのため、並列共振器P11の反共振器周波数は、直列共振器S1〜S4の反共振周波数と一致させ、インダクタンスL11によって並列共振器P11の共振周波数を周波数移動させる構成の方が、製作工程上有利といえる。
【0025】
また、本実施例では、共振器は圧電薄膜共振器で実現しているが、弾性表面波素子、Love波素子、Lamb波素子のいずれであっても同様の考察が成り立つ。弾性表面波素子、Love波素子、Lamb波素子は、IDT(InterDigital
Transducer)電極のピッチを変えることで、周波数を調整することができる。IDTのピッチによって周波数が制御される共振器では、圧電薄膜共振器のように構成層の厚さによる周波数調整上の制約を受けない。この場合、フィルタの通過帯域の高周波端を定義するのは直列共振器の中で最も低い共振周波数を有する共振器の反共振周波数なので、インピーダンス整合用の並列共振器P11の反共振周波数は、直列共振器の中で最も低い共振周波数を有する共振器の反共振周波数と一致させるか、もしくはそれ以上に調整することが好ましい。また、フィルタの通過帯域の低周波端を定義するのは並列共振器の中で最も高い共振周波数を有する共振器の共振周波数なので、インピーダンス整合用の並列共振器P11の共振周波数は、並列共振器の中で最も高い共振周波数を有する共振器の共振周波数と一致させるか、もしくはそれ以下に調整することが好ましい。
【0026】
また、本実施例では、
図5Aに示すようにデュープレクサを挙げて説明しているが、受信フィルタを単体の場合も、本実施例で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0027】
また、本実施例では、
図5Aに示すようにラダー型フィルタを挙げて説明しているが、直列共振器と並列共振器とを格子状に接続するラティス型フィルタにおいても、本実施例で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0028】
なお、複数の直列共振器S1〜S4の共振周波数が互いに異なる周波数を有する場合、インダクタンスL11が直列接続されている並列共振器P11の反共振周波数は、複数の直列共振器S1〜S4の中で最も低い共振周波数を有する直列共振器の反共振周波数以上とすることが好ましい。
【0029】
また、複数の並列共振器P1〜P4の共振周波数が互いに異なる周波数を有する場合、インダクタンスL11によって周波数移動される並列共振器P11の共振周波数は、複数の並列共振器P1〜P4の中で最も高い共振周波数を有する並列共振器の共振周波数以下とすることが好ましい。
【0030】
図8は、本実施の形態にかかるデュープレクサを備えたRFモジュールの一例である。
図8に示すRFモジュールは、スイッチモジュール202(SW Module)、デュープレクサバンクモジュール203(Duplexer Bank
Module)、および増幅器モジュール204(AMP Module)を備えている。デュープレクサバンクモジュール203は、複数のデュープレクサ203a〜203cを備えている。スイッチモジュール202は、アンテナ201a及び201bに接続されている。スイッチモジュール202は、デュープレクサバンクモジュール203に含まれている複数のデュープレクサ203a〜203cを適宜選択して、送信信号や受信信号の交信を行う。
図8において、デュープレクサはデュープレクサバンクモジュール203の一部としているが、例えば、デュープレクサを増幅器モジュール204やスイッチモジュール202と組み合わせてモジュール化することもできる。
【0031】
(実施例2)
図9Aは、
図5Aに示す送信フィルタチップの具体構成例を示す模式図である。
図9Bは、
図5Aにおける受信フィルタチップの具体構成例を示す模式図である。デュープレクサに含まれる送信フィルタ及び受信フィルタは、
図9A及び
図9Bに示すように、別個のフィルタチップとして形成することができる。
図9Aに示す送信フィルタチップに含まれる直列共振器S21〜S24、並列共振器P21〜P24、インダクタンスL21は、
図5Aに示す符号と同一符号を付与し、
図5Aに示す構成と
図9Aに示す構成との整合性を図っている。また、
図9Bに示す受信フィルタチップに含まれる直列共振器S1〜S4、並列共振器P1〜P4、インダクタンスL1〜L3、並列共振器P11、インダクタンスL11は、
図5Aに示す符号と同一符号を付与し、
図5Aに示す構成と
図9Bに示す構成との整合性を図っている。
【0032】
なお、
図9A及び
図9Bにおいて、インダクタンスL1〜L3、L21は、外部部品、もしくはパッケージまたはモジュール基板上の配線で実現することができる。
図9A及び
図9Bに示すフィルタチップは、シリコン基板20上に圧電薄膜共振器を作製することで形成される。
【0033】
また、フィルタチップは、弾性表面波素子で実現することができる。
図10Aは、共振器を弾性表面波素子で実現した送信フィルタチップの模式図である。
図10Bは、共振器を弾性表面波素子で実現した受信フィルタチップの模式図である。
図10Aに示す送信フィルタチップに含まれる直列共振器S21〜S24、並列共振器P21〜P24、インダクタンスL21は、
図5Aに示す符号と同一符号を付与し、
図5Aに示す構成と
図10Aに示す構成との整合性を図っている。また、
図10Bに示す受信フィルタチップに含まれる直列共振器S1〜S4、並列共振器P1〜P4、インダクタンスL1〜L3、並列共振器P11、インダクタンスL11は、
図5Aに示す符号と同一符号を付与し、
図5Aに示す構成と
図10Bに示す構成との整合性を図っている。
図10A及び
図10Bに示すフィルタチップは、圧電基板21上にアルミニウム(Al)を配線することで形成されている。
【0034】
図11Aは、圧電薄膜共振器の具体構成を示す平面図である。
図11Bは、
図11AにおけるA−A部の断面図である。
図11A及び
図11Bに示すように、圧電薄膜共振器は、基板31と、基板31上に形成されている下部電極33と、下部電極33上に形成されている圧電膜34と、圧電膜34上に形成されている上部電極32とを備えている。基板31において、上部電極32と下部電極33とが重なり合う領域には、空隙35が形成されている。
【0035】
図12Aは、圧電薄膜共振器の他例の具体構成を示す平面図である。
図12Bは、
図12AにおけるA−A部の断面図である。
図12A及び
図12Bに示すように、圧電薄膜共振器は、基板41と、基板41上に形成されている下部電極43と、下部電極43上に形成されている圧電膜44と、圧電膜44上に形成されている上部電極42とを備えている。基板41において、上部電極42と下部電極43とが重なり合う領域には、空隙45が形成されている。
図12Cは、
図12Bに示す圧電薄膜共振器において、基板41に空隙45が形成されておらず、基板51と下部電極53との間に空隙55が形成されている圧電薄膜共振器の断面図である。
図12Cに示す圧電薄膜共振器は、基板51、上部電極52、下部電極53、圧電膜54を備えている。
図12Dは、
図12Bに示す圧電薄膜共振器において、空隙45に代えて反射膜65が形成されている圧電薄膜共振器の断面図である。
図12Dに示す圧電薄膜共振器は、基板61、上部電極62、下部電極63、圧電膜64、反射膜65を備えている。
【0036】
図13A及び
図13Bは、デュープレクサの具体構成を示す模式図である。フィルタチップは、機械的に駆動する部位を有するため、気密封止されることが望ましい。気密封止構造は、受信フィルタチップと送信フィルタチップとが個別に気密封止されていてもよいし、デュープレクサパッケージとして受信フィルタチップと送信フィルタチップとがまとめて気密封止されていてもよい。
図13Aは、基板71の上に、送信フィルタパッケージ71、受信フィルタパッケージ72、インダクタンスL1,L2,L3,L11,L21が実装されている形態を示す。
図13Bは、基板71の上に、デュープレクサパッケージ74、インダクタンスL1,L2,L3,L11,L21が実装されている形態を示す。デュープレクサパッケージ74は、送信フィルタチップ75及び受信フィルタチップ76を内蔵している。
【0037】
図14は、気密封止構造を有するデュープレクサパッケージの分解斜視図である。
図14に示すように、デュープレクサパッケージは、セラミックパッケージ77におけるキャビティ77a内に、送信フィルタチップ75及び受信フィルタチップ76がフリップチップボンディングにより実装されている。セラミックパッケージ77に略平板状の金属キャップ78を溶接することで、キャビティ77aを封止することができる。
【0038】
図15Aは、樹脂モールディングにより気密封止されているデュープレクサパッケージの断面図である。
図15Aに示すデュープレクサパッケージは、セラミックパッケージ77上に送信フィルタチップ75及び受信フィルタチップ76がフリップチップボンディングにより実装されている。送信フィルタチップ75及び受信フィルタチップ76は、樹脂モールド78により覆われている。これにより、送信フィルタチップ75及び受信フィルタチップ76を気密封止することができる。
【0039】
図15Bは、金属モールディングにより気密封止されているデュープレクサパッケージの断面図である。
図15Bに示すデュープレクサパッケージは、セラミックパッケージ77上に送信フィルタチップ75及び受信フィルタチップ76がフリップチップボンディングにより実装されている。送信フィルタチップ75及び受信フィルタチップ76は、金属モールド79により周囲が囲まれ、上部がメタルリッド80により封止されている。これにより、送信フィルタチップ75及び受信フィルタチップ76を気密封止することができる。
【0040】
図15Cは、樹脂モールディング及び金属モールディングにより気密封止されているデュープレクサパッケージの断面図である。
図15Cに示すデュープレクサパッケージは、セラミックパッケージ77上に送信フィルタチップ75及び受信フィルタチップ76がフリップチップボンディングにより実装されている。送信フィルタチップ75及び受信フィルタチップ76は、樹脂モールド82により覆われている。樹脂モールド82は、メタルコーティング材により覆われている。これにより、送信フィルタチップ75及び受信フィルタチップ76を気密封止することができる。
【0041】
なお、
図14、
図15A〜
図15Cに示す気密封止構造は一例であって、少なくとも送信フィルタチップと受信フィルタチップとを気密封止することができれば、他の構造を採用してもよい。
【0042】
図16は、インダクタンスの実装形態の一例を示す模式図である。
図16に示すインダクタンスは、基板83の上に、チップインダクタで形成されている6つのインダクタンスL1〜L3、L11、L21、L22が形成されている。インダクタL1は、両端がパッド84a及び84bに接続されている。インダクタL2は、両端がパッド84c及び84dに接続されている。インダクタL3は、両端がパッド84e及び84fに接続されている。インダクタL11は、両端がパッド84g及び84hに接続されている。インダクタL21は、両端がパッド84i及び84jに接続されている。インダクタL22は、両端がパッド84k及び84mに接続されている。なお、インダクタンスの集積手法としては、チップインダクタに限らない。インダクタンスは、チップ部品である必要は無い。インダクタンスは、パッケージ上もしくは基板上の配線を用いて形成することができる。
【0043】
また、インダクタンスは、
図17に示すように、基板上に作成されるIPD (Integrated Passive
Device)85を用いても作成することができる。IPDは、機械的に脆弱な部位を有するため、パッケージ内部に収納されることが望ましい。
図17に示すデュープレクサパッケージ74は、送信フィルタチップ75及び受信フィルタチップ76とともに、IPD85がセラミックパッケージ77内に気密封止される構成である。
【0044】
〔2.通信モジュールの構成〕
図18は、本実施の形態にかかるフィルタを備えた通信モジュールの一例を示す。
図18に示すように、デュープレクサ162は、受信フィルタ162aと送信フィルタ162bとを備えている。また、受信フィルタ162aには、例えばバランス出力に対応した受信端子163a及び163bが接続されている。また、送信フィルタ162bは、パワーアンプ164を介して送信端子65に接続している。ここで、受信フィルタ162aは、本実施の形態にかかるフィルタを備えている。
【0045】
受信動作を行う際、受信フィルタ162aは、アンテナ端子161を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、受信端子163a及び163bから外部へ出力する。また、送信動作を行う際、送信フィルタ162bは、送信端子165から入力されてパワーアンプ164で増幅された送信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、アンテナ端子161から外部へ出力する。
【0046】
本実施の形態にかかるフィルタを通信モジュールに備えることで、低損失を維持しつつ、広帯域特性を有する小型で安価な通信モジュールを実現することができる。
【0047】
なお、
図18に示す通信モジュールの構成は一例であり、他の形態の通信モジュールに本実施の形態にかかるフィルタを搭載しても、同様の効果が得られる。
【0048】
〔3.通信装置の構成〕
図19は、本実施の形態にかかるフィルタ、または前述の通信モジュールを備えた通信装置の一例として、携帯電話端末のRFブロックを示す。また、
図19に示す通信装置は、GSM(Global System for Mobile Communications)通信方式及びW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)通信方式に対応した携帯電話端末の構成を示す。また、本実施の形態におけるGSM通信方式は、850MHz帯、950MHz帯、1.8GHz帯、1.9GHz帯に対応している。また、携帯電話端末は、
図19に示す構成以外にマイクロホン、スピーカー、液晶ディスプレイなどを備えているが、本実施の形態における説明では不要であるため図示を省略した。ここで、受信フィルタ173a、77〜80は、本実施の形態にかかるフィルタの構造を備えている。
【0049】
まず、アンテナ171を介して入力される受信信号は、その通信方式がW−CDMAかGSMかによってアンテナスイッチ回路172で、動作の対象とするLSIを選択する。入力される受信信号がW−CDMA通信方式に対応している場合は、受信信号をデュープレクサ173に出力するように切り換える。デュープレクサ173に入力される受信信号は、受信フィルタ173aで所定の周波数帯域に制限されて、バランス型の受信信号がLNA174に出力される。LNA174は、入力される受信信号を増幅し、LSI176に出力する。LSI176では、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御したりする。
【0050】
一方、信号を送信する場合は、LSI176は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ175で増幅されて送信フィルタ173bに入力される。送信フィルタ173bは、入力される送信信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させる。送信フィルタ173bから出力される送信信号は、アンテナスイッチ回路172を介してアンテナ171から外部に出力される。
【0051】
また、入力される受信信号がGSM通信方式に対応した信号である場合は、アンテナスイッチ回路172は、周波数帯域に応じて受信フィルタ177〜180のうちいずれか一つを選択し、受信信号を出力する。受信フィルタ177〜180のうちいずれか一つで帯域制限された受信信号は、LSI183に入力される。LSI183は、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御したりする。一方、信号を送信する場合は、LSI183は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ181または182で増幅されて、アンテナスイッチ回路172を介してアンテナ171から外部に出力される。
【0052】
本実施の形態にかかるフィルタ、または通信モジュールを通信装置に備えることで、低損失を維持しつつ、広帯域特性を有する小型で安価な通信装置を実現することができる。
【0053】
〔4.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態によれば、低損失を維持しつつ、広帯域特性を有する小型で安価なフィルタ、デュープレクサ、通信モジュール、通信装置を実現することができる。具体的には、受信フィルタにおいて、直列腕に並列に並列共振器P11を追加し、さらにその並列共振器P11にインダクタンスL11を直列接続する。さらに、並列共振器P11の共振周波数は、フィルタ内における他の直列共振器の共振周波数と一致させるとともに、他の並列共振器の共振周波数よりも低い値としている。これにより、フィルタの通過帯域を、並列共振器P11の共振周波数と反共振周波数との間に包括できるため、低損失を維持しつつ、広帯域化を図ることができる。
【0054】
また、フィルタに備わる複数の共振器毎にインダクタンスを接続しなくてよいため、小型で安価なフィルタを実現できる。
【0055】
また、本実施の形態における直列共振器S1〜S4は、本発明の直列共振器の一例である。本実施の形態における並列共振器P1〜P4は、本発明の並列共振器の一例である。本実施の形態におけるインダクタンスL11は、本発明のインダクタンスの一例である。本実施の形態における並列共振器P11は、本発明のインダクタンスが直列接続されている並列共振器の一例である。